説明

車両用収納ボックスの配設構造

【課題】この発明は、収納ボックスがその配設位置によって物品を収納する機能とは異なる機能を発揮することを可能にし、収納ボックスの利便性や機能性を向上させることで車室の実用性向上を図ることができる車両用収納ボックスの配設構造を提供することを目的とする。
【解決手段】車室内に物品を収納可能な収納空間41を設けた収納ボックス40が、少なくともシートバック18に対して脱着自在とされ、収納ボックス40をシートバック18に装着した状態で、かつシート列3、4が折りたたみ状態の時に、シートバック18の背面と収納ボックス40(ボックス部材40a、40b)とによって略連続した面を形成させるように収納ボックス40(ボックス部材40a、40b)を支持する挿入部18aを備えた。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
この発明は、シートクッションと、シートバックと、該シートバックが上記シートクッションに向けて倒伏して折りたたみ状態になる機構とから構成されるシート装置を有する車両における車両用収納ボックスの配設構造に関する。
【背景技術】
【0002】
従来、下記特許文献1に示されるように、車室内で使用される物品収納用の収納ボックスにおいて、この収納ボックスの底面に、車室の床部(フロアパネル)の複数個所に設置されたストライカと係合可能な係合手段を設けることにより、上記収納ボックスを車室内の複数個所に選択的に取付け得るようにした構造が知られている。
【0003】
具体的に、下記特許文献1では、運転席シート及び助手席シートの間の床部と、その後方側の2列目のシート列を構成する左右一対のシート間の床部と、さらにその後方側の3列目のシート列を構成する左右一対のシート間の床部とに、それぞれ上記ストライカが設けられることにより、車室床部の前後方向3箇所に、上記収納ボックスが選択的に取付けられるように構成されている。
【0004】
【特許文献1】特開2006−21608号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
上記特許文献1に開示された構成によれば、収納ボックスの取付け位置を適宜変更して乗員の使い易い位置に収納ボックスを取付けることにより、この収納ボックスの使い勝手を効果的に向上させることができる。
【0006】
しかしながら、上記特許文献1の構成では、あくまでも収納ボックスが物品を収納するという本来の機能のみを備えているに過ぎず、収納ボックスの使い勝手を向上させているとは必ずしも言い切れるものではなかった。
【0007】
近年では、シート装置のシートバックをシートクッションに向けて倒伏し、折りたたみ状態とすることによって多彩なシートアレンジを実現させるものが知られている。例えば、シート装置を適宜折りたたみ状態とすることによって、シートバックの背面を利用して長尺の物品を載置したり、乗員が横たわったりすることが可能になる。
【0008】
上述した収納ボックスは、このようなシートアレンジに応じてその配置位置を変更できるようにすれば、物品を収納するという本来の機能とは異なる機能を発揮することが可能になり、その利便性、機能性をより向上させることができると考えられる。
【0009】
この発明は、収納ボックスがその配設位置によって物品を収納する機能とは異なる機能を発揮することを可能にし、収納ボックスの利便性や機能性を向上させることで車室の実用性向上を図ることができる車両用収納ボックスの配設構造を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0010】
この発明の車両用収納ボックスの配設構造は、車室の底面を形成するフロアパネル上に座面を形成するシートクッションと、該シートクッションの後部に設けられたシートバックと、該シートバックが上記シートクッションに向けて倒伏して折りたたみ状態になる機構とから構成されるシート装置を有する車両における収納ボックスの配設構造であって、上記車室内に物品を収納可能な収納部を設けた収納ボックスが、少なくとも上記シートバックに対して脱着自在とされ、上記収納ボックスを上記シートバックに装着した状態で、かつシート装置が上記折りたたみ状態の時に、上記シートバックの背面と上記収納ボックスとによって略連続した面を形成させるように上記収納ボックスを支持する収納ボックス支持手段を備えたものである。
【0011】
この構成によれば、収納ボックスをシートバックに支持させた状態でシート装置のシートバックを折りたたむことで、収納ボックス及びシートバックの背面(倒伏時の上面)により、略連続した平坦なフロア面を形成でき、このフロア面を底面とする広範な荷室スペースを車室後部に形成することができる。
【0012】
これにより、長尺の荷物を車室後部に載置した際には、上記フロア面によって荷物の安定性を向上させることができ、乗員が上記フロア面に横たわる際には、広範なスペースによって快適性を向上させることができる。
【0013】
つまり、シートバックの折りたたみ状態で、シートバックの背面とにより略連続した面を構成するように収納ボックスを支持することで、収納ボックスは、シートアレンジに応じて、物品を収納する本来の機能とは異なる機能を発揮することができ、これによって車室の実用性向上を図ることができる。
【0014】
この発明の一実施態様においては、上記収納ボックス支持手段が、上記シートバックに形成されて乗員の頭部を保持するヘッドレストを支持するヘッドレスト挿入部とされるものである。
【0015】
この構成によれば、収納ボックス支持手段がヘッドレスト挿入部と共通化されることで、収納ボックスの支持部及びヘッドレストの支持部を最小限の数で確保することができる。
【0016】
この発明の一実施態様においては、上記収納ボックスが、上記フロアパネル上に形成されるとともに、上記シート装置の前方に形成された他の収納ボックス支持手段に支持されて、該シート装置に着座する乗員の足置きになるものである。
【0017】
この構成によれば、一般的に、チャイルドシートを利用する場合には、乗員の座部の位置が上がることによって足が床部に届かないぶら下がり状態となり、これによって乗り心地が損なわれるという問題があるが、上記シート装置に着座する乗員の足置きとして収納ボックスを利用することで、乗員の乗り心地を向上させることができる。
【0018】
この発明の一実施態様においては、上記収納ボックスが上記ヘッドレスト挿入部に支持されている時に、上記ヘッドレストが収納可能なように、上記フロアパネル上に他のヘッドレスト挿入部を備えたものである。
【0019】
この構成によれば、収納ボックスがシートバックのヘッドレスト挿入部に支持されるにあたり、該シートバックから取り外されたヘッドレストを車室内で安定的に載置する場所を確保できる。
【0020】
この発明の一実施態様においては、上記収納ボックス支持手段の一つが、上記シートバック背面に形成され、上記収納ボックスには、上記シート装置が折りたたみ状態の時に上方からの物品の出し入れを可能とするアクセス開口部と、該アクセス開口部を開閉する蓋部材とが設けられているものである。
【0021】
この構成によれば、シートバックが倒伏された折りたたみ状態時には、乗員がアクセス開口部の蓋部材を上方から操作して収容部内の物品を出し入れすることを可能にしているため、乗員は座ったまま物品の出し入れができ、これにより物品の収納性を確保しつつ、収納ボックスの利便性を向上させることができる。
【0022】
この発明の一実施態様においては、上記収納ボックスは、上記収納ボックスの分割が可能な分割手段を備え、分割された各収納ボックスが上記分割手段を介して上記収納ボックス支持手段に支持されるものである。
【0023】
この構成によれば、広範な荷室スペースを形成する場合や乗員の足置きとして利用する場合等、物品の収納以外の機能を持たせる場合に、収納ボックスをその場面に応じた適切な大きさにして使用することができる。また、その一方で、分割前の状態においては、大容量の収納部を備えた収納ボックスとして利用することができる。
【発明の効果】
【0024】
この発明によれば、シートバックの折りたたみ状態で、シートバックの背面とにより略連続した面を構成するように収納ボックスを支持することで、収納ボックスは、シートアレンジに応じて物品を収納する本来の機能とは異なる機能を発揮することができ、これによって車室の実用性向上を図ることができる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0025】
以下、図面に基づいて本発明の実施形態を詳述する。
図1は、本発明に係る車両用収納ボックスの配設構造を備える車室内の全体斜視図である。本図に示される車両の車室内には、車室底面を構成するフロアパネル1上に樹脂製の補強パネル1aやフロアマット1bが敷設されており、これによって床部が形成されている。
【0026】
また、フロアパネル1上には、車幅方向に延びる第1、第2のクロスメンバ1c、1dが車両前後方向に並ぶように配設されており、運転席シート5及び助手席シート6からなる第1シート列2が補強部材1a、フロアマット1bを介してクロスメンバ1c、1dの上方に配設されている。
【0027】
さらに、この第1シート列2の後方側には、車幅方向に並設された複数の乗員用シート(後述する単位シート7〜9及び単位シート10、11)からなる第2及び第3のシート列3、4が前から順に配設されている。
【0028】
また、図1に示すように、車室の後端部には、荷室フロア1eを床面とする後部荷室Lが形成されており、この後部荷室Lの前方に隣接して上記第3シート列4が配設されている。
【0029】
第1シート列2を構成する運転席シート5及び助手席シート6は、それぞれ、フロアパネル1上に座面を形成するシートクッション13と、このシートクッション13の後端部に枢支されて上方に起立するシートバック14と、シートバック上部にて乗員の頭部を保持するヘッドレスト15とを有している。
【0030】
これら運転席シート5及び助手席シート6は、互いに間隔を空けて車幅方向に並設されており、その間に位置するフロアパネル1上には、運転者または助手席乗員の肘が載置される肘掛け台等の機能を有したコンソールボックス16が突設されている。
【0031】
上記第2シート列3は、シートクッション17、シートバック18及びヘッドレスト19を個別に有した3つの単位シート7〜9が車幅方向に並設されることにより構成されている。また、上記第3シート列4は、シートクッション20、シートバック21及びヘッドレスト22を個別に有した2つの単位シート10、11から構成されている。
【0032】
上記第2シート列3の各単位シート7〜9は、フロアパネル1上に設置されるものであり、図2に示すように、上記シートクッション17の後方には、支軸23が設けられ、シートバック18内に配設された不図示のバックフレームが支軸23を介して枢支されている。
【0033】
このため、シートバック18を支軸23を支点にして揺動変位させることにより、その設置角度が調節可能であり、図中二点鎖線で示すように、シートバック18をシートクッション17に向けて倒伏させ、折りたたみ状態とすることが可能になっている。なお、図2において符号24は、支軸23等を隠蔽するために、上記シートクッション17の左右の側辺部等を覆う保護カバーである。
【0034】
また、シートバック18の上端には、2つの挿入部18aが形成されている。この挿入部18aに対しては、ヘッドレスト19に取付けられたロッド部材19aを挿入することが可能になっており、これによってヘッドレスト19がシートバック18に脱着自在に支持されるようになっている。
【0035】
以上のように構成された各単位シート7〜9のシートバック18の背面には、小物類等の物品が収納される後述する収納ボックス40(図6参照)を支持するためのボックス支持部36が設けられている。このボックス支持部36は、図2に示すように、シートバック18、21の背面における上下左右の4箇所に設けられた凹部38と、この凹部38内に設けられた車幅方向に延びる係合軸39とを有している。そして、この凹部38内の係合軸39に、後述する収納ボックス40のフック45(図7参照)が係止されることにより、上記収納ボックス40がシートバック18に対し着脱自在に支持されるようになっている。
【0036】
上記第3シート列4は、その単位シートの数が第2シート列3とは異なっており、しかも各単位シート10、11は、図3〜図5に示すように、フロアパネル1上に設置された左右一対の支持プレート28に、上下方向に延びる前側及び後側リンク26、27を介して支持されている。
【0037】
このうち、前側リンク26は、その上端部が上記シートクッション20の前方部側面に支軸29を介して枢支されるとともに、上記前側リンク26の下端部は上記支持プレート28の前方部に支軸30を介して枢支されている。一方、後側リンク27は、その上端部がシートバック21の下端部側面に図略の締結部材等を介して固定されるとともに、上記後側リンク27の下端部は上記支持プレート28の後方部に支軸31を介して枢支されている。
【0038】
なお、図3において符号25は、上記前側及び後側リンク26、27の上端部(つまりシートクッション20やシートバック21との連結部)等を隠蔽するために、上記シートクッション20の左右の側辺部等を覆う保護カバーである。但し、図4では、この保護カバー25を取り外した状態で上記単位シート10、11を示している。
【0039】
上記シートクッション20の後方部側面には、締結部材32を介して連結リンク34が固定されている。この連結リンク34は、上記シートクッション20との固定部から上方かつ後方に湾曲するように延びており、その先端部が、上記後側リンク27の上端部に支軸33を介して枢支されている。
【0040】
上記支持プレート28には、後側リンク27の下端部を保持してこの後側リンク27が支軸31を支点に回動するのを規制するロック装置35が設けられている。そして、通常時には、このロック装置35によって後側リンク27の回動変位が規制されることにより、図3及び図4に示すように、上記シートバック21がシートクッション20に対し上方に起立した状態に保持されるとともに、上記シートクッション20が支持プレート28に対し所定距離上方に離間した位置に保持されるようになっている。
【0041】
上記シートクッション20またはシートバック21の所定部位には、上記ロック装置35の内部のギア機構等と連係された図略の操作レバーが設けられており、この操作レバーが乗員によって操作されるのに応じ、上記ロック装置35による後側リンク27のロックが解除されるようになっている。そして、このように後側リンク27のロックが解除された状態で、乗員が上記シートバック21に対しこれを前方に押し倒す方向の力を加えると、図5に示すように、上記シートバック21と一体に上記後側リンク27が前方に回動変位するとともに、連結リンク34が前方かつ下方に揺動変位し、さらに上記前側リンク26が前方に回動変位する。すると、これに対応して図示のように、シートクッション20が前方かつ下方に沈み込むとともに、シートバック21がこのシートクッション20に向けて倒伏した折りたたみ状態に変位することになる。
【0042】
また、シートバック21の上端には、上記第2シート列3の各単位シート7〜9のシートバック18と同様、2つの挿入部21aが形成されており、この挿入部21aには、ヘッドレスト22のロッド部材22aを挿入することが可能になっている。これによって、ヘッドレスト22がシートバック21に脱着自在に支持されるようになっている。
【0043】
また、上記第3シート列4のシートバック21の背面には、上記第2シート列3の各単位シート7〜9と同様にボックス支持部36が設けられており、このボックス支持部36に、上記収納ボックス40が着脱自在に係止されるようになっている。なお、以降の説明では、この収納ボックス40を単位シート7〜9のシートバック18に支持させた場合を例に挙げて説明する。
【0044】
図6は、上記収納ボックス40の使用状態を示す斜視図である。上記収納ボックス40は、図6に示すように、小物類等の物品が収納可能とされる収納空間41を内部に有する本体部42と、収納空間41へのアクセスを可能にすべく形成された開口部43を開閉可能とするリッド部44とを備えている。また、本体部42には、収納空間41の開口部43と同一平面上において凹形状をなすカップホルダー42a1、42b1が形成されている。
【0045】
図6においては、第2シート列3を構成する単位シート7〜9のうち、車幅方向中央に位置する単位シート8のシートバック18に上記収納ボックス40を取付けて使用する場合の例が示されており、上記収納ボックス40は、図示のように上記シートバック18がシートクッション17に向けて倒伏した状態で使用される。
【0046】
図7は、上記シートバック18の背面に上記収納ボックス40を取付ける際の手順を示す図である。本図に示すように、上記収納ボックス40の本体部42には、その下面から突出する複数のフック45が設けられている。
【0047】
上記フック45は、上記本体部42の下面部の複数個所(シートバック18に設けられた4箇所のボックス支持部36に対応する箇所)に支軸46を介して枢支されている。そして、このフック45は、上記支軸46を支点とした特定の回転方向(上記ボックス支持部36の係合軸39と係合する方向)に図外の付勢手段により付勢されることで、通常時において図示のような姿勢に保持されるように構成されている。
【0048】
このようなフック45を有した上記収納ボックス40が、図中の矢印のように上記シートバック18の背面に押し付けられると、このシートバック18に設けられた上記ボックス支持部36の係合軸39に上記フック45の下辺部が当接し、これに応じて図8(a)に示すように、フック45が支軸46を支点に上方に回動変位する。そして、この状態から上記収納ボックス40がさらに下方に押し付けられると、上記フック45の下辺部が上記係合軸39を乗り越えるとともに、図8(b)に示すように、上記フック45が上記付勢手段の付勢力により回動して上記係合軸39と係合することにより、上記収納ボックス40がシートバック18に対し固定されることになる。
【0049】
上記収納ボックス40の所定箇所には、上記フック45と連係された図外の操作レバーが設けられている。上記収納ボックス40をシートバック18から取り外すには、上記操作レバーを操作して上記フック45を所定方向(図8(a)の矢印の方向)に回動させることにより、上記フック45と係合軸39との係合を解除し、その状態で上記収納ボックス40を上方に引き上げればよい。
【0050】
ところで、収納ボックス40がシートバック18へ取付られた状態では、図6に示すように、上記本体部42は、上記シートバック18がシートクッション17上に倒伏した図示の状態において、内部の収納空間41が上向きに開口するように設けられており、この本体部42の上面の開口部43が上記リッド部44により開閉可能に閉止されている。
【0051】
このように、収納ボックス40がシートバック18の背面に支持されることで、シートバック18が倒伏された折りたたみ状態時には、乗員が開口部43のリッド部44を上方から操作して収容空間41内の物品を出し入れすることを可能にしている。このため、乗員は座ったまま物品の出し入れがで、これにより物品の収納性を確保しつつ、収納ボックス40の利便性を向上させることができる。
【0052】
図9は、本実施形態に係る収納ボックス40を示す斜視図であり、図10は、図9におけるA−A線矢視図、図11は、収納ボックス40を分割した状態を示す斜視図、図12は、2つのボックス部材40a、40bを連結させて1つの収納ボックス40を構成している状態を示す平面図である。
【0053】
本実施形態の収納ボックス40は、図9〜図12に示すように、2つのボックス部材40a、40bの連結により構成されており、両者は収納ボックス40の中央部で分割可能となっている。そして、上記開口部43は、両ボックス部材40a、40bに形成された2つの開口部43a、43bにより構成されている。
【0054】
また、リッド部44を構成するリッド部44a、44bは、図10に示すように、各ボックス部材40a、40bの本体部42a、42bによりバネヒンジ47a、47bを介して枢支されており、該バネヒンジ47a、47bにより開口部43a、43bを閉じる方向に常時付勢されている。
【0055】
また、各ボックス部材40a、40bの合わせ面には、対になるように第2開口部48a、48bが形成されており、この第2開口部48a、48bを開閉する第2リッド部49a、49bが収納空間41a、41b内に設けられている。
【0056】
第2リッド部49a、49bは、それぞれ第2ヒンジ50a、50bにより回動自在に枢支されている。ここで、図10に示すようなボックス部材40a、40bの連結状態で第2リッド部49a、49bを倒伏させ、第2開口部48a、48bを開状態にすると、両ボックス部材40a、40bの収納空間41a、41b同士が連通して、1つの大きな収納空間41が形成されるようになっている。
【0057】
また、第2リッド部49a、49bには、両ボックス部材40a、40bの合わせ面側に紐等からなる操作つまみ51a、51bが取付けられており、図11に示すような収納ボックス40の分割状態において第2リッド部49a、49bを起立させる方向に引張ることで、第2開口部48a、48bの閉操作が可能になっている。
【0058】
また、この第2リッド部49a、49bは、例えば鉄製とされており、これに対して両ボックス部材40a、40bの合わせ面の内側には、磁石52a、52bが取付けられている。このため、第2リッド部49a、49bが閉操作された時には、磁石52a、52bの磁力により第2開口部48a、48bの閉状態を保持することができる一方で、該閉状態において第2開口部48a、48bが収容空間41a、41b側へ強い力で押圧された時には、磁石52a、52bへの吸着状態が強制的に解除されることにより、開状態とすることが可能になっている。
【0059】
また、各ボックス部材40a、40bには、それぞれの合わせ面において他側に向かって突出するロッド部材53a、53bが複数本取付けられるとともに、これと対向する位置には挿入部54a、54bが形成されている。
【0060】
本実施形態では、図11に示すように、一方のロッド部材53aが他側の挿入部53bに挿入されると同時に、他方のロッド部材53bが一方の挿入部54aに挿入されることで、両ボックス部材40a、40bが連結され、これにより1つの収納ボックス40が形成されている。
【0061】
一方、上述したような連結状態において、各ロッド部材53a、53bを挿入部54a、54bから引抜くと、両ボックス部材40a、40bを容易に引離すことができ、これによって収納ボックス40を分割することが可能になっている。
【0062】
さらに、本実施形態では、分割されたボックス部材40a、40bのロッド部材53a、53bを、図13に示すように単位シート7〜9のシートバック18の挿入部18aに挿入することが可能となっており、ボックス部材40a、40bを、ロッド部材53a、53bを介して挿入部18aで支持することができるようになっている。
【0063】
そして、このボックス部材40a、40bの支持状態においては、各ボックス部材40a、40bの1つの面(上面)と、シートバック18の背面とにより略連続した面が形成されるようになっている。
【0064】
本実施形態では、車室の後端部に荷室フロア1eを床部とする後部荷室Lが形成されているが、ボックス部材40a、40bをシートバック18に装着し、支持させた状態で第2シート列3及び第3シート列4のシートバック18、21を折りたたむと、第3シート列4のシートクッション20が所定量下方に沈み込むことにより、ボックス部材40a、40b、シートバック21、18の背面(倒伏時の上面)、及び上記荷室フロア1eにより、略連続した平坦なフロア面が形成され、このフロア面を底面とする広範な荷室スペースが車室後部に形成されるようになっている。
【0065】
これにより、図14中二点鎖線で示すような長尺の荷物Wを車室後部に載置した際には、上記フロア面によって荷物Wの安定性を向上させることができ、図15中二点鎖線で示すように乗員Xが上記フロア面上に横たわる際には、広範なスペースによって快適性を向上させることができる。
【0066】
つまり、シートバック18の折りたたみ状態で、シートバック18の背面とにより略連続した面を構成するようにボックス部材40a、40bを支持することで、収納ボックス40は、図14、図15に示すようなシートアレンジに応じて、物品を収納する本来の機能とは異なる機能を発揮することができ、これによって車室の実用性向上を図ることができる。
【0067】
また、ボックス部材40aを支持する挿入部を、ヘッドレスト19のロッド部材19aを挿入する挿入部18aで構成することで、ボックス部材40aを支持する挿入部がヘッドレスト19の挿入部19aと共通化でき、これにより、ボックス部材40aの支持部及びヘッドレスト19の支持部を最小限の数で確保することができる。
【0068】
図16は、第2の挿入部60を拡大して示す図であり、図17は、図13におけるB−B線矢視断面図である。本実施形態では、図14〜図17に示すように、シートバック18の挿入部18aの他にも、単位シート7〜9の前方にてフロアパネル1上に第2の挿入部60が形成されている。そして、この挿入部60は、図14〜図17に示すように、ボックス部材40a(40b)とともに、シートバック18から取り外されたヘッドレスト19のロッド部材19aを挿入可能としており、これを単位シート7〜9の前方の所定位置に支持することを可能にしている。
【0069】
このように、ボックス部材40aが挿入部18aに支持されている時に、ヘッドレスト19が収納可能なように、フロアパネル1上に他のヘッドレスト19用の挿入部60を備えたことで、ボックス部材40aがシートバック18の挿入部18aに支持されるにあたり、該シートバック18から取り外されたヘッドレスト19を車室内で安定的に載置する場所を確保できる。
【0070】
ところで、上述した挿入部60によってボックス部材40aが支持される時には、図18、図19(但し、図19は、図18におけるC−C線矢視図)に示すように、ボックス部材40aが第2シート列3の前方の所定位置に起立した状態で支持されることになる。そして、この時、ボックス部材40aの上面は、シートクッション17の座面の高さ位置よりも若干下方に位置するように設定されている。
【0071】
ボックス部材40aのこのような配置により、例えば図20に示すようなチャイルドシート70を単位シート7〜9に装着する場合には、ボックス部材40aの上面が有効に機能することとなる。即ち、一般的に、チャイルドシート70を利用する場合には、乗員Y(子供)の座部の位置が上がることによって足が床部に届かないぶら下がり状態となり、これによって乗り心地が損なわれるという問題があるが、図示のような高さ位置にボックス部材40aの上面を位置させるようにすれば、これを単位シート7〜9(チャイルドシート70)に着座した乗員Yの足置きとして利用することができ、これによって乗員Yの乗り心地を向上させることができる。
【0072】
また、本実施形態では、挿入部60が、乗員Yの足置き用として機能する他に、ヘッドレスト19を支持する機能も有しているため、フロア面に形成する挿入部の数を最小限にでき、これによってフロア面の見映え低下を抑制できる。
【0073】
そして、本実施形態では、広範な荷室スペースを形成する場合や乗員Yの足置きとして利用する場合等において、収納ボックス40をロッド部材53a、53bにより分割可能とすることで、物品の収納以外の機能を持たせる場合に、収納ボックス40をその場面に応じた適切な大きさにして使用することができる。また、その一方で、分割前の状態においては、大容量の収納空間41を備えた収納ボックス40として利用することができる。
【0074】
また、ボックス部材40a、40bの連結、分割に応じて、第2リッド部49a、49bを開閉可能にすることで、収納ボックス40として使用する時には、両収納空間41a、41bを連通させて大きな収納スペースを確保することができる一方、収納ボックス部材40を分割して使用する時には、ボックス部材40a、40b内に物品を収納したままこれを上述した他の用途に利用することが可能になる。また、他の用途にボックス部材40a、40bを利用している時には、第2開口部48a、48bを閉じることで、外部から物品が不用意に収納空間41a、41bへ入り込むことを防止できる。
【0075】
なお、図14〜図20では、補強パネル1aの一部に孔を穿設するとともに、そこに別部材の挿入部60を取付けるような構成となっている。但し、本発明は必ずしもこれに限定されるものではなく、補強パネル1aの成形時に、挿入部60に対応する凹部を同時に一体成形するようにしてもよい。
【0076】
この発明の構成と、上述の実施形態との対応において、
この発明の、シートバックが上記シートクッションに向けて倒伏して折りたたみ状態になる機構は、支軸23、33に対応し、
以下同様に、
収納ボックス支持手段は、挿入部18a、60、及びボックス支持部36に対応し、
アクセス開口部は、開口部43に対応し、
蓋部材は、リッド部44に対応し、
分割手段は、ロッド部材53a、53bに対応するも、
この発明は、上述の実施形態の構成のみに限定されるものではなく、多くの実施の形態を得ることができる。
【図面の簡単な説明】
【0077】
【図1】この発明の実施形態に係る車両用収納ボックスの配設構造を備える車室内の全体斜視図。
【図2】第2シート列を構成する各単位シートの外観を示す斜視図。
【図3】第3シート列を構成する各単位シートの外観を示す斜視図。
【図4】単位シートの概略側面図。
【図5】単位シートのシートバックが倒伏した状態を示す側面図。
【図6】収納ボックスの使用状態を示す斜視図。
【図7】収納ボックスを単位シートのシートバックに取付ける際の手順を説明するための図。
【図8】収納ボックスのフックがシートバックのボックス支持部と係合する時の状況を説明するための図であり、(a)係合途中の状況を示す図、(b)係合完了時の状況を示す図。
【図9】本実施形態に係る収納ボックスを示す斜視図。
【図10】図9におけるA−A線矢視図。
【図11】収納ボックスを分割した状態を示す斜視図。
【図12】2つのボックス部材を連結させて1つの収納ボックスを構成している状態を示す平面図。
【図13】ボックス部材の使用状態の一例を示す斜視図。
【図14】ボックス部材の使用状態の一例を示す側面図。
【図15】ボックス部材の使用状態の一例を示す側面図。
【図16】第2の挿入部を拡大して示す図。
【図17】図13におけるB−B線矢視図。
【図18】ボックス部材の使用状態の一例を示す側面図。
【図19】図18におけるC−C線矢視図。
【図20】図18の状態でチャイルドシートを装着し、そこに乗員が着座した状態を示す側面図。
【符号の説明】
【0078】
1…フロアパネル
13、17、20…シートクッション
14、18、21…シートバック
15、19、22…ヘッドレスト
18a、21a…挿入部
23、33…支軸
36…ボックス支持部
40…収納ボックス
43…開口部
44…リッド部
53a、53b…ロッド部材
60…挿入部

【特許請求の範囲】
【請求項1】
車室の底面を形成するフロアパネル上に座面を形成するシートクッションと、
該シートクッションの後部に設けられたシートバックと、
該シートバックが上記シートクッションに向けて倒伏して折りたたみ状態になる機構とから構成されるシート装置を有する車両における収納ボックスの配設構造であって、
上記車室内に物品を収納可能な収納部を設けた収納ボックスが、少なくとも上記シートバックに対して脱着自在とされ、
上記収納ボックスを上記シートバックに装着した状態で、かつシート装置が上記折りたたみ状態の時に、上記シートバックの背面と上記収納ボックスとによって略連続した面を形成させるように上記収納ボックスを支持する収納ボックス支持手段を備えた
車両用収納ボックスの配設構造。
【請求項2】
上記収納ボックス支持手段は、上記シートバックに形成されて乗員の頭部を保持するヘッドレストを支持するヘッドレスト挿入部である
請求項1記載の車両用収納ボックスの配設構造。
【請求項3】
上記収納ボックスは、上記フロアパネル上に形成されるとともに、
上記シート装置の前方に形成された他の収納ボックス支持手段に支持されて、該シート装置に着座する乗員の足置きになる
請求項1または2記載の車両用収納ボックスの配設構造。
【請求項4】
上記収納ボックスが上記ヘッドレスト挿入部に支持されている時に、上記ヘッドレストが収納可能なように、上記フロアパネル上に他のヘッドレスト挿入部を備えた
請求項2または3記載の車両用収納ボックスの配設構造。
【請求項5】
上記収納ボックス支持手段の一つが、上記シートバック背面に形成され、
上記収納ボックスには、上記シート装置が折りたたみ状態の時に上方からの物品の出し入れを可能とするアクセス開口部と、
該アクセス開口部を開閉する蓋部材とが設けられている
請求項1〜4のいずれか一項に記載の車両用収納ボックスの配設構造。
【請求項6】
上記収納ボックスは、該収納ボックスの分割が可能な分割手段を備え、
分割された各収納ボックスが上記分割手段を介して上記収納ボックス支持手段に支持される
請求項1〜5のいずれか一項に記載の車両用収納ボックスの配設構造。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【図8】
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【図9】
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【図10】
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【図11】
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【図12】
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【図13】
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【図14】
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【図15】
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【図16】
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【図17】
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【図18】
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【図19】
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【図20】
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【公開番号】特開2009−179300(P2009−179300A)
【公開日】平成21年8月13日(2009.8.13)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2008−22718(P2008−22718)
【出願日】平成20年2月1日(2008.2.1)
【出願人】(000003137)マツダ株式会社 (6,115)
【Fターム(参考)】