説明

車両用ヘッドアップディスプレイ装置

【課題】 ヘッドアップディスプレイ像と前方道路との距離関係とを比較し易くして、短時間且つ容易に各種注意地点までの距離を把握できる車両用ヘッドアップディスプレイ装置を提供する。
【解決手段】 記憶手段35は、道路形状データを格納する。自車位置検出手段34は、自車位置を検出する。制御手段20は、自車位置検出手段34からの位置データと道路形状データに基づいて、表示手段40にて、自車前方の道路形状を表す第一の表示像44fを所定の表示領域Dに表示させる。制御手段20は、表示手段40で表示する立体空間内に、第一の表示像44fと、表示領域Dに対応する第二の表示像44gとを、位置データと道路形状データとの光学的配置から求められる位置に配置する。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、自車前方の道路形状を立体的に表示する車両用ヘッドアップディスプレイ装置に関するものである。
【背景技術】
【0002】
従来より、目的地へのルートを画像表示によって案内するナビゲーション装置が種々提案されており、例えば特許文献1に開示されている。斯かるナビゲーション装置は、出発前に目的地を入力し、その目的地までのルートを探索するものである。ナビゲーション装置の表示画面には、目的地までの経路誘導情報がドライバーの視点で前方道路風景に重ねて表示される。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【特許文献1】特開2007−155747号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
しかしながら、経路誘導情報の表示と前方風景との縮尺の違いがあることや、立体的な前方道路風景を2次元的な表示にしているため、道路表示だけでは経路誘導に伴う右左折交差点や道路上の各種注意地点までの距離を把握し難いという問題を有していた。
本発明は、ヘッドアップディスプレイ像と前方道路との距離関係とを比較し易くして、短時間且つ容易に各種注意地点までの距離を把握できる車両用ヘッドアップディスプレイ装置を提供するものである。
【課題を解決するための手段】
【0005】
本発明は、前記課題を解決するため、表示手段40と、道路形状データを格納する記憶手段35と、自車位置を検出する自車位置検出手段34と、前記自車位置検出手段34からの位置データと前記道路形状データに基づいて前記表示手段40にて自車前方の道路形状を表す第一の表示像44fを所定の表示領域Dに表示させる制御手段20と、を備え、前記道路形状を立体的に表示する車両用ヘッドアップディスプレイ装置であって、前記制御手段20は、前記表示手段40で表示する立体空間内に、前記第一の表示像44fと、前記表示領域Dに対応する第二の表示像44gとを、前記位置データと前記道路形状データとの光学的配置から求められる位置に配置するものである。
【0006】
また、本発明は、前記制御手段20は、ドライバー視点からの前記第一の表示像44fの視野角に対する前記第二の表示像44gの視野角の比率と、前記ドライバー視点からの自車前方道路幅の視野角44eに対する前記表示領域Dの表示画角44dの比率と、を略一致させた表示データを生成するものである。
【発明の効果】
【0007】
自車前方の道路形状を表す第一の表示像と、表示しているヘッドアップディスプレイの像形状とを、それらの位置や大きさの関係が一致するように表示させることによって、短時間且つ容易に各種注意地点までの距離を把握できる。
【図面の簡単な説明】
【0008】
【図1】本発明の実施形態を示す概観図。
【図2】同上実施形態を示す要部拡大図。
【図3】同上実施形態を示す要部拡大図。
【図4】同上実施形態を示すブロック図。
【図5】同上実施形態を示す仮想立体空間の説明図。
【図6】同上実施形態を示す表示画角の説明図。
【発明を実施するための形態】
【0009】
以下、添付図面に基づいて、本発明の一実施形態を説明する。
【0010】
1は照明手段であり、この照明手段1は、左目用発光素子2L,右目用発光素子2R,コンデンサレンズ3を有している(図2参照)。左目用発光素子2L及び右目用発光素子2Rは発光ダイオードからなるものであり、左目用発光素子2L及び右目用発光素子2Rが発した光は、コンデンサレンズ3によって平行光にされる。4は光軸制御手段であり、この光軸制御手段4は、マスク5,アクチュエータ6を有している。マスク5には、開口部5a,5bが形成されており、夫々、左目用発光素子2L及び右目用発光素子2Rが発した光を通過させる。アクチュエータ6は、後述するアクチュエータ制御部により駆動され、マスク5を左右に移動させるものである。7は凸レンズであり、この凸レンズ7は、照明手段1から発せられマスク5の開口部5a,5bを通過した照明光を集光させる。
【0011】
10は液晶表示パネルであり、この液晶表示パネル10は、左目用画像及び右目用画像を時間的に交互に表示する。液晶表示パネル10は、OCBモードの液晶表示素子からなるものである。11はコールドミラーであり、このコールドミラー11は、液晶表示パネル10から発せられた表示光を反射させ、後述する発光素子から発せられた赤外光を透過させる。12は凹面鏡であり、この凹面鏡12は表示光をフロントガラス13に投影するものである。15は撮像カメラであり、この撮像カメラ15はコールドミラー11,凹面鏡12及びウィンドシールド13を介して、ドライバー16を撮像する。17は発光素子であり、この発光素子17は赤外光を発し、コールドミラー11,凹面鏡12及びウィンドシールド13を介して、ドライバー16を照明する。撮像カメラ15及び発光素子17は、コールドミラー11の後側に配置されている。
【0012】
左目用発光素子2L及び右目用発光素子2Rが発した照明光は、コンデンサレンズ3によって平行光となりマスク5に入射し、照明光の一部はマスク5の開口部5a,5bを通過する。マスク5の開口部5a,5bから出た照明光は凸レンズ7によって屈折し、液晶表示パネル10を透過して、コールドミラー11で反射された後、凹面鏡12で拡大されてフロントガラス13に投射される。凹面鏡12にて反射された表示光のうち、フロントガラス13で更に反射された表示光がドライバー16の左目16L及び右目16Rに届く。
【0013】
左目用発光素子2L及び右目用発光素子2Rは交互に点灯するものであり、左目用発光素子2Lが点灯している時には液晶表示パネル10に左目用画像を表示し、右目用発光素子2Rが点灯している時は液晶表示パネル10に右目用画像を表示する。液晶表示パネル10と、左目用発光素子2L及び右目用発光素子2Rとを同期して制御することにより、左目16L及び右目16Rに夫々異なる左目用画像及び右目用画像を映すことのできる光を照射することができ、立体映像をドライバー16に知覚させることができる。
【0014】
図4は、車両用ヘッドアップディスプレイ装置の電気的構成を示すブロック部である。制御手段20は、視点検出処理部21,表示制御部22,時分割制御部23,アクチュエータ制御部24を有している。視点検出処理部21は、撮像カメラ15で得られた撮像データからドライバー16の視点位置を検出し、表示制御部22及びアクチュエータ制御部24に視点位置データを出力する。アクチュエータ制御部24は、前記視点位置データに基づき、マスク5をアクチュエータ6によって水平方向に平行移動させる。例えば、ドライバー16の視点が左にずれた場合にはマスク5を右側へ移動させる(図3参照)。
【0015】
表示制御部22は、視点検出処理部21で得られた視点位置データに基づいて、左目16Lと右目16R夫々の視点による画像を生成し、さらにフロントガラス13の湾曲形状に基づく投影時の歪み補正加工を行い、左右夫々の画像を液晶表示素子10に時分割表示する。また、表示制御部22は、視点位置データに基づいて液晶表示パネル10に表示する画像の視点位置を変換する。ドライバー16は拡大された左目用虚像VLと右目用虚像VRとを見ることができ、奥行き感のあるHUD表示像44bを知覚することができる。なお、液晶表示パネル10に表示させる左目用画像と右目用画像とを切り替える周期は左右夫々60Hz以上であることが望ましく、眼精疲労を防止することができる。
【0016】
31は速度センサであり、この速度センサ31は自車の走行速度を検出し、制御手段20に速度データを出力する。34は自車位置検出手段であり、この自車位置検出手段34は、GPS受信部32及びジャイロセンサ33からなるものである。GPS受信部32は、GPS衛星からの電波を受信し、制御手段20にGPSデータを出力する。ジャイロセンサ33は自車が向いている方位を算出し、制御手段20に方位データを出力する。35はハードディスク或いはフラッシュメモリ等の記憶部(記憶手段)であり、この記憶部35には地図データ及び道路形状データが記憶されている。36は演算部であり、この演算部36は、制御手段20を介してGPS受信部32から入力したGPSデータに基づいて、自車の現在位置を算出する。
【0017】
37は駆動回路であり、この駆動回路37を介して、液晶表示パネル10が駆動される。表示器(表示手段)40は、液晶表示パネル10,駆動回路37,左目用発光素子2L及び右目用発光素子2R等で構成されている。表示制御部22は、速度センサ31,GPS受信部32,ジャイロセンサ33からの信号値に基づいて、自車両前方の道路形状データを記憶部35から呼び出して、ドライバー視点から見た道路形状を示す立体的な道路形状画像を生成し、表示器40に表示させる。
【0018】
図5は、表示制御部22で生成する仮想的な立体空間Sを横から見た図である。表示制御部22は、自車位置データ及び道路形状データに基づいて、道路形状表示44fを仮想立体空間Sに配置する。また、表示制御部22は、自車位置から視点高43eだけ上方の位置に視点位置43aを設定し、この視点位置43aから車両用ヘッドアップディスプレイ装置の光学的構成から求められる俯角43dと表示距離43bからなる位置にHUD像形状表示(第二の表示像)44gを配置する。
【0019】
表示制御部22は、視点先と視野角とを調整し、液晶表示パネル10に表示するための表示画像を生成する。更に、表示制御部22は、両眼視差による立体画像を表示するために、視点位置43aを左右方向にずらして左目と右目用の画像を生成する。HUD像形状表示44gは、矩形の4隅に鍵状の表示を配置した枠からなる(図6(b)参照)。
【0020】
次に、図6に基づいて、画角の調整について説明する。図6(a)は、前方道路44aとHUD表示像44bと車体44cとの関係を示している。HUD表示像44bは、車両のフロントガラス越しの表示領域Dに表示される。ドライバー16から見たHUD表示像44bの水平画角をHUD画角44dとし、フロントガラス越しに見える前方道路44aが車体44cで切れる位置までの道路の水平視野角を道路幅角44eとする。
【0021】
図6(b)は、表示領域Dに表示する道路形状表示(第一の表示像)44fとHUD像形状表示44gの関係を示している。ここで、ドライバー16から見たHUD像形状表示44gの水平視野角をHUD像形状表示幅角(表示画角)44hとし、道路形状表示の水平視野角を道路形状表示幅角(自車前方道路幅の視野角)44iとする。表示制御部22は、HUD像形状表示幅角44h:HUD道路視野角44i=HUD画角44d:道路幅角44eとなるようにHUD像形状表示幅角を設定して表示する。HUD形状表示44gの垂直視野角は、HUD像形状表示幅角44hに基づいて、HUD表示像44bの水平と垂直画角の比率から求めた値に設定される。
【0022】
本実施形態によれば、ヘッドアップディスプレイ上に、道路形状表示44fとHUD像形状表示44gとを、それらの位置や大きさの関係が一致するように表示させることによって、ドライバー16がHUD像形状表示44gと道路形状表示44f上の注意地点表示との距離関係から、HUD表示像44bと前方道路44aとの距離関係とを比較しやすくし、短時間且つ容易に各種注意地点までの距離を把握できる。
【0023】
なお、本発明は本実施形態に限定されるものではなく、種々の変形が可能である。例えば、本実施形態では、道路形状データを記憶部35から入手しているが、外部のナビゲーションユニットなど内部に地図データを持っている装置から通信によって道路形状データを入手しても良い。また、自車位置検出についても同様に、外部装置から自車位置の座標データを入手しても良い。また、本実施形態では、HUD像形状表示44gは、矩形の4隅に鍵状の表示を配置した枠であったが、右左折地点や各種注意地点の内容を表すアイコン画像を貼り付けて表示しても良い。
【符号の説明】
【0024】
20 制御手段
34 自車位置検出手段
35 記憶部(記憶手段)
40 表示手段
44f 道路形状表示(第一の表示像)
44g HUD像形状表示(第二の表示像)
D 表示領域


【特許請求の範囲】
【請求項1】
表示手段と、道路形状データを格納する記憶手段と、自車位置を検出する自車位置検出手段と、前記自車位置検出手段からの位置データと前記道路形状データに基づいて前記表示手段にて自車前方の道路形状を表す第一の表示像を所定の表示領域に表示させる制御手段と、を備え、前記道路形状を立体的に表示する車両用ヘッドアップディスプレイ装置であって、
前記制御手段は、前記表示手段で表示する立体空間内に、前記第一の表示像と、前記表示領域に対応する第二の表示像とを、前記位置データと前記道路形状データとの光学的配置から求められる位置に配置することを特徴とする車両用ヘッドアップディスプレイ装置。
【請求項2】
前記制御手段は、ドライバー視点からの前記第一の表示像の視野角に対する前記第二の表示像の視野角の比率と、前記ドライバー視点からの自車前方道路幅の視野角に対する前記表示領域の表示画角の比率と、を略一致させた表示データを生成することを特徴とする請求項1に記載の車両用ヘッドアップディスプレイ装置。


【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【公開番号】特開2011−203643(P2011−203643A)
【公開日】平成23年10月13日(2011.10.13)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2010−72813(P2010−72813)
【出願日】平成22年3月26日(2010.3.26)
【出願人】(000231512)日本精機株式会社 (1,561)
【Fターム(参考)】