説明

車両用アウターミラー装置

【課題】 部品費を低減し、解除トルクを容易に変更できるようにする。
【解決手段】 アウターミラーを取付可能なシャフト2と、シャフト2を軸転自在に保持するハウジング3,43と、シャフト2に回転自在および軸方向移動自在に軸支された駆動歯車23と、シャフト2と駆動歯車23とを連接・離断させるクラッチ機構21とを備え、クラッチ機構21が、駆動歯車23に形成された係合部23Aと、係合部23Aに対して回転方向へ係合可能なクラッチ部品22と、駆動歯車23とクラッチ部品22とを軸方向へ圧着させる付勢手段24とを備えた車両用アウターミラー装置であって、クラッチ部品22を、シャフト2に形成された貫通穴7Aへ挿通可能なピン22Aとすると共に、駆動歯車23の係合部23Aをピン22Aが落込可能な凹部23Bとし、且つ、凹部23Bとピン22Aとを異径に設定することにより、解除トルクを設定・変更可能としている。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
この発明は、車両用アウターミラー装置に関するものである。
【背景技術】
【0002】
トラックやバスなどの車両には、アウターミラーを電動で格納し得るようにした車両用アウターミラー装置を備えたものがある。
【0003】
このような車両用アウターミラー装置は、アウターミラーを取付可能なシャフトと、このシャフトを軸転自在に保持するハウジングと、シャフトに回転自在および軸方向移動自在に軸支された駆動歯車と、シャフトと駆動歯車とを連接・離断させるクラッチ機構とを備えている。駆動歯車には、モータを備えた駆動機構が接続されている。
【0004】
そして、駆動機構のモータによって駆動歯車を回転すると、クラッチ機構とシャフトを介して、アウターミラーが使用位置と格納位置との間で回動されるようになっている。
【0005】
また、アウターミラーに外部からの入力が作用した場合には、クラッチ機構が駆動歯車から離断されてアウターミラーがフリー回動することにより、緩衝作用が行われるようになっている。
【0006】
上記クラッチ機構として、シャフトに嵌着された円盤状のクラッチホルダーと、駆動歯車に形成されたクラッチホルダーを包持可能な円柱状の凹部と、駆動歯車の凹部内に放射状に形成された複数条の係合凹所およびクラッチホルダーの対応する面に放射状に形成されて係合凹所に係合する複数条の係合突起と、駆動歯車とクラッチホルダーとを軸方向へ圧着させるスプリングなどの付勢手段とを備えたものがある(例えば、特許文献1参照)。
【特許文献1】特開平8−240128号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0007】
しかしながら、上記特許文献1に記載された車両用アウターミラー装置では、以下のような問題があった。即ち、クラッチ機構に、放射状の係合突起を形成された円盤状のクラッチホルダーを用いているが、このクラッチホルダーは、山形状が複雑なため部品費が高くなる。また、解除トルクを変更する場合、クラッチホルダーと駆動歯車とを同時に交換する必要があり、コスト高となる。なお、付勢手段のスプリング荷重を変更することによって解除トルクを変更することも考えられるが、このようにした場合、ユニットの負荷が増すなどして作動に悪影響を及ぼすので、容易に採用することができない。
【課題を解決するための手段】
【0008】
上記課題を解決するために、請求項1に記載された発明では、アウターミラーを取付可能なシャフトと、該シャフトを軸転自在に保持するハウジングと、前記シャフトに回転自在および軸方向移動自在に軸支された駆動歯車と、前記シャフトと駆動歯車とを連接・離断させるクラッチ機構とを備え、該クラッチ機構が、前記駆動歯車に形成された係合部と、該係合部に対して回転方向へ係合可能なクラッチ部品と、前記駆動歯車とクラッチ部品とを軸方向へ圧着させる付勢手段とを備えた車両用アウターミラー装置において、前記クラッチ部品を、前記シャフトに形成された貫通穴へ挿通可能なピンとすると共に、駆動歯車の係合部を前記ピンが落込可能な凹部とした車両用アウターミラー装置を特徴としている。
【0009】
請求項2に記載された発明では、前記凹部とピンとを異径に設定することにより、解除トルクを設定・変更可能とした請求項1記載の車両用アウターミラー装置を特徴としている。
【発明の効果】
【0010】
請求項1の発明では、クラッチ部品を、シャフトに形成された貫通穴へ挿通可能なピンとすると共に、駆動歯車の係合部をピンが落込可能な凹部としているが、このように、クラッチ部品として汎用性のあるピンを用いたことにより、部品費を低減することができる。
【0011】
請求項2の発明では、凹部とピンとを異径とすることにより、解除トルクを設定できるようにしている。この構造によれば、駆動歯車および付勢手段をそのままとしてピンの径を変更することによって、容易に解除トルクを変更することができる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0012】
部品費を低減し、解除トルクを容易に変更できるようにするという目的を、クラッチ部品を、シャフトに形成された貫通穴へ挿通可能なピンとすると共に、駆動歯車の係合部をピンが落込可能な凹部とし、且つ、凹部とピンとを異径に設定することにより、解除トルクを設定・変更可能とする、という手段で実現した。
【実施例】
【0013】
以下、本発明を具体化した実施例について、図示例と共に説明する。
【0014】
図1〜図41は、この発明の実施例を示すものである。
【0015】
まず、構成を説明すると、この実施例にかかる車両用アウターミラー装置は、図1に示すように(以下、図1は常時参照する)、アウターミラーを取付可能なシャフト2(詳細は図19〜図21)と、このシャフト2を軸転自在に保持するハウジング(この実施例では、ハウジングは後述するように上部ケース3(詳細は図6〜図11)と下部ケース43(詳細は図12〜図17)とに分割されている)と、シャフト2に回転自在および軸方向移動自在に軸支された駆動歯車23と、シャフト2と駆動歯車23とを連接・離断させるクラッチ機構21とを備えている。また、ハウジングには、駆動歯車23に接続されてこれを駆動する駆動機構27が収容されている。
【0016】
ここで、先ず、上部ケース3と下部ケース43とに分割されたハウジングは、図2に示すように、上部ケース3の衝合面3Fと、下部ケース43の衝合面43pとを衝合することにより組合せられるように構成されている。上部ケース3の衝合面3Fには、図8に示すように、位置決め孔3m,3n、および、3個のネジ孔3xが形成されている。これに対し、下部ケース43の衝合面43pには、図12、図14に示すように、上部ケース3との嵌合壁43cや、上部ケース3のピン穴3m,3nに嵌合されるピン43d,43dや、上部ケース3のネジ孔3xに対応するネジ穴43x,43y,43zが形成されている。このネジ孔3x、ネジ穴43x,43y,43zに、後述するネジ部材3Sを螺着することにより、下部ケース43と上部ケース3とが締結される。
【0017】
このハウジングは、図18に示すような車体取付用ブラケット3Jを用いて車体へ取付けられる。そのために、上部ケース3の車体取付け側は、図2に示すように、平面部3Bとされ、この平面部3Bには、ネジ穴3c、呼吸穴3D、ハーネス引出し穴3Eが形成されている。ネジ穴3cは上記車体取付用ブラケット3Jを上部ケース3に締結するために用いられる。この実施例では、ネジ穴3cが6個形成されているが、これは車体取付用ブラケット3Jに応じて適宜選択して使用するものである。ハーネス引き出し穴3Eは衝合面3Fの部分に形成されている。このハーネス引き出し穴3Eから後述するプリント基板29のハーネス3Gが引き出される。ハーネス引き出し穴3Eは、ハーネス3Gの案内穴としての役割を果たすので組付け時の作業性の向上に寄与する。平面部3Bには呼吸穴3Dと、ハーネス引き出し穴3Eとの上方に、逆Uの字状のひさし3H,3Iがそれぞれ形成されている。このひさし3H,3Iは呼吸穴3D、ハーネス引き出し穴3Eを介して上部ケース3内に水が侵入するのを防止する役割を果たす。
【0018】
同様に、下部ケース43の車体取付け側は、平面部43Bとされる。下部ケース43には、その下面の平面部43B寄りの部分に位置決めピン46,46が形成されている。下部ケース43の平面部43Bには、水抜き穴47,47が形成されている。この水抜き穴47,47は上部ケース3の衝合面3Fが衝合される下部ケース43の衝合面43pから下部ケース43の下面43qにまで亘って延びている。この下部ケース43は、図16、図17に示すように平面部43Bへ向かって傾斜する断面形状とされ、下部ケース43内に侵入した雨水等の水が水抜き穴47,47から排出され易い構造となっている。
【0019】
上記車体取付用ブラケット3Jは、図18に示すように、上部ケース3に締結部材としてのネジ部材3Lを介して取付けられる締結板部3Mと、下部ケース43を支持する支持台部3Kとを有する。締結板部3Mには、ネジ部材3L挿通用の2個の穴3Nが形成され、この形式の車体取付用ブラケット3Jを使用するときにはこの2個の穴3Nに対応するネジ穴3cを用いる。また、この締結板部3Mには、車体への取付用ボス部3Pが形成され、この取付用ボス部3Pに形成されたボルト穴3Qを介して図示を略すボルト、ナットを螺合させることにより、車体取付用ブラケット3Jが車体に固定される。一方、支持台部3Kには、下部ケース43の位置決めピン46,46が嵌合される図示しない位置決め穴が形成される。支持台部3Kにはネジ穴3Rが形成され、支持台部3Kはネジ穴3Rを介して締結部材としてのネジ部材3Sを下部ケース43のネジ穴43yに螺合させることにより下部ケース43に固定される。同時にネジ部材3Sにより下部ケース43と上部ケース3とが締結される。
【0020】
次に、上記シャフト2は、図1に示すように、係合フランジ部6と柱状部7とを有している。係合フランジ部6の上面には複数(この実施例では4個)のボルト螺合孔8が形成されている。一方、先端部に図示を略すアウターミラーが取付けられたステー1の基端部が取付けフランジ5に溶接固定されている。この取付けフランジ5にはボルト螺合孔8に対応して複数のボルト挿通孔5aが形成され、取付けフランジ5は係合フランジ部6にボルト9により締結される。このように構成すれば、シャフト2とステー1とが別体構造であるので車種に応じてアウターミラーの交換が可能である。
【0021】
係合フランジ部6は、その上面でかつその中央に円形凹所10を有し、かつ、図19に示すようにその下面でかつ周辺部にボール案内溝11,12を有する。このボール案内溝11,12は円弧状とされ、アウターミラーの使用位置(前方可倒)と格納位置(後方可倒)との間でシャフト2の回動角度を規制する。このボール案内溝11,12はシャフト2の中心からの半径方向の距離が互いに異なるように設定されている。これにより、シャフト2の可倒角度を180度以上確保することが可能となる。このボール案内溝11,12の回動域終端部には図21に拡大して示すようにボール13と協働してシャフト2を上昇させる段部14が形成されている。この段部14は傾斜面14aとストッパ面14bとを有する。ストッパ面14bはシャフト2の格納位置から使用位置までの回動角度を設定する。ここでは、その回動角度は120度である。ストッパ面14bの水平線14cに対する傾斜角は傾斜面14aの水平線14cに対する傾斜角よりも大きく設定されている。
【0022】
これに対し、上部ケース3は、図1に示すように、その中央にシャフト2の挿通孔17を有し、上部ケース3の上面には、挿通孔17を取り巻くようにして環状周壁3Aが形成されている。この環状周壁3Aには互いに直径方向に対向する箇所に上記ボール13を収容可能な半球形状のボール装着穴3a,3aが形成されている。このように、ボール装着穴3a,3aを上部ケース3に設けたことにより、ボール案内溝11,12にゴミがたまるのを防止でき、また、組み付け時にボール13がボール装着穴3a,3aに位置決めされるので、組み付け易い。そして、シャフト2の係合フランジ部6と上部ケース3の上面との間には、図4に示すように、環状周壁3AによってクリアランスHが設けられ、係合フランジ部6の上部ケース3への固着が防止されている。その上部ケース3の上面箇所Tは、雨水の流れを助成するようにナデ肩状に傾斜されている。また、砂、ゴミ等が係合フランジ部6と上部ケース3との間に入っても、上面箇所Tから落下し易い。
【0023】
更に、図1に示すように、係合フランジ部6にはその外周に係合切欠部6zが形成されている。一方、上部ケース3の上部には、その平面部3Bに、ストッパ部材18の装着用凹所19が形成されている。そのストッパ部材18は正面から見てT字形状に形成され、T字の縦部分を成す取付板部18aと、T字の横部分を成す係合板部18bとからなる。その係合板部18bは上面から見て係合フランジ部6の外周に沿って湾曲する円弧形状とされている。取付板部18aにはネジ挿通孔18cが形成され、上部ケース3の平面部3Bにはその装着用凹所19にネジ挿通孔18cに対応してネジ螺合孔19a(図9参照)が形成されている。ストッパ部材18は図1に示すネジ部材18dにより上部ケース3に固定される。上部ケース3の上面には、装着用凹所19を挟んでその両側に一対の補強用突起3Tが形成されている。この補強用突起3Tは、その内側面に、係合板部18b外周面の円弧形状に沿う円弧面3T´を有する。また、上部ケース3の上面には、図6に示すように、この補強用突起3Tに隣接して、係合板部18bを下から受ける受け部3Xが形成されている。この受け部3Xと環状周壁3Aとは段差部3vを介して連絡されている。ストッパ部材18の係合板部18bは係合切欠部6zの回動域に臨んでいる。
【0024】
そして、図1に示すように、シャフト2の柱状部7上部には、Oリング16、ワッシャ15、ブッシュ16´が順に嵌着される。シャフト2は図4に示すように、Oリング16が当接されるOリング当接部16bと、ワッシャ15が当接されるワッシャ当接部15aと、ブッシュ16´が相対的に摺動可能に嵌合されるブッシュ嵌合部15cとを順に有する。これに対し、上部ケース3には、図9に示すように、その中央のシャフト2の挿通孔17の部分に、Oリング当接部16bの受け入れ用の円形凹所17bと、ワッシャ当接部15aの受け入れ用の円形凹所17aと、ブッシュ16´の受け入れ用凹所17cとを順に有する。ワッシャ15は後述するスプリングなどの付勢手段24の荷重を受けて上部ケース3とワッシャ当接部15aとの間でシャフト2の回動により摺動することになるが、ワッシャ15の内周側や外周側に発生するバリによってワッシャ15の摺動抵抗が増加する。この摺動抵抗を低減するために、図4に示すように、シャフト2と上部ケース3とには環状の逃げ溝Gが形成されている。
【0025】
また、シャフト2の柱状部7の下端部は、小径柱部7bとされてブッシュ44が嵌合される。これに対し、下部ケース43には、シャフト2の軸受け筒43bが形成されている。この軸受け筒43bにはブッシュ44が嵌合され、シャフト2の小径柱部7bがこのブッシュ44に嵌合されている。
【0026】
そして、シャフト2の柱状部7中間部には、この実施例にかかる、駆動歯車23およびクラッチ機構21が取付けられる。
【0027】
駆動歯車23は、図22、図23に示すように、円板状を呈しており、外周の歯部23aと、円形の中央孔23bとを有する。この円形の中央孔23bにより、駆動歯車23は、シャフト2に対して回転自在および軸方向移動自在に軸支される。
【0028】
クラッチ機構21は、駆動歯車23に形成された係合部23Aと、この係合部23Aに対して回転方向へ係合可能なクラッチ部品22と、図1に示すように、駆動歯車23とクラッチ部品22とを軸方向へ圧着させるスプリングなどの付勢手段24とを備えている。
【0029】
この実施例のものでは、クラッチ部品22を、シャフト2(の柱状部7)に形成された貫通穴7Aへ挿通可能なピン22Aとすると共に、図24に示すように、駆動歯車23の係合部23Aを、ピン22Aが落込可能な凹部23Bとする。しかも、凹部23Bとピン22Aとを異径(凹部23Bの径D≠ピン22Aの径d)に設定することにより、クラッチ機構21の解除トルクを設定・変更可能とする。なお、凹部23Bは、駆動歯車23の下面側に形成される。
【0030】
スプリングなどの付勢手段24は、図4に示すように、シャフト2の柱状部7の中間部に嵌着されたワッシャ25と、駆動歯車23の上面側との間に介装される。即ち、スプリングなどの付勢手段24は、シャフト2の柱状部7の中間部に外嵌されて、その上端24aはワッシャ25の下面に当接され、その下端24bは駆動歯車23の上面に当接される。ワッシャ25は、スプリングなどの付勢手段24の受け面25bを有し、その外周に環状周壁25cを有する。駆動歯車23は、上面側にスプリングなどの付勢手段24の位置決め用の環状リブ23dを有する。
【0031】
更に、シャフト2の小径柱部7bよりも直上部の柱状部7には、必要に応じて、Eリング45が装着される。Eリング45は駆動ギヤ23、ピン22Aをスプリングなどの付勢手段24の付勢力に抗して支持する役割を果たす。これによって、駆動歯車23は、スプリングなどの付勢手段24により付勢されて、駆動歯車23とピン22Aとは常時係合される。
【0032】
そして、必要に応じて、図1に示すように、シャフト2の柱状部7の中間部は、平坦面7aを有する断面D形状とされ、ワッシャ25は、柱状部7のD形状断面と対応するD形孔25aを有する。そして、ワッシャ25は、シャフト2の回転時にスプリングなどの付勢手段24、シャフト2と共に一体回転される。これにより、スプリングなどの付勢手段24の回転に基づく異音の発生が低減される。また、ワッシャ25はその受け面25bが環状段差を有し、これによりケース3との間の摺接抵抗が小さくされている。
【0033】
更に、上部ケース3の内部には、図4に示すように駆動機構27の収容空間26が形成されている。駆動機構27は、図1に示すように、モータ28、ウオーム31、ヘリカルギヤ32、ウオーム33、および、これらを取付けるプレート部材30(図25〜図31)、プリント基板29、から概略構成されている。ウオーム31はヘリカルギヤ32に噛合され、ヘリカルギヤ32はウオーム33と一体回転され、ウオーム33は駆動ギヤ23と噛合され、ウオーム31、ヘリカルギヤ32、ウオーム33、駆動歯車23は、モータ28の回転をシャフト2に伝達する回転伝達機構を構成している。
【0034】
そして、上部ケース3には、図8に示すように、プレート部材30の受け面3e,3f,3gと、プレート部材30を固定するためのピン穴3a´,3a´とが設けられている。これに対し、プレート部材30の上面には、図25に示すように、ピン穴3a´,3a´と嵌合される嵌合ピン30a,30aが形成されている。また、下部ケース43には、図12に示すように、円弧状の位置決め筒43aが設けられている。これに対し、プレート部材30の下面には、図27に示すように、位置決め筒43aに嵌合する案内凹所30rが形成されている。このような構造により、上部ケース3と下部ケース43との間でプレート部材30が固定される。
【0035】
そして、プレート部材30の上面には、図25に示すように、モータ取付部30bと、プリント基板29の差込用突起30c,30c、および、プリント基板29の案内突起30dが形成されている。図4に示すように、モータ28とプリント基板29とは、プレート部材30に取付けた状態で上部ケース3の衝合面3Fよりも上方に位置され、雨水等がたとえハウジング内に侵入したとしても、雨水等に基づきモータ28、プリント基板29等の電気部品が腐食しないように配慮されている。図25に示すように、プレート部材30の側部には、ハーネス3Gの嵌合穴30eが形成され、ハーネス3Gが弛んでふらつかないようにされている。
【0036】
モータ取付部30bには、図30に示すように、モータ28の取付用ネジ穴30f,30fと、モータ28の出力軸をウオーム31と直結するためのジョイント部材40(図1、図32、図33参照)の挿入穴30gとが形成されている。モータ28は、図1、図5に示すように、ネジ28a´,28a´によりモータ取付部30bに固定される。ジョイント部材40は、図32、図33に示すように、ウオーム31の軸部31a(図34参照)の挿通孔40aを有し、軸部31aと挿通孔40aとの間には、図33に示すような遊びが設けられている。これにより、ウオーム31の起動トルクのアップを図ることができると共に、ウオーム31とヘリカルギヤ32との食いつきを防止できる。
【0037】
図30に示すように、モータ取付部30bの挿入穴30gの奥には、ウオーム31の小判形状の軸部31aが挿通される挿通孔30hと、ウオーム31を収容する案内部30iとが形成されている。案内部30iは、プレート部材30の下面側に開口している。また、この案内部30iは、円弧状の位置決め内筒30qの内側に形成される。そして、上記案内凹所30rは、プレート部材30のモータ取付け部30bと反対側に設けられた円弧状の位置決め外筒30pと円弧状の位置決め内筒30qとの間に形成される。位置決め外筒30pと位置決め内筒30qとは挿通孔30hと同心である。位置決め筒43aも挿通孔30hと同心である。なお、下部ケース43には、図12に示すように、位置決め筒43aと同心にウオーム31の軸31bを支持する軸穴43gが形成されている。
【0038】
ウオーム31は、図34に示すように、上下端部に軸部31a、軸部31bを一体に有する。ウオーム31は、位置決め筒43aと案内凹所30rとを嵌合させることにより、プレート部材30と下部ケース43との間で且つ案内部30iの内側に位置決め支持されることとなる。ウオーム31の軸部31aには樹脂製ワッシャ31dが嵌合される。31eはウオーム31の小判形状部31fと嵌合される小判形状穴であり、このワッシャ31dはウオーム31と一体回転される。また、ウオーム31の軸部31bにはワッシャ31cを一体に有する。しかしながら、このワッシャ31cは、図35に示すように別体としてもよい。そして、モータ取付部30bの挿通孔30hの支承壁部と下部ケース43の軸穴43gの支承壁部とは、ウオーム31のワッシャ31c,31dが摺接する摺動面となる。そのため、ワッシャ31dをベーク材料とすることにより耐摩耗性が良好となると共に、ウオーム31の回転に基づく作動音の低減が図られる。このように、ワッシャ31cを設けて、スラスト方向の荷重を受ける構造となっているので、このワッシャ31cの大きさ、形状、材質を変更することにより、下部ケースの軸穴43gの支承壁部との摺動面積を変更調整することができ、シャフト2の格納方向へのウオーム31の回転による出力トルクと、シャフト2の使用方向へのウオーム31の回転による出力トルクとの出力トルク差を小さくすることができる。すなわち、従来の車両用アウターミラー装置は、ウオーム31の軸部31bの端面をボールで受ける構成であったので、ウオーム31の回転方向によって出力トルク差があったが、これを解消できる。更に、ウオーム31のスラスト方向の荷重をワッシャ31c,31dで受ける構造となっているので、ウオーム31の両軸部31a,31bを支承する一対の支承壁部の壁面の摩耗の低減をも図ることができる。
【0039】
また、上記プレート部材30の下面には、図27に示すように、ヘリカルギヤ32を保護する保護面部30sが形成されている。
【0040】
ウオーム33は、図5に示すように、両端部に軸部33a,33bを一体に有する。この軸部33a,33bには筒状ブッシュ41,42が設けられる。そして、プレート部材30の下面には、図27に示すように、筒状ブッシュ41,42を固定するための一対の嵌合部30j,30kが形成され、一対の嵌合部30j,30kの間はウオーム33の設置空間30lとされている。嵌合部30j,30kは断面U字形状のブッシュ挿入用の開口を有し、嵌合部30j,30kはウオーム33の軸部33a,33bをブッシュ41,42を介して支承する一対の軸受部として機能する。嵌合部30kには、図31に示すように、ブッシュ42を案内しかつブッシュ42の両端面に臨んでその軸方向の移動を規制する移動規制用リブ30m,30nが形成されている。この一対の移動規制用リブ30m,30nは、下方が広くかつ上方が狭いハの字形状とされ、ブッシュ42を案内し易い形状とされている。また、嵌合部30jにはブッシュ41の軸方向の移動を規制する移動規制用リブ30oが形成されている。一方、下部ケース43には、図12、図15に示すように、、ブッシュ41,42を押さえるためのブッシュ押え部43e,43fが形成されている。また、図5に示すように、ウオーム33の軸部33a,33bの端面は、ボール36,36に当接されている。これに対応して上部ケース3には、図8に示すように、ボール36の収容部3h,3i、が設けられている。
【0041】
上記プリント基板29には、過電流検出手段を備えた駆動回路が設けられている。駆動回路は、図38に示すように、バッテリ50の両端に接続された固定接点51a,51b,52a,52b、連動可動接点53a,53bからなるスイッチ回路、モータ28に接続された整流用の第1ダイオード54,55、過電流検出手段としての第1PTC素子56、第2PTC素子57から概略構成され、モータに流れる過負荷電流に基づく第1PTC素子56、第2PTC素子57の内部抵抗の急激な増大によりモータ28の回転を停止させるようになっている。
【0042】
次に、この実施例の作用について説明する。
【0043】
駆動機構27のモータ28を駆動し、ウオーム31、ヘリカルギヤ32、ウオーム33の順に駆動力を伝達して駆動歯車23を回転すると、クラッチ機構21とシャフト2を介して、アウターミラーが使用位置と格納位置との間で回動される。使用位置と格納位置との間でのシャフト2の回動角は、通常はボール案内溝11,12のボール回動域によって決定される。モータ28はプリント基板29の過電流検出手段(図38参照)によってモータ28に流れるロック電流(過電流)を検出することにより、例えば、使用位置又は格納位置においてオフされる。
【0044】
例えば、図39に示すように使用位置にあるシャフト2が矢印A1で示す格納方向に回動する場合、ボール13が図40に示すようにボール案内溝11,12の反対側の段部14に達すると、モータ28に過負荷が加わり、駆動回路の過電流検出回路がモータ28に流れる過電流を検出し、モータ28の駆動が停止される。図40の格納位置から図39の使用位置にシャフト2を回動させる場合も同様である。この場合には、スイッチ回路のモータ28に対する接続関係を逆にする。
【0045】
このように、ボール13が段部14に位置すると、シャフト2が若干上昇されるため、スプリングなどの付勢手段24が若干圧縮され、フランジ部6のボール13に対する圧接力が増大し、シャフト2は使用位置又は格納位置においてガタつくことなく保持される。なお、モータ28の駆動トルクはボール13がストッパ面14bを乗り越えさせるには満たない大きさとされている。
【0046】
そして、シャフト2に外力が無理やりに加わった場合、例えば、人がステー1を握って無理やりにシャフト2を回転させた場合や、アウターミラーが立木・電柱等の障害物に衝突してシャフト2に大きな力が加わった場合には、スプリングなどの付勢手段24の付勢力に抗して駆動歯車23の係合部23Aがピン22Aを乗り越えることにより、クラッチ機構21が駆動歯車23から離断され、アウターミラーがフリー回動することにより、緩衝作用が行われる。これにより、駆動機構27の破壊や、シャフト2の毀損等が防止される。
【0047】
このとき、シャフト2は図39で示した矢印B1方向へ回動し、係合フランジ部6の係合切欠部6zが係合板部18bの一側辺18eに当接して、シャフト2の回動が停止される。またボール13は、図41に示すようにボール案内溝11,12の一端部から外れてフランジ面6aに乗り上げる。このような状態からは、モータ28を逆転させることにより、ボール13はボール案内溝11,12内へ戻される。即ち、シャフト2は電動で容易に元の位置に戻される。
【0048】
この実施例では、クラッチ部品22を、シャフト2に形成された貫通穴7Aへ挿通可能なピン22Aとすると共に、駆動歯車23の係合部23Aをピン22Aが落込可能な凹部23Bとしているが、このように、クラッチ部品22として汎用性のあるピン22Aを用いたことにより、部品費を低減することができる。
【0049】
また、凹部23Bとピン22Aとを異径とすることにより、クラッチ機構21の解除トルクを設定できるようにしている。すなわち、凹部23Bに対し、図24(a)に示すように、ピン22Aの径を大きくすると、落込量が小さくなるので解除トルクは小さくなり、図24(b)に示すように、ピン22Aの径を小さくすると、落込量が大きくなるので解除トルクが大きくなる。
【0050】
この構造によれば、駆動歯車23および付勢手段24をそのままとしてピン22Aの径を変更することによって、容易に解除トルクを変更することができる。
【0051】
ここで、ピン22Aの径を変更する場合に、シャフト2の柱状部7に形成された貫通穴7Aの径が問題となるが、ピン22Aの変更と同時に対応する径の貫通穴7Aを有するシャフト2に変更しても良い。この場合でも、駆動歯車23の凹部23Bを変更する場合に比べて低コストで済ませることができる。なお、ピン22Aは付勢手段24によって駆動歯車23に圧接されているので、貫通穴7Aよりも小径のものであれば問題なく使用することができる。即ち、貫通穴7Aの径を大き目に設定しておけば、ピン22Aの径を広範囲に変更することが可能となる。また、ピン22Aには、中央部が貫通穴7Aと同径で、両端部が貫通穴7Aよりも小径の、段付きのものを使用することもできる。いずれの場合でも、ピン22Aの断面は、真円状とするのが設計上最も好ましい。
【0052】
以上、この発明の実施例を図面により詳述してきたが、実施例はこの発明の例示にしか過ぎないものであるため、この発明は実施例の構成にのみ限定されるものではなく、この発明の要旨を逸脱しない範囲の設計の変更等があってもこの発明に含まれることは勿論である。
【図面の簡単な説明】
【0053】
【図1】本発明に係わる車両用アウターミラー装置の要部構成を示す分解斜視図である。
【図2】本発明に係わる車両用アウターミラー装置のハウジングを車体取付面側からみた背面図である。
【図3】本発明に係わる車両用アウターミラー装置を、ステー取付け前に上から見た平面図である。
【図4】本発明に係わる車両用アウターミラー装置の内部構造を示す断面図である。
【図5】駆動機構等を組み込んだ上部ケースを下から見た底面図である。
【図6】上部ケースの斜視図である。
【図7】図6に示す上部ケースを上から見た平面図である。
【図8】図6に示す上部ケースを下から見た平面図である。
【図9】図8のA−A線に沿う断面図である。
【図10】図8のB−B線に沿う断面図である。
【図11】図8のD−D線に沿う断面図である。
【図12】下部ケースの平面図である。
【図13】下部ケースの底面図である。
【図14】下部ケースを車体取付け側から見た図である。
【図15】図12のG−G線に沿う断面図である。
【図16】図12のH−H線に沿う断面図である。
【図17】図12のI−I線に沿う断面図である。
【図18】本発明に係わる車体取付けブラケットの一例を示す斜視図である。
【図19】本発明に係わるシャフトを示しており、(a)は全体構成の斜視図、(b)は拡大斜視図ある。
【図20】本発明に係わるシャフトの底面図である。
【図21】本発明に係わるボールとフランジ部の案内溝との摺接関係を示す部分拡大図である。
【図22】図1に示す駆動ギヤの平面図である。
【図23】図22のC−C線に沿う断面図である。
【図24】(a)(b)図1に示すクラッチ部品と駆動ギヤの係合部との関係を示す部分拡大図である。
【図25】図1に示すプレート部材を上から見た斜視図である。
【図26】プレート部材の上面図である。
【図27】プレート部材を下から見た斜視図である。
【図28】プレート部材の底面図である。
【図29】プレート部材の側面図である。
【図30】図28のE−E線に沿う断面図である。
【図31】図28のF−F線に沿う断面図である。
【図32】ジョイント部材の断面図である。
【図33】ジョイント部材とウオームとの嵌合関係を示す平面図である。
【図34】ウオームとワッシャとを示す分解斜視図である。
【図35】ウオームとワッシャとの他の一例を示す分解斜視図である。
【図36】図34に示すウオームの取付け状態を示す側面図である。
【図37】図35に示すウオームの取付け状態を示す側面図である。
【図38】駆動回路の回路図である。
【図39】シャフトが使用位置にある場合のボールとボール案内溝との位置関係を示す説明図である。
【図40】シャフトが格納位置にある場合のボールとボール案内溝との位置関係を示す説明図である。
【図41】過大な外力が加わってシャフトが所定の回動範囲を越えて回動したときの、ボールとボール案内溝との位置関係を示す説明図である。
【符号の説明】
【0054】
2 シャフト
3 上部ケース(ハウジング)
7A 貫通穴
21 クラッチ機構
22 クラッチ部品
22A ピン
23 駆動歯車
23A 係合部
23B 凹部
24 付勢手段
43 下部ケース(ハウジング)


【特許請求の範囲】
【請求項1】
アウターミラーを取付可能なシャフトと、該シャフトを軸転自在に保持するハウジングと、前記シャフトに回転自在および軸方向移動自在に軸支された駆動歯車と、前記シャフトと駆動歯車とを連接・離断させるクラッチ機構とを備え、
該クラッチ機構が、前記駆動歯車に形成された係合部と、該係合部に対して回転方向へ係合可能なクラッチ部品と、前記駆動歯車とクラッチ部品とを軸方向へ圧着させる付勢手段とを備えた車両用アウターミラー装置において、
前記クラッチ部品を、前記シャフトに形成された貫通穴へ挿通可能なピンとすると共に、駆動歯車の係合部を前記ピンが落込可能な凹部としたことを特徴とする車両用アウターミラー装置。
【請求項2】
前記凹部とピンとを異径に設定することにより、解除トルクを設定・変更可能としたことを特徴とする請求項1記載の車両用アウターミラー装置。


【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【図8】
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【図9】
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【図10】
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【図11】
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【図12】
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【図13】
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【図14】
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【図15】
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【図16】
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【図17】
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【図18】
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【図19】
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【図20】
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【図21】
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【図22】
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【図23】
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【図24】
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【図25】
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【図26】
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【図27】
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【図28】
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【図29】
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【図30】
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【図31】
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【図32】
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【図33】
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【図34】
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【図35】
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【図36】
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【図37】
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【図38】
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【図39】
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【図40】
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【図41】
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【公開番号】特開2006−1444(P2006−1444A)
【公開日】平成18年1月5日(2006.1.5)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2004−180876(P2004−180876)
【出願日】平成16年6月18日(2004.6.18)
【出願人】(000000136)市光工業株式会社 (774)
【Fターム(参考)】