説明

車両用制御装置

【課題】車両の機能制限を利用者に認識させながら、走行可能距離を延長する。
【解決手段】選択処理手段14bは、電池6の残存電力量の低下を抑制するための複数の省エネルギ制御モードを車両の利用者に提示する。選択処理手段14bは、それらの省エネルギ制御モードの実行、または却下の選択を利用者に求める。電力制御手段14aは、利用者によって選択された省エネルギ制御モードが実行されるように、複数の制御装置9、10、12を制御する。省エネルギ制御モードの提示は、残存電力量が所定値を下回る場合に、または車両が目的地まで到達できないと判定される場合に実行される。この構成によると、車両の機能が制限されることを車両の利用者に認識させることができる。この結果、利用者の不満を抑えながら、大幅な機能制限が可能となり、車両の走行可能距離を延長することができる。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、車両の走行用のエネルギの低下を抑制する車両用制御装置に関する。
【背景技術】
【0002】
特許文献1は、車両の走行用の電池の残存電力量が低下すると、走行用の回転電機の電力を制限する装置を開示している。この装置によると、走行用の電池の残容量が低下した後であっても、車両を退避させる程度の距離は車両を走行させることができる。また、走行用の電池の損傷を回避することができる。
【0003】
特許文献2は、車両の走行用の電池の残存電力量が少なくなると、充電スタンドに対する充電予約処理を自動的に実行し、さらに充電予約した充電スタンドへの経路案内を実行する装置を開示している。この装置によると、車両を充電場所まで到達させることができる。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【特許文献1】特開平10−248104号公報
【特許文献2】特開2006−113892号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
特許文献1の構成では、走行用の電池の残存電力量が減ると、自動的に車両の走行能力が制限される。これでは、車両の利用者が走行能力の制限を知らされない状態で、車両の挙動が突然に大きく変化する。このため、車両の利用者は、強い違和感、不満を感じることとなる。
【0006】
特許文献2の構成では、車両に搭載された複数の電気機器の消費電力が考慮されない。このため、車載の電気機器の消費電力が多いと、車両を充電場所まで走行させることができないおそれがある。また、これら車載の電気機器の使用を制限すると、その電気機器により提供される快適性や利便性といった機能が損なわれ、車両の利用者が不利益を受けて強い違和感、不満を感じることとなる。
【0007】
同様の問題点は、電池の電力を走行用のエネルギとする電動車両に限らず、ガソリン等の燃料をエネルギとする車両にも発生する。
【0008】
本発明は上記問題点に鑑みてなされたものであり、車両の機能が制限されることを車両の利用者に認識させることにより、大幅な機能制限を可能として、車両の走行可能距離を延長することができる車両用制御装置を提供することである。
【0009】
本発明の他の目的は、目的地まで走行するために制限されるべき車両の機能を車両の利用者に認識させることができる車両用制御装置を提供することである。
【課題を解決するための手段】
【0010】
本発明は上記目的を達成するために以下の技術的手段を採用する。
【0011】
請求項1に記載の発明は、車両の走行用のエネルギの低下を抑制するための複数の省エネルギ制御モードを実行可能な複数の制御装置(9、10、12)と、複数の省エネルギ制御モードをまとめて表示し、車両の利用者に省エネルギ制御モードの実行または却下を選択させる選択処理手段(13a、13e、14b、125、126、225、226)と、選択処理手段を経由して利用者によって実行が選択された省エネルギ制御モードを複数の制御装置に実行させ、車両の走行可能距離を延長させる制御手段(14a、127、227)とを備えることを特徴とする車両用制御装置である。
【0012】
この構成によると、車両の走行用のエネルギの低下を抑制するための複数の省エネルギ制御モードが提供される。さらに、選択処理手段は、これら複数の省エネルギ制御モードを表示し、複数の省エネルギ制御モードの実行または却下を車両の利用者に選択させる。そして、制御手段は、実行が選択された省エネルギ制御モードを実行させる。この構成によると、走行用エネルギの低下を抑制するために実行される省エネルギ制御モードを車両の利用者に認識させることができる。また、その省エネルギ制御モードを実行することに伴う不快感の増加、および/または利便性の低下といった不利益をも認識させることができる。この結果、車両の機能が制限されることを車両の利用者に認識させることにより、大幅な機能制限を可能として、車両の走行可能距離を延長することができる。
【0013】
請求項2に記載の発明は、車両の走行用のエネルギは、電池(6)に充電された電力であり、省エネルギ制御モードは、電池の残存電力量の低下を抑制する制御モードであることを特徴とする。この構成によると、電池に充電された電力によって走行する車両の走行可能距離を利用者の選択によって延長することができる。
【0014】
請求項3に記載の発明は、省エネルギ制御モードは、電池から消費される電力量を低減させること、または、電池へ充電される電力量を増加させることにより電池の残存電力量の低下を抑制することを特徴とする。この構成によると、電池の残存電力量の低下の抑制が、電池から消費される電力量を低減させること、または電池へ充電される電力量を増加させることにより実現される。
【0015】
請求項4に記載の発明は、複数の省エネルギ制御モードのひとつは、車両の走行用の回転電機(4)の出力トルクを抑制することにより電池から消費される電力量を低減させる制御モードであることを特徴とする。この構成によると、回転電機の出力トルクを抑制することによって電池の残存電力量の低下の抑制が図られる。
【0016】
請求項5に記載の発明は、複数の省エネルギ制御モードのひとつは、車両の走行用の回転電機(4)によって回生され電池に充電される回生電力量を増加させるシフトレンジへ自動的に切換える制御モードであることを特徴とする。この構成によると、回転電機による回生電力量を増加させるシフトレンジへ自動的に切換えることにより電池の残存電力量の低下の抑制が図られる。
【0017】
請求項6に記載の発明は、複数の省エネルギ制御モードのひとつは、車両が減速するときの車両のブレーキ装置(7)の制動力と回転電機(4)の回生による制動力との比率を調節することにより電池に充電される回生電力量を増加させる制御モードであることを特徴とする。この構成によると、減速時のブレーキ装置の制動力と回転電機の回生による制動力との比率を調節することにより電池の残存電力量の低下の抑制が図られる。
【0018】
請求項7に記載の発明は、選択処理手段は、車両の走行用のエネルギの残量が所定値を下回ると判定されるときに(8、8a、13b、13c、14c、14d、14e、121、122、123、124)、複数の省エネルギ制御モードを表示し、車両の利用者に省エネルギ制御モードの実行または却下を選択させることを特徴とする。この構成によると、車両の走行用のエネルギの残量が所定値を下回ると、省エネルギ制御モードの選択が利用者に求められる。このため、利用者の煩わしさを抑えることができる。
【0019】
請求項8に記載の発明は、所定値は、車両が目的地まで到達するために必要なエネルギである(124)ことを特徴とする。この構成によると、車両の走行用のエネルギの残量が、車両が目的地まで到達するために必要なエネルギを下回るとき、すなわち車両が目的地に到達できないときに、省エネルギ制御モードの選択が利用者に求められる。このため、車両が目的地に到達する可能性を高めることができる。
【0020】
請求項9に記載の発明は、目的地は車両に設けられたナビゲーション制御装置(13、13b、132)に設定された目的地、または車両の走行履歴(14e、14f、134、135、150)により示される目的地であることを特徴とする。この構成によると、車両の走行の目的地を、ナビゲーション制御装置、または車両の走行履歴から設定することができる。
【0021】
請求項10に記載の発明は、省エネルギ制御モードは、利用者が明確に感知することができるほどの大きな変化を車両の挙動または状態に生じさせることを特徴とする。この構成によると、選択処理手段によって利用者に提示される省エネルギ制御モードは、利用者が明確に感知することができるほどの大きな変化を車両の挙動または状態に生じさせる。すなわち、省エネルギ制御モードの実行によって、車両の走行用のエネルギの低下を抑制するために、大幅な機能制限が実行される。このような大幅な機能制限が実行されても利用者が省エネルギ制御モードを選択しているため、利用者の違和感と不満とを抑制しながら、車両の走行可能距離を延長することができる。
【0022】
なお、特許請求の範囲および上記手段の項に記載した括弧内の符号は、ひとつの態様として後述する実施形態に記載の具体的手段との対応関係を示すものであって、本発明の技術的範囲を限定するものではない。
【図面の簡単な説明】
【0023】
【図1】本発明を適用した第1実施形態に係る車両用制御装置を示すブロック図である。
【図2】第1実施形態の車両用制御装置の作動を示すフローチャートである。
【図3】第1実施形態の車両用制御装置の表示装置を示す平面図である。
【図4】第1実施形態の車両用制御装置の作動を示すフローチャートである。
【図5】第1実施形態の車両用制御装置の作動を示すフローチャートである。
【図6】第1実施形態の車両用制御装置の作動を示すフローチャートである。
【図7】第1実施形態の車両用制御装置の走行履歴を示す表である。
【図8】本発明を適用した第2実施形態に係る車両用制御装置の作動を示すフローチャートである。
【発明を実施するための形態】
【0024】
以下に、図面を参照しながら本発明を実施するための複数の形態を説明する。各形態において先行する形態で説明した事項に対応する部分には同一の参照符号を付して重複する説明を省略する場合がある。各形態において構成の一部のみを説明している場合は、構成の他の部分については先行して説明した他の形態を適用することができる。また、後続の実施形態においては、先行する実施形態で説明した事項に対応する部分に百の位だけが異なる参照符号を付加することにより対応関係を示し、重複する説明を省略する場合がある。各実施形態で具体的に組合せが可能であることを明示している部分同士の組合せばかりではなく、特に組合せに支障が生じなければ、明示してなくとも実施形態同士を部分的に組み合せることも可能である。
【0025】
(第1実施形態)
図1は、本発明を適用した第1実施形態に係る車両用制御装置1を示すブロック図である。車両は、内燃機関(ICEG)3と、回転電機(VHMG)4との両方を走行用の動力源として搭載している。車両は、ハイブリッド車両、または電動車両と呼ばれる。車両は、内燃機関3のみ、回転電機4のみ、および内燃機関3と回転電機4との併用により駆動輪2を駆動し、走行することができる。内燃機関3の動力、および/または回転電機4の動力は、自動式の変速機(VHTM)5を介して駆動輪に伝達される。回転電機4は、発電電動機であって、電動機として、または発電機として作動することができる。
【0026】
車両には、回転電機4に給電する走行用の電池6が搭載されている。電池6は、リチウムイオン電池などの二次電池である。電池6は、回転電機4に給電するとともに、回転電機4によって発電された電力によって充電される。電池6は、走行用の動力を供給するための高電圧電池であって数百ボルトの電力を供給する。
【0027】
車両には、駆動輪2を含む車輪の回転を摩擦により制動するためのブレーキ装置(BRDV)7が設けられている。ブレーキ装置7は、回転電機4が発電機として機能するときに得られる電気的な制動力と共同して、車輪の回転を制動する。
【0028】
車両用制御装置1は、複数の制御装置を備える。制御装置は、コンピュータによって読み取り可能な記憶媒体を備えるマイクロコンピュータによって提供される。記憶媒体は、コンピュータによって読み取り可能なプログラムを格納している。記憶媒体は、メモリによって提供されうる。プログラムは、制御装置によって実行されることによって、制御装置をこの明細書に記載される装置として機能させ、この明細書に記載される制御方法を実行するように制御装置を機能させる。制御装置が提供する手段は、所定の機能を達成する機能的ブロック、またはモジュールとも呼ぶことができる。
【0029】
また、それぞれの制御装置は、複数の機能をひとつのハードウェアにおいて実行できるように、互いに一体化して構成することができる。また、それぞれの制御装置は、その制御対象と一体的に構成することができる。例えば、電池制御装置8は、電池6に一体的に設けてもよい。
【0030】
車両用制御装置1は、電池制御装置(BTCT)8を備える。電池制御装置8は、電池6の充電状態、放電状態を監視し、電池6が所期の性能を発揮できるように電池6の温度、充電電流、放電電流などのパラメータを制御する。電池制御装置8は、電池6に残された電力量、すなわち電池6が供給可能な電力量を示す残存電力量(以下、残量とも呼ばれる)を計測する残量計測手段(RCMM)8aを備える。残量計測手段8aは、電池6の残量を計測し、出力する。
【0031】
車両用制御装置1は、回転電機制御装置(MGCT)9を備える。回転電機制御装置9は、回転電機4によって車両の走行状態を制御する。回転電機制御装置9は、車両が所定の走行状態になるように回転電機4を制御する。
【0032】
回転電機制御装置9は、回転電機4が電動機として機能するときの出力を調節する出力制御手段(MPCM)9aを備える。出力制御手段9aは、回転電機4によって駆動輪2を駆動するときに、車両の加速性能などの機能を特に制限することなく回転電機4に多くの電力を消費させる走行優先モードと、車両の加速性能などの機能を大幅に制限して回転電機4による消費電力を走行優先モードよりも抑制しながら車両を走行させる省電力モードとを含む複数の制御モードを提供する。省電力モードは、電池6の残存電力量の低下を抑制し、走行可能距離を延長するために貢献する。省電力モードにおける機能制限は、それによる車両の各部の挙動、状態の変化を車両の利用者が明確に感じることができるほどに大幅な制限となっている。省電力モードは、省エネルギ制御モードのひとつである。これらの制御モードは、後述するように制御装置から車両の利用者に提案され、車両の利用者によって選択される。
【0033】
回転電機制御装置9は、回転電機4が発電機として機能するときの発電量、すなわち回生電力量を調節する回生制御手段(RGCM)9bを備える。回生制御手段9bは、駆動輪2によって回転電機4が駆動されるときに、回転電機4とブレーキ装置7とを併用して車両を減速させる通常モードと、この通常モードよりも回転電機4を多用して車両を減速させる回生優先モードとを含む複数の制御モードを提供する。回生優先モードは、電池6への充電量を増加させることによって電池6の残存電力量の低下を抑制し、走行可能距離を延長するために貢献する。回生優先モードにおける機能制限は、それによる車両の各部の挙動、状態の変化を車両の利用者が明確に感じることができるほどに大幅な制限となっている。回生優先モードは、省エネルギ制御モードのひとつである。これらの制御モードは、後述するように制御装置から車両の利用者に提案され、車両の利用者によって選択される。
【0034】
車両用制御装置1は、ブレーキ制御装置(BRCT)10を備える。ブレーキ制御装置10は、ブレーキ装置7が所定の制動力を発揮するようにブレーキ装置7を制御する制動力制御手段(BRCM)10aを備える。
【0035】
回生制御手段9bと制動力制御手段10aとは、互いに連携し協調することにより、この車両の制動制御手段を提供している。回生制御手段9bと制動力制御手段10aとは、回転電機4が車輪に与える制動力と、ブレーキ装置7が車輪に与える制動力との比率を変化させることができる。例えば、回生制御手段9bと制動力制御手段10aとは、上述の通常モードと、回生優先モードとを提供するように協調して作動する。通常モードでは、ブレーキペダルが操作された場合に望ましい減速感が得られる比率で回転電機4とブレーキ装置7とが車輪に制動力を与える。一方、回生優先モードでは、減速感の好ましさよりも、回生される電力量が多くなることを重要視して、回転電機4とブレーキ装置7とが車輪に与える制動力の比率が設定される。これらの制御モードは、後述するように制御装置から車両の利用者に提案され、車両の利用者によって選択される。
【0036】
さらに、車両には、複数の電気機器(VEDV)11が搭載されている。複数の電気機器11には、車両の室内灯、車両の空調装置、車両のオーディオ機器などが含まれている。これらの電気機器11は、その機能が制限されても、車両の走行性能に直接的な影響を及ぼさないから、車両における付加的な機器と呼ぶことができる。それらの電気機器11の機能の制限は、その作動が停止されることによって、すなわち機能が完全に制限されることによって実現される。付加的な電気機器11の機能の制限は、その作動の一部だけが停止されることによって、または作動可能な範囲が狭くされることによって、すなわち機能が部分的に制限されることによって実現されてもよい。内燃機関3、回転電機4および変速機5なども車両に搭載された電気機器11に含むことができる。これらは、その機能が制限されると車両の走行性能に直接的な影響を及ぼすから、車両における基礎的な機器と呼ぶことができる。それらの基礎的な電気機器11の機能の制限は、その作動の一部だけが停止されることによって、または作動可能な範囲が狭くされることによって、すなわち機能が部分的に制限されることによって実現される。
【0037】
車両用制御装置1は、複数の電気機器11のそれぞれを制御する電気機器制御装置(VECT)12を備える。電気機器制御装置12は、対応する電気機器11の機能的な出力を調整する機能調整手段(FADM)12aを備える。機能調整手段12aは、電気機器11に所定の機能を発揮させる通常モードと、上記機能が少なくとも部分的に制限された制限モードとを含む複数の制御モードを提供する。制限モードは、電池6の残存電力量の低下を抑制し、走行可能距離を延長するために貢献する。制限モードは、省エネルギ制御モードのひとつである。これらの制御モードは、後述するように制御装置から車両の利用者に提案され、車両の利用者によって選択される。
【0038】
このように、車両用制御装置1は、車両の走行用のエネルギの低下を抑制するための複数の省エネルギ制御モードを実行可能な複数の制御装置9、10、12を備える。
【0039】
車両用制御装置1は、車両に搭載されたナビゲーション制御装置(NVCT)13を備える。ナビゲーション制御装置13は、インターフェースである入出力手段(HIFM)13aを備える。入出力手段13aは、利用者に情報を提示するための表示手段としての表示装置と、利用者の操作を入力する入力手段としてのタッチパネルとを含むことができる。ナビゲーション制御装置13は、今後の走行予定の目的地を設定するための目的地設定手段(DSTM)13bと、現在地から目的地までの走行距離を予測するための走行距離予測手段(DDEM)13cとを備える。さらに、ナビゲーション制御装置13は、曜日、および時刻を含む時間情報を提供可能な時計手段(CLDM)13dを備える。
【0040】
車両用制御装置1は、利用者の選択に応じて、複数の制御装置9、10、12が提供する複数の制御モードを集中的に制御する集中制御装置(CNCT)14を備える。集中制御装置14は、それぞれの制御装置9、10、12を、利用者が選択した省エネルギ制御モードで作動させる。
【0041】
集中制御装置14は、電力制御手段(PWCM)14aを備える。電力制御手段14aは、それぞれの制御装置9、10、12を、利用者が選択した省エネルギ制御モードで作動させる。電力制御手段14aからの指令に応じて、それぞれの制御装置9、10、12は、自らの制御モードを、切換前の制御モードから、車両の走行可能距離を延ばすことができる省エネルギ制御モードへ切換える。省エネルギ制御モードは、電池6の残存電力量の低下を抑制し、車両の走行可能距離を延ばすために貢献できる制御モードである。省エネルギ制御モードは、利用者が明確に感知することができるほどの大きな変化を車両の挙動または状態に生じさせる。省エネルギ制御モードの実行の前後で、車両の挙動および/または状態が明確に変化する。すなわち、省エネルギ制御モードの実行によって、車両の走行用のエネルギの低下を抑制するために、大幅な機能制限が実行される。言い換えると、車両の挙動および/または状態の変化は、利用者の快適性が損なわれるほどの変化、または利用者の利便性が損なわれるほどの変化である。このような通常時には利用者が望まないような省エネルギ制御モードを採用しても、後述のように利用者に省エネルギ制御モードを選択させているから、利用者に不意に違和感を与え、不満を感じさせることがない。
【0042】
集中制御装置14は、選択処理手段14bを備える。選択処理手段14bは、利用者に対して選択可能な省エネルギ制御モードを提示し、利用者の選択操作を入力する。選択処理手段14bは、車両用制御装置1によって提供可能な複数の省エネルギ制御モードを、車両の起動時に、ひとつの選択画面上に、同時にまとめて表示する。選択処理手段14bは、入出力手段13aによって省エネルギ制御モードを表示し、入出力手段13aによって利用者の選択操作を入力する。これにより、利用者に対して、選択の後に提供される省エネルギ制御モード、およびその省エネルギ制御モードにおける機能制限を認識させることができる。選択処理手段14bは、それぞれの省エネルギ制御モードによる省エネルギ効果を利用者に提示する。これにより、利用者に対して機能制限による効果を認識させることができる。また、選択処理手段14bは、提示した省エネルギ制御モードの選択、または非選択の明確な意思表示を利用者に求める。これにより、利用者に対して機能制限を明確に認識させることができる。
【0043】
選択処理手段14bが提示する省エネルギ制御モードには、以下のものを含むことができる。例えば、ひとつの手法では、車両用の空調装置、および/またはオーディオ機器などの走行に不要な電気機器への電力供給を抑制する。そのために、集中制御装置14から、対応する電気機器11の制御装置12に向けて、使用の停止要求を送信し、その使用を停止させる。また、他の手法では、走行用の回転電機4が出力する駆動力を減少させ、電力消費を抑制する。そのために、集中制御装置14から回転電機制御装置9に向けて、駆動力を抑制する要求を送信し、その駆動力を抑制させる。また、他の手法では、車両が減速する時の回生電力量を多くして、電池6への充電量を多くする。そのために、集中制御装置14から回転電機制御装置9およびブレーキ制御装置10へ向けて、ブレーキ装置7による制動の割合を減らし、回転電機4を発電機として利用することによる制動の割合を増加するよう要求を送信し、回生電力量を増加させる。また、他の手法では、利用者の特別の選択操作によって利用可能な省電力制御モードへの切換えを自動的に実行するように、集中制御装置14から回転電機制御装置9へ要求を送信する。例えば、回生電力量を増加させる高回生シフトレンジが用意され、その高回生シフトレンジへの切換えがシフトレバーの操作によって可能とされている構成の車両が知られている。この場合に、集中制御装置14は、下り坂などの所定の走行条件を検出すると、上記高回生シフトレンジへの切換えを自動的に実行する。
【0044】
これらの手法は、利用者の利便性や快適性を犠牲にして電池6の残存電力量の低下を抑える。しかし、選択処理手段14bは、快適性が失われることと、走行可能距離の延長とのいずれか一方の選択を利用者自身の選択に委ねる。このため、残存電力量低下の抑制による走行可能距離の増加の結果として生じる不利益を、予め利用者に認識させることができる。この結果、目的地まで到達するために必要となる不利益を利用者に受忍させることができる。
【0045】
集中制御装置14は、車両の走行用のエネルギの残量を決定する残量決定手段14cを備える。残量決定手段14cは、電池制御装置8から電池6の残存電力量を示すデータを入力する。
【0046】
さらに、集中制御装置14は、比較処理手段(PCMM)14dを備える。比較処理手段14dは、走行可能距離と、走行予定距離とに基づいて、例えばそれらを比較することにより、車両が目的地に到達できる可能性が所定値より高いか否かを判定する。車両が走行することができる走行可能距離は、車両の走行用のエネルギ残量に基づいて算出可能である。また、走行予定距離は、ナビゲーション制御装置13の走行距離予測手段13cから得ることができる。集中制御装置14は、車両が目的地に到達する可能性が低い場合にだけ、上述の省エネルギ制御モードの選択を利用者に求める。例えば、集中制御装置14は、電池6の残存電力量が所定値以下である場合、または残存電力量と目的地までの距離から目的地に到着できないと判定できる場合のどちらかを判定すると、残存電力量の低下を抑制する手法の選択を利用者に求める。
【0047】
さらに、集中制御装置14は、車両の走行履歴を蓄積するとともに、蓄積された履歴に基づいて自動的に目的地を設定するための履歴蓄積手段(HSTM)14eを備える。履歴蓄積手段14eは、車両の走行履歴を示す情報を記録するための記憶手段を含む。
【0048】
図2は、第1実施形態の車両用制御装置1の作動を示すフローチャートである。車両用制御装置1は、主として集中制御装置14によって電力制御処理120を実行する。電力制御処理120は、車両の電源スイッチのオン操作などの車両の起動に応答して実行される。
【0049】
ステップ121では、残量計測手段8aによって計測された電池6の残存電力量PRが、所定値Pthを上回るか否かが判定される。所定値Pthは、未劣化の電池6が満充電であるときの電力量より小さく、かつ、最低限の距離を走行することができる程度の電力量に設定されている。残存電力量が所定値を下回る場合、ステップ125へ進む。残存電力量が所定値を上回る場合、ステップ122へ進む。ステップ122では、目的地までの距離を算出する。ステップ123では、目的地が確定しているか否かが判定される。目的地が確定していない場合、処理を終了する。目的地が確定している場合、ステップ124へ進む。ステップ124では、残存電力量を利用して目的地に到達できるか否かが判定される。ここでは、回転電機4の消費電力と、車両に搭載された電気機器11を含むすべての電気負荷の消費電力が考慮されて、目的地に到達できるか否かが判定される。目的地に到達できると判定されると処理を終了する。目的地に到達できないと判定されるとステップ125へ進む。ステップ121からステップ124の処理は、車両の走行用のエネルギの残量、すなわち残存電力量が所定値を下回るか否かを判定する判定手段を提供している。この判定手段は、ステップ121の処理によって提供され、車両が所定の固定距離だけ走行するために必要なエネルギを上記所定値として、車両が固定距離だけ走行できるか否かを判定する第1の判定手段を含む。この判定手段は、ステップ122とステップ124との処理によって提供され、車両が目的地まで到達するために必要なエネルギを上記所定値として、車両が目的地に到達できるか否かを判定する第2の判定手段を含む。ステップ125では、残存電力量の低下を抑制するための複数の手法をまとめて利用者に対して提示する。
【0050】
図3は、第1実施形態の車両用制御装置1の表示装置12eを示す平面図である。入出力手段13aに含まれる表示装置12eは、液晶表示器である。ステップ125では、残存電力量の低下を抑制することができる複数の省エネルギ制御モード13fが候補として表示される。例えば、「室内灯の停止」、「オーディオ機器の停止」、「エアコン機器の停止」、「低トルク制御」、「省電力シフト制御」、および「高回生制御」といった省エネルギ制御モードが提示される。
【0051】
「室内灯の停止」に対応する省エネルギ制御モードでは、室内灯への電力供給が遮断される。「オーディオ機器の停止」に対応する省エネルギ制御モードでは、オーディオ機器への電力供給が遮断される。「エアコン機器の停止」に対応する省エネルギ制御モードでは、エアコン機器への電力供給が遮断される。
【0052】
「低トルク制御」に対応する省エネルギ制御モードでは、電力消費を抑制するために回転電機4の出力トルクを抑制するように回転電機4が制御される。
【0053】
「省電力シフト制御」に対応する省エネルギ制御モードでは、電力消費を最小に抑制するシフトレンジへの切換えが自動的に実行される。例えば、この省エネルギ制御モードでは、集中制御装置14によって下り坂などの所定の走行条件が検出されると、高回生シフトレンジへの切換えが自動的に実行され、回生量の増加が図られる。この場合、回生発電による電池6への充電量の増加により、電池6に蓄積された電力量の低下が抑制される。
【0054】
「高回生制御」では、ブレーキ装置7による減速を減らし、代わりに回生制動の割合を増やすことにより、回生電力量を最大化する制御が実行される。例えば、回生制動が実行される速度範囲が拡大される。「高回生制御」は、上述の回生優先モードに対応する。
【0055】
図示されるように、それぞれの省エネルギ制御モードに対応して、その省エネルギ制御モードが実行された場合に得られる効果を示す走行可能距離の増加量13gが表示される。例えば、「+1km」、「+5km」、「+30km」の増加量が表示される。
【0056】
さらに、それぞれの省エネルギ制御モードの採否を入力するためのボタン画像13h、13iが表示される。ボタン画像13hは、対応する省エネルギ制御モードの実行を積極的に指示するための画像である。ボタン画像13iは、対応する省エネルギ制御モードの実行を積極的に却下するための画像である。ボタン画像13h、13iのいずれも操作されない場合、対応する省エネルギ制御モードの実行は却下される。利用者が指をボタン画像13h、13iの上に置くと、表示装置13eに設けられたタッチパネルが反応し、利用者の選択が入力される。
【0057】
図2に戻り、ステップ126では、利用者の選択操作が入力され、実行すべき省エネルギ制御モードが決定される。ステップ125とステップ126とは、複数の省エネルギ制御モードをまとめて表示し、車両の利用者に省エネルギ制御モードの実行または却下を選択させる選択処理手段を提供する。ステップ125とステップ126とは、ステップ121からステップ124の処理によって、車両の走行用のエネルギの残量が所定値を下回ると判定されるときに、複数の省エネルギ制御モードを表示し、車両の利用者に省エネルギ制御モードの実行または却下を選択させる。ステップ127では、選択された制御が実行される。この結果、利用者によって選択された制御が実行される。ステップ127は、選択処理手段を経由して利用者によって実行が選択された省エネルギ制御モードを複数の制御装置9、10、12に実行させ、車両の走行可能距離を延長させる制御手段を提供する。
【0058】
図4は、第1実施形態の車両用制御装置1の作動を示すフローチャートである。図中には、ステップ122の距離算出処理が図示されている。ステップ131では、利用者がナビゲーション制御装置13に目的地を設定したか否かが判定される。ナビゲーション制御装置13に目的地が設定されている場合、ステップ132に進む。ステップ132では、ナビゲーション制御装置13に設定された目的地を採用する。ステップ133では、ナビゲーション制御装置13によって得られる車両の現在地から目的地までの距離を算出する。ステップ132、およびステップ133の処理はナビゲーション制御装置13によって提供される。ステップ132を経由する処理は、ナビゲーション制御装置13に設定された目的地を利用して、今回の走行において予測される走行距離を算出する手段を提供する。
【0059】
ステップ131においてナビゲーション制御装置に目的地が設定されていない場合、ステップ134に進む。ステップ134では、走行履歴が検索される。ステップ134では、車両が起動された時の曜日と時間帯とに一致する走行履歴があるか否かが判定される。曜日と時間帯とは、時計手段13dから提供される時間情報から得られる。また、時間帯は、例えば、0時を基点とする2時間毎の時間帯によってあらわすことができる。該当する走行履歴がない場合、目的地を設定することが不可能であるため、距離を算出することなく処理を終了する。該当する走行履歴が記録されている場合、ステップ135に進む。ステップ135では、走行履歴が示す目的地を採用する。ステップ133では、走行履歴に基づいて目的地までの距離を算出する。ステップ135を経由する処理は、ナビゲーション制御装置13に目的地が設定されていない場合であっても、車両の走行履歴に基づいて自動的に目的地を仮定し、今回の走行において予測される走行距離を算出する手段を提供する。
【0060】
この実施形態では、目的地は、車両に設けられたナビゲーション制御装置(13、13b、132)に設定された目的地、または車両の走行履歴(14e、14f、134、135、150)により示される目的地である。
【0061】
図5は、第1実施形態の車両用制御装置1の作動を示すフローチャートである。図中には、ステップ126の選択入力処理が図示されている。
【0062】
ステップ141では、入出力手段13aから利用者の選択操作が入力される。ここでは、複数の省エネルギ制御モードのそれぞれに対する採否が入力される。ステップ142では、採用された省エネルギ制御モードを実行した場合の走行可能距離が再計算される。ステップ143では、目的地が確定しているか否かが判定される。目的地が確定している場合、ステップ144へ進む。ステップ144では、電池6の残存電力量で目的地に到達できるか否かが判定される。ステップ143およびステップ144の処理は、ステップ123およびステップ124の処理と同じである。目的地に到達できると判定されると処理を終了する。目的地に到達できないと判定されるとステップ145へ進む。ステップ145では、入出力手段13aの表示装置に、目的地に到達できないことを表示し、目的地に到達できないことを利用者に知らせる。さらに、ステップ145では、残存電力量の低下を抑制する省エネルギ制御モードが再び表示されるとともに、追加的な省エネルギ制御モードを選択するか選択しないかのボタン画像が表示される。すなわち、ステップ145では、残存電力量の低下を抑制する省エネルギ制御モードを追加的に選択するか否かの判断を利用者に求める。ステップ146では、入出力手段13aからの信号に基づいて利用者がさらに省エネルギ制御モードを選択するか否かが判定される。利用者がさらに省エネルギ制御モードを選択する場合、ステップ141に戻る。利用者がさらに省エネルギ制御モードを選択しない場合、処理を終了する。
【0063】
ステップ143において目的地が確定していない場合、ステップ147へ進む。ステップ147では、電池6の残存電力量による走行可能距離を入出力手段13aの表示装置に表示する。さらに、ステップ147では、残存電力量の低下を抑制する省エネルギ制御モードが再び表示されるとともに、追加的な省エネルギ制御モードを選択するか選択しないかのボタン画像が表示される。すなわち、ステップ147では、走行可能距離が十分であるか否かの判断を利用者に求める。さらに、ステップ147では、残存電力量の低下を抑制する省エネルギ制御モードを追加的に選択するか否かの判断を利用者に求める。ステップ146では、入出力手段13aからの信号に基づいて利用者がさらに省エネルギ制御モードを選択するか否かが判定される。利用者がさらに省エネルギ制御モードを選択する場合、ステップ141に戻る。利用者がさらに省エネルギ制御モードを選択しない場合、処理を終了する。
【0064】
図6は、第1実施形態の車両用制御装置1の作動を示すフローチャートである。図中には、集中制御装置14によって実行される履歴蓄積処理150が図示されている。履歴蓄積処理150は、車両の習慣的な走行距離を記録する処理であるから、学習処理とも呼ぶことができる。履歴蓄積処理150により履歴蓄積手段14eが提供される。
【0065】
ステップ151では、車両の電源がオン操作されたとき、すなわち車両の起動時の時間情報(t)が時計手段13eから取得される。ステップ152では、車両の電源がオフ操作されたか否か、すなわち車両が作動停止されたか否かが判定される。ステップ152の判定は、車両の電源がオフ操作されるまで繰り返される。車両の電源がオフ操作された場合、ステップ153へ進む。ステップ153では、電源オンから電源オフまでの間に車両が実際に走行した走行距離D(t)を算出する。ステップ154では、ステップ151において取得された時間情報(t)に対応する判定値Dth(t)が記録されているか否かが判定される。判定値Dth(t)は、履歴値を更新するか否かを判定するための値である。判定値Dth(t)がない場合、後述のステップ160へ進み、今回の走行距離D(t)を判定値Dth(t)として記録する。判定値Dth(t)がある場合、ステップ155へ進む。
【0066】
ステップ155では、今回の走行距離D(t)と判定値Dth(t)とを比較することにより、今回の走行距離D(t)が、車両の習慣的な走行距離と呼びうるものか否かを判定する。ここでは、今回の走行距離D(t)と判定値Dth(t)との差が、誤差範囲を越えるか否かを判定する。誤差範囲として、例えば、5kmを採用することができる。ステップ155では、例えば、D(t)−Dth(t)<+5kmであり、かつD(t)−Dth(t)<−5kmである場合には、ステップ156へ進む。この場合、今回の走行は、判定値が示す習慣的な走行と同じである可能性が高い。ステップ156では、一致回数を示すカウンタNを1だけ加算する。一方、ステップ155において条件が非成立の場合、ステップ157に進む。この場合、今回の走行は、判定値が示す習慣的な走行とは異なる可能性が高い。ステップ157は、カウンタNをリセットする。ステップ158では、一致回数が所定値を上回ったか否かが判定される。ここでは、所定値は2である。すなわち、一致回数Nが3回以上になったか否かが判定される。一致回数Nが所定値を上回っていない場合、ステップ160へ進む。一致回数Nが所定値を上回ると、ステップ159へ進む。この場合、今回の走行は、習慣的な走行であるといえる。ステップ159では、今回の走行距離D(t)を、履歴値DL(t)として記録する。すでに履歴値DL(t)がある場合には、今回の走行距離D(t)によって履歴値DL(t)を更新する。
【0067】
ステップ160では、判定値Dth(t)が更新される。すなわち、今回の走行距離D(t)が、時間情報(t)によって示される判定値Dth(t)として記録される。これにより、次回の走行においては、前回の走行距離を判定値として習慣的な走行か否かが評価されることとなる。
【0068】
図7は、第1実施形態の車両用制御装置1の走行履歴を示す表14fである。図示されるように、表14fは、曜日および時間帯に基づいて検索可能なテーブルである。表14fには、曜日別、かつ時間帯別の、履歴値DL(t)と、判定値Dth(t)と、累積された一致回数Nとが記録されている。
【0069】
この実施形態によると、特定の曜日の特定の時間帯に車両を走行させるような習慣的な走行だけが検出され、車両の走行の履歴として記録される。そして、上述のステップ134、ステップ135、およびステップ133を経由する処理では、履歴値DL(t)から目的地までの走行距離が算出される。この結果、利用者が目的地を設定しなくても、習慣的な走行履歴に基づいて自動的に目的地までの走行距離を算出することができる。
【0070】
(第2実施形態)
図8は、本発明を適用した第2実施形態に係る車両用制御装置の作動を示すフローチャートである。先行する実施形態では、走行可能距離が不足する場合に電力抑制手法を提示して、利用者に選択を求めるように構成した。これに代えて、この実施形態では、電池6の残存電力量、すなわち車両の走行可能距離に依存することなく、いつでも、残存電力量の低下を抑制する手法を提示して、利用者に選択を求める。
【0071】
この実施形態では、先行する実施形態と同じ構成の車両用制御装置1が採用される。ただし、手段8a、13b、13c、13d、14c、14d、14eは、採用されていない。この実施形態でも、主として集中制御装置14によって電力制御処理220が実行される。ステップ225では、消費電力を抑制する手法を提示する。ここではステップ125と同じ処理が実行される。ステップ226では、利用者の選択操作が入力され、実行すべき省エネルギ制御モードが決定される。ここでは、ステップ126における走行可能距離の再計算処理(ステップ142)や、再選択のための処理(ステップ145、146、147)は実行されない。ステップ227では、選択された制御が実行される。この結果、利用者によって選択された電力消費抑制制御が実行される。
【0072】
(他の実施形態)
以上、本発明の好ましい実施形態について説明したが、本発明は上述した実施形態に何ら制限されることなく、本発明の主旨を逸脱しない範囲において種々変形して実施することが可能である。上記実施形態の構造は、あくまで例示であって、本発明の範囲はこれらの記載の範囲に限定されるものではない。本発明の範囲は、特許請求の範囲の記載によって示され、さらに特許請求の範囲の記載と均等の意味及び範囲内での全ての変更を含むものである。
【0073】
例えば、上記実施形態では、電動車両として、内燃機関も備えるハイブリッド車両を例示した。これに代えて、動力源として、内燃機関のみを搭載した内燃機関車両、または回転電機のみを搭載した完全電動車両に本発明を適用してもよい。例えば、上記実施形態では、車両の走行用のエネルギの残量として電池の残存電力量を計測した。これに代えて、内燃機関の燃料の残量を計測し、燃料残量から算出される走行可能距離と、目的地までの走行距離とを比較するように構成してもよい。かかる構成においても、車両に搭載された電気機器の電力消費が抑制されることで、内燃機関が発電のために消費する燃料量を抑制することができ、結果として車両の走行可能距離を延ばすことができる。
【0074】
例えば、制御装置が提供する手段と機能は、ソフトウェアのみ、ハードウェアのみ、あるいはそれらの組合せによって提供することができる。例えば、制御装置をアナログ回路によって構成してもよい。
【符号の説明】
【0075】
1 車両用制御装置、 2 駆動輪、 3 内燃機関、 4 回転電機、 5 変速機、 6 電池、 7 ブレーキ装置、 8 電池制御装置、 9 回転電機制御装置、 10 ブレーキ制御装置、 11 電気機器、 12 電気機器制御装置、 13 ナビゲーション制御装置、 14 集中制御装置。

【特許請求の範囲】
【請求項1】
車両の走行用のエネルギの低下を抑制するための複数の省エネルギ制御モードを実行可能な複数の制御装置(9、10、12)と、
複数の前記省エネルギ制御モードをまとめて表示し、前記車両の利用者に前記省エネルギ制御モードの実行または却下を選択させる選択処理手段(13a、13e、14b、125、126、225、226)と、
前記選択処理手段を経由して利用者によって実行が選択された前記省エネルギ制御モードを複数の前記制御装置に実行させ、前記車両の走行可能距離を延長させる制御手段(14a、127、227)とを備えることを特徴とする車両用制御装置。
【請求項2】
前記車両の走行用のエネルギは、電池(6)に充電された電力であり、
前記省エネルギ制御モードは、前記電池の残存電力量の低下を抑制する制御モードであることを特徴とする請求項1に記載の車両用制御装置。
【請求項3】
前記省エネルギ制御モードは、前記電池から消費される電力量を低減させること、または、前記電池へ充電される電力量を増加させることにより前記電池の残存電力量の低下を抑制することを特徴とする請求項2に記載の車両用制御装置。
【請求項4】
複数の前記省エネルギ制御モードのひとつは、前記車両の走行用の回転電機(4)の出力トルクを抑制することにより前記電池から消費される電力量を低減させる制御モードであることを特徴とする請求項3に記載の車両用制御装置。
【請求項5】
複数の前記省エネルギ制御モードのひとつは、前記車両の走行用の回転電機(4)によって回生され前記電池に充電される回生電力量を増加させるシフトレンジへ自動的に切換える制御モードであることを特徴とする請求項3または請求項4に記載の車両用制御装置。
【請求項6】
複数の前記省エネルギ制御モードのひとつは、前記車両が減速するときの前記車両のブレーキ装置(7)の制動力と前記回転電機(4)の回生による制動力との比率を調節することにより前記電池に充電される回生電力量を増加させる制御モードであることを特徴とする請求項3から請求項5のいずれかに記載の車両用制御装置。
【請求項7】
前記選択処理手段は、前記車両の走行用のエネルギの残量が所定値を下回ると判定されるときに(8、8a、13b、13c、14c、14d、14e、121、122、123、124)、複数の前記省エネルギ制御モードを表示し、前記車両の利用者に前記省エネルギ制御モードの実行または却下を選択させることを特徴とする請求項1から請求項6のいずれかに記載の車両用制御装置。
【請求項8】
前記所定値は、前記車両が目的地まで到達するために必要なエネルギである(124)ことを特徴とする請求項7に記載の車両用制御装置。
【請求項9】
前記目的地は前記車両に設けられたナビゲーション制御装置(13、13b、132)に設定された目的地、または前記車両の走行履歴(14e、14f、134、135、150)により示される目的地であることを特徴とする請求項1から請求項8のいずれかに記載の車両用制御装置。
【請求項10】
前記省エネルギ制御モードは、利用者が明確に感知することができるほどの大きな変化を前記車両の挙動または状態に生じさせることを特徴とする請求項1から請求項9のいずれかに記載の車両用制御装置。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【図8】
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【公開番号】特開2013−5493(P2013−5493A)
【公開日】平成25年1月7日(2013.1.7)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2011−131413(P2011−131413)
【出願日】平成23年6月13日(2011.6.13)
【出願人】(000004260)株式会社デンソー (27,639)
【Fターム(参考)】