説明

車両位置表示装置

【課題】もし実際よりも早く出発していたらどこまで行けたのか、または、もし実際よりも遅く出発したらどこまで来ていたのかに関する情報を車両の乗員に提供する。
【解決手段】車両の出発地点と、出発時刻と、出発地点および車両の現在位置を通る走行経路と、を記憶し、また、出発時刻よりも前または後にずれた仮想出発時刻を設定し(ステップ105)、走行経路上を仮想出発時刻に出発地点から走行したと仮定した場合の、現在時刻における車両の位置である仮想現在位置を特定し(ステップ110〜165)、特定された仮想現在位置を表示する(ステップ170)。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、車両位置表示装置に関するものである。
【背景技術】
【0002】
従来、経路上の現在地が走行予定に対して遅れているのか進んでいるのかを把握するために、車両の実際の現在位置とは別に、今回の出発時刻と過去の目的地までの所要時間の走行実績に基づいて、仮想の車両位置を算出し、算出した仮想位置を表示する技術が提案されている(特許文献1参照)。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【特許文献1】特開2007−114147号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
しかし、上記のような技術は、あくまでも今回と同じ時刻に出発地を出発したと仮定した上で仮想位置を表示するものである。本願発明者は、このような技術では対応できないユーザのニーズを着想した。具体的には、渋滞に遭遇したときに、もし実際よりも早く出発していたらどこまで行けたのか、遅く出発したらどこまで来ていたのかということが乗員にはわからないので、もっと早く出発していたらよかったんじゃないか、もっとゆっくり出てもかったんじゃないか、と悩んでしまうことがある。
【0005】
そこで、本発明は上記点に鑑み、もし実際よりも早く出発していたらどこまで行けたのか、または、もし実際よりも遅く出発したらどこまで来ていたのかに関する情報を車両の乗員に提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0006】
上記目的を達成するための請求項1に記載の発明は、車両の出発地点と、出発時刻と、前記出発地点および前記車両の現在位置を通る走行経路と、を記憶する記憶手段(17a)と、前記出発時刻よりも前または後にずれた仮想出発時刻を設定する設定手段(105)と、前記走行経路上を前記仮想出発時刻に前記出発地点から走行したと仮定した場合の、現在時刻における前記車両の位置である仮想現在位置を特定する特定手段(110〜165)と、特定された前記仮想現在位置を表示する表示手段(170)と、を備えた車両位置表示装置である。
【0007】
このように、設定した出発時刻よりも前または後にずれた仮想出発時刻を設定し、設定した仮想出発時刻に上記出発地点から走行したと仮定した場合の、現在時刻における車両の位置である仮想現在位置を表示することで、もし実際よりも早く出発していたらどこまで行けたのか、または、もし実際よりも遅く出発したらどこまで来ていたのかに関する情報を、車両の乗員に提供することができる。
【0008】
また、請求項2に記載の発明は、請求項1に記載の車両位置表示装置において、前記特定手段は、時間および位置毎に変動する道路交通情報に基づいて、前記走行経路上を前記仮想出発時刻に前記出発地点から走行したと仮定した場合の前記走行経路上の前記車両の通過地点毎の仮想通過時刻を算出し、算出した通過地点毎の仮想通過時刻に基づいて、前記仮想現在位置を特定することを特徴とする。
【0009】
このように、時間および位置毎に変動する道路交通情報に基づいて通過地点毎の仮想通過時刻を算出し、これに基づいて仮想現在位置を特定することで、時間毎に変動する各所の道路混雑度に応じたより正確な仮想現在位置を特定することができる。
【0010】
したがって、単に出発時刻から現在時刻までの時間と、仮想出発時刻から現在時刻までの時間との比が、出発地点から車両の実際の現在位置までの距離と、出発地点から仮想現在位置までの距離との比と同じになるように、仮想現在位置を決定するといった、走行時間と走行距離の比例関係を用いた単純な計算方法で得た結果と違い、例えば、あと30分速く出ていれば渋滞にひっかからずに済んだ、あと30分速く出ていてもどうせ渋滞に巻き込まれて結果は大差無かった等が、おおよそ判断できるようになり、乗員の納得感が向上する。
【0011】
また、請求項3に記載の発明は、請求項2に記載の車両位置表示装置において、前記記憶手段は、前記車両の外部の送信装置から逐次最新のものに更新されて送信される道路交通情報を、逐次受信して蓄積し、前記特定手段は、このように蓄積された道路交通情報に基づいて、前記仮想現在位置を特定することを特徴とする。
【0012】
このように、仮想現在位置の算出に用いる道路交通情報が、車両の外部の送信装置から逐次最新のものに更新されて送信される道路交通情報なので、この曜日のこの時間帯には必ず発生するという周期的な渋滞のみならず、事故等によって突発的に発生する渋滞に対しても、実際の道路交通状況に応じたより正確な仮想現在位置を特定することができる。
【0013】
また、請求項4に記載の発明は、請求項2ないし4のいずれか1つに記載の車両位置表示装置において、前記特定手段は、前記走行経路上で走行順に並んだ複数の通過地点について、前記出発地点および前記複数の通過地点のうち、隣り合う2地点間の区間の区間走行所要時間を、前記出発地点に近い方から順に、前記仮想出発時刻に順次積算することで、前記複数の通過地点における仮想通過時刻を順次算出し、前記仮想通過時刻に基づいて、現在時刻における前記車両の仮想現在位置を特定し、さらに前記特定手段は、区間の区間走行所要時間の算出方法としては、当該区間の始点に該当する通過地点の仮想通過時刻における、当該区間の区間走行所要時間を、前記道路交通情報に基づいて算出することを特徴とする。
【0014】
また、請求項5に記載の発明は、車両用の車両位置表示装置に用いられるプログラムであって、車両の出発地点と、出発時刻と、前記出発地点および前記車両の現在位置を通る走行経路と、を記憶する記憶手段(17a)と、前記出発時刻よりも前または後にずれた仮想出発時刻を設定する設定手段(105)、前記走行経路上を前記仮想出発時刻に前記出発地点から走行したと仮定した場合の、現在時刻における前記車両の位置である仮想現在位置を特定する特定手段(110〜165)、および、特定された前記仮想現在位置を表示する表示手段(170)として、車両位置表示装置のコンピュータを機能させるプログラムである。このように、本発明の特徴は、プログラムとしても実現可能である。
【0015】
なお、上記および特許請求の範囲における括弧内の符号は、特許請求の範囲に記載された用語と後述の実施形態に記載される当該用語を例示する具体物等との対応関係を示すものである。
【図面の簡単な説明】
【0016】
【図1】本発明の実施形態に係る車両用ナビゲーション装置1の構成図である。
【図2】制御回路17が実行する処理のフローチャートである。
【図3】混雑度と道路種別から平均車速を決定するためのテーブルである。
【図4】走行距離の計算例について説明する図である。
【図5】画像表示装置12における表示内容を示す図である。
【発明を実施するための形態】
【0017】
以下、本発明の一実施形態について説明する。図1に、本実施形態に係る車両用ナビゲーション装置1(車両位置表示装置の一例に相当する)のハードウェア構成を示す。この車両用ナビゲーション装置1は、車両に搭載され、位置検出器11、画像表示装置12、操作部13、スピーカ14、交通情報受信機15、地図データ取得部16、および制御回路17を有している。
【0018】
位置検出器11は、いずれも周知の図示しない加速度センサ、地磁気センサ、ジャイロセンサ、車速センサ、およびGPS受信機等のセンサを有しており、これらセンサの各々の性質に基づいた、車両の現在位置、向き、および速度を特定するための情報を制御回路17に出力する。
【0019】
画像表示装置12は、制御回路17から出力された映像信号に基づいた映像をユーザに表示する。表示映像としては、例えば現在地を中心とする地図等がある。
【0020】
操作部13は、車両用ナビゲーション装置1に設けられた複数のメカニカルスイッチ、画像表示装置12の表示面に重ねて設けられたタッチパネル等、ユーザの直接操作を受け付ける入力装置から成り、ユーザによる入力装置の操作に応じた信号を制御回路17に出力する。
【0021】
交通情報受信機15は、FMラジオ放送局、道路沿いに設置された路上機、携帯電話基地局等の車両外部の送信装置から逐次無線送信された道路交通情報を逐次受信し、受信した道路交通情報を制御回路17に出力する無線受信機である。
【0022】
受信する道路交通情報は、時間および位置毎に変動する道路の混雑状況(平均車速、渋滞度、区間走行所要時間)を示す道路交通情報であり、逐次最新のものに更新されて送信されるようになっている。
【0023】
より具体的には、道路交通情報は、道路区間毎に、その対象とする道路区間の位置座標(始点の位置座標、終点の位置座標等)、時刻を示す時刻情報、時刻情報が示す時刻におけるその区間の平均車速の情報を含むような区間データを含んでいる。
【0024】
なお、区間データによっては、時刻情報が示す時刻におけるその区間の平均車速に代えて、時刻情報が示す時刻におけるその区間の渋滞度(順調、混雑、渋滞等)の情報を含んでいる場合もある。
【0025】
更には、区間データによっては、時刻情報が示す時刻におけるその区間の平均車速に加えて、時刻情報が示す時刻においてその区間全体を走行するのに要する時間、すなわち、区間走行所要時間の情報を含んでいる場合もある。
【0026】
あるいは、区間データによっては、上記の平均車速の情報も、区間走行所要時間の情報も、渋滞度の情報も含まれていない場合もある。
【0027】
送信される道路交通情報に含まれる時刻情報および平均車速(または渋滞度、区間走行所要時間)の情報は、更新の度に新しいものに変化していく。
【0028】
地図データ取得部16は、HDD等の不揮発性の書き込み可能な記憶媒体およびそれら記憶媒体に対してデータの読み出しおよび書き込みを行う装置から成る。当該記憶媒体は、制御回路17が実行するプログラム、経路案内用の地図データ等を記憶している。
【0029】
地図データは、道路データおよび施設データを有している。道路データは、リンクの位置情報、種別(一般道、都市高速、高速道路の別)情報、ノードの位置情報、種別情報、および、ノードとリンクとの接続関係の情報等を含んでいる。施設データは、施設毎のレコードを複数有しており、各レコードは、対象とする施設の名称情報、所在位置情報、土地地番情報、施設種類情報等を示すデータを有している。
【0030】
制御回路(コンピュータに相当する)17は、CPU、RAM、ROM、I/O等を有するマイコンである。CPUは、ROMまたは地図データ取得部16から読み出した車両用ナビゲーション装置1の動作のためのプログラムを実行し、その実行の際にはRAM、ROM、および地図データ取得部16から情報を読み出し、RAMおよび(可能であれば)地図データ取得部16の記憶媒体に対して情報の書き込みを行い、位置検出器11、画像表示装置12、操作部13、スピーカ14、および交通情報受信機15と信号の授受を行う。
【0031】
制御回路17がプログラムを実行することによって行う具体的な処理としては、現在位置特定処理、地図表示処理、誘導経路算出処理、経路案内処理等がある。現在位置特定処理は、位置検出器11からの信号に基づいて、周知のマップマッチング等の技術を用いて車両の現在位置や向きを特定する処理である。地図表示処理は、車両の現在位置の周辺等の特定の領域の地図を、画像表示装置12に表示させる処理である。この際、地図表示のために用いる情報は、地図データから取得する。誘導経路算出処理は、操作部13からユーザ(ドライバ等の車両の乗員)による目的地点の入力を受け付け、出発地点から当該目的地点までの最適な誘導経路を算出し、算出した誘導経路をRAM等の記憶媒体に記録する処理である。経路案内処理は、算出された誘導経路に沿った走行を案内する処理であり、誘導経路と自車位置との位置関係を逐次監視し、誘導経路上の右左折交差点等の案内ポイントの手前に自車両が到達したときに、右折、左折等を指示する案内音声をスピーカ14に出力させ、当該案内ポイントの拡大図を画像表示装置12に表示させることで、誘導経路に沿った車両の運転を案内する処理である。
【0032】
また制御回路17は、プログラムを実行することによって、記録処理17a、および車両位置表示処理17bを実行するようになっている。
【0033】
まず、記録処理17aについて説明する。記録処理17aは、車両の出発地点、出発時刻、および、出発時刻以後現在までに車両が走行した実経路を記録すると共に、交通情報受信機15が逐次受信して制御回路17に出力した道路交通情報を蓄積する処理である。
【0034】
より具体的には、制御回路17は、記録処理17aにおいて、車両の主電源がオンとなったとき(ガソリン車両なら、イグニッションスイッチがオンとなったとき)、車両の現在位置および現在時刻の組を、車両の出発地点と出発時刻の組として地図データ取得部16の記憶媒体に上書き記録する。これによって、上記記憶媒体には、最新の出発地点および出発時刻の組が記録されることになる。
【0035】
また制御回路17は、記録処理17aにおいて、車両の走行中、定期的に(例えば1秒に1回)または一定距離(例えば10メートル)走行する度に、車両の現在位置を、実経路上の地点として、上記記憶媒体に追加記録していく。これら記録された地点群が、出発時刻以後現在までに車両が走行した実経路を示す情報となる。
【0036】
なお、上述の誘導経路算出処理によって誘導経路が算出され、かつ、経路案内処理によって誘導経路の案内が行われている場合、このように記録される実経路は、出発地点から現在位置までの誘導経路と同じになる。なぜなら、仮に車両が走行中に誘導経路から外れたとしても、誘導経路算出処理はそれを検知してリルート処理を実行し、誘導経路から外れた地点からの誘導経路を再計算するからである。
【0037】
また制御回路17は、記録処理17aにおいて、交通情報受信機15から出力された道路交通情報を受信する度に、その道路交通情報を上記記憶媒体に追加記録する。これによって、上記記憶媒体には、最新のものだけでなく、過去の道路交通情報も、蓄積されることになる。
【0038】
なお、交通情報受信機15および制御回路17は、車両の主電源がオフの際にも車両のバッテリから電力供給を受けて作動することで、車両の主電源がオフの時間帯における道路交通情報も蓄積するようになっていてもよい。
【0039】
次に、車両位置表示処理17bについて説明する。車両位置表示処理17bは、出発時刻が上記の出発時刻よりも前または後にずれたなら、車両が現在どの位置にいることになるのかを表示するための処理である。
【0040】
図2に、この車両位置表示処理17bのフローチャートを示す。制御回路17は、操作部13に対して車両位置表示処理17bを実行開始する旨の操作が行われたことに基づいて、この図2の処理を実行し始める。
【0041】
そしてまずステップ105で、仮想出発時刻を設定する。この仮想出発時刻は、操作部13に対するユーザの操作に基づいて、上述の出発時刻よりも前の時刻(早い時刻)か、後の時刻(遅い時刻)に設定する。
【0042】
具体的には、ユーザが「前」を示す操作を行うと、あらかじめ定められた時間(例えば30分)だけ上述の出発時刻よりも前の時刻を仮想出発時刻とし、ユーザが「後」を示す操作を行うと、あらかじめ定められた時間(例えば30分)だけ上述の出発時刻よりも後の時刻を仮想出発時刻としてもよい。あるいは、ユーザが上述の出発時刻に対する相対時間を直接入力し、その相対時間だけ出発時刻をずらした時刻を、仮想出発時刻としてもよい。
【0043】
続いてステップ110では、走行経路を設定する。仮想出発時刻が出発時刻よりも後にずれた時刻の場合は、車両が出発地点を出発して以降現在までに走行した実経路自体を走行経路とする。実経路は上述の通り記録処理17aによって記録されている。
【0044】
また、仮想出発時刻が出発時刻よりも前の時刻である場合は、現在以降走行すると予想される予想経路を実経路に結合した経路を、走行経路とする。経路案内処理によって誘導経路の案内が行われていない場合は、現在位置から目的地点までの誘導経路を予想経路として採用する。
【0045】
なお、経路案内処理によって誘導経路の案内が行われていない場合は、仮想出発時刻が出発時刻よりも前の時刻であった場合は、このステップ110で、仮想現在位置を表示できない旨のメッセージをスピーカ14又は画像表示装置12に報知させて車両位置表示処理17bを終了してもよい。
【0046】
続いてステップ115では、RAM中の地点変数nに対して、出発地点の位置座標を代入すると共に、RAM中の時刻変数tに対して、ステップ105で設定した仮想出発時刻を代入する。この地点変数n、時刻変数tは、作業用の変数であり、走行経路上の出発地点または通過地点の位置座標、および、仮想出発時刻に出発地点を出発していればその通過地点(または出発地点)を通過したであろう時刻(すなわち仮想通過時刻)を表す変数である。
【0047】
続いてステップ118では、現在の地点変数nが示す地点を始点とし、走行経路と同じ方向に伸び、走行経路上の一点を終点とし、かつ、時刻変数tの示す時刻に最も近い時刻情報を有する区間データを抽出する。ただし、図2の処理を開始してから1回目のステップ118に限っては、現在の地点変数nが示す地点を(始点に限らず)含み、走行経路と同じ方向に伸び、走行経路上の一点を終点とし、かつ、時刻変数tの示す時刻に最も近い時刻情報を有する区間データを抽出する。そして、その抽出した区間データ中に、区間走行所要時間の情報が含まれているか否かを判定する。
【0048】
含まれていると判定した場合、続いてステップ120に進んで、抽出した区間データの終点の位置座標を、次の通過地点に設定し、さらに、その区間データに含まれる区間走行所要時間を、RAM中の作業用の変数である追加時間Δtに代入する。ステップ120の後、続いてステップ155に進む。
【0049】
また、ステップ118で含まれていないと判定した場合、続いてステップ125に進み、ステップ118で抽出した区間データ中に平均車速の情報が含まれているか否かを判定する。
【0050】
ステップ125で含まれていると判定した場合、続いてステップ130に進んで、抽出した区間データの終点の位置座標を、次の通過地点に設定し、さらに、現在の地点変数nから当該終点までの走行経路に沿った距離を算出し、算出した距離を、当該区間データに含まれる平均車速で除算し、その除算結果の値を、RAM中の作業用の変数である追加時間Δtに代入する。ステップ130の後、続いてステップ155に進む。
【0051】
また、ステップ125で含まれていないと判定した場合、続いてステップ135に進み、ステップ118で抽出した区間データ中に渋滞度の情報が含まれているか否かを判定する。
【0052】
ステップ135で含まれていると判定した場合、続いてステップ140に進み、抽出した区間データ中の渋滞度と、当該区間データが対象とする地点の道路種別(道路データに基づいて特定する)とに基づいて、図3に例示するような表を用いて、平均車速を算出する。この図の例では、例えば、渋滞度が混雑で、道路種別が都市高速ならば、平均車速は40km/hとなる。
【0053】
続いてステップ145に進んで、抽出した区間データの終点の位置座標を、次の通過地点に設定し、さらに、現在の地点変数nから当該終点までの走行経路に沿った距離を算出し、算出した距離を、ステップ140で算出した平均車速で除算し、その除算結果の値を、RAM中の作業用の変数である追加時間Δtに代入する。ステップ145の後、続いてステップ155に進む。
【0054】
なお、ステップ118、125、135では、古すぎる情報を参照しないよう、抽出した区間データ中の時刻情報が時刻変数tの示す時刻よりも所定時間(例えば30分)以上離れていれば、その区間データ中に区間走行所要時間の情報も、平均車速の情報も、渋滞度の情報も含まれていないと判定してもよい。
【0055】
ステップ120、130、145に続くステップ155では、地点変数nに次の通過地点の位置座標を代入する。これにより、これ以降、次の通過地点が、今回の通過地点として扱われる。更にステップ155では、時刻変数tに追加時間Δtを加算した結果を、時刻変数tに代入する。つまり、時刻変数tの値を追加時間Δtだけ増加させる。その結果の時間変数tは、新たに設定された今回の通過地点の仮想通過時刻を表すことになる。
【0056】
続いてステップ160では、ステップ155で決定した次の通過地点の仮想通過時刻が既に現在時刻に到達している(すなわち、現在時刻以降の時刻となっている)か否かを判定し、到達していなければ再度ステップ118に戻り、到達していれば続いてステップ165を実行する。
【0057】
そしてステップ165では、車両の仮想現在位置を特定する。具体的には、現在の通過地点から次回の通過地点(現在の地点変数nが示す地点)までの走行経路上のいずれかの地点を、仮想現在位置とする。例えば、現在の通過地点を仮想現在位置としてもよいし、次回の通過地点を仮想現在位置としてもよいし、現在の通過地点と次回の通過地点から等距離にある地点を仮想現在位置としてもよい。このように特定した仮想現在位置は、ステップ105で設定した仮想出発時刻に出発地点を出発したならば現時点で車両がいるであろう地点である。
【0058】
続いてステップ170では、画像表示装置12を用いて、ステップ165で特定した仮想現在位置を、地図上に表示させる。図4に、画像表示装置12における表示例を示す。この図に示すように、地図20上に、実際の車両の現在位置を示す現在位置マーク21を表示すると共に、仮想位置マーク22または23を表示させる。設定した仮想出発時刻が実際の出発時刻よりも前にずれているなら、現在位置よりも進んだ位置にある仮想位置マーク22が表示されることになり、設定した仮想出発時刻が実際の出発時刻よりも後にずれているなら、現在位置よりも手前の位置にある仮想位置マーク23が表示されることになる。
【0059】
ここで、ステップ118〜160の繰り返しのうち1回分の処理内容の例について、図5を用いて説明する。図5に示すように、ステップ118〜160の繰り返しにより、地点変数nの値が地点32の位置座標となり、時間変数tの値が8時15分となったとする。つまり、今回の通過地点が地点32であり、今回の通過地点の仮想通過時刻が8時15であるとする。このとき、地点32を始点とし地点33を終点とする区間の区間データのうち、時間変数tの示す時刻に最も近い時刻情報を有する区間データにおいて、区間走行所要時間の情報が含まれておらず、かつ、平均車速の情報が含まれていたとする。そして、その平均車速データが12km/hを示していたとする。
【0060】
この場合、次のステップ118〜160の処理においては、ステップ118、125、130、155、160の順に処理が進み、ステップ130では、地点33を次の通過地点とし、走行経路31に沿った地点31から地点32までの距離である1kmを上記平均車速12km/hで除算した結果の値である5分を、地点32〜地点33を通過するのに必要な区間走行所要時間である追加時間Δtとし、さらに、地点33が次の通過地点に設定される。
【0061】
そして、ステップ155では、次の通過地点である地点33が新たな今回の通過地点となり、時間変数t(8時15分)に追加時間Δt(5分)を加算した結果の8時20分が今回の通過地点33の仮想通過時刻となる。
【0062】
このように、制御回路17は、ステップ118〜160を繰り返すことで、走行経路上で走行順に並んだ複数の通過地点32、33等について、出発地点および複数の通過地点32、33等のうち、隣り合う2地点間32、33の区間の区間走行所要時間を、出発地点に近い方から順に、仮想出発時刻に順次積算することで、複数の通過地点32、33等における仮想通過時刻を順次算出する。そしてステップ165で、仮想通過時刻に基づいて、現在時刻における車両の仮想現在位置を特定する。
【0063】
以上説明した通り、記録処理17aおよび車両位置表示処理17bを実行することで、制御回路17は、車両の出発地点と、出発時刻と、出発時刻以後現在までに車両が走行した実経路(誘導経路と実質的に同じである)と、を記憶し、また、出発時刻よりも前または後にずれた仮想出発時刻を設定し(ステップ105)、実経路を含む走行経路(出発地点および車両の現在位置を通る走行経路でもある)上を仮想出発時刻に出発地点から走行したと仮定した場合の、現在時刻における車両の位置である仮想現在位置を特定し(ステップ110〜165)、特定された仮想現在位置を表示する(ステップ170)。
【0064】
このように、設定した出発時刻よりも前または後にずれた仮想出発時刻を設定し、設定した仮想出発時刻に上記出発地点から走行したと仮定した場合の、現在時刻における車両の位置である仮想現在位置を表示することで、もし実際よりも早く出発していたらどこまで行けたのか、または、もし実際よりも遅く出発したらどこまで来ていたのかに関する情報を、車両の乗員に提供することができる。
【0065】
また、制御回路17は、時間および位置毎に変動する道路交通情報に基づいて、走行経路上を仮想出発時刻に出発地点から走行したと仮定した場合の走行経路上の車両の通過地点毎の仮想通過時刻を算出し、算出した通過地点毎の仮想通過時刻に基づいて、仮想現在位置を特定する。
【0066】
このように、時間および位置毎に変動する道路交通情報に基づいて通過地点毎の仮想通過時刻を算出し、これに基づいて仮想現在位置を特定することで、時間毎に変動する各所の道路混雑度(平均車速、渋滞度、区間走行所要時間等)に応じたより正確な仮想現在位置を特定することができる。
【0067】
したがって、単に出発時刻から現在時刻までの時間と、仮想出発時刻から現在時刻までの時間との比が、出発地点から車両の実際の現在位置までの距離と、出発地点から仮想現在位置までの距離との比と同じになるように、仮想現在位置を決定するといった、走行時間と走行距離の比例関係を用いた単純な計算方法で得た結果と違い、例えば、あと30分速く出ていれば渋滞にひっかからずに済んだ、あと30分速く出ていてもどうせ渋滞に巻き込まれて結果は大差無かった等が、おおよそ判断できるようになり、乗員の納得感が向上する。
【0068】
また、制御回路17は、車両の外部の送信装置から逐次最新のものに更新されて送信されるリアルタイムの道路交通情報を、逐次受信して蓄積し、このように蓄積された道路交通情報に基づいて、仮想現在位置を特定する。
【0069】
このように、仮想現在位置の算出に用いる道路交通情報が、車両の外部の送信装置から逐次最新のものに更新されて送信される道路交通情報なので、この曜日のこの時間帯には必ず発生するという周期的な渋滞のみならず、事故等によって突発的に発生する渋滞に対しても、実際の道路交通状況(平均車速、渋滞度、区間走行所要時間等)に応じたより正確な仮想現在位置を特定することができる。
【0070】
また、制御回路17は、出発時刻よりも前にずれた仮想出発時刻を設定し、また、実経路と、現在位置以降前記車両が走行すると予想される予想経路とから成る経路を走行経路として用い、予定経路は、あらかじめ算出された目的地までの最適な誘導経路の一部となる。このようになっていることで、現在位置以降の予想経路も高い正確性で算出することができ、その分、予想経路上の仮想現在位置の正確性も高くなる。
【0071】
なお、上記実施形態において、制御回路17が、記録処理17aを実行することで、記憶手段の一例として機能し、車両位置表示処理17bのステップ105を実行することで設定手段の一例として機能し、ステップ110〜165を実行することで、特定手段の一例として機能し、ステップ170を実行することで、表示手段の一例として機能する。
【0072】
(他の実施形態)
以上、本発明の実施形態について説明したが、本発明の範囲は、上記実施形態のみに限定されるものではなく、本発明の各発明特定事項の機能を実現し得る種々の形態を包含するものである。
【0073】
例えば、上記実施形態では、1度に1つの仮想出発時刻を設定しているが、複数(例えば実際の出発時刻よりも30分前と30分後)の仮想出発時刻を設定し、それら仮想出発時刻の個々について、ステップ110〜ステップ165の処理を実行し、その結果得た複数の仮想現在位置を示す仮想現在位置マークを同時に、画像表示装置12を用いて地図および現在位置マークと共に表示するようになっていてもよい。このようにすることで、複数の仮想現在位置の一覧性が高くなる。
【0074】
また、上記実施形態では、車両の外部の送信装置から逐次最新のものに更新されて送信されるリアルタイムの道路交通情報を、逐次受信して蓄積し、このように蓄積された道路交通情報に基づいて、仮想現在位置を特定するようになっている。しかし、必ずしもこのようになっておらずともよい。
【0075】
例えば、上述の道路交通情報は、地図データ取得部16の記憶媒体に統計情報としてあらかじめ(例えば工場出荷時に)記録されたものであってもよい。この統計情報は、例えば、曜日、時刻、位置毎に、平均車速(または渋滞度)が設定されたデータであってもよい。このような統計情報としての道路交通情報を用いて仮想現在位置を特定する場合には、この曜日のこの時間帯には必ず発生するという周期的な渋滞のみしか反映することができず、突発的な渋滞を反映することができない。しかしその反面、外部と通信を行わずともよいという利点を有する。
【0076】
また、上記実施形態では、道路交通情報は、時間および位置毎に変動する平均車速、走行所要時間、渋滞度の情報から成っているが、このような道路交通情報を用いず、単に出発時刻から現在時刻までの時間と、仮想出発時刻から現在時刻までの時間との比が、出発地点から車両の実際の現在位置までの距離と、出発地点から仮想現在位置までの距離との比と同じになるように、仮想現在位置を決定するといった、走行時間と走行距離の比例関係を用いた単純な計算方法を採用してもよい。このような方法であっても、一応ユーザの気休めにはなり、それでユーザの気が済む場合もある。
【0077】
また、上記の実施形態において、制御回路17がプログラムを実行することで実現している各機能は、それらの機能を有するハードウェア(例えば回路構成をプログラムすることが可能なFPGA)を用いて実現するようになっていてもよい。
【0078】
また、車両の出発地点、出発時刻、出発時刻以後現在までに車両が走行した実経路、道路交通情報等の記録が必要なデータは、地図データ取得部16の記憶媒体に限らず、他の、車両用ナビゲーション装置1の主電源の供給が停止してもデータを保持し続けることができる記憶媒体(例えばフラッシュメモリ、EEPROM、バックアップRAM、HDD)に記憶されるようになっていてもよい。その場合、地図データ取得部16の記憶媒体は、HDD等の書き込み可能な記憶媒体である必要はなく、DVD、CD−ROM等の書き込み不可能な記憶媒体であってもよい。
【0079】
また、仮想現在位置を特定する計算をナビゲーション装置で行わなくてもよい。交通情報センター側で仮想現在位置を特定する計算を行い、求めた仮想現在位置を送信装置を用いてナビゲーション装置に送信してもよい。
【0080】
また、本発明のナビゲーション装置は、必ずしも車載用のものでなくともよい。例えば、ナビゲーション装置は、ユーザが携帯するタイプのものであってもよいし、車両以外の移動体(例えば、船舶、航空機等)に搭載されるタイプのものであってもよい。
ポータブルナビでもよい。
【符号の説明】
【0081】
1 車両用ナビゲーション装置
17a 記録処理
17b 車両位置表示処理
20 地図
21 現在位置マーク
22、23 仮想現在位置マーク
31 走行経路
32、33 通過地点

【特許請求の範囲】
【請求項1】
車両の出発地点と、出発時刻と、前記出発地点および前記車両の現在位置を通る走行経路と、を記憶する記憶手段(17a)と、
前記出発時刻よりも前または後にずれた仮想出発時刻を設定する設定手段(105)と、
前記走行経路上を前記仮想出発時刻に前記出発地点から走行したと仮定した場合の、現在時刻における前記車両の位置である仮想現在位置を特定する特定手段(110〜165)と、
特定された前記仮想現在位置を表示する表示手段(170)と、を備えた車両位置表示装置。
【請求項2】
前記特定手段は、時間および位置毎に変動する道路交通情報に基づいて、前記走行経路上を前記仮想出発時刻に前記出発地点から走行したと仮定した場合の前記走行経路上の前記車両の通過地点毎の仮想通過時刻を算出し、算出した通過地点毎の仮想通過時刻に基づいて、前記仮想現在位置を特定することを特徴とする請求項1に記載の車両位置表示装置。
【請求項3】
前記記憶手段は、前記車両の外部の送信装置から逐次最新のものに更新されて送信される道路交通情報を、逐次受信して蓄積し、
前記特定手段は、このように蓄積された道路交通情報に基づいて、前記仮想現在位置を特定することを特徴とする請求項2に記載の車両位置表示装置。
【請求項4】
前記特定手段は、前記走行経路上で走行順に並んだ複数の通過地点について、前記出発地点および前記複数の通過地点のうち、隣り合う2地点間の区間の区間走行所要時間を、前記出発地点に近い方から順に、前記仮想出発時刻に順次積算することで、前記複数の通過地点における仮想通過時刻を順次算出し、前記仮想通過時刻に基づいて、現在時刻における前記車両の仮想現在位置を特定し、
さらに前記特定手段は、区間の区間走行所要時間の算出方法としては、当該区間の始点に該当する通過地点の仮想通過時刻における、当該区間の区間走行所要時間を、前記道路交通情報に基づいて算出することを特徴とする請求項2ないし4のいずれか1つに記載の車両位置表示装置。
【請求項5】
車両用の車両位置表示装置に用いられるプログラムであって、
車両の出発地点と、出発時刻と、前記出発地点および前記車両の現在位置を通る走行経路と、を記憶する記憶手段(17a)と、
前記出発時刻よりも前または後にずれた仮想出発時刻を設定する設定手段(105)、
前記走行経路上を前記仮想出発時刻に前記出発地点から走行したと仮定した場合の、現在時刻における前記車両の位置である仮想現在位置を特定する特定手段(110〜165)、および、
特定された前記仮想現在位置を表示する表示手段(170)として、車両位置表示装置のコンピュータを機能させるプログラム。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【公開番号】特開2011−257292(P2011−257292A)
【公開日】平成23年12月22日(2011.12.22)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2010−132793(P2010−132793)
【出願日】平成22年6月10日(2010.6.10)
【出願人】(000004260)株式会社デンソー (27,639)
【Fターム(参考)】