説明

車両の防犯、カスタマイズを行うと共に運転者の心臓活動をモニタリングするシステム

本発明は、車両の防犯及びカスタマイズを行うと共に運転者の心臓活動をモニタリングするシステムであって、運転者の心電図をモニタリングし登録して、それを使用して、車両に乗車した人を識別し、ユーザの嗜好に基づいて車両をカスタマイズし、車両防犯に寄与する侵入検知装置の役割を果たす。登録に加えて、運転者の邪魔を一切することなく継続的にリアルタイムで運転者の心臓活動をモニタリングすると共に、警告を発したり緊急通報したりできる。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、車両の防犯、カスタマイズを行うと共に、運転者の心臓活動をモニタリングするシステムに関する。特に、運転者の心筋が発する電気的信号を記録保存するECG(心電図記録法)装置を車両に組込み、運転者の心臓の状態をモニタリングするために使用することに関する。これに加えて、取得したECG信号を使用して、人を識別し、人と特定の車両とを関連付けて、車両のカスタマイズを始動し、また人識別ベースとしても機能させて、車両への不正アクセスを防止する手段にも関する。
【背景技術】
【0002】
心臓病は、欧米諸国における主要な死因の1つであり、ストレスが多いライフスタイルのために、アジアや南アジアの国々でも憂慮すべきほど増加している。心臓死の大部分は突然死であり、心臓死の約半分は病院外で発生している。驚くべきことに、発生した63.4%の心臓病死が突然心臓死のカテゴリに入る。更に、死亡した心臓病患者の46.9%は病院に到着する前に死亡していて、16.5%は救急治療室に到着した時点で死亡が確認されたか、或いは救急治療室に到着して間もなく死亡している。実際、心臓病は先進国におけるだけでなく、新興国の殆どにおいても、主な死因となっている。研究が指摘するところによると、心臓病で死亡した人々の約70%が死亡するまで診断されていない。
そうした研究より、心臓病と診断された患者全て、及び心臓病のリスクが高い人々にとって、心臓の異常を早期発見するようモニタリングされると、有効であることが実証されている。興味深いことに、心臓異常の殆どは、多くの場合、一時的なものであり、初期段階で検出されれば回避できる(非特許文献1)。
【0003】
車両の運転は、運転者支援システム(DAS)の数が増え、複雑になったことで影響を受け、その結果、運転者の認知負荷が大きくなった。そのため、そうしたDASが、運転という主要な活動から更に注意を逸らせてしまう(非特許文献2)。これまで多数の有望な解決方法が提案されたが、そうした技術は運転者の認知範囲を広げるもので、例えば更なる情報様式として触感を導入したり、単一モーダルの代わりにマルチモーダルインターフェイスを利用したりしている。そうした解決方法では、運転者は注意が要求される。作業負荷及び/または注意散漫といった問題に対処するために、運転者の覚醒度や健康状態に関する重要な感覚情報を生成する、注意散漫にさせない非侵襲的な解決方法を見出すことが不可欠である。
【0004】
上記のストレスをモニタリングするシステムの多くに関しては、運転者の本人性を確認して、車両への不正アクセスを防ぎ、従って警告を発するかの決定を可能にすることも期待されている。運転者の本人性を車に提供するバイオメトリックス技術は存在する。指紋は、最も普及している手法の一つである。近年、ECGを人識別用バイオメトリックス入力として使用できることが示された。非特許文献3には、ECGをバイオメトリックスとして使用した実験の結果について開示されている。
【0005】
車両で心臓のモニタリングを行う発明の中には、以下のものがある。特許文献1では、車両用心拍モニタリング装置を開示していて、運転者が車両を運転中に不整脈であるか否かを判定する。
【0006】
特許文献2では、心拍パルス情報をモニタリングして、車両の運転者が居眠りをしているために運転者の覚醒度が低いと判定すると、車両の運転者に刺激を与えて、車両の運転者の覚醒度を高める装置及び方法について開示している。しかし、心拍数と共にECG波形を表示しながら、運転者をECGモニタリングし且つ確実に生体識別する点については開示していない。
【0007】
特許文献3では、運転者の状態を、心拍数の変動を測定することで検出し、検出結果に応じて所定のセキュリティ行動を取る、路上走行車での人間の状態及びセキュリティを管理する装置について開示している。しかし、運転者をECGモニタリングし且つ生体識別する点については開示していない。
【0008】
特許文献4では、運転者のストレスの分析に基づいて危険性のある運転状況について知らせるか回避するシステムを開示している。しかし、健康状態やECG波形を表示したり、緊急時にeCallするよう促す警告を出す点については開示していない。
【0009】
特許文献5では、運転者の心拍数を、運転者の動作を制限せずに測定する心拍数測定装置を開示し、特許文献6では、機器または機械のオペレータの警戒心、注意力、または覚醒状態、及び/またはストレス状態をモニタリング、記録及び/または分析するシステムについて開示している。しかし、心拍数と共にECG波形を表示して、運転者をECGモニタリングし且つ生体識別する点や、緊急通報を促す点については開示していない。
【0010】
また、従来技術の発明は、心電図記録法を使用して車両をカスタマイズする点や運転者を識別する点を提示していない。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0011】
【特許文献1】米国特許出願第2007/0265540号
【特許文献2】米国特許第5574641号
【特許文献3】米国特許第4706072号
【特許文献4】米国特許第6599243号
【特許文献5】米国特許第5783997号
【特許文献6】米国特許第6575902号
【非特許文献】
【0012】
【非特許文献1】Chaikowski他、Telemed med.telemat. 2008年、第6巻、第1号、25〜27頁
【非特許文献2】Riener他、2009年
【非特許文献3】Irvine他、2009年、EURASIP Journal on Advances in Signal Processing、第2009巻、243215、13頁
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0013】
本発明は、上述した従来技術の問題点を解消するために、車両の防犯、カスタマイズを行うと共に心臓の状態をモニタリングする車両内蔵ECG検知装置を提供する。
【0014】
本発明の主な目的は、車両の防犯、カスタマイズを行うと共に、車に居る運転者の心臓活動をモニタリングするシステムを提供することである。
【0015】
本発明の別の目的は、継続的にリアルタイムで運転者の心臓状態をモニタリングすることである。
【0016】
本発明の更に別の目的は、車に設置した心臓装置が記録したECGトレースを使用して、人を識別する解決方法を提供することである。
【0017】
本発明のまた別の目的は、ECGトレース、心拍数、サウンドトラックを表示するために装置を提供することである。
【0018】
本発明の更なる目的は、運転者の登録した生体プロフィールに基づいて、自動的に車両のカスタマイズを提供することであり、カスタマイズのスキームは、バックミラー、有効な再生曲目、ビデオ及びFM/テレビ局、スピーカの音量、クラクションの音響レベル、ダッシュボードの表示、香水芳香、シートの高さ、傾き、温度調節設定、速度制限、セキュリティ設定、ナビゲーション表示設定、エンジンレスポンス等を再設定することから成る。
【0019】
本発明の別の目的は、車両運転者の心臓活動をリアルタイムで診断することであり、緊急の場合には、自動緊急通報または警告をシステムによって生成する。
【0020】
本発明の別の目的は、車両への不正アクセスを防止して車両の防犯を行うことである。
【0021】
本発明の更に別の目的は、非侵襲性バイオセンサを使用して、心臓活動をモニタリングすることである。
【0022】
本発明の更に別の目的は、ECGに基づく運転者の本人性を情報として使用して、事故が発生した場合に、運転者の責任能力を特定したり、運転者の本人性を確定したりすることである。
【0023】
本発明の別の目的は、得られたECGデータに関してプライバシーを保護して取り扱うスキームを提供することである。
【課題を解決するための手段】
【0024】
本発明は、車両の防犯、カスタマイズを行うと共に運転者の心臓活動をモニタリングするシステムを提供し、本システムは、運転者の心筋で発生する電気信号をリアルタイムでモニタリングするための、車内に配設する非侵襲性バイオセンサを備える。また、本システムは、緊急時に自動的に緊急通報をしたり、心臓の状態が異常な場合には警告を発したりする。また、車内または車外に配設したバイオセンサから取得したECG信号を、人を識別するための確実な生体認証システムとして使用し、それにより人識別情報を、車載の防犯サービスやインフォテインメントサービスの認証やカスタマイズに使用できるようにもする。
【発明の効果】
【0025】
1.本発明によると、リアルタイムで運転者の心臓状態をモニタリングする。
2.本発明によると、心臓装置が記録したECGトレースを使用して、人/運転者の識別を提供する。
3.本発明によると、ECGトレース、心拍数、サウンドトラックを表示して、心臓の状態を洞察する。
4.本発明によると、血圧、皮膚温等を含む他の健康状態もモニタリングする。
5.本発明によると、リアルタイムの診断を提供することで、緊急通報を可能にする。
6.本発明によると、緊急の場合に、必要な支援を行う外部連絡先対象者に対して警告する。
7.本発明によると、ユーザの嗜好/プロフィールに基づいて、車両を自動的にカスタマイズする。
8.本発明によると、車両への人/運転者の乗車を検出し、それにより未認証者の乗車を防止する。
9.本発明によると、車両防犯に寄与する侵入者検出を提供する。
10.本発明のバイオセンサは、非侵襲であり、注意散漫にさせずに心臓の活動をモニタリングできる。
11.本発明では、生体認証のためにECGデータを変換した2進数列コードを保存する。
【図面の簡単な説明】
【0026】
【図1】ECG装置、電極、ディスプレイを有するバイオセンサ車両システムの構成を示すブロック図
【図2】心臓信号またはECG信号を記録し、任意に表示するバイオセンサ車両システムの実施形態を示すブロック図
【図3】人識別または生体認証用バイオセンサ車両システムの実施形態を示すブロック図
【図4】ECG装置、電極、ディスプレイを有する例示的なバイオセンサ車両システムの構成を示す説明図
【図5】バイオセンサ車両システムの確実な人認識システムを示すアルゴリズム
【発明を実施するための形態】
【0027】
本発明は、以下の詳細な記述及び添付図により一層よく理解でき、上記以外の目的についても明らかになる。
【0028】
単語「備える(comprising)」、「有する(having)」、「含有する(containing)」、「含む(including)」及びそれらの他の形は、意味的に等しく、これら単語の何れか1つの次に来る事項(複数可)は、列挙した事項(複数可)が全てというわけではなく、或いは列挙したアイテム(複数可)のみに限定するわけではない点で、非限定的であるものとする。
【0029】
また、本明細書及び付記した特許請求の範囲において、単数形「a」、「an」、及び「the」は、その内容について別段の明確な指示がない限り、複数の指示対象を含む。本発明の実施形態を実施するまたは試験する際に、いかなる方法またはシステムまたは本明細書に記載したものとの均等物を使用できるが、好適な方法及びシステムについて以下に記述する。本発明を、以下の段落で実例を示し更に詳細に記述する。なお、本発明の範囲は、特許請求の範囲及びその均等物によってのみ限定されるものとする。
【0030】
以下の段落では、本発明の幾つかの態様及び特徴を例示する、説明に役立つ本発明の2、3の実施形態について記述する。これらの実施形態は、多くの態様及び実施形態を完全に説明してはおらず、従って、本発明を全く限定するものではない。本発明の多くの他の態様、特徴、実施形態について、本明細書に記述する。多くの他の態様及び実施形態については、当業者には、本出願を読み当該分野での先行技術と知識に完全に鑑みて検討すれば容易に明らかとなる。
【0031】
本発明は、ECGデータに基づいて、識別、カスタマイズを行い、車内に居る運転者の心臓活動をモニタリングする、注意散漫にさせない非侵襲的な車載システムを提供し、このシステムは、
(a)複数のECGトレースを探索する手段であって、各手段を、1個または複数の車両部品に取付けた、運転者の心筋が発する電気信号をリアルタイムで取得するセンサとする手段と、
(b)上記探索手段から得た運転者のECGデータに基づいて、ECGの特徴を抽出し、プロセッサで実行する2進数列コードブック生成アルゴリズムを使用して、2進コード数列として、2進コードブックにECGトレースを一時的に登録する手段と、
(c)運転者の乗車を検出し、許可する手段であって、運転者のECGトレースの2進コードを、プロセッサで実行する最近傍分類器アルゴリズムのステップを使用して、登録した2進コードブックの数列と照合する手段と、
(d)車両におけるカスタマイズのために運転者の嗜好を保存する手段であって、運転者のECG特徴と2進コードを登録した2進コードブックの数列とを照合した後に、カスタマイズを開始する手段とを備える。
【0032】
また、本発明は、車両の不正アクセスを検出するために車両の防犯を行うシステムを提供し、このシステムは、
上記探索手段から得た運転者のECGデータに基づいて、ECGの特徴を抽出し、プロセッサで実行する2進数列コードブック生成アルゴリズムを使用して、2進コード数列として、2進コードブックにECGトレースを一時的に登録する手段と、
運転者の乗車を検出し、許可する手段であって、運転者のECGトレースの2進コードを、プロセッサで実行する最近傍分類器アルゴリズムのステップを使用して、登録した2進コードブックの数列と照合する手段とを備える。
【0033】
本発明の実施形態の1つによると、車両でバイオセンシングする心臓モニタリング装置を、人がわざわざ接近しなくても信号ECGを得られる、ハンドル、座席、変速レバー等といった様々な車両部品に組込める、単一リード線に流れる心電図(ECG)信号を測定する小型装置とする。リード線とは、心臓の電気的画像である。ECG記録装置により、異なる電極で検出した電気的活動を比較し、そうして得た電気的画像をリード線と呼ぶ。
【0034】
本発明の好適実施形態の1つによると、未認証者の乗車を検出する、ECG波形、心拍数等を含む、運転者の生体プロフィールを一度登録する手段を存在させる。
【0035】
本発明の一実施形態では、安全な生体認証システムを、2進コード数列として個人のデータを保存することで達成した。2進コード数列を、特徴分散値を説明する2進コードブックの規則に基づいて、抽出したECGトレースの特徴から生成した。
【0036】
本発明の好適な実施形態では、人のプロフィールが登録されたプロフィールと一致しない場合、本システムは適切な警告(50)を発する。これを、車両防犯に寄与する侵入者検出の特徴の1つとして利用でき、そのためにECGをドアノブやハンドルに配置することができる。
【0037】
また、本発明の好適な一実施形態によると、車両をカスタマイズするための運転者の嗜好を保存する手段を存在させ、この手段は、バックミラー、有効な再生曲目、ビデオ及びFM/テレビ局、スピーカの音量、クラクションの音響レベル、ダッシュボードの表示、香水芳香、シートの高さ、傾き、温度調節設定、速度制限、セキュリティ設定、ナビゲーション表示設定、エンジンレスポンス等を再設定することを含むが、これらに限定しない。これで全てを列挙したわけではなく、本発明は必ずしも本明細書に記載した制限に拘束されず、本発明は、自動的にユーザの嗜好通りに構成可能な車両に関する全ての設定を含むことができる。
【0038】
本発明のまた別の実施形態では、車両内に居る人または運転者を識別すると、車両のカスタマイズが開始され、カスタマイズは運転者/ユーザが予め設定したユーザのプロフィールまたは嗜好に従い自動的に再構成することによって行われる。
【0039】
本発明の別の実施形態では、異なる運転者の生体プロフィール及びカスタマイズ設定を保存でき、システムで、予め登録したプロフィールと車両に乗車した人のECG及び生体プロフィールとを照合して、本人性及びカスタマイズスキームを検出する。プロフィールが一致しない場合は、システムが関係者に警告を発するが、従って本発明で提供するシステムは、車両防犯に寄与する侵入者検知装置としての役割も果たす。
【0040】
次に、図1及び図4を参照し、バイオセンシング車両システムの構成について説明する。この図では、ECG装置(90)、電極(10)、ディスプレイ(40)が車両に配置されている。図1及び図4で示すように、例示的実施形態の1つによる車載バイオセンサは、車両のハンドル(70)に取付けるECG装置(80)と、ハンドルのサイドバーに取付ける電極(10)と、車両のハンドルの中心で上面に配置して、ECGのトレース、そのECGトレースから算出した心拍数、車内で再生されるサウンドトラックを表示するディスプレイ(40)等から成る。
【0041】
図2に示すように、電極(10)リード線をハンドルのサイドバーに配設し、そこで約1mVの低電圧信号を測定する。本発明のシステムでは、単一リード線のECGシステムを適合させる。信号が低電圧性のため、取得したECG信号を、差動増幅器(20)を使用して増幅する。増幅した信号をフィルタリング(20)して、ECG信号に存在するノイズを除去し、確定した周波数の信号を収集する。フィルタリング済みECG信号を、デジタルセクション(30)に伝送する。マイクロコントローラに伝送されたECG信号を、ADCへの入力信号とし、250Hzでサンプリングする。サンプリングしたECG信号を前処理して、特徴パラメータを後の処理のために取得し保存する。抽出した特徴を、2アプリケーション用に処理し使用する。
【0042】
本発明の別の実施形態では、車載バイオセンサ装置を、単一リード線のECGモニタリング装置として使用して、この装置で、単一リード線によるECGを取得し、そこから特徴を抽出する。抽出した特徴を使用して、心拍数を算出し、算出した心拍数を表示する。それに加えて、不整脈が発生した場合、図2で示したように、デジタルセクションで検出し、アラーム/指摘を行うようにする。状態を表示する他に、救急センターにeCall可能にもする。
【0043】
図5に示すように、例示的実施形態の1つで、バイオセンサ車両システム(80)で人を識別するステップで、電極(10)をハンドルのサイドバーに配設して、約1mVの低電圧信号を測定し、運転者のプロフィールを登録する。個々のデータを、特徴分散値を説明する2進コードブックの規則に基づいて、ECGトレースの抽出した特徴から生成した2進コード数列として保存する。運転者がまたは誰でも乗車すると必ず、バイオセンサが2進コードを生成し、そのコードを2進コードブックに既に保存されたプロフィールからのものと照合する。その結果プロフィールが一致すれば、システムは乗車を許可し、プロフィールが一致しなければ、システムはECG信号を拒否し、当事者に適切な警告(50)を発する。
【0044】
本発明の好適な実施形態の1つによると、図3及び図5に示すように、抽出した特徴を生体認証システムに使用する。抽出した特徴を、プライバシーを保護した上でECGを保存するために、2進数列コードブック生成アルゴリズムを使用して、2進数列に変換する。ここでは、ユーザの元のECG生波形はメモリに保存しない。そうすることで、誰も車両の電子機器からECGデータを検索して、そのデータをリプレーアタックを含む他のどのアプリケーションにも使用できなくなる。リプレーアタックでは、ECG生波形が再生されて、まるで生体から来たようにECGセンサに適用される。
【0045】
2進数列コードブック生成アルゴリズム:
特徴間隔に関する主な知見に基づいて、2進コードブックをユーザ毎に設計するが、そのコードブックは、特定のユーザに対して抽出したECGトレースの特徴に関する分散値から構成する。
ユーザ数を‘U’とし、
1ユーザに対するトレイル数を‘T’とし、
ECGトレースの特徴‘F’を、長さ‘N’とする。
【0046】
【数1】

【0047】
【数2】

【0048】
【数3】

【0049】
【数4】

【0050】
ここで、=1、2・・・・・U
=1、2・・・・・N
=1、2・・・・・T
Bmin、Bmaxを、2進コードブックとする。
【0051】
ここでは、全ての数を、2のバイナリ形式で表す。
【0052】
テスト特徴ベクタがユーザの上下限を満たしていれば、それに応じてテストデータ特徴ベクタを分類する。ユーザの境界条件を満たすテスト特徴ベクタが、総ユーザ数の一部であっても得られることは、経験的に明らかである。
【0053】
この2進コードブックの方法により、多数のユーザがいる場合に、最近傍分類器(NNC:Nearest Neighbor Classifier)の演算時間を短縮でき、2進コードブックを第1段階の分類器として使用し、次にNNCによって第2段階を行える。
【0054】
最近傍分類器のアルゴリズム:
単純であるが強力な分類器であるノンパラメトリックな最近傍分類器を第2段階用分類器として使用した。ユーザの一部で得られた2進コードブック生成器(第1段階分類器)を、NNCに提供して、該当するプローブに最も合致するユーザを選択する。NNC法は単純であり、以下のように、新テストクエリをqとして、それに対してユークリッド距離に関してk個の最も近いトレーニングクエリを求めようとするものである。
【0055】
本発明は、運転者の心臓状態をモニタリングし、確実に人を識別するために自動車にECG検知装置(車載バイオセンサ装置)を組込む方法に関する。従って、以上は本発明の原理を説明しただけと考えられる。更に、当業者であれば多数の修正及び変更を容易に想到し得るため、本発明を、ここに図示し記述したとおりの構成及び動作に限定することは望ましくなく、あらゆる適切な修正及び均等物を用いてもよく、本発明の範囲に包含するものとする。そうした理由で、本開示は、以上記述したものと同様に、請求項に含まれるものも含む。本発明について、ある程度の特定性を有した好適な形で記述したが、この好適な形の開示は、一例として示したのみであり、構造の細部や部品の組合せや配置における多数の変更は、本発明の精神及び範囲から逸脱しない範囲で採用してもよい。
【実施例】
【0056】
ステップ1:
mV信号のECG生データを、表面電極を介して取得し、電圧信号X(n)に増幅する。ECG生信号を前処理して、表1に示すような特徴パラメータF(X)を抽出した。
式中、F(X)={F1、F2….F9}とする。
【0057】
【表1】

【0058】
ステップ2:
抽出した特徴パラメータF(x)を、表2に示したような2進数列コードブック生成アルゴリズムを使用して、2進数列B(F(x))に変換した。
【0059】
【表2】

【0060】
同様に、2進コードをユーザのトレーニングセット全てに対して生成し、データベースを作成する。
【0061】
プローブデータを得たなら、ステップ1と2を実行する。その後、プローブから生成した2進コードを、分類器またはマッチング法を使用してトレーニング済み2進コードデータベースと照合する。
【0062】
例えば、認証者と未認証者に対応する2つの事例が考えられる。
【0063】
事例1:
事例1では、認証者、即ちユーザ1のトレイルと、それに対応する抽出した特徴、2進コードを、表3に示している。分類器またはマッチング法で、プローブデータの2進コードを、表2で提示したトレーニング済み2進コードデータベースと照合し、ユーザ1として最も合致する出力を得る。
【0064】
【表3】

【0065】
事例2:
事例2では、未認証者(そのデータがトレーニング済みデータベースに存在しない)と未認証者に対応する特徴と、2進コードを、表4に示している。分類器またはマッチング法で、プローブデータの2進コードを、表2で提示したトレーニング済み2進コードデータベースと照合する。照合/分類アルゴリズムでプローブデータを比較し、そのユーザを拒否する。
【0066】
【表4】

【符号の説明】
【0067】
10 電極
20 差動増幅器
30 デジタルセクション
40 ディスプレイ
50 警告
70 ハンドル
80 バイオセンサ車両システム
90 ECG装置

【特許請求の範囲】
【請求項1】
ECGデータに基づいて、識別、カスタマイズを行い、車内に居る運転者の心臓活動をモニタリングし、注意散漫にさせない非侵襲的な車載システムであって、
(a)複数のECGトレースを探索する手段を、1個または複数の車両部品に取付け、運転者の心筋が発する電気信号をリアルタイムで取得するセンサ手段と、
(b)ECGトレース探索手段から得た運転者のECGデータに基づいて、ECGの特徴を抽出し、プロセッサで実行する2進数列コードブック生成アルゴリズムを使用して、2進コード数列として、2進コードブックにECGトレースを一時的に登録する手段と、
(c)運転者のECGトレースの2進コードを、プロセッサで実行する最近傍分類器アルゴリズムのステップを使用して、登録した2進コードブックの数列と照合し、運転者の乗車を検出し許可する手段と、
(d)運転者のECG特徴と2進コードを登録した2進コードブックの数列とを照合した後に、カスタマイズを開始し、車両におけるカスタマイズのために運転者の嗜好を保存する手段と、を備える
ことを特徴とするシステム。
【請求項2】
ECGトレース探索手段により、単一リード線ECG信号が測定可能である
請求項1に記載のシステム。
【請求項3】
運転者の心臓活動を表示する手段を備える
請求項1に記載のシステム。
【請求項4】
運転者の心臓活動の表示手段が、ハンドルの中心の上面及びダッシュボードに設けられる
請求項3に記載のシステム。
【請求項5】
異常な心臓活動が運転者について検出された場合に、運転者に警告する手段を備える
請求項1に記載のシステム。
【請求項6】
運転者への警告の少なくとも1つを発する場合に、自動的に緊急通報する手段を備える
請求項5に記載のシステム。
【請求項7】
緊急通報先が、支援を求める外部連絡先対象者に信号で送信される
請求項6に記載のシステム。
【請求項8】
運転者の乗車の検出手段が、ハンドル、座席、変速レバーのいずれかの一箇所または複数箇所に設けられる
請求項1に記載のシステム。
【請求項9】
心臓活動を、心電図波形と心拍数としてモニタリングする
請求項1に記載のシステム。
【請求項10】
運転者の皮膚温、呼吸、ストレス、血圧を測定する手段を備える
請求項1に記載のシステム。
【請求項11】
カスタマイズが、バックミラー、有効な再生曲目、ビデオ及びFM/テレビ局、スピーカの音量、クラクションの音響レベル、ダッシュボードの表示、香水芳香、シートの高さ、傾き、温度調節設定、速度制限、セキュリティ設定、ナビゲーション表示設定、エンジンレスポンスを含むユーザの複数の嗜好の再設定である
請求項1に記載のシステム。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【公表番号】特表2012−533474(P2012−533474A)
【公表日】平成24年12月27日(2012.12.27)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2012−521159(P2012−521159)
【出願日】平成22年8月31日(2010.8.31)
【国際出願番号】PCT/IN2010/000581
【国際公開番号】WO2011/111056
【国際公開日】平成23年9月15日(2011.9.15)
【出願人】(510337621)タタ コンサルタンシー サービシズ リミテッド (9)
【氏名又は名称原語表記】TATA Consultancy Services Limited
【住所又は居所原語表記】Nirmal Building,9th Floor,Nariman Point,Mumbai 400021,Maharashtra,India.
【Fターム(参考)】