説明

車両用無段変速機の変速制御装置

【課題】運転者の加速意図に沿って手動変速モードから自動変速モードへの切換制御を行う車両用無段変速機の変速制御装置を提供する。
【解決手段】エンジン12から出力される駆動力に関連してその駆動力が大きいほど大きな値に設定される駆動力関連値を算出する駆動力関連値算出手段102を備え、第2切換手段108は、自動変速制御手段92によって変速制御される自動変速モードに対応して駆動力関連値算出手段102により算出される第1の駆動力関連値と、手動変速制御手段94によって変速制御される手動変速モードに対応して駆動力関連値算出手段102により算出される第2の駆動力関連値との関係に基づいて手動変速モードから自動変速モードへの切換制御を行うものであることから、運転者の加速意図を反映する駆動力関連値に基づいて自動的に前記手動変速モードを解除し、自動変速モードへの切換を行うことができる。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、車両用無段変速機の変速制御装置に関し、特に、運転者の操作に応じて変速比を段階的に変化させる手動変速モードから自動変速モードへの切換制御の改良に関する。
【背景技術】
【0002】
走行用の動力源と駆動輪との間に配設され、変速比を連続的に変化させることができる無段変速機と、運転者の操作に応じてその無段変速機の変速比を、予め段階的に設定された複数の変速比の間で変化させる手動変速制御手段を有する車両用無段変速機の変速制御装置が知られている。例えば、特許文献1に記載された無段変速装置の変速制御装置がそれである。この技術によれば、運転者の手動変速操作に応答して、前記無段変速機の変速比を予め定められた複数の変速比の何れかとなるように段階的に変化させる一時的な手動変速モード(テンポラリマニュアルシフトモード)を実現できると共に、所定加速度以下である状態が所定時間以上続いた場合、アクセルペダル開放である状態が所定時間以上続いた場合、及び車速が所定速度以下である場合の何れかの解除条件が成立した際には、上記一時的な手動変速モードを解除して自動変速モードへ移行させることで、運転者に違和感を与えることなく好適に手動変速モードから自動変速モードへの切換を行うことができるとされている。
【0003】
【特許文献1】特開2006−97789号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
しかし、前述したような従来の技術では、一時的な手動変速モードによる走行中において運転者がアクセルペダルを踏み込んでいった際にも、手動変速モードから自動変速モードへの切換が行われないことから、変速段(変速比)がホールド制御されて運転者の意図に沿った加速が行われないおそれがあった。このため、運転者の加速意図に沿って手動変速モードから自動変速モードへの切換制御を行う車両用無段変速機の変速制御装置の開発が求められていた。
【0005】
本発明は、以上の事情を背景として為されたものであり、その目的とするところは、運転者の加速意図に沿って手動変速モードから自動変速モードへの切換制御を行う車両用無段変速機の変速制御装置を提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0006】
斯かる目的を達成するために、本発明の要旨とするところは、走行用の動力源と駆動輪との間の駆動力伝達経路に設けられて変速比を連続的に変化させることができる無段変速機と、運転者の所定操作に応じてその無段変速機の変速比を予め段階的に設定された複数の変速比の間で変化させる手動変速制御手段と、予め定められた関係から車両の走行状態に基づいて前記無段変速機の変速比を変化させる自動変速制御手段と、運転者の所定操作に応じて、前記自動変速制御手段によって変速制御される自動変速モードから前記手動変速制御手段によって変速制御される手動変速モードへの切換制御を行う第1切換手段と、所定の条件が満たされた場合に、前記手動変速制御手段によって変速制御される手動変速モードから前記自動変速制御手段によって変速制御される自動変速モードへの切換制御を行う第2切換手段とを、備えた車両用無段変速機の変速制御装置であって、前記動力源から出力される駆動力に関連してその駆動力が大きいほど大きな値に設定される駆動力関連値を算出する駆動力関連値算出手段を備え、前記第2切換手段は、前記自動変速モードに対応して前記駆動力関連値算出手段により算出される第1の駆動力関連値と、前記手動変速モードに対応して前記駆動力関連値算出手段により算出される第2の駆動力関連値との関係に基づいて前記手動変速モードから自動変速モードへの切換制御を行うことを特徴とするものである。
【発明の効果】
【0007】
このようにすれば、前記動力源から出力される駆動力に関連してその駆動力が大きいほど大きな値に設定される駆動力関連値を算出する駆動力関連値算出手段を備え、前記第2切換手段は、前記自動変速モードに対応して前記駆動力関連値算出手段により算出される第1の駆動力関連値と、前記手動変速モードに対応して前記駆動力関連値算出手段により算出される第2の駆動力関連値との関係に基づいて前記手動変速モードから自動変速モードへの切換制御を行うものであることから、運転者の加速意図を反映する駆動力関連値に基づいて自動的に前記手動変速モードを解除し、自動変速モードへの切換を行うことができる。すなわち、運転者の加速意図に沿って手動変速モードから自動変速モードへの切換制御を行う車両用無段変速機の変速制御装置を提供することができる。
【0008】
ここで、好適には、前記第2切換手段は、前記自動変速モードに対応して前記駆動力関連値算出手段により算出される第1の駆動力関連値が、前記手動変速モードに対応して前記駆動力関連値算出手段により算出される第2の駆動力関連値よりも大きい場合に前記手動変速モードから自動変速モードへの切換制御を行うものである。このようにすれば、運転者の加速意図に沿って実用的な態様で手動変速モードから自動変速モードへの切換制御を行うことができる。
【0009】
また、好適には、前記第2切換手段は、前記自動変速モードに対応して前記駆動力関連値算出手段により算出される第1の駆動力関連値が、前記手動変速モードに対応して前記駆動力関連値算出手段により算出される、その時点における変速比よりも少なくとも1段階低い変速比とした際の第2の駆動力関連値よりも大きい場合に前記手動変速モードから自動変速モードへの切換制御を行うものである。このようにすれば、運転者の加速意図に沿って実用的な態様で手動変速モードから自動変速モードへの切換制御を行うことができる。
【0010】
また、好適には、前記第2切換手段は、前記自動変速モードに対応して前記駆動力関連値算出手段により算出される第1の駆動力関連値が、前記手動変速モードに対応して前記駆動力関連値算出手段により算出される第2の駆動力関連値よりも所定値以上大きい場合に前記手動変速モードから自動変速モードへの切換制御を行うものである。このようにすれば、運転者の加速意図に沿って実用的な態様で手動変速モードから自動変速モードへの切換制御を行うことができる。
【0011】
また、好適には、前記所定値は、予め定められた関係から車両の走行状態に基づいて設定されるものである。このようにすれば、前記手動変速モードから自動変速モードへの切換条件を好適に定めることができる。
【0012】
また、好適には、前記駆動力関連値は、前記駆動源の目標回転速度である。このようにすれば、前記手動変速モードから自動変速モードへの切換条件を好適に定めることができる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0013】
以下、本発明の好適な実施例を図面に基づいて詳細に説明する。
【実施例】
【0014】
図1は、本発明が好適に適用される車両用駆動装置10の骨子図である。この車両用駆動装置10は、FF(フロントエンジン・フロントドライブ)型車両に好適に採用されるものであり、走行用の動力源として機能するエンジン12を備えている。このエンジン12は、例えばガソリンエンジンやディーゼルエンジン等、所定の燃料を燃焼させて動力を出力させる内燃機関であり、そのエンジン12から出力される駆動力は、トルクコンバータ14、前後進切換装置16、ベルト式の無段変速機(CVT)18、及び減速歯車20を介して差動歯車装置22に伝達され、左右の駆動輪24l、24r(以下、特に区別しない場合には単に駆動輪24という)へ分配される。
【0015】
トルクコンバータ14は、上記エンジン12のクランク軸32に連結されたポンプ翼車14p及びタービン軸34を介して上記前後進切換装置16に連結されたタービン翼車14tを備えており、流体を介して動力伝達を行う流体式動力伝達装置である。また、それらポンプ翼車14p及びタービン翼車14tの間にはロックアップクラッチ26が設けられており、そのロックアップクラッチ26により上記ポンプ翼車14p及びタービン翼車14tを連結して一体回転させることができるようになっている。また、上記ポンプ翼車14pには、上記無段変速機18による変速制御を行うための油圧やベルト挟圧力を発生させたり、或いは上記車両用駆動装置10の各部に潤滑油を供給したりするための油圧を発生する機械式のオイルポンプ28が設けられている。
【0016】
前記前後進切換装置16は、ダブルピニオン型の遊星歯車装置にて構成されている。前記トルクコンバータ14のタービン軸34は、その前後進切換装置16を構成するサンギヤ16sに連結され、前記無段変速機18の入力軸36はキャリア16cに連結されている。そして、それらキャリア16cとサンギヤ16sとの間には直結クラッチ38が配設されており、その直結クラッチ38が係合させられると前記前後進切換装置16は一体回転させられてタービン軸34が入力軸36に直結され、前進方向の駆動力が駆動輪24に伝達される。また、上記リングギヤ16rとハウジング30との間に配設された反力ブレーキ40が係合させられると共に上記直結クラッチ38が解放されると、上記入力軸36はタービン軸34に対して逆回転させられ、後進方向の駆動力が駆動輪24に伝達される。また、上記直結クラッチ38及び反力ブレーキ40が共に解放されると、前記エンジン12と無段変速機18との間の動力伝達が遮断される。ここで、好適には、上記直結クラッチ38及び反力ブレーキ40は何れも油圧式摩擦係合装置である。
【0017】
前記無段変速機18は、上記入力軸36に連結されてその入力軸36と一体的に回転させられる、V溝幅が可変の入力側可変プーリ42と、出力軸44に連結されてその出力軸44と一体的に回転させられる、V溝幅が可変の出力側可変プーリ46と、それら可変プーリ42、46に巻き掛けられた伝動ベルト48とを備えて構成されており、上記可変プーリ42、46と伝動ベルト48との間の摩擦力を介して動力伝達が行われる。上記可変プーリ42、46は、V溝幅を変更するための油圧シリンダを備えて構成されており、上記入力側可変プーリ42の油圧シリンダの油圧が変速制御回路50(図2を参照)によって制御されることにより両可変プーリ42、46のV溝幅が変化して上記伝動ベルト48の掛かり径(有効径)が変更され、変速比γ(=入力軸回転速度NIN/出力軸回転速度NOUT)が連続的に変化させられるようになっている。また、上記出力側可変プーリ46の油圧シリンダの油圧は、上記伝動ベルト48が滑りを生じないように挟圧力制御回路52(図2を参照)により入力トルク及び変速比γに応じて調圧制御される。
【0018】
図2は、前記無段変速機18を制御するために前記車両用駆動装置10に備えられたCVTコントローラ60を例示する図である。このCVTコントローラ60は、CPU、RAM、ROM、及び入出力インタフェース等を有する所謂マイクロコンピュータを含んで構成されており、CPUがRAMの一時記憶機能を利用しつつROMに予め記憶されたプログラムに従って信号処理を行うことにより、前記無段変速機18の変速制御やベルト挟圧力制御等を行う。上記CVTコントローラ60には、レバーポジションセンサ62、アクセル操作量センサ64、エンジン回転速度センサ66、出力軸回転速度センサ68、入力軸回転速度センサ70、タービン回転速度センサ72等から、それぞれシフト操作装置75におけるシフトレバー74のレバーポジションPL、アクセルペダルの操作量θACC、エンジン回転速度NE、出力軸回転速度NOUT(車速Vに対応)、入力軸回転速度NIN、タービン回転速度NT等を表す信号が供給されると共に、モード切換スイッチ76から手動変速モード選択信号SMN、アップシフトスイッチ78及び110からそれぞれアップシフト信号SUP及びSSUP、ダウンシフトスイッチ80及び112からダウンシフト信号SDWN及びSSDWNが、それぞれ供給される。ここで、上記アクセル操作量θACCは運転者の出力要求量、換言すれば、前記エンジン12から出力される駆動力要求量に相当する。また、上限車速入力装置86からは、運転者によって入力された、運転者の想定する車速の上限値である上限車速Vsup(km/h)の値が供給される。この上限車速入力装置86は、例えば、車両に設けられた図示しないカーナビゲーションシステムにおけるタッチパネルディスプレイ装置上に、ソフトウェアにより設けられたテンキー等である。
【0019】
上記シフト操作装置75は、例えば、運転者により切換操作される前記シフトレバー74を有して運転席の横等に配設されるものであり、例えば図3に示すようにレバーポジションPLとして駐車用のPポジション、後進走行用のRポジション、動力伝達を遮断するNポジション、前記無段変速機18の全変速領域を使って自動変速しながら前進走行するDポジションが、車両の前後方向に備えられている。更に、Dポジションの横には、手動変速モード選択用のMポジションが備えられ、そして、Mポジションの前後に、アップシフト用の「+」位置、及びダウンシフト用の「−」位置が設けられている。上記シフトレバー74は、Mポジションから上記「+」位置及び「−」位置へ傾動操作できるようにすると共に、スプリング等で自動的にMポジションへ復帰するようにされている。また、上記シフトレバー74がMポジションへ操作されたことは上記レバーポジションセンサ62によって検出され、それにより手動変速モードへ切り換えられる。また、「+」位置及び「−」位置への傾動操作はそれぞれ上記アップシフト検出スイッチ110及びダウンシフト検出スイッチ112により検出され、それにより変速段をアップ及びダウンさせる。
【0020】
上記Dポジションは、前記無段変速機18の変速比γを自動的に連続的に変化させる前記自動変速モードを選択するポジションである。また、上記Mポジションは運転者のアップダウン操作に従って段階的に変化させる手動変速モードを選択するポジションである。前記レバーポジションセンサ62により前記シフトレバー74がDポジションからMポジションに移動させられたことが検出され、前記CVTコントローラ60にレバーポジション信号PLが送られた場合には、そのCVTコントローラ60により自動変速モードから手動変速モードへの切換が行われる。また、前記シフトレバー74が「+」位置へ傾動させられたことがアップシフト検出スイッチ110により検出された場合には、前記アップシフト信号SSUPが出力されて変速段が一段上に変化させられる。また、前記シフトレバー74が「−」位置へ傾動させられたことがダウンシフト検出スイッチ112により検出された場合には、前記ダウンシフト信号SSDWNが出力されて変速段が一段下に変化させられる。斯かる手動変速モードにおける変速制御に関しては、図7等を用いて後述する。
【0021】
前記モード切換スイッチ76、アップシフトスイッチ78、及びダウンシフトスイッチ80は、好適には、図4に示すように運転席のステアリングホイール82に設けられている。前記モード切換スイッチ76は、前記無段変速機18の変速比γを自動的に連続的に変化させる自動変速モードと、運転者のアップダウン操作に従って段階的に変化させる手動変速モードとを切り換えるためのものであり、押込み操作される毎にON、OFFが切り換わり、ON状態で前記手動変速モード選択信号SMNが出力される。また、前記アップシフトスイッチ78及びダウンシフトスイッチ80は、手動変速モード時に変速段をアップダウン操作するためのものであり、上記ステアリングホイール82の左右に一対ずつ設けられており、前記アップシフトスイッチ78はステアリングホイール82の表側(運転者側)に配設され、ダウンシフトスイッチ80はステアリングホイール82の裏側に配設されている。これらアップシフトスイッチ78及びダウンシフトスイッチ80は自動復帰型のスイッチで、押込み操作される毎に前記アップシフト信号SUP、ダウンシフト信号SDWNが出力され、変速段が1段ずつ上下変化させられる。
【0022】
図5は、前記CVTコントローラ60に備えられた制御機能の要部を説明する機能ブロック線図である。この図5に示す変速制御手段90は、前記無段変速機18の変速比γを制御する。具体的には、前記入力側可変プーリ42の油圧シリンダの油圧を前記変速制御回路50を介して制御することにより両可変プーリ42、46のV溝幅を変化させて前記伝動ベルト48の掛かり径(有効径)を変更し、変速比γ(=入力軸回転速度NIN/出力軸回転速度NOUT)を連続的に変化させる。また、自動変速モードにおける変速制御及び手動変速モードにおける変速制御を実行するために、自動変速制御手段92、手動変速制御手段94、初期変速段判定手段96、及び変速比設定手段98を備えている。
【0023】
変速モード切換手段104は、前記無段変速機18が自動変速モード又は手動変速モードの何れにあるかについて、前記レバーポジションセンサ62及びモード切換スイッチ76から供給される信号に基づいて判断すると共に、それら自動変速モード及び手動変速モードを適宜切り換える。斯かるモード切換制御を行うために、前記モード切換スイッチ76等の操作に応じて、自動変速モードから手動変速モードへの切換制御を行う第1切換手段106と、後述するように所定の条件が満たされた場合に、手動変速モードから自動変速モードへの切換制御を行う第2切換手段108とを、備えている。
【0024】
前記自動変速制御手段92は、前記シフトレバー74が前記Dポジションへ操作されることで前記変速モード切換手段104により自動変速モードであると判定された場合には、前記無段変速機18の変速比γを車両の運転状態に応じて自動的に連続的に変化させる変速制御を実行する。例えば、図6に示すような自動変速マップから運転者の出力要求量を表すアクセル操作量θACC及び車速V(出力軸回転速度NOUTに対応)に基づいて入力側の目標回転速度NINTを算出し、実際の入力軸回転速度NINが目標回転速度NINTと一致するように、それらの偏差に応じて前記無段変速機18の変速制御を行う。具体的には、前記変速制御回路50に備えられた図示しない電磁開閉弁等をフィードバック制御して、前記入力側可変プーリ42の油圧シリンダに対する作動油の供給、排出を制御する。図6のマップは変速条件に相当するものであり、車速Vが低くアクセル操作量θACCが大きい程大きな変速比γとなる目標回転速度NINTが設定されるようになっている。また、車速Vは出力軸回転速度NOUTに対応すると共に、入力軸回転速度NINの目標値である目標回転速度NINTは目標変速比に対応し、前記無段変速機18の最小変速比γminと最大変速比γmaxとの間の範囲内で定められている。図6に示す自動変速マップは、例えば前記CVTコントローラ60に備えられたROM等のマップ記憶装置84に予め記憶されている。
【0025】
前記手動変速制御手段94は、前記シフトレバー74が前記DポジションからMポジションへ操作されたことがレバーポジションセンサ62により検出されたこと、或いは前記モード切換スイッチ76が押し下げられてモード切換信号SMNが供給されたことで前記変速モード切換手段104により手動変速モードが判定された場合には、運転者のアップダウン操作に従って前記無段変速機18の変速比γを、変速段毎に定められた所定の変速比になるように複数の変速段の間で段階的に変化させる変速制御を実行する。この手動変速制御手段94による変速制御のために、例えば、図7の手動変速マップに示すように、第1変速段「1st」〜第7変速段「7th」の7つの変速段が定められると共に、それら各変速段毎に車速Vをパラメータとして入力側の目標回転速度NINTの変速段線が設定されている。この目標回転速度NINTは目標変速比に対応するもので、本実施例では有段変速機のように各変速段に対応する一連の複数の変速比が段階的に設定されており、それらがそれぞれ一定の変速比になるように、車速Vに対して目標回転速度NINTが略直線的に定められている。前記手動変速制御手段94は、前記シフトレバー74が「+」位置又は「−」位置へ操作され、或いは前記アップシフトスイッチ78又はダウンシフトスイッチ80が押圧操作されてアップシフト信号SSUP、SUP又はダウンシフト信号SSDWN、SDWNが供給されると、変速段をアップシフト又はダウンシフトし、その変速段に応じて図7の手動変速マップに従って目標回転速度NINTすなわち変速比γを段階的に変化させる。図7に示す手動変速マップは、例えば基本変速マップとして前記マップ記憶装置84に予め記憶されている。なお、基本変速マップとして、走行性能を重視した手動変速マップや、燃費を重視した手動変速マップ、エンジンブレーキ用の手動変速マップ等、複数種類のマップを記憶しておくことも可能である。
【0026】
初期変速段判定手段96は、前記シフトレバー74がDポジションに保持されて前記自動変速手段92による自動変速モードでの走行中に、そのシフトレバー74がMポジションに操作されて手動変速モードへ切り換えられ、前記変速モード切換手段104により手動変速モードが判定された場合に、複数の変速段「1st」〜「7th」の中から最初に成立させる初期変速段を、例えば図8に示す初期変速段判定マップに従って判定する。この図8の破線が初期変速段判定マップであり、何れもモード切換前の変速比γに対応する目標回転速度NINT及び車速Vをパラメータとして、前記無段変速機18の複数の変速段線(実線)に対応して複数の判定線L2〜L7が定められている。例えば、手動変速モードに切り換えられる直前の車速V及びアクセル操作量θACCに基づいて前述した図6の自動変速マップから目標回転速度NINTを算出し、その算出された目標回転速度NINTが図8における判定線L7よりも小さい(図8の判定線L7の下である)場合には第7変速段「7th」を選択し、判定線L6よりも小さくL7以上である(図8の判定線L6とL7に囲まれた部分である、又はL7上である)場合には第6変速段「6th」を選択し、判定線L5よりも小さくL6以上である(図8の判定線L5とL6に囲まれた部分である、又はL6上である)場合には第5変速段「5th」を選択し、判定線L4よりも小さくL5以上である(図8の判定線L4とL5に囲まれた部分である、又はL5上である)場合には第4変速段「4th」を選択し、判定線L3よりも小さくL4以上である(図8の判定線L3とL4に囲まれた部分である、又はL4上である)場合には第3変速段「3rd」を選択し、判定線L2よりも小さくL3以上である(図8の判定線L2とL3に囲まれた部分である、又はL3上である)場合には第2変速段「2nd」を選択し、L2以上である(図8の判定線L2の上である、又はL2上である)場合には第1変速段「1st」を選択する。この初期変速段判定マップは初期変速段判定条件に相当するもので、車両の性格や手動変速の目的などに応じて予め定められて例えば前記マップ記憶装置84に記憶されている。
【0027】
変速比設定手段98は、前記手動変速手段94による手動変速モードにて変速制御が実行される場合において各変速段における変速比、例えば前述した図7で表されるような手動変速マップにおける、各変速段毎の車速Vをパラメータとした入力側の目標回転速度NINTを表す直線の傾きを、前記上限車速入力装置86によって入力された上限車速Vsupに基づいて設定し、その上限車速Vsupに応じた値となるように変更する。
【0028】
挟圧力制御手段100は、前記無段変速機18における伝動ベルト48の挟圧力を制御する。具体的には、その伝動ベルト48が滑りを生じないように前記出力側可変プーリ46に備えられた油圧シリンダに供給される油圧を制御してベルト挟圧力を変化させるもので、例えば図9に示すように伝達トルクに対応するアクセル操作量θACC及び変速比γをパラメータとしてベルト滑りが生じないように予め定められた必要油圧(ベルト挟圧力に相当)のマップに従って、前記挟圧力制御回路52に備えられた図示しないリニアソレノイド弁などを制御することにより、前記無段変速機18に備えられた出力側可変プーリ46の油圧シリンダの油圧を調圧制御する。図9の必要油圧マップは、例えば前記マップ記憶装置84に予め記憶されている。
【0029】
駆動力関連値算出手段102は、動力源である前記エンジン12から出力される駆動力に関連してその駆動力が大きいほど大きな値に設定されるパラメータである駆動力関連値を算出する。この駆動力関連値は、好適には、前記エンジン12の回転速度NEの目標値である目標回転速度NETであり、前記駆動力関連値算出手段102は、予め定められた関係から前記アクセル操作量センサ64により検出されるアクセル操作量θACC(或いはそのアクセル操作量θACCに応じたアクセル開度、電子スロットル弁開度等)に基づいて駆動力関連値としての前記エンジン12の目標回転速度NETを算出する。この目標回転速度NETを算出するための関係は、好適には、前記自動変速制御手段92による自動変速モードにおける変速制御及び手動変速制御手段94による手動変速モードにおける変速制御それぞれに対応して個別に定められたものであり、上記駆動力関連値算出手段102は、前記自動変速制御手段92による自動変速モードにおける変速制御及び手動変速制御手段94による手動変速モードにおける変速制御それぞれに対応して個別に駆動力関連値としての前記エンジン12の目標回転速度NET1、NET2を算出する。
【0030】
ここで、前記第2切換手段108は、前記自動変速モードに対応して前記駆動力関連値算出手段102により算出される第1の駆動力関連値としての目標回転速度NET1と、前記手動変速モードに対応して前記駆動力関連値算出手段102により算出される第2の駆動力関連値としての目標回転速度NET2との関係に基づいて前記手動変速モードから自動変速モードへの切換制御を行う。好適には、前記自動変速モードに対応して前記駆動力関連値算出手段102により算出される第1の目標回転速度NET1が、前記手動変速モードに対応して前記駆動力関連値算出手段102により算出される第2の目標回転速度NET2よりも大きい場合に前記手動変速モードから自動変速モードへの切換制御を行う。図10は、前記第2切換手段108による手動変速モードから自動変速モードへの切換制御を説明するタイムチャートである。この図10に示す時点t0において、前記無段変速機18は前記手動変速制御手段94により変速制御が行われている状態すなわち一時的な手動変速モードであり、この段階においては自動変速モードに対応する第1の目標回転速度NET1よりも手動変速モードに対応する第2の目標回転速度NET2の方が大きい。これら目標回転速度NET1、NET2の大小関係は時点t1において入れ替わり、その時点t1以降においては自動変速モードに対応する第1の目標回転速度NET1の方が手動変速モードに対応する第2の目標回転速度NET2よりも大きくなる。前記第2切換手段108は、この時点t1において第1の目標回転速度NET1が第2の目標回転速度NET2よりも大きくなることを条件に前記手動変速モードから自動変速モード(Dレンジ)への切換制御を行う。これにより、運転者の加速意図を反映してより大きな目標回転速度を設定することができ、延いてはダウンシフト等の変速制御を実行することができる。
【0031】
図11は、前記CVTコントローラ60による変速モード切換制御(図10のタイムチャートに対応する制御)の要部を説明するフローチャートであり、所定の周期で繰り返し実行されるものである。
【0032】
先ず、ステップ(以下、ステップを省略する)S1において、その時点における変速モードが手動変速モードであるか否かが判断される。このS1の判断が否定される場合、すなわち変速モードが自動変速モードであると判断される場合には、S7以下の処理が実行されるが、S1の判断が肯定される場合には、S2において、前記シフトレバー74やモード切換スイッチ76等を介して手動変速モードから自動変速モードへの切換操作が行われたか否かが判断される。このS2の判断が肯定される場合には、S5以下の処理が実行されるが、S2の判断が否定される場合には、前記駆動力関連値算出手段102の動作に対応するS3において、自動変速モードに対応する第1のエンジン目標回転速度NET1及び手動変速モードに対応する第2のエンジン目標回転速度NET2が算出される。次に、S4において、S3にて算出された第1のエンジン目標回転速度NET1が第2のエンジン目標回転速度NET2よりも大きいか否かが判断される。このS3の判断が否定される場合には、S2以下の処理が再び実行されるが、S4の判断が肯定される場合には、前記第2切換手段108の動作に対応するS5において、手動変速モードから自動変速モードへの切換制御が行われる。次に、前記自動変速制御手段92の動作に対応するS6において、前述した自動変速モードにおける変速制御が開始された後、本ルーチンが終了させられる。S7においては、前記シフトレバー74やモード切換スイッチ76等を介して自動変速モードから手動変速モードへの切換操作が行われたか否かが判断される。このS7の判断が否定される場合には、それをもって本ルーチンが終了させられるが、S7の判断が肯定される場合には、前記第1切換手段106の動作に対応するS8において、自動変速モードから手動変速モードへの切換制御が行われる。次に、前記手動変速制御手段94の動作に対応するS9において、前述した手動変速モードによる変速制御が開始された後、本ルーチンが終了させられる。
【0033】
前記第2切換手段108は、また好適には、前記自動変速モードに対応して前記駆動力関連値算出手段102により算出される第1の目標回転速度NET1が、前記手動変速モードに対応して前記駆動力関連値算出手段102により算出される第2の目標回転速度NET2よりも所定値(復帰判定用所定値)α以上大きい場合に前記手動変速モードから自動変速モードへの切換制御を行う。図12は、斯かる態様における前記第2切換手段108による手動変速モードから自動変速モードへの切換制御を説明するタイムチャートである。この図12に示す時点t0において、前記無段変速機18は前記手動変速制御手段94により変速制御が行われている状態すなわち一時的な手動変速モードであり、この段階においては自動変速モードに対応する第1の目標回転速度NET1よりも手動変速モードに対応する第2の目標回転速度NET2に所定値αを加算した値の方が大きい。これらの値NET1とNET2+αとの大小関係は時点t1において入れ替わり、その時点t1以降においては自動変速モードに対応する第1の目標回転速度NET1の方が手動変速モードに対応する第2の目標回転速度NET2に所定値αを加算した値よりも大きくなる。前記第2切換手段108は、この時点t1において第1の目標回転速度NET1が第2の目標回転速度NET2よりも所定値α以上大きくなることを条件に前記手動変速モードから自動変速モード(Dレンジ)への切換制御を行う。これにより、運転者の加速意図を反映してより大きな目標回転速度を設定することができ、延いてはダウンシフト等の変速制御を実行することができる。
【0034】
図13は、前記CVTコントローラ60による変速モード切換制御(図12のタイムチャートに対応する制御)の要部を説明するフローチャートであり、所定の周期で繰り返し実行されるものである。この制御において、前述した図11の制御と共通のステップについては、同一の符号を付してその説明を省略する。この図13に示す制御では、前述したS3の処理に続くS10において、S3にて算出された第1のエンジン目標回転速度NET1が第2のエンジン目標回転速度NET2に所定値αを加算した値よりも大きいか否かが判断される。このS10の判断が否定される場合には、S2以下の処理が再び実行されるが、S10の判断が肯定される場合には、前述したS5以下の処理が実行される。
【0035】
なお、前記第2切換手段108による手動変速モードから自動変速モードへの切換制御に関する所定値αは固定値でなくともよく、好適には、予め定められた関係から車両の走行状態に基づいて設定されるものである。また好適には、前記手動変速制御手段94による手動変速制御における各変速段毎にそれぞれ個別の所定値αが車両の走行状態に基づいて導出されて用いられる。図14は、車速に基づいて前記所定値αを設定するために予め定められた関係を、図15は、アクセル開度に基づいて前記所定値αを設定するために予め定められた関係をそれぞれ例示するものであり、前記第2切換手段108は、斯かる関係から車両の走行状態としての車速やアクセル開度等に基づいて所定値αを設定し、その所定値αに基づいて前記第1の目標回転速度NET1が第2の目標回転速度NET2よりも所定値α以上大きいか否かの判定を行う。
【0036】
前記第2切換手段108は、また好適には、前記自動変速モードに対応して前記駆動力関連値算出手段102により算出される第1の目標回転速度NET1が、前記手動変速モードに対応して前記駆動力関連値算出手段102により算出される、その時点における変速比γよりも少なくとも1段階低い変速比とした際の第2の目標回転速度NET2よりも大きい場合に前記手動変速モードから自動変速モードへの切換制御を行う。図16は、斯かる態様における前記第2切換手段108による手動変速モードから自動変速モードへの切換制御を説明する図である。この図16に示すように、前記第2切換手段108は、例えば、その時点におけるギア段(変速比)よりも2段階低いギア段とした際の第2の目標回転速度NET2を前記駆動力関連値算出手段102により算出し、その算出された第2目標回転速度NET2よりも前記自動変速モードに対応して前記駆動力関連値算出手段102により算出される第1の目標回転速度NET1が大きいか否かに基づいて前記手動変速モードから自動変速モードへの切換を判定する。
【0037】
図17は、前記CVTコントローラ60による変速モード切換制御(図16に対応する制御)の要部を説明するフローチャートであり、所定の周期で繰り返し実行されるものである。この制御において、前述した図11の制御と共通のステップについては、同一の符号を付してその説明を省略する。この図17に示す制御では、前述したS3の処理に続くS11において、S3にて算出された第1のエンジン目標回転速度NET1が、その時点における変速比γよりもN段階低い変速比とした際の第2のエンジン目標回転速度NET2よりも大きいか否かが判断される。このS11の判断が否定される場合には、S2以下の処理が再び実行されるが、S11の判断が肯定される場合には、前述したS5以下の処理が実行される。
【0038】
このように、本実施例によれば、動力源である前記エンジン12から出力される駆動力に関連してその駆動力が大きいほど大きな値に設定される駆動力関連値を算出する駆動力関連値算出手段102(S3)を備え、前記第2切換手段108(S5)は、前記自動変速モードに対応して前記駆動力関連値算出手段102により算出される第1の駆動力関連値と、前記手動変速モードに対応して前記駆動力関連値算出手段102により算出される第2の駆動力関連値との関係に基づいて前記手動変速モードから自動変速モードへの切換制御を行うものであることから、運転者の加速意図を反映する駆動力関連値に基づいて自動的に前記手動変速モードを解除し、自動変速モードへの切換を行うことができる。すなわち、運転者の加速意図に沿って手動変速モードから自動変速モードへの切換制御を行う車両用無段変速機18の変速制御装置を提供することができる。
【0039】
また、前記第2切換手段108は、前記自動変速モードに対応して前記駆動力関連値算出手段102により算出される第1の駆動力関連値が、前記手動変速モードに対応して前記駆動力関連値算出手段102により算出される第2の駆動力関連値よりも大きい場合に前記手動変速モードから自動変速モードへの切換制御を行うものであるため、運転者の加速意図に沿って実用的な態様で手動変速モードから自動変速モードへの切換制御を行うことができる。
【0040】
また、前記第2切換手段108は、前記自動変速モードに対応して前記駆動力関連値算出手段102により算出される第1の駆動力関連値が、前記手動変速モードに対応して前記駆動力関連値算出手段102により算出される、その時点における変速比よりも少なくとも1段階低い変速比とした際の第2の駆動力関連値よりも大きい場合に前記手動変速モードから自動変速モードへの切換制御を行うものであるため、運転者の加速意図に沿って実用的な態様で手動変速モードから自動変速モードへの切換制御を行うことができる。
【0041】
また、前記第2切換手段108は、前記自動変速モードに対応して前記駆動力関連値算出手段102により算出される第1の駆動力関連値が、前記手動変速モードに対応して前記駆動力関連値算出手段102により算出される第2の駆動力関連値よりも所定値α以上大きい場合に前記手動変速モードから自動変速モードへの切換制御を行うものであるため、運転者の加速意図に沿って実用的な態様で手動変速モードから自動変速モードへの切換制御を行うことができる。
【0042】
また、前記所定値αは、予め定められた関係から車両の走行状態に基づいて設定されるものであるため、前記手動変速モードから自動変速モードへの切換条件を好適に定めることができる。
【0043】
また、前記駆動力関連値は、前記駆動源の目標回転速度NETであるため、前記手動変速モードから自動変速モードへの切換条件を好適に定めることができる。
【0044】
以上、本発明の好適な実施例を図面に基づいて詳細に説明したが、本発明はこれに限定されるものではなく、更に別の態様においても実施される。
【0045】
例えば、前述の実施例において、前記駆動力関連値算出手段102は、駆動力関連値として前記エンジン12の目標回転速度NETを算出するものであったが、本発明はこれに限定されるものではなく、例えば車両の目標駆動力、目標変速比等を駆動力関連値として算出するものであってもよい。すなわち、駆動源としての前記エンジン12から出力される駆動力に関連してその駆動力が大きいほど大きな値に設定される種々の駆動力関連値が適宜選択されて制御に用いられ得る。
【0046】
また、前述の実施例において、各変速段の変速比γは一定値であり、図7のような変速線図において各変速段線は直線で表されたが、変速比γは必ずしも一定である必要はなく、車速V等をパラメータとして変速比γが連続的に変化する変速段、例えば図7において原点を通らない直線や曲線などで表される変速段が定められても良い。
【0047】
また、前述の実施例において、前記手動変速制御手段94は、手動モードにおいて無段変速機18を第1速段〜第7速段の全7段の変速段を有するように制御するものであったが、例えば全6段や全8段など適宜変更してもよい。
【0048】
また、前述の実施例において、前記シフトレバー74は、図3に示すようなシフトパターンを有するものとされたが、例えば図18に示すようなシフトパターンを有するものであってもよい。すなわち、レバーポジションPLとして駐車用のPポジション、後進走行用のRポジション、動力伝達を遮断するNポジション、前記無段変速機18の全変速領域を使って自動変速しながら前進走行するDポジション、手動変速モードを実行するためのMポジションに加え、変速比γが小さい高速側変速領域が制限された前進走行用の3ポジション、3ポジションよりも変速比γが大きい低速側の変速領域だけで自動変速する2ポジション、2ポジションよりも更に低速側の変速領域だけで自動変速するLポジションを、車両の前後方向に備えている。従って、Dポジションから3ポジション、2ポジション、Lポジションへ操作されると、変速比γが大きい低速側へ変速領域が段階的に移動し、入力軸回転速度NINやエンジン回転速度NEが増大させられるとともに、大きなエンジンブレーキ力が得られるようになる。
【0049】
また、前述の実施例においては、前記モード切換スイッチ76およびMポジションを有するシフトレバー74の2つが用いられたが、必ずしもそれらの両方が必要ではなく、何れか一方でよい。すなわち、例えば図3や図18のようにレバーポジションとしてMポジションおよび「+」位置、「−」位置を有するシフトパターンであるシフトレバー74であれば、手動変速モードへの切換に必要なモード切換装置が具備されるため、前記モード切換スイッチ76、アップシフトスイッチ78、及びダウンシフトスイッチ80は必ずしも必要がない。同様の理由により、前記モード切換スイッチ76、アップシフトスイッチ78、及びダウンシフトスイッチ80がある場合、前記シフトレバー74のレバーポジションにはMポジションは必ずしも必要でなく、例えば図19に示すようなシフトパターンであってもよい。
【0050】
また、前述の実施例において、前記モード切換スイッチ76、アップシフトスイッチ78、及びダウンシフトスイッチ80としては、押し込みスイッチがステアリングホイール82に設けられたが、これに限られず、運転者が操作可能な位置、個数、スイッチの形状であればよく、例えば、位置としてはインスゥルメントパネル内にあってもよいし、個数としては前記モード切換スイッチ76、アップシフトスイッチ78、及びダウンシフトスイッチ80がそれぞれ少なくとも1個ずつあればよく、スイッチの形状としてはパドル型スイッチであってもよい。
【0051】
また、前述の実施例においては、無段変速機としてベルト式の無段変速機18を備えた車両用駆動装置10に本発明が適用された例を説明したが、例えば、トロイダル型無段変速機を備えた車両用駆動装置にも本発明は好適に適用されるものである。
【0052】
その他、一々例示はしないが、本発明はその趣旨を逸脱しない範囲内において種々の変更が加えられて実施されるものである。
【図面の簡単な説明】
【0053】
【図1】本発明が適用された車両用駆動装置の骨子図である。
【図2】図1の車両用駆動装置における無段変速機の制御系統を説明するブロック線図である。
【図3】図2のシフトレバーのシフトパターンを示す図である。
【図4】ステアリングホイールに配設されたモード切換スイッチ等を説明する図である。
【図5】図2のCVTコントローラが備えている機能を説明するブロック線図である。
【図6】図4の自動変速手段により自動変速制御が行われる際に、運転状態に応じて入力側の目標回転速度を求める自動変速マップの一例を示す図である。
【図7】図4の手動変速手段により手動変速制御が行われる際に、車速に応じて各変速段の目標回転速度を求める手動変速マップの一例を示す図である。
【図8】図5のフローチャートに従って初期変速段が設定される際に用いられる初期変速段判定マップの一例を示す図である。
【図9】図4の挟圧力制御手段によりベルト式無段変速機の挟圧力制御が行われる際に、変速比等に応じて必要油圧を求める必要油圧マップの一例を示す図である。
【図10】図2のCVTコントローラによる手動変速モードから自動変速モードへの切換制御を説明するタイムチャートである。
【図11】図2のCVTコントローラによる変速モード切換制御(図10のタイムチャートに対応する制御)の要部を説明するフローチャートである。
【図12】図2のCVTコントローラによる手動変速モードから自動変速モードへの切換制御の他の一例を説明するタイムチャートである。
【図13】図2のCVTコントローラによる変速モード切換制御(図12のタイムチャートに対応する制御)の要部を説明するフローチャートである。
【図14】図12に示す制御に関して、車速に基づいて所定値を設定するために予め定められた関係を例示する図である。
【図15】図12に示す制御に関して、アクセル開度に基づいて所定値を設定するために予め定められた関係を例示する図である。
【図16】図2のCVTコントローラによる手動変速モードから自動変速モードへの切換制御の更に別の一例を説明する図である。
【図17】図2のCVTコントローラによる変速モード切換制御(図16のタイムチャートに対応する制御)の要部を説明するフローチャートである。
【図18】図2のシフトレバーのシフトパターンの他の一例を示す図である。
【図19】図2のシフトレバーのシフトパターンの更に別の一例を示す図である。
【符号の説明】
【0054】
12:エンジン(駆動源)
18:無段変速機
24l、24r:駆動輪
92:自動変速制御手段
94:手動変速制御手段
102:駆動力関連値算出手段
106:第1切換手段
108:第2切換手段

【特許請求の範囲】
【請求項1】
走行用の動力源と駆動輪との間の駆動力伝達経路に設けられて変速比を連続的に変化させることができる無段変速機と、
運転者の所定操作に応じて該無段変速機の変速比を予め段階的に設定された複数の変速比の間で変化させる手動変速制御手段と、
予め定められた関係から車両の走行状態に基づいて前記無段変速機の変速比を変化させる自動変速制御手段と、
運転者の所定操作に応じて、前記自動変速制御手段によって変速制御される自動変速モードから前記手動変速制御手段によって変速制御される手動変速モードへの切換制御を行う第1切換手段と、
所定の条件が満たされた場合に、前記手動変速制御手段によって変速制御される手動変速モードから前記自動変速制御手段によって変速制御される自動変速モードへの切換制御を行う第2切換手段と
を、備えた車両用無段変速機の変速制御装置であって、
前記動力源から出力される駆動力に関連して該駆動力が大きいほど大きな値に設定される駆動力関連値を算出する駆動力関連値算出手段を備え、
前記第2切換手段は、前記自動変速モードに対応して前記駆動力関連値算出手段により算出される第1の駆動力関連値と、前記手動変速モードに対応して前記駆動力関連値算出手段により算出される第2の駆動力関連値との関係に基づいて前記手動変速モードから自動変速モードへの切換制御を行うものであることを特徴とする車両用無段変速機の変速制御装置。
【請求項2】
前記第2切換手段は、前記自動変速モードに対応して前記駆動力関連値算出手段により算出される第1の駆動力関連値が、前記手動変速モードに対応して前記駆動力関連値算出手段により算出される第2の駆動力関連値よりも大きい場合に前記手動変速モードから自動変速モードへの切換制御を行うものである請求項1の車両用無段変速機の変速制御装置。
【請求項3】
前記第2切換手段は、前記自動変速モードに対応して前記駆動力関連値算出手段により算出される第1の駆動力関連値が、前記手動変速モードに対応して前記駆動力関連値算出手段により算出される、その時点における変速比よりも少なくとも1段階低い変速比とした際の第2の駆動力関連値よりも大きい場合に前記手動変速モードから自動変速モードへの切換制御を行うものである請求項1の車両用無段変速機の変速制御装置。
【請求項4】
前記第2切換手段は、前記自動変速モードに対応して前記駆動力関連値算出手段により算出される第1の駆動力関連値が、前記手動変速モードに対応して前記駆動力関連値算出手段により算出される第2の駆動力関連値よりも所定値以上大きい場合に前記手動変速モードから自動変速モードへの切換制御を行うものである請求項1の車両用無段変速機の変速制御装置。
【請求項5】
前記所定値は、予め定められた関係から車両の走行状態に基づいて設定されるものである請求項4の車両用無段変速機の変速制御装置。
【請求項6】
前記駆動力関連値は、前記駆動源の目標回転速度である請求項1から5の何れかの車両用無段変速機の変速制御装置。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【図8】
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【図9】
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【図10】
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【図11】
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【図12】
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【図13】
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【図14】
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【図15】
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【図16】
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【図17】
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【図18】
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【図19】
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【公開番号】特開2008−196641(P2008−196641A)
【公開日】平成20年8月28日(2008.8.28)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2007−34072(P2007−34072)
【出願日】平成19年2月14日(2007.2.14)
【出願人】(000003207)トヨタ自動車株式会社 (59,920)
【Fターム(参考)】