説明

車両システム

【課題】この発明は、車両システムに関し、エアコンプレッサを用いないで空調機能を実現する車両システムを提供することを目的とする。
【解決手段】車両に搭載される内燃機関10と、吸収式ヒートポンプを有するエアコンディショナとを備え、前記吸収式ヒートポンプは、前記内燃機関の排気ガスが流れる排気通過部28を熱源として備える。排気通過部28により隣接する冷媒通過部26を加熱させる。これにより、冷媒通過部26の内部に流通する冷媒を吸収式ヒートポンプに循環させて冷却サイクルを実現し、エアコンディショナ機能を発揮させる。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
この発明は、車両システムに係り、特にエアコンディショナを備えた車両システムに関する。
【背景技術】
【0002】
従来、例えば特許文献1に開示されているように、機関動力を駆動源とするエアコンプレッサが知られている。また、本公報には、エアコンプレッサ負荷に基づいて、内燃機関が出力すべき目標トルクを補正し、その目標トルクからスロットル弁の目標開度を算出する内燃機関が開示されている。このシステムによれば、エアコンプレッサ負荷を推定することにより、目標トルクを補正することができる。
【0003】
【特許文献1】特開平2−291461号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
ところで、エアコンプレッサ負荷は運転状況により変動する。そのため、上記従来の内燃機関において、目標トルクを精度良く補正するためには、運転状況に応じたエアコンプレッサ負荷を推定する必要がある。しかしながら、すべての運転状況に対応してエアコンプレッサ負荷を推定することは容易ではない。
【0005】
この発明は、上述のような課題を解決するためになされたもので、エアコンプレッサを用いないで空調機能を実現した車両システムを提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0006】
第1の発明は、上記の目的を達成するため、車両システムであって、
車両に搭載される内燃機関と、
吸収式ヒートポンプを有するエアコンディショナとを備え、
前記吸収式ヒートポンプは、冷媒を加熱する発生器を有し、
前記発生器は、前記内燃機関の排気熱によって前記冷媒を加熱する第1排気熱熱交換器を備えることを特徴とする。
【0007】
また、第2の発明は、第1の発明において、
前記発生器は、前記冷媒を加熱する電気式ヒータを備え、
前記発生器により加熱された前記冷媒の到達温度と相関を有する到達温度相関値を取得する到達温度取得手段と、
前記到達温度相関値が判定値よりも小さいか否かを判定するヒータ加熱判定手段と、
前記到達温度相関値が前記判定値よりも小さい場合に、前記電気式ヒータによって前記冷媒を加熱するヒータ加熱制御手段と、を備えることを特徴とする。
【0008】
また、第3の発明は、第1の発明又は第3の発明において、
前記吸収式ヒートポンプは、前記冷媒を放熱させる放熱器を備え、
前記内燃機関の排気通路に配置された触媒と、
前記触媒の上流又は近傍に配置された第2排気熱熱交換器と、
前記発生器で加熱された前記冷媒を前記第2排気熱熱交換器に流すための加熱通路と、
前記放熱器で放熱された前記冷媒を前記第2排気熱熱交換器に流すための冷却通路と、
前記触媒の床温と相関を有する床温相関値を取得する床温相関値取得手段と、
前記床温相関値に基づいて、前記発生器で加熱された前記冷媒を前記加熱通路に流す状態と、前記放熱器で放熱された前記冷媒を前記冷却通路に流す状態とを切り換える切換手段と、を備えることを特徴とする。
【0009】
また、第4の発明は、第3の発明において、
前記床温相関値が下限温度よりも低いか否かを判定する触媒加熱判定手段と、
前記床温相関値が前記下限温度よりも低い場合に、前記発生器で加熱された前記冷媒を前記加熱通路に流す触媒加熱手段と、を備えること特徴とする。
【0010】
また、第5の発明は、第3の発明又は第4の発明において、
前記床温相関値が上限温度よりも高いか否かを判定する触媒冷却判定手段と、
前記床温相関値が前記上限温度よりも高い場合に、前記放熱器で放熱された前記冷媒を前記冷却通路に流す触媒冷却手段と、を備えることを特徴とする。
【0011】
また、第6の発明は、第3の発明において、
前記触媒の硫黄被毒回復が必要か否かを判定する回復判定手段と、
前記硫黄被毒回復が必要な場合に、前記発生器で加熱された前記冷媒を前記加熱通路に流す硫黄被毒回復手段と、を備えることを特徴とする。
【0012】
また、第7の発明は、第1乃至第6の発明のいずれかにおいて、
前記吸収式ヒートポンプは、前記冷媒を放熱させる放熱器を備え、
エンジン冷却水の水温と相関を有する水温相関値を取得する水温取得手段と、
前記水温相関値が暖気判定値よりも小さいか否かを判定する暖気判定手段と、
前記水温相関値が前記暖気判定値よりも小さい場合に、前記放熱器に前記エンジン冷却水を流してエンジン冷却水を加熱するエンジン冷却水加熱手段と、
を備えることを特徴とする。
【0013】
また、第8の発明は、第1乃至第7の発明のいずれかにおいて、
前記吸収式ヒートポンプは、空気を冷却する冷却器を備え、
前記触媒下流の排気熱により、空気を加熱する触媒下流熱交換器と、
室内に送風する空気が目標温度となるように、前記冷却器で冷却された空気と、前記触媒下流熱交換器で加熱された空気とを混合する温度調節手段と、
前記混合した空気を室内に送風する送風手段と、を備えることを特徴とする。
【発明の効果】
【0014】
第1の発明によれば、内燃機関の排気熱を熱源とした吸収式ヒートポンプの冷却サイクルにより、エアコンディショナ機能を実現することができる。このため、本発明によれば、機関動力を駆動源とするエアコンプレッサを要することなくエアコンディショナ機能を実現することができる。
【0015】
第2の発明によれば、電気式ヒータにより吸収式ヒートポンプの発生器を加熱することができる。そのため、排気熱が少ない状況下においても、吸収式ヒートポンプを機能させることができる。このため、本発明によれば、排気熱が少ない状況下においても、エアコンディショナ機能を実現することができる。
【0016】
第3の発明によれば、触媒温度に基づいて、触媒の近傍に配置された第2排気熱熱交換器に、加熱・冷却された冷媒を切り替えて流通させることができる。加熱・冷却された冷媒を第2排気熱熱交換器に流通させることで、触媒を加熱・冷却させることができる。
【0017】
第4の発明によれば、触媒温度が適温よりも低い場合に、加熱された冷媒を触媒の近傍に流すことができる。加熱された冷媒により触媒を加熱することができる。触媒を加熱することで、触媒の暖気が促進され排気エミッションを低減させることができる。
【0018】
第5の発明によれば、触媒温度が適温よりも高い場合に、放熱された冷媒を触媒の近傍に流すことができる。放熱された冷媒により触媒を冷却することができる。触媒を冷却することで、触媒の劣化・故障を抑制することができる。
【0019】
第6の発明によれば、触媒の硫黄被毒回復が必要な場合に、加熱された冷媒を触媒の近傍に流すことができる。加熱された冷媒により触媒を加熱することができる。触媒を加熱することで、硫黄被毒の回復を図ることができる。
【0020】
第7の発明によれば、エンジン冷却水の水温相関値が暖気判定値よりも低い場合に、発生器で加熱された冷媒をエンジン冷却水に放熱させることができる。この放熱によりエンジン冷却水が加熱され、エンジン冷却水を早期に適温とすることができる。このため、本発明によれば、内燃機関の暖気性能を向上させることができる。
【0021】
第8の発明によれば、触媒下流の排気熱を利用して空気を加熱することができる。また、室内に送風する空気が目標温度となるように、排気熱で加熱された空気と、冷却器で冷却された空気とを混合することができる。そして、混合された空気を室内に送風することができる。このため、本発明によれば、触媒下流の排気熱を利用して温度調整できるエアコンディショナ機能を実現することができる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0022】
実施の形態1.
[実施の形態1のシステム構成]
図1は、本発明の実施の形態1のシステム構成を説明するための図である。図1に示すシステムは内燃機関10を備えている。内燃機関10には排気通路12(図示略)が接続されている。排気通路12の上流には、排気熱取込部14が設けられている。排気熱取込部14の下流には、触媒16が設けられている。触媒16の近傍には触媒温度センサ17(図示略)が配置されている。また、触媒16の直上流には排気冷却/加熱ユニット部18が設けられている。
【0023】
排気熱取込部14は、熱交換用の冷媒22(図示略)を吸収した吸収液24(図示略)を流すための冷媒通過部26を備えている。冷媒22として例えばアンモニア、吸収液24として例えば水が用いられる。冷媒通過部26の近傍には、冷媒通過部26を加熱するための排気通過部28と電機式ヒータ30とが設けられている。電気式ヒータ30の材質として例えばセラミックが用いられる。
【0024】
冷媒通過部26は、気化冷媒を流す通路により冷媒気/液セパレイタ32に接続している。冷媒気/液セパレイタ32は、吸収液を流す通路により吸収器34に接続している。また、冷媒気/液セパレイタ32は、気化冷媒を流す通路により、放熱用冷却水を備えた冷媒用放熱器36に接続している。冷媒用放熱器36は、流量制御弁2を備えた通路によりエアコンディショナ回路38に接続している。エアコンディショナ回路38の近傍には、エアコンディショナ回路38で冷やされた空気を温度調整して室内に送風するためのエアコンディショナ温度コントローラ39が設けられている。また、エアコンディショナ回路38は、流量制御弁3を備えた通路により吸収器34に接続している。吸収器34は、冷媒通過部26に接続している。
【0025】
排気冷却/加熱ユニット部18は、排気通過部40を備えている。排気通過部40の近傍には、排気通過部40を加熱・冷却するための冷媒通過部42が設けられている。冷媒通過部42は、流量制御弁6と流量制御弁4を備えた通路によって冷媒用放熱器36に接続している。この通路は、流量制御弁6と流量制御弁4との間で上記流量制御弁3を備えた通路と連結している。また、冷媒通過部42は、放熱前の気化冷媒を流すための流量制御弁5を備えた通路によって冷媒用放熱器36の近傍に接続している。なお、冷媒通過部42は、冷媒22を還流するための通路によって吸収器34に接続している。
【0026】
本実施の形態のシステムは、ECU(Electronic Control Unit)50(図示略)を備えている。ECU50の出力側には、流量制御弁1〜6、エアコンディショナ温度コントローラ39が接続されている。ECU50の入力側には、触媒温度センサ17が接続されている。
【0027】
[動作モード1]
以下、本実施の形態のシステムにおいて実施される3つの動作モードについて説明する。まず、エアコンディショナを機能させるための基本制御である、動作モード1について概要を説明する。
【0028】
図2は、動作モード1において冷媒が流れる冷媒経路図である。動作モード1では、図2の実線で示す経路に冷媒22が流される。
図3は、図2に示す経路に冷媒22を流すことで実現される冷却サイクルの概略図である。まず、内燃機関10の排気ガスが排気通過部28に流される。排気ガスの排気熱により、排気通過部28は加熱される。排気通過部28が加熱されることにより、隣接する冷媒通過部26が加熱される。冷媒通過部26が加熱されることにより、その内部に流れる冷媒22と吸収液24が気化する。気化した冷媒22と吸収液24は、冷媒気/液セパレイタ32に流れ込む。冷媒気/液セパレイタ32は、吸収液24を液化させて、気化冷媒22と分離させる。ここで、液化した吸収液24は吸収器34に流される。一方、気化冷媒22は、放熱用冷却水が流通する冷媒用放熱器36に流れ込む。冷媒用放熱器36において、気化冷媒22は放熱用冷却水に熱を奪われて液化する。液化により減圧した冷媒22は気化し易い状態となる。この液化冷媒22はエアコンディショナ回路38に流れ込む。エアコンディショナ回路38では、液化冷媒22の気化熱により室内に送風するための空気が冷やされる。その後、気化冷媒22は吸収器34に流れ込む。吸収器34は気化冷媒22を吸収液24に吸収する。冷媒22を吸収した吸収液24は冷媒通過部26に還流する。このように、動作モード1では、内燃機関の排気熱を熱源として冷媒22を循環させ冷却サイクルを実現する。
【0029】
図4は、本実施の形態のシステムにおいて、エアコンディショナを機能させる動作モード1を実現するために、ECU50が実行する制御ルーチンのフローチャートである。図4に示すルーチンでは、まず、ECU50は、エアコンディショナ作動要求があるか否かを判断する(ステップ100)。具体的には、ECU50は、他のルーチンにおいて設定されるエアコンディショナ作動要求フラグがONの場合に、エアコンディショナ作動要求ありと判断する。
【0030】
エアコンディショナ作動要求ありと判断された場合は、流量制御弁2と3を開き、流量制御弁6を閉じる(ステップ110)。一方、エアコンディショナ作動要求なしと判断された場合は、流量制御弁2を閉じ、流量制御弁3と6を開く(ステップ120)。
【0031】
以上説明した通り、図4に示すルーチンによれば、エアコンディショナの作動要求がある場合に、流量制御弁を開閉して図2に実線で示す経路を構成することができる。この経路を構成すれば、冷媒用放熱器36で放熱された液化冷媒22を、エアコンディショナ回路38に供給することができる。エアコンディショナ回路38は、液化冷媒22の気化熱によって、室内に送風するための空気を冷やすことができる。さらに、他のルーチンにおいて、エアコンディショナ温度コントローラ39に、この空気の温度調整と室内への送風をさせることで、エアコンディショナ機能を実現することができる。このように、動作モード1では、機関動力を駆動源とするエアコンプレッサを要することなく、エアコンディショナ機能を実現することができる。
一方、エアコンディショナの作動要求がない場合には、冷媒用放熱器36で放熱された液化冷媒22を、エアコンディショナ回路38に流すことなく吸収器34に戻すことができる。このため、動作モード1では、作動要求に応じてエアコンディショナ機能を始動・停止させることができる。
【0032】
なお、本実施形態のシステムに、トルク推定機能を加えてもよい。上述したように、本実施の形態のシステムでは、機関動力を駆動源とするエアコンプレッサを用いない。エアコンプレッサを用いなければ、エアコンプレッサ負荷は生じない。そのため、本実施形態のシステムでは、トルク推定に際して、運転状況により変動するエアコンプレッサ負荷を推定して補正する必要がない。エアコンプレッサ負荷を推定して補正することを要しないため、トルク推定の精度を向上させることができる。
さらに、機関動力を駆動源とする補機について、パワーステアリングを電動化してパワーステアリングポンプを排除し、オルタネータのみの構成としてもよい。トルク補正量を推定しやすいオルタネータのみの構成とすることで、トルク推定の精度を向上させることができる。
【0033】
[動作モード2]
次に、図5〜図7を参照して、実施の形態1のシステムにおいて、触媒温度に応じて、触媒16を加熱・冷却させることができる動作モード2について説明する。
【0034】
図5は、動作モード2において触媒16を冷却する場合の冷媒経路図である。図5の実線で示すように、冷媒用放熱器36で放熱された冷媒22が、排気冷却/加熱ユニット部18に流される。詳細には、冷媒用放熱器36で放熱された冷媒22は冷媒通過部42に流され、隣接する排気通過部40が冷却される。排気通過部40が冷却されることで、排気通過部40を流通する排気ガスは冷却される。冷却された排気ガスにより、触媒16が冷却される。
また、図6は、動作モード2において触媒16を加熱する場合の冷媒経路図である。図6の実線で示すように、冷媒通過部26で加熱された冷媒22が排気冷却/加熱ユニット部18に流される。詳細には、冷媒通過部26で加熱された冷媒22は冷媒通過部42に流され、隣接する排気通過部40が加熱される。排気通過部40が加熱されることで、排気通過部40を流通する排気ガスは加熱される。加熱された排気ガスにより、触媒16が加熱される。
【0035】
図7は、動作モード2を実現するためにECU50が実行する制御ルーチンのフローチャートである。図7に示すルーチンでは、まず、ECU50は触媒温度センサ17から触媒16の床温を取得する(ステップ200)。次に、ECU50は、床温が上限温度よりも高いか否かを判断する(ステップ210)。この上限温度は、触媒の還元能力が最適に保たれる範囲の温度であり、例えば500度である。床温が上限温度よりも高いと判断された場合には、流量制御弁4と6を開き流量制御弁3と5を閉じる(ステップ220)。
【0036】
一方、床温が上限温度よりも低いと判断された場合には、ECU50は、床温が下限温度よりも低いか否かを判断する(ステップ230)。ここで、下限温度は、触媒の還元能力が最適に保たれる範囲の温度であり、例えば400度である。床温が下限温度よりも低いと判断された場合には、流量制御弁5を開き、流量制御弁4を閉じる(ステップ240)。一方、床温が下限温度以上と判断された場合は、本ルーチンを終了する。
【0037】
以上説明した通り、図7に示すルーチンによれば、触媒16の床温が適温の範囲よりも高いと判断された場合に、流量制御弁を開閉して図5に実線で示す経路を構成することができる。そのため、冷媒用放熱器36で放熱された冷媒22を、排気冷却/加熱ユニット部18に供給することができる。これにより、触媒16を冷却することができる。
一方、触媒16の床温が適温の範囲よりも低いと判断された場合には、流量制御弁を開閉して図6に実線で示す経路を構成することができる。そのため、冷媒通過部26で加熱された冷媒22を、排気冷却/加熱ユニット部18に供給することができる。これにより、触媒16を加熱することができる。
このように、動作モード2によれば、触媒温度に応じて、冷媒22の流通経路を切り替えて触媒を加熱・冷却することができる。これにより、触媒温度を最適な範囲に維持することができる。
【0038】
ところで、上述した動作モード2においては、上限温度を、触媒の還元能力が最適に保たれる温度とし、例えば500度に設定しているが、この上限温度は、これに限定されるものではない。触媒の劣化・故障を防止しうる温度とし、例えば900度に設定してもよい。なお、この点は動作モード3でも同様である。
【0039】
また、上述した動作モード2においては、触媒を冷却する場合に、冷媒用放熱器36で放熱された冷媒22を排気冷却/加熱ユニット部18に供給することとしているが、これに加えて、エアコンディショナの作動要求がある場合には、合わせて流量制御弁2を開き、放熱された冷媒22をエアコンディショナ回路38に供給することとしてもよい。
同様に、上述した動作モード2においては、触媒を加熱する場合に、冷媒通過部26で加熱された冷媒22を排気冷却/加熱ユニット部18に供給することとしているが、これに加えて、エアコンディショナの作動要求がある場合には、合わせて流量制御弁2を開き、放熱された冷媒22をエアコンディショナ回路38に供給することとしてもよい。なお、これらの点は動作モード3でも同様である。
【0040】
[動作モード3]
次に、図8を参照して、実施の形態1のシステムにおいて、触媒16の硫黄被毒を回復することができる動作モード3の制御について説明する。
【0041】
図8は、動作モード3を実現するためにECU50が実行する制御ルーチンのフローチャートである。本ルーチンでは、図7に示すステップ200〜240と同様の処理を含むため、共通するステップについてはその説明を省略する。
【0042】
図8に示すルーチンでは、まず、ECU50は、硫黄被毒回復が必要か否かを判断する(ステップ300)。例えば、累積運転時間が予め定めた被毒判定時間に達した場合に、硫黄被毒回復が必要であると判断される。
【0043】
硫黄被毒回復が必要であると判断された場合は、ECU50は、流量制御弁5を開き、流量制御弁4を閉じる(ステップ310)。さらに、ECU50は、内燃機関10における空燃比をリーンとする(ステップ320)。一方、硫黄被毒回復が必要でないと判断された場合には、図7に示すステップ200〜240と同様の処理を行う。
【0044】
以上説明した通り、図8に示すルーチンによれば、硫黄被毒回復が必要と判断された場合に、流量制御弁を開閉して図6に実線で示す経路を構成することができる。そのため、冷媒通過部26で加熱された冷媒22を、排気冷却/加熱ユニット部18に供給することができる。これにより、触媒16を加熱することができる。
動作モード3によれば、内燃機関の排気熱に加えて、冷媒22により触媒16を加熱することができる。このように、触媒16の床温を、硫黄被毒回復に必要な床温(約900度)まで加熱促進させることができる。
【0045】
ところで、上述した実施の形態1における動作モード1〜3では、冷媒22を、内燃機関の排気熱により加熱することとしているが、冷媒22の加熱手段はこれに限定されるものではない。これに加え、冷媒22の温度がエアコンディショナを機能させる温度に達していない場合には、電気式ヒータ30を併用することとしてもよい。具体的には、内燃機関10の始動後、既定の暖気時間を経過するまでは、電気式ヒータ30を併用して冷媒22を加熱することとしてもよい。
【0046】
また、上述した実施の形態1では、冷媒22としてアンモニア、吸収液24として水を用いているが、冷媒22として水、吸収液24として臭化リチウムを用いることとしてもよい。
【0047】
尚、上述した実施の形態1においては、冷媒通過部26を含む排気熱取込部14が前記第1の発明における「発生器」に、排気通過部28が前記第1の発明における「第1排気熱熱交換器」に、電気式ヒータ30が前記第2の発明における「電気式ヒータ」に、冷媒用放熱器36が前記第3の発明における「放熱器」に、排気冷却/加熱ユニット部18が前記第3の発明における「第2排気熱熱交換器」に、流量制御弁5を備えた通路が前記第3の発明における「加熱通路」に、流量制御弁6と流量制御弁4を備えた通路が前記第3の発明における「冷却通路」に、触媒温度センサ17が前記第3の発明における「床温相関値取得手段」に、それぞれ相当している。
また、ここでは、ECU50が、上記ステップ210〜240の処理を実行することにより前記第3の発明における「切替手段」が、上記ステップ230の処理を実行することにより前記第4の発明における「触媒加熱判定手段」が、上記ステップ240の処理を実行することにより前記第4の発明における「触媒加熱手段」が、上記ステップ210の処理を実行することにより前記第5の発明における「触媒冷却判定手段」が、上記ステップ220の処理を実行することにより前記第5の発明における「触媒冷却手段」が、上記ステップ300の処理を実行することにより前記第6の発明における「回復判定手段」が、上記ステップ310〜320の処理を実行することにより前記第6の発明における「硫黄被毒回復手段」が、それぞれ実現されている。さらに、実施の形態1においては、暖気時間が前記第2の発明における「到達温度相関値」に、それぞれ対応している。
【0048】
実施の形態2.
[実施の形態2のシステム構成]
次に図9〜図11を参照して本発明の実施の形態2について説明する。本実施形態のシステムは図1に示す構成に加え、図9に示す構成を備える。そして、ECU50に、後述する図11のルーチンを実施させることにより実現することができる。
【0049】
図9は、上述した図1の冷媒用放熱器36周辺の構成を示す図である。図9に示すように、冷媒用放熱器36には、放熱用冷却水を流すための放熱用冷却水通路60が接続されている。また、上述した内燃機関10は、冷却水ラジエータ62を備えている。冷却水ラジエータ62には、エンジン冷却水を流すためのエンジン冷却水通路64が接続されている。エンジン冷却水通路64と冷媒用放熱器36は、流量制御弁1を備えた還流通路66によりエンジン冷却水が還流するように接続している。なお、内燃機関10には水温センサ68(図示略)が配置されている。
【0050】
図10は、冷媒用放熱器36の位置を示した図である。図10に示すように、冷媒用放熱器36は冷却水ラジエータ62の近傍に配置され、走行風により冷却される。
【0051】
[実施の形態2における特徴的制御]
上述した実施の形態1のシステムにおいて、冷間始動時にはエンジン冷却水の水温は低い状態である。そのため、燃焼状態を安定させるために所定の暖気時間を要する。この暖気時間は短いことが好ましい。そこで、本実施の形態では、機関冷間時にエンジン冷却水を冷媒用放熱器36に流すことで、加熱された冷媒22との熱交換によりエンジン冷却水を加熱することとした。
【0052】
図11は、上述の制御を実現するためにECU50が実行する制御ルーチンのフローチャートである。図11に示すルーチンでは、まず、ECU50は、水温センサ68からエンジン冷却水の水温を取得する(ステップ400)。次に、取得した水温が適温判定値よりも低いか否かを判断する(ステップ410)。適温は例えば80度である。水温が適温判定値以下と判断された場合には、ECU50は、流量制御弁1を開く(ステップ420)。流量制御弁1を開けば、エンジン冷却水は冷媒用放熱器36に流れる。一方、水温が適温判定値以上と判断された場合には、流量制御弁1を閉じる(ステップ430)。流量制御弁1を閉じれば、エンジン冷却水は冷媒用放熱器36に流れない。
【0053】
以上説明した通り、図11に示すルーチンによれば、エンジン冷却水の水温が適温よりも低い場合に、冷媒用放熱器36にエンジン冷却水を流すことができる。エンジン冷却水により冷媒22を放熱させることで、エンジン冷却水を加熱することができる。このため、本実施の形態においては、エンジン冷却水を早期に適温とすることができる。
【0054】
ところで、上述した実施の形態2では、エンジン冷却水を加熱する判断指標を、水温センサ68により取得された水温としているが、その判断指標は、これに限定されるものではない。例えば、既定の暖気時間が経過しているか否かを判断指標としてもよい。
【0055】
尚、上述した実施の形態2においては、冷媒用放熱器36が前記第7の発明における「放熱器」に、水温センサ68が前記第7の発明における「水温取得手段」に、それぞれ相当している。また、ここでは、ECU50が、上記ステップ410の処理を実行することにより前記第7の発明における「暖気判定手段」が、上記ステップ420の処理を実行することで前記第7の発明における「エンジン冷却水加熱手段」が、其々実現されている。
【0056】
実施の形態3.
[実施の形態3のシステム構成]
次に、図12〜図13を参照して本発明の実施の形態3について説明する。本実施形態のシステムは、図1に示すエアコンディショナ温度コントローラ39及びその周辺に図12に示す構成を備える。そして、ECU50に、後述する図13のルーチンを実施させることにより実現することができる。
【0057】
図12は、エアコンディショナの温度調整を行うための構成を示す図である。エアコンディショナ回路38は、冷風側熱交換器70を備えている。冷風側熱交換器70は、エアコンディショナ温度コントローラ39の冷風通路72に接続されている。冷風通路72の上流には、冷風側ブロワー74が設けられている。冷風側ブロワー74の下流には、冷風調整弁76が設けられている。冷風通路72の下流端は、運転室内に繋がる送風通路78に接続している。送風通路には送風温度センサ79(図示略)が配置されている。
【0058】
また、排気通路12に配置された触媒16の下流には、温風側熱交換器80が設けられている。温風側熱交換器80は、エアコンディショナ温度コントローラ39の温風通路82に接続されている。温風通路82の上流には、温風側ブロワー84が設けられている。温風側ブロワー84の下流には、温風調整弁86が設けられている。温風通路の下流端は、送風通路78に接続されている。
【0059】
ECU50の出力側には、冷風側ブロワー74、冷風調整弁76、温風側ブロワー84、温風調整弁86が接続されている。ECU50の入力側には、送風温度センサ79が接続されている。
【0060】
[実施の形態3における特徴的制御]
上述した実施の形態1のシステムでは、エアコンディショナ回路38において室内に送風するための空気が冷やされる。そして、冷やされた空気は、エアコンディショナ温度コントローラ39によって加熱調整する必要がある。そこで、本実施の形態では、触媒下流の排気熱を再利用して、室内に送風する空気の温度を調整することとした。
【0061】
図13は、本実施の形態のシステムにおいて、空調の温度をコントロールするためにECU50が実行する制御ルーチンのフローチャートである。図13に示すルーチンでは、まず、ECU50は、室内に送風される空気の実温度を取得する(ステップ500)。さらに、室内に送風される空気の目標温度を取得する(ステップ510)。次に、ECU50は、上記実温度が目標温度よりも小さいか否かを判断する(ステップ520)。実温度が目標温度よりも小さいと判断された場合には、冷風側調整弁76の開度を小さくする(ステップ530)。加えて、温風側調整弁86の開度を大きくする(ステップ540)。具体的には、ECU50は、目標温度と両調整弁の開度の関係を定めた調整弁開度マップを有している。
【0062】
一方、実温度が目標温度よりも大きいと判断された場合には、ECU50は、冷風側調整弁76の開度を大きくする(ステップ550)。加えて、温風側調整弁86の開度を小さくする(ステップ560)。
【0063】
以上説明した通り、本実施の形態のシステム構成では、触媒下流の排気熱を利用して温風側熱交換器80を加熱することができる。そして、図13に示すルーチンによれば、エアコンディショナの目標温度に応じて、冷風側調整弁76と温風側調整弁80の開閉することができる。両調整弁の開閉により、エアコンディショナ回路38で冷やされた空気と、温風側熱交換器80で加熱された空気を混合され、室内に送風される空気の温度を目標温度とすることができる。このように、本実施形態のシステムによれば、触媒下流の排気熱を利用して、エアコンディショナの温度調節機能を実現することができる。
【0064】
ところで、上述した実施の形態3では、温風側熱交換器80を、触媒下流の排気熱のみにより加熱しているが、その加熱方法はこれに限定されるものではない。例えば、エンジン冷却水による加熱を併用することとしてもよい。
【0065】
また、上述した実施の形態3では、温度調整を、冷風側制御弁76と温風側制御弁86の開度を制御することで実現しているが、その温度調節方法はこれに限定されるものではない。例えば、冷風側ブロワー74と温風側ブロワー84による風量制御を併用して実現することとしてもよい。
【0066】
尚、上述した実施の形態3においては、エアコンディショナ回路38が前記第8の発明における「冷却器」に、温風側熱交換器80が前記第8の発明における「触媒下流熱交換器」に、冷風側ブロワー74と温風側ブロワー84と送風通路78とが前記第8の発明における「送風手段」に、また、ここでは、ECU50が、上記ステップ500〜560の処理を実行することにより前記第8の発明における「温度調節手段」が実現されている。
【図面の簡単な説明】
【0067】
【図1】本発明の実施の形態1のシステム構成を説明するための図である。
【図2】動作モード1において冷媒が流れる経路図である。
【図3】動作モード1において実現される冷却サイクルの概略図である。
【図4】動作モード1において実行される制御ルーチンのフローチャートである。
【図5】動作モード2において触媒を冷却する場合の冷媒経路図である。
【図6】動作モード2において触媒を加熱する場合の冷媒経路図である。
【図7】動作モード2において実行される制御ルーチンのフローチャートである。
【図8】動作モード3において実行される制御ルーチンのフローチャートである。
【図9】冷媒用放熱器36周辺の構成を示す図である。
【図10】冷媒用放熱器36の位置を示した図である。
【図11】本発明の実施の形態2において実行される制御ルーチンのフローチャートである。
【図12】エアコンディショナの温度調整を行うための構成を示す図である。
【図13】本発明の実施の形態3において実行される制御ルーチンのフローチャートである。
【符号の説明】
【0068】
1、2、3、4、5、6 流量制御弁
10 内燃機関
14 排気熱取込部
16 触媒
18 排気冷却/加熱ユニット部
26 冷媒通過部
28 排気通過部
30 電気式ヒータ
36 冷媒用放熱器
38 エアコンディショナ回路
39 エアコンディショナ温度コントローラ
40 排気通過部
42 冷媒通過部
62 冷却水ラジエータ
66 還流通路
70、80 冷風側熱交換器、温風側熱交換器
74、84 冷風側ブロワー、温風側ブロワー
76、86 冷風調整弁、温風調整弁
78 送風通路

【特許請求の範囲】
【請求項1】
車両に搭載される内燃機関と、
吸収式ヒートポンプを有するエアコンディショナとを備え、
前記吸収式ヒートポンプは、冷媒を加熱する発生器を有し、
前記発生器は、前記内燃機関の排気熱によって前記冷媒を加熱する第1排気熱熱交換器を備えることを特徴とする車両システム。
【請求項2】
前記発生器は、前記冷媒を加熱する電気式ヒータを備え、
前記発生器により加熱された前記冷媒の到達温度と相関を有する到達温度相関値を取得する到達温度取得手段と、
前記到達温度相関値が判定値よりも小さいか否かを判定するヒータ加熱判定手段と、
前記到達温度相関値が前記判定値よりも小さい場合に、前記電気式ヒータによって前記冷媒を加熱するヒータ加熱制御手段と、
を備えることを特徴とする請求項1記載の車両システム。
【請求項3】
前記吸収式ヒートポンプは、前記冷媒を放熱させる放熱器を備え、
前記内燃機関の排気通路に配置された触媒と、
前記触媒の上流又は近傍に配置された第2排気熱熱交換器と、
前記発生器で加熱された前記冷媒を前記第2排気熱熱交換器に流すための加熱通路と、
前記放熱器で放熱された前記冷媒を前記第2排気熱熱交換器に流すための冷却通路と、
前記触媒の床温と相関を有する床温相関値を取得する床温相関値取得手段と、
前記床温相関値に基づいて、前記発生器で加熱された前記冷媒を前記加熱通路に流す状態と、前記放熱器で放熱された前記冷媒を前記冷却通路に流す状態とを切り換える切換手段と、
を備えることを特徴とする請求項1又は2記載の車両システム。
【請求項4】
前記床温相関値が下限温度よりも低いか否かを判定する触媒加熱判定手段と、
前記床温相関値が前記下限温度よりも低い場合に、前記発生器で加熱された前記冷媒を前記加熱通路に流す触媒加熱手段と、
を備えること特徴とする請求項3記載の車両システム。
【請求項5】
前記床温相関値が上限温度よりも高いか否かを判定する触媒冷却判定手段と、
前記床温相関値が前記上限温度よりも高い場合に、前記放熱器で放熱された前記冷媒を前記冷却通路に流す触媒冷却手段と、
を備えることを特徴とする請求項3又は4記載の車両システム。
【請求項6】
前記触媒の硫黄被毒回復が必要か否かを判定する回復判定手段と、
前記硫黄被毒回復が必要な場合に、前記発生器で加熱された前記冷媒を前記加熱通路に流す硫黄被毒回復手段と、
を備えることを特徴とする請求項3記載の車両システム。
【請求項7】
前記吸収式ヒートポンプは、前記冷媒を放熱させる放熱器を備え、
エンジン冷却水の水温と相関を有する水温相関値を取得する水温取得手段と、
前記水温相関値が暖気判定値よりも小さいか否かを判定する暖気判定手段と、
前記水温相関値が前記暖気判定値よりも小さい場合に、前記放熱器に前記エンジン冷却水を流してエンジン冷却水を加熱するエンジン冷却水加熱手段と、
を備えることを特徴とする請求項1乃至6のいずれか1項記載の車両システム。
【請求項8】
前記吸収式ヒートポンプは、空気を冷却する冷却器を備え、
前記触媒下流の排気熱により、空気を加熱する触媒下流熱交換器と、
室内に送風する空気が目標温度となるように、前記冷却器で冷却された空気と、前記触媒下流熱交換器で加熱された空気とを混合する温度調節手段と、
前記混合した空気を室内に送風する送風手段と、
を備えることを特徴とする請求項1乃至7のいずれか1項記載の車両システム。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【図8】
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【図9】
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【図10】
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【図11】
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【図12】
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【図13】
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【公開番号】特開2009−262806(P2009−262806A)
【公開日】平成21年11月12日(2009.11.12)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2008−115630(P2008−115630)
【出願日】平成20年4月25日(2008.4.25)
【出願人】(000003207)トヨタ自動車株式会社 (59,920)
【Fターム(参考)】