説明

車両用広告配信システム

【課題】車両に広告を効果的に配信する車両用広告配信システムを提供することを課題とする。
【解決手段】路側装置10から車両に広告を配信する車両用広告配信システム1であって、信号サイクル情報に基づいて赤信号で停止する車両を予測する停止車両予測手段13を備え、路側装置10では、停止車両予測手段13で停止予測した車両にのみ広告を配信することを特徴とし、さらに、路側装置10では、施設が配置される側の走行車線を走行する車両にのみ当該施設の広告を配信すると好適である。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、路側装置から車両に広告を配信する車両用広告配信システムに関する。
【背景技術】
【0002】
近年、光ビーコンなどの路側装置と車両との間で通信を行うインフラが整備されてきている。これら通信インフラを利用し、車両に各種施設の広告などを配信することも検討されている。特許文献1には、交差点に設けられた情報配信装置から広告及び信号機の信号状態を車載装置に配信し、車載装置において信号状態及び車両の走行状態に基づいて情報表示したら危険であるか否かを判断し、危険でないと判断した場合に広告を表示することが開示されている。
【特許文献1】特開2005−77193号公報
【特許文献2】特開2005−25461号公報
【特許文献3】特開2006−72936号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0003】
上記の従来のシステムでは、配信エリア内の全ての車両に対して広告などを配信し、車両側でその広告を表示するか否かを判断している。そのため、安全に広告を見ることができない車両(例えば、赤信号で停止できない車両)に広告が配信された場合、車両ではその配信された広告が表示されない。したがって、配信された広告が無駄になり、不要な配信が行われたことになる。広告を出した施設側も、広告費が無駄となる。
【0004】
そこで、本発明は、車両に広告を効果的に配信する車両用広告配信システムを提供することを課題とする。
【課題を解決するための手段】
【0005】
本発明に係る車両用広告配信システムは、路側装置から車両に広告を配信する車両用広告配信システムであって、信号サイクル情報に基づいて赤信号で停止する車両を予測する停止車両予測手段を備え、路側装置では、停止車両予測手段で停止予測した車両にのみ広告を配信することを特徴とする。
【0006】
この車両用広告配信システムでは、停止車両予測手段により、信号機の信号サイクル情報に基づいて車両が赤信号で停止するか否か(つまり、車両において安全に広告が見られる状態になるか否か)を予測する。そして、車両用広告配信システムでは、路側装置から、赤信号で停止すると予測された車両にのみ広告を配信する。これによって、車両では、赤信号で停止した際にその広告をドライバに対して提供でき、信号待ちでドライバが広告を見ることができる。このように、この車両用広告配信システムでは、赤信号での停止が予測された車両にのみ広告を配信することにより、広告が有効となり(配信した広告をドライバに見てもらうことができる)、車両に広告を効果的に配信することができる。ドライバにとっては、信号待ちの安全な状態で広告を確認できる。広告主にとっては、広告費が無駄にならず、広告効果も大きい。なお、配信する広告には、施設を知らせるための基本的な情報の他に、その施設の最新情報なども含むものとする。
【0007】
本発明の上記車両用広告配信システムの路側装置では、施設が配置される側の走行車線を走行する車両にのみ当該施設の広告を配信すると好適である。
【0008】
施設が配置される側の走行車線の車両では他の走行車線の車両に比べて施設に立ち寄る可能性(ドライバの意志)があると考えられるので、より効率的に広告を配信でき、そのドライバにとっても有効な広告となる。他方、施設が配置される側でない走行車線の車両では施設に立ち寄る可能性が低いと考えられるので、不要な広告の配信を防止でき、そのドライバにとっても不必要な広告の提示が少なくなる。また、施設が配置される側でない走行車線の車両のドライバに広告が提供されないので、その広告の施設へ行くための急な車線の横切りなども防止できる。
【発明の効果】
【0009】
本発明は、赤信号で停止する車両にのみ広告を配信することにより、車両に広告を効果的に配信することができる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0010】
以下、図面を参照して、本発明に係る車両用広告配信システムの実施の形態を説明する。
【0011】
本実施の形態では、本発明に係る車両用広告配信システムを、光ビーコンによる路車間通信システムを利用したインフラ連携広告・最新情報配信システムに適用する。本実施の形態に係るインフラ連携広告・最新情報配信システムは、路側装置としての光ビーコンと各車両に搭載される車載通信装置とでシステムが構成され、光ビーコンと各車載通信装置との間で情報を送受信できる。特に、本実施の形態に係るインフラ連携広告・最新情報配信システムでは、光ビーコンから各車載通信装置に各種施設の広告や最新情報を配信し、車両側でその情報をドライバに提供する。
【0012】
図1〜図3を参照して、本実施の形態に係るインフラ連携広告・最新情報配信システム1について説明する。図1は、本実施の形態に係るインフラ連携広告・最新情報配信システムの概念図である。図2は、本実施の形態に係るインフラ連携広告・最新情報配信システムの構成図である。図3は、本実施の形態に係るインフラ連携広告・最新情報配信システムが構成される交差点周辺の一例である。
【0013】
インフラ連携広告・最新情報配信システム1は、路側に設置される光ビーコン10と各車両に搭載される車載通信装置20からなる。光ビーコン10は、一般道路において交差点Cから所定距離手前の位置などに設置される。インフラ連携広告・最新情報配信システム1では、光ビーコン10と車載通信装置20との間で近赤外線によりデータを送受信できる。インフラ連携広告・最新情報配信システム1では、通常、VICS[Vehicle Information CommunicationSystem]情報やインフラ協調情報を光ビーコン10から車載通信装置20にダウンリンクし、車両情報を車載通信装置20から光ビーコン10にアップリンクする。
【0014】
VICS情報は、全車線で共通の道路交通情報である。道路交通情報は、渋滞情報、交通規制情報、駐車場情報などがある。インフラ協調情報は、車線毎の信号サイクル情報及び全車線で共通の道路線形情報、停止線情報、制限速度情報などがある。信号サイクル情報は、青信号、黄信号、赤信号の各点灯時間、右折指示信号の点灯時間、現在点灯している信号とその信号が点灯してからの経過時間などである。この信号サイクル情報により、例えば、何秒後に赤信号になるか、右折車線の場合には右折指示に何秒後になり、何秒後に終了するかが判る。アップリンクされる車両情報は、車両を識別するための車両ID、車速などがある。
【0015】
特に、図1に示すように、インフラ連携広告・最新情報配信システム1では、車両側で必要とする施設の情報だけを配信してもらうために、ドライバニーズ、ドライバ状態、車両状態も車載通信装置20から光ビーコン10にアップリンクする。ドライバニーズとしては、ドライバや同乗者に応じた不特定な目的地であり、例えば、駐車場、食事施設、コンビニエンスストア、ガソリンスタンドがある。光ビーコン10では、このドライバニーズに応じて施設を選択する。ドライバ状態は、例えば、覚醒度、疲労度がある。光ビーコン10では、このドライバ状態からドライバに休息などが必要な場合にはそれに対応できる施設を選択する。車両状態としては、例えば、ガソリン残量、タイヤ残溝、バッテリ充電量、車検残がある。光ビーコン10では、この車両状態から車両の給油や整備などが必要な場合にはそれに対応できる施設を選択する。
【0016】
そして、インフラ連携広告・最新情報配信システム1では、施設の広告などを安全に見ることができる車両にだけ配信するために、光ビーコン10において赤信号で停止する車両を予測し、その予測した車両の中で施設付近まで近づいている場合には施設が配置される側の走行車線を走行している車両だけを選択し、施設付近まで近づいていない場合には全走行車両の車両を選択する。そして、インフラ連携広告・最新情報配信システム1では、その選択した車両にのみ、車両側のニーズに応じた施設の情報を光ビーコン10から車載通信装置20にダウンリンクする。
【0017】
配信される施設は、図3に示すように、各車両V1,V2・・・が走行中の道路の前方の交差点Cで直進あるいは右左折した道路から行くことが可能な施設である。この施設には、直進した道路に沿った施設F1・・・や交差点Cで右左折した先の道路に沿った施設F3,F4・・・に限らず、それらの道路から中に入った先の施設F2・・・も含まれる。これらの走行中の道路に沿っていない施設F2・・・は、ドライバの目で直接確認される可能性が低いので、道路に沿った施設F1,F3・・・よりも広告を出す効果が高い。
【0018】
施設情報は、施設の広告、最新情報などがある。広告は、施設の基本情報であり、業種、営業時間、定休日、料金情報、位置情報(緯度経度)などがある。最新情報は、施設で日々更新される情報であり、料金情報、サービス情報などがある。
【0019】
さらに、インフラ連携広告・最新情報配信システム1では、ドライバに車両側でのニーズに応じた施設の情報を提供するために、配信された施設の情報をナビゲーション画面などに表示し、ドライバの要求に応じてその施設までの経路案内も行う。
【0020】
なお、光ビーコン10のダウンリンクエリアは、光ビーコン10のK(m)手前に設定され、車線進行方向がエリアサイズL(m)の範囲であり、車線幅方向が車線幅程度の範囲である。車載通信装置20のアップリンクエリアは、光ビーコン10の手前に設定され、車線進行方向がM(m)の範囲である。アップリンクエリアは、ダウンリンクエリアと入口エッジが同じ位置であり、ダウンリンクエリアより狭い(L>M)。したがって、各車両V1・・・でアップリンクした後に、そのアップリンクされた車両V1・・・に対してダウンリンクすることが可能である。このK(m)、L(m)、M(m)は、規格で予め設定された値である。
【0021】
図2及び図3を参照して、光ビーコン10について説明する。光ビーコン10では、アップリンクエリアを走行中の各車両から各種情報がアップリンクされ、全ての車両に対してVICS情報とインフラ協調情報をダウンリンクエリアでダウンリンクする。特に、光ビーコン10では、広告を安全に見ることができる車両を探索し、その探索した車両にのみ車両側のニーズに応じた施設情報(広告や最新情報)をダウンリンクする。そのために、光ビーコン10は、通信装置11、車線毎の光ビーコンヘッド12・・・及び制御装置13を備えている。なお、本実施の形態では、制御装置13における処理が特許請求の範囲に記載する停止車両予測手段に相当する。
【0022】
通信装置11は、各種情報を送受信する装置であり、アンテナ、送信部、受信部を備えている。アンテナは、送受信兼用のアンテナであり、各種信号を送受信する。また、アンテナは、無指向性のアンテナであり、全方向からの信号を受信するとともに全方向に信号を送信する。送信する場合、送信部で各種情報が変調され、その送信信号がアンテナから送信される。受信する場合、アンテナで受信信号が受信され、受信部でその受信信号が復調されて各種情報が取り出される。
【0023】
通信装置11では、前方の交差点Cの信号機Sの制御器から信号サイクル情報を受信する。また、通信装置11では、VICSセンターからVICS情報を受信する。さらに、通信装置11では、インタネットなどを利用して、周辺の各施設F1・・・から広告や最新情報などを受信する。
【0024】
光ビーコンヘッド12は、車線毎に設けられ、近赤外線を送受信可能なヘッドである。光ビーコンヘッド12は、車線の中心線の上方に配置され、下側の斜め後方に向けて設置される。光ビーコンヘッド12では、アップリンクエリア内からの信号を受信し、その信号を復調して取り出した各種情報を制御装置13に出力する。また、光ビーコンヘッド12では、全ての車両に対して、制御装置13による指令に応じて、制御装置13からのVICS情報及びインフラ協調情報を変調し、その変調した送信信号をダウンリンクエリア内へダウンリンクする。さらに、光ビーコンヘッド12では、制御装置13で選択された車両に対してのみ、制御装置13による指令に応じて、制御装置13からの施設情報を変調し、その変調した送信信号をダウンリンクアリア内にダウンリンクする。なお、制御装置13から指令されたタイミングで施設情報をダウンリンクエリア内にダウンリンクすることにより、制御装置13で選択された車両にダウンリンクしたことになる。
【0025】
制御装置13は、CPU[Central ProcessingUnit]、ROM[Read Only Memory]、RAM[Random Access Memory]などからなる電子制御ユニットであり、光ビーコン10を統括制御する。制御装置13のRAMの所定の領域には、施設の情報を格納するためのデータベース13aが構築される。
【0026】
制御装置13では、一定時間毎に、通信装置11を介して、VICSセンターで編集、処理されたVICS情報を取得する。また、制御装置13では、一定時間毎に、通信装置11を介して、前方の信号機Sの制御器から信号サイクル情報を取得し、予め保持している光ビーコン10周辺の道路線形情報、停止線情報、制限速度情報など及びその信号サイクル情報からインフラ協調情報を生成する。さらに、制御装置13では、通信装置11を介して、周辺の各施設F1・・・から各種情報を取得する。また、制御装置13では、光ビーコンヘッド12を介して、アップリンクされた車両の各種情報を取得する。なお、周辺の施設F1・・・の情報は、通信装置11を介することなく、別の手段で取得してもよく、例えば、各施設から直接取得し、制御装置13に予め入力される。
【0027】
制御装置13では、周辺の各施設F1・・・の情報を取得すると、全ての施設F1・・・を業種別に分類し、その業種別の施設を交差点Cから分岐する道路別(直進道路、右折先道路、左折先道路)に分類する。さらに、制御装置13では、各業種の道路毎に、配信する優先順位を決定する。この優先順位の決定方法としては、例えば、各施設F1・・・から入札される広告費の多い順、顧客評価の良い順、料金(ガソリン、駐車料金など)の安い順、交差点Cから近い順で優先順位を決定する。そして、制御装置13では、各業種の道路毎に、優先順に並べた施設の情報をデータベース13aに格納する。さらに、各施設F1・・・から最新情報などの情報を入力される毎に、制御装置13では、データベース13aに格納されている情報を書き換える。
【0028】
ちなみに、広告費については、施設側が入札などによって決めてもよいし、あるいは、交差点Cからの距離、交差点Cで交差する道路に沿っているか否か、走行車線の数、車両が走行する確率などによって決めてもよい。例えば、交差点Cから近い施設ほど、右側の車線を走行中の車両が施設に入り難くなるので、広告費を安くする。道路に沿っていない施設の場合、通常はドライバが直接目で確認できない可能性が高く、広告を出さないとドライバに知られないので、道路に沿っている施設より広告費を高くする。道路の走行車線の数が一車線の場合、走行している車両全てが施設に入り易いので、複数車線の場合より広告費を高くする。車両が右折又は直進が可能あるいは左折又は直進が可能のように施設側を走行する確率が低くなる場合(例えば、車両が施設側にくる確率が50%になる場合)、必ず左折、右折、直進して施設側を走行する確率が高くなる場合(車両が施設側にくる確率が100%の場合)より、広告費を安くする。
【0029】
一定時間毎に、制御装置13では、全車線に共通のVICS情報と車線毎のインフラ協調情報を各光ビーコンヘッド12・・・に送信し、その各情報をダウンリンクするように各光ビーコンヘッド12・・・を指令制御する。
【0030】
アップリンクされた車両の各種情報を入力する毎に(つまり、光ビーコン10のアップリンクエリアを車両が通過する毎に)、制御装置13では、その車両の車速(アップリンクされた情報)とアップリンクエリアの入口エッジから交差点Cまでの距離(規定値)に基づいてその車両が交差点Cに到達するまでに要する時間を演算する。そして、制御装置13では、その演算した時間と信号機Sの信号サイクル情報に基づいてその車両が信号機Sの赤信号で停止するか否かを予測判定する。赤信号で停止しないと予測判定した場合、制御装置13では、その車両に対する施設情報の配信処理を終了する。
【0031】
赤信号で停止すると予測判定した場合、制御装置13では、その車両からアップリンクされた車両側でのニーズ情報(ドライバニーズ、ドライバ状態、車両状態)に応じて、車両側で必要としている施設の業種を決定する。また、制御装置13では、その車両が現在走行中の車線に基づいて、交差点Cを通過した後に走行する可能性のある道路を決定する。例えば、片側一車線の道路の場合、車両は交差点Cを直進する道路あるいは右折先の道路、左折先の道路を走行する可能性がある。片側二車線の道路の場合、左側車線を走行中の車両は交差点Cを直進する道路あるいは左折先の道路を走行する可能性があり、右側車線を走行中の車両は交差点Cを直進する道路あるいは右折先の道路を走行する可能性がある。片側三車線の道路の場合、左側車線を走行中の車両は交差点Cを直進する道路あるいは左折先の道路を走行する可能性があり、中央車線を走行中の車両は交差点Cを直進する道路を走行し、右側車線を走行中の車両は交差点Cを直進する道路あるいは右折先の道路を走行する可能性がある。そして、制御装置13では、データベース13aを参照し、その決定した業種と交差点Cを通過後の道路に応じて、優先順位の高い施設を選択する。ここでは、交差点Cを通過後に走行する可能性がある道路が複数の場合、各道路について施設が選択される。また、各道路について、優先順位の最も高い施設を1つだけ選択してもよいし、あるいは、優先順に複数の施設を選択してもよい。
【0032】
なお、車両から車両側でのニーズ情報がアップリンクされていない場合、車両側のニーズに応じた業種の施設がデータベース13a内に無い場合あるいは車両からニーズ情報がアップリンクされているが車両側で必要としている業種が特に無い場合、施設情報の配信を行わなくてもよいし、あるいは、施設情報の配信を行ってもよい。配信を行う場合、例えば、広告費の高い施設、ドライバにとって有益な施設(例えば、サービス情報がある施設、料金が格安な施設)などを選択する。
【0033】
施設を選択すると、制御装置13では、選択した施設毎に、その施設の位置情報と交差点Cの位置に基づいて、その施設が交差点Cから閾値距離以上離れているか否かを判定する。閾値距離は、車両が安全に車線変更をできるか否かの距離であり、各交差点Cでの実験などによって予め設定される。つまり、車両が赤信号で停止中にドライバが広告を見て、その施設に入るために急に車線を横切ったりしないように、その施設に入るために安全に車線変更ができるか否かを判定する。
【0034】
閾値距離未満と判定した場合、制御装置13では、車両が施設の配置される側の車線か否かを判定し、施設が配置される側の車線の車両についてはその施設情報を配信すると決定し、施設が配置される側でない車線の車両についてはその施設情報を配信しないと決定する。施設が配置される側の車線とは、施設が交差点Cを直進する道路周辺にある場合には左端車線あるいは直線専用車線の中の左端車線であり、施設が交差点Cを右折した先の道路周辺にある場合には右端車線あるいは右折専用車線であり、施設が交差点Cを左折した先の道路周辺にある場合には左端車線あるいは左折専用車線である。つまり、交差点Cを通過後に安全に施設に行くことができる車線の車両にのみ、その施設の情報を配信する。
【0035】
閾値距離以上と判定した場合、制御装置13では、その車両にその施設情報を配信すると決定する。つまり、どの車線からも安全に施設に行くことができるので、車両が走行している車線に関係なく、その施設の情報を配信する。当然、右側車線の車両が左折しないこと、左側車線の車両が右折しないこと、右折専用車線の車両が右折以外しないこと、左折専用車線の車両が左折以外しないこと、直進専用車線の車両が直進以外しないことは前提である。
【0036】
そして、制御装置13では、配信すると決定した施設情報をその配信する車両で走行してうる車線の光ビーコンヘッド12に送信し、その施設情報をダウンリンクするように光ビーコンヘッド12を指令制御する。配信する施設情報が無い場合、制御装置13では、この指令制御を行わない。ここでは、車両から情報をアップリンクされた後に配信する施設情報を迅速に決定し、車両がダウリンクエリアを出る前に施設情報を配信する。
【0037】
図3に示す例の場合、車両V1と車両V3は、赤信号で停止しない(つまり、交差点Cを青信号で通過する)と予測されるので、施設情報は配信されない。車両V2は、赤信号で停止すると予測される。車両V2は、左側車線を走行中であり、直進あるいは左折する可能性があるので、車両V2側のニーズに応じて施設F1、施設F2、施設F4が選択される。施設F1は交差点Cに近く閾値距離未満であるが、車両V2が左側車線なので施設F1の情報は配信される。施設F2は交差点Cから閾値距離以上であるので、施設F2の情報は配信される。施設F4は交差点Cに近く閾値距離未満であるが、車両V2は左端車線なので施設F4の情報は配信される。したがって、車両V2には、施設F1、施設F2、施設F4の各情報が配信される。車両V4は、赤信号で停止すると予測される。車両V4は、右側車線を走行中であり、直進あるいは右折する可能性があるので、車両V4側のニーズに応じて施設F1、施設F2、施設F3が選択される。施設F1は交差点Cに近く閾値距離未満であり、車両V4は右側車線なので施設F1の情報は配信されない。施設F2は交差点Cから閾値距離以上であるので、施設F2の情報は配信される。施設F3は交差点Cに近く閾値距離未満であるが、車両V4は右端車線なので施設F3の情報は配信される。したがって、車両V4には、施設F2、施設F3の各情報が配信される。
【0038】
図2及び図3を参照して、車載通信装置20について説明する。車載通信装置20では、アップリンクエリアに進入すると各種情報をアップリンクする。また、車載通信装置20では、ダウンリンクエリアに進入するとVICS情報とインフラ協調情報をダウンリンクされると、VICS情報をナビゲーション装置に提供するとともにインフラ協調情報を運転支援装置に提供する。特に、車載通信装置20では、ダウンリンクエリアで施設情報をダウンリンクされた場合、車両の停止を確認後にその施設情報をナビゲーションシステム26に提供する。そのために、車載通信装置20は、光ビーコンアンテナ21、光ビーコン送受信機22、ドライバ入力装置23、ドライバ状態検知装置24、車両状態検知装置25及びECU[Electronic Control Unit]29を備えており、ナビゲーションシステム26を利用する。
【0039】
光ビーコンアンテナ21、光ビーコン送受信機22は、光ビーコン10と近赤外線によってデータを送受信するための装備である。光ビーコンアンテナ21は、車両の所定の位置に配置され、上側の斜め前方に向けて設置される。光ビーコンアンテナ21では、ダウンリンクエリア内で光ビーコンヘッド12からの信号を受信するとともに、アップリンクエリア内で信号を送信する。ダウンリンクされる場合、光ビーコン送受信機22では、光ビーコンアンテナ21で受信した信号を復調し、各種情報を取り出し、その各種情報をECU29に送信する。また、アップリンクする場合、光ビーコン送受信機22では、ECU29による指令に応じて、ECU29から入力した各種情報を変調し、その変調した信号を光ビーコンアンテナ21に送信する。
【0040】
ドライバ入力装置23では、ドライバ(あるいは同乗者)のニーズや経路案内の必要/不必要を入力するための装置であり、どのような入力手段でもよい。例えば、ディスプレイ27に表示される各項目からの選択形式で入力する装置とする。ドライバ入力装置23では、ドライバからのニーズや経路案内必要が入力されると、入力された情報をECU29に送信する。なお、ドライバ入力装置23は、ナビゲーションシステム26の情報入力機能を利用してもよい。
【0041】
ドライバ状態検知装置24では、ドライバの状態(覚醒度、疲労度など)を検知する装置であり、どのような検知手段でもよい。ドライバ状態検知装置24では、ドライバの状態を検知すると、検知した情報をECU29に送信する。
【0042】
車両状態検知装置25では、車両の状態(車速、ガソリン残量、タイヤ残溝、バッテリ充電量など)を検知する各種装置であり、どのような検知手段でもよい。車両状態検知装置25では、車両の状態を検知すると、その検知した情報をECU29に送信する。
【0043】
ナビゲーションシステム26は、自車両の現在位置の検出及び目的地までの経路案内などを行うシステムである。特に、ナビゲーションシステム26では、ECU29から施設情報を受信すると、その施設の位置情報に基づいてナビゲーション画面の地図上の該当する位置にその施設の広告や最新情報も重畳して表示するための画像情報を生成し、その画像情報をディスプレイ27に送信する。さらに、ナビゲーションシステム26では、ECU29から施設までの経路案内の指令を受けると、その施設までの経路を演算し、その経路を案内するための画像情報及び音声情報を順次生成し、その画像情報をディスプレイ27に送信するとともに音声情報をスピーカ28に送信する。
【0044】
ECU29は、CPU、ROM、RAMなどからなり、車載通信装置20を統括制御する電子制御ユニットである。ECU29では、ドライバ入力装置23、ドライバ状態検知装置24、車両状態検知装置25からの各情報を受信するとともに、光ビーコン送受信機22からダウンリンクされた各情報を受信する。
【0045】
ECU29では、ドライバから入力される毎にドライバ入力装置23からのドライバのニーズ(ニーズが無い場合もある)を取得するとともに、一定時間毎にドライバ状態検知装置24からのドライバ状態及び車両状態検知装置25からの車両状態を取得する。そして、ECU29では、アップリンクエリアに進入すると、ドライバのニーズ、ドライバ状態、車両状態及び車両IDなどを光ビーコン送受信機22に送信し、その各情報をアップリンクするように光ビーコン送受信機22を指令制御する。
【0046】
ECU29では、光ビーコン送受信機22からVICS情報とインフラ協調情報を取得すると、VICS情報をナビゲーションシステム26に送信するとともにインフラ協調情報を運転者支援装置に送信する。
【0047】
ECU29では、光ビーコン送受信機22から施設情報を取得すると、車速に基づいて車両が停止したか否かを判定する。車両が停止したと判定すると、ECU29では、施設情報(広告、最新情報)をナビゲーションシステム26に送信する。また、ECU29では、ドライバ入力装置23からの経路案内必要という情報を取得している場合、経路案内の指令もナビゲーションシステム26に送信する。なお、車両の停止判定についてはナビゲーションシステム26で行ってもよく、その場合には、ECU29では、光ビーコン送受信機22から施設情報を取得すると、車両の停止に関係なく、直ちに施設情報をナビゲーションシステム26に送信する。この際、ナビゲーションシステム26では、車両が停止したと判定すると、その施設情報をナビゲーション画面に表示するようにする。
【0048】
図2及び図3を参照して、インフラ連携広告・最新情報配信システム1における動作について説明する。ここでは、施設情報に関する動作のみ説明する。なお、制御装置13のデータベース13aには、各施設F1・・・の広告や最新情報からなる施設情報が各業種の道路毎に格納されているものとする。
【0049】
各車両のドライバ入力装置23では、ドライバからのニーズが入力されると、その情報をECU29に送信している。また、ドライバ状態検知装置24では、一定時間毎に、ドライバの状態を検知し、そのドライバ状態をECU29に送信している。また、車両状態検知装置25では、一定時間毎に、車両の各状態を検知し、その車両状態をECU29に送信している。ECU29では、各情報を受信する。
【0050】
車両がアップリンクエリアに進入すると、ECU29では、ドライバニーズ、ドライバ状態、車両状態、車両IDなどを光ビーコン送受信機22に送信し、その各情報をアップリンクするように指令制御する。この指令に応じて、光ビーコン送受信機22では各情報を変調し、その変調信号を光ビーコンアンテナ21からアップリンクする。
【0051】
光ビーコン10の光ビーコンヘッド12では、アップリンクされた変調信号を受信し、変調信号を復調して各情報を取り出して制御装置13に送信する。
【0052】
このアップリンクされた情報を受信すると、制御装置13では、アップリンクした車両の車速と交差点Cまでの距離に基づいて、その車両が交差点Cに到達するまでに要する時間を演算する。そして、制御装置13では、その演算した時間と信号機Sの信号サイクル情報に基づいて、その車両が信号機Sの赤信号で停止するか否かを判定する。赤信号で停止しないと予測した場合、その車両では安全に施設の広告などを見ることができないので、施設情報の配信は行わない。
【0053】
赤信号で停止すると予測した場合、制御装置13では、アップリンクした車両側のニーズ情報に応じて施設の業種を決定するとともに、その車両の走行中の車線に基づいて交差点Cを通過した後に走行する可能性のある道路を決定する。そして、制御装置13では、データベース13aを参照し、その決定した業種と道路に応じて、優先順位の高い施設を選択し、データベース13aからその施設の情報を抽出する。ここで、選択できる施設が無い場合、施設情報の配信は行わない。
【0054】
データベース13aから施設の情報を抽出すると、制御装置13では、抽出した施設毎に、その施設の位置情報に基づいて、施設が交差点Cから閾値距離以上離れているか否かを判定する。閾値距離未満と判定した場合、制御装置13では、施設が配置される側の車線を走行している車両か否かを判定する。施設が配置される側の車線を走行している車両と判定した場合、その施設に入る可能性がありかつ安全に施設に入ることができるので、制御装置13では、その車両にその施設の情報を配信すると決定する。一方、施設が配置される側の車線を走行していない車両と判定した場合、その施設に入る可能性が低くかつ安全に施設に入ることができないので、制御装置13では、その車両にその施設の情報を配信しないと決定する。一方、閾値距離以上と判定した場合、いずれの車線でもその施設に安全に入ることができるので、制御装置13では、その車両にその施設の情報を配信すると決定する。
【0055】
そして、制御装置13では、配信すると決定した施設の情報をその配信する車両の車線の光ビーコンヘッド12に送信し、その施設の情報をダウンリンクするように光ビーコンヘッド12を指令制御する。この指令に応じて、光ビーコンヘッド12では、その施設情報を変調し、その変調信号をダウンリンクエリアに送信する。この際、アップリンクした車両は、未だ、ダウンリックエリア内を走行中である。
【0056】
このダウンリンクエリア内を走行中の車両では、光ビーコンアンテナ21でその変調信号を受信し、光ビーコン送受信機22でその変調信号を復調して施設情報を取り出し、その施設情報をECU29に送信する。
【0057】
この施設情報を受信すると、ECU29では、車速に基づいて車両が停止したか否かを判定する。車両が停止したと判定すると、ECU29では、施設情報をナビゲーションシステム26に送信する。この施設情報を受信すると、ナビゲーションシステム26では、その施設情報をナビゲーション画面の地図上に表示するための画像情報を生成し、その画像情報をディスプレイ27に送信する。この画像情報を受信すると、ディスプレイ27では、その画像情報に応じたナビゲーション画面を表示する。
【0058】
この際、車両は赤信号で停止しているので、ドライバは、安全な状態で、ナビゲーション画面における各施設の広告や最新情報を見る。この表示されている各施設は、車両側のニーズに応じた施設でありかつ車両が現在いる車線から安全に行くことができる施設である。したがって、ドライバが広告や最新情報を見てその施設に行きたいと思い、ナビゲーション画面上の施設を目指して運転操作を行うと、車両は、安全に、その施設まで行くことができる。このとき、ドライバがドライバ入力装置23から経路案内を要求している場合、ナビゲーションシステム26ではその施設まで経路案内を行う。
【0059】
このインフラ連携広告・最新情報配信システム1によれば、赤信号での停止が予測された車両にのみ施設情報を配信することにより、その施設の情報をドライバに確実に見てもらうことができ、配信した施設情報が有効となり、車両に施設情報を効果的に配信することができる。ドライバにとっては、信号待ちの安全な状態で施設の広告などを確認できる。施設側にとっては、広告費が無駄にならず、広告効果も大きい。
【0060】
インフラ連携広告・最新情報配信システム1によれば、施設の直前では施設が配置される側の車線の車両にのみ施設情報を配信することにより、より効率的に広告を配信できる。ドライバにとっては、行くことが困難な施設の情報が配信されないので、不必要な施設の情報表示が少なくなる。また、施設に行くための急な車線の横切りなども防止でき、交通流を阻害しない。
【0061】
インフラ連携広告・最新情報配信システム1によれば、ドライバのニーズ、ドライバ状態、車両状態などの車両側のニーズに応じた施設の情報を配信することにより、車両側で必要とする施設情報だけが配信され、より効率的に配信することができる。ドライバにとっては、車両側で必要のない煩わしい施設の情報を見ることが無くなる。施設側にとっても、広告費の無駄が無くなる。
【0062】
以上、本発明に係る実施の形態について説明したが、本発明は上記実施の形態に限定されることなく様々な形態で実施される。
【0063】
例えば、本実施の形態では光ビーコンによる路車間通信システムの一つの機能としてのインフラ連携広告・最新情報配信システムに適用したが、路側装置として光ビーコン以外の他の路車間通信システムを利用してもよいし、車両側の装置もナビゲーションシステムなどに組み込むなど他の装置構成としてもよい。
【0064】
また、本実施の形態ではナビゲーションシステムを利用して広告などの情報を表示及び施設までの経路案内を行う構成としたが、ナビゲーションシステムが搭載されていない車両の場合には車載通信装置のECUからディスプレイに表示制御信号やスピーカに音声制御信号を直接送信するようにしてもよい。
【0065】
また、本実施の形態では光ビーコン側で車両が赤信号で停止するか否かを予測する構成としたが、車両側あるいは路側に配備される車両監視装置などにおいて赤信号で停止するか否かを予測し、その予測情報を光ビーコン側に送信する構成としてもよい。
【0066】
また、本実施の形態では車両側から光ビーコンにドライバニーズなどをアップリンクし、車両側のニーズに応じた施設の情報を配信する構成としたが、ドライバニーズなどをアップリンクせず、車両側のニーズに関係なく施設の情報を配信するようにしてもよい。この場合、ドライバ入力装置、ドライバ状態検知装置、車両状態検知装置は必要ない。
【0067】
また、本実施の形態では施設の場所の直前か否かを判定し、直前の場合には施設側の走行車線の車両にのみ配信する構成としたが、施設の場所の直前か否かを判定せず、赤信号で停止すると予測した全ての車両に配信するようにしてもよい。
【図面の簡単な説明】
【0068】
【図1】本実施の形態に係るインフラ連携広告・最新情報配信システムの概念図である。
【図2】本実施の形態に係るインフラ連携広告・最新情報配信システムの構成図である。
【図3】本実施の形態に係るインフラ連携広告・最新情報配信システムが構成される交差点周辺の一例である。
【符号の説明】
【0069】
1…インフラ連携広告・最新情報配信システム、10…光ビーコン、11…通信装置、12…光ビーコンヘッド、13…制御装置、13a…データベース、20…車載通信装置、21…光ビーコンアンテナ、22…光ビーコン送受信機、23…ドライバ入力装置、24…ドライバ状態検知装置、25…車両状態検知装置、26…ナビゲーションシステム、27…ディスプレイ、28…スピーカ、29…ECU

【特許請求の範囲】
【請求項1】
路側装置から車両に広告を配信する車両用広告配信システムであって、
信号サイクル情報に基づいて赤信号で停止する車両を予測する停止車両予測手段を備え、
路側装置では、前記停止車両予測手段で停止予測した車両にのみ広告を配信することを特徴とする車両用広告配信システム。
【請求項2】
前記路側装置では、施設が配置される側の走行車線を走行する車両にのみ当該施設の広告を配信することを特徴とする請求項1に記載する車両用広告配信システム。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【公開番号】特開2009−122034(P2009−122034A)
【公開日】平成21年6月4日(2009.6.4)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2007−298028(P2007−298028)
【出願日】平成19年11月16日(2007.11.16)
【公序良俗違反の表示】
(特許庁注:以下のものは登録商標)
1.VICS
【出願人】(000003207)トヨタ自動車株式会社 (59,920)
【Fターム(参考)】