説明

車両用内装材

【課題】車室に侵入する騒音を、別途吸音材を貼着することなく、低コストかつ省スペースにて吸音でき、車室内に侵入する騒音を低減することができる車両用内装材を提供する。
【解決手段】芯材1と、該芯材1に一体形成された吸音材2と、該吸音材2の表面2fを被覆する表皮材3とから構成されたインパネ21であって、芯材1の吸音材2の形成部50は、複数の孔15が形成された格子状に形成されていることを特徴とする。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、芯材と、該芯材に一体形成された吸音材と、該吸音材の表面を被覆する表皮材とから構成された車両用内装材に関する。
【背景技術】
【0002】
自動車等の車室内の騒振対策に用いる部材として、特にエンジンから発生する騒振を低減する部材としては、制振材を二枚の鋼板で挟んでサンドイッチ構造とした制振鋼板や、制振材機能を有するアスファルトシート等が周知である。
【0003】
ところが、これらの部材は、透過音を低減する機能は有するものの、吸音に関する機能は有さないため、従来は、車室内の底板等に、吸音率の高いフェルト等の吸音材を貼着することにより、エンジンから発生した音を吸音し、車室内に侵入する騒音を低減させていた。
【0004】
また、エンジンルーム内から車室内へ通じている外気吸入ダクト,エアコン用パイプ,ワイヤーハーネス等の隙間からもエンジンルームの音が車室内へ侵入してしまう。このことを防止するため、例えば特許文献1では、芯材と樹脂発泡体と表皮材との3層から構成された車室の内装品であるインストルメントパネル(以下、インパネと称す)等の裏面、具体的には芯材の裏面にも、フェルト等の吸音材を貼着する技術が提案されている。
【0005】
特許文献1に提案された技術によれば、吸音材をインパネの裏面に貼着することができるため、エンジンルームから上述した間隙を介して車室内に侵入する騒音を吸音でき、車室内に侵入する騒音を確実に低減することができる。
【特許文献1】特開平8−244047号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
しかしながら、フェルト等の吸音材は、インパネとは別体部品であるため、インパネの形状に合わせて形成すると、歩留まりが悪いといった問題があるとともに、インパネの形状を変更する毎に、吸音材の形状も変更しなければならず製造コストが増大するといった問題があった。
【0007】
また、インパネの裏面であってインパネ装着後の車体に、吸音材を貼着するスペースを確保しておかなければならないといった問題の他、該スペースを余分に確保しておかなければ、吸音性能を向上する際、吸音材の板厚をアップすることができないといった問題もあった。
【0008】
本発明の目的は、上記問題点に鑑みてなされたものであり、車室に侵入する騒音を、別途吸音材を貼着することなく、低コストかつ省スペースにて吸音でき、車室内に侵入する騒音を低減することができる車両用内装材を提供するにある。
【課題を解決するための手段】
【0009】
上記目的を達成するために本発明による車両用内装材は、芯材と、該芯材に一体形成された吸音材と、該吸音材の表面を被覆する表皮材とから構成された車両用内装材であって、上記芯材の上記吸音材の形成部は、複数の孔が形成された格子状に形成されていることを特徴とする。
【発明の効果】
【0010】
本発明の車両用内装材によれば、車室に侵入する騒音を、別途吸音材を貼着することなく、低コストかつ省スペースにて吸音でき、車室内に侵入する騒音を低減することができる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0011】
以下、図面を参照して本発明の実施の形態を説明する。尚、本実施の形態においては、車両用内装材は、自動車の車室の内装品であるインパネを例に挙げて説明する。
【0012】
図1は、本発明の一実施の形態を示すインパネの斜視図、図2は、図1中のII−II線に沿う断面図、図3は、図2の芯材の構成を示す部分正面図である。
【0013】
図1に示すように、インパネ21に、フロントデフロスタ用吹き出し口21a、空調用吹き出し口21b等、複数の吹き出し口が開口されており、各吹き出し口21a,21bに、フロントデフロスタグリル部材22、ベンチレーショングリル部材23等のグリル部材が各々装着固定されている。
【0014】
図2に示すように、インパネ21は、芯材1と、該芯材1に一体形成された吸音材2と、該吸音材2の表面2fを覆う表皮材3とにより構成されており、芯材1と吸音材2と表皮材3とは一体的に形成されている。
【0015】
芯材1は、金属または硬質の樹脂材等の所定の剛性を有する部材から、略薄板状の所定の形状に形成されており、また、芯材1は、表面1fに、吸音材2及び表皮材3を支持するとともに、裏面1rが車体に固定されることにより、インパネ21を車体に固定する。
【0016】
図3に示すように、芯材1の略全域に、吸音材2が形成される形成部50が、吸音材2が形成される方向に芯材1から突出して1層により形成されている。また、形成部50は、芯材1の略全域に限らず、芯材1の少なくとも一部に形成されていてもよい。また、形成部50は、吸音材2が形成される方向に突出して形成されずに、平坦に形成されていてもよい。
【0017】
形成部50に、該形成部50に対して略90°に貫通する、例えば四角状の孔15が複数形成されている。即ち形成部50は、複数の孔15により格子10が形成された格子状、またはメッシュ状に形成されている。尚、孔15は、四角状に限定されない。また芯材1の表面1fとなる形成部50の表面、即ち格子10の表面は、平坦な面から形成されている。
【0018】
形成部50の格子10の複数の孔15の内周面の4つ角に、補強用リブ17が各々設けられている(図3では1つの孔15のみ図示)。このことにより、芯材1を薄板状に形成し、該薄板に複数の孔15を形成しても、形成部50の形状が安定する。また、補強用リブ17は、形成部50の格子10の複数の孔15の各々の内周面に設けられることにより、該補強用リブ17を設けるスペースが不要となる。
【0019】
吸音材2は、所定の厚さを有することにより、インパネ21にクッション性及びソフト感を与えるとともに、エンジンルームから車室に侵入する騒音を吸音するものである。即ち、吸音材2は、クッション機能と吸音機能とを兼ねている。
【0020】
吸音材2は、例えば発泡型内において、芯材1と表皮材3との間に、液状の発泡原料を注入、充填して発泡成形することにより形成されており、芯材1の形成部50に所定の厚さを有して形成されている。尚、吸音材2は、形成部50に形成された複数の孔15の内部にも進入し、芯材1の裏面1rまで充填されている。
【0021】
吸音材2は、軟性を有し、多孔性と空気層との少なくとも一方を含む樹脂発泡材、例えばウレタンから構成されている。即ち、この場合、吸音材2は、芯材1と表皮材3との間においてウレタン発泡されたものである。
【0022】
吸音材2は、ウレタンの発泡過程において粘着性を有することにより、芯材1の形成部50の格子10の表面及び複数の孔15の内周面と表皮材3とに貼着される。このことにより、芯材1と吸音材2と表皮材3とは一体的に形成される。
【0023】
表皮材3は、シート状の、例えば軟質塩化ビニル樹脂等の部材により、パウダースラッシュ成形等により形成されており、外周部が芯材1に固定され、吸音材2の表面2fに貼着されることにより、吸音材2の表面2fを被覆している。よって、表皮材3は、車室内に露呈される装飾面を形成している。尚、表皮材3の成形は、パウダースラッシュ成形に限定されない。
【0024】
次に、このように構成された本実施の形態のインパネの作用について図1〜図3、及び図4を用いて説明する。図4は、本実施の形態のインパネの作用を説明する断面図である。
【0025】
図4に示すように、インパネ21に、エンジンルームに配置されたエンジン及びインパネ内部に配設されたエアコンの送風機等から発生された騒音Sが、エンジンルーム内から車室内へ通じている外気吸入ダクト,エアコン用パイプ,ワイヤーハーネス等の隙間を介して侵入されると、侵入された騒音Sは、芯材1の形成部50に形成された複数の孔15を通過して、吸音材2内に侵入し、該吸音材2に吸音される。
【0026】
吸音材2内に侵入し、吸音材2において吸音しきれなかった騒音Sは、吸音材2に被覆された表皮材3で反射され反射音の減衰経路が延長された後、再度吸音材2内に侵入し、該吸音材2に吸音される。
【0027】
このように、本実施の形態を示すインパネ21においては、インパネ21を構成する芯材1の吸音材2が形成される形成部50に、四角状の孔15を複数設けるとともに、吸音材2は、クッション機能と吸音機能とを兼ねていると示した。
【0028】
また、芯材1の形成部50の形状を安定させるため、格子10の複数の孔15の内周面の4つ角に、補強用リブ17を各々設けた。このことによれば、エンジンルームから車室に侵入する騒音Sは、車室のインパネ21の芯材1の形成部50の複数の孔15を通過し、吸音材2に吸音される。
【0029】
よって、インパネ21の裏面、具体的には、芯材1の裏面1rに別途吸音材を貼着することが不要となるため、低コストにて、騒音Sを吸音でき、車室内に侵入する騒音を低減することができる。また、吸音材2の充填面積全体が、吸音のために機能するため、従来に比べ、低コストかつ容易に吸音材の面積を拡大することができることから、吸音性能が向上する。
【0030】
また、インパネ21の裏面、具体的には、芯材1の裏面1rに別途吸音材を貼着することが不要となるため、図2に示すように、芯材1の裏面1rに、従来吸音材を設けていたスペース40が発生することから、インパネ21を車体に装着した後、スペース40を、他の部材の配置等に有効に利用することができる。即ち、本実施の形態のインパネ21は、省スペースにて騒音Sを吸音でき、車室内に侵入する騒音を低減することができる。
【0031】
さらに、スペース40を用いれば、インパネ21の造形の自由度が向上する。一例を挙げると、芯材1の車体への装着位置を、スペース40の分、従来よりも車体側に装着することができることから、吸音材2の厚さを、従来よりも厚く形成することが可能となるため、外観を損なうことなくインパネ21の表面のクッション性及びソフト感を向上させることができ、インパネ21の質感が向上される。また、吸音材2の厚さが、従来よりも厚く形成されることにより、吸音材2の吸音性能が向上する。
【0032】
また、芯材1の形成部50に、複数の孔15を形成することにより、芯材1が軽量化するため、インパネ21自体も軽量化することができる。
【0033】
さらに、吸音材2は、ウレタン発泡により粘着性を有し、該粘着性を利用して、芯材1と吸音材2と表皮材3とを一体的に形成することができることから、インパネ21を成形する際、部品の統合化を図ることができ、さらにインパネ21の軽量化を図ることができる。
【0034】
尚、以下、変形例を示す。図5は、図2の形成部の変形例を示す断面図、図6は、図2の重畳部の別の変形例を示す断面図である。
本実施の形態においては、形成部50の複数の孔15は、形成部50に対して略90°に貫通するよう形成されていると示した。
【0035】
これに限らず、図5に示すように、形成部50の複数の孔15は、形成部50に対して略90°を除く特定の方向に指向されて貫通するよう形成されていてもよい。
【0036】
この場合、インパネ21に侵入した騒音Sは、形成部50の複数の孔15の内、任意の孔15を通過した後、孔15の内周面で反射し、さらに、吸音材2に侵入し、表皮材3で反射した後、吸音材2に吸音されることから、騒音Sの減衰経路を延長することができる。よって、より確実かつ効果的にインパネ21に侵入する騒音Sを吸音することができる。
【0037】
また、芯材1の表面となる複数の孔15が形成された形成部50の表面、即ち格子10の表面は、上述した図2,図5に示す平坦面に限らず、図6に示すように、複数の溝10hが形成された凹凸状に形成されていてもよいし、どのような形状に形成されていても構わない。
【0038】
図7は、図2の形成部のさらに別の変形例を示す断面図である。
本実施の形態においては、芯材1の形成部50は、1層の格子10から形成されていると示した。これに限らず、形成部50は、複数の層の格子から形成されていても構わない。具体的には、図7に示すように、形成部50を、互いに連結されて離間配置される第1の層である第1の格子10aと第2の層である第2の格子10bとの2層から構成してもよい。
【0039】
この場合、第1の格子10aに形成される複数の孔15aは、隣り合う第2の格子10bに形成される複数の孔15bと、互いにずれた位置に形成されている。尚、複数の孔15aと複数の孔15bとは、完全に位置がずれていなくとも、孔の少なくとも一部がずれていればよい。
【0040】
このように、形成部50を構成すれば、インパネ21に侵入した騒音Sは、形成部50の複数の孔15aを通過して第2の格子10bで反射した後、第1の格子10aで反射し、さらに、複数の孔15bを通過して、吸音材2に侵入し、表皮材3で反射した後、吸音材2に吸音されることから、騒音Sの減衰経路をより延長することができる。
【0041】
このことにより、さらに確実かつ効果的にインパネ21に侵入する騒音Sを吸音することができる。また、形成部50が2層から構成されることにより、形成部50の強度が向上する。
【0042】
尚、形成部50を構成する層は、2層に限定されず、何層であっても構わない。また、形成部50を複数の層で構成した場合であっても、複数の孔15a,15bを、図5に示すように、形成部50の複数層の格子に対してそれぞれ略90°を除く特定の方向に指向されて貫通するよう形成してもよいし、図6に示すように、形成部50の表面を、複数の溝10hが形成された凹凸状に形成してもよい。
【0043】
また、本実施の形態においては、吸音材2は、芯材1と表皮材3との間に充填されていると示したが、これに限らず、部品の統合性、コストダウンを無視すれば、吸音材2を別途に成形した後に、吸音材2を芯材1に貼着し、最後に吸音材2の表面2fに表皮材3を被覆しても、別途、吸音材をインパネ21の裏面に貼着する必要がなくなるため、省スペースにて、本実施の形態と同様の吸音効果を得ることができる。
【0044】
さらに、吸音材2は、軟性を有し、多孔性と空気層との少なくとも一方を含む樹脂発泡材、例えばウレタンから構成されていると示した。これに限らず、柔らかい毛刃立った材料や多孔質の材料で所定の大きさに形成された材料、具体的には、フェルトや布材、綿、不織布、グラスウール等であっても構わない。
【0045】
また、芯材1と吸音材2と表皮材3とを、オレフィン系の材料から構成すれば、自動車を廃車にした際、そのままリサイクルをすることができるため、インパネ21のリサイクル性が向上する。
【0046】
さらに、本実施の形態においては、車両用内装材は、自動車の車室の内装品であるインパネを例に挙げて示したが、自動車用に限定されない他、インパネに限定されず、底板等であっても本実施の形態が適用可能であるということは云うまでもない。
【図面の簡単な説明】
【0047】
【図1】本発明の一実施の形態を示すインパネの斜視図。
【図2】図1中のII−II線に沿う断面図。
【図3】図2の芯材の構成を示す部分正面図。
【図4】本実施の形態のインパネの作用を説明する断面図。
【図5】図2の形成部の変形例を示す断面図。
【図6】図2の形成部の別の変形例を示す断面図。
【図7】図2の形成部のさらに別の変形例を示す断面図。
【符号の説明】
【0048】
1…芯材
2…吸音材
2f…吸音材の表面
3…表皮材
10a…第1の格子
10b…第2の格子
15…複数の孔
15a…第1の格子の複数の孔
15b…第2の格子の複数の孔
21…インパネ
50…形成部

【特許請求の範囲】
【請求項1】
芯材と、該芯材に一体形成された吸音材と、該吸音材の表面を被覆する表皮材とから構成された車両用内装材であって、
上記芯材の上記吸音材の形成部は、複数の孔が形成された格子状に形成されていることを特徴とする車両用内装材。
【請求項2】
上記吸音材は、軟性を有する樹脂発泡材から形成されていることを特徴とする請求項1に記載の車両用内装材。
【請求項3】
上記芯材と上記吸音材と上記表皮材とは、オレフィン系材料から形成されていることを特徴とする請求項1または2に記載の車両用内装材。
【請求項4】
上記複数の孔は、上記形成部に対して、90°を除く特定の方向に指向されて形成されていること特徴とする請求項1〜3のいずれか1つに記載の車両用内装材。
【請求項5】
上記形成部は、互いに離間する複数の層から形成されており、該各層の上記複数の孔が、隣り合う上記層の上記複数の孔と互いにずれた位置に形成されていることを特徴とする請求項1〜4のいずれか1つに記載の車両用内装材。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【公開番号】特開2006−347284(P2006−347284A)
【公開日】平成18年12月28日(2006.12.28)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2005−174045(P2005−174045)
【出願日】平成17年6月14日(2005.6.14)
【出願人】(000005348)富士重工業株式会社 (3,010)
【Fターム(参考)】