説明

車両用灯具

【課題】 高出力の光源を使用する場合でも、合成樹脂製のレンズを用いることができる車両用灯具を提供する。
【解決手段】 合成樹脂製のレンズ5と、光源4と、リフレクタ3を備えた構造で、リフレクタ3の内面で反射された光源4の光L1がレンズ5を透過して外部に照射される車両用灯具であって、前記リフレクタ3の内面に、赤外線吸収層7を形成した。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、車両用灯具に関するものである。
【背景技術】
【0002】
車両用灯具、例えば自動車のヘッドランプ、フォグランプ、テイルランプ、ルームランプ等は、レンズと、光源と、リフレクタとを備え、リフレクタの内面で反射された光源の光がレンズを透過して外部に照射される構造になっている。光源としては、例えばヘッドランプの場合、ハロゲン又はキセノンバルブ等が用いられる(例えば、特許文献1。)。
【特許文献1】特開2004−127830号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0003】
しかしながら、このような従来の技術にあっては、リフレクタの内面で反射した光源の光が、レンズを透過して外部に照射されるため、光源の出力によっては、レンズの温度が最高部位で135℃程度に上昇し、合成樹脂製レンズでは、長期的点灯による変色等の熱劣化を招くおそれがあった。そのため、高出力の光源を使用する場合には、低コスト化や軽量化の面ですぐれた合成樹脂製レンズを用いることができず、仕方なくガラス製のレンズが使用されていた。
【0004】
本発明は、このような従来の技術に着目してなされたものであり、高出力の光源を使用する場合でも、合成樹脂製のレンズを用いることができる車両用灯具を提供するものである。
【課題を解決するための手段】
【0005】
請求項1記載の発明は、合成樹脂製のレンズと、光源と、リフレクタを備えた構造で、リフレクタの内面で反射された光源の光がレンズを透過して外部に照射される車両用灯具であって、前記リフレクタの内面に、赤外線吸収層を形成したことを特徴とする。
【0006】
請求項2記載の発明は、赤外線吸収層が、赤外線を吸収する塗料をコーティングすることにより形成されていることを特徴とする。
【0007】
請求項3記載の発明は、赤外線を吸収する塗料が、透明性及び耐熱性を有するアクリル又はシリコン樹脂をベースとして、少なくともアンチモンドープ酸化錫又はインジウムドープ酸化錫の化合物を含有していることを特徴とする。
【発明の効果】
【0008】
請求項1記載の発明によれば、リフレクタの内面に赤外線吸収層を形成したため、光源の光がリフレクタの内面で反射される際に赤外線が吸収され、レンズを透過する反射光に含まれる赤外線が減少する。熱となる赤外線成分が減少するため、レンズの温度が高くならず、高出力の光源を使用する場合でも、合成樹脂製のレンズを用いることができる。
【0009】
請求項2記載の発明によれば、赤外線を吸収する塗料をコーティングすることで赤外線吸収層を形成するため、赤外線吸収層の形成が容易である。
【0010】
請求項3記載の発明によれば、赤外線を吸収する塗料が、透明性及び耐熱性を有するアクリル又はシリコン樹脂をベースとして、少なくともアンチモンドープ酸化錫又はインジウムドープ酸化錫の化合物を含有しているため、赤外線のみを吸収し、可視光線は透過する性能を有するので、光源の光がリフレクタの内面で反射される際に可視光は低減せず、灯具としての光学的性能の低下を防止することができる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0011】
本発明は、高出力の光源を使用する場合でも、合成樹脂製のレンズを用いることができる車両用灯具を提供するという目的を、合成樹脂製のレンズと、光源と、リフレクタを備えた構造で、リフレクタの内面で反射された光源の光がレンズを透過して外部に照射される車両用灯具であって、前記リフレクタの内面に、赤外線吸収層を形成したことで、実現した。以下、本発明の実施例を図面に基づいて説明する。
【実施例】
【0012】
図1及び図2は、本発明の一実施例を示す図である。この実施例は、自動車のヘッドランプ1に関する。ヘッドランプ1は、ケース2の後方にリフレクタ3を備え、その中心には光源4としてのハロゲンランプ又はキセノンランプが設けられている。ケース2の前方には透明樹脂製のレンズ5が設けられている。
【0013】
そして、光源4からの光L1は、直接又は、リフレクタ3の内面で反射された後に、レンズ5を透過して、外部に照射される。リフレクタ3の内面は、金属製の反射膜6で形成されている。また、この反射膜6には、赤外線吸収層7が形成されている。赤外線吸収層7は、赤外線を吸収する塗料をコーティングすることにより形成されている。従って、赤外線吸収層7の形成が容易である。
【0014】
赤外線を吸収する塗料としては、透明性及び耐熱性を有するアクリル又はシリコン樹脂をベースとし、そこに赤外線吸収性能を有する無機又は有機の化合物を添加していて、アンチモンドープ酸化錫またはインジウムドープ酸化錫が好適である。これらの化合物は、赤外線吸収層7の透明性を維持するために、例えば、50nm以下の粒子として添加される。
【0015】
光源4からの光L1の波長は、赤外線を含む300〜2000nm近傍の範囲であり、そのままリフレクタ3で反射してレンズ5を透過させたのでは、レンズ5の温度が上昇するが、本発明では、リフレクタ3で反射する際に、赤外線吸収層7により、光源4の光L1から赤外線をカットし、可視光と赤外線が吸収され、可視光と光エネルギーが減少した赤外線からなる波長範囲の反射光L2として、レンズ5を透過させる。従って、レンズ5の温度が上昇せず、高出力の光源4を使用しても、合成樹脂製のレンズ5に変色等の熱劣化が生じることはない。
【0016】
また、赤外線を吸収する塗料が、透明性及び耐熱性を有するアクリル又はシリコン樹脂をベースとして赤外線を吸収する塗料が、透明性及び耐熱性を有するアクリル又はシリコン樹脂をベースとして、少なくともアンチモンドープ酸化錫又はインジウムドープ酸化錫の化合物を含有しているため、赤外線のみを吸収し、可視光線は透過する性能を有するので、光源4の光L1がリフレクタ3の内面の反射膜6で反射される際に可視光は低減せず、灯具としての光学的性能の低下を防止することができる。
【産業上の利用可能性】
【0017】
以上の実施例では、ヘッドランプ1を例にしたが、これに限定されず、本発明はその他の車両用灯具にも適用することができる。
【図面の簡単な説明】
【0018】
【図1】本発明の一実施形態に係る灯具を示す断面図。
【図2】図1中矢示DA部分を示す拡大断面図。
【符号の説明】
【0019】
1 ヘッドランプ(灯具)
2 ケース
3 リフレクタ
4 光源
5 レンズ
6 反射膜(内面)
7 赤外線吸収層
L1 光源の光
L2 反射光

【特許請求の範囲】
【請求項1】
合成樹脂製のレンズと、光源と、リフレクタとを備えた構造で、リフレクタの内面で反射された光源の光がレンズを透過して外部に照射される車両用灯具であって、
前記リフレクタの内面に、赤外線吸収層を形成したことを特徴とする車両用灯具。
【請求項2】
請求項1記載の車両用灯具であって、
赤外線吸収層が、赤外線を吸収する塗料をコーティングすることにより形成されていることを特徴とする車両用灯具。
【請求項3】
請求項2記載の車両用灯具であって、
赤外線を吸収する塗料が、透明性及び耐熱性を有するアクリル又はシリコン樹脂をベースとして、少なくともアンチモンドープ酸化錫又はインジウムドープ酸化錫の化合物を含有していることを特徴とする車両用灯具。

【図1】
image rotate

【図2】
image rotate


【公開番号】特開2007−122974(P2007−122974A)
【公開日】平成19年5月17日(2007.5.17)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2005−311721(P2005−311721)
【出願日】平成17年10月26日(2005.10.26)
【出願人】(000000136)市光工業株式会社 (774)
【Fターム(参考)】