説明

車両周囲監視装置および車両周囲監視方法

【課題】車両周囲の障害物の状態をより正確に把握することができる車両周囲監視装置および車両周囲監視方法を提供すること。
【解決手段】車両周囲監視装置100は、自車両の一部を含む車両周囲を撮像するカメラ110と、車両周囲に位置する障害物を検出し、検出した障害物と自車両との距離を算出する障害物検出部120と、カメラ110によって撮像された撮像画像と、障害物検出部120によって算出された距離を示す障害物表示画像とを1つの画面に表示するモニタ180とを有する。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、車両の周囲の状況を監視する車両周囲監視装置および車両周囲監視方法に係り、特に、車両の周囲の撮像画像を少なくとも表示する車両周囲監視装置および車両周囲監視方法に関する。
【背景技術】
【0002】
乗用車などの車両を運転する際、運転者にとって、車両の後方および側方の障害物の有無は確認しにくい。そこで、近年、車両の後方および側方(以下適宜「後方」と総称する)をカメラで撮像し、撮像画像をモニタに表示することで、運転者の周囲監視や運転を補助する車両周囲監視装置の普及が進んでいる。このような車両周囲監視装置を用いることにより、例えば、駐車場に前向きに停車している車両を、後退させつつ駐車場から出す際に、後方の状況をモニタ上で容易に確認することができ、運転者はより安全に運転を行うことができる。
【0003】
目視での確認がしにくい範囲は、例えば、車両後方の水平方向略180度の範囲と比較的広い。したがって、車両周囲監視装置は、比較的広い画角で撮像した画像をモニタに表示させる必要がある。
【0004】
ところが、カメラ画像の画角が広ければ広いほど、障害物のモニタ上での大きさが小さくなり、運転者がモニタ上で障害物を視認することが難しくなる。
【0005】
そこで、障害物を拡大表示させる技術が、例えば特許文献1に記載されている。特許文献1記載の装置は、車両後方の障害物を検出し、検出した障害物と車両との間の距離を算出する。そして、特許文献1記載の装置は、算出された距離が所定距離以下のとき、車両後方の画像のうち、その障害物を含む車両側の所定領域の範囲を拡大表示させる。これにより、車両に対して所定距離以下に接近している障害物を、モニタ上で視認し易くなる。
【0006】
また、障害物の撮像画像における障害物の位置を、撮像画像に重ね合わせて表示する技術が、例えば特許文献2に記載されている。この技術により、運転者がモニタ上で障害物を視認し易くなる。
【特許文献1】特開2004−260449号公報
【特許文献2】特開2002−29345号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0007】
しかしながら、広い画角で撮像された画像をモニタ上に表示する場合、モニタ上の画像は、画面の外縁に近い部分で大きく歪み、目視で得られる実際の車両周囲の画像とは大きく異なる。したがって、特許文献1および特許文献2記載の技術では、特に画面の外縁に位置する障害物に対して、自車両との距離や自車両に接近してくる方向および速度などの障害物の状態を、運転者が把握しにくいという問題がある。
【0008】
例えば、駐車場の壁など、止まっているものに対して車両がゆっくりと近付いていくような場合には、特許文献1および特許文献2記載の技術でも大きな問題は無い。ところが、歩行者や他の車両が障害物として接近してくるような場合には、これらの障害物の状態をより正確に把握しなければ、運転者は正しい判断を行うことができず、適切な運転を行うことが難しい。一方で、画像の歪みを低減するべく狭い画角の撮像映像に切り替えることも考えられるが、表示対象範囲が狭くなり、新たな障害物の接近をモニタ画面から認識することができなくなる。
【0009】
本発明は、かかる点に鑑みてなされたものであり、車両周囲の障害物の状態をより正確に把握することができる車両周囲監視装置および車両周囲監視方法を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0010】
本発明の車両周囲監視装置は、自車両の一部を含む車両周囲を撮像する撮像手段と、前記車両周囲に位置する障害物を検出し、検出した障害物と前記自車両との距離を算出する障害物検出手段と、前記撮像手段によって撮像された撮像画像と、前記障害物検出手段によって算出された距離を示す障害物表示画像とを1つの画面に表示する表示手段と、を有する構成を採る。
【0011】
このように構成された車両周囲監視装置は、自車両のバンパーなど自車両の一部を含んだ車両周囲の画像を撮像手段で撮像すると共に、車両周囲に位置する障害物を検出し、検出された障害物と自車両との間の距離を障害物検出手段で算出し、撮像画像と算出した障害物と自車両との距離を示す障害物表示画像を1つの画面に表示することができるので、運転者に、車両周囲の障害物の状態をより正確に把握させることができる。
【0012】
本発明の車両周囲監視装置は、前記障害物検出手段が、前記撮像手段によって撮像された撮像画像から前記車両周囲に位置する障害物を検出する画像障害物検出手段と、前記画像障害物検出手段とは別に前記車両周囲に位置する障害物を検出するセンサと、を有し、前記画像障害物検出手段による検出結果と前記センサによる検出結果とから、前記障害物と自車両との距離を算出する構成を採る。
【0013】
このように構成された車両周囲監視装置は、撮像手段で撮影された画像から障害物を検出すると共に、センサを用いて車両周囲の障害物を検出し、検出される障害物の位置の精度を向上させることができるので、運転者に、車両周囲の障害物の状態をより正確に把握させることができる。
【0014】
本発明の車両周囲監視装置の前記障害物表示画像は、前記障害物を示すアイコンを含み、前記表示手段は、前記障害物表示画像における前記アイコンの表示位置を、前記距離に応じて変更する構成を有している。
【0015】
このように構成された車両周囲監視装置は、障害物をアイコンで示し、障害物表示画像におけるアイコンの表示位置を自車両と障害物の距離応じて変更することができるように構成されている。
【0016】
本発明の車両周囲監視装置は、前記障害物検出手段によって算出された距離に基づいて障害物の移動状態を検出する障害物移動検出手段を更に有し、前記障害物表示画像は、前記障害物移動検出手段によって検出された移動状態を示す構成を有している。
【0017】
このように構成された車両周囲監視装置は、障害物検出手段で算出された距離から障害物の移動状態を障害物移動検出手段で検出し、検出された移動状態を障害物表示画像に示すように構成されている。
【0018】
本発明の車両周囲監視装置は、前記障害物移動検出手段が、前記障害物の前記自車両への接近方向を検出し、前記表示手段が、前記アイコンの表示位置を、前記接近方向に応じて変更する構成を有している。
【0019】
このように構成された本発明の車両周囲監視装置は、障害物移動検出手段で障害物が自車両のどの方向から接近しているのか検出し、検出された方向に応じてアイコンの表示位置を変更することで、自車両に対してどの方向から接近しているのか簡単に把握することができる。
【0020】
本発明の車両周囲監視装置の前記障害物移動検出手段は、前記障害物の前記自車両への接近速度または到達時間の少なくとも1つを検出し、前記表示手段は、前記アイコンの表示位置を、前記障害物移動検出手段の検出結果に基づいて変更する構成を有している。
【0021】
このように構成された本発明の車両周囲監視装置は、障害物移動検出手段で、自車両に接近している障害物の接近速度または到達時間の少なくとも一方を検出し、その検出結果に基づいてアイコンの表示位置を変更することで、障害物が自車両に対して接近している速度や到達時間を簡単に把握することができる。
【0022】
本発明の車両周囲監視装置の前記表示手段は、前記撮像画像における前記自車両の左右方向と、前記障害物表示画像における前記自車両の左右方向とを一致させると共に、前記撮影画像および前記障害物表示画像を上下に並べて表示する構成を有している。
【0023】
このように構成された本発明の車両周囲監視装置の前記表示手段は、撮像画像における自車両の左右方向と、障害物表示画像に表示された自車両の左右方向を一致させ、撮像画像と障害物表示画像を上下に並べて表示することで、自車両に接近している障害物を簡単に把握することができる。
【0024】
本発明の車両周囲監視装置の前記障害物検出手段は、前記自車両の左側方または右側方の少なくとも一方を検出範囲とする構成を有している。
【0025】
このように構成された本発明の車両周囲監視装置の障害物検出手段は、自車両の左側方または右側方の少なくとも一方を検出範囲とすることで、車両周囲側方にある障害物を簡単に検出することができる。
【0026】
本発明の車両周囲監視装置の前記表示手段は、前記障害物検出手段の検出結果に基づいて前記撮像画像の画像変換を行う画像変換手段を更に有する構成を有している。
【0027】
このように構成された本発明の車両周囲監視装置の表示手段は、障害物検出手段の検出結果に基づいて撮像画像の画像変換を行う画像変換手段を備えることで、障害物の接近に応じて適切な画像に変換することができる。
【0028】
本発明の車両周囲監視装置の前記画像変換手段は、前記障害物の接近方向に応じて前記撮像画像における前記障害物の接近方向の範囲を拡大する画像変換を行う構成を有している。
【0029】
このように構成された本発明の車両周囲監視装置の画像変換手段は、障害物の接近方向に応じて撮像画像における接近方向の画像の範囲を拡大することができるので、障害物が自車両に接近してきていることを簡単に把握することができる。
【0030】
本発明の車両周囲監視装置の前記画像変換手段は、予め決められた画像変換テーブルを少なくとも1つ以上備え、前記画像変換テーブルに基づいて画像変換する構成を有している。
【0031】
このように構成された本発明の車両周囲監視装置の前記画像変換手段は、予め決められた画像変換テーブルを少なくとも1つ以上備え、この画像変換テーブルに基づいて画像変換することができる。特に、障害物の接近方向、接近速度、到達時間毎に複数の画像変換テーブルを備えることで、適切に障害物を拡大して表示することができる。
【0032】
本発明の車両周囲監視装置は、前記障害物検出手段の検出結果に基づいて所定の通知を行う通知手段を備える構成を有している。
【0033】
このように構成された本発明の車両周囲監視装置は、障害物検出手段の検出結果に基づいて、警告灯の点滅や、音声出力、振動伝達などによる所定の通知を行う通知手段を備えることで、障害物の接近に応じて障害物表示画像に表示されるアイコンと共に障害物に関する情報を通知手段を用いて通知することができる。
【0034】
本発明の車両周囲監視方法は、自車両の一部を含む車両周囲を撮像するステップと、前記車両周囲に位置する障害物を検出し、検出した障害物と前記自車両との距離を算出するステップと、撮影した画像と検出した前記距離を示す障害物表示画像とを1つの画面に表示するステップと、を有する方法である。
【発明の効果】
【0035】
本発明によれば、車両周囲の撮像映像と、障害物と自車両との距離を少なくとも含む障害物の状態を示す情報とを、1つの画面に表示することができるので、車両周囲の障害物の状態をより正確に把握することができる。また、自車両に対する障害物の接近方向、接近速度、到達時間の少なくとも1つ以上の情報を正確に把握することができる。また、障害物の接近方向、接近距離、到達時間の少なくとも一つに応じて撮像映像における障害物周辺を拡大するように変換するように構成していると共に、障害物の状態を示す情報を同時に表示しているので、自車両に接近してきている障害物を簡単に把握することができる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0036】
以下、本発明の一実施の形態について、図面を参照して詳細に説明する。
【0037】
図1は、本発明の一実施の形態に係る車両周囲監視装置のシステム構成図である。なお、本実施の形態に係る車両周囲監視装置は、乗用車の後方の障害物を監視するためのリアビューモニタに本発明を適用した例として説明する。
【0038】
図1において、車両周囲監視装置100は、大別して、カメラ110、障害物検出部120、画像変換表示制御部130、マッピングテーブル記憶部140、表示切替部150、障害物状態計算部160、障害物状態表示制御部170、およびモニタ180から構成されている。
【0039】
カメラ110は、撮像部111と、フレームメモリ112を有するフレーム切替部113とから構成されている。ここで、撮像部111は、CCD(charge coupled device)やCMOS(complementary metal oxide)などの撮像素子と、撮像素子の撮像面に光学像を結像させる光学系とを有する(いずれも図示せず)。また、撮像部111は、撮影した画像をフレームメモリ112に出力するように構成されている。フレームメモリ112は、撮像部111で撮像した画像を一時的に格納するメモリである。フレーム切替部113は、撮像部111で撮影した画像の入力先を各フレームメモリ112に切り替えることができ、また、画像変換表示制御部130に出力する画像の参照先であるフレームメモリ112を切り替えることができるように構成されている。なお、撮像素子としてCMOSを採用する場合には、撮像素子にフレームメモリ112の機能を持たせるようにしてもよい。
【0040】
図2は、図1の車両周囲監視装置のカメラ110、障害物検出部120を構成する、右UWBレーダー121、および左UWBレーダー122の取り付け位置の一例を示す図である。本実施の形態では、図2に示すように、カメラ110は、車両200(自車両、以下同様)の後部中央に設けられており、車両200後部のバンパーを含む車両200後方を撮像する。障害物検出部120は、自車両の左右側方の障害物と、その障害物と自車両との距離(以下「障害物距離」という)とを検出するために、2つのUWBレーダー121、122から構成されている。本実施の形態では、図2に示すように、右UWBレーダー121は、車両200の後部右角部に取り付けられ、左UWBレーダー122は、車両200の後部左角部に取り付けられている。UWBレーダーは、電磁波を用いた一種のセンサであり、非常に短い間隔、より具体的には1ns程度の短パルス信号の送受信により、障害物までの距離を細かい分解能で計測することが可能である。また、UWBレーダー121および左UWBレーダー122は、それぞれ、指向性が高いUWBレーダーであり、障害物検出部120の監視範囲のうち、右UWBレーダー121は、車両の後方の正面方向を基準とした右側方の所定の範囲に位置する障害物を検出し、左UWBレーダー122は、車両の後方の正面方向を基準とした左側方の所定の範囲に位置する障害物を検出することができるように構成されている。
【0041】
なお、本実施の形態では、UWBレーダーを用いる場合を例にとって説明するが、障害物検出部120の構成はこれに限定されない。例えば、障害物検出部120として、同様に障害物を検出できる他の赤外線センサや超音波センサなどを用いることができる。
【0042】
また、本実施の形態では、図2に示すように、カメラ110の撮像範囲210は、水平方向に車両200の後方正面を中心とする略180度の範囲とし、右UWBレーダー121の検出範囲221は、車両200の後方右側方に伸びた範囲とし、左UWBレーダー122の検出範囲222は、車両200の後方左側方に伸びた範囲としてそれぞれ説明する。なお、ここでは、カメラ110の撮像範囲210を、水平方向における画角により示している。また、撮像範囲210と、検出範囲221、222とは、一部重なっているが、検出範囲221、222のほうがより側方側にはみ出した状態となっている。これにより、車両200の側方から接近してくる障害物を、その障害物が撮像範囲210に入る前に、右UWBレーダー121または左UWBレーダー122で検出することができる。
【0043】
画像変換表示制御部130は、カメラ110のフレームメモリ112に格納された画像を参照し、フレームメモリ112に格納された画像を、後述するマッピングテーブル記憶部140に格納されたマッピングテーブルに従ってマッピングするように構成されている。画像変換表示制御部130は、マッピングテーブル参照部131、画像変換部132、映像信号生成部133、およびタイミング生成部134から構成されている。
【0044】
マッピングテーブル参照部131は、後述する画像変換部132が使用すべきマッピングテーブルを一時的に格納する。マッピングテーブル参照部131は、格納するマッピングテーブルを参照し、マッピングが行われた結果として得られる画像(以下「合成画像」という)の各画素に対して、マッピングデータを生成する。マッピングデータは、合成画像の各画素が、フレームメモリ112に格納された合成前の画像のどの画素に対応するかを示すデータである。また、マッピングテーブル参照部131は、生成したマッピングデータを画像変換部132に出力するように構成されている。
【0045】
画像変換部132は、カメラ110のフレームメモリ112に格納された画像を参照し、マッピングテーブル参照部131に格納されたマッピングテーブルを適用して、フレーム単位の合成画像を生成することができるように構成されている。具体的には、画像変換部132は、マッピングテーブル参照部131から出力されるマッピングデータに従って、フレームメモリ112に格納された画像を読み取り、読み取った画像のマッピングを行う。
【0046】
映像信号生成部133は、画像変換部132で生成されたフレームごとの合成画像から、動画系列を表示するための第1の映像信号を生成するように構成されている。すなわち、第1の映像信号は、カメラ110で撮影した撮影画像に基づくものである。
【0047】
タイミング生成部134は、フレーム切替部113が接続状態を切り替えるタイミングと、マッピングテーブル参照部131が画素ごとのマッピングデータを出力するタイミングと、映像信号生成部133の動作タイミングとを制御するタイミング信号を生成するように構成されている。
【0048】
マッピングテーブル記憶部140は、画像変換表示制御部130で使用されるマッピングテーブルが予め記憶されて構成されている。なお、本実施の形態では、マッピングテーブル記憶部140には、カメラ110で撮像された画像(以下「カメラ画像」という)のうち車両の後方正面に対応する範囲を拡大させる第1のマッピングテーブルと、カメラ画像のうち車両の側方に対応する範囲を拡大させる第2のマッピングテーブルとを予め記憶しているものとして説明する。また、マッピングテーブル記憶部140に複数のマッピングテーブルを備える構成として、周囲の環境に応じてそれぞれのマッピングテーブルを用いるようにしてもよい。
【0049】
表示切替部150は、車両側方からの障害物の接近の有無に応じて、マッピングテーブル記憶部140に格納されたマッピングテーブルの中から、カメラ画像に適用するマッピングテーブルを選択して切り替えることができるように構成されている。具体的には、表示切替部150は、障害物検出部120によって車両の側方に位置する障害物が検出されていない場合には、第1のマッピングテーブルを選択し、障害物検出部120によって車両の側方に位置する障害物が検出されている場合には、第2のマッピングテーブルを選択するように構成されている。なお、マッピングテーブルの選択基準は、上記内容に限定されない。例えば、車両の側方で障害物が検出された場合であっても、その障害物距離が長い場合には、衝突の危険性は少ないものとして、第1のマッピングテーブルを選択するようにしてもよい。
【0050】
障害物状態計算部160は、障害物検出部120によって検出された障害物距離に基づいて、障害物距離以外の障害物の状態に関する情報であって、特に障害物の移動状態を示す情報(以下「障害物状態情報」という)を計算し、この計算結果および障害物距離を出力することができるように構成されている。障害物状態情報としては、例えば、障害物の自車両への接近方向(以下単に「接近方向」という)、障害物の自車両への接近速度(以下単に「接近速度」という)、障害物が自車両に到達するまでの予定時間(以下「到達時間」という)を含むことができる。ここで、例えば、接近方向は、方角などの車両以外のものを基準とした方向でもよいが、監視範囲が自車両の後方正面を基準としていることから、自車両の後方正面を基準とした方向であることが望ましい。また、接近速度は、例えば地面などの車両以外のものに対する相対速度でもよいが、衝突の危険性の度合いは自車両と障害物との相対速度に関係していること、および到達時間の算出の便宜から、自車両に対する相対速度であることが望ましい。
【0051】
障害物状態表示制御部170は、障害物状態計算部160から出力される障害物距離および障害物状態情報に基づいて、障害物距離および障害物状態情報を一つの画像で表す障害物表示画像を生成し、生成した障害物表示画像の動画系列を表示させるための第2の映像信号を生成することができるように構成されている。すなわち、第2の映像信号は、障害物検出部120の検出結果に基づくものである。障害物表示画像は、例えば、障害物を示すアイコンなどを含んでいる。
【0052】
モニタ180は、任意のディスプレイから構成されており、画像変換表示制御部130で生成された第1の映像信号と、障害物状態表示制御部170で生成された第2の映像信号とに基づいて、撮影画像に基づく合成画像と、障害物検出結果に基づく障害物表示画像(障害物を示すアイコンなどを含む)とを一つの画面に表示することができるように構成されている。
【0053】
なお、車両周囲監視装置100は、図示しないが、CPU(central processing unit)や、制御プログラムを格納したROM(read only memory)などの記憶媒体、RAM(random access memory)などの作業用メモリなどを有する。例えば、CPUが制御プログラムを実行することで、上記した各部の機能は実現される。
【0054】
次に、このように構成された車両周囲監視装置100の動作について説明する。
【0055】
まず、車両が後退するときの障害物の接近パターンごとに、車両周囲監視装置100の動作の概要について説明する。
【0056】
図2に示すように、車両周囲監視装置100を搭載した車両が後方に下がるとき、右UWBレーダー121は右側方、左UWBレーダー122は左側方を監視し、カメラ110は後方を撮影している。
【0057】
まず、第1の接近パターンとして、車両の左右方向から障害物が接近してきていないとき、最も注意して監視すべき方向は、車両の進行方向、つまり車両の後方正面である。したがって、右UWBレーダー121および左UWBレーダー122から障害物が検出されていないときは、表示切替部150は、車両の後方正面に対応する範囲を拡大させる第1のマッピングテーブルを選択する。この結果、画像変換表示制御部130は、車両の後方正面に対応する範囲を拡大させた映像をモニタ180に表示させる。
【0058】
また、車両の左右方向から障害物が接近してきていないとき、障害物状態計算部160は、障害物が検出されていないため、障害物状態情報を出力しない。この結果、障害物状態表示制御部170は、車両を上方から見たときの車両の位置を示すアイコン(以下「車両アイコン」という)のみを配置した障害物表示画像の映像をモニタ180に表示させる。
【0059】
図3は、車両の左右方向から障害物が接近してきていないときの、モニタ180の画面状態の一例を示す図である。
【0060】
図3に示すように、モニタ180の表示画面300には、合成画像310と、障害物表示画像320とが上下に並べて1画面に表示される。具体的には、モニタ180は、合成画像310における車両の左右方向と、障害物表示画像320における前記車両の左右方向とを揃え、かつ車両200の後方正面の横位置を揃えた状態で、合成画像310および障害物表示画像320が表示される。合成画像310は、画像変換部132により構成され、障害物表示画像320は、障害物状態表示制御部170により構成される。
【0061】
この場合、合成画像310は、車両の後方正面に対応する範囲が拡大され、車両の後方正面からの障害物の接近などをより認識し易い状態となっている。また、障害物表示画像320には、車両アイコン321のみが配置される。運転者は、このような表示画面300を見ることにより、合成画像310のみならず、障害物表示画像320からも、車両側方からの障害物の接近が無いことを確認することができる。
【0062】
また、第2の接近パターンとして、車両の左右方向のいずれか一方から障害物が接近してきたとき、最も注意して監視すべき方向は、障害物の接近方向、つまり車両の両側方のうちの障害物が接近してくる側である。したがって、右UWBレーダー121または左UWBレーダー122から障害物が検出されたときは、表示切替部150は、車両の側方に対応する範囲を拡大させる第2のマッピングテーブルを選択する。この結果、画像変換表示制御部130は、車両の側方に対応する範囲を拡大させた映像をモニタ180に表示させる。もちろん、これは、車両の左右方向の両方から障害物が接近してきたときも同様である。
【0063】
また、車両の左右方向のいずれか一方または両方から障害物が接近してきたとき、障害物状態計算部160は、障害物が検出されていることから、障害物状態情報を出力する。この結果、障害物状態表示制御部170は、車両アイコンと併せて、車両を上方から見たときの障害物の位置を示すアイコン(以下「障害物アイコン」という)を配置した障害物表示画像の映像をモニタ180に表示させる。
【0064】
図4は、車両の左右方向の一方または両方から障害物が接近してきているときの、モニタ180の画面状態の一例を示す図である。
【0065】
この場合、図4に示すように、合成画像310は、車両の両側方に対応する範囲が拡大され、車両側方からの障害物の接近などをより認識し易い状態となっている。また、障害物表示画像320には、車両アイコン321と併せて、障害物アイコン322が配置される。障害物アイコン322は、障害物311の障害物距離、接近方向、接近速度、および到達時間を、車両アイコン321に対する位置、形状、大きさ、および色によって示している。ここでは、第2のマッピングテーブルが適用された状態で、車両の右側方から他の車両である障害物311が接近し、車両の左側方から歩行者である障害物311が接近してきているときの合成画像310を示している。
【0066】
図4から分かるように、側方に位置する障害物の障害物距離は、合成画像310からは判別しにくい。例えば、図4の合成画像310の端に映っている障害物311は、一見すると自車両に対して遠くに位置するように見えるが、実際にはかなり近い場所まで自車両に接近している。また、このように障害物距離を判別しにくい場合、接近速度や到達速度も判別しにくい。したがって、運転者は、障害物表示画像320を合成画像310と併せて見ることにより、障害物の障害物距離、接近方向、接近速度、および到達時間をより正確に認識することができる。
【0067】
次に、車両周囲監視装置100の動作の詳細について説明する。
【0068】
図5は、車両周囲監視装置100の動作の一例を示すフローチャートである。初期状態では、表示切替部150は、第1のマッピングテーブルをマッピングテーブル参照部131に設定している。
【0069】
まず、ステップS1100で、車両周囲監視装置100は、モニタ180を通常画面表示状態にする。通常画面表示状態は、ナビゲーションシステムやテレビジョン受信機などの画面を表示させる状態である。
【0070】
そして、ステップS1200で、車両周囲監視装置100は、車両のギアがリバースに設定されたか否か、つまり車両が後退するか否か判断する。車両周囲監視装置100は、ギアがリバースに設定されていない場合には(S1200:NO)、ステップS1100に戻り、ギアがリバースに設定された場合には(S1200:YES)、車両後方の監視を開始すべく、ステップS1300に進む。
【0071】
ステップS1300で、車両周囲監視装置100は、初期状態の合成画像を表示する。具体的には、まず、タイミング生成部134が、合成画像の動画系列を生成するためのタイミング信号を生成する。そして、このタイミング信号を受けて、カメラ110、マッピングテーブル参照部131、画像変換部132、および映像信号生成部133によるフレーム処理が開始される。
【0072】
図6は、フレーム処理の流れの一例を示すフローチャートである。
【0073】
まず、ステップS3100で、カメラ110は、カメラ画像が書き込まれるフレームメモリ112と、画像変換部132の参照されるフレームメモリ112とを切り替える。
【0074】
具体的には、カメラ110において、フレーム切替部113は、撮像部111からの画像の入力が完了したフレームメモリ112が、画像変換表示制御部130による画像の参照先となるように、各フレームメモリ112と撮像部111との接続状態、および各フレームメモリ112と画像変換表示制御部130との接続状態を切り替える。これらの接続状態の切り替えタイミングは、画像変換表示制御部130から出力されるタイミング信号によって制御される。画像変換部132から参照されるカメラ画像の画素の位置は、カメラからの書き込みの順序とは関係無く飛び飛びになる。したがって、このようにフレーム切替部113が複数のフレームメモリ112を切り替えることにより、書き込みと参照が干渉しないようにすることができる。
【0075】
そして、ステップS3200で、タイミング生成部134は、合成出力のタイミングに合わせて、マッピングテーブル参照部131が現在マッピングデータを出力すべき合成画像の画素を設定する。タイミング生成部134は、ステップS3200で合成画像のフレームの各画素を1つずつ順に選択し、設定する。
【0076】
そして、ステップS3300で、マッピングテーブル参照部131は、ステップS3200で設定された画素に対応する要素を、現在格納しているマッピングテーブルから読み出し、マッピングデータとして画像変換部132に出力する。
【0077】
そして、ステップS3400で、画像変換部132は、入力されたマッピングデータに従って、フレームメモリ112に記録されたカメラ画像の対応する画素の値を合成し、映像信号生成部133に出力する。例えば、画素の値の最も簡単な決定方法は、フレームメモリ112の対応する画素データの値をそのまま画素の値とすることである。
【0078】
そして、ステップS3500で、映像信号生成部133は、入力された合成画像の画素の値を映像信号に変換し、映像信号をモニタ180に出力する。
【0079】
そして、ステップS3600で、タイミング生成部134は、合成画像のフレームの最終画素に対する処理が完了したか否かを判断する。タイミング生成部134は、最終画素に対する処理がまだ終了していない場合は(S3600:NO)、ステップS3700に進む。
【0080】
ステップS3700で、タイミング生成部134は、次の画素の処理へ移行し、ステップS3200に戻る。
【0081】
そして、車両周囲監視装置100は、ステップS3200〜S3600の処理を繰り返した結果、合成画像のフレームの最終画素に対する処理が完了すると(S3600:YES)、図5の処理に戻る。そして、車両周囲監視装置100は、適宜次のフレームに対するフレーム処理を開始する。
【0082】
このようなフレーム処理により、車両周囲監視装置100は、合成画像の映像信号を生成し、合成画像をモニタ180に表示させる。
【0083】
なお、ここでは、フレーム単位で合成処理を行う場合について説明したが、フィールド単位で合成処理を行う場合にも、同様の処理で合成画像を表示させることができる。
【0084】
そして、図5に戻り、ステップS1400で、障害物状態表示制御部170は、初期状態の障害物表示画像を表示する。具体的には、障害物状態表示制御部170は、障害物アイコンが無く車両アイコンのみが表示された障害物表示画像の映像信号を生成し、生成した映像信号をモニタ180に出力する。
【0085】
そして、ステップS1500で,車両周囲監視装置100は、左UWBレーダー122または右UWBレーダー121で障害物を検出しているか否かを判断する。車両周囲監視装置100は、障害物を検出していない場合には(S1500:NO)、ステップS1300に戻り、障害物を検出している場合には(S1500:YES)、ステップS1600に進む。
【0086】
図7は、UWBレーダー121、122が障害物を検出する様子を示す図である。
【0087】
図7に示すように、例えば、右UWBレーダー121は、UWB信号を送信する送信アンテナ121tと、障害物311で反射して戻ってきたUWB信号を受信する受信アンテナ121rとを有する。送信されるUWB信号はパルス状であり、これに対応して受信されるUWB信号もパルス状となる。したがって、右UWBレーダー121における送信パルスから受信パルスまでの時間が、右UWBレーダー121から障害物311までのUWB信号の往復時間となる。
【0088】
図8は、受信パルスの波形の一例を示す図である。図中、横軸は、送信パルスの送信時刻からの経過時間、つまりUWB信号の往復時間を示し、縦軸は、受信パルスの振幅電圧を示す。
【0089】
図8に示すように、受信パルス330は、受信されるUWB信号340の波形のピークとなる。したがって、受信パルス330および受信パルス330の受信時刻は、受信されるUWB信号の波形のピークを検出することにより、検出することができる。
【0090】
UWBレーダー121、122は、UWB信号の障害物311までの往復時間の半分、つまり送信パルスから受信パルスまでの時間の半分に、UWB信号の伝播速度を乗ずることにより、障害物距離を計算する。具体的には、障害物距離rは、UWB信号の障害物311までの往復時間をt、光速度をcと置くと、以下の式(1)を用いて算出することができる。
【数1】

【0091】
なお、障害物距離の計算は、障害物状態計算部160で行うようにしてもよい。この場合には、例えば、UWBレーダー121、122が、送信パルスの送信時刻および受信パルスの受信時刻の全てを障害物状態計算部160に出力し、障害物状態計算部160が、受信パルスが受信されるごとに、その受信パルスの受信時刻と直前の送信パルスの送信時刻とから障害物距離を算出すればよい。
【0092】
図5に戻り、ステップS1600で、障害物状態計算部160は、障害物状態情報を計算する。具体的には、障害物状態計算部160は、接近方向、接近速度、および到達時間を計算し、計算結果と障害物距離とを、障害物状態表示制御部170に出力する。
【0093】
具体的には、障害物状態計算部160は、右UWBレーダー121と左UWBレーダー122のどちらで障害物が検出されたかによって、接近方向を計算する。また、障害物状態計算部160は、異なる時刻で検出された2つの障害物距離の差分を時間差で除算したり、障害物距離の時間微分をとることによって、接近速度を計算する。更に、障害物状態計算部160は、障害物距離を接近速度で除算することによって、到達時間を計算する。
【0094】
図9は、障害物状態計算部160における接近速度および到達時間の計算の手法の一例を示す図である。図中、横軸は時刻T[s]を示し、縦軸は障害物距離D[m]を示す。
【0095】
まず、障害物状態計算部160は、過去n回分の障害物が検出された時刻Tおよびそれぞれの時刻Tにおける障害物距離Dを、障害物の移動データとして常に記憶する。図9において、障害物状態計算部160が記憶する移動データをプロット350で示す。
【0096】
そして、障害物状態計算部160は、検出結果の描く軌跡として、移動データを近似する近似直線360を算出し、算出した近似直線360の傾きを接近速度として取得する。近似直線360は、傾きをa、切片をbとすると、以下の式(2)で表わすことができる。
【数2】

【0097】
この近似直線360は、例えば、最小自乗法によって求めることができる。この場合、例えば、過去n回で検出された障害物距離Dをy(i=1、2、・・・、n)、それぞれの障害物距離Dの検出時刻Tをx(i=1、2、・・・、n)とした場合、上記した式(2)の、傾きaおよび切片bは、以下の式(3)および式(4)により算出することができる。
【数3】

【数4】

【0098】
この近似直線360が、現在の時刻T以降の障害物の移動についても近似すると仮定すると、障害物の車両への到達時刻Tは、障害物距離D=0となる時刻である。したがって、現在時刻Tを時刻Tの原点と置いたとき、到達時間、つまり車両と障害物との衝突までの時間TTC(time to collision)は、以下の式(5)により算出することができる。
【数5】

【0099】
なお、本説明では、障害物検知部120を構成する手段に、障害物までの距離だけを出力する能力を有するUWBレーダーを用いた場合について説明したが、これに限定されるものではない。例えば、FM−CW(frequency modulated continuous wave)方式のレーダーのように、障害物までの距離と、その障害物が存在する方向における障害物と自車両との相対速度(以下「相対速度」という)を同時に出力する能力を有する手段を用いることもできる。この場合には、障害物までの距離D、障害物が近づいてくる場合の相対速度をVとすると、車両と障害物との衝突までの時間TTCは、以下の式(6)により算出することができる。
【数6】

【0100】
なお、障害物状態計算部160は、車両の両側方から同時に障害物が接近してくる場合もあるため、障害物距離、接近速度、および到達時間を、接近方向に対応付けて出力する。
【0101】
そして、図5に戻り、ステップS1700で、障害物状態表示制御部170は、入力された障害物距離から、障害物アイコンの貼り付け位置を計算する。
【0102】
具体的には、障害物状態表示制御部170は、障害物の接近方向が右側方の場合には車両アイコンの右側に、障害物の接近方向が左側方の場合には車両アイコンの左側に、障害物アイコンをそれぞれ配置する。また、障害物状態表示制御部170は、車両アイコンからの距離を障害物距離に対応させて、障害物アイコンの位置を決定する。また、障害物状態表示制御部170は、接近速度が正の値、つまり障害物が車両に接近している場合には、車両アイコンの側に向く矢印を障害物アイコンの形状に決定し、接近速度が負の値、つまり障害物が車両から離れていく場合には、障害物アイコンの表示を削除する。また、障害物状態表示制御部170は、接近速度の絶対値の大きさに応じて、障害物アイコンの大きさを決定する。更に、障害物状態表示制御部170は、到達時間に応じて、障害物アイコンの色を決定する。
【0103】
図10は、障害物状態表示制御部170が障害物アイコンの位置を決定するのに用いる位置決定用テーブルの内容の一例を示す図である。
【0104】
図10に示すように、位置決定用テーブル410は、左UWBレーダー121と右UWBレーダー122とに分けて、障害物距離411と、障害物アイコンの画面貼り付け位置412とを記述している。障害物距離411は、障害物距離の区分を示す。障害物アイコンの画面貼り付け位置412は、障害物表示画像の座標系における座標で、障害物アイコンを貼り付ける位置を規定する。
【0105】
例えば、位置決定用テーブル410には、左UWBレーダー122に関して、「5〜10m」という障害物距離411に対応して、「(x2,y)」という障害物アイコンの画面貼り付け位置412が記述されている。これは、左UWBレーダー122で障害物距離が5〜10mの障害物が検出された場合には、障害物表示画像の座標(x2,y)に障害物アイコンを配置することを規定するものである。
【0106】
ここでは、障害物距離411が短いほど、車両アイコンにより近い位置の座標が設定されている。すなわち、位置決定用テーブル410は、障害物距離411が短ければ短いほど車両アイコンと障害物アイコンとの距離が短くなるように、障害物アイコンの画面貼り付け位置を規定している。したがって、障害物状態表示制御部170は、このような位置決定用テーブル410を参照することにより、障害物距離に応じた位置に障害物アイコンの貼り付け位置を決定することができる。
【0107】
そして、図5に戻り、ステップS1800で、障害物状態表示制御部170は、入力された到達時間から、障害物アイコンの種類(形状および色など)を選択する。
【0108】
図11は、障害物状態表示制御部170が障害物アイコンの色を決定するのに用いる色決定用テーブルの内容の一例を示す図である。
【0109】
図11に示すように、色決定用テーブル420は、到達時間421と、障害物アイコンの色422とを記述している。到達時間421は、到達時間の区分を示す。障害物アイコンの色422は、障害物表示画像における障害物アイコンの色を規定する。
【0110】
例えば、色決定用テーブル420には、「3〜4秒」という到達時間421に対応して、「黄」という障害物アイコンの色422が記述されている。これは、到達時間が3〜4秒の障害物が検出された場合には、対応する障害物アイコンの色を黄色にすることを規定するものである。
【0111】
ここでは、到達時間421が長い場合には青色、到達時間421が中程度の場合には黄色、到達時間421が短い場合には赤色が設定されている。すなわち、色決定用テーブル420は、到達時間421が短ければ短いほどより高度の危険色となるように、障害物アイコンの色を規定している。したがって、障害物状態表示制御部170は、このような色決定用テーブル420を参照することにより、到達時間に応じた色に障害物アイコンの色を決定することができる。
【0112】
そして、図5に戻り、ステップS1900で、障害物状態表示制御部170は、ステップS1700で計算した貼り付け位置に、ステップS1800で計算した種類の障害物アイコンを貼り付けてなる障害物表示画像の映像信号を生成し、生成した映像信号をモニタ180に出力する。
【0113】
そして、ステップS2000で、モニタ180は、障害物状態表示制御部170で生成された映像信号の入力を受けて、障害物を検出している状態の障害物表示画像を表示する。
【0114】
そして、ステップS2100で、車両周囲監視装置100は、障害物を検出している状態の合成画像を表示する。具体的には、まず、表示切替部150が、第2のマッピングテーブルをマッピングテーブル参照部131に設定し、タイミング生成部134が、合成画像の動画系列を生成するためのタイミング信号を生成する。そして、このタイミング信号を受けて、カメラ110、マッピングテーブル参照部131、画像変換部132、および映像信号生成部133によるフレーム処理が開始される。このフレーム処理は、図5で説明したフレーム処理と同様である。
【0115】
そして、ステップS2200で、車両周囲監視装置100は、処理を継続するか否かを判断し、継続する場合には(S2200:YES)、ステップS1100に戻り、継続しない場合には(S2200:NO)、一連の処理を終了する。
【0116】
このような動作により、車両周囲監視装置100は、車両後方を撮像したカメラ映像と、障害物距離と、接近方向、接近速度、および到達時間を含む障害物状態情報とを、1つの画面に表示することができる。また、車両周囲監視装置100は、逐次、表示内容を最新の情報に基づいたものに更新するため、これらの情報をリアルタイムで運転者に提示することができる。
【0117】
なお、カメラの監視範囲全体において障害物を検出できるように、車両の両側方のみではなく、後方正面に対応する範囲をも障害物の検出範囲とするようにしてもよい。また、車両の後退方向は主に後方正面であるため、後方正面を検出範囲とするUWBレーダーを追加してもよい。この場合には、後方正面の比較的長い距離まで、障害物検出を行うことができる。
【0118】
後方正面に対応する範囲をも障害物の検出範囲とする場合には、例えば、この後方正面で障害物が検出された場合には上記した第1のマッピングテーブルに切り替えるようにすればよい。または、最も到達時間の短い障害物の接近方向の範囲が拡大表示されるように、マッピングテーブルを切り替えるようにしてもよい。更に、右側方のみを拡大表示させるマッピングテーブルと左側方のみを拡大表示させるマッピングテーブルとを用意してもよい。
【0119】
また、指向性の高いUWBレーダーを水平方向に数多く配置し、接近方向をより細かい角度で検出してもよい。この場合には、障害物アイコンの位置を角度に対応させることにより、接近方向をより正確に運転者に伝達することができる。
【0120】
以上説明したように、本実施の形態によれば、車両後方のカメラ映像と、障害物距離を少なくとも含む障害物の状態を示す情報とを、1つの画面に表示することができる。すなわち、運転者に対し、車両周囲の障害物について、カメラ映像ならではの豊富な情報を提示しながら、障害物の状態を示す情報を付加的に提示することができる。これにより、運転者に対し、車両周囲の障害物の状態についてのより正確な把握を助けることができるとともに、障害物が接近してきたときに適切に注意を喚起することができる。
【0121】
なお、本実施の形態では、車両周囲監視装置の監視範囲を車両後方とした場合について説明したが、これに限定されるものではなく、例えば、監視範囲を車両前方としてもよい。この場合には、本装置を夜間における障害物監視の補助装置として用いることができる。また、斜め駐車の場合を考慮して、側方のより広い範囲を監視範囲としてもよい。
【0122】
また、本実施の形態では、障害物状態情報が、接近方向、接近速度、および到達時間を含む場合について説明したが、これに限定されるものではなく、これらの一部のみ、または障害物の状態に関する他の情報を含んでもよい。例えば、障害物状態情報は、障害物が人か否かを示す情報を含んでもよい。この場合には、障害物が人である場合に強調した警告を障害物表示画像で行うことにより、より安全な運転が可能となる。
【0123】
また、障害物距離および障害物状態情報の提示は、アイコンによってではなく、例えば、「距離5m、到達時間3秒」というように、テキスト表示によって行うようにしてもよい。
【0124】
また、障害物距離および障害物状態情報の提示は、障害物表示画像における画像表示によってではなく、例えば、警告灯の点滅や、音声出力、振動伝達などの別の手段によって行うようにしてもよい。ただし、複数の障害物が同時に接近してくる可能性があるため、複数の情報の同時伝達が容易な画像表示による提示が望ましい。
【0125】
また、1つのカメラで撮像された画像ではなく、複数のカメラで撮像された画像を合成した画像を、カメラ画像として表示するようにしてもよい。
【0126】
また、本実施の形態では、障害物を検出するための装置として、UWBレーダーを用いた場合について説明したが、これに限定されるものではなく、例えば、他の電磁波や、赤外線、超音波などによる、同様に障害物を検出できる他のセンサを用いるようにしてもよい。また、センサと併せて、カメラで撮像された撮像画像から車両周囲に位置する障害物を検出する装置部(以下「画像障害物検出部」という)を備えるようにし、撮像画像による検出結果と、センサによる検出結果とから、障害物距離を算出するようにしてもよい。この場合、検出される障害物の位置の精度を向上させることができるので、運転者に、車両周囲の障害物の状態をより正確に把握させることができる。具体的には、例えば、画像障害物検出部は、人や車両の画像の特徴量を予め記憶しておき、撮像画像において特徴量が近似する画像領域を探索して、撮像画像上での人や車両の位置を算出する。車両の位置の地面および撮像範囲の地面が略平面の場合、自車両に対する地面の各点の位置や距離は、撮像画像上の位置から算出することができる。したがって、地面からの高さが推定可能な人や車両についても、カメラからみて地面に平行な高さに位置するものを除き、撮像画像から、その障害物距離を算出することができる。障害物検出部は、例えば、画像障害物検出部で算出された障害物距離と、センサで算出された障害物距離との平均値を採用するなどして、センサで算出された障害物距離を補正する。
【0127】
また、本実施の形態では、車両周囲監視装置のカメラやUWBレーダーを車両自体に取り付けた場合について説明したが、これに限定されるものではなく、例えば、カメラやUWBレーダーを車庫出口に配置して取り付けるようにしてもよい。この場合には、本装置を、車庫の出口周囲を監視範囲とする、出庫の際の安全確認の補助装置として用いることができる。
【産業上の利用可能性】
【0128】
本発明に係る車両周囲監視装置および車両周囲監視方法は、車両周囲の障害物の状態をより正確に把握することができる車両周囲監視装置および車両周囲監視方法として有用である。
【図面の簡単な説明】
【0129】
【図1】本発明の一実施の形態に係る車両周囲監視装置のシステム構成図
【図2】本実施の形態におけるカメラおよびUWBレーダーの取り付け位置の一例を示す図
【図3】本実施の形態における車両の左右方向から障害物が接近してきていないときの、モニタの画面状態の一例を示す図
【図4】本実施の形態における車両の左右方向の一方または両方から障害物が接近してきているときの、モニタの画面状態の一例を示す図
【図5】本実施の形態に係る車両周囲監視装置の動作の一例を示すフローチャート
【図6】本実施の形態におけるフレーム処理の流れの一例を示すフローチャート
【図7】本実施の形態におけるUWBレーダーが障害物を検出する様子を示す図
【図8】本実施の形態における受信パルスの波形の一例を示す図
【図9】本実施の形態における接近速度および到達時間の計算の手法の一例を示す図
【図10】本実施の形態における位置決定用テーブルの内容の一例を示す図
【図11】本実施の形態における色決定用テーブルの内容の一例を示す図
【符号の説明】
【0130】
100 車両周囲監視装置
110 カメラ
111 撮像部
112 複数のフレームメモリ
113 フレーム切替部
120 障害物検出部
121 右UWBレーダー
122 左UWBレーダー
130 画像変換表示制御部
131 マッピングテーブル参照部
132 画像変換部
133 映像信号生成部
134 タイミング生成部
140 マッピングテーブル記憶部
150 表示切替部
160 障害物状態計算部
170 障害物状態表示制御部
180 モニタ


【特許請求の範囲】
【請求項1】
自車両の一部を含む車両周囲を撮像する撮像手段と、
前記車両周囲に位置する障害物を検出し、検出した障害物と前記自車両との距離を算出する障害物検出手段と、
前記撮像手段によって撮像された撮像画像と、前記障害物検出手段によって算出された距離を示す障害物表示画像とを1つの画面に表示する表示手段と、
を有する車両周囲監視装置。
【請求項2】
前記障害物検出手段は、
前記撮像手段によって撮像された撮像画像から前記車両周囲に位置する障害物を検出する画像障害物検出手段と、
前記画像障害物検出手段とは別に前記車両周囲に位置する障害物を検出するセンサと、を有し、
前記画像障害物検出手段による検出結果と前記センサによる検出結果とから、前記障害物と自車両との距離を算出する、
請求項1に記載の車両周囲監視装置。
【請求項3】
前記障害物表示画像は、前記障害物を示すアイコンを含み、
前記表示手段は、
前記障害物表示画像における前記アイコンの表示位置を、前記距離に応じて変更する、
請求項1または請求項2に記載の車両周囲監視装置。
【請求項4】
前記障害物検出手段によって算出された距離に基づいて障害物の移動状態を検出する障害物移動検出手段、を更に有し、
前記障害物表示画像は、前記障害物移動検出手段によって検出された移動状態を示す、
請求項1から請求項3のいずれかに記載の車両周囲監視装置。
【請求項5】
前記障害物移動検出手段は、
前記障害物の前記自車両への接近方向を検出し、
前記表示手段は、
前記アイコンの表示位置を、前記接近方向に応じて変更する、
請求項4に記載の車両周囲監視装置。
【請求項6】
前記障害物移動検出手段は、
前記障害物の前記自車両への接近速度または到達時間の少なくとも1つを検出し、
前記表示手段は、
前記アイコンの表示位置を、前記障害物移動検出手段の検出結果に基づいて変更する、
請求項4または請求項5に記載の車両周囲監視装置。
【請求項7】
前記表示手段は、
前記撮像画像における前記自車両の左右方向と、前記障害物表示画像における前記自車両の左右方向とを一致させると共に、前記撮影画像および前記障害物表示画像を上下に並べて表示する、
請求項1から請求項6のいずれかに記載の車両周囲監視装置。
【請求項8】
前記障害物検出手段は、
前記自車両の左側方または右側方の少なくとも一方を検出範囲とする、
請求項1から請求項7のいずれかに記載の車両周囲監視装置。
【請求項9】
前記表示手段は、
前記障害物検出手段の検出結果に基づいて前記撮像画像の画像変換を行う画像変換手段を更に有する、
請求項1から請求項8のいずれかに記載の車両周囲監視装置。
【請求項10】
前記画像変換手段は、
前記障害物の接近方向に応じて前記撮像画像における前記障害物の接近方向の範囲を拡大する画像変換を行う、
請求項9に記載の車両周囲監視装置。
【請求項11】
前記画像変換手段は、
予め決められた画像変換テーブルを少なくとも1つ以上備え、
前記画像変換テーブルに基づいて画像変換を行う、
請求項9または請求項10に記載の車両周囲監視装置。
【請求項12】
前記障害物検出手段の検出結果に基づいて所定の通知を行う通知手段、
を更に有する請求項1から請求項11のいずれかに記載の車両周囲監視装置。
【請求項13】
自車両の一部を含む車両周囲を撮像するステップと、
前記車両周囲に位置する障害物を検出し、検出した障害物と前記自車両との距離を算出するステップと、
撮影した画像と、算出した距離を示す障害物表示画像とを1つの画面に表示するステップと、
を有する車両周囲監視方法。


【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【図8】
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【図9】
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【図10】
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【図11】
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【公開番号】特開2009−217740(P2009−217740A)
【公開日】平成21年9月24日(2009.9.24)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2008−63218(P2008−63218)
【出願日】平成20年3月12日(2008.3.12)
【出願人】(000005821)パナソニック株式会社 (73,050)
【Fターム(参考)】