説明

車両用前照灯および照明装置

【課題】光軸調整を行うときに可動させる対象物の、光軸調整に対する応答性を向上させる。
【解決手段】ヘッドランプ1は、レーザ光を出射する半導体レーザ3と、半導体レーザ3から出射されたレーザ光を受けて発光する発光部7と、発光部7から出射した光を反射することにより、所定の立体角内を進む光線束を形成する反射鏡8と、反射鏡8が反射した光の光軸方向が所定の方向となるように、少なくとも反射鏡8を可動させる第1可動部20と、を備える。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、高輝度光源を備え、光軸調整を行うときに可動させる対象物の、光軸調整に対する応答性を向上させることが可能な車両用前照灯および照明装置に関するものである。
【背景技術】
【0002】
近年、車両の前照灯においては、車体の傾きによって前照灯の光軸方向が上向きになると対向車などに眩光を与えたり、光軸方向が下向きになると運転者の遠方視認性が低下することとなるため、前照灯の光軸方向を一定に保持したいという要望がある。このような要望に対して、その光軸方向を自動的に一定に保持するように光軸の調整を行う光軸調整装置(オートレベリング装置)が開発されており、例えば特許文献1〜3に開示されている。
【0003】
特許文献1には、曲線路などの走行中における車体の左右の姿勢変位(ローリング)と路面の勾配とに対応するように光軸を調整する技術が開示されている。また、特許文献2には、消費電力の無駄や装置の短寿命化を防ぐために、車両の動作源(例えばエンジン)の動作状態もしくは走行状態と、前照灯に対する点灯指示の有無もしくは点灯状態とに応じて光軸調整を行う技術が開示されている。さらに、特許文献3には、光軸調整に対する前照灯の可動の応答性を向上させるために、走行状態に応じて前照灯の光軸方向の調整の応答性を変更するフィルタを切り換え、そのフィルタをかけて得られた角度に基づき光軸調整を行う技術が開示されている。
【0004】
また、「道路運送車両の保安基準の細目を定める告示(2009.02.26)別添52(灯火器及び反射器並びに指示装置の取付装置の技術基準)」には、光束が2000lm(ルーメン)を超える光源(例えばHID(高輝度放電灯;High Intensity Discharge))を使用するすれ違い用前照灯又は主要なすれ違いビームを発生させるためにLEDモジュールを有するすれ違い用前照灯については、自動式の前照灯照射方向調節装置を備えていなければならないことが規定されている。この調整装置が調整する照射方向は、地面に対して垂直な方向(鉛直方向)である。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0005】
【特許文献1】特開平6−144108号公報(1994年5月24日公開)
【特許文献2】特開平9−290683号公報(1997年11月11日公開)
【特許文献3】特開平10−166933号公報(1998年6月23日公開)
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
ところが、特許文献1〜3において光軸調整が行われる場合、光源を含む前照灯全体を可動させている。特に、この光源としてLEDが用いられる場合、十分な明るさを得ようとすると複数のLEDモジュールを必要とするため、前照灯全体が大きくなり、かつ、重くなる。このため、光軸調整が行われたときに、その調整に素早く追随させて前照灯を可動させることが困難な場合があった。すなわち、従来の技術では、光軸調整を行うときに可動させる対象物(従来では前照灯全体)の、光軸調整に対する応答性(光軸調整における対象物の応答追随性)が悪くなってしまう可能性があった。
【0007】
本発明は、上記の問題を解決するためになされたもので、その目的は、光軸調整を行うときに可動させる対象物の、光軸調整に対する応答性を向上させることが可能な車両用前照灯を提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0008】
本発明に係る車両用前照灯および照明装置は、上記の課題を解決するために、励起光を出射する励起光源と、上記励起光源から出射された励起光を受けて発光する発光部と、上記発光部から出射した光を反射することにより、所定の立体角内を進む光線束を形成する反射鏡と、上記反射鏡が反射した光の光軸方向が所定の方向となるように、少なくとも上記反射鏡を可動させる第1可動部と、を備えることを特徴としている。
【0009】
上記構成によれば、励起光を出射する励起光源と、励起光源から出射された励起光を受けて発光する発光部とを備えることにより、高輝度な車両用前照灯または照明装置を実現している。それゆえ、所定の光束量(例えば法的に規定されている範囲の光束量)の光を出射する場合、例えば従来の前照灯の発光部(光源)よりも本発明の発光部を小さく設計することができ、ひいては本発明の車両用前照灯全体または照明装置全体を小さく設計し、軽量化を図ることができる。すなわち、反射鏡も小さく設計し、かつ、軽量化を図ることができる。
【0010】
また、本発明の車両用前照灯および照明装置は、反射鏡によって形成された光線束の光軸方向が所定の方向となるように、少なくとも反射鏡を可動させる第1可動部を備えている。第1可動部は、光軸方向が所定の方向となるように光軸調整を行う場合に、例えば従来の前照灯に比べ小さく、かつ、軽量に設計された本発明の車両用前照灯および照明装置が備える反射鏡を少なくとも可動させればよい。それゆえ、従来よりも、光軸調整を行うときに可動させる対象物(少なくとも反射鏡)の、光軸調整に対する応答性を向上させることができる。
【0011】
さらに、本発明に係る車両用前照灯では、上記第1可動部は、少なくとも上記反射鏡を鉛直方向に可動させることが好ましい。
【0012】
上記構成によれば、法的に規定されている鉛直方向の光軸調整を確実に行うことができる。それゆえ、例えば対向車両とのすれ違いのときに当該車両の運転者の眩惑を防止することができるなど、交通の安全性を確保することができる。
【0013】
さらに、本発明に係る車両用前照灯では、上記第1可動部は、超音波モータにより実現されていることが好ましい。
【0014】
上記構成によれば、第1可動部は、低速動作で高トルクを得ることができる、非通電時に高い保持力を実現可能である、小型化が可能であるなど、超音波モータの特性を有することができる。それゆえ、第1可動部は、光軸調整用アクチュエータとしての機能を十分に発揮することができる。
【0015】
さらに、本発明に係る車両用前照灯は、上記反射鏡が反射した光の光軸方向が所定の方向となるように、少なくとも上記反射鏡を水平方向に可動させる第2可動部を備えることが好ましい。
【0016】
上記構成によれば、反射鏡を鉛直方向だけでなく、水平方向にも可動させることができる。それゆえ、車両の水平方向の傾きにも対応させて光軸調整を行うことができるので、法的な基準を満たすとともに、運転者が目視するのに適した位置を照射可能なように光軸調整を行うことができる。
【0017】
さらに、本発明に係る車両用前照灯では、上記第2可動部は、超音波モータにより実現されていることが好ましい。
【0018】
上記構成によれば、第2可動部は、低速動作で高トルクを得ることができる、非通電時に高い保持力を実現可能である、小型化が可能であるなど、超音波モータの特性を有することができる。それゆえ、第2可動部は、光軸調整用アクチュエータとしての機能を十分に発揮することができる。
【0019】
さらに、本発明に係る車両用前照灯は、上記励起光源から出射された励起光を受け取り、当該励起光を上記発光部に出射する導光部を備え、上記励起光源は、上記反射鏡の外部に備えられていることが好ましい。
【0020】
上記構成によれば、励起光源から出射された励起光を発光部に出射する導光部を備えているので、励起光源と発光部とを離れた位置に配置することができる。すなわち、導光部を用いることにより、励起光源を反射鏡の外部に設置する構成を実現することができる。
【0021】
また、励起光源を反射鏡の外部に備えることにより、第1可動部は、光軸調整のときに反射鏡とともに励起光源を動かす必要がない。それゆえ、可動させる対象物をさらに小さくし、軽量化を図ることができるので、従来よりも、光軸調整を行うときに可動させる対象物の、光軸調整に対する応答性をさらに向上させることができる。
【0022】
さらに、本発明に係る車両用前照灯では、上記導光部は、可撓性を有していることが好ましい。
【0023】
上記構成によれば、第1可動部が反射鏡を可動させても、その動きに応じて励起光源が動かないような構成を実現することができる。
【0024】
さらに、本発明に係る車両用前照灯では、上記発光部は、上記導光部から出射された励起光を受光する受光面を有し、上記導光部は、上記反射鏡と一体に可動するように当該反射鏡に固定され、さらに、上記励起光源から出射された励起光を受け取る入射面を有し、上記入射面は、上記励起光源を、上記受光面の中心から等距離の位置に配置することが可能な断面形状を有することが好ましい。
【0025】
上記構成によれば、導光部が、反射鏡と一体に可動するように反射鏡に固定され、導光部の入射面が、励起光源を、受光面の中心から等距離の位置に配置することが可能な断面形状を有している。それゆえ、第1可動部が反射鏡をどの向きに可動させた場合であっても、励起光源と反射鏡との距離をほぼ一定に保つことができる。
【0026】
従って、車両用前照灯は、反射鏡と一体に可動するように固定され、上記のような入射面を有する導光部を備えることにより、光軸方向を所定の方向に保つことができ、適切な光軸調整を行うことができる。
【0027】
さらに、本発明に係る車両用前照灯では、上記発光部は、上記励起光源から出射された励起光を受光する受光面を有し、当該受光面が、上記反射鏡と当該反射鏡の開口部とが形成する空間の外側となるように設けられていることが好ましい。
【0028】
上記構成によれば、受光面は、反射鏡と当該反射鏡の開口部とが形成する空間(反射鏡と当該反射鏡の開口部とで囲まれた空間)の外側にあるので、励起光(特に高出力の励起光)(例えばレーザ光)をその空間の内部で受光することがない。このため、人体にとって有害な出力レベルの励起光がその空間を伝播して、外部(少なくとも発光部から出射された光の照射方向)に漏れ出てしまうことを防ぐことができる。
【0029】
また、例えば車両用前照灯が何らかの衝撃を受けたときに、励起光が受光面に照射されない事態が生じた場合であっても、当該励起光が、少なくとも上記光の照射方向に直接漏れ出てしまう事態を防ぐことができる。
【0030】
このように、受光面が上記空間の外側となるように発光部を設けることにより、安全性の高い車両用前照灯を実現できる。
【0031】
さらに、本発明に係る車両用前照灯では、上記励起光源から出射された励起光を受け取り、当該励起光を上記発光部に出射する導光部を備え、上記発光部は、上記導光部から出射された励起光を受光する受光面を有し、上記導光部は、上記励起光源から受け取った励起光を上記発光部に出射する出射端部を有し、上記受光面および上記出射端部の近傍に、上記出射端部から出射された励起光のうち、上記受光面に照射されなかった励起光、および上記受光面にて反射された励起光の少なくとも一方を遮光する遮光部を備えることが好ましい。
【0032】
上記構成によれば、遮光部を備えているので、例えば車両用前照灯への衝撃により、励起光が受光面に適切に照射されない事態が生じた場合に、当該励起光が外部に漏れ出ることを確実に防ぐことができる。この構成の場合、励起光が、反射鏡と反射鏡の開口部とが形成する空間を伝播することがないので、上記光の照射方向に出射されることを防ぐことができるとともに、それ以外の方向に漏れることも防ぐことが可能である。
【0033】
さらに、本発明に係る車両用前照灯では、上記励起光源から出射された励起光を受け取り、当該励起光を上記発光部に出射する導光部を備え、上記発光部は、上記導光部から出射された励起光を受光する受光面を有し、上記導光部は、上記励起光源から受け取った励起光を上記発光部に出射する出射端部を有し、上記受光面と上記出射端部とが近接していることが好ましい。
【0034】
上記構成によれば、発光部の受光面と導光部の出射端部とが近接しており、励起光(特に高出力の励起光)が、反射鏡と反射鏡の開口部とが形成する空間を伝播することがない。このため、例えば車両用前照灯が何らかの衝撃を受けた場合に、人体にとって有害な出力レベルの励起光が受光面に照射されずに、直接外部に漏れ出てしまうという事態を防ぐことができる。それゆえ、安全性の高い車両用前照灯を実現できる。
【0035】
さらに、本発明に係る車両用前照灯では、上記反射鏡は、上記出射端部が挿入される中空部を有し、上記中空部には、上記発光部に上記励起光が照射されることにより、当該発光部にて発生する熱を放散する放熱部材が備えられ、上記受光面と上記出射端部とは、上記放熱部材を介して近接していることが好ましい。
【0036】
受光面と出射端部とが近接すれば、その分、発光部における発熱量が大きくなる(発光部の温度が高くなる)ため、発光部が急速に劣化してしまう可能性がある。
【0037】
上記構成によれば、反射鏡の中空部に放熱部材が備えられ、当該放熱部材を介して出射端部と受光面とが近接している。そのため、受光面に照射される励起光に起因して発光部において発生した熱を、放熱部材を介して反射鏡へと放散させることができるので、発光部の長寿命化を図ることができる。
【0038】
それゆえ、安全性を担保するために受光面と出射端部とを近接させた場合であっても、発光部の温度上昇を抑制することができる。すなわち、安全性が高く、かつ長寿命な車両用前照灯を実現できる。
【0039】
さらに、本発明に係る車両用前照灯は、上記発光部と、上記反射鏡と、上記第1可動部との組み合わせを複数備えることが好ましい。
【0040】
上記構成によれば、光軸調整に対する応答性を向上させることが可能な上記の組み合わせを複数備える車両用前照灯を実現することができる。
【発明の効果】
【0041】
本発明に係る車両用前照灯および照明装置は、以上のように、励起光を出射する励起光源と、上記励起光源から出射された励起光を受けて発光する発光部と、上記発光部から出射した光を反射することにより、所定の立体角内を進む光線束を形成する反射鏡と、上記反射鏡が反射した光の光軸方向が所定の方向となるように、少なくとも上記反射鏡を可動させる第1可動部と、を備える構成である。
【0042】
それゆえ、光軸調整を行うときに可動させる対象物の、光軸調整に対する応答性を向上させることができるという効果を奏する。
【図面の簡単な説明】
【0043】
【図1】本発明の一実施形態に係るヘッドランプの概略構成を示す図であり、ヘッドランプから出射される光の光軸を調整するための光軸調整機構を含む概略構成を示す斜視図である。
【図2】本発明の一実施形態に係るヘッドランプの構成を示す断面図である。
【図3】本発明の一実施形態に係るヘッドランプが備える光ファイバーの出射端部と発光部との位置関係を示す図である。
【図4】本発明の一実施形態に係るヘッドランプが備える半導体レーザの構成を示すものであり、(a)は半導体レーザの回路図を模式的に示す図であり、(b)は半導体レーザの基本構造を示す斜視図である。
【図5】本発明の一実施形態に係るヘッドランプの概略構成を示す図であり、(a)はヘッドランプを側面から見た模式図であり、(b)はヘッドランプを上面から見た模式図である。
【図6】本発明の一実施形態に係るヘッドランプの光軸調整が行われる様子を示す図であり、(a)は基準線に対して上向きに光軸調整された場合のヘッドランプを側面から見た模式図であり、(b)は基準線に対して下向きに光軸調整された場合のヘッドランプを側面から見た模式図である。
【図7】本発明の一実施形態に係るヘッドランプが備える第1可動部の内部構成を示す図である。
【図8】本発明の一実施形態に係るヘッドランプを備える自動車の概略構成を示すブロック図である。
【図9】本発明の一実施形態に係るヘッドランプの光軸調整を行うときの流れを示すフローチャートである。
【図10】本発明の別の形態に係るヘッドランプの概略構成を示すものであり、扇形導光部を備えるヘッドランプの概略構成を示す斜視図である。
【図11】本発明の別の形態に係るヘッドランプが備える第1可動部が反射鏡を可動させたときの様子を示す図であり、(a)はヘッドランプが真正面を向いているときの様子を示す図であり、(b)はヘッドランプが基準線から上方向を向くように可動した様子を示す図であり、(c)はヘッドランプが基準線から下方向を向くように可動した様子を示す図である。
【図12】本発明のさらに別の形態に係るヘッドランプの概略構成を示す図であり、ヘッドランプから出射される光の光軸を調整するための光軸調整機構を含む概略構成を示す斜視図である。
【図13】本発明のさらに別の形態に係るヘッドランプが備える第2可動部の内部構成を示す図である。
【図14】本発明のさらなる別の形態に係るヘッドランプの概略構成を示す断面図である。
【図15】本発明のさらなる別の形態に係るヘッドランプが備える発光部と光ファイバーの出射端部との位置関係を示す図である。
【図16】本発明のさらなる別の形態に係るヘッドランプが備える第1可動部が反射鏡を可動させたときの様子を示す図であり、(a)はヘッドランプが真正面を向いているときの様子を示す図であり、(b)はヘッドランプが基準線から上方向を向くように可動した様子を示す図であり、(c)はヘッドランプが基準線から下方向を向くように可動した様子を示す図である。
【図17】本発明のさらに別の形態に係るヘッドランプの概略構成を示す斜視図である。
【発明を実施するための形態】
【0044】
〔実施の形態1〕
本発明の実施の一形態について図1〜図9に基づいて説明すれば、以下のとおりである。ここでは、本発明の照明装置の一例として、自動車用のヘッドランプ(車両用前照灯)1を例に挙げて説明する。ただし、本発明の照明装置は、自動車以外の車両・移動物体(例えば、人間・船舶・航空機・潜水艇・ロケットなど)のヘッドランプとして実現されてもよいし、その他の照明装置として実現されてもよい。
【0045】
ヘッドランプ1は、走行用前照灯(ハイビーム)の配光特性基準を満たしていてもよいし、すれ違い用前照灯(ロービーム)の配光特性基準を満たしていてもよい。
【0046】
(ヘッドランプ1の構成)
図2は、ヘッドランプ1の構成を示す断面図である。同図に示すように、ヘッドランプ1は、半導体レーザアレイ(励起光源)2、非球面レンズ4、光ファイバー(導光部)5、フェルール6、発光部7、反射鏡8、透明板9、ハウジング10、エクステンション11およびレンズ12を備えている。半導体レーザアレイ2、光ファイバー5、フェルール6および発光部7によって発光装置の基本構造が形成されている。
【0047】
なお、本実施の形態に係るヘッドランプ1は、ヘッドランプ1から出射される光の光軸(光軸方向)を調整する光軸調整機構(後述の第1可動部20など)を備えている。この光軸調整機構の詳細については後述するとし、ここではまず、光軸調整機構以外のヘッドランプ1の構成について説明する。
【0048】
半導体レーザアレイ2は、励起光を出射する励起光源として機能し、複数の半導体レーザ(半導体レーザ素子、励起光源)3を基板上に備えるものである。半導体レーザ3のそれぞれからレーザ光が発振される。励起光源として複数の半導体レーザ3を用いる必要は必ずしもなく、半導体レーザ3を1つのみ用いてもよい。しかし、高出力のレーザ光を得るためには、複数の半導体レーザ3を用いる方が容易である。
【0049】
半導体レーザ3は、1チップに1つの発光点を有するものであり、例えば、405nm(青紫色)のレーザ光を発振し、出力1.0W、動作電圧5V、電流0.6Aのものであり、直径5.6mmのパッケージに封入されているものである。半導体レーザ3が発振するレーザ光は、405nmに限定されず、380nm以上490nm以下の波長範囲にピーク波長を有するレーザ光であればよい。なお、380nmより小さい波長のレーザ光を発振する良質な短波長用の半導体レーザを作製することが可能であれば、本実施の形態の半導体レーザ3として、380nmより小さい波長のレーザ光を発振するように設計された半導体レーザを用いることも可能である。
【0050】
また、半導体レーザ3として、1チップに複数の発光点を有するものを用いてもよい。
【0051】
非球面レンズ4は、半導体レーザ3から発振されたレーザ光(励起光)を、光ファイバー5の一方の端部である入射端部5bに入射させるためのレンズである。例えば、非球面レンズ4として、アルプス電気製のFLKN1 405を用いることができる。上述の機能を有するレンズであれば、非球面レンズ4の形状および材質は特に限定されないが、励起光の波長である約405nmの透過率が高く、かつ耐熱性のよい材料であることが好ましい。
【0052】
光ファイバー5は、半導体レーザ3が発振したレーザ光を発光部7へと導く導光部材であり、複数の光ファイバーの束である。この光ファイバー5は、上記レーザ光を受け取る複数の入射端部5bと、入射端部5bから入射したレーザ光を出射する複数の出射端部5aとを有している。複数の出射端部5aは、発光部7のレーザ光照射面(受光面)7a(図3参照)における互いに異なる領域に対してレーザ光を出射する。より詳細には、複数の出射端部5aから出射されるレーザ光がそれぞれ有する光強度分布における最も光強度の大きい部分が、発光部7(レーザ光照射面7a)の互いに異なる部分に対して照射される。出射端部5aは、レーザ光照射面7aに接触していてもよいし、僅かに間隔を置いて配置されてもよい。換言すれば、光ファイバー5は、半導体レーザ3から出射されたレーザ光を受け取り、当該レーザ光を発光部7に出射するものといえる。
【0053】
光ファイバー5は、中芯のコアを、当該コアよりも屈折率の低いクラッドで覆った2層構造をしている。コアは、レーザ光の吸収損失がほとんどない石英ガラス(酸化ケイ素)を主成分とするものであり、クラッドは、コアよりも屈折率の低い石英ガラスまたは合成樹脂材料を主成分とするものである。例えば、光ファイバー5は、コアの径が200μm、クラッドの径が240μm、開口数NAが0.22の石英製のものであるが、光ファイバー5の構造、太さおよび材質は上述のものに限定されず、光ファイバー5の長軸方向に対して垂直な断面は矩形であってもよい。
【0054】
また、非球面レンズ4および光ファイバー5の光学的な結合効率(半導体レーザ3から出射されるレーザ光の強度を1としたときの、光ファイバ−5の出射端部5aから出射されるレーザ光の強度)は90%である。
【0055】
なお、導光部材として光ファイバー以外の部材、または光ファイバーと他の部材とを組み合わせたものを用いてもよい。この導光部材は、半導体レーザ3が発振したレーザ光を受け取る少なくとも1つの入射端部と当該入射端部から入射したレーザ光を出射する複数の出射端部とを有するものであればよい。例えば、少なくとも1つの入射端部を有する入射部、および複数の出射端部を有する出射部を光ファイバーとは別の部材として形成し、これら入射部および出射部を光ファイバーの両端部に接続してもよい。
【0056】
図3は、出射端部5aと発光部7との位置関係を示す図である。同図に示すように、フェルール6は、光ファイバー5の複数の出射端部5aを発光部7のレーザ光照射面7aに対して所定のパターンで保持する。このフェルール6は、出射端部5aを挿入するための孔が所定のパターンで形成されているものでもよいし、上部と下部とに分離できるものであり、上部および下部の接合面にそれぞれ形成された溝によって出射端部5aを挟み込むものでもよい。
【0057】
このフェルール6は、反射鏡8から延出する棒状または筒状の部材などによって反射鏡8に対して固定されていればよい。フェルール6の材質は、特に限定されず、例えばステンレススチールである。また、1つの発光部7に対して、複数のフェルール6を配置してもよい。なお、図3では、便宜上、出射端部5aを3つ示しているが、出射端部5aの数は3つに限定されない。
【0058】
発光部7は、出射端部5aから出射されたレーザ光を受けて発光するものであり、反射鏡8の焦点付近に配置されている。この発光部7は、レーザ光を受けて発光する蛍光体を含んでいる。換言すれば、発光部7は、光ファイバー5から出射されたレーザ光を受光するレーザ光照射面7aを有するものといえる。具体的には、発光部7は、蛍光体保持物質としての無機のガラス材の内部に蛍光体が分散されているものである。無機ガラスと蛍光体との割合は、10:1程度である。また、発光部7は、蛍光体を押し固めたものであってもよい。蛍光体保持物質は、無機ガラスに限定されず、有機無機ハイブリッドガラスやシリコーン樹脂であってもよい。
【0059】
上記蛍光体は、酸窒化物発光体または窒化物発光体であり、青色、緑色および赤色の蛍光体が無機ガラスに分散されている。半導体レーザ3は、405nm(青紫色)のレーザ光を発振するため、発光部7に当該レーザ光が照射されると白色光が発生する。それゆえ、発光部7は、波長変換材料であるといえる。
【0060】
なお、半導体レーザ3は、450nm(青色)のレーザ光(または、440nm以上490nm以下の波長範囲にピーク波長を有する、いわゆる「青色」近傍のレーザ光)を発振するものでもよく、この場合には、上記蛍光体は、黄色の蛍光体、または緑色の蛍光体と赤色の蛍光体との混合物である。換言すれば、半導体レーザ3は、440nm以上490nm以下の波長範囲にピーク波長を有する励起光を出射してもよく、この場合、白色光を生成するための発光部の材料(蛍光体材料)を容易に選定および製造できる。黄色の蛍光体とは、560nm以上590nm以下の波長範囲にピーク波長を有する光を発する蛍光体である。緑色の蛍光体とは、510nm以上560nm以下の波長範囲にピーク波長を有する光を発する蛍光体である。赤色の蛍光体とは、600nm以上680nm以下の波長範囲にピーク波長を有する光を発する蛍光体である。
【0061】
上記蛍光体は、窒化物蛍光体または酸窒化物蛍光体(サイアロン蛍光体)と通称されるものを用いることができる。サイアロン蛍光体とは、窒化ケイ素のシリコン原子の一部がアルミニウム原子に、窒素原子の一部が酸素原子に置換された物質である。サイアロン蛍光体は、窒化ケイ素(Si)にアルミナ(Al)、シリカ(SiO)および希土類元素などを固溶させて作ることができる。
【0062】
また、上記蛍光体の別の好適な例としては、III−V族化合物半導体のナノメータサイズの粒子を用いた半導体ナノ粒子蛍光体を用いることもできる。同一の化合物半導体(例えばインジュウムリン:InP)を用いても、その粒子径を変更させることにより、量子サイズ効果によって発光色を変化させることができることが半導体ナノ粒子蛍光体の特徴の一つである。例えばInPでは、粒子サイズが3〜4nm程度のときに赤色に発光する。ここで、粒子サイズは透過型電子顕微鏡(TEM)にて評価した。
【0063】
また、この蛍光体は半導体ベースであるので蛍光寿命が短く、励起光のパワーを素早く蛍光として放射できるのでハイパワーの励起光に対して耐性が強いという特徴もある。これは、上記半導体ナノ粒子蛍光体の発光寿命が10ナノ秒程度と、希土類を発光中心とする通常の蛍光体材料に比べて5桁も小さいためである。発光寿命が短いため、励起光の吸収と蛍光の発光を素早く繰り返すことができる。
【0064】
その結果、強い励起光に対して高効率を保つことができ、蛍光体からの発熱が低減される。よって、光変換部材が熱により劣化(変色や変形)するのをより抑制することができる。これにより、光の出力が高い発光素子を光源として用いる場合に、発光装置の寿命が短くなるのをより抑制することができる。
【0065】
発光部7の形状および大きさは、例えば、3mm×1mm×1mmの直方体である。この場合、半導体レーザ3からのレーザ光を受けるレーザ光照射面7aの面積は、3mmである。レーザ光照射面7aの面積は、1〜3mmであることが好ましい。日本国における法律で規定されている車両用ヘッドランプの配光パターン(配光分布)は、鉛直方向に狭く、水平方向に広いため、発光部7の形状を、水平方向に対して横長(断面略長方形形状)にすることにより、上記配光パターンを実現しやすくなる。発光部7は、直方体でなくてもよく、レーザ光照射面7aが楕円である筒状であってもよい。また、レーザ光照射面7aは、平面である必要は必ずしもなく、曲面であってもよい。
【0066】
ただし、レーザ光の反射を制御するためには、レーザ光照射面7aは、平面であることが好ましい。レーザ光照射面7aが曲面の場合、少なくとも曲面への入射角度が大きく変わるため、レーザ光が照射される場所によって、反射光の進む方向が大きく変わってしまう。そのため、レーザ光の反射方向を制御することが困難な場合がある。これに対してレーザ光照射面7aが平面であれば、レーザ光の照射位置が若干ずれたとしても反射光の進む方向はほとんど変わらないため、レーザ光が反射する方向を制御しやすい。場合によっては反射光が当たる場所にレーザ光の吸収材を置くなどの対応がとり易くなる。
【0067】
また、発光部7は、図2に示すように、透明板9の内側(出射端部5aが位置する側)の面において、出射端部5aと対向する位置に固定されている。発光部7の位置の固定方法は、この方法に限定されず、反射鏡8から延出する棒状または筒状の部材によって発光部7の位置を固定してもよい。
【0068】
反射鏡8は、開口部を有し、発光部7から出射した光を反射することにより、所定の立体角内を進む光線束を形成し、上記開口部から出射するものである。すなわち、反射鏡8は、発光部7からの光を反射することにより、ヘッドランプ1の前方へ進む光線束を形成する。この反射鏡8は、例えば、金属薄膜がその表面に形成された曲面形状(カップ形状)の部材である。
【0069】
また、反射鏡8は、半球面ミラーに限定されず、楕円面ミラーやパラボラミラーまたはそれらの部分曲面を有するミラーあってもよい。すなわち、反射鏡8は、回転軸を中心として図形(楕円、円または放物線)を回転させることによって形成される曲面の少なくとも一部をその反射面に含んでいるものであればよい。
【0070】
透明板9は、反射鏡8の開口部を覆う透明な樹脂板であり、発光部7を保持している。この透明板9を、半導体レーザ3からのレーザ光を遮断するとともに、発光部7においてレーザ光を変換することにより生成された白色光を透過する材質で形成することが好ましい。発光部7によってコヒーレントなレーザ光は、そのほとんどがインコヒーレントな光に変換される。しかし、何らかの原因でレーザ光の一部がインコヒーレントな光に変換されない場合も考えられる。このような場合でも、透明板9によってレーザ光を遮断することにより、レーザ光が外部に漏れることを防止できる。なお、このような効果を期待せず、かつ透明板9以外の部材によって発光部7を保持する場合には、透明板9を省略することが可能である。
【0071】
ハウジング10は、ヘッドランプ1の本体を形成しており、反射鏡8等を収納している。光ファイバー5は、このハウジング10を貫いており、半導体レーザアレイ2は、ハウジング10の外部に設置される。半導体レーザアレイ2は、レーザ光の発振時に発熱するが、ハウジング10の外部に設置することにより半導体レーザアレイ2を効率良く冷却することが可能となる。また、半導体レーザ3は、万一故障した時のことを考慮すると、交換しやすい位置に設置することが好ましい。これらの点を考慮しなければ、半導体レーザアレイ2をハウジング10の内部に収納してもよい。
【0072】
エクステンション11は、反射鏡8の前方の側部に設けられており、ヘッドランプ1の内部構造を隠して見栄えを良くするとともに、反射鏡8と車体との一体感を高めている。このエクステンション11も反射鏡8と同様に金属薄膜がその表面に形成された部材である。
【0073】
レンズ12は、ハウジング10の開口部に設けられており、ヘッドランプ1を密封している。発光部7が発生し、反射鏡8によって反射された光は、レンズ12を通ってヘッドランプ1の前方へ出射される。
【0074】
このように、ヘッドランプ1は、レーザ光照射面7aに対して水平方向に設けられた出射端部5aから出射されるレーザ光が、当該レーザ光照射面7aに対して拡散して出射されるため、発光部7に含まれる蛍光体の全体に亘って低エネルギー状態の電子が高エネルギー状態に効率良く励起する。本実施の形態では、発光部7から放射される光束が約2000lm、かつ、発光部7の輝度が100cd/mmという高輝度・高光束のヘッドランプ1を実現することができ、ひいては小型でかつ軽量なヘッドランプ1を実現することができる。
【0075】
(半導体レーザ3の構造)
次に半導体レーザ3の基本構造について説明する。図4の(a)は、半導体レーザ3の回路図を模式的に示したものであり、図4の(b)は、半導体レーザ3の基本構造を示す斜視図である。同図に示すように、半導体レーザ3は、カソード電極19、基板18、クラッド層113、活性層111、クラッド層112、アノード電極17がこの順に積層された構成である。
【0076】
基板18は、半導体基板であり、本願のように蛍光体を励起する為の青色〜紫外の励起光を得る為にはGaN、サファイア、SiCを用いることが好ましい。一般的には、半導体レーザ用の基板の他の例として、Si、GeおよびSiC等のIV属半導体、GaAs、GaP、InP、AlAs、GaN、InN、InSb、GaSbおよびAlNに代表されるIII−V属化合物半導体、ZnTe、ZeSe、ZnSおよびZnO等のII−VI属化合物半導体、ZnO、Al、SiO、TiO、CrOおよびCeO等の酸化物絶縁体、並びに、SiNなどの窒化物絶縁体のいずれかの材料が用いられる。
【0077】
アノード電極17は、クラッド層112を介して活性層111に電流を注入するためのものである。
【0078】
カソード電極19は、基板18の下部から、クラッド層113を介して活性層111に電流を注入するためのものである。なお、電流の注入は、アノード電極17・カソード電極19に順方向バイアスをかけて行う。
【0079】
活性層111は、クラッド層113及びクラッド層112で挟まれた構造になっている。
【0080】
また、活性層111およびクラッド層の材料としては、青色〜紫外の励起光を得る為にはAlInGaNから成る混晶半導体が用いられる。一般に半導体レーザの活性層・クラッド層としては、Al、Ga、In、As、P、N、Sbを主たる組成とする混晶半導体が用いられ、そのような構成としても良い。また、Zn、Mg、S、Se、TeおよびZnO等のII−VI属化合物半導体によって構成されていてもよい。
【0081】
また、活性層111は、注入された電流により発光が生じる領域であり、クラッド層112及びクラッド層113との屈折率差により、発光した光が活性層111内に閉じ込められる。
【0082】
さらに、活性層111には、誘導放出によって増幅される光を閉じ込めるために互いに対向して設けられる表側へき開面114・裏側へき開面115が形成されており、この表側へき開面114・裏側へき開面115が鏡の役割を果す。
【0083】
ただし、完全に光を反射する鏡とは異なり、誘導放出によって増幅される光の一部は、活性層111の表側へき開面114・裏側へき開面115(本実施の形態では、便宜上表側へき開面114とする)から出射され、レーザ光(励起光)L0となる。なお、活性層111は、多層量子井戸構造を形成していてもよい。
【0084】
なお、表側へき開面114と対向する裏側へき開面115には、レーザ発振のための反射膜(図示せず)が形成されており、表側へき開面114と裏側へき開面115との反射率に差を設けることで、低反射率端面である、例えば、表側へき開面114より励起光L0の大部分を発光点103から照射されるようにすることができる。
【0085】
クラッド層113・クラッド層112は、n型およびp型それぞれのGaAs、GaP、InP、AlAs、GaN、InN、InSb、GaSb、及びAlNに代表されるIII−V属化合物半導体、並びに、ZnTe、ZeSe、ZnSおよびZnO等のII−VI属化合物半導体のいずれの半導体によって構成されていてもよく、順方向バイアスをアノード電極17及びカソード電極19に印加することで活性層111に電流を注入できるようになっている。
【0086】
クラッド層113・クラッド層112および活性層111などの各半導体層との膜形成については、MOCVD(有機金属化学気相成長)法やMBE(分子線エピタキシー)法、CVD(化学気相成長)法、レーザアブレーション法、スパッタ法などの一般的な成膜手法を用いて構成できる。各金属層の膜形成については、真空蒸着法やメッキ法、レーザアブレーション法、スパッタ法などの一般的な成膜手法を用いて構成できる。
【0087】
(発光部7の発光原理)
次に、半導体レーザ3から発振されたレーザ光による蛍光体の発光原理について説明する。
【0088】
まず、半導体レーザ3から発振されたレーザ光が発光部7に含まれる蛍光体に照射されることにより、蛍光体内に存在する電子が低エネルギー状態から高エネルギー状態(励起状態)に励起される。
【0089】
その後、この励起状態は不安定であるため、蛍光体内の電子のエネルギー状態は、一定時間後にもとの低エネルギー状態(基底準位のエネルギー状態または励起準位と基底準位との間の準安定準位のエネルギー状態)に遷移する。
【0090】
このように、高エネルギー状態に励起された電子が、低エネルギー状態に遷移することによって蛍光体が発光する。
【0091】
白色光は、等色の原理を満たす3つの色の混色、または補色の関係を満たす2つの色の混色で構成でき、この原理・関係に基づき、半導体レーザから発振されたレーザ光の色と蛍光体が発する光の色とを、上述のように組み合わせることにより白色光を発生させることができる。
【0092】
(光軸調整の概略)
次に、ヘッドランプ1の光軸調整機構について図1、図5〜9を用いて説明する。図1は、ヘッドランプ1の概略構成を示す図であり、ヘッドランプ1から出射される光の光軸を調整するための光軸調整機構を含む概略構成を示す斜視図である。また、図5は、ヘッドランプ1の概略構成を示す図であり、図5の(a)はヘッドランプ1を側面から見た模式図であり、図5の(b)はヘッドランプ1を上面から見た模式図である。なお、ヘッドランプ1と、ヘッドランプ1の光軸調整機構とによってヘッドランプユニットが形成されているともいえる。
【0093】
図5のように、ヘッドランプ1は、上述した構成の他、第1可動部20、被駆動体21、第1軸部22、支持体23、第2軸部24およびランプ支持体25を備えている。なお、同図においてフェルール6は省略されており、半導体レーザアレイ2に配置された半導体レーザ3に接続されている。
【0094】
第1可動部20は、後述の制御部32の制御により、ヘッドランプ1から出射される光の光軸方向(光の照射方向)が所定の方向となるように、反射鏡8を鉛直方向(上下方向)に可動させるものである。換言すれば、第1可動部20は、反射鏡8が反射した光の光軸方向が所定の方向となるように、少なくとも反射鏡8を可動させるものである。また、第1可動部20は、少なくとも反射鏡8を鉛直方向に可動させるものであるといえる。反射鏡8の鉛直方向の可動を実現するために、第1可動部20は、この内部に挿入されている被駆動体21を、車両が停止している時に透明板9の表面の垂線が真正面を向いているときの光軸方向(図5の(a)に示す基準線l1に沿った方向であり、以下「基準方向」と称す)に動かすための動力を発生させている。
【0095】
被駆動体21は、第1可動部20に挿入され、その反対側が第1軸部22に接続された棒状の部材である。被駆動体21は、第1可動部20の駆動により基準方向に動くものである。
【0096】
第1軸部22は、被駆動体21と支持体23とを接続する回転軸であり、被駆動体21の動きに応じて基準方向に動くものである。
【0097】
支持体23は、第1軸部22と第2軸部24とを接続する棒状の部材であり、第1軸部22の基準方向の動きに応じて第2軸部24の回転軸を回転させるものである。
【0098】
第2軸部24は、ランプ支持体25を介して反射鏡8と接続されており、支持体23の動きに応じて回転軸が回転することにより、反射鏡8を鉛直方向に動かすものである。
【0099】
ランプ支持体25は、第2軸部24および第3軸部26を介して反射鏡8を支持するように、反射鏡8の側面に接続されているものである。例えば、図5の(b)に示すように、ランプ支持体25は、光軸方向に対して対称となる反射鏡8の2つの位置に、反射鏡8を回転させるための回転軸を取り付けることができるように、板状の部材をコの字した形状となっている。2つの回転軸のうち、一方が第2軸部24であり、もう一方が第3軸部26である。第3軸部26は、第2軸部24の回転に応じて反射鏡8が鉛直方向に動くことができるように、反射鏡8を支持している。ランプ支持体25の形状は、これに限らず、反射鏡8を鉛直方向に動かすことができるように、第2軸部24および第3軸部26を反射鏡8に取り付けることができる構成であればどのような構成であってもよい。すなわち、第2軸部24および第3軸部26がともに鉛直方向かつ光軸方向に垂直な方向に取り付けることが可能な形状であればよい。
【0100】
このように、第1可動部20が被駆動体21を基準方向に動かすことにより、第1軸部22および支持体23を動かし、支持体23の動きが第2軸部24の回転軸を回転させて、反射鏡8を鉛直方向に動かす。これにより、第1可動部20は、ヘッドランプ1の光軸方向が所定の方向となるように反射鏡8を鉛直方向に動かすことができる。第1可動部20は、車体の姿勢に応じて反射鏡8を鉛直方向に動かすので、車両の走行状態によらず光軸方向を一定の方向に保つことができ、適切な光軸調整を行うことができる。
【0101】
すなわち、ヘッドランプ1の光軸方向を基準線l1よりも上向きにするように光軸調整される場合(車体が前傾となった場合)には、図6の(a)に示すように、第1可動部20は、基準方向に被駆動体21を動かす。この動きに応じて、第1軸部22および支持体23が動いた結果、第2軸部24が時計回りに回転して、ヘッドランプ1の光軸方向を上向きにする。同様に、ヘッドランプ1の光軸方向を基準線l1よりも下向きにするように光軸調整される場合(車体が後傾となった場合)には、図6の(b)に示すように、第1可動部20は、基準方向とは反対の方向に被駆動体21を動かす。この動きに応じて、第1軸部22および支持体23が動いた結果、第2軸部24が反時計回りに回転して、ヘッドランプ1の光軸方向を下向きにする。
【0102】
(第1可動部20の構成)
次に、第1可動部20の内部構成について、図7を用いて説明する。図7は、第1可動部20の内部構成を示す図である。
【0103】
第1可動部20は、長円形弾性体201、圧電素子202および支持ローラー203を備えていることにより、リニアアクチュエータを実現している。また、長円形弾性体201、圧電素子202および被駆動体21によって、超音波モータの基本構造が実現されている。換言すれば、第1可動部20は、超音波モータにより実現されているといえる。
【0104】
長円形弾性体201は、弾性を有する金属製の部材であり、長円形でかつ環状になっている。長円形弾性体201の内部には複数の圧電素子202が所定の間隔で配置されている。また、長円形弾性体201は接地されている。
【0105】
圧電素子202は、圧電体を2枚の電極で挟み、当該電極に印加された電圧を力に変換する、圧電効果(逆圧電効果)を利用した受動素子(ピエゾ素子)である。圧電素子202の一方の電極の、圧電体とは反対側の表面が、長円形弾性体201に接触している。また、圧電素子202は、2つの電極間に電圧(高周波電圧)を印加するための交流電源(図示せず)と接続されており、長円形弾性体201に配置された側の電極が負極と、もう一方の電極が正極と接続されている。
【0106】
支持ローラー203は、被駆動体21を長円形弾性体201と挟んで支持するとともに、長円形弾性体201および圧電素子202が発生させる駆動力が被駆動体21に伝わったときに、被駆動体21がその駆動力に応じて動くことができるようにするものである。
【0107】
後述の制御部32により交流電源が作動すると、圧電素子202に電圧が印加され、圧電素子202が超音波振動(10〜100kHz(キロヘルツ)程度)を発生させる。この超音波振動により、長円形弾性体201にたわみ波動が発生し、たわみ波動を利用して(たわみ波動により発生する長円形弾性体201の進行波を利用して)被駆動体21を駆動する。被駆動体21は、たわみ振動の進行とは反対方向に駆動される。
【0108】
なお、長円形弾性体201および支持ローラー203は、強い圧力で被駆動体21を挟んでいる。これは、長円形弾性体201に生じた進行波による駆動力を被駆動体21に的確に伝えるために必要であり、当該駆動力が被駆動体21に的確に伝わらない場合には、発熱や磨耗の原因となるためである。
【0109】
このように、第1可動部20は、超音波モータを用いたリニアアクチュエータとして機能を発揮するため、以下のような特性を有する。
(a)毎分数10〜数100振動(回転)の低速動作で高トルクを得ることができる。
(b)ギアなどの減速機構を設ける必要がないので、バックラッシュを防ぐことができる。
(c)ヘッドランプ1が所定の方向を向いたときに交流電源を切っても、ヘッドランプ1の方向をその状態に維持するだけの保持力を有する。
(d)被駆動体21のイナーシャ(慣性)が小さく、長円形弾性体201と被駆動体21との間の摩擦による制動力が大きいので、優れた応答性を発揮する。また、速度を無段階に変化させる(制御する)ことができ、機械的時定数も1(ms)以下と、優れた制御性を発揮する。このため、高精度な速度制御および位置制御を行うことができる。
(e)通常のモータと異なり巻線や磁石などを利用しないので、電磁波を発生させることがなく、また、磁気の影響を受けることもない。特に、非磁性タイプの場合、磁性材料を一切使用しないので、高磁場中での磁気の影響を受けることなく作動させることができる。
(f)同程度のトルクを有する電磁力を利用したモータに比べ、小型で薄く、軽量である。
(g)駆動に利用する振動は非可聴領域の周波数であるため、作動音がきわめて静かであり、静粛性に優れる。
【0110】
すなわち、超音波モータを用いたリニアアクチュエータとしての第1可動部20は、低速動作で高トルクを得ることができる、非通電時に高い保持力が実現可能である、小型化が可能であるなど、光軸調整用アクチュエータを好適に実現することができるといえる。
【0111】
(光軸調整機構の制御)
次に、光軸調整機構の制御方法について、図8および図9を用いて説明する。図8は、ヘッドランプ1を備える自動車100の概略構成を示すブロック図である。また、図9は、ヘッドランプ1の光軸調整を行うときの流れを示すフローチャートである。
【0112】
自動車100は、ヘッドランプ1の光軸調整を行うために、ヘッドランプ1の他、車高センサー30、車速センサー31、制御部32、記憶部33、点灯スイッチ34および電源回路35を備える。なお、反射鏡8や第1可動部20などを備えるヘッドランプ1の構成については上述したので、ここではその説明を省略する。
【0113】
車高センサー30は、自動車100の前部および後部の運転席側または助手席側の車軸と車体との間のサスペンションにそれぞれ設けられているものであり、各タイヤ付近の車両の地面からの高さを検出するものである。各車高センサー30は、検出した車高を示す車高信号を制御部32の補正値算出部322に送信する。制御部32は、この車高信号を解析することにより、自動車100の姿勢(傾き)を把握することができる。
【0114】
車速センサー31は、自身が搭載されている車両の速度を検出する。具体的には、車速センサー31は、自動車100のタイヤを回転させる車軸の回転速度から当該自動車100の速度を検出し、検出した速度を示す車速信号を制御部32の補正値算出部322に送信する。なお、省部品化、コストダウンを図るため、速度計に速度を表示するために車速を検出する既存の速度検出装置を車速センサー31として利用すればよい。
【0115】
制御部32は、主として、点灯確認部321、補正値算出部322および可動制御部323を備え、例えば制御プログラムを実行することにより、自動車100を構成する部材を制御するものである。制御部32は、自動車100に備えられた記憶部33に格納されているプログラムを、例えばRAM(Random Access Memory)等で構成される一次記憶部(不図示)に必要に応じて読み出して実行することにより各種処理を行う。
【0116】
点灯確認部321は、点灯スイッチ34から送信される切替信号(後述)を受信すると、ヘッドランプ1が現在点灯状態にあるか否かを確認する。点灯確認部321は、ヘッドランプ1が現在点灯状態であることを確認した場合には、ヘッドランプ1を非点灯状態にするために半導体レーザ3への電力供給を中止することを指示するための非供給信号を電源回路35に送信する。一方、点灯確認部321は、ヘッドランプ1が現在非点灯状態であることを確認した場合には、ヘッドランプ1を点灯状態にするために半導体レーザ3への電力供給を開始することを指示するための供給信号を電源回路35に送信する。この場合、制御部32は、電源回路35が半導体レーザ3に供給すべき電力供給量を決定し、点灯確認部321がこの電力供給量を供給信号に含めて電源回路35に送信する。制御部32は、例えば車速センサー31が検出した車速信号に基づいて電力供給量を決定する構成であってもよい。
【0117】
また、点灯確認部321は、ヘッドランプ1が現在点灯状態であると確認した場合、または、ヘッドランプ1の非点灯時に点灯スイッチ34から切替信号を受信することによりヘッドランプ1を点灯状態するための供給信号を電源回路35に送信した場合には、ヘッドランプ1が点灯状態であることを示す点灯確認信号を補正値算出部322に送信する。
【0118】
補正値算出部322は、点灯確認信号を受信すると、例えば各車高センサー30から受信した車高信号に基づいて、基準方向からのずれを補正するための補正値を算出する。
【0119】
具体的には、補正値算出部322は、前部(前輪)側の2つの車高センサー30から受信した車高信号から、前部側の車高の変位量である前部変位量を算出し、また、後部側の2つの車高センサー30から受信した車高信号から、後部側の車高の変位量である後部変位量を算出する。そして、この前部変位量および後部変位量と、前部の車軸と後部の車軸との軸間距離とから、以下の式(1)を用いることにより、自動車100の前後方向における傾斜角度(ピッチング角)を求める。
【0120】
θp=tan−1(HF−HR/Lw)・・・(1)
なお、θpは傾斜角度、HFは前部変位量、HRは後部変位量、Lwは軸間距離である。
【0121】
その後、補正値算出部322は、求めた傾斜角度を打ち消すための角度(例えば傾斜角度に−1を乗した値)を補正値とし、当該補正値を示す補正信号を可動制御部323に送信する。なお、補正値算出部322は、車高信号を用いて補正値を算出しているが、これに限らず、車速センサー31から受信した車速信号を用いて補正値を算出してもよい。この場合、自動車100から運転者の目視位置までの距離は車速によって変化するため、補正値算出部322は、記憶部33を参照することにより、車速信号に示される車速に対応付けられた偏差(所定の方向からのずれを補正するための値)を読み出し、当該偏差を加味して補正値を算出してもよい。なお、記憶部33には、例えば車速と偏差とを対応付けたテーブルが格納されている。
【0122】
可動制御部323は、補正値算出部322から補正信号を受信すると、当該補正信号に示される補正値に対応する、第1可動部20の圧電素子202に印加する電圧値を、記憶部33を参照することにより決定し、この電圧値を示す電圧信号を交流電源(図示せず)に送信する。この交流電源が、電圧信号に示される電圧値分の電圧を圧電素子202に印加することにより、第1可動部20は、ヘッドランプ1の光軸方向を所定の方向となるように反射鏡8を可動させることができる。なお、記憶部33には、例えば補正値算出部322が算出した補正値と、交流電源が圧電素子202に印加する電圧値とを対応付けたテーブルが格納されている。
【0123】
記憶部33は、制御部32が実行する(1)各部の制御プログラム、(2)OSプログラム、(3)アプリケーションプログラム、および、(4)これらプログラムを実行するときに読み出す各種データを記録するものである。記憶部33は、例えばHDD(Hard Disk Drive)、半導体メモリ等の記憶装置によって構成されるものであり、必要に応じてROM(Read Only Memory)フラッシュメモリなどの不揮発性の記憶装置が備えられる。なお、上述した一次記憶部は、RAMなどの揮発性の記憶装置によって構成されているが、本実施の形態では、記憶部33が一次記憶部の機能も備えているものとして説明する場合もある。
【0124】
点灯スイッチ34は、ヘッドランプ1の点灯/非点灯の切り替えを行うための操作部である。点灯スイッチ34は、点灯/非点灯の切り替えを示す切替信号を制御部32の点灯確認部321に送信する。
【0125】
電源回路35は、制御部32の点灯確認部321から送信される供給信号または非供給信号に応じて、電力供給を制御するための回路である。電源回路35は、供給信号を受信した場合には、自動車に一般的に搭載されているバッテリ(図示せず)から電力(直流電流)の供給を受け、当該供給信号に示される供給量に応じた直流電流を半導体レーザ3へ供給する。一方、非供給信号を受信した場合には、半導体レーザ3への直流電流の供給を中止する。
【0126】
次に、図9を用いて、ヘッドランプ1の光軸調整を行うときの流れについて説明する。
【0127】
まず、点灯確認部321は、現在ヘッドランプ1が点灯状態であるか否かの確認を行う(ステップS1、以降、ステップを「S」と称す)。点灯確認部321は、点灯状態であれば(もしくは点灯スイッチ34から切替信号を受信し、電源回路35に供給信号を送信することにより点灯状態にした場合も含む)、点灯確認信号を補正値算出部322に送信する。
【0128】
補正値算出部322は、点灯確認信号を受信すると、各車高センサー30から車高信号を受信する(S2)。補正値算出部322は、この車高信号から前部変位量および後部変位量を求め、上記式(1)を用いて傾斜角度を求める。そして、補正値算出部322は、この傾斜角度に−1を乗じることにより補正値を算出し、当該補正値を示す補正信号を可動制御部323に送信する(S3)。
【0129】
可動制御部323は、補正信号を受信すると、この補正信号に示された補正値に対応する電圧値を決定し、この電圧値を交流電源(図示せず)に送信することにより、第1可動部20の制御を行う(S4)。
【0130】
このように、本実施の形態では、レーザ光を出射する半導体レーザ3と、半導体レーザ3から出射されたレーザ光を受けて発光する発光部7とを備えることにより、高輝度のヘッドランプ1を実現している。それゆえ、従来のヘッドランプが出力する光束量と同程度の光を出射する場合(法的に規定されている範囲の光束量の光を出射する場合)、当該ヘッドランプの発光部(光源)よりも発光部7を小さく設計することができ、ひいてはヘッドランプ1全体を小さく設計し、軽量化を図ることができる。すなわち、反射鏡8も小さく設計し、かつ、軽量化を図ることができる。特に、ヘッドランプ全体が大きく、かつ、重くなってしまう、複数のLEDモジュールを用いたLEDヘッドランプと比べると、格段に小さく、かつ、軽量なヘッドランプ1を実現することができる。
【0131】
そして、ヘッドランプ1は、反射鏡8によって形成された光線束の光軸方向が所定の方向となるように、少なくとも反射鏡8を可動させる第1可動部20を備えている。第1可動部20は、光軸方向が所定の方向となるように光軸調整を行う場合に、従来のヘッドランプに比べて小さく、かつ、軽量に設計されたヘッドランプ1の反射鏡8を可動させればよい。それゆえ、従来よりも、光軸調整を行うときに可動させる反射鏡8(少なくとも発光部7を含む)の、光軸調整に対する応答性を向上させることができる。また、第1可動部20が光軸方向を所定の方向に保つので、高輝度・高光束のヘッドランプ1(大光量のヘッドランプ(ヘッドライト)システム)を用いることによる対向車両等への眩惑を防ぐことができ、ひいては交通の安全が確保できる。
【0132】
言い換えれば、半導体レーザ3および発光部7により実現される高輝度・高光束の発光装置をヘッドランプ1に用いることにより、従来の光源であるハロゲンやHID、さらに多灯化を必要とするLED光源とは異なり、一灯で法的に必要な光束が得られ、その一灯の大きさを小さくすることができる。それゆえ、ヘッドランプ1では、光軸調整のときに可動させる対象物(少なくとも反射鏡8)を小さくし、軽量化を図ることができるので、光軸調整における対象物の応答追随性を大幅に向上させることができる。すなわち、上記対象物を車両の姿勢変化に即応して追随させることができる。
【0133】
また、ヘッドランプ1の小型化・軽量化を図ることができるので、ヘッドランプ1に備える光軸調整機構を小さく、かつ、簡素化することができる。それゆえ、第1可動部20による反射鏡8の可動が原因となる故障を減らすことができる。これにより、長寿命なヘッドランプ1を実現することができる。
【0134】
また、第1可動部20が少なくとも反射鏡8を鉛直方向に可動させるので、2000lmを超える光を出射する場合であっても、法的に規定されている鉛直方向の光軸調整を確実に行うことができる。それゆえ、例えば対向車両(他の交通)とのすれ違いのときに当該車両の運転者の眩惑を防止することができるなど、交通の安全性を確保することができる。
【0135】
また、第1可動部20は、長円形弾性体201、圧電素子202および被駆動体21を備える超音波モータにより実現されているので、低速動作で高トルクを得ることができる、非通電時に高い保持力を実現可能である、小型化が可能であるなど、超音波モータの特性を有することができる。それゆえ、第1可動部20は、光軸調整用アクチュエータとしての機能を十分に発揮することができる。
【0136】
また、半導体レーザ3から出射されたレーザ光を受け取り、発光部7に出射する光ファイバー5を備えている。それゆえ、半導体レーザ3と発光部7とを空間的に分離して配置することができ、ひいては半導体レーザ3を反射鏡8の外部に配置することができる。特に、光ファイバー5は、光学的な結合効率が高いため、半導体レーザ3と発光部7とを十分に離れた位置に配置することを可能としている。
【0137】
そして、半導体レーザ3を反射鏡8の外部に備えることにより、第1可動部20は、光軸調整のときに半導体レーザ3ごと動かす必要がない。それゆえ、可動させる対象物をさらに小さくし、軽量化を図ることができる。また、従来の光源の場合、光軸調整のときに、光源と一体に設計されたヘッドランプ(灯火器)全体を可動させる必要があったため、対象物をすばやく追随させることが困難であった。これに対し、ヘッドランプ1は、従来よりも小型化・軽量化されており、かつ、半導体レーザ3を反射鏡8の外部に備えているので、対象物をさらにすばやく追随させることができる。
【0138】
なお、半導体レーザ3を光軸調整のときに可動させないようにする構成は、従来の光源(例えばHID)では実現不可能である。これは、従来のヘッドランプでは、光源が発光部の機能を有しているので、光軸調整のときに光源そのものを動かす必要があったからである。
【0139】
また、光ファイバー5が可撓性を有しているので、第1可動部20が反射鏡8を可動させても、その動きに応じて反射鏡8の外部に設置された半導体レーザ3が動くことはない。すなわち、光ファイバー5を用いることにより、光軸調整のときに反射鏡8の動きに応じて半導体レーザ3が動かないような構成を実現することができる。
【0140】
さらに、光ファイバー5が可撓性を有しているので、半導体レーザ3と発光部7との相対位置関係を容易に変更でき、その長さを調整することにより、半導体レーザ3を発光部7から離れた位置に設置することができる。それゆえ、半導体レーザ3を冷却しやすい位置または交換しやすい位置に設置できるなど、ヘッドランプ1の設計自由度を高めることができる。すなわち、光ファイバー5を用いることにより、半導体レーザ3を反射鏡8の外部に設置するという構成を実現できる。
【0141】
〔実施の形態2〕
本発明のさらに他の実施形態について図10および図11に基づいて説明すれば、以下のとおりである。なお、実施の形態1と同様の部材に関しては、同じ符号を付し、その説明を省略する。本実施の形態では、ヘッドランプ1に用いられる光ファイバー5を扇形導光部(導光部)50に代えたものである。図10は、扇形導光部50を備えるヘッドランプ1の概略構成を示す斜視図である。なお、図10では、第1可動部20などの光軸調整機構や、ハウジング10、エクステンション11、レンズ12などの図示を省略しているが、実施の形態1と同様の構成を備えているものとする。
【0142】
同図に示すように、ヘッドランプ1は、半導体レーザ3、非球面レンズ4、扇形導光部(導光部)50、発光部7、反射鏡8および透明板9を備えている。半導体レーザ3、扇形導光部50および発光部7によって発光装置の基本構造が形成されている。
【0143】
半導体レーザ3は、1チップに10個の発光点(10ストライプ)を有するものであり、例えば、405nm(青紫色)のレーザ光を発振し、出力11.2W、動作電圧5V、電流6.4Aのものであり、直径9mmのパッケージに封入されているものである。また、パッケージに封入された半導体レーザ3は、1つであり、上記出力のときの消費電力は32Wである。また、半導体レーザ3は、反射鏡8の外部で、かつ、発光部7のレーザ光照射面7aと対向する位置に設けられている。
【0144】
非球面レンズ4は、半導体レーザ3から発振されたレーザ光を、扇形導光部50の一方の端部である光入射面(入射面)50bに入射させるためのレンズである。本実施の形態では、非球面レンズ4として、ロッドレンズを使用している。
【0145】
扇形導光部50は、半導体レーザ3が発振したレーザ光を集光して発光部7(レーザ光照射面7a)へと導く導光部材であり、非球面レンズ4を介して半導体レーザ3と光学的に結合している。扇形導光部50は、半導体レーザ3が出射したレーザ光を受け取る光入射面50bと、光入射面50bから入射したレーザ光を発光部7へ出射する光出射面50aとを有している。なお、扇形導光部50は、例えば円錐台形状あるいは角錐台形状であり、半導体レーザ3ごとに複数備えられていてもよい。
【0146】
また、扇形導光部50は、石英(SiO)製導光部材(屈折率:1.45)である。また、光出射面50a(頂部)の直径は2mmである。さらに、扇形導光部50の側面には、屈折率1.35の熱可塑性フッ素樹脂(ポリテトラフロオロエチレン:PTFE)がコーティングされている。なお、光出射面50aの形状は、平面形状であっても曲面形状であってもよい。
【0147】
さらに、扇形導光部50は、FFP(Far Field Pattern)のアスペクト比がなるべく真円に近くなるように補正されたものである。ここで、FFPとは、レーザ光源の発光点から離れた面における光の強度分布を指す。通常、半導体レーザ3や端面発光型ダイオードのような半導体発光素子が出射するレーザ光は、回折現象によって活性層の発光強度分布の角度が広がり、そのFFPが楕円形状となる。このため、FFPを真円に近くするには補正が必要となる。
【0148】
また、扇形導光部50は、反射鏡8と一体に可動するように、反射鏡8の、半導体レーザ3と発光部7とを結ぶ直線上に位置に固定されている。すなわち、車両が停止しているときに透明板9の表面の垂線が真正面を向いているときには、その光軸(図11に示す基準線l2)上に、半導体レーザ3、発光部7および扇形導光部50が配置される。さらに、扇形導光部50の光入射面50bは、鉛直面で切ったときの切断線が、発光部7のレーザ光照射面7aの中心として描いた円弧状にあるような断面形状(扇形状)となっている。換言すれば、光入射面50bは、第1可動部20が反射鏡8を可動させて、ヘッドランプ1の光軸方向を所定の方向に保つように、その光軸方向が図11に示す基準線l2からずれた場合であっても、半導体レーザ3を、レーザ光照射面7aの中心から等距離の位置に配置することが可能な断面形状を有するものといえる。
【0149】
なお、本実施の形態では、発光部7を中心として反射鏡8が鉛直方向に可動するように設計されている。このため、第2軸部24および第3軸部26が発光部7の真横に位置するように、ランプ支持体25が設けられた構成となっている。また、光入射面50bの鉛直方向の長さは、少なくとも反射鏡8が鉛直方向に動くときの触れ幅を許容できる長さであればよい。
【0150】
ここで、第1可動部20が反射鏡8を可動させたときの様子について、図11を用いて説明する。図11は、第1可動部20が反射鏡8を可動させたときの様子を示す図である。
【0151】
図11の(a)では、ヘッドランプ1が真正面を向いているときの様子を示している。この場合、ヘッドランプ1の光軸方向と基準線l2に沿った方向(基準方向)とが一致しており、ヘッドランプ1の真正面に光が出射される。
【0152】
図11の(b)では、ヘッドランプ1が基準線l2から上方向を向くように可動した様子を示している。また、図11の(c)では、ヘッドランプ1が基準線l2から下方向を向くように可動した様子を示している。これらの場合、ヘッドランプ1の光軸方向が基準方向からずれるが、半導体レーザ3から出射されたレーザ光は、扇形導光部50を介してレーザ光照射面7aに確実に照射される。そして、発光部7で変換された蛍光が透明板9の垂線方向(光軸調整された後の所定の方向)に出射される。すなわち、車両の走行状態にあわせて光軸調整を行われても、半導体レーザ3から出射されたレーザ光を発光部7に確実に照射することができる。
【0153】
非球面レンズ4および扇形導光部50の光学的な結合効率(半導体レーザ3から出射されるレーザ光の強度を1としたときの、扇形導光部50の光出射面50aから出射されるレーザ光の強度)は90%である。このため、半導体レーザ3から出射された11.2Wのレーザ光は、非球面レンズ4および扇形導光部50を通過すると、光出射面50aから約10Wのレーザ光として出射される。
【0154】
このように、本実施の形態に係るヘッドランプ1は、半導体レーザ3から出射されたレーザ光が扇形導光部50の光出射面50aを介して出射され、発光部7のレーザ光照射面7aに照射される。このため、本実施の形態では、発光部7から放射される光束が約1600lm、かつ、発光部7の輝度が80cd/mmという高輝度・高光束のヘッドランプ1を実現することができ、ひいては小型でかつ軽量なヘッドランプ1を実現することができる。
【0155】
また、扇形導光部50が、反射鏡8と一体に可動するように反射鏡8に固定され、その光入射面50bが、半導体レーザ3を、レーザ光照射面7aの中心から等距離の位置に配置することが可能な断面形状を有している。それゆえ、第1可動部20が反射鏡8をどの向きに可動させた場合であっても、光入射面50bとレーザ光照射面7aとの距離(レーザ光が通る光路長)が変化することがないので、半導体レーザ3と反射鏡8との距離をほぼ一定に保つことができる。すなわち、反射鏡8の向きに関わらず、半導体レーザ3と反射鏡8との距離を、車両の停止時に反射鏡8が真正面を向いているときと同じ距離にすることができる。
【0156】
従って、光ファイバー5の代わりに扇形導光部50を用いた場合であっても、光軸方向を所定の方向に保つことができ、適切な光軸調整を行うことができる。
【0157】
〔実施の形態3〕
本発明のさらに他の実施形態について図12および図13に基づいて説明すれば、以下のとおりである。なお、実施の形態1および2と同様の部材に関しては、同じ符号を付し、その説明を省略する。本実施の形態では、ヘッドランプ1の変形例であるヘッドランプ1aの概略構成について説明する。図12は、ヘッドランプ1aの概略構成を示す図であり、ヘッドランプ1aから出射される光の光軸を調整するための光軸調整機構を含む概略構成を示す斜視図である。
【0158】
同図に示すように、コの字形状であるランプ支持体25の、反射鏡8の下側(地面側)に位置する下部板状部25aのほぼ中央に、第2可動部40が直接設置されている。第2可動部40は、図13に示すように、回転型超音波モータであり、そのモータ軸部404が下部板状部25aに取り付けられている。モータ軸部404が第2軸部24と垂直(鉛直方向)に取り付けられているので、第2可動部40は、反射鏡8が反射した光の光軸方向が所定の方向となるように、少なくとも反射鏡8を水平方向(左右方向)に可動させるものといえる。
【0159】
次に、第2可動部40の内部構成について、図13を用いて説明する。第2可動部40は、ステータ401、ロータ402、ベアリング403、モータ軸部404および筐体405を備えていることにより、超音波モータを実現している。
【0160】
ステータ401は、円形状の弾性部材と圧電セラミックとからなり、図7に示す第1可動部20の長円形弾性体201および圧電素子202と同様の機能を有するものである。すなわち、ステータ401は、圧電セラミックに電圧が印加されると、圧電セラミックに生じる超音波振動により金属製の弾性部材にたわみ波動が発生し、このたわみ波動を利用してロータ402を駆動させるものである。また、圧電セラミックは、第2可動部40用の交流電源(図示せず)に接続されている。
【0161】
ロータ402は、ステータ401の上部に配置される円形状の金属板であり、たわみ振動によりステータ401の弾性部材に生じる進行波とは反対の方向の駆動力を受ける。ステータ401からの駆動力がロータ402に的確に伝わるように(ステータ401およびロータ402からの発熱やこれらの磨耗を避けるために)、ロータ402は、ステータ401に対して強い圧力で押し付けられている。
【0162】
ベアリング403は、ロータ402の中央部分に位置し、モータ軸部404を支持するものである。また、ベアリング403は、ロータ402に伝えられた駆動力をモータ軸部404に伝えるものである。
【0163】
モータ軸部404は、ベアリング403の中央部分に位置し、筐体405の中央から突出するものであり、ベアリング403からの駆動力(すなわち、ステータ401がロータ402に伝えた駆動力)によって回転する回転軸である。
【0164】
次に、ヘッドランプ1aに対する光軸調整機構の制御方法について説明する。図8に示す補正値算出部322および可動制御部323は、第1可動部20に対する補正値の算出および制御を行うだけでなく、第2可動部40に対する補正値の算出および制御を行う。
【0165】
補正値算出部322は、例えば車高センサー30から車高信号から前部変位量を算出し、自動車100の横方向(車軸および鉛直方向と垂直な方向)の横方向傾斜角度を求め、この横方向傾斜角度を打ち消すための角度(例えば−1を除した値)を横方向補正値とし、当該横方向補正値を示す横方向補正信号を可動制御部323に送信する。
【0166】
可動制御部323は、横方向補正信号を受信すると、当該横方向補正信号に示される横方向補正値に対応する、第2可動部40の圧電セラミックに印加する電圧値を、記憶部33を参照することにより決定し、この電圧値を示す電圧信号を第2可動部40用の交流電源(図示せず)に送信する。この交流電源が、電圧信号に示される電圧値分の電圧を圧電セラミックに印加することにより、第2可動部40は、ヘッドランプ1aの光軸方向を所定の方向となるように反射鏡8を可動させることができる。
【0167】
このように、ヘッドランプ1aが第2可動部40を備えているので、反射鏡8を鉛直方向だけでなく、水平方向にも可動させることができる。それゆえ、車両の水平方向の傾きにも対応させて光軸調整を行うことができるので、例えば下り坂で、かつ、曲線路を走行しているような場合に、法的な基準を満たすとともに、運転者が目視するのに適した位置を照射可能なように光軸調整を行うことができる。
【0168】
また、第2可動部40は、ステータ401およびロータ402を備える超音波モータにより実現されているので、低速動作で高トルクを得ることができる、非通電時に高い保持力が実現可能である、小型化が可能であるなど、超音波モータの特性を有することができる。それゆえ、第2可動部40は、光軸調整用アクチュエータとしての機能を十分に発揮することができる。
【0169】
〔実施の形態4〕
本発明のさらに他の実施形態について図14〜図16に基づいて説明すれば、以下のとおりである。なお、実施の形態1〜3と同様の部材に関しては、同じ符号を付し、その説明を省略する。本実施の形態では、発光部7が透明板9ではなく、反射鏡8に保持されている構成について説明する。図14は、本実施の形態に係るヘッドランプ1の概略構成を示す断面図であり、図15は、発光部7と光ファイバー5の出射端部5aとの位置関係を示す図である。
【0170】
図2および図3で説明したように、出射端部5aは、レーザ光照射面7aに接触していてもよいし、僅かに間隔を置いて配置されてもよい。ここで、出射端部5aがレーザ光照射面7aと僅かに間隔を置いて配置されている場合、ヘッドランプ1に対する衝撃により、出射端部5aから出射されたレーザ光がレーザ光照射面7aに適切に照射されない可能性がある。この場合、レーザ光が発光部7によってインコヒーレントな光に変換されることなく、反射鏡8から出射されてしまうことになる。例えば、図2のように発光部7が透明板9に設けられている場合には、反射鏡8と透明板9とで囲まれた空間(反射鏡8と、反射鏡8の開口部とが形成する空間)中をレーザ光が伝播し、反射鏡8から出射される。
【0171】
つまり、出射端部5aがレーザ光照射面7aと僅かに間隔を置いて配置されている場合(特に図2の構成の場合)には、人体にとって有害な出力レベルのコヒーレントなレーザ光が、ヘッドランプ1の外部(前方)に出射されてしまう可能性がある。特に、半導体レーザ3が出射するレーザ光は高出力であるため、ヘッドランプ1の外部、特に前方に出射されてしまうことを防ぐ必要がある。
【0172】
この点を考慮すれば、出射端部5aとレーザ光照射面7aとは接触している(近接している)か、もしくはレーザ光の光路が覆われていることが好ましい。すなわち、出射端部5aとレーザ光照射面7aとが離間している場合に形成される、その間のレーザ光の光路と、その光路の外の空間(例えば、上記反射鏡8と透明板9とで囲まれた空間)とを空間的に遮断することが好ましい。
【0173】
図14では、反射鏡8の底部には、出射端部5aが挿入される中空部8aが形成されており、その中空部8aの中心に、発光部7のレーザ光照射面7aの中心が位置するように、発光部7が設けられている。また、出射端部5aを保持するフェルール6が中空部8aに挿入されている。つまり、図14では、反射鏡8の中空部8aにおいて、レーザ光照射面7aと出射端部5aとが近接している。
【0174】
レーザ光照射面7aと出射端部5aとが近接することにより、出射端部5aから出射されたレーザ光を確実にレーザ光照射面7aに照射できる。このため、例えばヘッドランプ1が何らかの衝撃を受けた場合に、人体にとって有害な出力レベルのレーザ光がレーザ光照射面7aに照射されずに(すなわち、レーザ光がインコヒーレントな光に変換されずに)直接外部に漏れ出てしまうのを防ぐことができる。それゆえ、安全性の高いヘッドランプ1を実現できる。
【0175】
また、上記反射鏡8と透明板9とで囲まれる空間(領域)をレーザ光が伝播することを防ぐ目的であれば、レーザ光照射面7aと出射端部5aとが近接していなくてもよい。すなわち、発光部7が、レーザ光照射面7aが、反射鏡8と反射鏡8の開口部とが形成する空間の外側となるように設けられていればよい。なお、上記「空間の外側」は、上記空間の境界面と上記空間の外部とを含む概念である。
【0176】
例えば、図14および15では、レーザ光照射面7aが、発光部7から出射された光を反射する反射鏡8の反射面と少なくとも同一面(反射鏡8の外部に面した側、すなわち上記空間の外側)となるように、発光部7が設けられている。また、発光部7自体が、反射鏡8の外部であって、ヘッドランプ1の内部に設けられていてもよい。この場合、例えば、中空部8aを延伸した筒(当該筒の材質は、レーザ光を遮断する材質)の内部に、発光部7が備えられる。さらに、発光部7の一部が上記空間内に存在し、レーザ光照射面7aが当該空間の外部(中空部8aの内部)に存在してもよい。この場合、レーザ光照射面7aの形状および大きさは、中空部8aの開口面の形状および大きさに一致している。
【0177】
このような構成の場合、発光部7が、高出力のレーザ光を上記空間の内部で受光することがない。すなわち、人体にとって有害な出力レベルのレーザ光が上記空間を伝播して、ヘッドランプ1の光の照射方向に漏れ出てしまうことを防ぐことができる。また、例えばヘッドランプ1が何らかの衝撃を受けたときに、レーザ光がレーザ光照射面7aに照射されない事態が生じた場合であっても、レーザ光が、少なくとも上記光の照射方向に直接漏れ出てしまう事態を防ぐことができる。
【0178】
なお、図14では、中空部8aは、反射鏡8の底部に形成されているが、これに限らず、反射鏡8のどの位置に形成されてもよい。
【0179】
また、発光部7は、中空部8aを完全に覆うように配置されている。これにより、出射端部5aから出射されたレーザ光が反射鏡8と透明板9とで囲まれる領域に出射され、反射鏡8の開口部から出射されてしまうことを防ぐことができる。このため、中空部8aは、レーザ光照射面7aの大きさ以下(レーザ光照射面7aが3mm×1mmの矩形の場合、中空部8aの開口面は3mm以下)となるように形成されている。なお、発光部7が中空部8aを完全に覆うことができれば、中空部8aの形状は、レーザ光照射面7aと必ずしも同じ形状でなくてよい。
【0180】
なお、上記反射鏡8と透明板9とで囲まれる空間をレーザ光が伝播することを確実に防ぐためには、(1)発光部7を、透明板9ではなく反射鏡8に保持し、(2)レーザ光照射面7aと出射端部5aとを近接させ、(3)発光部7が中空部8aを完全に覆うように配置されることが好ましい。
【0181】
図15に示すように、発光部7とフェルール6とは、放熱部材61を介して設けられている。すなわち、レーザ光照射面7aと出射端部5aとは、放熱部材61を介して近接している。
【0182】
放熱部材61は、発光部7にレーザ光が照射されることにより、発光部7にて発生する熱を放散するものであり、レーザ光照射面7aと接して設けられている。放熱部材61の材質は、透明でかつ熱伝導率が高い材質、例えば窒化ガリウムやマグネシア(MgO)、サファイアなどが用いられる。
【0183】
また、放熱部材61は、板状の部材であり、中空部8aの開口面を覆うように中空部8aの内部に設けられている。放熱部材61の一方の表面(レーザ光出射面)にはレーザ光照射面7aが熱的に結合するように接着され、もう一方の表面(レーザ光受光面)には出射端部5aが接触または近接するように、発光部7と出射端部5aとが配置されている。
【0184】
なお、放熱部材61の形状は、発光部7にて発生する熱を、例えば反射鏡8に放散することができれば、中空部8aの開口面を覆うような形状には限られない。すなわち、レーザ光照射面7aの一部に接する、反射鏡8から延出する棒状、筒状を含む線状の部材であってもよい。
【0185】
例えば、放熱部材61が線状の部材であり、光軸中心から離れた位置(レーザ光照射面7aの端部)にのみ設けられている場合には、必ずしも透明である必要はない。ただし、レーザ光の利用効率の観点からいえば、透明であることが好ましい。また、放熱部材61を筒状として、レーザ光照射面7aの端部にのみ設けた場合であれば、その筒の中を液体、あるいは気体等を流す、あるいは、循環させることで、より放熱効果を高めることも可能である。
【0186】
一般に、蛍光体を含む微小な発光部をハイパワーの励起光で励起すると(すなわち高いパワー密度で発光部を励起すると)、発光部が激しく劣化するという問題が生ずる。
【0187】
発光部を劣化させる原因の1つとして、励起光が照射される当該発光部の照射領域およびその近傍の領域(昇温領域と称する)における温度上昇が挙げられる。この場合、半導体レーザから高出力の励起光(レーザ光)が発光部に照射されると、当該発光部の昇温領域だけが局所的に極めて高温になるため、当該領域が急速に劣化してしまうという問題が生じる。
【0188】
したがって、蛍光体を含む微小な発光部をハイパワーの励起光で励起する構成において、発光部の劣化を防ぎ、明るく長寿命な光源を実現するためには、上記昇温領域における温度上昇を抑制することが望まれている。
【0189】
特に、図14および図15に示すように、レーザ光照射面7aと出射端部5aとが近接している場合には、レーザ光照射面7aと出射端部5aとの間隔がほとんどなくなるため、上記照射領域に対して、より強いレーザ光が照射されることとなる。このため、レーザ光照射面7aにおける上記昇温領域での発熱量が極めて大きくなり、当該昇温領域での温度上昇により発光部7が急速に劣化してしまう可能性がある。
【0190】
図15に示すヘッドランプ1は、中空部8aに放熱部材61を備え、放熱部材61を介して出射端部5aと発光部7とが近接している。そのため、レーザ光照射面7aに照射されるレーザ光に起因して発光部7において発生した熱を、放熱部材61を介して反射鏡8へと放散させることができるので、発光部7の長寿命化を図ることができる。なお、この点を考慮しなければ、放熱部材61を必ずしも備える必要はない。
【0191】
また、ヘッドランプ1は、図15に示すように、レーザ光照射面7aおよび出射端部5aの近傍に、出射端部5aから出射されたレーザ光のうち、レーザ光照射面7aに照射されなかったレーザ光、およびレーザ光照射面7aの表面で反射されたレーザ光の少なくとも一方を遮光する遮光部62を備えている。遮光部62が反射鏡8に接続されることにより、遮光部62および反射鏡8が、少なくともレーザ光照射面7aおよび出射端部5aの近傍を覆う密閉空間を形成している。図15では、フェルール6、レーザ光照射面7aおよび放熱部材61を覆う密閉空間を形成している。遮光部62の材質は、レーザ光が有する波長およびその近傍の波長を遮断するものであれば、どのような材質であってもよい。
【0192】
ここで、例えば発光部7が中空部8aの開口面を覆うことにより、反射鏡8と透明板9とが囲む空間にレーザ光が漏れ出ないようにして、ヘッドランプ1の前方に当該レーザ光が出射されるのを防ぐことはできる。しかし、この構成の場合、例えばヘッドランプ1への衝撃により、レーザ光がレーザ光照射面7aに適切に照射されない事態が生じた場合に、当該レーザ光が、中空部8a(発光部7とフェルール6との接続部)から漏れ出てしまう可能性がある。この場合、使用者が、ヘッドランプ1が収容されている筐体の覆い(自動車であればボンネット)を開けたときに、人体にとって有害な出力レベルのレーザ光が、直接使用者の目に入ってしまうという危険な事態が生じてしまう可能性がある。
【0193】
遮光部62を備えることにより、レーザ光照射面7aと出射端部5aとを近接させてもなお、例えばヘッドランプ1への衝撃により、レーザ光がレーザ光照射面7aに適切に照射されない事態が生じた場合であっても、当該レーザ光が、中空部8aから外部に漏れ出ることを確実に防ぐことができる。また、レーザ光照射面7aと出射端部5aとが離間している場合であっても、レーザ光が遮光部62により密閉された空間から出射されてしまう、すなわち中空部8aから外部に漏れ出ることを防ぐことができる。なお、少なくともヘッドランプ1の前方にレーザ光が出射されるのを防ぐことを目的とするのであれば、遮光部62は必ずしも備えていなくてもよい。
【0194】
なお、図15では、遮光部62は、特に、反射鏡8の外部に向かう方向(上記光の照射方向以外の方向)に、レーザ光が中空部8aから漏れ出ることを防ぐために設けられている。しかし、この構成に限らず、遮光部62は、上記光の照射方向に、レーザ光が出射されてしまうことを防ぐために設けられるものであってもよい。
【0195】
すなわち、遮光部62は、例えば図2のように、発光部7(レーザ光照射面7a)が、反射鏡8の内部に設けられている場合に、少なくとも、レーザ光照射面7aと出射端部5aとの間に形成されるレーザ光の光路の近傍を覆うように設けられてもよい。図2の場合、遮光部62は、少なくとも、レーザ光照射面7aとフェルール6とを覆う密閉空間を形成し、その形状は例えば筒状である。また、遮光部62の材質は、レーザ光が有する波長およびその近傍の波長を遮断するとともに、発光部7から出射された光を透過する材質であることが好ましい。
【0196】
このように、遮光部62が反射鏡8の内部に設けられる場合には、レーザ光が、上記反射鏡8と透明板9とで囲まれた空間を伝播し、反射鏡8の開口部から出射されてしまうことを防ぐことができる。
【0197】
なお、図14および図15では、レーザ光照射面7aと中空部8aの開口面とが略同一の大きさとなっているが、当該開口面は、レーザ光照射面7aよりも小さくてもよい。この場合、レーザ光照射面7aの端部が反射鏡8に直接接続され、反射鏡8により保持される構成であってもよい。
【0198】
次に、光ファイバー5の代わりに、実施の形態2に記載の扇形導光部50を用いた構成であっても、図16に示すように、本実施の形態に係るヘッドランプ1を実現できる。図16に示すように、扇形導光部50の光出射面50aが中空部8aに挿入され、放熱部材61を介して発光部7のレーザ光照射面7aと近接しているので、図14および図15に示すヘッドランプ1と同様、安全性の高いヘッドランプ1を実現できる。
【0199】
なお、図16では、遮光部62が図示されていないが、例えば、遮光部62および反射鏡8が扇形導光部50を覆う密閉空間を形成するように、遮光部62が設けられていてもよい。また、図10に示す構成において、レーザ光照射面7aおよび光出射面50aの近傍を覆うように遮光部62は設けられてもよい。
【0200】
また、図16の(a)では、ヘッドランプ1の光軸方向と基準線l2に沿った方向(基準方向)とが一致しており、ヘッドランプ1の真正面、すなわち所定の方向に光が出射される様子を示している。また、図16の(b)では、ヘッドランプ1が基準線l2から上方向を向くように可動した様子を示し、図16の(c)では、ヘッドランプ1が基準線l2から下方向を向くように可動した様子を示している。これらの様子は、図11の(a)〜(c)と同様であるため、その説明は省略する。
【0201】
〔実施の形態5〕
本発明のさらに他の実施形態について図17に基づいて説明すれば、以下のとおりである。なお、実施の形態1〜4と同様の部材に関しては、同じ符号を付し、その説明を省略する。本実施の形態では、図12に示すヘッドランプ1a群が1つのヘッドランプ15を形成している場合について説明する。図17は、本実施の形態に係るヘッドランプ15の概略構成を示す斜視図である。
【0202】
図17では、ヘッドランプ15は、ヘッドランプ1aが3つ、水平方向に並んで配設されており、これらヘッドランプ1aの反射鏡8の開口部すべてを覆うように、レンズ12が設けられている。なお、図17に示すように、3つのヘッドランプ1aを、それぞれヘッドランプ1aa、1ab、1acと称することもある。
【0203】
ヘッドランプ15に含まれるヘッドランプ1aの個数は3つに限らず、複数個であってもよい。また、各ヘッドランプ1aの半導体レーザアレイ2を共通にすることも可能である。すなわち、各ヘッドランプ1aの光ファイバー5の入射端部5bを、1つの半導体レーザアレイ2に接続してもよい。さらに、ヘッドランプ1aではなく、図2に示すヘッドランプ1を複数個設ける構成であってもよい。
【0204】
すなわち、本実施の形態に係るヘッドランプ15は、少なくとも発光部7と、反射鏡8と、第1可動部20との組み合わせを複数備えている。これにより、光軸調整に対する応答性を向上させることが可能な上記の組み合わせを複数備えるヘッドランプ15を実現することができる。
【0205】
また、図17では、ヘッドランプ15は、発光部7、反射鏡8および第1可動部20に加え、第2可動部40も備えた構成である。すなわち、ヘッドランプ15は、発光部7と、反射鏡8と、第1可動部20と、第2可動部40との組み合わせを複数備えている。この場合、車両の鉛直方向の傾きだけではなく、車両の水平方向の傾きにも対応させて光軸調整を行うことができる。
【0206】
また、図8に示す可動制御部323は、上記の各組み合わせに含まれる第1可動部20および第2可動部40を、当該組み合わせごとに独立に制御してもよい。この場合、可動制御部323は、ヘッドランプ15がすれ違い前照灯として機能するか、走行用前照灯として機能するか(すなわち、ヘッドランプ15の照射機能)によって、それぞれの第1可動部20および第2可動部40を制御する構成であってもよい。
【0207】
例えば、ヘッドランプ15の消灯時には、図17に示す3つのヘッドランプ1aの反射鏡8の開口部がすべて、ヘッドランプ15のレンズ12の出射面に対して垂直な方向(図17のx方向)を向いているとする。
【0208】
ヘッドランプ15が点灯状態となったとき、ヘッドランプ15がすれ違い前照灯として機能する場合、可動制御部323は、3つのヘッドランプ1aのうち、中央のヘッドランプ1abの反射鏡8と、道路中央側のヘッドランプ1a(ここでは、ヘッドランプ1aaとする)の反射鏡8とを、それぞれの第1可動部20を制御することにより、水平方向(走行用前照灯として機能するときの光の照射方向)よりも若干下向きに可動させる。また、可動制御部323は、道路中央側と反対側にあるヘッドランプ1a(ここでは、ヘッドランプ1acとする)の反射鏡8を、ヘッドランプ1acに備えられた第1可動部20を制御することにより、上記水平方向よりも若干上向きに可動させる。さらに、可動制御部323は、ヘッドランプ1aaおよび1acの反射鏡8を、中央のヘッドランプ1abから遠ざかる向きとなるように、それぞれの第2可動部40を制御する。
【0209】
すなわち、ヘッドランプ1aaおよび1abの第1可動部20は、ヘッドランプ1aaおよび1abの反射鏡8を、上記水平方向から−z方向に第1の所定の角度だけ、ヘッドランプ1acの第1可動部20は、ヘッドランプ1acの反射鏡8を、上記水平方向から+z方向に第1の所定の角度だけ可動させる。また、ヘッドランプ1aaの第2可動部40は、ヘッドランプ1aaの反射鏡8を、x軸から−y方向に第2の所定の角度だけ、ヘッドランプ1acの第2可動部40は、ヘッドランプ1acの反射鏡8を、x軸から+y方向に第2の所定の角度だけ可動させる。第1および第2の所定の角度はそれぞれ、道路運送車両法に規定されたすれ違い前照灯の照射範囲を満たすように設定されており、記憶部33に記憶されている。
【0210】
その後、可動制御部323は、実施の形態1と同様、補正値算出部322からの指示に従って、ヘッドランプ15を備える車両の姿勢に応じて第1可動部20および第2可動部40を制御することにより、ヘッドランプ1aa〜1acそれぞれの光軸方向が所定の方向となるように反射鏡8を可動させる。
【0211】
一方、ヘッドランプ15が点灯状態となったとき、ヘッドランプ15が走行用前照灯として機能する場合、可動制御部323は、3つのヘッドランプ1aa〜1acの反射鏡8すべてを可動させない(消灯時の各ヘッドランプ1aの反射鏡8の向きのままとする)。その後については上記と同様、可動制御部323は、補正値算出部322からの指示に従って、各ヘッドランプ1aの光軸方向が所定の方向となるように反射鏡8を可動させる。
【0212】
このように、ヘッドランプ15が、第1可動部20および第2可動部40を含む組み合わせを複数備えている場合には、すれ違い前照灯か走行用前照灯かといったヘッドランプ15の照射機能にあわせて、各ヘッドランプ1aを適切に可動させた後に、車両の傾きに対応した光軸調整を行うことができる。なお、ヘッドランプ15が、少なくとも第1可動部20を含む組み合わせを複数備えていれば、上記照射機能にあわせて、少なくとも各反射鏡8の上下方向の制御を行うことができる。
【0213】
なお、この照射機能は、すれ違い前照灯および走行用前照灯に限らず、照明装置で規定された照射機能が複数ある場合には、その照射機能にあわせて、点灯時に照明装置の内部に含まれた反射鏡8の向きを適切に可動させるものであってよい。また、その照射機能にあわせて、第1可動部20および第2可動部40のいずれかのみを、ヘッドランプ1aごとに独立に制御する構成であってもよい。
【0214】
〔本発明の別表現〕
なお、本発明は、以下のようにも表現できる。
【0215】
すなわち、本発明に係る車両用前照灯は、超小型レーザヘッドランプ(ヘッドライト)システムと超音波モータとを組合せて、常に光軸を所定の値に保つ構成である。
【0216】
また、本発明に係る車両用前照灯は、高光束、高輝度なレーザ照明光源を用いていることが好ましい。
【0217】
また、本発明に係る車両用前照灯は、レーザ光と導光部材との光学的結合効率の高さを活かして蛍光体発光部と励起光源とを空間的に分離して導光部材を介して励起光を伝達させることが好ましい。
【0218】
また、本発明に係る車両用前照灯では、光軸調整機構の駆動源としては、超音波モータが好ましい。その他、ステッピングモータを用いてもよい。
【0219】
〔補足〕
本発明は上述した各実施形態に限定されるものではなく、請求項に示した範囲で種々の変更が可能であり、異なる実施形態にそれぞれ開示された技術的手段を適宜組み合わせて得られる実施形態についても本発明の技術的範囲に含まれる。
【0220】
例えば、励起光源として高出力のLEDを用いてもよい。この場合には、450nmの波長の光(青色)を出射するLEDと、黄色の蛍光体、または緑色および赤色の蛍光体とを組み合わせることにより白色光を出射する発光装置を実現できる。
【0221】
また、励起光源として、半導体レーザ以外の固体レーザを用いてもよい。ただし、半導体レーザを用いる方が、励起光源を小型化できるため好ましい。
【0222】
また、反射鏡8の開口部は、その真正面からみたとき円形であるが、これに限らず、反射鏡8により反射した光が効率よく外部に出射されるのであれば、楕円や矩形などであってもよい。
【0223】
また、実施の形態1では、光軸調整機構として第1可動部20(リニアアクチュエータ)を用いた構成について説明したが、これに限らず、第2可動部40(超音波モータ)を用いた構成であってもよい。この場合、第2可動部40は、第2軸部24の軸部分にモータ軸部404が位置するように配置される。すなわち、第2可動部40は、モータ軸部404が光軸方向かつ鉛直方向に垂直な方向となり、また、第3軸部26と対向するように配置される。また、第2可動部40は、例えばハウジング10から延出する棒状または筒状の部材などによって固定される。光軸調整機構として第1可動部20の代わりに第2可動部40を備えた構成であっても、実施の形態1と同様の効果を得ることができる。
【0224】
また、超音波モータの代わりとして、簡単な回路構成で、かつ、正確な位置決め制御を行うことに適するステッピングモータを用いてもよい。
【0225】
また、実施の形態3および5では、光ファイバー5を備えた構成について説明したが、これに限らず、実施の形態2と同様、扇形導光部50を備えた構成であってもよい。また、実施の形態1〜5において、半導体レーザ3からのレーザ光が発光部7のレーザ光照射面7aに適切に照射されるように半導体レーザ3と発光部7とを一体に封止した構成、あるいは反射ミラー等の光学系を備えた構成(光ファイバー5および扇形導光部50を必要としない構成)で実現されていてもよい。この場合、第1可動部20および第2可動部40は、反射鏡8などとともに半導体レーザ3および/または反射ミラーも可動させる。
【産業上の利用可能性】
【0226】
本発明は、光軸調整を行うときに可動させる対象物の、光軸調整に対する応答性を向上させることが可能な車両用前照灯(照明装置)として、自動車だけでなく、人間・船舶・航空機・潜水艇・ロケットなどの車両・移動物体の前照灯としても適用することができる。
【符号の説明】
【0227】
1、1a、1aa、1ab、1ac、15 ヘッドランプ(車両用前照灯、照明装置)
2 半導体レーザアレイ(励起光源)
3 半導体レーザ(励起光源)
5 光ファイバー(導光部)
5a 出射端部
7 発光部
7a レーザ光照射面(受光面)
8 反射鏡
8a 中空部
20 第1可動部
40 第2可動部
50 扇形導光部(導光部)
50b 光入射面(入射面)
61 放熱部材
62 遮光部

【特許請求の範囲】
【請求項1】
励起光を出射する励起光源と、
上記励起光源から出射された励起光を受けて発光する発光部と、
上記発光部から出射した光を反射することにより、所定の立体角内を進む光線束を形成する反射鏡と、
上記反射鏡が反射した光の光軸方向が所定の方向となるように、少なくとも上記反射鏡を可動させる第1可動部と、を備えることを特徴とする車両用前照灯。
【請求項2】
上記第1可動部は、少なくとも上記反射鏡を鉛直方向に可動させることを特徴とする請求項1に記載の車両用前照灯。
【請求項3】
上記第1可動部は、超音波モータにより実現されていることを特徴とする請求項1または2に記載の車両用前照灯。
【請求項4】
上記反射鏡が反射した光の光軸方向が所定の方向となるように、少なくとも上記反射鏡を水平方向に可動させる第2可動部を備えることを特徴とする請求項2に記載の車両用前照灯。
【請求項5】
上記第2可動部は、超音波モータにより実現されていることを特徴とする請求項4に記載の車両用前照灯。
【請求項6】
上記励起光源から出射された励起光を受け取り、当該励起光を上記発光部に出射する導光部を備え、
上記励起光源は、上記反射鏡の外部に備えられていることを特徴とする請求項1から5の何れか1項に記載の車両用前照灯。
【請求項7】
上記導光部は、可撓性を有していることを特徴とする請求項6に記載の車両用前照灯。
【請求項8】
上記発光部は、上記導光部から出射された励起光を受光する受光面を有し、
上記導光部は、上記反射鏡と一体に可動するように当該反射鏡に固定され、さらに、上記励起光源から出射された励起光を受け取る入射面を有し、
上記入射面は、上記励起光源を、上記受光面の中心から等距離の位置に配置することが可能な断面形状を有することを特徴とする請求項6に記載の車両用前照灯。
【請求項9】
上記発光部は、上記励起光源から出射された励起光を受光する受光面を有し、当該受光面が、上記反射鏡と当該反射鏡の開口部とが形成する空間の外側となるように設けられていることを特徴とする請求項1から8の何れか1項に記載の車両用前照灯。
【請求項10】
上記励起光源から出射された励起光を受け取り、当該励起光を上記発光部に出射する導光部を備え、
上記発光部は、上記導光部から出射された励起光を受光する受光面を有し、
上記導光部は、上記励起光源から受け取った励起光を上記発光部に出射する出射端部を有し、
上記受光面および上記出射端部の近傍に、上記出射端部から出射された励起光のうち、上記受光面に照射されなかった励起光、および上記受光面にて反射された励起光の少なくとも一方を遮光する遮光部を備えることを特徴とする請求項1から9の何れか1項に記載の車両用前照灯。
【請求項11】
上記励起光源から出射された励起光を受け取り、当該励起光を上記発光部に出射する導光部を備え、
上記発光部は、上記導光部から出射された励起光を受光する受光面を有し、
上記導光部は、上記励起光源から受け取った励起光を上記発光部に出射する出射端部を有し、
上記受光面と上記出射端部とが近接していることを特徴とする請求項1から10の何れか1項に記載の車両用前照灯。
【請求項12】
上記反射鏡は、上記出射端部が挿入される中空部を有し、
上記中空部には、上記発光部に上記励起光が照射されることにより、当該発光部にて発生する熱を放散する放熱部材が備えられ、
上記受光面と上記出射端部とは、上記放熱部材を介して近接していることを特徴とする請求項11に記載の車両用前照灯。
【請求項13】
上記発光部と、上記反射鏡と、上記第1可動部との組み合わせを複数備えることを特徴とする請求項1から12の何れか1項に記載の車両用前照灯。
【請求項14】
励起光を出射する励起光源と、
上記励起光源から出射された励起光を受けて発光する発光部と、
上記発光部から出射した光を反射することにより、所定の立体角内を進む光線束を形成する反射鏡と、
上記反射鏡が反射した光の光軸方向が所定の方向となるように、少なくとも上記反射鏡を可動させる第1可動部と、を備えることを特徴とする照明装置。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【図8】
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【図9】
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【図10】
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【図11】
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【図12】
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【図14】
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【図15】
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【図16】
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【図17】
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【図13】
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【公開番号】特開2012−89479(P2012−89479A)
【公開日】平成24年5月10日(2012.5.10)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2011−202504(P2011−202504)
【出願日】平成23年9月16日(2011.9.16)
【出願人】(000005049)シャープ株式会社 (33,933)
【Fターム(参考)】