説明

車両の後部車体補強構造

【課題】連結部材とリンクブラケットとの間で、前後方向に浮きが生じるのを防止して締結や溶接などの連結を簡単に精度よく行う。
【解決手段】サイドパネルと、リンクブラケット10とを備えた車両の後部車体補強構造に、左右リンクブラケット10を連結するようにクロスバー部材を配置し、このクロスバー部材とリンクブラケット10とを連結部材20で連結する。連結部材20の重心をリンクブラケット10との連結部24よりも車両後方へ偏心させ、リンクブラケット10と連結部材20とに略車幅方向へ延出されて互いに接した状態で連結される平面部16,21をそれぞれ設ける。そして、連結部材20にリンクブラケット10と連結部材20との仮組状態で連結部材20の偏心方向への倒れを規制する開口端部23a(規制手段)を設ける。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、開閉可能な格納式屋根を有する車両の後部車体補強構造に関するものである。
【背景技術】
【0002】
従来より、オープンカーなどの開閉可能な屋根を有する車両では、車体剛性を高めるために、左右サイドパネルを連結するクロスバー部材を開閉屋根のリンク部材を支持するリンクブラケットと連結することが行われている(例えば、特許文献1参照)。
【特許文献1】特開平11−321334号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0003】
ところで、クロスバー部材は、サイドドア開口後端を真っ直ぐ左右に連結することが望ましいが、居住空間を確保するために、サイドドア開口後端よりも後方へオフセットした形状とすることが考えられる。このような場合、クロスバー部材とリンクブラケットとの間に連結部材を設け、クロスバー部材とリンクブラケットとを連結することが行われる。
【0004】
しかしながら、従来の車両の後部車体補強構造では、座席シートの配置の関係などにより、クロスバー部材をドア開口後端よりも後方へオフセットさせた形状とすると、連結部材をリンクブラケットと連結する際に、連結部材の重心が上記リンクブラケットとの連結部よりも車両後方へ偏心しているため、連結部材とリンクブラケットとの間で前後方向に浮きが生じ、締結や溶接などの連結が精度よく行えないという問題があった。
【0005】
本発明は、かかる点に鑑みてなされたものであり、その目的とするところは、連結部材とリンクブラケットとの間で前後方向に浮きが生じるのを防止し、締結や溶接などの連結を簡単に精度よく行えるようにすることにある。
【課題を解決するための手段】
【0006】
上記の目的を達成するために、この発明では、リンクブラケットと連結部材との仮組状態で連結部材の偏心方向への倒れを規制する規制手段を設けた。
【0007】
具体的には、第1の発明では、車両上下方向へ延出され、車両の両側面を構成するサイドパネルと、該各サイドパネルに設けられ、開閉可能な格納式屋根のリンク部材を支持するリンクブラケットと、該リンクブラケットよりも車幅方向内側に位置して左右リンクブラケットを連結するように配置されるクロスバー部材と、該クロスバー部材とリンクブラケットとを連結する連結部材とを備えた車両の後部車体補強構造を対象とする。
【0008】
そして、上記連結部材の重心は、上記リンクブラケットとの連結部よりも車両前方又は車両後方へ偏心し、上記リンクブラケットと連結部材とは、略車幅方向へ延出されて互いに接した状態で連結される平面部をそれぞれ有すると共に、リンクブラケットと連結部材との少なくとも一方には、該リンクブラケットと連結部材との仮組状態で上記連結部材の偏心方向への倒れを規制する規制手段が設けられている。
【0009】
上記の構成によると、座席シートの配置の関係などにより、クロスバー部材とリンクブラケットとを連結する連結部材の重心がリンクブラケットとの連結部よりも車両前方又は車両後方へ偏心すると、リンクブラケットと連結部材とを連結する際に、連結部材が前方又は後方へ倒れようとする。しかし、本発明では、リンクブラケットと連結部材との少なくとも一方に設けた規制手段により、リンクブラケットと連結部材との仮組状態で連結部材の偏心方向への倒れが規制される。
【0010】
第2の発明では、上記規制手段は、リンクブラケット又は連結部材の一方の平面部に連続し、該平面部から屈曲された屈曲部に設けた切り欠き部における上下方向に延びる開口端部からなり、上記一方の平面部が他方の平面部に接した状態で他方の平面部の裏面が上記開口端部に当接している。
【0011】
上記の構成によると、屈曲部の開口端部が他方の平面部の裏面に当接しているので、リンクブラケットと連結部材とが連結部を合わせて2カ所で支持される。
【0012】
第3の発明では、上記開口端部は、平面視で上記連結部における両平面部の当接部分よりも車幅方向にオフセットして設けられている。
【0013】
上記の構成によると、連結部材の重力は、連結部と、この連結部における両平面部の当接部分よりも車幅方向にオフセットした開口端部との2点で支持されるので、連結部材の重心が車幅方向へ偏心している場合でも、連結部に掛かる車幅方向回りのモーメントが開口端部によって支持される。
【0014】
第4の発明では、上記両平面部は、規制手段の上方及び下方で締結される締結部材により前後方向に締結される構成とする。
【0015】
上記の構成によると、規制手段によって安定した状態で仮組されたリンクブラケットと連結部材との両平面部において、規制手段を上下に挟んで締結部材が締結される。
【0016】
第5の発明では、上記連結部材には、連結部から連結部材の偏心方向へ延びる略閉断面形状の剛性部材が配置されている。
【0017】
上記の構成によると、リンクブラケットから伝達されたサイドパネルからの側突荷重は、連結部材の剛性部材によってクロスバー部材に伝達される。
【0018】
第6の発明では、上記連結部材の連結部よりも上記偏心方向には、シートベルト装置が配置されている。
【0019】
上記の構成によると、シートベルトに掛かった引っ張り荷重は、シートベルトアンカー又はシートベルトリトラクタよりなるシートベルト装置に支えられるが、この荷重は連結部材の偏心方向への倒れを規制する規制手段によっても支持される。
【0020】
第7の発明では、上記クロスバー部材には、上方へ突出するロールバー部材が設けられている。
【0021】
上記の構成によると、車両横転時などに乗員を保護するために設けたロールバー部材に横転時の車両の荷重が掛かるが、この荷重は、クロスバー部材をねじろうとするねじりモーメントとなる。このねじりモーメントは、連結部材の偏心方向への倒れを規制する規制手段によっても支持される。
【発明の効果】
【0022】
以上説明したように、上記第1の発明によれば、リンクブラケットと連結部材との少なくとも一方に設けた規制手段により、リンクブラケットと連結部材との仮組状態で連結部材の偏心方向への倒れを規制している。このため、リンクブラケットと連結部材とを連結する際に、連結部材に浮き上がりが生じることはないので、特別な治具を使用したり、連結部材の重心側を支えなくても、容易に精度よく連結を行うことができる。
【0023】
上記第2の発明によれば、リンクブラケットの平面部と連結部材の平面部との当接部と、屈曲部の開口端部と他方の平面部の裏面との当接部との2カ所で当接させてリンクブラケットと連結部材とを2点で支持するようにしている。このため、さらに容易に精度よくリンクブラケットと連結部材との連結を行うことができる。
【0024】
上記第3の発明によれば、連結部と、この連結部における両平面部の当接部分よりも車幅方向にオフセットした開口端部との2点で連結部材の重力を支持している。このため、連結部に掛かる車幅方向内側回りのモーメントも規制手段によって確実に支持することができる。
【0025】
上記第4の発明によれば、両平面部を規制手段の上方及び下方で締結される締結部材により前後方向に締結している。このため、規制手段によってリンクブラケットと連結部材とが仮組状態で確実に支持されるので、上下のいずれの締結箇所から締結を始めても連結部で確実に締結を行うことができ、締結作業が極めて容易となる。
【0026】
上記第5の発明によれば、リンクブラケットから伝達されたサイドパネルからの側突荷重を剛性の高い連結部材の剛性部材によってクロスバー部材に伝達するようにしている。このため、連結部材の質量が大きくなって偏心が生じ易くなっても、規制手段によって連結部材の偏心方向への倒れが規制されるので、連結部材をリンクブラケットに容易に連結することができる。
【0027】
上記第6の発明によれば、連結部材の連結部よりも偏心方向にシートベルト装置を配置し、シートベルトに掛かった引っ張り荷重を規制手段によっても支持している。このため、シートベルトに掛かった荷重を連結部材によって確実に支持することができる。
【0028】
上記第7の発明によれば、車両横転時などにロールバー部材に掛かった荷重を連結部材の偏心方向への倒れを規制する規制手段によっても支持している。このため、規制手段が、横転時のクロスバー部材の倒れを防いで乗員を確実に保護する役割も果たすことができる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0029】
以下、本発明の実施形態を図面に基づいて説明する。
【0030】
図1は、実施形態にかかる車両の後部車体補強構造2を備えたオープンカーの車体1を示す。車体1は、フロントフロア部3と、該フロントフロア部3から車体後方側へ傾斜するように延びるキックアップ部5と、その後方のリアフロア部7と、サイドドア(図示せず)の後で、車両上下方向へ延出され、車両の両側面を構成する左右のサイドパネル8とを備えている。
【0031】
上記車両の後部車体補強構造2は、上記左右のサイドパネル8と、各サイドパネル8に設けられ、開閉可能な格納式屋根(図示せず)のリンク部材9を支持するリンクブラケット10を備えている。このリンクブラケット10は、このリンクブラケット10から後方へ延びるリンク部材9を介してオープンカーの幌(図示せず)を回動自在に支持するものである。
【0032】
また、上記車両の後部車体補強構造2は、キックアップ部5の上端部とリアフロア部7との境界のクロスメンバ6上に、リンクブラケット10よりも車幅方向内側に位置して左右リンクブラケット10を連結するように配置されるクロスバー部材11を備えている。このクロスバー部材11は、シートの後方においてオープンカーのベルトライン12下方に車幅方向に延び、上方に向かって略逆U字状に突出する2つのロールバー部材13を備えている。このクロスバー部材11は、その両端部が平面視略L字状の連結部材20を介し、リンクブラケット10に取り付けられている。
【0033】
上記各ロールバー部材13は、鋼製の丸パイプを略逆U字状に折り曲げて形成したものであり、そのサイドパネル8側の下端部は上記クロスバー部材11を貫通して他方の下端部よりも下側に延びた延設部13aを形成している。上記クロスバー部材11の上壁部及び下壁部には、それぞれ上記ロールバー部材13の外径よりも若干大きいロールバー挿通孔11aが設けられ、サイドパネル8側のロールバー挿通孔11aに対応する前壁部には、それぞれ2つのボルト挿通孔(図示せず)が設けられている。すなわち、ロールバー部材13のサイドパネル8側は、上記クロスバー部材11のロールバー挿通孔11aに挿通された状態で上記ボルト挿通孔に通したボルト50によってクロスバー部材11に締結されていると共に、ロールバー挿通孔11aにおいてクロスバー部材11と溶接されている。一方、ロールバー部材13の車幅方向内側の下端部は、上記クロスバー部材11の上壁部側のロールバー挿通孔11aにのみ挿通され、該ロールバー挿通孔11aにおいてクロスバー部材11と溶接されている。
【0034】
上記各ロールバー部材13の延設部13aの下端部には、略三角形状の取付ブラケット13bが溶着されている。この取付ブラケット13bは、上記シート後方のクロスメンバ6に3本のボルト50で締結固定されている。
【0035】
なお、上記各ロールバー部材13の延設部13aとサイドパネル8との間には、車幅方向に向かって延びるサイドバー14が設けられ、このサイドバー14によってサイドパネル8とロールバー部材13の延設部13aとが連結されている。
【0036】
そして、図2及び図3に示すように、本発明の特徴として、上記リンクブラケット10と連結部材20とは、略車幅方向へ延出されて互いに接した状態で連結される平面部16,21をそれぞれ有している。すなわち、リンクブラケット10の前端には、車幅方向内側に折り曲げられた平面部16が設けられている。この平面部16の車幅方向内側端部の上下方向略中央部には車幅方向内側へ突出する突出部16aが形成され、この突出部16aを挟むように上下に貫通孔16bが形成されている。一方、上記連結部材20の前端部にも、上記リンクブラケット10の平面部16に対応するように、車幅方向外側に折り曲げられた平面部21が形成されている。この平面部21にも上記リンクブラケット10の平面部16の貫通孔16bに対応するように貫通孔21aが形成されている。また、連結部材20の平面部21には、この平面部21から屈曲し、平面部21に対して略垂直に後方へ延びる屈曲部22が連続して形成されている。この平面部21と屈曲部22との角部には、上記リンクブラケット10の突出部16aに対応する位置に平面部21と屈曲部22とにわたって略矩形状に切り欠かれた切り欠き部23が形成されている。この屈曲部22側の切り欠き部23における上下方向に延びる開口端部23aが本実施形態の規制手段を構成している。つまり、リンクブラケット10の平面部16が連結部材20の平面部21に接した状態で、リンクブラケット10の平面部16の突出部16aの裏面が上記開口端部23aに当接している。図4に示すように、この開口端部23aは、平面視で連結部24における両平面部16,21が互いに当接している当接面よりも車幅方向内側にオフセットして設けられている。
【0037】
上記連結部材20には、連結部24から連結部材20の後方へ延びる略閉断面形状の剛性部材としての角パイプ25が配置されている。この角パイプ25は、平面視で後方へ延びた後、車幅方向内側に向かって折り曲げられるように湾曲している。この角パイプ25の湾曲した後端側を後方から覆うように、車幅方向内側へ延びる水平部材26が角パイプ25に連結されている。この水平部材26の車幅方向内側端部には、後方へ折れ曲がる取付部26aが設けられ、この取付部26aには、上記クロスバー部材11に連結される2本のピン部材26bが車幅方向内側へ突出するように設けられている。
【0038】
上記角パイプ25と水平部材26とで形成された角部の内側には、上面にボルト孔27aを有したアンカー部27が設けられている。このアンカー部27のボルト孔27aの裏面には、図示しないウェルドナットが溶接されている。また、このアンカー部27の前面には、上下にボルト挿通孔27bが設けられ、このボルト挿通孔27bの裏面に図示しないウェルドナットが溶接されている。また、アンカー部27と角パイプ25とで形成された角部をコ字状断面でかつ平面視三角形状の補強板28が覆って連結部材20が補強されている。このような構成により、連結部材20の重心は、上記リンクブラケット10との連結部24よりも車両後方へ偏心している。
【0039】
このように上記開口端部23aは、リンクブラケット10と連結部材20との仮組状態で上記連結部材20の偏心方向への倒れを規制するように構成されている。
【0040】
上記リンクブラケット10及び連結部材20の平面部16,21は、開口端部23aの上方及び下方にそれぞれ形成された貫通孔21a,16bに締結部材51が挿入されて締結されることで、リンクブラケット10と連結部材20とが連結されるようになっている。
【0041】
図5に示すように、上記アンカー部27のボルト孔27aには、シートベルト装置としてのシートベルトアンカ29が装着される。このシートベルトアンカ29には、キックアップ部5下側の開口部5aに装着されたシートベルトリトラクタ30から延びるシートベルト31が挿通され、乗員の肩口から座席シートまで延ばされるようになっている。
【0042】
−車両の後部車体補強構造の組み付け手順−
次に本実施形態にかかる車両の後部車体補強構造2の組み付け手順について説明する。
【0043】
まず、リンクブラケット10は、左右のサイドパネル8に取り付けられており、さらに、ロールバー部材13が組み付けられたクロスバー部材11を用意しておく。
【0044】
次に、リンクブラケット10に連結部材20を締結する。このとき、まず、連結部材20の平面部21の切り欠き部23にリンクブラケット10の平面部16の突出部16aを挿入させながら、連結部材20をリンクブラケット10に仮組みする。すると、両平面部21,16が当接すると共に、突出部16a裏面が切り欠き部23の開口端部23aに当接し、連結部材20がリンクブラケット10に安定して保持される。
【0045】
次いで、締結部材51を両平面部21,16の貫通孔21a,16bに締結部材51を前方から挿入して締結することで、連結部材20がリンクブラケット10に連結されるようになっている。つまり、このとき、上下の各締結部材51を交互に徐々に締め付けながら連結部材のゆがみを調整したり、連結部材20の重心側を支えて位置合わせしながら締結したりする必要はない。
【0046】
最後に左右のリンクブラケット10に連結された連結部材20にサブ組み立てされたクロスバー部材11を組み付ける。
【0047】
−実施形態の効果−
したがって、本実施形態によると、連結部材20に設けた開口端部23aにより、リンクブラケット10と連結部材20との仮組状態で連結部材20の偏心方向への倒れを規制している。このため、リンクブラケット10と連結部材20とを連結する際に、連結部材20に浮き上がりが生じることはないので、特別な治具を使用したり、連結部材20の重心側を支えなくても、容易に精度よく連結を行うことができる。
【0048】
また、本実施形態では、リンクブラケット10の平面部16と連結部材20の平面部21との当接部と、屈曲部22の開口端部23aと他方の平面部16の突出部16aの裏面との当接部との2カ所で当接させてリンクブラケット10と連結部材20とを2点で支持するようにしている。このため、さらに容易に精度よくリンクブラケット10と連結部材20との連結を行うことができる。
【0049】
また、本実施形態では、連結部24と、この連結部24における両平面部16,21の当接部分よりも車幅方向にオフセットした開口端部23aとの2点で連結部材20の重力を支持している。このため、連結部24に掛かる車幅方向内側回りのモーメントも開口端部23aによって確実に支持することができる。
【0050】
また、本実施形態では、両平面部16,21を開口端部23aの上方及び下方で締結される締結部材51により前後方向に締結している。このため、開口端部23aによってリンクブラケット10と連結部材20とが仮組状態で確実に支持されるので、上下のいずれの締結箇所から締結を始めても連結部24で確実に締結を行うことができ、締結作業が極めて容易となる。
【0051】
また、本実施形態では、リンクブラケット10から伝達されたサイドパネル8からの側突荷重を剛性の高い連結部材20の角パイプ25によってクロスバー部材11に伝達するようにしている。このため、連結部材20の質量が大きくなって偏心が生じ易くなっても、開口端部23aによって連結部材20の偏心方向への倒れが規制されるので、連結部材20をリンクブラケット10に容易に連結することができる。
【0052】
また、本実施形態では、連結部材20の連結部24よりも偏心方向にシートベルトアンカ29を配置し、シートベルト31に掛かった引っ張り荷重を開口端部23aによっても支持している。このため、シートベルト31に掛かった荷重を連結部材20によって確実に支持することができる。
【0053】
また、本実施形態では、車両横転時などにロールバー部材13に掛かった荷重を連結部材20の偏心方向への倒れを規制する開口端部23aによっても支持している。このため、開口端部23aが、横転時のクロスバー部材11の倒れを防いで乗員を確実に保護する役割も果たすことができる。
【0054】
(その他の実施形態)
本発明は、上記実施形態について、以下のような構成としてもよい。
【0055】
すなわち、上記実施形態では、規制手段を連結部材20の屈曲部22側の切り欠き部23における上下方向に延びる開口端部23aとしているが、例えば、連結部材20の平面部21の上下端部を後方に折り曲げるように延長して規制手段とし、この規制手段によってリンクブラケット10の平面部16を挟み込むようにしてもよい。
【0056】
また、上記実施形態では、平面部21と屈曲部22との角部のリンクブラケット10の突出部16aに対応する位置に平面部21と屈曲部22とにわたって略矩形状に切り欠かれた切り欠き部23を形成しているが、この切り欠き部は、上方又は下方に開放された切り欠きでもよい。
【0057】
さらに、上記実施形態では、連結部材20の重心を車両後側へ偏心したものとしたが、車両前側へ偏心させてもよい。
【0058】
なお、以上の実施形態は、本質的に好ましい例示であって、本発明、その適用物や用途の範囲を制限することを意図するものではない。
【産業上の利用可能性】
【0059】
以上説明したように、本発明は、オープンカーなどの開閉可能な格納式屋根を有する車両の後部車体補強構造について有用である。
【図面の簡単な説明】
【0060】
【図1】本発明の実施形態にかかる車両の後部車体補強構造を備えた車体を示す斜視図である。
【図2】リンクブラケットと連結部材とを示す拡大斜視図である。
【図3】連結部を拡大して示す斜視図である。
【図4】図3のIV−IV線拡大断面図である。
【図5】シートベルトアンカ周辺を示す平面図である。
【符号の説明】
【0061】
2 後部車体補強構造
8 サイドパネル
9 リンク部材
10 リンクブラケット
11 クロスバー部材
13 ロールバー部材
16,21 平面部
22 屈曲部
23 切り欠き部
23a 開口端部(規制手段)
24 連結部
25 角パイプ(剛性部材)
29 シートベルトアンカ(シートベルト装置)
51 締結部材

【特許請求の範囲】
【請求項1】
車両上下方向へ延出され、車両の両側面を構成するサイドパネルと、該各サイドパネルに設けられ、開閉可能な格納式屋根のリンク部材を支持するリンクブラケットと、該リンクブラケットよりも車幅方向内側に位置して左右リンクブラケットを連結するように配置されるクロスバー部材と、該クロスバー部材とリンクブラケットとを連結する連結部材とを備えた車両の後部車体補強構造であって、
上記連結部材の重心は、上記リンクブラケットとの連結部よりも車両前方又は車両後方へ偏心し、
上記リンクブラケットと連結部材とは、略車幅方向へ延出されて互いに接した状態で連結される平面部をそれぞれ有すると共に、リンクブラケットと連結部材との少なくとも一方には、該リンクブラケットと連結部材との仮組状態で上記連結部材の偏心方向への倒れを規制する規制手段が設けられていることを特徴とする車両の後部車体補強構造。
【請求項2】
請求項1に記載の車両の後部車体補強構造において、
上記規制手段は、リンクブラケット又は連結部材の一方の平面部に連続し、該平面部から屈曲された屈曲部に設けた切り欠き部における上下方向に延びる開口端部からなり、上記一方の平面部が他方の平面部に接した状態で他方の平面部の裏面が上記開口端部に当接していることを特徴とする車両の後部車体補強構造。
【請求項3】
請求項2に記載の車両の後部車体補強構造において、
上記開口端部は、平面視で上記連結部における両平面部の当接部分よりも車幅方向にオフセットして設けられていることを特徴とする車両の後部車体補強構造。
【請求項4】
請求項1乃至3のいずれか1つに記載の車両の後部車体補強構造において、
上記両平面部は、規制手段の上方及び下方で締結される締結部材により前後方向に締結されることを特徴とする車両の後部車体補強構造。
【請求項5】
請求項1乃至4のいずれか1つに記載の車両の後部車体補強構造において、
上記連結部材には、連結部から連結部材の偏心方向へ延びる略閉断面形状の剛性部材が配置されていることを特徴とする車両の後部車体補強構造。
【請求項6】
請求項1乃至5のいずれか1つに記載の車両の後部車体補強構造において、
上記連結部材の連結部よりも上記偏心方向には、シートベルト装置が配置されていることを特徴とする車両の後部車体補強構造。
【請求項7】
請求項1乃至6のいずれか1つに記載の車両の後部車体補強構造において、
上記クロスバー部材には、上方へ突出するロールバー部材が設けられていることを特徴とする車両の後部車体補強構造。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【公開番号】特開2006−168672(P2006−168672A)
【公開日】平成18年6月29日(2006.6.29)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2004−367583(P2004−367583)
【出願日】平成16年12月20日(2004.12.20)
【出願人】(300084421)ジー・ピー・ダイキョー株式会社 (50)
【出願人】(000003137)マツダ株式会社 (6,115)
【Fターム(参考)】