説明

車両用制動装置

【課題】車両用制動装置において、電源装置が失陥してもホイールシリンダに油圧を供給可能として適正な制動力を確保することで、信頼性及び安全性の向上を図ると共に制動操作フィーリングの向上を図る。
【解決手段】ABS24からの制御圧をホイールシリンダ25FR,25FL,25RR,25RLに供給可能な第1制御圧通路として、ABS24の油圧供給配管39a,39b,40a,40bを適用すると共に、油圧供給配管40bと背面圧力室Rの第3圧力ポート48との間に、ABS24からの制御圧をマスタシリンダ11における背面圧力室Rに供給可能な第2制御圧供給配管49を設ける。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、乗員のブレーキ操作に対して車両に付与する制動力を電子制御する車両用制動装置に関するものである。
【背景技術】
【0002】
車両の制動装置として、ブレーキペダルから入力されたブレーキ操作力やブレーキ操作量などに対して、車両の制動力、つまり、制動力を発生させるホイールシリンダへ供給する油圧を電気的に制御する電子制御制動装置が知られている。この電子制御制動装置としては、ブレーキ操作量に応じて目標制動油圧を設定し、アキュムレータに蓄えられた油圧を調圧してから、ホイールシリンダへ供給することで、制動力を制御するECB(Electronically Controlled Brake)が知られている。
【0003】
このECBは、運転者によるブレーキペダル操作に応じて作動するマスタシリンダと、このマスタシリンダに連結されたストロークシミュレータと、マスタシリンダとブレーキホイールシリンダとを連結する油圧経路に設けられたマスタカット弁と、油圧を蓄えられるアキュムレータと、このアキュムレータに蓄えられた油圧を調圧する調圧機構とを有している。従って、運転者がブレーキペダルを踏み込むと、マスタシリンダがその操作量に応じた油圧を発生すると共に、作動油の一部がストロークシミュレータに流れ込み、ブレーキペダルストロークを吸収すると共に、ブレーキペダルにブレーキ反力を付与することで、ブレーキペダルの操作量が調整される。一方、ブレーキECUは、ブレーキ操作量に応じて車両の目標制動力、つまり、目標制動油圧を設定し、調圧機構によりアキュムレータの油圧を調圧して各ホイールシリンダに供給することで、乗員が所望する制動力が得られる。
【0004】
ところで、上述したECBは、ブレーキペダルから入力されたブレーキ操作に応じた適正な目標制動油圧を設定し、調圧機構を電気的に制御して調圧することで、各ホイールシリンダに対して適正な制動油圧を供給している。そのため、電源装置の失陥時には、調圧機構を制御することができず、各ホイールシリンダに適正な油圧を供給することが困難となる。そこで、電源装置の失陥時であっても、制動装置などの電子制御装置を正常に作動させるものとして、例えば、特許文献1に記載された車両用電源装置がある。
【0005】
この特許文献1に記載された車両用電源装置は、補助電源として、複数のキャパシタで形成されるキャパシタユニットを用いた電源バックアップユニットからなる車両用電源装置であって、バッテリの正常時にもキャパシタユニットからの電力供給を可能にする電力供給部と、この電力供給部を作動させるための強制作動部とを有し、正常時に電力供給部の動作状態を確認するようにしたものである。
【0006】
【特許文献1】特開2005−014754号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0007】
上述した従来の車両用電源装置にあっては、バッテリと補助電源(キャパシタユニット)を設け、バッテリの正常時にも、キャパシタユニットからの電力供給を可能にする電力供給部を設けこの電力供給部の動作状態を確認するようにしている。通常使用されるバッテリに加えて、補助電源としてキャパシタユニットを車両に搭載することは、製造コストが増加するばかりでなく、車両の重量が増加してしまって燃費の低下を招いてしまう。
【0008】
また、一般的なECBでは、上述したように、運転者がブレーキペダルを踏み込むと、マスタシリンダにてそのペダルストロークを吸収すると共に、ブレーキペダルにブレーキ反力を付与する一方、ブレーキECUがブレーキ操作量に応じて調圧機構を制御し、調圧した油圧を各ホイールシリンダに供給して制動力を得ている。即ち、ECBでは、ブレーキペダル及びマスタシリンダによる入力系と、調圧機構及びホイールシリンダによる出力系が分離され、独立して動作するように構成されている。そのため、操作系に対して出力系に動作遅れが発生し、目標制動力に対して実制動力が乖離してしまう。また、運転者がブレーキペダルを戻したときのヒステリシスを設定することが困難となり、ブレーキフィーリングが悪化してしまうおそれがある。
【0009】
本発明は、このような問題を解決するためのものであって、電源装置が失陥してもホイールシリンダに油圧を供給可能として適正な制動力を確保することで、信頼性及び安全性の向上を図ると共に制動操作フィーリングの向上を図る車両用制動装置を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0010】
上述した課題を解決し、目的を達成するために、本発明の車両用制動装置は、乗員が制動操作可能な操作部材と、該操作部材の操作ストロークに応じてピストンが前進することで作動流体を加圧して所定の油圧を出力可能なマスタシリンダと、前記ピストンのストロークを吸収可能なストローク吸収機構と、油圧を受けて車輪に制動力を発生させるホイールシリンダと、前記マスタシリンダと前記ホイールシリンダとを連結する油圧通路と、該油圧通路を開閉可能なマスタカット弁と、前記操作部材の操作ストロークに応じて油圧供給源の油圧を調圧して出力可能な調圧手段と、該調圧手段からの油圧を前記ホイールシリンダに供給可能な第1制御圧通路と、前記調圧手段からの油圧を前記マスタシリンダにおけるピストンの背面側に供給可能な第2制御圧通路と、を備えることを特徴とするものである。
【0011】
本発明の車両用制動装置では、前記マスタシリンダは、シリンダ内に前記ピストンとしての入力ピストン及び加圧ピストンが移動自在に支持されることで、第1圧力室と第2圧力室と第3圧力室が区画され、前記第1圧力室に前記油圧通路としての第1油圧通路が連結され、前記第2圧力室に前記油圧通路としての第2油圧通路が連結され、前記ピストンの背面側に区画された前記第3圧力室に前記第2制御圧通路が連結され、前記第1油圧通路及び前記第2油圧通路が前輪の前記ホイールシリンダに連結され、前記第1制御圧通路が前後輪の前記ホイールシリンダに連結されることを特徴としている。
【0012】
本発明の車両用制動装置では、前記調圧手段は、増圧弁及び減圧弁を有するアンチロックブレーキシステムを有し、該アンチロックブレーキシステムの出力側に前記第1制御圧通路及び前記第2制御圧通路が連結されることを特徴としている。
【0013】
本発明の車両用制動装置では、前記調圧手段は、増圧弁及び減圧弁を有するアンチロックブレーキシステムと、該アンチロックブレーキシステムから出力される油圧をパイロット圧として駆動弁を移動することで油圧を調圧して出力可能である圧力制御弁とを有し、該アンチロックブレーキシステムの出力側に前記第1制御圧通路が連結され、前記圧力制御弁の出力側に前記第2制御圧通路が連結されることを特徴としている。
【0014】
本発明の車両用制動装置では、前記調圧手段は、前記操作部材の操作ストロークに応じた目標制御圧に基づいた電磁力により駆動弁を移動することで油圧を調圧して出力可能であると共に、前記マスタシリンダからの油圧をパイロット圧として前記駆動弁を移動することで油圧を調圧して出力可能である圧力制御弁を有し、該圧力制御弁の出力側に前記第1制御圧通路及び前記第2制御圧通路が連結されることを特徴としている。
【発明の効果】
【0015】
本発明の車両用制動装置によれば、操作部材の操作ストロークに応じてピストンが前進することで作動流体を加圧して所定の油圧を出力可能なマスタシリンダと、ピストンのストロークを吸収可能なストローク吸収機構と、マスタシリンダとホイールシリンダとを連結する油圧通路と、この油圧通路を開閉可能なマスタカット弁と、操作部材の操作ストロークに応じて油圧を調圧して出力可能な調圧手段と、調圧手段からの油圧をホイールシリンダに供給可能な第1制御圧通路と、調圧手段からの油圧をマスタシリンダにおけるピストンの背面側に供給可能な第2制御圧通路を設けている。従って、電源装置が失陥してもホイールシリンダに油圧を供給可能として適正な制動力を確保し、信頼性及び安全性の向上を図ることができると共に、操作系に対する出力系の遅れに起因して発生する目標制動力に対する実制動力の乖離が抑制され、また、ブレーキペダル反力のヒステリシスを設定することができ、制動操作フィーリングの向上を図ることができる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0016】
以下に、本発明に係る車両用制動装置の実施例を図面に基づいて詳細に説明する。なお、この実施例により本発明が限定されるものではない。
【実施例1】
【0017】
図1は、本発明の実施例1に係る車両用制動装置を表す概略構成図である。
【0018】
実施例1の車両用制動装置において、図1に示すように、マスタシリンダ11は、シリンダ12内にピストンとしての入力ピストン13と加圧ピストン14が軸方向に移動自在に支持されて構成されている。このシリンダ12は、基端部が開口して先端部が閉塞した円筒形状をなし、内部に入力ピストン13と加圧ピストン14が同軸上に配置されて軸方向に沿って移動自在に支持されている。
【0019】
また、操作部材としてのブレーキペダル15は、上端部が図示しない車体の取付ブラケットに支持軸16により回動自在に支持されており、下端部に運転者が踏み込み操作可能なペダル17が取付けられている。そして、ブレーキペダル15は、中間部に連結軸18によりクレビス19が取付けられ、このクレビス19には操作ロッド20の基端部が連結されている。そして、シリンダ12の基端部側に配置された入力ピストン13は、基端部にブレーキペダル15の操作ロッド20の先端部が連結されている。
【0020】
入力ピストン13は、外周面がシリンダ12の内周部に圧入または螺合して固定された円筒形状をなす支持部材21の内周面により移動自在に支持されている。この入力ピストン13は、支持部材21の内周面に嵌合する支持部13aと、基端部に固定されたブラケット13bと、支持部13aより大径でシリンダ12の第1内周面12aに移動自在に嵌合する第1嵌合部13cと、第1嵌合部13cより小径でシリンダ12の第2内周面12bに移動自在に嵌合する第2嵌合部13dとを有している。そして、支持部材21と入力ピストン13のブラケット13bとの間に反力スプリング22が介装されており、入力ピストン13が一方方向(図1にて、右方)に付勢支持されている。
【0021】
加圧ピストン14は、シリンダ12内にて、入力ピストン13の先端部側に配置されており、外周面がシリンダ12の内周面に移動自在に支持されている。この加圧ピストン14は、シリンダ12の第2内周面12bに嵌合する支持部14aと、第2内周面12bに段部12cを介して大径に形成される第3内周面12dに嵌合するフランジ部14bとを有している。そして、シリンダ12と加圧ピストン14との間に付勢スプリング23が介装されており、加圧ピストン14が一方方向(図1にて、右方)に付勢支持されている。
【0022】
そのため、入力ピストン13は、反力スプリング22の付勢力により、第1嵌合部13cが支持部材21に当接する位置に付勢支持されており、反力スプリング22の付勢力に抗して前進すると、第2嵌合部13dが加圧ピストン14に当接することができる。加圧ピストン14は、付勢スプリング23の付勢力により、フランジ部14bが段部12cに当接する位置に付勢支持されている。また、入力ピストン13は、第2嵌合部13dが加圧ピストン14に当接した後、更に前進することでこの加圧ピストン14を押圧し、入力ピストン13と加圧ピストン14とが一体となって前進することができる。
【0023】
この場合、入力ピストン13が反力スプリング22の付勢力により後退位置に位置決めされているとき、入力ピストン13と加圧ピストン14との間には、初期隙間が設定されている。
【0024】
このように、シリンダ12内に入力ピストン13と加圧ピストン14が同軸上に移動自在に配置されることで、加圧ピストン14における前進方向(図1にて左方)に第1圧力室Rが区画され、加圧ピストン14における後退方向(図1にて右方)、つまり、入力ピストン13と加圧ピストン14との間に第2圧力室Rが区画され、入力ピストン13及び加圧ピストン14における後退方向(図1にて右方)、つまり、加圧ピストン14と支持部材21との間に背面圧力室(第3圧力室)Rが区画されている。また、シリンダ12と加圧ピストン14との間にリリーフ室Rが形成されている。
【0025】
一方、前輪FR,FL及び後輪RR,RLにはそれぞれブレーキ装置(制動装置)を作動させるホイールシリンダ25FR,25FL,25RR,25RLが設けられており、調圧手段を構成するABS(Antilock Brake System/アンチロックブレーキシステム)24により作動可能となっている。即ち、マスタシリンダ11の第1圧力室Rに連通する第1圧力ポート26には、第1油圧配管(油圧通路)27の一端部が連結されており、この第1油圧配管27の他端部は、ホイールシリンダ25FRに連結されている。マスタシリンダ11の第2圧力室Rに連通する第2圧力ポート28には、第2油圧配管(油圧通路)29の一端部が連結されており、この第2油圧配管29の他端部は、ホイールシリンダ25FLに連結されている。そして、第1油圧配管27に第1マスタカット弁30が設けられ、第2油圧配管29に第2マスタカット弁31が設けられている。このマスタカット弁30,31は、ノーマルオープンタイプの電磁式開閉弁であって、電力供給時に閉止する。
【0026】
油圧ポンプ32はモータ33により駆動可能である。リザーバタンク34は、3つの貯留部34a,34b,34cに分割されている。油圧ポンプ32は、第3油圧配管35を介してリザーバタンク34の第3貯留部34cに連結されると共に、配管36を介してアキュムレータ37に連結されている。従って、モータ33を駆動すると、油圧ポンプ32はリザーバタンク34に貯留されている作動油を加圧してアキュムレータ37に供給することができ、アキュムレータ37は、所定圧力の油圧を蓄圧することができる。
【0027】
油圧ポンプ32及びアキュムレータ37は、高圧供給配管38を介してABS24に連結されている。ABS24にて、高圧供給配管38は、4つの油圧供給配管39a,39b,40a,40bに分岐され、2つの油圧供給配管39a,39bが前輪FR,FLに配置されるブレーキ装置のホイールシリンダ25FR,25FLに連結されている。即ち、油圧供給配管39aが第1油圧配管27に連結され、油圧供給配管39bが第2油圧配管29に連結されている。また、油圧供給配管40a,40bが、後輪RR,RLに配置されるブレーキ装置のホイールシリンダ25RR,25RLに連結されている。また、各油圧供給配管39a,39b,40a,40bには、油圧排出配管41a,41b,42a,42bの基端部が連結されており、各油圧排出配管41a,41b,42a,42bは、先端部が集合して第4油圧配管43に連結され、この第4油圧配管43はリザーバタンク34の第3貯留部34cに連結されている。
【0028】
そして、各油圧供給配管39a,39b,40a,40bには、各油圧排出配管41a,41b,42a,42bとの接続部より上流側(高圧供給配管38側)に、それぞれ電磁式の増圧弁44a,44b,45a,45bが配置されている。また、各油圧排出配管41a,41b,42a,42bには、それぞれ電磁式の減圧弁46a,46b,47a,47bが配置されている。この増圧弁44a,44b,45a,45bと減圧弁46a,46bは、ノーマルクローズタイプの開閉弁であって、電力供給時に開放する。また、減圧弁47a,47bは、ノーマルオープンタイプの開閉弁であって、電力供給時に閉止する。
【0029】
本実施例では、ABS(調圧手段)24からの制御圧をホイールシリンダ25FR,25FL,25RR,25RLに供給可能な第1制御圧通路として、油圧供給配管39a,39b,40a,40bが機能する。また、ABS(調圧手段)24からの制御圧をマスタシリンダ11における背面圧力室Rに供給可能な第2制御圧通路として、油圧供給配管40bにおける増圧弁45bより下流側で油圧排出配管42bの連結部より上流側と、マスタシリンダ11の背面圧力室Rに連通する第3圧力ポート48との間に、第2制御圧供給配管49が設けられている。また、第1油圧配管27における第1マスタカット弁30よりマスタシリンダ11側に、ストローク吸収機構としてのストロークシミュレータ50が設けられている。
【0030】
マスタシリンダ11にて、シリンダ12には、リリーフ室Rに連通する第1リリーフポート51が形成され、この第1リリーフポート51は第5油圧配管52を介してリザーバタンク34の第2貯留室34bに連結されている。入力ピストン13には、第2圧力室Rと第1リリーフポート51とを連通可能な第1連通孔53が形成されており、シリンダ12と入力ピストン13との間には、第1リリーフポート51の一方側に位置してワンウェイシール54が設けられている。また、シリンダ12には、第2リリーフポート55が形成され、この第2リリーフポート55は第6油圧配管56を介してリザーバタンク34の第1貯留室34aに連結されている。加圧ピストン14には、第2リリーフポート55と第1圧力室Rとを連通可能な第2連通孔57が形成されており、シリンダ12と加圧ピストン14との間には、第2リリーフポート57の両側に位置してワンウェイシール58が設けられている。
【0031】
従って、入力ピストン13が後退位置にあるとき、第2圧力室Rと第1リリーフポート51とが第1連通孔53により連通すると共に、リリーフ室Rが第1リリーフポート51に連通し、第1圧力室Rと第2リリーフポート55とが第2連通孔57により連通している。そして、入力ピストン13に押圧されて微小前進すると、第2圧力室Rと第1リリーフポート51との連通が遮断されることから、第2圧力室Rが密閉状態となり、入力ピストン13は第2圧力室Rを介して加圧ピストン14を押圧して前進可能となる。このとき、第2マスタカット弁31が閉止状態であれば、入力ピストン13は加圧ピストン14と所定間隔を維持したままで前進し、第2マスタカット弁31が開放状態であれば、入力ピストン13が前進することで、第2圧力室Rから第2油圧配管29に制御圧を供給可能となる。また、入力ピストン13が前進して加圧ピストン14が前進すると、第1圧力室Rと第2リリーフポート55との連通が遮断される。このとき、第1マスタカット弁30が閉止状態であれば、加圧ピストン14が前進するものの、そのストロークがストロークシミュレータ50により吸収され、第1マスタカット弁30が開放状態であれば、加圧ピストン14が前進することで、第1圧力室Rから第1油圧配管27に制御圧を供給可能となる。
【0032】
このように構成された本実施例の車両用制動装置にて、図1に示すように、電子制御ユニット(ECU)71は、ブレーキペダル15から入力ピストン13に入力される操作力(ペダル踏力)に応じた目標制御圧を設定し、ABS24により調圧し、この設定された目標制御圧を背面圧力室Rに作用させることで、入力ピストン13をアシストする。また、目標制御圧を各ホイールシリンダ25FR,25FL,25RR,25RLに制動油圧として付与することで、この各ホイールシリンダ25FR,25FL,25RR,25RLを作動し、前輪FR,FL及び後輪RR,RLに所望の制動力を作用させる。
【0033】
即ち、ブレーキペダル15には、このブレーキペダル15のペダルストロークSpを検出するストロークセンサ72と、そのペダル踏力を検出する踏力センサ73が設けられており、各検出結果をECU71に出力している。また、第1油圧配管27にて、第1マスタカット弁30より上流側、つまり、第1圧力ポート26側には、油圧を検出する第1圧力センサ74が設けられ、第1マスタカット弁30より下流側、つまり、ABS24側には、油圧を検出する第2圧力センサ75が設けられている。第1マスタカット弁30が閉止状態にあるとき、第1圧力センサ74は、第1圧力室Rの圧力を検出し、第2圧力センサ75は、前輪FRのホイールシリンダ25FRへ供給される油圧(制御圧)を検出し、それぞれ検出結果をECU71に出力している。
【0034】
また、第2油圧配管29にて、第2マスタカット弁31より上流側、つまり、第2圧力ポート28側には、油圧を検出する第3圧力センサ76が設けられ、第2マスタカット弁31より下流側、つまり、ABS24側には、油圧を検出する第4圧力センサ77が設けられている。第2マスタカット弁31が閉止状態にあるとき、第3圧力センサ76は、第2圧力室Rの圧力を検出し、第4圧力センサ77は、前輪FLのホイールシリンダ25FLへ供給される油圧(制御圧)を検出し、それぞれ検出結果をECU71に出力している。
【0035】
更に、油圧ポンプ32からアキュムレータ37を介してABS24に至る高圧供給配管38には、ABS24よりアキュムレータ37側に、油圧を検出する第5圧力センサ78が設けられている。この第5圧力センサ78は、アキュムレータ37に蓄圧された油圧を検出し、検出結果をECU71に出力している。また、油圧供給配管40aにおける増圧弁45aより下流側で、油圧排出配管42aの連結部より上流側には、油圧を検出する第6圧力センサ79が設けられ、油圧供給配管40bにおける増圧弁45bより下流側で、油圧排出配管42bの連結部より上流側には、油圧を検出する第7圧力センサ80が設けられている。第6圧力センサ79及び第7圧力センサ80は、増圧弁45a,45b及び減圧弁47a,47bで調圧された油圧を検出し、検出結果をECU71に出力している。なお、前輪FR,FL及び後輪RR,RLには、それぞれ図示しない車輪速センサが設けられており、検出した各車輪速度をECU71に出力している。
【0036】
従って、ECU71は、踏力センサ73が検出したブレーキペダル15のペダル踏力(または、ストロークセンサ72が検出したペダルストローク)に基づいて目標制御圧を設定し、ABS24を制御する一方、各圧力センサ74〜80が検出した制御圧をフィードバックし、目標制御圧と制御圧とが一致するように制御している。この場合、ECU71は、ペダル踏力(ペダルストローク)に対する目標制御圧を表すマップを有しており、このマップに基づいてABS24を制御する。
【0037】
本実施例の車両用制動装置による制動力制御について、具体的に説明すると、乗員がブレーキペダル15を踏むと、その操作力(踏力)により入力ピストン13が前進(図1にて左方へ移動)する。このとき、踏力センサ73はペダル踏力を検出し、ECU71は、このペダル踏力に基づいて目標制御圧を設定する。そして、ECU71は、この目標制御圧に基づいてABS24(増圧弁44a,44b,45a,45b、減圧弁46a,46b,47a,47b)を制御し、アキュムレータ37に蓄圧された油圧を調圧する。
【0038】
すると、ABS24で調圧された制御圧は、各油圧供給配管39a,39b,40a,40bを通して前輪FR,FL及び後輪RR,RLのホイールシリンダ25FR,25FL,25RR,25RLに付与される。このとき、ECU71は、各圧力センサ75,77,79,80が検出した制御圧をフィードバックし、目標制御圧と制御圧とが一致するようにABS24を制御する。従って、前輪FR,FLのホイールシリンダ25FR,25FLに適正な制御圧が付与されると共に、後輪RR,RLのホイールシリンダ25RR,25RLに適正な制御圧が付与されることとなり、前輪FR,FL及び後輪RR,RLに対して乗員のブレーキペダル15の操作力に応じた所望の制動力を発生させることができる。
【0039】
また、油圧供給配管40bに供給された制御圧は、第2制御圧供給配管49からマスタシリンダ11の第3圧力ポート48を通して背面圧力室Rに作用する。すると、入力ピストン13は、ホイールシリンダ25FR,25FL,25RR,25RLに付与される制御圧と同圧の圧力で押圧される。そのため、乗員は、車両の制動力をブレーキペダル15を通して感じることが可能となり、ブレーキペダル15の踏み込み量による制動力の調整をスムーズに行うことが可能となる。
【0040】
一方、電源系統に故障が発生して失陥した場合には、ABS24への電流値を制御することで、各ホイールシリンダ25FR,25FL,25RR,25RLへ付与する制御圧を適正油圧に制御することができない。ところが、本実施例では、マスタシリンダ11の第1圧力室Rと第2圧力室Rが各油圧配管27,29を介して前輪FR,FLのホイールシリンダ25FR,25FLに連結されている。
【0041】
即ち、電源系統の失陥時に、乗員がブレーキペダル15を踏むと、その操作力により入力ピストン13が前進し、第2圧力室Rが加圧されると共に、加圧ピストン14が前進し、第1圧力室Rが加圧される。このとき、各マスタカット弁30,31が開放されているため、第1圧力室R及び第2圧力室Rの油圧が制御圧として第1油圧配管27及び第2圧力配管29に吐出される。そのため、第1油圧配管27及び第2油圧配管29に供給された制御圧が、前輪FR,FLのホイールシリンダ25FR,25FLに付与される。従って、前輪FR,FLのホイールシリンダ25FR,25FLに適正な制御圧が付与されることとなり、前輪FR,FLに対して乗員のブレーキペダル15の操作力に応じた所望の制動力を発生させることができる。
【0042】
このように実施例1の車両用制動装置にあっては、シリンダ12内に入力ピストン13と加圧ピストン14を直列に移動自在に支持することで第1圧力室R及び第2圧力室Rを区画するマスタシリンダ11を設け、第1圧力室R及び第2圧力室Rにマスタカット弁30,31を有する各油圧配管27,29を介して前輪FR,FLのホイールシリンダ25FR,25FLを連結し、ABS24にホイールシリンダ25FR,25FL,25RR,25RLを連結している。
【0043】
従って、電源系統の正常時には、ABS24を制御することで、アキュムレータ32の油圧を調圧して各ホイールシリンダ25FR,25FL,25RR,25RLに供給することができる。一方、電源系統の失陥時には、ブレーキペダル15の操作に応じた油圧を各ホイールシリンダ25FR,25FL,25RR,25RLに供給することができる。即ち、電源系統の状態に拘らず乗員によるブレーキペダル15の操作に応じた制御圧を確実に発生させることができ、その結果、油圧経路を簡略化して構造の簡素化を図ることができると共に、製造コストを低減することができる一方、適正な制動力制御を可能とすることができ、信頼性及び安全性の向上を図ることができる。
【0044】
また、実施例1の車両用制動装置では、ABS24からの制御圧をホイールシリンダ25FR,25FL,25RR,25RLに供給可能な第1制御圧通路として、油圧供給配管39a,39b,40a,40bを設けると共に、油圧供給配管40bと背面圧力室Rの第3圧力ポート48との間に、ABS24からの制御圧をマスタシリンダ11における背面圧力室Rに供給可能な第2制御圧供給配管49を設けている。
【0045】
従って、ABS24の油圧供給配管40bに供給された制御圧は、第2制御圧供給配管49からマスタシリンダ11の背面圧力室Rに作用することとなり、入力ピストン13は、ホイールシリンダ25FR,25FL,25RR,25RLに付与される制御圧と同圧の圧力で押圧される。そのため、乗員は、車両の制動力をブレーキペダル15を通して感じることが可能となり、操作系に対する出力系の遅れに起因して発生する目標制動力に対する実制動力の乖離が抑制され、また、ブレーキペダル反力のヒステリシスを設定することができ、制動操作フィーリングの向上を図ることができる。
【0046】
また、実施例1の車両用制動装置では、調圧手段として、ABS24を適用し、このABS24の出力側に第1制御圧通路としての油圧供給配管39a,39b,40a,40bを連結すると共に、第2制御圧供給配管49を連結している。従って、簡単な構成で、ホイールシリンダ25FR,25FL,25RR,25RLに付与される制御圧と同圧の圧力を入力ピストン13の背面圧として作用させることができる。
【実施例2】
【0047】
図2は、本発明の実施例2に係る車両用制動装置を表す概略構成図である。なお、前述した実施例で説明したものと同様の機能を有する部材には同一の符号を付して重複する説明は省略する。
【0048】
実施例2の車両用制動装置において、図2に示すように、マスタシリンダ211は、シリンダ12内に入力ピストン13と加圧ピストン14が軸方向に移動自在に支持されて構成されており、ブレーキペダル15における操作ロッド20の先端部が入力ピストン13に連結されている。入力ピストン13は、シリンダ12に固定された支持部材21の内周面に移動自在に支持され、反力スプリング22の付勢力により一方方向(図2にて、右方)に付勢支持されている。加圧ピストン14は、シリンダ12内にて、入力ピストン13の先端部側に配置されており、外周面がシリンダ12の内周面に移動自在に支持され、付勢スプリング23により一方方向(図2にて、右方)に付勢支持されている。
【0049】
このように、シリンダ12内に入力ピストン13と加圧ピストン14が同軸上に移動自在に配置されることで、第1圧力室Rと、第2圧力室Rと、背面圧力室Rと、リリーフ室Rが形成されている。
【0050】
一方、前輪FR,FL及び後輪RR,RLにはそれぞれブレーキ装置を作動させるホイールシリンダ25FR,25FL,25RR,25RLが設けられており、調圧手段を構成するABS(Antilock Brake System/アンチロックブレーキシステム)24により作動可能となっている。なお、このABS24は、上述した実施例1で説明したものと同様であるため、詳細な説明は省略する。
【0051】
調圧手段を構成する圧力制御弁212は、パイロット圧としての制御圧によりアキュムレータ37に蓄圧された油圧を調圧し、マスタシリンダ211に出力可能である。そのため、この圧力制御弁212は、内部に図示しない駆動弁を有している。そして、圧力制御弁212は、高圧導入配管213により高圧供給配管38に連結され、第2制御圧供給配管214によりマスタシリンダ211の背面圧力室Rに連通する第3圧力ポート48に連結されている。また、圧力制御弁212は、減圧供給配管215により油圧供給配管40bに連結され、外部圧供給配管(パイロット通路)216により第2油圧配管29に連結されている。この場合、外部圧供給配管216は、第2油圧配管29における第2マスタカット弁31よりABS24側に連結されている。
【0052】
本実施例では、ABS(調圧手段)24からの制御圧をホイールシリンダ25FR,25FL,25RR,25RLに供給可能な第1制御圧通路として、油圧供給配管39a,39b,40a,40bが機能する。また、ABS24から出力される制御圧をパイロット圧として駆動弁を移動することで油圧を調圧して制御圧として出力可能である圧力制御弁212を設け、圧力制御弁212の出力側に連結されてその制御圧をマスタシリンダ211における背面圧力室Rに供給可能な第2制御圧通路として、第2制御圧供給配管214を適用している。
【0053】
本実施例の車両用制動装置による制動力制御について、具体的に説明すると、乗員がブレーキペダル15を踏むと、その操作力(踏力)により入力ピストン13が前進(図2にて左方へ移動)する。このとき、踏力センサ73はペダル踏力を検出し、ECU71は、このペダル踏力に基づいて目標制御圧を設定する。そして、ECU71は、この目標制御圧に基づいてABS24(増圧弁44a,44b,45a,45b、減圧弁46a,46b,47a,47b)を制御し、アキュムレータ37に蓄圧された油圧を調圧する。
【0054】
すると、ABS24で調圧された制御圧は、各油圧供給配管39a,39b,40a,40bを通して前輪FR,FL及び後輪RR,RLのホイールシリンダ25FR,25FL,25RR,25RLに付与される。このとき、ECU71は、各圧力センサ75,77,79,80が検出した制御圧をフィードバックし、目標制御圧と制御圧とが一致するようにABS24を制御する。従って、前輪FR,FLのホイールシリンダ25FR,25FLに適正な制御圧が付与されると共に、後輪RR,RLのホイールシリンダ25RR,25RLに適正な制御圧が付与されることとなり、前輪FR,FL及び後輪RR,RLに対して乗員のブレーキペダル15の操作力に応じた所望の制動力を発生させることができる。
【0055】
また、油圧供給配管39aに供給された制御圧は、第2油圧配管29及び外部圧供給配管216を通して圧力制御弁212に供給される。この圧力制御弁212では、外部圧供給配管216から供給された制御圧が外部圧として駆動弁に作用する。すると、駆動弁が外部圧に応じて移動することで、高圧導入配管213から導入されたアキュムレータ37の油圧が調圧され、制御圧として第2制御圧供給配管214に供給される。そして、この第2制御圧供給配管214からマスタシリンダ211の第3圧力ポート48を通して背面圧力室Rに作用する。すると、入力ピストン13は、ホイールシリンダ25FR,25FL,25RR,25RLに付与される制御圧と同圧の圧力で押圧される。そのため、乗員は、車両の制動力をブレーキペダル15を通して感じることが可能となり、ブレーキペダル15の踏み込み量による制動力の調整をスムーズに行うことが可能となる。
【0056】
一方、電源系統に故障が発生して失陥した場合には、ABS24への電流値を制御することで、各ホイールシリンダ25FR,25FL,25RR,25RLへ付与する制御圧を適正油圧に制御することができない。ところが、本実施例では、マスタシリンダ11の第1圧力室Rと第2圧力室Rが各油圧配管27,29を介して前輪FR,FLのホイールシリンダ25FR,25FLに連結されると共に、第2圧力室Rからの油圧を外部圧として作動可能な圧力制御弁212が設けられている。
【0057】
即ち、電源系統の失陥時に、乗員がブレーキペダル15を踏むと、その操作力により入力ピストン13が前進し、第2圧力室Rが加圧されると共に、加圧ピストン14が前進し、第1圧力室Rが加圧される。このとき、各マスタカット弁30,31が開放されているため、第1圧力室R及び第2圧力室Rの油圧が制御圧として第1油圧配管27及び第2油圧配管29に吐出される。そして、第2油圧配管29の油圧が外部圧として外部圧供給配管216を通して圧力制御弁212に供給される。すると、前述と同様に、圧力制御弁212では、外部圧供給配管216から供給された外部圧により駆動弁が移動することで、高圧導入配管213から導入されたアキュムレータ37の油圧が調圧され、制御圧として第2制御圧供給配管214に供給される。すると、この第2制御圧供給配管214からマスタシリンダ211の第3圧力ポート48を通して背面圧力室Rに作用し、入力ピストン13をアシストする。
【0058】
そのため、第1圧力室Rと第2圧力室Rからは、乗員のブレーキペダル15の操作力に応じた油圧が制御圧として第1油圧配管27及び第2圧力配管29に吐出される。そして、第1油圧配管27及び第2油圧配管29に供給された制御圧が、前輪FR,FLのホイールシリンダ25FR,25FLに付与される。従って、前輪FR,FLのホイールシリンダ25FR,25FLに適正な制御圧が付与されることとなり、前輪FR,FLに対して乗員のブレーキペダル15の操作力に応じた所望の制動力を発生させることができる。
【0059】
このように実施例2の車両用制動装置にあっては、ABS24からの制御圧をホイールシリンダ25FR,25FL,25RR,25RLに供給可能な第1制御圧通路として、油圧供給配管39a,39b,40a,40bを設けると共に、ABS24から出力される制御圧をパイロット圧として駆動弁を移動することで油圧を調圧して制御圧として出力可能である圧力制御弁212を設け、圧力制御弁212と背面圧力室Rの第3圧力ポート48との間に、圧力制御弁212の制御圧をマスタシリンダ211における背面圧力室Rに供給可能な第2制御圧通路として、第2制御圧供給配管214を設けている。
【0060】
従って、ABS24の油圧供給配管39bに供給された制御圧は、第2油圧配管29及び外部圧供給配管216を通して圧力制御弁212に供給され、この圧力制御弁212はアキュムレータ37の油圧を調圧し、制御圧として第2制御圧供給配管214からマスタシリンダ211の背面圧力室Rに作用することとなり、入力ピストン13は、ホイールシリンダ25FR,25FL,25RR,25RLに付与される制御圧と同圧の圧力で押圧される。そのため、乗員は、車両の制動力をブレーキペダル15を通して感じることが可能となり、操作系に対する出力系の遅れに起因して発生する目標制動力に対する実制動力の乖離が抑制され、また、ブレーキペダル反力のヒステリシスを設定することができ、制動操作フィーリングの向上を図ることができる。
【0061】
また、実施例2の車両用制動装置では、調圧手段として、ABS24及び圧力制御弁212を適用し、このABS24の出力側に第1制御圧通路としての油圧供給配管39a,39b,40a,40bを連結すると共に、圧力制御弁212の出力側に第2制御圧供給配管214を連結している。従って、簡単な構成で、ホイールシリンダ25FR,25FL,25RR,25RLに付与される制御圧と同圧の圧力を入力ピストン13の背面圧として作用させることができる。
【実施例3】
【0062】
図3は、本発明の実施例3に係る車両用制動装置を表す概略構成図、図4は、実施例3の車両用制動装置における圧力制御弁の断面図である。なお、前述した実施例で説明したものと同様の機能を有する部材には同一の符号を付して重複する説明は省略する。
【0063】
実施例3の車両用制動装置において、図3に示すように、マスタシリンダ411は、シリンダ412内にピストンとしての入力ピストン413と中間ピストン414と加圧ピストン415が軸方向に移動自在に支持されて構成されている。ブレーキペダル15は、操作ロッド20が入力ピストン413に連結されている。
【0064】
入力ピストン413は、外周面がシリンダ412の内周部に固定された支持部材416の内周面により移動自在に支持されている。この入力ピストン413は、支持部材416の内周面に嵌合する支持部413aと、基端部に固定されたブラケット413bと、先端部に支持部413aより大径の押圧部413cと、押圧部413cから前方に延出する連結部413dとを有している。そして、支持部材416と入力ピストン413のブラケット413bとの間に反力スプリング417が介装されており、入力ピストン413が一方方向(図3にて、右方)に付勢支持されている。
【0065】
中間ピストン414は、シリンダ412内にて、入力ピストン413と加圧ピストン415との間に配置されており、外周面がシリンダ412の内周面に移動自在に支持されている。この中間ピストン414は、シリンダ412の第1内周面412aに嵌合する第1支持部414aと、第1内周面412aより小径の第2内周面412bに嵌合する第2支持部414bとを有している。また、中間ピストン414は、第1支持部414aに後方に開口する第1支持孔414d及び第2支持孔414eが形成されると共に、第2支持孔414eの底部に連結孔414cが形成されている。そして、中間ピストン414の第1支持孔414d内に入力ピストン413の押圧部413cが進入し、連結孔414cに連結部413dの先端部が移動自在に嵌合している。そして、第1支持孔414dの先端部に、支持部材418が固定されており、入力ピストン413に対して相対移動可能となっている。
【0066】
そのため、入力ピストン413は、反力スプリング417の付勢力により、押圧部413cが中間ピストン414と一体の支持部材418に当接する位置に付勢支持されており、反力スプリング417の付勢力に抗して前進すると、連結部413dが中間ピストン414における連結孔414cの底面に当接することができる。中間ピストン414は、反力スプリング417の付勢力により、入力ピストン413を介して、支持部材418が支持部材416に当接する位置に付勢支持されている。また、入力ピストン413は、連結部413dが中間ピストン414における連結孔414cの底面に当接した後、更に前進することで中間ピストン414を押圧し、入力ピストン413と中間ピストン414とが一体となって前進することができる。
【0067】
加圧ピストン415は、シリンダ412内にて、中間ピストン414の先端部側に配置されており、外周面がシリンダ412の内周面に移動自在に支持されている。この加圧ピストン415は、シリンダ412の第2内周面412bに嵌合する支持部415aと、段部412cに当接可能なストッパ部415bとを有している。そして、シリンダ412と加圧ピストン415との間には、付勢スプリング419が張設されており、加圧ピストン415は、付勢スプリング419の付勢力により、ストッパ部415bが段部412cに当接する位置に付勢支持されている。また、入力ピストン413は、中間ピストン414に当接した後、更に前進することで加圧ピストン415を押圧し、入力ピストン413と中間ピストン414と加圧ピストン415とが一体となって前進することができる。
【0068】
また、入力ピストン413は、連結部413dの基端部に第1ゴム部材420が配置され、中間ピストン414は、第2支持孔414e内に連結部413dが貫通するカバー422が移動自在に支持され、内部に第2ゴム部材421が配置されている。そして、第1ゴム部材420は、その前後に、入力ピストン413の押圧により、この押圧方向(軸方向)と交差する方向(径方向)に弾性変形する円錐台形状をなす変形部420a,420bが形成されている。また、第2ゴム部材421は、その前後に、入力ピストン413の押圧により、この押圧方向(軸方向)と交差する方向(径方向)に弾性変形する円錐台形状をなす前後の変形部421a,421bが形成されている。
【0069】
なお、第1ゴム部材420は、第2ゴム部材421と同じ長さに設定されているが、外径が大きく設定されている。また、第1ゴム部材420は、外周面と第1支持部414bとの間に微小隙間が設定され、第2ゴム部材421は、内周面と連結部413dとの間に微小隙間が設定さている。即ち、第1ゴム部材420と第2ゴム部材421とは、その形状や配設位置が相違することで、弾性力(ばね定数)が異なるように設定されている。
【0070】
また、入力ピストン413と中間ピストン414が反力スプリング417の付勢力により後退位置に位置決めされているとき、第1ゴム部材420とカバー422(第2ゴム部材421)の間には、ストローク吸収機構としての初期隙間Sが設定されている。即ち、入力ピストン413が初期ストローク(初期隙間S)だけ前進するとき、入力ピストン413は各ゴム部材420,421を弾性変形させることなく、その初期ストロークが吸収される。
【0071】
本実施例では、入力ピストン413、反力スプリング417、ゴム部材420,421によりストロークシミュレータ(ストローク吸収機構)が構成されており、入力ピストン413が前進することで、反力スプリング417だけを弾性変形し、入力ピストン413が初期ストロークSを越えて前進し、第1ゴム部材420がカバー422に接触して押圧することで、この第1ゴム部材420が弾性変形し、続いて、第2ゴム部材421が弾性変形する。ここで、反力スプリング417は、弾性変形時に線形剛性変化をなす一方、ゴム部材420,421は、弾性変形時に非線形剛性変化をなす。
【0072】
従って、運転者がペダル17を踏み込むことでブレーキペダル15が回動すると、その操作力が操作ロッド20を介して入力ピストン413に伝達され、この入力ピストン413が反力スプリング417の付勢力に抗して前進することができる。そして、入力ピストン413が初期ストロークSだけ前進すると、各ゴム部材420,421を弾性変形させて中間ピストン414に当接することができ、入力ピストン413は中間ピストン414を押圧し、一体となって前進することができる。その後、入力ピストン413と中間ピストン414が一体となって前進し、中間ピストン414が加圧ピストン415に当接すると、入力ピストン413及び中間ピストン414は加圧ピストン415を押圧し、一体となって前進することができる。
【0073】
このように、シリンダ412内に入力ピストン413と中間ピストン414と加圧ピストン415が同軸上に移動自在に配置されることで、第1圧力室R、第2圧力室R、背面圧力室R、第1リリーフ室R、第2リリーフ室Rが形成されている。この場合、第1リリーフ室Rと第2リリーフ室Rとは、中間ピストン414に形成された連通路423及び連結孔414cにより連通している。そして、第1圧力室Rの第1圧力ポート431に第1油圧配管27が連結され、第2圧力室Rの第2圧力ポート432に第2油圧配管29が連結されている。
【0074】
一方、前輪FR,FL及び後輪RR,RLにはそれぞれブレーキ装置を作動させるホイールシリンダ25FR,25FL,25RR,25RLが設けられており、調圧手段を構成するABS(Antilock Brake System/アンチロックブレーキシステム)24により作動可能となっている。なお、このABS24は、上述した実施例1、2で説明したものと同様であるため、詳細な説明は省略する。
【0075】
油圧ポンプ32及びアキュムレータ37は、高圧供給配管433を介して圧力制御弁434に連結されている。この圧力制御弁434は、電磁力によりアキュムレータ37に蓄圧された油圧を調圧し、マスタシリンダ411やホイールシリンダ25FR,25FL,25RR,25RLに出力可能である。そのため、圧力制御弁434は、第1制御圧供給配管435を介してABS24に連結され、第2制御圧供給配管436を介してマスタシリンダ411の背面圧力室Rに連通する第3圧力ポート437に連結されている。また、圧力制御弁434は、減圧供給配管438を介して第4油圧配管43に連結され、外部圧供給配管(パイロット通路)439を介して第2油圧配管29に連結されている。この場合、外部圧供給配管439は、第2油圧配管29における第2マスタカット弁31よりABS24側に連結されている。
【0076】
ここで、上述した調圧手段を構成する圧力制御弁434について詳細に説明する。
【0077】
この圧力制御弁434において、図4に示すように、ハウジング111は、その中心部に上下方向に沿って貫通する第1支持孔112が形成され、その上部には、第1支持孔112に連通する取付孔113及びねじ孔114が形成され、上方が外部に開口している。そして、位置調整用円盤115が外部からねじ孔114に螺合することで、第1支持孔112の上方の開口が閉塞されている。
【0078】
また、ハウジング111の下部には、第1支持孔112に連通し、且つ、この第1支持孔112より小径の第2支持孔116が形成されている。そして、ハウジング111の第1支持孔112と第2支持孔116にわたって駆動ピストン(駆動弁)117が移動自在に嵌合している。この駆動ピストン117は、円柱形状をなし、フランジ部117aが一体に形成されている。また、駆動ピストン117には、軸方向に貫通する第1通路117bが形成されると共に、この第1通路117bと交差するように径方向に貫通する第2通路117cが形成されている。
【0079】
ハウジング111の下部には、プランジャ118が上下方向に沿って移動自在に支持されると共にリターンスプリング119により下方に付勢支持されている。そして、このプランジャ118は、上方に延出されて第2支持孔116に移動自在に嵌合するロッド部118aを有し、第1弁部118bが駆動ピストン117に形成された第1弁座117dに着座可能となっている。そして、プランジャ118の外周側には、通電可能なコイル120が巻装されており、このプランジャ118とコイル120によりソレノイドが構成されている。
【0080】
ハウジング111の第1支持孔112には、駆動ピストン117の上方に位置して、円筒形状をなす外部ピストン(駆動弁)121が移動自在に嵌合し、この外部ピストン121の内部に制御弁122が配設され、この外部ピストン121と相対移動自在となっている。外部ピストン121は、連通孔121aが形成されると共に、上方が開口している。そして、駆動ピストン117のフランジ部117aと外部ピストン121との間には、リターンスプリング123が張設されており、駆動ピストン117は下方に付勢支持され、外部ピストン121は上方に付勢支持されている。
【0081】
外部ピストン121は、内部に制御弁122が収容され、上端部に蓋部124が固定されている。制御弁122は、上端部が蓋部124に嵌合する一方、下端部に連通孔121aを貫通する連結部122aが形成され、この連結部122aが駆動ピストン117の上端部に形成された連結凹部117eに嵌合している。また、制御弁122は、弁部122bが形成され、この弁部122bは、外部ピストン121に形成された第2弁座121bに着座可能となっている。そして、外部ピストン121と制御弁122との間には、リターンスプリング125が張設されており、その付勢力により外部ピストン121が上方に、制御弁122が下方に支持されることで、第2弁部122bが第2弁座121bに着座している。
【0082】
本実施例の圧力制御弁434は、上述したように、ハウジング111内に駆動ピストン117、外部ピストン121、制御弁122が移動自在に支持されることから、外部ピストン121と制御弁122により区画される高圧室R11と、ハウジング111と駆動ピストン117とプランジャ118により区画される減圧室R12と、ハウジング111と駆動ピストン117と外部ピストン121と制御弁122とにより区画される圧力室R13と、ハウジング111と外部ピストン121と制御弁122とにより区画されるリリーフ室R14と、ハウジング111と外部ピストン121により区画される外部圧力室R15が設けられている。
【0083】
そして、ハウジング111及び外部ピストン121を貫通して高圧室R11に連通する高圧ポートP11が形成されると共に、ハウジング111を貫通して減圧室R12に連通する減圧ポートP12が形成されている。また、ハウジング111を貫通して圧力室R13に連通する制御圧ポートP13が形成されている。更に、ハウジング111及び外部ピストン121を貫通してリリーフ室R14に連通するリリーフポートP14が形成されている。また、ハウジング111を貫通して外部圧力室R15に連通する外部圧ポートP15が形成されている。そして、高圧ポートP11は高圧供給配管433に連結され、減圧ポートP12及びリリーフポートP14は減圧供給配管438に連結され、制御圧ポートP13は各制御圧供給配管435,436に連結され、外部圧ポートP15は外部圧供給配管439に連結されている。
【0084】
このように構成された圧力制御弁434にて、コイル120が消磁状態にあるとき、リターンスプリング119によりプランジャ118の第1弁部118bが、駆動ピストン117の第1弁座117dから離間している。一方、リターンスプリング125により制御弁122の第2弁部122bが外部ピストン121の第2弁座121bに着座している。従って、連通孔121aが閉止されることで、高圧室R11と圧力室R13とが遮断され、圧力室R13と減圧室R12とが連通する。
【0085】
この状態から、コイル120に通電すると、発生する電磁力によりプランジャ118が上方に移動し、ロッド部118aが駆動ピストン117を押圧し、この駆動ピストン117がリターンスプリング123の付勢力に抗して上方に移動する。すると、駆動ピストン117が制御弁122をリターンスプリング125の付勢力に抗して押圧し、この制御弁122が上方に移動する。制御弁122が上方に移動すると、第2弁部122bが外部ピストン121の第2弁座121bから離間して連通孔121aが開放される。従って、高圧室R11と圧力室R13が連通され、圧力室R13と減圧室R12とが遮断される。
【0086】
また、外部圧力ポートP15から外部圧力室R15に外部圧(油圧)が供給されると、蓋部124を介して外部ピストン121が下方に移動する。すると、この外部ピストン121がリターンスプリング123の付勢力に抗して下方に移動し、制御弁122の第2弁部122bから外部ピストン121の第2弁座121bが離間して連通孔121aが開放される。従って、前述と同様に、従って、高圧室R11と圧力室R13が連通され、圧力室R13と減圧室R12とが遮断される。
【0087】
図3に戻り、マスタシリンダ411にて、シリンダ412には、リリーフ室Rに連通する第1リリーフポート454が形成され、この第1リリーフポート454は第5油圧配管455を介してリザーバタンク34の第2貯留室34bに連結されている。中間ピストン414には、第2圧力室Rと第1リリーフポート454とを連通可能な第1連通孔456が形成されており、シリンダ412と中間ピストン414との間には、第2リリーフポート454の一方側に位置してワンウェイシール457が設けられている。また、シリンダ412には、第2リリーフポート458が形成され、この第2リリーフポート458は第6油圧配管459を介してリザーバタンク34の第1貯留室34aに連結されている。加圧ピストン415には、第2リリーフポート458と第1圧力室Rとを連通可能な第2連通孔460が形成されており、シリンダ412と加圧ピストン415との間には、第2リリーフポート458の両側に位置してワンウェイシール461が設けられている。
【0088】
従って、中間ピストン414が後退位置にあるとき、第2圧力室Rと第1リリーフポート454とが第1連通孔456により連通すると共に、リリーフ室Rが第1リリーフポート454に連通し、第1圧力室Rと第2リリーフポート458とが第2連通孔460により連通している。そして、入力ピストン413に押圧されて中間ピストン414が微小前進すると、第2圧力室Rと第1リリーフポート454との連通が遮断されることから、第2圧力室Rが密閉状態となり、中間ピストン414に対して入力ピストン413が接近可能となる。このとき、第2マスタカット弁31が閉止状態であれば、中間ピストン414の前進が阻止され、第2マスタカット弁31が開放状態であれば、中間ピストン414が前進することで、第2圧力室Rから第2油圧配管434に制御圧を供給可能となる。また、中間ピストン414が前進して加圧ピストン415が前進すると、第1圧力室Rと第2リリーフポート458との連通が遮断される。このとき、第1マスタカット弁30が閉止状態であれば、加圧ピストン415の前進が阻止され、第1マスタカット弁30が開放状態であれば、加圧ピストン415が前進することで、第1圧力室Rから第1油圧配管27に制御圧を供給可能となる。
【0089】
また、支持部材416には、入力ピストン413との間にシール部材462が装着されると共に、中間ピストン414と一体の支持部材418には、入力ピストン413との間にシール部材463が装着されている。即ち、この構成により、入力ピストン413は、大気側のシール(シール部材462)径と中間ピストン414側のシール(シール部材463)径とが同径となっている。そのため、マスタシリンダ411の第3圧力ポート437から背面圧力室Rに制御圧が作用したとき、入力ピストン413は、この制御圧の圧力を受けることがないため、反力の変化もない。
【0090】
本実施例の車両用制動装置による制動力制御について、具体的に説明すると、乗員がブレーキペダル15を踏むと、その操作力(踏力)により入力ピストン413が前進する。このとき、ECU71は、ペダル踏力に応じて設定された目標制御圧に基づいて圧力制御弁434を制御し、圧力制御弁434は、アキュムレータ37に蓄圧された油圧を調圧し、目標制御圧となる制御圧を各制御圧供給配管435,436に出力する。
【0091】
すると、第2制御圧供給配管436に供給された油圧は、マスタシリンダ411の第3圧力ポート437を通して背面圧力室Rに作用する。ところが、入力ピストン413は、大気側のシール径と中間ピストン414側のシール径が同径であるため、入力ピストン413は制御圧に関係なく前進することとなり、ブレーキペダル15に対して反力スプリング417により適正な反力が付与される。
【0092】
また、第1制御圧供給配管435に供給された制御圧は、前輪FR,FLのホイールシリンダ25FR,25FL及び後輪RR,RLのホイールシリンダ25RR,25RLに付与される。従って、前輪FR,FLのホイールシリンダ25FR,25FLに適正な制御圧が付与されると共に、後輪RR,RLのホイールシリンダ25RR,25RLに適正な制御圧が付与されることとなり、前輪FR,FL及び後輪RR,RLに対して乗員のブレーキペダル15の操作力に応じた所望の制動力を発生させることができる。
【0093】
一方、電源系統に故障が発生して失陥したとき、乗員がブレーキペダル15を踏むと、その操作力により入力ピストン413が前進し、初期ストロークSを越えると、入力ピストン413がゴム部材420,421を介して中間ピストン414を押圧する。このとき、マスタカット弁30,31が開放されていることから、入力ピストン413と中間ピストン414が一体となって前進することで第2圧力室Rが加圧され、更に、前進して加圧ピストン415に当接すると、入力ピストン413と中間ピストン414と加圧ピストン415が一体となって前進することで第1圧力室Rが加圧される。そのため、第1圧力室Rの油圧が第1油圧配管27に吐出され、第2圧力室Rの油圧が第2油圧配管29に吐出される。また、第2油圧配管29の油圧が外部圧として外部圧供給配管439を通して圧力制御弁434に作用する。
【0094】
この圧力制御弁434は、外部圧が作用することで、アキュムレータ37の油圧を調圧して各制御圧供給配管435,436に供給する。すると、第2制御圧供給配管436に供給された油圧は、マスタシリンダ411の第3圧力ポート437を通して背面圧力室Rに作用することとなり、この制御圧により中間ピストン414を介して入力ピストン413をアシストすることができる。
【0095】
そのため、第1制御圧供給配管435に供給された制御圧が、後輪RR,RLのホイールシリンダ25RR,25RLに付与される。また、制御圧によりアシストされることで、容易に前進する入力ピストン413により、第2制御圧供給配管436の制御圧と同等の制御圧が第1圧力室Rから第1油圧配管27に吐出されると共に、第2圧力室Rから第2油圧配管29に吐出される。そのため、各油圧配管27,29に供給された制御圧が、前輪FR,FLのホイールシリンダ25FR,25FLに付与される。従って、前輪FR,FLのホイールシリンダ25FR,25FLに適正な制御圧が付与されると共に、後輪RR,RLのホイールシリンダ25RR,25RLに適正な制御圧が付与されることとなり、前輪FR,FL及び後輪RR,RLに対して乗員のブレーキペダル15の操作力に応じた所望の制動力を発生させることができる。
【0096】
このとき、圧力制御弁434からの制御圧が、マスタシリンダ411の第3圧力ポート437を通して背面圧力室Rに作用する。すると、入力ピストン413は、ホイールシリンダ25FR,25FL,25RR,25RLに付与される制御圧と同圧の圧力で押圧される。そのため、乗員は、車両の制動力をブレーキペダル15を通して感じることが可能となり、ブレーキペダル15の踏み込み量による制動力の調整をスムーズに行うことが可能となる。
【0097】
なお、前輪FR,FLのホイールシリンダ25FR,25FLへの油圧供給経路の一方が失陥した場合であっても、他方の油圧供給経路へ制御圧を供給し、制動力を発生させることができる。
【0098】
このように実施例3の車両用制動装置にあっては、第2油圧配管29からの制御圧をパイロット圧として駆動ピストン117を移動することで油圧を調圧して制御圧として出力可能である圧力制御弁434を設け、この圧力制御弁434からの制御圧をホイールシリンダ25FR,25FL,25RR,25RLに供給可能な第1制御圧供給配管435を設けると共に、圧力制御弁434からの制御圧をマスタシリンダ411における背面圧力室Rに供給可能な第2制御圧供給配管436を設けている。
【0099】
従って、第2油圧配管29からの制御圧は、外部圧供給配管439を通して圧力制御弁434に供給され、この圧力制御弁434はアキュムレータ37の油圧を調圧し、制御圧として第2制御圧供給配管436からマスタシリンダ411の背面圧力室Rに作用することとなり、入力ピストン413は、ホイールシリンダ25FR,25FL,25RR,25RLに付与される制御圧と同圧の圧力で押圧される。そのため、乗員は、車両の制動力をブレーキペダル15を通して感じることが可能となり、操作系に対する出力系の遅れに起因して発生する目標制動力に対する実制動力の乖離が抑制され、また、ブレーキペダル反力のヒステリシスを設定することができ、制動操作フィーリングの向上を図ることができる。
【0100】
また、実施例3の車両用制動装置では、調圧手段として、圧力制御弁434を適用し、この圧力制御弁434の出力側に第1制御圧供給配管435を連結すると共に、圧力制御弁434の出力側に第2制御圧供給配管436を連結している。従って、簡単な構成で、ホイールシリンダ25FR,25FL,25RR,25RLに付与される制御圧と同圧の圧力を入力ピストン413の背面圧として作用させることができる。
【産業上の利用可能性】
【0101】
以上のように、本発明に係る車両用制動装置は、調圧手段からの油圧をマスタシリンダにおけるピストンの背面側に供給することで、制動操作フィーリングの向上を図るものであり、いずれの種類の制動装置に用いても好適である。
【図面の簡単な説明】
【0102】
【図1】本発明の実施例1に係る車両用制動装置を表す概略構成図である。
【図2】本発明の実施例2に係る車両用制動装置を表す概略構成図である。
【図3】本発明の実施例3に係る車両用制動装置を表す概略構成図である。
【図4】実施例3の車両用制動装置における圧力制御弁の断面図である。
【符号の説明】
【0103】
11,211,411 マスタシリンダ
12,412 シリンダ
13,413 入力ピストン(ピストン)
14,415 加圧ピストン(ピストン)
15 ブレーキペダル(操作部材)
22,417 反力スプリング
23,419 付勢スプリング
24 アンチロックブレーキシステム、ABS(調圧手段)
25FR,25FL,25RR,25RL ホイールシリンダ
27 第1油圧配管(油圧通路)
29 第2油圧配管(油圧通路)
30,31 マスタカット弁
32 油圧ポンプ(油圧供給源)
34 リザーバタンク
37 アキュムレータ(油圧供給源)
39a,39b,40a,40b 油圧供給配管(第1制御圧通路)
44a,44b,45a,45b 増圧弁
46a,46b,47a,47b 減圧弁
49,214,436 第2制御圧供給配管(第2制御圧通路)
50 ストロークシミュレータ(ストローク吸収機構)
71 電子制御ユニット、ECU
117 駆動ピストン(駆動弁)
121 外部ピストン(駆動弁)
122 制御弁
212,434 圧力制御弁
216,439 外部圧供給配管
414 中間ピストン(ピストン)
435 第1制御圧供給配管
第1圧力室
第2圧力室
背面圧力室(第3圧力室)
,R リリーフ室

【特許請求の範囲】
【請求項1】
乗員が制動操作可能な操作部材と、
該操作部材の操作ストロークに応じてピストンが前進することで作動流体を加圧して所定の油圧を出力可能なマスタシリンダと、
前記ピストンのストロークを吸収可能なストローク吸収機構と、
油圧を受けて車輪に制動力を発生させるホイールシリンダと、
前記マスタシリンダと前記ホイールシリンダとを連結する油圧通路と、
該油圧通路を開閉可能なマスタカット弁と、
前記操作部材の操作ストロークに応じて油圧供給源の油圧を調圧して出力可能な調圧手段と、
該調圧手段からの油圧を前記ホイールシリンダに供給可能な第1制御圧通路と、
前記調圧手段からの油圧を前記マスタシリンダにおけるピストンの背面側に供給可能な第2制御圧通路と、
を備えることを特徴とする車両用制動装置。
【請求項2】
前記マスタシリンダは、シリンダ内に前記ピストンとしての入力ピストン及び加圧ピストンが移動自在に支持されることで、第1圧力室と第2圧力室と第3圧力室が区画され、前記第1圧力室に前記油圧通路としての第1油圧通路が連結され、前記第2圧力室に前記油圧通路としての第2油圧通路が連結され、前記ピストンの背面側に区画された前記第3圧力室に前記第2制御圧通路が連結され、前記第1油圧通路及び前記第2油圧通路が前輪の前記ホイールシリンダに連結され、前記第1制御圧通路が前後輪の前記ホイールシリンダに連結されることを特徴とする請求項1に記載の車両用制動装置。
【請求項3】
前記調圧手段は、増圧弁及び減圧弁を有するアンチロックブレーキシステムを有し、該アンチロックブレーキシステムの出力側に前記第1制御圧通路及び前記第2制御圧通路が連結されることを特徴とする請求項2に記載の車両用制動装置。
【請求項4】
前記調圧手段は、増圧弁及び減圧弁を有するアンチロックブレーキシステムと、該アンチロックブレーキシステムから出力される油圧をパイロット圧として駆動弁を移動することで油圧を調圧して出力可能である圧力制御弁とを有し、該アンチロックブレーキシステムの出力側に前記第1制御圧通路が連結され、前記圧力制御弁の出力側に前記第2制御圧通路が連結されることを特徴とする請求項2に記載の車両用制動装置。
【請求項5】
前記調圧手段は、前記操作部材の操作ストロークに応じた目標制御圧に基づいた電磁力により駆動弁を移動することで油圧を調圧して出力可能であると共に、前記マスタシリンダからの油圧をパイロット圧として前記駆動弁を移動することで油圧を調圧して出力可能である圧力制御弁を有し、該圧力制御弁の出力側に前記第1制御圧通路及び前記第2制御圧通路が連結されることを特徴とする請求項2に記載の車両用制動装置。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【公開番号】特開2010−929(P2010−929A)
【公開日】平成22年1月7日(2010.1.7)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2008−161835(P2008−161835)
【出願日】平成20年6月20日(2008.6.20)
【出願人】(000003207)トヨタ自動車株式会社 (59,920)
【Fターム(参考)】