説明

車両の車体構造

【課題】全長が短い3座シートの車両の車体構造を提供する。
【解決手段】車室の左右両側に配置された左右ドア8と、これら左右ドアのいずれか一方の側から順に並べて車室フロア76上に配置された運転席62、第1同乗席64及び第2同乗席66と、これらの座席の後方の荷室フロア84とを有する車両の車体構造であって、運転席シートは、車体前後方向の前方に向けて指向し、少なくとも第1同乗席は、平面視で、その第1同乗席のシートの前部が運転席のシートの前部とは離れるように斜め方向に指向している。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、車両の車体構造に係り、特に、車幅方向に並ぶ3人分の座席とこれらの座席の後方の荷室とを有する車両の車体構造に関する。
【背景技術】
【0002】
近年、自動車業界においては、以前にも増して、燃費をより向上させることが要望されている。そのため、従来に比べさらに小型な車の必要性が高まってきている。
なお、前後のシートを3座づつ車幅方向に並べて乗員を乗せることが出来る車が以前から知られている(例えば特許文献1に記載の車両など)。
【0003】
【特許文献1】特開2004−066959号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
ここで、本発明者らは、上述した小型車両の要望に対し、使用目的を都市内での1〜3人での移動に特化した、つまり街乗り車(シティカー)について検討を行っている。さらに、このような街乗り車において、全長を例えば3m以下というように短くすることによって車体重量を大幅に軽減し、これによって燃費を向上させた車の実現性を検討している。
【0005】
そして、全長を短くするという制約内でいかに乗員を搭載するかを考えたとき、本発明者らは、3座のシートを車幅方向に並べ、その代わりに後席を無くせば、全長が短く且つ都市内移動に必要十分と考えられる最大3人乗車で数十分間の快適な移動が可能な車室内空間を有する街乗り用車両の実現性が高まるであろうことに着目した。
【0006】
一方、本発明者らは、全長をより確実に短くするために、車体の構造或いは各部のレイアウトを見直す必要に迫られていた。例えば、車幅方向に3座のシートを並べるために車両の横幅をむやみに大きくすることは、車重の増加や車両の取り回しの悪化につながってしまうことが問題となる。
【0007】
本発明は、上述した従来技術の問題点を解決するためになされたものであり、全長が短い3座シートの車両の車体構造を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0008】
上記の目的を達成するために本発明によれば、車室の左右両側に配置された左右ドアと、これら左右ドアのいずれか一方の側から順に並べて車室フロア上に配置された運転席、第1同乗席及び第2同乗席と、これらの座席の後方の荷室フロアとを有する車両の車体構造であって、運転席シートは、車体前後方向の前方に向けて指向し、少なくとも第1同乗席は、平面視で、その第1同乗席のシートの前部が運転席のシートの前部とは離れるように斜め方向に指向していることを特徴としている。
このように構成された本発明においては、第1同乗席に着座した同乗者の脚部は車幅方向外方に向けて斜め方向に延びることになるので、同乗者の脚部が運転席に着座した運転者の太股部と干渉することを防止することが出来る。そして、同乗者の脚部は車幅方向外方に向けて斜め方向に延びることにより、同乗者の脚部が、シフトレバー等の運転操作装置に干渉するのを防止することが出来る。これらのように構成されたシートアレンジによって、全長が短い3座シートの車両の車体構造を得ることが出来る。
【0009】
また、本発明において、好ましくは、第1同乗席は、側面視で、運転席に対して一部重複して後方側に配置されている。
このように構成された本発明においては、運転席の運転者と第1同乗席の同乗者との肩部の干渉を防止することが出来る。また、同乗席側から乗り込んだ運転者が運転席に移動し易くなる。
【0010】
また、本発明において、好ましくは、第2同乗席は、側面視で、第1同乗席に対して一部重複して後方側に配置されている。
このように構成された本発明においては、第1同乗席の同乗者と第2同乗席の同乗者との肩部の干渉を防止することが出来る。また、第2同乗席側から乗り込んだ同乗者が第1同乗席に移動し易くなる。
【0011】
また、本発明において、好ましくは、第1同乗席は、その第1同乗席を挟むように配置された運転席及び第2同乗席よりも幅が小さく形成されると共に平面視でその第1同乗席の前部が運転席とは離れるように車幅方向外側の斜め方向に指向し、第2同乗席は、車体前後方向の前方に向けて指向している。
このように構成された本発明においては、乗車機会の少ない3人目の乗員が第1同乗席に着座するように想定され、さらに、乗車機会の多い2人目の乗員が第2同乗席に着座するように想定される。そして、第2同乗席に着座した同乗者の居住性を有効に確保することが出来る。
【0012】
また、本発明において、好ましくは、車室フロアは、運転席、第1同乗席及び第2同乗席に着座した各乗員の足置き場となる第1フロアと、この第1フロアと連続し、その第1フロアの後方で第1フロアより立ち上がるキックアップ部と、このキックアップ部と連続し、そのキックアップ部より後方で第1フロアより高くなるように形成された第2フロアと、を有し、運転席、第1同乗席及び第2同乗席は、第2フロア上に配置され、キックアップ部は、運転席に対応する位置よりも第1同乗席及び第2同乗席に対応する位置の方が後方側に位置するように形成され、第2フロアの下部に、燃料タンク、バッテリ及びサイレンサのいずれか1つ或いは複数が配置される。
このように構成された本発明においては、運転席、第1同乗席及び第2同乗席が第2フロア上に配置されており、その第2フロアの下部に、燃料タンク、バッテリ及びサイレンサのいずれか1つ或いは複数が配置されるので、車体の空間を有効に利用して、より確実に、全長が短い3座シートの車両の車体構造を得ることが出来る。また、キックアップ部は、運転席に対応する位置よりも第1同乗席及び第2同乗席に対応する位置の方が後方側に位置するように形成されているので、運転席と、少なくとも第1同乗席(平面視でシート前部が運転席シート前部とは離れるように斜め方向に指向する)との配置に合わせてフロアのキックアップ部の形状を得やすくなると共に、運転者及び同乗者の足元空間を有効に確保することが出来る。
【発明の効果】
【0013】
本発明によれば、全長が短い3座シートの車両の車体構造を提供することが出来る。
【発明を実施するための最良の形態】
【0014】
以下、本発明の実施形態を添付図面を参照して説明する。図1は、本発明の車両の車体構造の第1実施形態を示す平面図であり、図2は、本発明の車両の車体構造の第1実施形態を示す斜視図であり、図3は、本発明の第1実施形態の主にフロア部の構造を説明するために車体構造の一部を示す斜視図である。
図1に示すように、車両1は車輪2を有し、後輪側では、その車輪2を収容するホイールハウス4が車室内に突出している。車両の左右両側には、前輪及び後輪の間で車体前後方向に延びるサイドシル6が形成されている。また、前後車輪間には、左右それぞれにサイドドア8が設けられている。なお、ドア8を、左右いずれか一方にのみ設けても良い。
【0015】
図2及び図3に示すように、車両1は、ダッシュパネル10、ダッシュロワパネル12、サイドシル6、ダッシュロワパネル12の左右両側部から上方に延びるAピラー14、サイドシル6の後端部から上方に延びるBピラー16、Cピラー18、ホイールハウス4、フロア部20などで構成されている。フロア部20の構成については後述する。
図1に示すように、車両の前方側には、フロントウインド22及びインストルメントパネル(以下、インパネと称する)24が設けられている。インパネ24の車幅方向左側部分からは、ステアリングコラム26が延び、その先端部にステアリングホイール28が取り付けられている。
【0016】
車両1のフロア部20の下部には、車幅方向のほぼ中央において車体前後方向に延びる排気管30が設けられており、その排気管30は、車体の後縁部に近い位置で車幅方向に延びるサイレンサ32に接続されている。また、フロア部20の下方には、燃料タンク34(図5参照)が設けられており、その燃料タンク34からは、車両斜め上方且つ車幅方向外方に向けてフィラーパイプ36が延びており、左側面から給油可能となっている。
【0017】
また、フロア部20の下方には、リアサスペンション40が配置されている。このリアサスペンション40を図4に示す。図4に示すように、リアサスペンション40は、トーションビーム式サスペンションとなっており、主に、車体に取り付けられるピボット部42、ピボット部42と車輪との間で延びるアーム部44、各アーム部の中間部同士を連結するように車幅方向に延びるトーションビームアクスル46、ショックアブソーバ48及び全体としてほぼ垂直方向に延びるコイルスプリング50で構成されている。ピボット部42は、リアサイドフレーム90の下面部に固定されている。
なお、車体前後方向に延びる排気管30は、車幅方向に延びるトーションビームアクスル46との干渉を防ぐために、トーションビームアクスル46をまたぐように上方に山なりに延びて形成されている。
【0018】
ここで、図3により、フロア部20の構造を説明する。
図3に示すように、フロア部20は、先ず、第1フロア70を有する。第1フロア70は、車体前後方向には、ダッシュロワパネル12の後縁部から、後述する第2フロア76のキックアップ部78の前縁部まで延び、車幅方向には各サイドシル6間で延びている。なお、フロントサイドフレーム92に接続されたフロアサイドフレーム94は、第1フロア70の前後方向の中間部分で、第1フロア70の下面に結合されて終端している。
【0019】
次に、フロア部20は、第2フロア76を有する。この第2フロア76は、主に、キックアップ部78及び上面部80で構成されている。キックアップ部78は、第1フロア70から連続するように形成され、第1フロア70の後縁部から上方に立ち上がるように形成されている。なお、図1及び図2において後述するように、この第2フロア76には、車幅方向左側の左ドア側から順に、運転席62、第1同乗席64及び第2同乗席66が設けられている。
【0020】
図3に示すように、キックアップ部78は、車幅方向には、各サイドシル6間で延びている。キックアップ部78は、平面視において、車幅方向左側の運転席62の下方では車幅方向にほぼ真っ直ぐ延びた後、若干後方に湾曲するように延びている。さらに、第1同乗席64の下方において、車体後方側に向けて湾曲して延びている。さらに、第2同乗席66の下方において、若干後方に湾曲するように延びた後、車幅方向にほぼ真っ直ぐ延びている。
上面部80の外形も、その前縁部ではキックアップ部78と同様に真っ直ぐ延び或いは湾曲して延びている。上面部80は、車幅方向には各サイドシル6間で延びている。なお、キックアップ部78は、運転席62の下方や第2同乗席66の下方において、全体的に湾曲するように構成しても良い。
【0021】
次に、フロア部20は、第3フロア84を有する。この第3フロア84は、主に、キックアップ部86及び上面部88で構成されている。キックアップ部86は、第2フロア上面部80から連続して、第2フロア上面部80の後縁部から上方に立ち上がるように形成されている。また、この第3フロア上面部88は、キックアップ部86の上縁部から連続して後方に延びている。この上面部88は、車両の後縁部まで延びている。
この第3フロア84の上方の空間且つ各座席62、64、66の後方側の空間は、荷室空間となっている。一方、第3フロア84の下部には、上述したリアサスペンション40及びサイレンサ32が配置されており、第3フロア84の下部空間を有効に利用している。
【0022】
ここで、図1に示すように、車両1の後方には、車体前後方向に延びるリアサイドフレーム90が設けられており、キックアップ部86はこれらのリアサイドフレーム90の間で車幅方向に延びている。各リアサイドフレーム90は、本実施形態では、その前縁部の車外側の側面部が各サイドシル6の後端部の車幅方向内方側の側面部と結合されている。
また、リアサイドフレーム90は、上方に開口した断面ハット状の形状(図示せず)を有し、その上部の左右両側に形成されたフランジ部(図示せず)が、後方から順に第3フロア88、キックアップ部86、上面部80のそれぞれの下面部に結合され且つ一体となったフレームとして構成されている。
【0023】
次に、図1、図3及び図5により燃料タンク34の構成を説明する。
図1及び図3に示すように、燃料タンク34は、第2フロア76の下部に配置されている。燃料タンク34自体を図5に示す。図3及び図5に示すように、先ず、燃料タンク34の立体形状は、第2フロア76の立体形状とほぼ同じに形成されている。即ち、図1に示す平面視では、燃料タンク34が第2フロア76のほぼ全域を占めるように第2フロア76の下方に配置されている。そして、図3及び図5に示すように、燃料タンク34の外面は、第2フロア76の上述したキックアップ部78、上面部80、各サイドシル6に沿ったものとなっている。即ち、燃料タンク34は第2フロア76の形状とほぼ相似する形状を有して、第2フロア76下部に配置されている。そして、本実施形態の場合、燃料タンク34の下方には、凹状部34aが形成され、全体として鞍型に形成されている。凹状部34aは車体前後方向に延び、その下方を車体前後方向に排気管30が通るようになっている。
【0024】
このように、第2フロア76の下部には、平面視、側面視及び正面視のいずれにおいても、第2フロア76のほぼ全域にわたって燃料タンク34が配置されており、第2フロア76の下部空間を有効に利用している。なお、燃料タンクと共にサイレンサを配置するようにしても良い。また、ハイブリット車の場合には、このような燃料タンクと共にバッテリを配置し、また、電気自動車の場合には、燃料タンクの代わりにバッテリを配置するようにしても良い。
【0025】
次に、図1及び図2により第2フロアの構成と各座席の構成との関係について説明する。
先ず、図1及び図2に示すように、車両1には、車幅方向の左側に配置され、ステアリングホイール28に対向して設けられた運転席62と、この運転席からは独立して設けられている2つの同乗席64、66が設けられている。これらの座席62、64、66は、いずれも、第2フロア76上に設けられている。そして、各座席62、64、66に着座した乗員は、第1フロア70に足を置くことになる。
【0026】
この第1実施形態では、運転席62と第2同乗席66とがほぼ同じ大きさ及び形状に形成され、一方、それらの座席に挟まれた第1同乗席64が、他の座席より幅が狭く形成されている。この第1同乗席64は、主に、子供を乗せたり、荷物を置いたりすることに向いている。
【0027】
上述したように、キックアップ部78は、平面視では、車幅方向左側の運転席62の下方では車幅方向にほぼ真っ直ぐ延びた後、若干後方に湾曲するように延びている。運転席62は、ほぼこれに沿って設けられている。即ち、運転席62のシート前縁部62aは、このキックアップ部78の上方で、キックアップ部78が延びる方向とほぼ一致するように、車幅方向にほぼ真っ直ぐ延びている。そして、運転席62自体は、車体前後方向の前方に向けて指向するように配置されている。
【0028】
次に、上述したように、キックアップ部78は、第1同乗席64の下方において、車体後方側に向けて湾曲して延びている。第1同乗席64は、ほぼこれに沿って設けられている。即ち、第1同乗席64のシート前縁部64aは、このキックアップ部78の上方で、キックアップ部78が延びる方向とほぼ一致するように、左側から右側に向かって斜め後方に延びるように配置されている。そして、第1同乗席64自体が、車体前後方向の前方に向いた方向に対して斜め方向に向いている。具体的には、第1同乗席64のシートクッションの前縁部64aが、平面視で、運転席62のシートクッションの前縁部62aとは離れるように、第1同乗席64が車幅方向右側の斜め方向に指向している。
【0029】
次に、上述したように、キックアップ部78は、第2同乗席66の下方において、若干後方に湾曲するように延びた後、車幅方向にほぼ真っ直ぐ延びている。第2同乗席66は、ほぼこれに沿って設けられている。即ち、第2同乗席66のシート前縁部66aは、このキックアップ部78の上方で、キックアップ部78が延びる方向とほぼ一致するように、車幅方向にほぼ真っ直ぐ延びている。第2同乗席66自体も、車体前後方向の前方に向けて指向するように配置されている。
【0030】
各シート62、64、66間の関係としては、側面視で、第1同乗席64のシート前縁部64aが、運転席62のシート前縁部62aよりも後方側に位置している。また、側面視で、第2同乗席66のシート前縁部66aが、第1同乗席64のシート前縁部64aよりも後方側に位置している。
また、各シート62のシートバック部62c、64c、66cも同様に、側面視で、第1同乗席64のシートバック部64cが、運転席62のシートバック部62よりも後方側に位置している。同様に、側面視で、第2同乗席66のシートバック部66cが、第1同乗席64のシートバック部64cよりも後方側に位置している。
【0031】
従って、第1同乗席64は、全体的に、運転席62に対し側面視で一部重複して後方側に位置し、第2同乗席66は、全体的に、第1同乗席64に対し側面視で一部重複して後方側に位置するようになっている。このようにして、運転席62に着座した運転者と、第1同乗席64に着座した同乗者との肩部の干渉を防止することが出来る。なお、各シート62、64、66のシートクッション62b、64b、66bは、その上面部の位置が、側面視で互いにほぼ同じ高さになるように形成されている。
【0032】
以上説明したように、本実施形態では、各シート62、64、66の配列に対応して第2フロア76を形成している。或いは、キックアップ部78が各座席62、64、66に沿って延びるようになっている。このようにして、乗員の着座性、第1フロア70への足置き性等の居住性を犠牲にすることなく、第2フロア76の下部の容積を大きくとり、それにより、燃料タンク34の容量を大きくかせぐようにしている。
【0033】
また、この第1実施形態では、第1同乗席64のシートクッションの前縁部64aが、平面視で、運転席62のシートクッションの前縁部62aとは離れるように車幅方向右側の斜め方向に指向している。このような配置により、第1同乗席64に着座した同乗者の脚部は車幅方向外方に向けて斜め方向に延びることになるので、同乗者の脚部が運転席62に着座した運転者の太股部と干渉することを防止することが出来る。そして、同乗者の脚部は車幅方向外方に向けて斜め方向に延びることにより、同乗者の脚部が、シフトレバー29に干渉するのを防止し、さらに、運転者によるシフトレバーの操作を妨げないようになっている。
【0034】
また、第2同乗席66を運転席62より後方に位置させ、乗車の機会が多い2人目の乗員をその第2同乗席66に着座させることにより、運転者とその同乗者との肩や脚部の干渉を防止することが出来る。また、第2同乗席66は、運転席62と同じ幅のシートとなっているので、2人目の乗員は快適である。
【0035】
各座席62、64、66は、シートスライドレール(図示せず)を介して、前後方向に移動可能となっている。特に、第2同乗席66は、図に示す位置よりも前方側に向けて移動可能である。各座席62、64、66を最も前方側に移動させた場合には、荷室を最大限に大きく確保することが出来る。或いは、同乗者が着座しない場合に、同乗席64、66を物置きとしても使用することが出来る。なお、各シート62、64、66、特に同乗席64、66をフロアに固定するようにしても良い。
【0036】
次に、図6乃至図8により、本発明の第1実施形態の第1変形例によるフロア構成を説明する。図6は、本発明の第1実施形態の変形例によるフロアの下部構造を説明するための平面図であり、図7は、図6のVII-VII線に沿って見た燃料タンクとキックアップ部の断面図であり、図8は、図6のVIII-VIII線に沿って見た燃料タンクと排気管の断面図である。
図6に示すように、この変形例によるフロア構造では、第2フロア76の下部にサイレンサ32が配置され、そのサイレンサ32の車幅方向の側面部に排気管30が接続されている。そして、サイレンサ32の後面部から排気管30が後方に延びるようになっている。
このサイレンサ32の車幅方向の隣には、燃料タンク34が並置されている。ここで、図7に示すように、燃料タンク34の一部が凹状に形成されており、排気管30を通すことが出来るようになっている。また、図8に示すように、キックアップ部78には、その下部で、断面L字状の部材が溶接されてクロスメンバ79が形成されている。このクロスメンバ79は、その両端部が左右のサイドシル6にそれぞれ結合されている。図6に示すように、この変形例では、フロアサイドフレーム94は、このクロスメンバ79に結合されて終端している。
【0037】
次に、図9により、本発明の第1実施形態の第2変形例によるフロア構成を説明する。図9は、本発明の第1実施形態の変形例によるフロアの下部構造を説明するための平面図である。なお、この変形例において、第1実施形態と同様の構成については、説明を省略する。図9に示すように、この変形例によるフロア構造では、第2フロア76の下部にバッテリ35が配置されている。このバッテリ35の車幅方向の隣には、燃料タンク34が並置されている。このように、第2フロア76の下部空間を有効に利用して、燃料タンク34やバッテリ35等を配置することが出来る。
【0038】
次に、図10により、本発明の第1実施形態のシート配列の変形例を説明する。図10は、本発明の車両の車体構造の第1実施形態の変形例によるシート配列を示す平面図である。なお、この変形例において、第1実施形態と同様の構成については、説明を省略する。
この図10に示すように、この変形例によるシート配列では、第1同乗席64が運転席62とほぼ同じ大きさ及び形状に形成されている。そして、第2同乗席66が、運転席62及び第1同乗席66よりも、幅が狭く形成されている。この変形例においても、第1同乗席64のシートクッションの前縁部64aが、平面視で、運転席62のシートクッションの前縁部62aとは離れるように車幅方向右側の斜め方向に指向している。従って、例えばこの第1同乗席64に大人が着座した場合でも、その大人の同乗者の脚部が車幅方向外方に向けて斜め方向に延びることになる。その結果、同乗者の脚部が運転席62に着座した運転者の太股部と干渉することを防止することが出来る。さらに、同乗者の脚部が、シフトレバー29に干渉するのを防止して、運転者によるシフトレバーの操作を妨げないようになっている。
【0039】
次に、図11により、本発明の車体構造の第2実施形態を説明する。図11は、本発明の車両の車体構造の第2実施形態を示す平面図である。なお、第2実施形態において、第1実施形態と同様の構成については、説明を省略する。
図11に示すように、第2実施形態では、第2フロア176のキックアップ部178が、運転席62の下方では車幅方向にほぼ真っ直ぐ延び、そして、第1同乗席64の下方から第2同乗席66の下方にかけて、徐々に曲率が大きくなるように、斜め後方に向けて湾曲して延びている。
この第2実施形態において、運転席62及び第1同乗席64の配置及び構成(シート形状及び大きさなど)は、第1実施形態と同様である。そして、第2実施形態においても、第2同乗席66の大きさや形状等は運転席62と同様である。
【0040】
一方、キックアップ部178は、上述したように、第2同乗席66の下方において、車体後方側に向けて湾曲して延びている。第2同乗席66は、ほぼこれに沿って設けられている。即ち、第2同乗席66のシート前縁部66aは、このキックアップ部178の上方で、キックアップ部178が延びる方向とほぼ一致するように、左側から右側に向かって斜め後方に延びるように配置されている。そして、第2同乗席66自体が、車体前後方向の前方に向いた方向に対して斜め方向に向いている。具体的には、第2同乗席66のシートクッションの前縁部66aが、平面視で、運転席62のシートクッションの前縁部62aとは離れるように車幅方向右側の斜め方向に指向している。
【0041】
さらに、各座席のシートバック部62c、64c、66cは、側面視で、運転席のシートバック62c、第1同乗席64のシートバック64c、第2同乗席66のシートバック66cの順で、徐々に後方に位置するように、一部重複して後方にオフセットして配置されている。
【0042】
第1同乗席64自体も上述した第1実施形態と同様に、車体前後方向の前方に向けた方向(運転席が向く方向)に対し斜め方向に向いている。この第2実施形態においては、第2同乗席66が斜め方向に向く角度が、第1同乗席64が斜め方向に向く角度よりも、さらに大きくなっている。なお、第1同乗席64と第2同乗席66のそれぞれの斜めに向く角度が同一であっても良い。
【0043】
この第2実施形態においても、第1実施形態と同様に、第1同乗席64のシートクッションの前縁部64aが、平面視で、運転席62のシートクッションの前縁部62aとは離れるように車幅方向右側の斜め方向に指向しているので、同乗者の脚部が運転席62に着座した運転者の太股部と干渉することを防止することが出来る。そして、同乗者の脚部は車幅方向外方に向けて斜め方向に延びることにより、同乗者の脚部が、シフトレバー29に干渉するのを防止して、運転者によるシフトレバーの操作を妨げないようになっている。さらに、この第2実施形態においても、第2同乗席66を運転席62より後方に位置させ、乗車の機会が多い2人目の乗員をその第2同乗席66に着座させることにより、運転者とその同乗者との肩や脚部の干渉を防止することが出来る。
【0044】
この第2実施形態においても、各座席62、64、66は、シートスライドレール(図示せず)を介して、前後方向に移動可能となっている。そして、各座席62、64、66は、各座席のシートクッションの前縁部62a、64a、66a及びシートバック部62c、64c、66cが、側面視で、一致する位置まで前方に移動することが出来る。この場合、荷室を最大限に大きく確保することが出来る。或いは、同乗者が着座しない場合に、同乗席64、66を物置きとしても使用することが出来る。なお、各シート62、64、66、特に同乗席64、66をフロアに固定するようにしても良い。
【0045】
この第2実施形態における、第2フロア176の下部にも、燃料タンク134が配置され、その燃料タンク134の外面は、第2フロア176の上面部180、サイドシル6及びキックアップ部178に沿ったものとなっている。即ち、燃料タンク134は第2フロア176の形状とほぼ相似する形状を有して、第2フロア176下部に配置されている。
【0046】
次に、図12により、本発明の第2実施形態のシート配列の変形例を説明する。図12は、本発明の車両の車体構造の第2実施形態の変形例によるシート配列を示す平面図である。なお、この変形例において、第1実施形態及び第2実施形態と同様の構成については、説明を省略する。
この図12に示すように、この変形例によるシート配列では、第1同乗席64が、運転席62とほぼ同じ大きさ及び形状に形成されている。そして、第2同乗席66が、運転席62及び第1同乗席66よりも、幅が狭く形成されている。この変形例においても、第1同乗席64のシートクッションの前縁部64aが、平面視で、運転席62のシートクッションの前縁部62aとは離れるように車幅方向右側の斜め方向に指向している。従って、例えばこの第1同乗席64に大人が着座した場合でも、その大人の同乗者の脚部が車幅方向外方に向けて斜め方向に延びることになる。その結果、同乗者の脚部が運転席62に着座した運転者の太股部と干渉することを防止することが出来、さらに、同乗者の脚部が、シフトレバー29に干渉するのを防止して運転者によるシフトレバーの確実な操作を可能としている。
【0047】
なお、上述した実施形態において、運転席62、第1同乗席64及び第2同乗席66を互いに同じ大きさ及び形状としても良く、或いは、第1同乗席64及び第2同乗席66を同じ大きさ及び形状に構成し、これらが運転席62とは異なっていても良い。
【図面の簡単な説明】
【0048】
【図1】本発明の車両の車体構造の第1実施形態を示す平面図である。
【図2】本発明の車両の車体構造の第1実施形態を示す斜視図である。
【図3】本発明の第1実施形態の主にフロア部の構造を説明するために車体構造の一部を示す斜視図である。
【図4】本発明の第1実施形態によるリアサスペンションを示す斜視図である。
【図5】燃料タンクを示す斜視図である。
【図6】本発明の第1実施形態の変形例によるフロアの下部構造を説明するための平面図である。
【図7】図6のVII-VII線に沿って見た燃料タンクとキックアップ部の断面図である。
【図8】図6のVIII-VIII線に沿って見た燃料タンクと排気管の断面図である。
【図9】本発明の第1実施形態の変形例によるフロアの下部構造を説明するための平面図である。
【図10】本発明の車両の車体構造の第1実施形態の変形例によるシート配列を示す平面図である。
【図11】本発明の車両の車体構造の第2実施形態を示す平面図である。
【図12】本発明の車両の車体構造の第2実施形態の変形例によるシート配列を示す平面図である。
【符号の説明】
【0049】
1 車両
34 燃料タンク
62 運転席
64、66 同乗者席
62a、64a、66a シートクッション前縁部
62c、64c、66c シートバック部
70 第1フロア
76、176 第2フロア
78、178 キックアップ部
80、180 上面部
84 第3フロア

【特許請求の範囲】
【請求項1】
車室の左右両側に配置された左右ドアと、これら左右ドアのいずれか一方の側から順に並べて車室フロア上に配置された運転席、第1同乗席及び第2同乗席と、これらの座席の後方の荷室フロアとを有する車両の車体構造であって、
上記運転席シートは、車体前後方向の前方に向けて指向し、
少なくとも上記第1同乗席は、平面視で、その第1同乗席のシートの前部が上記運転席のシートの前部とは離れるように斜め方向に指向していることを特徴とする車両の車体構造。
【請求項2】
上記第1同乗席は、側面視で、上記運転席に対して一部重複して後方側に配置されている請求項1に記載の車両の車体構造。
【請求項3】
上記第2同乗席は、側面視で、上記第1同乗席に対して一部重複して後方側に配置されている請求項1又は請求項2に記載の車両の車体構造。
【請求項4】
上記第1同乗席は、その第1同乗席を挟むように配置された運転席及び第2同乗席よりも幅が小さく形成されると共に平面視でその第1同乗席の前部が上記運転席とは離れるように車幅方向外側の斜め方向に指向し、
上記第2同乗席は、車体前後方向の前方に向けて指向している請求項1乃至3のいずれか1項に記載の車両の車体構造。
【請求項5】
上記車室フロアは、上記運転席、上記第1同乗席及び上記第2同乗席に着座した各乗員の足置き場となる第1フロアと、この第1フロアと連続し、その第1フロアの後方で上記第1フロアより立ち上がるキックアップ部と、このキックアップ部と連続し、そのキックアップ部より後方で上記第1フロアより高くなるように形成された第2フロアと、を有し、
上記運転席、上記第1同乗席及び上記第2同乗席は、上記第2フロア上に配置され、
上記キックアップ部は、上記運転席に対応する位置よりも上記第1同乗席及び上記第2同乗席に対応する位置の方が後方側に位置するように形成され、
上記第2フロアの下部に、燃料タンク、バッテリ及びサイレンサのいずれか1つ或いは複数が配置される請求項1乃至4のいずれか1項に記載の車両の車体構造。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【図8】
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【図9】
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【図10】
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【図11】
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【図12】
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【公開番号】特開2008−155881(P2008−155881A)
【公開日】平成20年7月10日(2008.7.10)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2006−350084(P2006−350084)
【出願日】平成18年12月26日(2006.12.26)
【出願人】(000003137)マツダ株式会社 (6,115)
【Fターム(参考)】