説明

車両の衝撃吸収構造

【課題】車両衝突時の入力を車輪を利用して効率よく車体構造材に逃がすことができ、もって十分な衝撃吸収作用を達成できる車両の衝撃吸収構造を提供する。
【解決手段】バンパリンフォース5の端部後面に前部エアバッグ15を設け、サイドシル12の前面に後部エアバッグ16を設け、車両前突時に両エアバッグ15,16を作動させる。障害物に対して車両が車幅方向に大きくオフセットした衝突形態では、衝突による衝撃がバンパリンフォース5の端部に集中するが、この衝突による入力をバンパリンフォース5の端部から前部エアバッグ15のエアバッグ本体15aを介して前輪8に伝達して、サスペンションを介してサイドメンバ1に逃がすと共に、前輪8から後部エアバッグ16のエアバッグ本体16aを介してサイドシル12に逃がす。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は車両の衝撃吸収構造に係り、詳しくは障害物に対して車幅方向に大きくオフセットした衝突形態を想定して、車輪を介して衝突による入力を車体構造材に逃がすことにより衝撃を吸収する衝撃吸収構造に関するものである。
【背景技術】
【0002】
車両の衝突形態には種々のものがあり、その中には相手車両等の障害物に対して車幅方向に大きくオフセットした前突や後突がある。この種の衝突形態では自車両と障害物とのラップ量が小さいことから、肝心のサイドメンバは直接的に障害物と衝突することなく、より車幅方向外側に位置するバンパリンフォースの端部が障害物と衝突して片持ち支持的に変形するだけのため、衝撃吸収作用に関して改良の余地があった。
【0003】
そこで、この種の衝突形態を想定した対策として、前突時の入力を車輪に伝達することにより衝撃吸収作用を得るものが提案されている(例えば、特許文献1参照)。当該特許文献1の技術では、バンパリンフォースの両端後面に板金製のタイヤ荷重伝達部材を取り付け、バンパリンフォースの後方への変形に伴って前突時の入力をタイヤ荷重伝達部材を介して車輪側に逃がして衝撃吸収作用を得ている。
【特許文献1】特開2005−119537号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
しかしながら、上記特許文献1のタイヤ荷重伝達部材を用いた衝撃吸収構造では、以下に述べる問題がある。
前突時の入力を車輪に伝達したときの衝撃吸収作用は、入力を車輪からサスペンションを介してサイドメンバなどの車体構造材に逃がすことで発揮されるため、高い衝撃吸収作用を得るには、タイヤ荷重伝達部材を車輪中心、即ち十分な剛性を有するホイール部に衝突させて効率よく入力伝達する必要がある。
【0005】
ところが、特許文献1の発明では、車輪の操舵や上下動を妨げない程度のクリアランスを確保するようにタイヤ荷重伝達部材が設置されるため、クリアランス相当だけタイヤ荷重伝達部材が空走した後に車輪に衝突することになる。そして、空走中のタイヤ荷重伝達部材の挙動は、衝撃を入力したときのバンパリンフォースの後方への変形状態に依存し、その挙動に応じて車輪に対するタイヤ荷重伝達部材の衝突位置が変動してしまう。
【0006】
しかも、一般的にバンパリンフォースは他車や歩行者との衝突を考慮して車輪中心より高い位置に設置されるため、元々タイヤ荷重伝達部材は車輪中心よりも高い位置に衝突し易い。これらの要因により、タイヤ荷重伝達部材を車輪の最適位置(例えば、車輪中心)に確実に衝突させて効率よく入力伝達することは困難であった。加えて、板金製のタイヤ荷重伝達部材は変形し難いため車輪との当接面積が小さく、この点も車輪への効率的な入力伝達を妨げる要因になっている。
【0007】
このように特許文献1の衝撃吸収構造では前突時の入力を効率よく車輪に伝達できないため、必然的に入力を車体構造材に逃がして十分な衝撃吸収作用を得ることができないという問題があった。
本発明はこのような問題点を解決するためになされたもので、その目的とするところは、車両衝突時の入力を車輪を利用して効率よく車体構造材に逃がすことができ、もって十分な衝撃吸収作用を達成することができる車両の衝撃吸収構造を提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0008】
上記目的を達成するため、請求項1の発明は、車両のタイヤハウス内に設けられて、車輪とバンパリンフォースの端部との間または車輪とサイドシルとの間の少なくとも一方の領域でエアバッグ本体を展開可能なエアバッグと、車両の衝突時の衝撃を検出してエアバッグを作動させるエアバッグ作動手段とを備えたものである。
障害物に対して車両が車幅方向の何れかに大きくオフセットした衝突形態では、衝突による衝撃がバンパリンフォースの端部に集中するため、端部が片持ち支持的に車輪に向けて変形し始める。衝突時の衝撃を検出したエアバッグ作動手段はエアバッグを作動させてエアバッグ本体を展開させる。例えば車輪とバンパリンフォースの端部との間の領域でエアバッグ本体が展開したときには、衝突時の入力がバンパリンフォースの端部及びエアバッグ本体を介して車輪に伝達され、車輪を支持するサスペンションを介してサイドメンバ等の車体構造材に逃がされる。また、車輪とサイドシルとの間の領域でエアバッグ本体が展開したときには、バンパリンフォースの変形に伴って車輪に伝達された入力がエアバッグ本体を介してサイドシル等の車体構造材に逃がされ、何れの場合も衝撃吸収作用が奏される。
【0009】
そして、エアバッグ本体を展開させて衝突時の入力を伝達することから、バンパリンフォースが車輪に向けて変形するときの状態や車輪がサイドシルに向けて変形するときの状態に依存することなく、エアバッグ本体の展開形状に応じて車輪への当接位置を任意に設定可能となる。よって、バンパリンフォースと車輪との高低差や車輪とサイドシルとの高低差を考慮した上で、車輪の最適位置、例えば高い剛性のホイール部が位置する車輪中心にエアバッグ本体が当接するようにエアバッグ本体の展開形状を設定し、これにより車両衝突時の入力を車輪を利用して効率よく伝達可能となる。また、展開したエアバッグ本体は柔軟性を有するため、車輪に対して広い面積をもって当接し、この要因も効率的な入力伝達に貢献する。
【0010】
請求項2の発明は、請求項1において、エアバッグがバンパリンフォースの端部の車輪への対向面に配設されて、車輪とバンパリンフォースとの間の領域でエアバッグ本体を展開するものである。
従って、車両衝突時にはバンパリンフォースの端部のエアバッグがエアバッグ作動手段により展開し、車輪とバンパリンフォースの端部との間の領域でエアバッグ本体が展開する。
【0011】
請求項3の発明は、請求項1において、エアバッグがサイドシルの車輪への対向面に配設されて、車輪とサイドシルとの間の領域でエアバッグ本体を展開するものである。
従って、車両衝突時にはサイドシルのエアバッグがエアバッグ作動手段により展開し、車輪とサイドシルとの間の領域でエアバッグ本体が展開する。
請求項4の発明は、請求項1において、エアバッグがタイヤハウスの上部に設けられ、車輪とバンパリンフォースの端部との間の領域及び車輪とサイドシルとの間の領域でエアバッグ本体を展開するものである。
【0012】
従って、車両衝突時にはタイヤハウスの上部のエアバッグがエアバッグ作動手段により展開し、車輪とバンパリンフォースの端部との間の領域及び車輪とサイドシルとの間の領域でエアバッグ本体が展開する。
【発明の効果】
【0013】
以上説明したように本発明の車両の衝撃吸収構造によれば、車両衝突時の入力を車輪を利用して効率よく車体構造材に逃がすことができ、もって十分な衝撃吸収作用を達成することができる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0014】
以下、本発明を具体化した車両の衝撃吸収構造の一実施形態を説明する。
図1は本発明の衝撃吸収構造が適用された車両の前部を示す側面図、図2は同じく衝撃吸収構造が適用された車両の前部を示す平面図である。なお、これらの図は主に車体構造材の相互関係を示しており、フロントフェンダー、ドア、ボンネット等の外装材は省略されている。
【0015】
車両の前部には、左右方向(車幅方向)に所定間隔をおいて一対のフロントサイドメンバ1が配設されている。両フロントサイドメンバ1は閉断面構造をなして車両後方に延設され、フロントサイドメンバ1の後端はダッシュパネル2の下部に接続されると共に、フロア3の下面に設けられたサイドメンバ4に連続している。両フロントサイドメンバ1の前端には左右方向に延設されたバンパリンフォース5が固定され、バンパリンフォース5の後側において両フロントサイドメンバ1間にはフロントエンドクロスメンバ6が固定されている。
【0016】
左右のフロントサイドメンバ1の上方にはアッパフレーム7がそれぞれ配設され、両アッパフレーム7の前端はフロントエンドクロスメンバ6の上部の左右両側に接続されている。両アッパフレーム7は後方に延設されてダッシュパネル2の上部に接続され、このダッシュパネル2によりエンジンルームE1と車室E2とが区画されている。また、左右のアッパフレーム7とフロントサイドメンバ1との間には図示しないインナパネルがそれぞれ形成され、このインナパネルによりエンジンルームE1の左右両側にタイヤハウスE3が区画されている。
【0017】
エンジンルームE1内には図示しないエンジンが搭載され、エンジンはエンジンマウントを介してフロントサイドメンバ1上に固定されている。タイヤハウスE3内には図示しないサスペンションに支持されて前輪8が収容され、サスペンションのロアアームの基端は、両フロントサイドメンバ1間に架設されたサスペンションメンバ9に連結され、サスペンションのストラットの上部はアッパフレーム7に連結されている。
【0018】
アッパフレーム7の後端はダュシュパネル2の箇所でAピラーアッパ10及びAピラーロア11に接続され、Aピラーアッパ10は後方斜め上方に延設されてルーフと連続している。また、Aピラーロア11はダッシュパネル2の左右両側に沿って下方に延設されて、フロア3の左右両側で閉断面構造をなすサイドシル12の前端と接続されている。
バンパリンフォース5の左右両端の後面には前輪8と相対向するように前部エアバッグ15が設けられ、左右のサイドシル12の前面には同じく前輪8と相対向するように後部エアバッグ16が設けられている。これらのエアバッグ15.16は、乗員保護を目的としてステアリング17に備えられた運転席エアバッグ18と同じく、内蔵したインフレータから噴射されるガス圧を利用して図1,2に示すようにエアバッグ本体15a,16aを展開し、且つ展開直後にガス圧をベントホールから逃がして収縮するように構成されており、展開時には前輪8のタイヤ外周面に前方及び後方から当接する。また、エアバッグ本体15a,16aの材質も運転席用エアバッグ18と同様の一般的なものが選択されている。
【0019】
ここで、図1に示すように、前部エアバッグ15のエアバッグ本体15aは略水平から下方に亘る領域で展開するように形状設定されている。また、後部エアバッグ16のエアバッグ本体16aは上方及び下方に亘る領域で展開するが、下方に比較して上方に大きく展開するように形状設定されている。
前部エアバッグ15、後部エアバッグ16及び運転席エアバッグ18はエアバッグコントローラ19に接続され、エアバッグコントローラ19は車両の前後方向の加速度を検出する加速度センサ20に接続されている。本実施形態では、これらのエアバッグコントローラ19及び加速度センサ20によりエアバッグ作動手段が構成されている。
【0020】
本実施形態の車両の衝撃吸収構造は以上のように構成されており、次に車両前突時の前部エアバッグ15及び後部エアバッグ16の展開状況について説明する。
基本的に前部エアバッグ15及び後部エアバッグ16は、ステアリングホイール17の運転席エアバッグ18と連動して同一タイミングで作動する。車両の前突は加速度センサ20からの信号に基づきエアバッグコントローラ19により判定され、前突判定時にはエアバッグコントローラ19により運転席エアバッグ18のインフレータが作動してガス圧により運転席エアバッグ18が展開して乗員保護を図るが、このとき同時に、エアバッグコントローラ19は前部エアバッグ15及び後部エアバッグ16のインフレータも作動させ、それぞれのエアバッグ15,16のエアバッグ本体15a,16aを展開させる。
【0021】
そして、前部エアバッグ15及び後部エアバッグ16が展開した時点では、前突により車両の最前部に位置するバンパリンフォース5は変形し始めた段階にあり、未だ前輪8との間には十分なクリアランスが確保されている。以下、図2に示すように、障害物A(例えば、相手車両)に対して自車が右側に大きくオフセットして前突したものとして説明を続けると、前突による衝撃は主にバンパリンフォース5の左端に集中するため、左端が片持ち支持的に後方に変形し始める。前部エアバッグ15及び後部エアバッグ16を装備しない場合であれば、バンパリンフォース5の左端が前輪8とのクリアランス相当だけ空走した後に前輪8に衝突し、さらに前輪8が後方に押されてサイドシル12とのクリアランス相当だけ空走した後にサイドシル12に衝突するのであるが、これに先行するバンパリンフォース5の変形初期において前部エアバッグ15及び後部エアバッグ16のエアバッグ本体15a,16aの展開が完了し、前部エアバッグ15のエアバッグ本体15aは前方より前輪8のタイヤ外周面に当接し、後部エアバッグ16のエアバッグ本体16aは後方より前輪8のタイヤ外周面に当接する。
【0022】
結果として、バンパリンフォース5の左端と前輪8のタイヤ外周面との間には前部エアバッグ15のエアバッグ本体15aが隙間無く介在し、前輪8のタイヤ外周面と車両左側のサイドシル12との間には後部エアバッグ16のエアバッグ本体16aが隙間無く介在する。このため、前突による衝撃の入力はバンパリンフォース5の左端及び前部エアバッグ15のエアバッグ本体15aを介して前輪8に伝達されて、サスペンションのロアアームやストラットを介してサスペンションメンバ9、フロントサイドメンバ1、アッパフレーム7等の車体構造材に逃がされると共に、前輪8から後部エアバッグ16のエアバッグ本体16aを介して車両左側のサイドシル12等の車体構造材に逃がされ、これにより衝撃吸収作用が奏される。
【0023】
このときの前輪8のタイヤ外周面に対するエアバッグ本体15a,16aの当接はエアバッグ本体自体の展開によるものであり、特許文献1のタイヤ荷重伝達部材のようにバンパリンフォースの後方への変形に伴ってタイヤ外周面に当接するものとは全く異なる。この相違により、本実施形態ではバンパリンフォース5の変形状態に依存することなく、エアバッグ本体15a,16aの展開形状に応じて前輪8への当接位置を任意に設定可能となる。ここで、バンパリンフォース5から前輪8に、さらには前輪8からサイドシル12に効率よく入力を伝達するには、前輪8の中心Cに位置する剛性の高いホイール部8aを介して行うのが望ましく、一方、前輪中心Cに対してバンパリンフォース5の上下位置は高く、前輪中心Cに対してサイドシル12の上下位置は低い。
【0024】
そこで、上記のように前部エアバッグ15のエアバッグ本体15aは略水平から下方に亘る領域で展開するように形状設定され、後部エアバッグ16のエアバッグ本体16aは下方に比較して上方に大きく展開するように形状設定されており、これにより何れのエアバッグ本体15a,16aも前輪中心Cの高さを基準として上方及び下方に略均等な長さL(換言すれば、略均等な面積)をもって当接する。しかも、エアバッグ本体15a,16aの当接状態がバンパリンフォース5の後方への変形状態や前輪8の後方への変形状態に依存しないことから、前突状況に応じてバンパリンフォース5や前輪8がどのように変形しても、その影響を受けることなくエアバッグ本体15a,15bは常に前輪8に対して所期の当接状態となる。従って、前輪8の中心Cに位置するホイール部8aを介して、バンパリンフォース5から前輪8への入力伝達、及び前輪8からサイドシル12への入力伝達が共に効率よく行われ、もって、前突時の衝撃による入力を効率的に車体構造材に逃がして、十分な衝撃吸収作用を達成することができる。
【0025】
なお、前輪8に対するエアバッグ本体15a,16aの当接は必ずしも上方及び下方に均等化する必要はなく、前輪中心Cに対して上方に位置する前部エアバッグ15は主に下方に向けてエアバッグ本体15aを展開させ、前輪中心Cに対して下方に位置する後部エアバッグ16は主に上方に下方に向けてエアバッグ本体16aを展開させるように形状設定すればよい。
【0026】
加えて、展開したエアバッグ本体15a,16aは柔軟性を有するため、例えば特許文献1の板金製のタイヤ荷重伝達部材に比較して、遥かに広い面積をもって前輪8のタイヤ外周面に当接し、この要因も効率的な入力伝達に貢献する。
しかも、前部エアバッグ15及び後部エアバッグ16のエアバッグ本体15a,16aは展開直後に収縮するため、前突時の車体変形によりバンパリンフォース5と前輪8との間のクリアランス、及び前輪8とサイドシル12との間のクリアランスが縮小する過程では、それに合せてそれぞれのエアバッグ本体15a,16aが収縮して衝撃吸収作用を奏し、これにより前突時の衝撃を一層効率的に吸収できる。
【0027】
また、特許文献1のタイヤ荷重伝達部材は、前突時の入力伝達に耐え得るだけの強度確保によりかなりの重量を有したが、本実施形態ではガス圧を利用して展開したエアバッグ本体15a,16aにより入力伝達する原理のため、エアバッグ本体自体はタイヤ荷重伝達部材に比較して遥かに軽量であり、インフレータ等の付属機器を含めた総合的な重量でも、特許文献1のタイヤ荷重伝達部材に比較して遥かに軽量なものとなる。よって、車両の軽量化に貢献するという効果も得られる。
【0028】
以上で実施形態の説明を終えるが、本発明の態様はこの実施形態に限定されるものではない。例えば、上記実施形態ではオフセット大の前突を想定して前輪8に対してエアバッグ15,16を設けた衝撃吸収構造として具体化したが、同様の原理を後輪(車輪)に適用することによりオフセット大の後突(主に自車に対する後続車の追突)に対応することもできる。具体的には、リア側のバンパリンフォースの前面及びサイドシル12の後面にそれぞれエアバッグを設けて後突時に展開させ、後突時の入力をエアバッグを介して後輪からサスペンションを経てサイドメンバ等に逃がしたり、或いは後輪からエアバッグを介してサイドシルに逃がしたりする。この場合でも、エアバッグを利用することにより上記実施形態と同様の種々の利点を得ることができる。
【0029】
また、上記実施形態では、前輪8の前後で前部エアバッグ15及び後部エアバッグ16を展開させたが、必ずしも双方のエアバッグ15,16を要することはなく、何れか一方のエアバッグ15,16を設けるだけでもよい。例えば前部エアバッグ15のみを設けた場合にはバンパリンフォース5から前輪8に効率よく入力を伝達でき、後部エアバッグ16のみを設けた場合には前輪8からサイドシル12に効率よく入力を伝達でき、何れの場合でも特許文献1のタイヤ荷重伝達部材と比較すると十分な作用効果が得られる。
【0030】
また、上記実施形態では、前部エアバッグ15及び後部エアバッグ16を独立して設けたが、図3に示すように、双方の機能を兼用する単一のエアバッグ31をタイヤハウスE3の上部(図ではアッパフレーム7)に設けてもよい。この場合のエアバッグ31は、上方より前輪8の前側及び後側に向けて展開するようにエアバッグ本体31aの形状を設定すればよく、この場合でも上記実施形態と同様の作用効果が得られる。
【0031】
また、上記実施形態では、運転席エアバッグ18と同一タイミングで前部エアバッグ15及び後部エアバッグ16を展開させたが、異なるタイミングで展開させてもよい。例えば前突により車両最前部に位置するバンパリンフォース5は直ちに変形するが、これに対して運転者の頭部が慣性で前方移動するのは僅かに遅れることから、運転席エアバッグ18の展開に対して先行したタイミングで前部エアバッグ15及び後部エアバッグ16を展開させるようにしてもよい。
【0032】
また、上記説明から明らかなように、前部エアバッグ15及び後部エアバッグ16の機能としては、前突時の衝撃吸収作用よりも前輪8やサイドシル12への入力伝達作用の方がより強く要求される。そして、効率的な入力伝達を実現するには展開時のエアバッグ本体の剛性を向上させることが望ましいため、この点を鑑みて一般的なエアバッグ本体の材質に比較して展開時により高い剛性となる材質を適用してもよい。
【図面の簡単な説明】
【0033】
【図1】本発明の衝撃吸収構造が適用された車両の前部を示す側面図である。
【図2】同じく本発明の衝撃吸収構造が適用された車両の前部を示す平面図である。
【図3】別例の衝撃吸収構造が適用された車両の前部を示す側面図である。
【符号の説明】
【0034】
5 バンパリンフォース
8 前輪(車輪)
12 サイドシル
15 前部エアバッグ
15a エアバッグ本体
16 後部エアバッグ
16a エアバッグ本体
19 エアバッグコントローラ(エアバッグ作動手段)
20 加速度センサ(エアバッグ作動手段)

【特許請求の範囲】
【請求項1】
車両のタイヤハウス内に設けられて、車輪とバンパリンフォースの端部との間または該車輪とサイドシルとの間の少なくとも一方の領域でエアバッグ本体を展開可能なエアバッグと、
上記車両の衝突時の衝撃を検出して上記エアバッグを作動させるエアバッグ作動手段と
を備えたことを特徴とする車両の衝撃吸収構造。
【請求項2】
上記エアバッグは上記バンパリンフォースの端部の上記車輪への対向面に配設されて、該車輪とバンパリンフォースとの間の領域でエアバッグ本体を展開することを特徴とする請求項1記載の車両の衝撃吸収構造。
【請求項3】
上記エアバッグは上記サイドシルの上記車輪への対向面に配設されて、該車輪とサイドシルとの間の領域でエアバッグ本体を展開することを特徴とする請求項1記載の車両の衝撃吸収構造。
【請求項4】
上記エアバッグは上記タイヤハウスの上部に設けられ、上記車輪と上記バンパリンフォースの端部との間の領域及び該車輪と上記サイドシルとの間の領域でエアバッグ本体を展開することを特徴とする請求項1記載の車両の衝撃吸収構造。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【公開番号】特開2008−195261(P2008−195261A)
【公開日】平成20年8月28日(2008.8.28)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2007−33377(P2007−33377)
【出願日】平成19年2月14日(2007.2.14)
【出願人】(000006286)三菱自動車工業株式会社 (2,892)
【Fターム(参考)】