説明

車両用操舵装置

【課題】 運転者の足による安定した操舵操作を可能とし、手の不自由な障害者に車両の運転の機会を与え、また健常者の操舵の負担を軽減する。
【解決手段】 運転者の足により踏圧操作される踏み板3,3に加えられる踏圧力を夫々に取付けた圧力センサ33,33により検出し、これらの圧力センサ33,33の検出結果に基づく操舵制御部5の動作により、操舵機構1に付設された操舵モータ4を制御し、操舵用の車輪10,10の向きを変えて操舵を行わせる。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、運転者によりなされる操舵手段の操作に応じて車両を操舵せしめるための車両用操舵装置に関する。
【背景技術】
【0002】
車両の操舵は、車室の内部において運転者によりなされる操舵手段の操作を、車室の外部に配された操舵機構に伝え、該操舵機構の動作により操舵用の車輪(一般的には左右の前輪)を操向せしめて行われる。
【0003】
このような操舵を行わせるための操舵装置の多くは、操舵機構に機械的に連結され、車室内に延長されたステアリング軸の先端に取付けられたステアリングホイールを操舵手段として備え、このステアリングホイールの回転操作をステアリング軸を介して操舵機構に機械的に伝達し、この伝達に応じた操舵機構の動作により操舵を行わせる構成となっている。
【0004】
一方近年においては、車室内部の操舵手段を車室外部の操舵機構から機械的に分離して配すると共に、操舵機構の一部に操舵用のアクチュエータ(操舵モータ)を付設し、このアクチュエータを前記操舵手段の操作方向及び操作量の検出結果に基づいて動作させ、該アクチュエータの発生力により操舵を行わせる構成とした分離式の操舵装置、所謂、ステアバイワイヤ式の操舵装置が提案されている(例えば、特許文献1参照)。
【0005】
この分離式の操舵装置は、操舵手段の操作量と操舵用のアクチュエータの動作量との対応関係を機械的な制約を受けずに自在に設定することができ、車速の高低、旋回速度、加減速の有無等、走行状態に応じた操舵特性の変更制御に柔軟に対応し得るという利点を有しており、更には、操舵機構との機械的な連結が不要である操舵手段の選択範囲を、構成及び配置の制限を受けずに拡げることが可能であり、このことに着目し、種々の構成の操舵手段を備える操舵装置が従来から提案されている(例えば、特許文献2参照)。
【特許文献1】特開平10−218000号公報
【特許文献2】特開2003−291821号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
さて、前記特許文献2には、中央部を支点として揺動操作される操舵手段、直線経路に沿って移動操作される操舵手段等の多くの操舵手段が提案されており、これらは、操舵のために必要な操作量を減じ、操舵に要する労力負担を軽減すると共に、身体的な障害を有する運転者によっても操作を可能とすることを目的として構成されている。
【0007】
ところが、特許文献2に開示された操舵手段の多くは、ステアリングホイールとの代替使用を前提とし、運転者の手によって操作される構成となっており、手の不自由な運転者による操舵操作を可能とするものではない。また、手によって揺動操作される操舵手段を足の踏圧による揺動操作に置き換えた構成が一部に開示されているが、この構成は、車両の走行中に運転席に着座した姿勢において、手と同等の安定した操作をなし得るか否かに問題がある。
【0008】
このように特許文献2に開示された操舵装置は、手の不自由な運転者による安定した操舵を可能とするものではなく、このような操舵を可能とする操舵装置は他にも存在しておらず、このことが、手の不自由な障害者を車両の運転から排除する要因となっている。
【0009】
本発明は斯かる事情に鑑みてなされたものであり、運転者の足による安定した操舵操作を可能とし、手の不自由な障害者に車両の運転の機会を与えることができ、一方健常者には、操舵の負担を軽減し運転疲労を緩和することができる車両用操舵装置を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0010】
本発明の第1発明に係る車両用操舵装置は、運転者により操作される操舵部材を車両の操舵機構から機械的に分離して備え、前記操舵機構に備えられた操舵用のアクチュエータを前記操舵部材の操作に応じて動作させて操舵を行わせる構成としてある車両用操舵装置において、運転者の足により踏圧操作される前記操舵部材としての踏み板と、該踏み板に加えられる踏圧力を検出する圧力検出手段と、該圧力検出手段の検出結果に基づいて操舵の方向及び操舵量を求め、前記操舵アクチュエータを駆動制御する制御手段とを備えることを特徴とする車両用操舵装置。
【0011】
また第2発明に係る車両用操舵装置は、第1発明における圧力検出手段が、左,右操舵のために前記踏み板に加えられる踏圧力を各別に検出する圧力センサを備え、これらの圧力センサの検出圧力の偏差の正負により操舵方向を決定し、前記偏差の大きさにより操舵量を決定する構成としてあることを特徴とする。
【発明の効果】
【0012】
本発明においては、運転者の足により踏み板に加えられる踏圧力の検出結果に基づいて操舵アクチュエータを駆動制御して操舵機構を動作させるから、運転席に着座した運転者の足による安定した操舵操作が可能となり、手の不自由な障害者に対しては、車両の運転の機会を与えることができ、また健常者に対しては、操舵の負担を軽減し運転疲労を緩和することが可能となる。
【0013】
また左,右方向の操舵のために踏み板に加えられる踏圧力を各別の圧力センサにより検出し、これらの検出圧力の偏差により操舵方向及び操舵量を決定するから、運転者の足による操舵を確実に行わせることが可能となる等、本発明は優れた効果を奏する。
【発明を実施するための最良の形態】
【0014】
以下本発明をその実施の形態を示す図面に基づいて詳述する。図1は、本発明に係る車両用操舵装置の全体構成を示す模式図である。本図に示す車両用操舵装置は、図示しない車体の左右に配された操舵用の車輪10,10に舵取動作を行わせるための操舵機構1と、操舵のために回転操作されるステアリングホイール(操舵部材)2とが、機械的に分離して配されたステアバイワイヤ式の操舵装置として構成されており、更に、ステアリングホイール2と別体に構成された操舵部材としての左右一対の踏み板3,3を備えている。
【0015】
操舵機構1は、左右方向に延設された筒形をなすハウジング11の内部に支持され、軸長方向に移動する操舵軸12を備えている。ハウジング11の両側に突出する操舵軸12の両端部は、各別のタイロッド13,13を介して操舵用の車輪10,10のナックルアーム14,14に連結されており、操舵軸12の両方向への移動によりタイロッド13,13を介してナックルアーム14,14を押し引きし、前記車輪10,10を左右に操舵する構成となっている。
【0016】
このような操舵機構1には、操舵のために回転駆動される操舵モータ(操舵用のアクチュエータ)4が付設されている。図示の操舵モータ4は、ハウジング11の中途部を適長に亘って大径化してなるモータハウジング40の内側に操舵軸12と同軸上にて回転する筒形のロータ(図示せず)を備えてなり、該ロータの回転を、モータハウジング40の一側に連設された伝動ハウジング41の内部に構成されたボールねじ機構等の運動変換機構を介して操舵軸12に伝え、該操舵軸12を軸長方向に移動させる構成となっている。
【0017】
操舵機構1から分離して配された第1の操舵部材としてのステアリングホイール2は、図示しない車体の適宜部位に支持されたコラムハウジング20から突出するステアリング軸21の先端に固定され、車室内部の運転者により操作可能に対向配置されている。コラムハウジング20の外側には、ステアリングホイール2に操舵反力を加える反力モータ22が取付けられ、ウォームギヤ減速装置等の減速装置(図示せず)を介してステアリング軸21の中途部に伝動構成されており、反力モータ22が回転駆動された場合、この回転力が前記減速装置により減速されてステアリング軸21に付加され、更に、該ステアリング軸21に固定されたステアリングホイール2に操舵反力が加えられるようになしてある。
【0018】
一方、第2の操舵部材としての踏み板3,3は、例えば、車室の床面に運転者の左右の足により踏圧操作可能に配された矩形の平板である。図2は、踏み板3の構成例を示す断面図であり、該踏み板3は、車室の床面30に設けた浅底の凹所31の内部に固設された反力シリンダ32により中央部を支え、凹所31の開口を塞ぎ、床面30と略面一をなして取り付けられている。このように取付けられた踏み板3の4隅は、凹所31の内部に固設された圧力センサ33,33…(図2中には2つのみ図示)に当接させてある。
【0019】
踏み板3を支える反力シリンダ32は、外部からの動作指令に従って動作し、前記踏み板3に、図中に矢符により示す如く、凹所31から抜け出す向きの反力を加える作用をなす。このような作用をなす反力シリンダ32は、例えば、電磁シリンダ、エアシリンダ、油圧シリンダ等により構成することができるが、エア源、油圧源等の周辺機器が不要で構成の簡素化が図れることから、電磁シリンダを用いるのが好ましい。
【0020】
以上の如く構成された踏み板3は、車室の床面30上に載置された運転者の足34により、図中に白抜矢符にて示す如く、反力シリンダ32により付加される反力に抗して踏圧操作され、このとき、踏み板3の4隅に当接する圧力センサ33,33…は、前記反力に抗して踏み板3に加えられる踏圧力に対応する出力信号を発する。これらの圧力センサ33,33…としては、例えば、ロードセルを用いることができる。
【0021】
なお、前述の如く踏み板3の4隅に4つの圧力センサ33,33…を配してあるのは、これらの出力の和、又は平均値を用いることにより、踏み板3に局所的に加えられる踏圧力を高精度に検出可能とするためであり、圧力センサ33の個数は、図示の4つに限らず適宜に選定することができる。
【0022】
また反力シリンダ32は、後述の如く、路面に転接する車輪10,10を介して操舵機構1に実際に加わる操舵反力の変動を、踏み板3を踏圧操作する運転者に体感させるために設けられているものであり、踏み板3の構成に必須の要件ではなく、例えば、反力シリンダ32に代えて、ばね等の弾性部材により踏み板3を支持し、前記弾性部材により加えられる一定の反力に抗して踏み板3の踏圧操作を行わせる構成としてもよい。
【0023】
更に踏み板3は、以上の構成に限らず、運転者の足による踏圧操作が可能であり、このとき加えられる踏圧力の検出が可能であれば、適宜の構成とすることができる。最も簡単には、例えば、一面に感圧フィルムが貼着された踏み板3,3を車室の床面に固定し、前記一面に加えられる踏圧力を、感圧フィルムの抵抗値の変化を媒介として検出する構成とすることができ、また、左右の足により異なる部位を踏圧操作される単一の踏み板3を備え、部位毎の踏圧力を検出する構成とすることもできる。
【0024】
図2に示す如く構成された踏み板3は、図1に示す如く、左右の足により各別に踏圧操作可能に2つ設けられ、夫々の圧力センサ33,33の出力は、操舵制御部5に与えられている。操舵制御部5は、踏み板3,3の踏圧操作に応じて操舵機構1を動作させるべく、後述の如く操舵モータ4を制御し、また操舵機構1に実際に加わる操舵反力を踏み板3,3に付加すべく反力シリンダ32を制御する動作をなす。なお図1には、踏み板3,3の夫々に単一の圧力センサ33,33のみを示し、図面の煩雑化を避けるようにしてある。
【0025】
操舵制御部5はまた、ステアリングホイール2の回転操作に応じて操舵モータ4を同様に制御し、また操舵機構1に実際に加わる操舵反力をステアリングホイール2に付加すべく反力モータ22を制御する動作をなす。この制御に用いられるステアリングホイール2の操作角は、コラムハウジング20の中途部に付設された操舵角センサ23により検出され、操舵制御部5に与えられている。
【0026】
また操舵制御部5には、操舵機構1に付設された実舵角センサ15により、操舵用の車輪10,10に実際に生じている実舵角の検出結果が与えられている。この実舵角センサ15は、図1に示す如く、操舵軸12とタイロッド13との連結部の軸長方向の移動量を検出する構成とすることができる。また操舵制御部5には、一側のタイロッド13に付設されたタイロッド軸力センサ16の検出結果が与えられている。この検出結果は、操舵制御部5において、操舵に伴って操舵機構1に加わる実反力を示す信号として、反力モータ22又は反力シリンダ32の制御に用いられる。更に操舵制御部5には、車速、ヨーレート、横加速度、前後加速度等、操舵に影響を与える走行状態の検出結果が、車両の各部に設置された走行状態センサ24から与えられている。
【0027】
以上の如く構成された本発明に係る車両用操舵装置において、ステアリングホイール2の回転操作に応じて操舵モータ4を対象としてなされる操舵制御部5の操舵制御動作は、例えば、操舵角センサ23により検出されるステアリングホイール2の操作角度に基づいて目標舵角を求め、この目標舵角と、実舵角センサ15により検出される操舵用の車輪10,10の実舵角との偏差に基づくフィードバック制御により行われる。このとき走行状態センサ24から与えられる走行状態の検出結果は、目標舵角の補正に用いられる。この補正は、例えば、車速の増大に伴って目標舵角を減じ、また、ヨーレート、横加速度により定まる車両の旋回程度の増大に伴って目標舵角を減じるようになされる。
【0028】
以上の操舵制御動作により操舵軸12は、操舵モータ4からの伝動によりステアリングホイール2の操作角度に対応する目標舵角を得るべく軸長方向に移動せしめられ、この移動によりステアリングホイール2の操作に応じた操舵が実現される。このとき、走行状態に基づく目標舵角の補正により、ステアリングホイール2の操作角度と操舵軸12の移動量との対応関係が変わり、走行状態に応じた操舵特性が得られる。
【0029】
またこのとき操舵制御部5は、反力モータ22を対象とする反力制御動作を行う。この反力制御動作は、例えば、タイロッド軸力センサ16により検出される実反力に基づいてステアリングホイール2に付与すべき目標反力を求め、この目標反力を得るべく反力モータ22を駆動制御せしめて行われる。このとき走行状態センサ24から与えられる走行状態の検出結果は、前記目標反力の補正に用いられる。この補正は、例えば、車速及び旋回程度の増大に伴って目標反力を増し、また、前後加速度により定まる車両の減速程度の増大に伴って目標反力を増すように行われる。
【0030】
以上の反力制御動作によりステアリングホイール2には、ステアリング軸21に加わる反力モータ22の回転力が操舵反力として付与される。この操舵反力は、操舵機構1に実際に加わる反力を走行状態に応じて補正したものであり、ステアリングホイール2を回転操作する運転者に良好な操舵感を体感させることができる。
【0031】
操舵制御部5の操舵制御動作は、第2の操舵部材としての踏み板3,3の踏圧操作がなされた場合においても、操舵モータ4を制御対象として以下の如く行われる。図3は、踏み板3,3の踏圧操作に応じた操舵制御動作の内容を示すフローチャートである。
【0032】
この操舵制御動作は、操舵部材としての踏み板3,3の使用を、例えば、適宜の切り換えスイッチの操作により指定されることにより開始され、操舵制御部5は、左右の踏み板3,3に加えられる踏圧力を取り込み(ステップ1)、次いで、これらの踏圧力の偏差を算出する(ステップ2)。
【0033】
ステップ1における踏圧力は、踏み板3,3に夫々付設された圧力センサ33,33…の出力信号として取り込まれる。前述の如く、夫々の踏み板3,3に4つの圧力センサ33,33…が設けられている場合、これらの出力信号の平均値が踏圧力として算出され、これにより踏圧力の検出精度を高めることができる。
【0034】
ステップ2における偏差の算出は、一方の踏み板3の踏圧力から他方の踏み板3の踏圧力を減じてなされ、このように算出される偏差の正負が操舵方向として認識され、偏差の絶対値の大きさが操舵量として認識される。例えば、左側の踏み板3の踏圧力から右側の踏み板3の踏圧力を減じるようにした場合、算出された偏差が正値である場合、操舵方向は左となり、同じく負値である場合、操舵方向は右となる。
【0035】
以上の如き偏差の算出後、操舵制御部5は、算出された偏差(の絶対値)が予め設定された不感帯値αを超えているか否かを判定し(ステップ3)、超えていると判定された場合、算出された偏差に基づいて目標舵角を算出し(ステップ4)、この目標舵角を得るべく操舵モータ4を駆動制御する操舵制御動作を行う(ステップ5)。
【0036】
ステップ5の操舵制御動作は、ステアリングホイール2の操作角度に基づく制御動作と全く同様に、ステップ4において算出された目標舵角と、実舵角センサ15により検出される操舵用の車輪10,10の実舵角との偏差に基づくフィードバック制御により行われる。なお、このとき走行状態センサ24から与えられる走行状態の検出結果は、ステップ4において算出された目標舵角の補正に用いられ、この補正は、例えば、車速の増大に伴って目標舵角を減じ、また、ヨーレート、横加速度により定まる車両の旋回程度の増大に伴って目標舵角を減じるようになされる。
【0037】
以上の操舵制御動作により操舵軸12は、操舵モータ4からの伝動により、左右の踏み板3,3に加えられる踏圧力の偏差に対応する目標舵角を得るべく軸長方向に移動せしめられ、この移動により踏み板3,3の踏圧操作に応じた操舵が実行される。このとき、走行状態に基づく目標舵角の補正により、踏圧力の偏差と操舵軸12の移動量との対応関係が変わり、走行状態に応じた操舵特性が得られる。
【0038】
一方、ステップ3において算出された偏差が不感帯値以下であると判定された場合、操舵制御部5は、次いで踏圧力の有無を判定し(ステップ6)、踏圧力有りと判定された場合、保舵制御動作を行い(ステップ7)、踏圧力無しと判定された場合、中立戻し制御を行う(ステップ8)。
【0039】
ステップ6における判定は、ステップ1において取り込まれた左右の踏圧力を予め設定された不感帯値と比較してなされ、左右の踏圧力が不感帯値を超えている場合、踏圧力有りと判定され、左右の踏圧力が不感帯値以下である場合、踏圧力無しと判定される。踏圧力有りの場合にステップ7において行われる保舵制御動作は、現状の操舵角を維持する動作であり、例えば、タイロッド軸力センサ16により検出される実反力に対応する移動力を操舵軸12に加えるべく操舵モータ4を駆動するようになされる。踏圧力無しの場合にステップ8において行われる中立戻し制御は、操舵輪10,10を直進位置にまで戻すべく操舵モータ4を駆動する動作であり、実舵角センサ15により検出される操舵用の車輪10,10の実舵角に基づくフィードバック制御により行われる。
【0040】
以上の如き保舵制御動作及び中立戻し制御動作がなされる結果、運転者は、左右の踏み板3,3に均等な踏圧力を加えることにより現状の操舵状態を保つことができ、左右の踏み板3,3の踏圧を解除することにより中立復帰を果たすことができる。なおステップ6での判定は、不感帯値との比較によりなされ、踏み板3,3上に単に足を載せている程度の状態では踏圧力無しと判定されるから、中立復帰のために踏み板3,3から足を離す必要はない。
【0041】
またこの間操舵制御部5は、左右の踏み板3,3の夫々に付設された反力シリンダ32,32を対象とする反力制御動作を行う。この反力制御動作は、ステアリングホイール2に付設された反力モータ22に対する反力制御動作と全く同様に、例えば、タイロッド軸力センサ16により検出される実反力に基づいて踏み板3,3に付与すべき目標反力を求め、この目標反力を発生すべく反力シリンダ32,32を動作せしめる手順にて行われる。このとき走行状態センサ24による走行状態の検出結果は、前記目標反力の補正に用いられる。この補正は、例えば、車速及び旋回程度の増大に伴って目標反力を増し、また、前後加速度により定まる車両の減速程度の増大に伴って目標反力を増すように行われる。
【0042】
以上の反力制御動作により左右の踏み板3,3には、各別の反力シリンダ32,32の発生力が踏圧に抗する向きの押し上げ力として加えられ、これらの踏み板3,3に操舵反力として付与される。この操舵反力は、操舵機構1に実際に加わる反力を走行状態に応じて補正したものであり、操舵のために踏み板3,3を踏圧操作する運転者に良好な操舵感を体感させることができる。
【0043】
以上の如く本発明に係る操舵装置においては、運転者の左右の足による踏み板3,3の踏圧操作に応じて操舵を行わせることができ、手の不自由な障害者に車両の運転の機会を与えることが可能となる。なおこの場合、アクセル操作及びブレーキ操作を、手を使用して実施する必要があるが、これらは、操舵操作に比較して簡易な操作であり、手の不自由な運転者にとって大きな負担となる虞れはない。
【0044】
また踏み板3,3の踏圧による操舵は、健常者にとっても、操舵の負担を軽減し運転疲労を緩和するために有効であり、例えば、高速道路でのクルーズ運転中に切り換えスイッチを操作し、適宜に選択して行わせることができる。
【図面の簡単な説明】
【0045】
【図1】本発明に係る車両用操舵装置の全体構成を示す模式図である。
【図2】踏み板の構成例を示す断面図である。
【図3】踏み板の踏圧操作に応じた操舵制御動作の内容を示すフローチャートである。
【符号の説明】
【0046】
1 操舵機構
3 踏み板
4 操舵モータ(アクチュエータ)
5 操舵制御部(制御手段)
33 圧力センサ(圧力検出手段)

【特許請求の範囲】
【請求項1】
運転者により操作される操舵部材を車両の操舵機構から機械的に分離して備え、前記操舵機構に備えられた操舵用のアクチュエータを前記操舵部材の操作に応じて動作させて操舵を行わせる構成としてある車両用操舵装置において、
運転者の足により踏圧操作される前記操舵部材としての踏み板と、
該踏み板に加えられる踏圧力を検出する圧力検出手段と、
該圧力検出手段の検出結果に基づいて操舵の方向及び操舵量を求め、前記操舵アクチュエータを駆動制御する制御手段と備えることを特徴とする車両用操舵装置。
【請求項2】
前記圧力検出手段は、左,右操舵のために前記踏み板に加えられる踏圧力を各別に検出する圧力センサを備え、これらの圧力センサの検出圧力の偏差の正負により操舵方向を決定し、前記偏差の大きさにより操舵量を決定する構成としてある請求項1記載の車両用操舵装置。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【公開番号】特開2006−219025(P2006−219025A)
【公開日】平成18年8月24日(2006.8.24)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2005−34883(P2005−34883)
【出願日】平成17年2月10日(2005.2.10)
【出願人】(302066630)株式会社ファーベス (138)
【出願人】(000001247)株式会社ジェイテクト (7,053)
【Fターム(参考)】