説明

車両内表示設定装置

【課題】 個々のドライバーの視認反応特性に適合した表示設定を行うことができる車両内表示設定装置を提供する。
【解決手段】 車両内表示設定装置は、まずドライバーの顔画像データに基づいてドライバーの視線位置(注視範囲)を検出した後、ドライバーの視線位置の近傍に任意の色のポイント表示を行う。続いて、ドライバーの顔画像データに基づいてドライバーの視線がポイント表示に移動したかどうかを判断し、ドライバーの視線がポイント表示に移動したときは、その視線移動時間を計測する。続いて、視線移動時間が閾値よりも短いかどうかを判断し、視線移動時間が閾値よりも短いときは、そのポイント表示した色を視認可能色として記憶する。そして、記憶された視認可能色の何れかをヘッドアップディスプレイ及びメータ等の表示色に設定する。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、車両内に配置されたヘッドアップディスプレイやメータ等の表示設定を行う車両内表示設定装置に関するものである。
【背景技術】
【0002】
従来の車両内表示設定装置としては、例えば特許文献1に記載されているように、車両のウィンドシールドのうち表示領域における平均輝度(表示輝度)及び背景領域における平均輝度(背景輝度)から調整すべき設定輝度を求め、この設定輝度に応じてヘッドアップディスプレイを制御し、表示像の輝度を調整するようにしたものが知られている。
【特許文献1】特開2007−50757号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0003】
一般にドライバーが好むヘッドアップディスプレイやメータ等の表示形態は、ドライバーの視認反応特性によって異なる。しかし、上記従来技術においては、個々のドライバーの視認反応特性を考慮した表示輝度の調整がなされていない。
【0004】
本発明の目的は、個々のドライバーの視認反応特性に適合した表示設定を行うことができる車両内表示設定装置を提供することである。
【課題を解決するための手段】
【0005】
本発明は、車両内に配置された表示部の表示設定を行う車両内表示設定装置において、ドライバーの視線を監視してドライバーの注視範囲を検出する注視範囲検出手段と、ドライバーの注視範囲外となる位置に表示サンプルを投影させる投影手段と、表示サンプルに対するドライバーの視線の移動時間を検出し、表示サンプルに対するドライバーの視認反応性を判定する視認反応性判定手段と、表示サンプルに対するドライバーの視認反応性に基づいて表示部の表示設定を行う表示設定手段とを備えることを特徴とするものである。
【0006】
このように本発明の車両内表示設定装置においては、ドライバーの注視範囲外となる位置に表示サンプルを投影させ、その表示サンプルに対するドライバーの視線の移動時間を検出して、表示サンプルに対するドライバーの視認反応性を判定し、その判定結果に基づいて、ドライバーが見やすい表示形態(表示色や表示輝度等)を設定する。従って、ヘッドアップディスプレイやメータ等の表示部は、当該ドライバーが視認しやすい表示で情報を提供することとなる。これにより、個々のドライバーの視認反応特性に適合した表示設定を実現することができる。
【0007】
好ましくは、投影手段は、表示サンプルの色を変更して、ドライバーの注視範囲外となる位置に表示サンプルを投影させ、表示設定手段は、表示サンプルの色に対するドライバーの視認反応性に基づいて表示部の表示色を設定する。この場合には、表示部の表示色を個々のドライバーが見やすい色に設定することができる。
【0008】
また、投影手段は、表示サンプルの輝度を変更して、ドライバーの注視範囲外となる位置に表示サンプルを投影させ、表示設定手段は、表示サンプルの輝度に対するドライバーの視認反応性に基づいて表示部の表示輝度を設定しても良い。この場合には、表示部の表示輝度を個々のドライバーが見やすい輝度に設定することができる。
【発明の効果】
【0009】
本発明によれば、個々のドライバーの視認反応特性に適合した表示設定を行うことができる。これにより、ドライバーは表示部の表示が見やすくなるため、運転しやすくなる等、利便性の向上を図ることが可能となる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0010】
以下、本発明に係わる車両内表示設定装置の好適な実施形態について、図面を参照して詳細に説明する。
【0011】
図1は、本発明に係わる車両内表示設定装置の一実施形態を示す概略構成図である。同図において、本実施形態の車両内表示設定装置1は、車両内に配置されたヘッドアップディスプレイ、メータ、ナビディスプレイ等の表示設定を行う装置である。
【0012】
車両内表示設定装置1は、ドライバーの顔を撮像してドライバーの顔画像を取得するカメラ2と、このカメラ2と接続されたECU(Electronic Control Unit)3とを備えている。カメラ2は、例えば近赤外カメラやCCDカメラであり、図2に示すように、インストルメントパネル4の上部に配置されている。
【0013】
ECU3には、ヘッドアップディスプレイ5が接続されている。ヘッドアップディスプレイ5は、インストルメントパネル4内に配置された投射器(図示せず)を有している。ヘッドアップディスプレイ5は、図2に示すように、投射器によって所定の情報を示した表示光を照射して、フロントウインドウ6のヘッドアップディスプレイ表示領域6aに種々の映像を投影(表示)させる。また、ヘッドアップディスプレイ5は、ヘッドアップディスプレイ5やメータ7等の表示設定を行うために、投射器によりスポット光を照射して、フロントウインドウ6に円形の表示サンプルPを投影(表示)させる。
【0014】
ECU3は、CPU、ROM、RAM等からなるマイクロコンピュータを主要構成部品としている。ECU3は、カメラ2で取得されたドライバーの顔画像データを入力し、所定の処理を行い、ドライバーに適したヘッドアップディスプレイ5及びメータ7等の表示形態を設定する。
【0015】
図3は、ECU3により実行される表示設定処理手順を示すフローチャートである。図3において、まずドライバーの視認反応特性の設定が完了していないかどうかを判定し(手順S51)、ドライバーの視認反応特性の設定が完了していないときは、複数の色表示に対するドライバーの視認反応特性を検出する(手順S52)。
【0016】
この視認反応特性検出の処理手順(手順S52)の詳細を図4に示す。図4において、まずカメラ2で取得されたドライバーの顔画像データに基づいて、現在のドライバーの視線位置(注視範囲)を検出する(手順S61)。
【0017】
続いて、ヘッドアップディスプレイ5に表示制御信号を送出し、フロントウインドウ6におけるドライバーの視線位置の近傍に任意の色の表示サンプルPのポイント表示を行う(手順S62)。このとき、ポイント表示の輝度(明るさ)は、予め設定された輝度とする。例えば図2に示すように、ドライバーの視線位置Qがヘッドアップディスプレイ表示領域6aの外にある場合には、ヘッドアップディスプレイ表示領域6a内に表示サンプルPのポイント表示を行う。
【0018】
続いて、カメラ2で取得されたドライバーの顔画像データに基づいて、ドライバーの視線がポイント表示に移動したかどうかを判断する(手順S63)。ドライバーの視線がポイント表示に移動したと判断されたときは、ポイント表示の開始からドライバーの視線がポイント表示に移動した時点までの時間(視線移動時間)を計測する(手順S64)。
【0019】
続いて、視線移動時間が予め設定された閾値よりも短いかどうかを判断し(手順S65)、視線移動時間が閾値よりも短いときは、そのポイント表示した色を視認可能色として視線移動時間と共にメモリ(図示せず)に記憶する(手順S66)。
【0020】
このような視認反応特性検出処理は、ヘッドアップディスプレイ5及びメータ7等の表示色として考えられる複数の色について繰り返し行われる。
【0021】
図3に戻り、上記手順S52の視認反応特性検出処理を実行した後、メモリに記憶された何れかの視認可能色をヘッドアップディスプレイ5及びメータ7等の表示色に設定する(手順S53)。このとき、例えばメモリに記憶された複数の視認可能色のうち視線移動時間が最も短い視認可能色を、表示色として決定する。
【0022】
ECU3は、そのように設定された表示色の情報をヘッドアップディスプレイ5及びメータ7等に送出し記憶させる。これにより、ヘッドアップディスプレイ5及びメータ7等は、その表示色で表示を行うこととなる。
【0023】
以上において、カメラ2及びECU3の上記手順S61は、ドライバーの視線を監視してドライバーの注視範囲Qを検出する注視範囲検出手段を構成する。ECU3の上記手順S62は、ドライバーの注視範囲Q外となる位置に表示サンプルPを投影させる投影手段を構成する。ECU3の上記手順S63〜S65は、表示サンプルPに対するドライバーの視線の移動時間を検出し、表示サンプルPに対するドライバーの視認反応性を判定する視認反応性判定手段を構成する。ECU3の上記手順S66,S53は、表示サンプルPに対するドライバーの視認反応性に基づいて表示部5,7の表示設定を行う表示設定手段を構成する。
【0024】
以上のように本実施形態にあっては、ドライバーの視線位置を検出し、フロントウインドウ6におけるドライバーの視線位置の近傍へのポイント表示を複数の色について行い、その時の視線移動時間を計測し、その計測結果からヘッドアップディスプレイ5及びメータ7等の表示色を設定するので、ドライバーにとって最適な表示色で情報提供を行うことができる。これにより、ドライバー個々の視認感度特性に合った表示を行うことが可能となる。
【0025】
図5は、本発明に係わる車両内表示設定装置の他の実施形態として、視認反応特性検出の処理手順の詳細の変形例を示すフローチャートであり、図4に示すフローチャートに相当するものである。図中、図4に示すものと同一の手順には同じ符号を付し、その説明を省略する。
【0026】
図5において、上記の手順S62を実行した後、カメラ2で取得されたドライバーの顔画像データに基づいて、ポイント表示の開始から所定時間(例えば2秒)内にドライバーの視線がポイント表示に移動したかどうかを判断する(手順S71)。
【0027】
所定時間内にドライバーの視線がポイント表示に移動しなかったと判断されたときは、ポイント表示の輝度を高く(明るく)する(手順S72)。このとき、所定時間内にドライバーの視線がポイント表示に移動したと判断されるまで、ポイント表示の輝度を低い(暗い)状態から段階的に高くしていく。所定時間内にドライバーの視線がポイント表示に移動したと判断されたときは、上述したように視線移動時間を計測する(手順S64)。
【0028】
その後、手順S65において視線移動時間が閾値よりも短いと判断されたときは、そのポイント表示した色及び輝度を視認可能色として視線移動時間と共にメモリ(図示せず)に記憶する(手順S73)。
【0029】
このような本実施形態においては、色に対するドライバーの視認反応特性だけでなく、輝度に対するドライバーの視認反応特性も考慮して、ヘッドアップディスプレイ5及びメータ7等の表示設定を行うこととなる。従って、ドライバーにとって最適な表示色及び輝度(明るさ)で情報提供を行うことができる。これにより、ドライバー個々の視認感度特性に一層適合した表示を行うことが可能となる。
【0030】
図6は、本発明に係わる車両内表示設定装置の更に他の実施形態として、視認反応特性検出の処理手順の詳細の他の変形例を示すフローチャートであり、図4及び図5に示すフローチャートに相当するものである。図中、図4及び図5に示すものと同一の手順には同じ符号を付し、その説明を省略する。なお、本処理において、輝度決定フラグFは予め「0」に初期設定されている。
【0031】
図6において、上記の手順S61を実行した後、輝度決定フラグFが「0」であるかどうかを判断する(手順S81)。輝度決定フラグFが「0」であると判断されたときは、上記の手順S62,S71を実行する。そして、手順S71において所定時間内にドライバーの視線がポイント表示に移動したと判断されたときは、その時のポイント表示の輝度をその後の処理に使用する輝度に決定し、メモリ(図示せず)に記憶する(手順S82)。また、輝度決定フラグFを「1」に設定する(手順S83)。そして、上記の手順S64〜S66を実行する。
【0032】
一方、手順S81において輝度決定フラグFが「1」であると判断されたときは、ヘッドアップディスプレイ5に表示制御信号を送出し、フロントウインドウ6におけるドライバーの視線位置Qの近傍に任意の色のポイント表示を行う(手順S84)。この時のポイント表示の輝度としては、上記の手順S82で設定された輝度が用いられる。そして、上記の手順S63〜S66を実行する。
【0033】
本実施形態においても、ドライバーにとって最適な表示色及び輝度で情報提供を行うことができる。また、本実施形態では、最初の色のポイント表示を行った際にポイント表示の輝度を決定し、その後で別の色のポイント表示を行うときには、その輝度をそのまま使用するので、ポイント表示を行う毎にポイント表示の輝度を設定しなくて済む。従って、ECU3の処理を簡素化することができる。
【0034】
なお、本発明は、上記実施形態に限定されるものではない。例えば上記実施形態では、ドライバーが反応しやすい表示色の種類を設定しているが、特にこの形態には限られず、例えば表示色は特定の色とし、その色についてポイント表示の輝度を徐々に変えていき、当該表示色に適した表示輝度を設定しても良い。
【図面の簡単な説明】
【0035】
【図1】本発明に係わる車両内表示設定装置の一実施形態を示す概略構成図である。
【図2】ドライバーの視線位置とポイント表示位置との関係を示す概念図である。
【図3】図1に示したECUにより実行される表示設定処理手順を示すフローチャートである。
【図4】図3に示した視認反応特性検出の処理手順の詳細を示すフローチャートである。
【図5】本発明に係わる車両内表示設定装置の他の実施形態として、図3に示した視認反応特性検出の処理手順の詳細の変形例を示すフローチャートである。
【図6】本発明に係わる車両内表示設定装置の更に他の実施形態として、図3に示した視認反応特性検出の処理手順の詳細の他の変形例を示すフローチャートである。
【符号の説明】
【0036】
1…車両内表示設定装置、2…カメラ(注視範囲検出手段)、3…ECU(注視範囲検出手段、投影手段、視認反応性判定手段、表示設定手段)、5…ヘッドアップディスプレイ(表示部)、7…メータ(表示部)、P…表示サンプル、Q…視線位置(注視範囲)。





【特許請求の範囲】
【請求項1】
車両内に配置された表示部の表示設定を行う車両内表示設定装置において、
ドライバーの視線を監視して前記ドライバーの注視範囲を検出する注視範囲検出手段と、
前記ドライバーの注視範囲外となる位置に表示サンプルを投影させる投影手段と、
前記表示サンプルに対する前記ドライバーの視線の移動時間を検出し、前記表示サンプルに対する前記ドライバーの視認反応性を判定する視認反応性判定手段と、
前記表示サンプルに対する前記ドライバーの視認反応性に基づいて前記表示部の表示設定を行う表示設定手段とを備えることを特徴とする車両内表示設定装置。
【請求項2】
前記投影手段は、前記表示サンプルの色を変更して、前記ドライバーの注視範囲外となる位置に前記表示サンプルを投影させ、
前記表示設定手段は、前記表示サンプルの色に対する前記ドライバーの視認反応性に基づいて前記表示部の表示色を設定することを特徴とする請求項1記載の車両内表示設定装置。
【請求項3】
前記投影手段は、前記表示サンプルの輝度を変更して、前記ドライバーの注視範囲外となる位置に前記表示サンプルを投影させ、
前記表示設定手段は、前記表示サンプルの輝度に対する前記ドライバーの視認反応性に基づいて前記表示部の表示輝度を設定することを特徴とする請求項1または2記載の車両内表示設定装置。





【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【公開番号】特開2010−23621(P2010−23621A)
【公開日】平成22年2月4日(2010.2.4)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2008−186252(P2008−186252)
【出願日】平成20年7月17日(2008.7.17)
【出願人】(000003207)トヨタ自動車株式会社 (59,920)
【Fターム(参考)】