説明

車両シートシステム

車両シートの乗員を身体的及び精神的に活性化するための疲労回復方法が提供される。そのために、シート形状を調整するためのマッサージ装置(18)をシートバックレスト(16)に組み込んだ車両シート(14)と、マッサージ装置(18)を制御するための制御装置(22)と、を備えた車両シートシステムが設けられ、この車両シートシステムは通信装置(24)を有し、この通信装置(24)を用いることにより、マッサージ装置(18)の制御に応じて少なくとも1つの指示を車両シート(14)の乗員(10)に伝達することができる。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、請求項1の前提部分に示されている種類の車両シートシステムに関する。さらに、本発明は、そのような車両シートシステムの車両シートに座る乗員の身体の活性化方法にも関する。
【背景技術】
【0002】
特許文献1から、加圧可能な多数のエレメントを有するマッサージ装置をシートバックレストに組み込んだ車両シートが知られており、これらのエレメントは、シート形状を調整するために制御装置によって制御可能であり、様々なマッサージ順序又はマッサージプログラムを実施することができる。車両シートの乗員は受動的な状態でマッサージを受けることにより、疲れを改善させることができる。特に渋滞での運転時間の増加又は単調な区間の走行によって、身体は疲労し、注意力が低下する。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【特許文献1】独国特許出願公開第102009008421号明細書
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
本発明の課題は、車両シートの乗員のために、身体を活性化するための疲労回復方法を提供することである。
【課題を解決するための手段】
【0005】
この課題は、本発明に基づき、請求項1の特徴を有する車両シートシステムおよび請求項5の特徴を有する方法によって解決される。本発明の適切な発展形態を備える有利な実施形態は、従属請求項に示されている。
【0006】
本発明に基づく課題を解決するため、シート形状を調整するためのマッサージ装置をシートバックレストに組み込んだ車両シートと、このマッサージ装置を制御するための制御装置と、を備える車両シートシステムが提案され、このシステムは通信装置を有し、この通信装置を用いることにより、マッサージ装置の制御に応じて少なくとも1つの指示を車両シートの乗員に伝達することができる。
【0007】
言い換えれば、制御されるマッサージ装置を装備した車両シートと通信装置とを備える車両シートシステムが設けられ、この通信装置を用いることによって、マッサージ装置のマッサージプログラム中に乗員に対して指示を与えることが可能である。これによって乗員は、マッサージの間、身体が活性化するように元気づけられ、例えば望ましいマッサージ作用に合わせて乗員の身体を意識的に動かすことによって、乗員は精神的にもアクティブになることができる。
【0008】
本発明の有利な発展形態では、通信装置によって、車両シートの乗員に視覚的及び/又は聴覚的指示を与えることができるようになっている。この場合、本発明のもう1つの実施形態では、視覚的指示が文章形式であり、及び/又は聴覚的指示が言語音であることにより、明瞭かつ明確な指示を乗員に伝達することができるため、特に有利であることが示される。
【0009】
本発明のもう1つの実施形態では、通信装置の指示が乗員の姿勢、体の緊張、呼吸、体の動き及び/又はマッサージ装置の動作に対する乗員の反応である場合は、さらに有利であることが示される。これにより、例えば上半身の様々な部分を意識的に活性化するために乗員に指示が出されることによって、例えば乗員の胴体筋肉の調整及び安定化を促進し、改善することができる。従って、例えば、乗員がマッサージ装置の圧力を背中に感じた場合、乗員の反応はシートバックレストの少なくとも1つの部分範囲を押し付けることであり得る。
【0010】
本発明に基づく車両シートシステムとの組み合わせですでに説明されている利点は、同様の方法において、本発明に基づく、請求項5に記載された乗員の身体的活性化方法にも適用される。
【0011】
本発明のさらなる利点、特徴及び詳細は、好ましい実施例及び図に基づく以下の説明に示されている。
【図面の簡単な説明】
【0012】
【図1】乗用車の乗員の側面図であり、乗員の脊椎が示されており、乗員は脊椎を丸めて車両シートに座っている。
【図2】図1の乗員の側面図であり、乗員は姿勢を変え、マッサージプログラムの指示に従っている。
【発明を実施するための形態】
【0013】
図1及び2は、乗用車11の乗員10の側面図であり、乗員の脊椎12が示されており、乗員は運転席側の車両シート14に座っている。
【0014】
長距離走行において座ったままの姿勢が長く続くと、人間工学的に最適にデザインされたシート構造でも乗員に身体的及び精神的疲労が生じる。このことは、当初最適な形で正しく保たれていた脊椎12の位置に変化を生じさせ、間違った姿勢にするおそれがある。
【0015】
図1では、乗員10の脊椎12が丸くなっていることが分かり、この姿勢では、胸部脊椎12が強く後ろへ曲がり(強い脊椎後弯)、同時に骨盤が後ろへ傾き、それによって腰部脊椎の中空部分の減少(生理学的脊椎前弯の減少)が生じる。脊椎12が丸くなると椎間板の負荷が不均一になり、椎間板の中心がずれて、好ましくない背筋の緊張を生じる可能性がある。
【0016】
この状態を変化させるため、この乗用車には車両シートシステムが設けられており、このシステムでは、車両シート14が、シート形状を調整するマッサージ装置18を組み込んだシートバックレスト16を有している。図2では、マッサージ装置18の多数のエレメント20のうちの2つのエレメント20が図示されており、これらのエレメントは、シート形状を調整するため、例えば圧力を加えて圧縮空気により膨らませることができる。そのようなエレメント20は、シートバックレスト16の中に、シートバックレスト16のセンターラインの左右に、センターラインに沿って左右対称に配置することができる。マッサージ装置18は、マッサージプログラムを実施するために、ここでは概略的にのみ示されている制御装置22によって制御することができる。
【0017】
さらに、この車両シートシステムは、ここでは概略的にのみ示されている通信装置24を有しており、この通信装置24を使って、マッサージ装置の制御に応じて、及び車両シートでマッサージプログラムが進行しているときに、車両シートの乗員に指示を伝達することができる。この通信装置24は、文章形式の指示を表示するディスプレイ26を有している。この場合、通信装置24又はディスプレイ26は、例えばインフォテインメントシステムの一部であり得る。
【0018】
指示を視覚的に伝達するディスプレイ26を備える通信装置24の補足又は代替として、例えば言語音による聴覚的指示も考えられる。
【0019】
乗員10は、マッサージの間、指示によってアクティブになるように要求されるため、希望するマッサージ作用に合わせて乗員の身体を意識的に動かすことにより、乗員は精神的にもアクティブになる。
【0020】
図2は、図1の乗員10の側面図であり、ここで、乗員10は通信装置24からの指示があった後に姿勢を変え、進行中のマッサージプログラムのさらなる指示に従っている。これらの指示は、乗員の姿勢、体の緊張、呼吸、体の動き及びマッサージ装置の動作に対する乗員10の反応に関係することができる。乗員10のそのような反応は、例えば、乗員がマッサージ装置18の下方の2つのエレメント20から生じる圧力を図2の矢印30で示されているように背中に感じた場合、図2の矢印28によって示されているようにシートバックレスト16の部分範囲に体を押し付けることであり得る。
【0021】
そのような指示は、例えば以下であることができる。
‐姿勢を正して座り、シートにもたれかかってください。
‐動作の間も姿勢は正しく保ちます。
‐背中に圧力を感じたら、その箇所に体を押し付けてください。
‐背中の下方に圧力が加わった時に、腹部の筋肉を緊張させ、背中の下方を4秒間後ろに押し付けます。足及び脚は押し付けないでください。姿勢を正しく保って、上半身をまっすぐにします。
‐背中の上部に圧力が加わったら、それらの箇所に体を押し付けてください。その他の箇所に圧力が加わった場合も同様に行います。
‐深呼吸をしてください。あるいは、筋肉を緊張させる際及び体を押し付ける際に息を吐いてください。
‐背中の下方に圧力を感じたら、腰部を後ろに回してください。
‐足の圧力は一定に保ちます!ペダルを押さないでください。
‐腹部の筋肉が緊張しているのを感じてください。
‐上半身はまっすぐに保ちます。
‐呼吸は引き続き続けます。
【0022】
マッサージプログラムでは、上半身の様々な部分を取り上げ、活性化させることができる。このような人間の疲労回復運動を活発に行うことが、胴体筋肉の調整と安定化につながることは明らかである。乗員に受動的に作用するマッサージに比べ、この機能は身体的にも精神的にも乗員を活発化することができる。
【符号の説明】
【0023】
10 乗員
12 胸部脊椎
14 車両シート
16 シートバックレスト
18 マッサージ装置
20 エレメント
22 制御装置
24 通信装置
26 ディスプレイ
28 矢印
30 矢印


【特許請求の範囲】
【請求項1】
シート形状を調整するためのマッサージ装置(18)をシートバックレスト(16)に組み込んだ車両シート(14)と、前記マッサージ装置(18)を制御するための制御装置(22)と、を備えた車両シートシステムであって、
前記車両シートシステムは通信装置(24)を有し、前記通信装置(24)を用いることにより、前記マッサージ装置(18)の制御に応じて少なくとも1つの指示を前記車両シート(14)の乗員(10)に伝達することができる、車両シートシステム。
【請求項2】
前記通信装置(24)によって、前記車両シートの前記乗員(10)に視覚的及び/又は聴覚的指示を与えることができる、請求項1に記載の車両シートシステム。
【請求項3】
前記視覚的指示は文章形式であり、及び/又は前記聴覚的指示は言語音であることを特徴とする、請求項2に記載の車両シートシステム。
【請求項4】
前記通信装置(24)の指示は、前記乗員(10)の姿勢、体の緊張、呼吸、体の動き及び/又は前記マッサージ装置の動作に対する前記乗員の反応であることを特徴とする、請求項1〜3のいずれか一項に記載の車両シート装置。
【請求項5】
車両シートシステムの制御装置(22)によって制御される、シート形状を調整するためのマッサージ装置(18)をシートバックレスト(16)に組み込んだ前記車両シートシステムの車両シート(14)に着席している乗員(10)を身体的に活性化するための方法であって、
前記マッサージ装置(18)の制御に応じて前記車両シート(14)の前記乗員(10)に少なくとも1つの指示が伝達されることを特徴とする、方法。

【図1】
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【図2】
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【公表番号】特表2013−518632(P2013−518632A)
【公表日】平成25年5月23日(2013.5.23)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2012−551508(P2012−551508)
【出願日】平成22年12月23日(2010.12.23)
【国際出願番号】PCT/EP2010/007938
【国際公開番号】WO2011/095201
【国際公開日】平成23年8月11日(2011.8.11)
【出願人】(598051819)ダイムラー・アクチェンゲゼルシャフト (1,147)
【氏名又は名称原語表記】Daimler AG
【住所又は居所原語表記】Mercedesstrasse 137,70327 Stuttgart,Deutschland
【Fターム(参考)】