説明

車両用空調装置

【課題】 乗員の居る位置を検出する専用のセンサを追加することなく、吹出状態可変手段の目標揺動範囲の中心位置を乗員の居る位置に合わせて修正できるようにする。
【解決手段】 中席402や後席403のシートアレンジメントを変更することにより、中席側、後席側の乗員の居る位置が初期設定位置から大幅にずれても、記憶されているオートスイングの中心位置をシート移動後のものに書き換えるようにしているので、シート移動後に、中席側、後席側FACE吹出口31b、32bから吹き出される空調風の吹出方向が中席側、後席側の乗員を外すことはない。したがって、中席側、後席側の乗員の居る位置が初期設定位置から大幅にずれていても、中席側、後席側FACE吹出口31b、32bから吹き出される空調風の吹出方向が乗員に向かうことで乗員の冷房フィーリングを飛躍的に向上することができる。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、空調ダクトの吹出口から吹き出される空調風の吹出方向を変更するルーバフィンの目標揺動範囲の中心位置を修正することが可能な車両用空調装置に関するものである。
【背景技術】
【0002】
〔従来の技術〕
従来より、内気温度センサにて検出される内気温度と温度設定器にて設定された設定温度との温度差に応じて、空調ユニットのフェイス吹出口から吹き出される空調風の吹出方向を変更するようにした車両用空調装置(第1従来例:例えば、特許文献1(特開昭57−107912号公報)参照)が知られている。
【0003】
また、従来より、空調ユニットのフェイス吹出口から吹き出される空調風の吹出方向が乗員を避ける方向のときでも、日射センサにて検出される日射量が所定の日射量を越えて乗員に当たっている場合には、空調風の吹出方向を乗員に向けるようにした車両用空調装置(第2従来例:例えば、特許文献2(特開昭59−160617号公報)参照)も知られている。
【0004】
〔従来の技術の不具合〕
ところが、近年、車室内のレイアウトの自由化(所謂シートアレンジメント)が進んでいる。これには、車両の前後方向に例えばサードシートを大きく移動させるシートスライド、例えばセカンドシートを180°回転させる回転対面シート、全席をフルリクライニングさせるオールフラットシートなどが登場している。
【0005】
このような複数のシートアレンジメントが可能なシートを搭載した車両(ワンボックスカー)の場合、日射あり時またはクールダウン時に、初期設定通りの吹出方向となるように空調風を吹き出しても、あるいは乗員の居る位置を目標位置としてその目標位置を中心に空調風の吹出方向がスイングするように制御しても、乗員の位置が初期位置から大幅にずれていることが考えられる。この場合には、空調風の吹出方向がわざわざ乗員の居る位置を外してしまうために、乗員の空調感、特に冷房フィーリングを低下させるという問題が生じている。また、前席においても、中席や後席ほどではないが、乗員の体格や姿勢、シート位置などによって初期設定通りでは不満となる。
ここで、乗員の居る位置を検出する専用のセンサを車両に設置して、そのセンサにて検出した乗員の居る位置に向けて空調風を吹き出すようにすることも考えられるが、当然のように専用のセンサを追加する必要上、部品点数が多くなると共に、車両全体の価格が高価となるという問題が生じる。
【0006】
一方、車内設定温度と車内温度との温度差が所定値以上の時は、風向偏向羽根(ルーバ)のスイングを停止し、車内設定温度と車内温度との温度差が所定値以下の時は、風向偏向羽根をスイングさせるようにした車両用空調装置(第3従来例:例えば、特許文献3(特公昭62−48621号公報)参照)が知られている。ところが、その所定値が乗員にとって未だ暑いと感じている時に、スイングしようとしているルーバを乗員が自分の方向に引き戻しても、所定値以下である限り、再び乗員の方向を避ける方向にルーバがスイングしてしまうので、乗員が希望する空調状態を制御に反映できないという問題が生じている。逆に、乗員が寒いと感じている時に、スイングしてきたルーバを乗員の方向から外そうとしても、スイング条件を満たしている限り、再びルーバがスイングしてしまうので、乗員が希望する空調状態を制御に反映できないという問題が生じている。
【0007】
ここで、本来のルーバのスイング制御に拘らず、ルーバのスイングを所定時間以上停止することにより、乗員が希望する空調状態を制御に反映することも考えられるが、例えば吹出口から吹き出される空調風の吹出温度が非常に冷たい時には長時間空調風が当たっている箇所が局所冷房となり、乗員が寒いと感じて不快となる。また、乗員の身体に当たる日射が非常に強い時には、長時間空調風が当たらないと、暑く感じて不快となる。
【特許文献1】特開昭57−107912号公報
【特許文献2】特開昭59−160617号公報
【特許文献3】特公昭62−48621号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0008】
本発明は、上記問題点に鑑み、乗員の居る位置を検出する専用のセンサを追加することなく、吹出状態可変手段の目標揺動範囲の中心位置を乗員の居る位置に合わせて修正できるようにすることを目的とする。また、本発明は、上記問題点に鑑み、乗員が希望する空調状態を制御に反映できるようにすることを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0009】
請求項1に記載の発明によれば、吹出状態可変手段が揺動運動している時、空調ダクトの吹出口から吹き出される空調風の吹出状態(例えば空調風の吹出方向、配風量(吹出風量)または吹出位置(吹出高さ、吹出幅)等)が乗員の居る位置とずれている場合には、吹出口から吹き出される空調風の吹出状態が乗員の居る位置に向くように乗員が吹出状態可変手段を直接動かす。それによって、吹出状態可変手段の現在位置が目標位置決定手段にて決定されたアクチュエータの作動速度から予測される目標位置と異なることになる。このような場合には、吹出状態可変手段の目標揺動範囲の中心位置を、乗員の操作により変更された現在位置またはその付近に補正するように中心位置指令手段に出力する。これにより、次回からは、補正された中心位置を中心にした目標揺動範囲で吹出状態可変手段が揺動運動することになる。
【0010】
したがって、乗員の居る位置を検出する専用のセンサを追加することなく、乗員の居る位置に応じた空調風の目標吹出状態の修正を行うことができる。このため、仮に車両のシートの状態を変更することにより、乗員の居る位置が初期位置から大幅にずれていても、空調ダクトの吹出口から吹き出される空調風の吹出状態が乗員を外すことはない。これにより、空調ダクトの吹出口から吹き出される空調風の吹出状態が乗員に向かうことで乗員の空調感を向上することができる。
【0011】
請求項2に記載の発明によれば、中心位置記憶手段から予め記憶されている初期設定位置を中心にして吹出状態可変手段が揺動運動するように指令されると、初期設定位置を中心にした目標揺動範囲で吹出状態可変手段が揺動運動するようにアクチュエータの作動状態が制御される。そして、中心位置補正手段から補正指令を入力した場合には、中心位置記憶手段が吹出状態可変手段の目標揺動範囲の中心位置を吹出状態検出手段にて検知した現在位置に書き換える。
また、請求項3に記載の発明によれば、手動設定手段から乗員の手動操作によって決められた手動操作位置を中心にして吹出状態可変手段が揺動運動するように指令されると、手動操作位置を中心にした目標揺動範囲で吹出状態可変手段が揺動運動するようにアクチュエータの作動状態が制御される。
【0012】
請求項4に記載の発明によれば、空調状態検出手段にて検出した空調状態と空調状態設定手段にて設定した目標空調状態とが大きく異なる場合には、吹出状態可変手段の揺動運動が吹出状態可変手段の目標揺動範囲の中心位置で停止するようにアクチュエータの作動状態を制御することにより、空調ダクトの吹出口から吹き出す空調風が局所的に乗員に当たる。これにより、乗員の空調感を向上することができる。
【0013】
また、請求項5に記載の発明によれば、日射量検出手段にて検出した日射量が所定の日射量以上の場合には、吹出状態可変手段の揺動運動が吹出状態可変手段の目標揺動範囲の中心位置で停止するようにアクチュエータの作動状態を制御することにより、空調ダクトの吹出口から吹き出す空調風が局所的に乗員に当たる。これにより、乗員の空調感を向上することができる。
【0014】
そして、請求項6に記載の発明によれば、内気温度検出手段にて検出した内気温度と温度設定手段にて設定した設定温度とが大きく異なる場合には、吹出状態可変手段の揺動運動が吹出状態可変手段の目標揺動範囲の中心位置で停止するようにアクチュエータの作動状態を制御することにより、空調ダクトの吹出口から吹き出す空調風が局所的に乗員に当たる。これにより、乗員の空調感を向上することができる。
【0015】
請求項7に記載の発明によれば、乗員操作判定手段にて吹出状態可変手段を乗員が操作したと判定した場合には、吹出状態検出手段にて検知した吹出状態可変手段の現在位置またはその付近で吹出状態可変手段の揺動運動を所定時間が経過するまで停止させることにより、乗員が希望する空調状態を制御に反映できる。
【0016】
請求項8に記載の発明によれば、吹出状態可変手段がアクチュエータの作動速度から予想される移動量以上に移動したことを検出した場合に、吹出状態可変手段を乗員が操作したと判定するようにしている。さらに、請求項9に記載の発明によれば、吹出状態可変手段が所定の揺動範囲外に移動したことを検出した場合に、吹出状態可変手段を乗員が操作したと判定するようにしている。それによって、請求項8の発明よりも簡単に吹出状態可変手段を乗員が操作したと判定できる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0017】
発明を実施するための最良の形態を実施例1〜9に基づき図面を参照して説明する。
【実施例1】
【0018】
〔第1実施形態の構成〕
図1ないし図17は本発明の第1実施形態を示したもので、図1は車両用空調装置の全体構成を示した図で、図2は車両用空調装置を搭載した車両の車室内を示した図である。
【0019】
本実施形態の車両用空調装置は、主として車両400の前部座席側の乗員(運転席の乗員および助手席の乗員:第1の乗員)を空調するための第1空調ゾーンを温度調節する第1空調ユニット1aと、主として車両400の中間座席、後部座席側の乗員(中間座席の乗員:第2の乗員および後部座席の乗員:第3の乗員)を空調するための第2空調ゾーンを温度調節する第2空調ユニット1bと、第1、第2空調ユニット1a、1bの空調機能部品を制御する空調制御装置(以下エアコンECUと言う)50とを備える。
【0020】
なお、本実施形態の車両400は、前部座席(フロントシート:以下前席と略す)401、中間座席(セカンドシート:以下中席と略す)402および後部座席(サードシート:以下後席と略す)403を備えている。そして、車両400は、複数のシートアレンジメントが可能なワンボックスカーで、例えば後席403を大きく前後方向に移動させるシートスライド、中席402を180°回転させて中席側の乗員と後席側の乗員とを対面させる回転対面シート、全席をフルリクライニングさせるオールフラットシートなどのシートアレンジが可能である。
【0021】
第1空調ユニット1aは、車両400の車室内の最前方に配置されており、車室内に空気を導くための第1空調ダクト2aを有している。この第1空調ダクト2aの空気最上流側には、内気導入口6aと外気導入口7aとの開口状態(所謂内外気モード)を切り替える内外気切替ドア3aが設けられている。そして、この内外気切替ドア3aは、サーボモータ5aによって駆動される。これによって、第1空調ユニット1aは、第1空調ダクト2a内に取り入れられる空気が内気100%である内気循環モードと、外気100%である外気導入モードが切替可能となっている。
【0022】
第2空調ユニット1bは、車両400の車室内の最後方に配置されており、車室内に空気を導くための第2空調ダクト2bを有している。この第2空調ダクト2bの空気最上流側には、内気導入口6bが設けられており、上述の第1空調ダクト2aとは異なり第2空調ダクト2b内に取り込まれる空気は内気のみとなり、常に内気循環モードとなる。ここで、上述の第1空調ユニット1aが、外気導入モードである場合は、図2に示したように、第1空調ダクト2aから空調風が吹き出されると、この空調風の吹出に伴って、例えば車室内最後方に位置するリヤパッケージトレー(図示せず)で開口し、車室外と連通した排出孔7bから車室内の空気が排出されることになる。
【0023】
そして、第1、第2空調ダクト2a、2bの内気導入口6a、6bの空気下流側部位には、第1、第2ブロワ4a、4bが配設されている。これらの第1、第2ブロワ4a、4bは、ブロワ駆動回路8a、8bによって制御されるブロワモータ9a、9bにて回転駆動されて、各第1、第2空調ダクト2a、2b内において車室内に向かう空気流を発生させる送風機である。
【0024】
そして、第1、第2空調ダクト2a、2b内の、第1、第2ブロワ4a、4bの空気下流側には、通過する空気を冷却する冷却用熱交換器としての第1、第2エバポレータ10a、10bが各空気通路全体を塞ぐように配設されている。これらの第1、第2エバポレータ10a、10bは、車両400に搭載された冷凍サイクル(図示せず)の一構成部品である。なお、本実施形態の冷凍サイクルは、コンデンサと膨張弁との間に、並列に第1、第2エバポレータ10a、10bが接続されており、各第1、第2エバポレータ10a、10bの冷媒上流側には、それぞれの冷媒の流れを断続する第1、第2電磁弁(図示せず)が設けられており、これらの第1、第2電磁弁の開閉状態によって第1、第2エバポレータ10a、10bに冷媒が供給されるか否かが決定される。
【0025】
そして、第1、第2空調ダクト2a、2b内の第1、第2エバポレータ10a、10bの空気下流側には、車室内に吹き出される空気の吹出温度を調節する第1、第2温度調節手段が配設されている。第1、第2温度調節手段は、加熱用熱交換器としての第1、第2ヒータコア13a、13bと、第1、第2エバポレータ10a、10bを通過した空気の加熱量を調節する加熱量調節手段である第1、第2エアミックスドア(A/Mドア)15a、15bとから構成されている。第1、第2A/Mドア15a、15bは、それぞれサーボモータ17a、17bによって駆動される。
【0026】
次に、第1、第2空調ダクト2a、2bの空気最下流側には、上述の空調機能部品によって温度調節された空調風を車室内に吹き出すための吹出口が設けられている。この吹出口は、第1空調ユニット1aと第2空調ユニット1bとでその形成位置が異なることから2つに分けて説明する。
【0027】
先ず、第1空調ダクト2aの空気最下流側には、車室内の最前方のインストルメントパネル40内で、車室内の異なる位置に向かって空調風を吹き出すための第1吹出口(前席側吹出口)が配設されている。具体的には、車両400のフロントウインドの内面に向かって空調風を吹き出すためのデフロスタ(DEF)吹出口20(図3参照)と、車両400の前席側の乗員の上半身(頭胸部)に向かって空調風を吹き出すための4個の前席側フェイス(FACE)吹出口21a(図3参照)と、車両400の前席側の乗員の下半身(足元部)に向かって空調風を吹き出すための2個の前席側フット(FOOT)吹出口23aとが第1吹出口の一例として挙げられる。
【0028】
なお、4個の前席側FACE吹出口21aは、インストルメントパネル40の車両幅方向の中央部で開口した運転席側、助手席側センタFACE吹出口と、車両幅方向の最も両端側に配置された運転席側、助手席側サイドFACE吹出口とからなる。これらのうち4個の前席側FACE吹出口21aおよび2個の前席側FOOT吹出口23aは、サーボモータ29aによって駆動される第1吹出口開閉手段としての第1吹出口切替ドア36aによって、その開口状態(所謂吹出口モード)が調節される。これによって、第1空調ユニット1aは、4個の前席側FACE吹出口21aのみを開口させるフェイス(FACE)モード、2個の前席側FOOT吹出口23aのみを開口させるフット(FOOT)モード、および4個の前席側FACE吹出口21aと2個の前席側FOOT吹出口23aの両方を開口させるバイレベル(B/L)モード等の吹出口モードが切替可能となる。
【0029】
一方、第2空調ダクト2bの空気最下流側には、第2吹出口として、車両400の中席側、後席側の乗員の上半身(頭胸部)に向かって空調風を吹き出すための複数個の中席側フェイス(FACE)吹出口31b、および2個の後席側フェイス(FACE)吹出口32b(図16参照)と、車両400の中席側、後席側の乗員の下半身(足元部)に向かって空調風を吹き出すための複数個の中席側、後席側フット(FOOT)吹出口33bとが配設されている。
【0030】
4個の中席側、後席側FACE吹出口31b、32bは、例えば車両400の中席402および後席403に対応した中席側、後席側の天井部の、中席側、後席側の車両幅方向の両側に設けられている。なお、残りの4個の中席側FACE吹出口31bは、例えば車両400の中席402に対応した中席側の天井部の車両進行方向の前方側に設けられている。また、複数個の中席側、後席側FOOT吹出口33bは、例えば車両400の中席402の下部で、車両400のフロア近傍で開口するように設けられており、上述の中席側、後席側FACE吹出口31b、32bと同様に車両幅方向の両側に設けられている。
【0031】
これらの中席側、後席側FACE吹出口31b、32bおよび中席側、後席側FOOT吹出口33bは、サーボモータ39bによって駆動される第2吹出口開閉手段としての第2吹出口切替ドア36bによって、その開口状態(所謂吹出口モード)が調節される。これによって、第2空調ユニット1bは、複数個の中席側、後席側FACE吹出口31b、32bのみを開口させるフェイス(FACE)モード、6個の中席側、後席側FOOT吹出口33bのみを開口させるフット(FOOT)モード、および複数個の中席側、後席側FACE吹出口31b、32bと複数個の中席側、後席側FOOT吹出口33bの両方を開口させるバイレベル(B/L)モード等の吹出口モードが切替可能となる。
【0032】
次に、複数個の中席側、後席側FACE吹出口31b、32bに設置される吹出状態可変装置を図1、図4ないし図6に基づいて説明する。ここで、図4は吹出状態可変装置の全体構成を示した図である。
【0033】
各吹出状態可変装置は、ドライバー側(運転席側:以下Dr側と言う)、パッセンジャー側(助手席側:以下Pa側と言う)センタグリル41、Dr側、Pa側サイドグリル42、複数個の中席側、後席側フェイス(RrFACE)グリル49内にそれぞれ設けられている。これらのうち複数個のRrFACEグリル49内に形成される空気通路は、それぞれ上述の複数個の中席側、後席側FACE吹出口31b、32bとして利用される。そして、複数個のRrFACEグリル49内には、ルーバ水平方向揺動機構(図5参照)およびルーバ上下方向揺動機構(図6参照)がそれぞれ設けられている。
【0034】
各吹出状態可変装置のルーバ水平方向揺動機構は、RrFACEグリル49内において車両400の進行方向に対して左右方向または前後方向等の水平方向に複数列設されたルーバフィン(以下ルーバと言う)43と、このルーバ43を、支点を中心にして左右方向または前後方向(水平方向)に所定の揺動範囲にて揺動運動(スイング)させるリンクレバー44と、アームプレート45を介してリンクレバー44を左右方向に往復運動させるルーバモータ(例えばDCサーボモータ)43aとから構成されている。なお、複数のルーバ43は、本発明の吹出状態可変手段に相当するもので、複数個の中席側、後席側FACE吹出口31b、32bから吹き出される空調風の吹出方向をそれぞれ左右方向または前後方向に変更する吹出方向可変手段を構成する。
【0035】
各吹出状態可変装置のルーバ上下方向揺動機構は、RrFACEグリル49内において車両400の進行方向に対して上下方向に複数列設されたルーバフィン(以下ルーバと言う)46と、このルーバ46を、支点を中心にして上下方向に所定の揺動範囲にて揺動運動(スイング)させるリンクレバー47と、アームプレート48を介してリンクレバー47を上下方向に往復運動させるルーバモータ(例えばDCサーボモータ)46aとから構成されている。なお、複数のルーバ46は、本発明の吹出状態可変手段に相当するもので、複数個の中席側、後席側FACE吹出口31b、32bから吹き出される空調風の吹出方向を上下方向に変更する吹出方向可変手段を構成する。
【0036】
次に、エアコンECU50を図1、図4ないし図6に基づいて説明する。エアコンECU50は、本発明の吹出状態制御手段、中心位置指令手段、目標位置決定手段、目標揺動範囲決定手段、目標位置補正手段に相当するもので、内部にCPU、ROM、RAM等からなる周知のマイクロコンピュータが設けられている。このエアコンECU50は、各センサからのセンサ信号が図示しない入力回路によってA/D変換された後に、マイクロコンピュータに入力されるように構成されている。そして、エアコンECU50は、車両400のイングニッションスイッチ(図示せず)またはアクセサリースイッチ(図示せず)がONされることにより、車両400に搭載されたバッテリから給電され、演算処理が可能となる。
【0037】
エアコンECU50の入力端子には、第1、第2空調ユニット1a、1bの空調制御に必要であり、第1、第2空調ゾーンの空調状態に影響を及ぼす空調環境因子を検出する各種センサが電気的に接続されている。具体的には、第1、第2空調ゾーン内の空気温度(以下第1、第2内気温度と言う)を検出する第1、第2内気温度センサ91a、91bと、車室外の空気温度(以下外気温度と言う)を検出する外気温度センサ92と、主として第1空調ゾーン内に進入する日射量を検出する日射センサ93とが電気的に接続されている。
【0038】
さらに、第1、第2エバポレータ10a、10bを通過した直後の空気温度(以下第1、第2エバ後温度と言う)を検出する第1、第2エバ後温度センサ95a、95bと、エンジンの冷却水の温度(以下冷却水温度と言う)を検出する冷却水温度センサ96と、複数個の中席側、後席側FACE吹出口31b、32bから吹き出される空調風の吹出方向を検出する複数個のポテンショメータ97および複数個のポテンショメータ98と、第1、第2空調ゾーン内の空気温度を所望の温度(以下第1、第2設定温度と言う)に設定する第1、第2温度設定スイッチ64a、64bとが電気的に接続されている。
【0039】
これらのうち第2内気温度センサ91bは、本発明の内気温度検出手段に相当するものである。そして、日射センサ93は、本発明の日射量検出手段に相当するもので、第1、第2空調エリア内に照射される日射量(日射強度)を検知する日射強度検知手段(例えばフォトトランジスタ、フォトダイオード、太陽電池)、太陽光の照射方向(日射方向、日射方位角)を検知する日射方向検知手段(例えばフォトダイオード、太陽電池、サーミスタ等の感温素子)、および太陽光の高度(日射仰角、日射高度、太陽仰角)を検知する日射高度検知手段(例えばフォトダイオード、太陽電池、サーミスタ等の感温素子)を有している。
【0040】
複数個のポテンショメータ97は、本発明の吹出状態検出手段に相当するもので、ルーバ43の左右方向の停止位置および現在位置(検出角度)を検知することにより、ルーバ43の左右方向のルーバ角度を検出するルーバ角度検出手段であると共に、中席側、後席側FACE吹出口31b、32bから吹き出される空調風の左右方向の風向を検出する吹出方向検出手段であり、ルーバ水平方向揺動機構近傍にそれぞれ設けられている。複数個のポテンショメータ98は、本発明の吹出状態検出手段に相当するもので、ルーバ46の上下方向の停止位置および現在位置(検出角度)を検知することにより、ルーバ46の上下方向のルーバ角度を検出するルーバ角度検出手段であると共に、中席側、後席側FACE吹出口31b、32bから吹き出される空調風の上下方向の風向を検出する風向検出手段であり、ルーバ上下方向揺動機構近傍にそれぞれ設けられている。具体的には、複数個のポテンショメータ97、98は、図5および図6に示したように、リンクレバー44、47と一体的に左右方向、前後方向、上下方向に往復移動する可動接点97a、98a、およびこの可動接点97a、98aの移動により分圧比を変える抵抗素子97b、98b等よりなる。
【0041】
第1温度設定スイッチ64aは、上述のインストルメントパネル40上に設置されており、このインストルメントパネル40上にはその他に吹出口モードを切り替える吹出口切替スイッチ(図示せず)、内外気モードを切り替える内外気切替スイッチ(図示せず)、第1空調ゾーンを自動的に温度調節するように指令するAUTOスイッチ、および第1空調ユニット1aの作動を停止させるOFFスイッチ等が設置されている。第2温度設定スイッチ64bは、本発明の温度設定手段に相当するもので、車両400の後席側で、例えば天井部分に配設されたコントローラ(図示せず)またはリモートコントローラ(図示せず)の操作パネル上に設置されており、この操作パネル上にはその他に吹出口モードを切り替える吹出口切替スイッチ(図示せず)、第2空調ゾーンを自動的に温度調節するように指令するAUTOスイッチ(図示せず)、および第2空調ユニット1bの作動を停止させるOFFスイッチ(図示せず)等が設置されている。
【0042】
一方、エアコンECU50の出力端子には、上述のサーボモータ5a、ブロワモータ9a、9b、図示しないコンプレッサの電磁クラッチ、冷凍サイクルの第1、第2電磁弁、サーボモータ17a、17b、29a、39b、複数個のルーバモータ43aおよび複数個のルーバモータ46aが電気的に接続されている。つまり、エアコンECU50は、上述の入力端子から取り入れられた空調情報に基づいて、演算処理を行い、所望の空調状態となるように出力端子から制御信号を出力し、上記各空調機能部品を制御する。これによって、この車両用空調装置は自動的に車室内の温度、内外気モードの切り替え、吹出口モードの切り替え、ルーバ43、46のオートストップ位置、ルーバ43、46のオートスイングの中心位置、および送風量を自動コントロールする。
【0043】
〔第1実施形態の空調制御方法〕
次に、本実施形態のエアコンECU50による空調制御方法を、図1ないし図15に基づいて簡単に説明する。ここで、図7はエアコンECU50の制御プログラムの一例を示したフローチャートである。
【0044】
先ず、データやフラグなどの初期化(リセット)を行う(初期設定手段:ステップS1)。具体的には、予め決められた初期設定位置で各FACE吹出口のルーバ43、46が停止するように初期設定(リセット)する。そして、RAM等が上記の初期設定位置をルーバ43、46のオートストップ位置(停止位置)として記憶する(停止位置記憶手段)。
また、予め決められた初期設定位置を中心にしたスイング範囲で各FACE吹出口のルーバ43、46が揺動運動するように初期設定(リセット)する。そして、RAM等が上記の初期設定位置をルーバ43、46のオートスイング(目標揺動範囲)の中心位置として記憶する(中心位置記憶手段)。
【0045】
次に、第1、第2温度設定スイッチ64a、64bから空調情報としてそれぞれ第1空調ゾーンの第1設定温度Tset(Fr)および第2空調ゾーンの第2設定温度Tset(Rr)を読み込み、一時的にRAMに記憶する(第1、第2温度設定手段:ステップS2)。
上述の各センサから、第1空調ゾーンの空調処理に必要な外気温度TAM、第1内気温度TR(Fr)、日射量TS、第1エバ後温度TE(Fr)および冷却水温度TWと、第2空調ゾーンの空調処理に必要な第2内気温度TR(Rr)および第2エバ後温度TE(Rr)とを読み込み、一時的にRAMに記憶する(第1、第2内気温度検出手段:ステップS3)。なお、外気温度TAM、日射量TSおよび冷却水温度TWは第2空調ゾーンの空調処理にも必要である。
【0046】
次に、複数個のRrFACEグリル49に組み付けられたポテンショメータ97にて検出されるルーバ43の検出角度(現在位置)θs、およびポテンショメータ98にて検出されるルーバ46の検出角度(現在位置)θsを読み込む(吹出状態検出手段:ステップS4)。
次に、下記に示す数1の式に基づいて、第1空調ユニット1aの吹出口から吹き出される空調風の第1目標吹出温度TAO(Fr)を算出する(第1目標吹出温度決定手段:ステップS5)。
【0047】
【数1】

ここで、Kset(Fr)、KR(Fr)、KAM(Fr)、KS(Fr)はそれぞれ第1設定温度Tset(Fr)、第1内気温度TR(Fr)、外気温度TAMおよび日射量TSの補正ゲインであり、C(Fr)は補正定数である。
【0048】
次に、上述のステップS5にて算出されたTAO(Fr)に基づいて図8の特性図から第1空調ユニット1aの内外気モードを決定する(ステップS6)。なお、図8中、SW1は内外気切替ドア3aの目標開度であり、本実施形態においては内気導入口6aを全開し、外気導入口7aを全閉する場合を目標開度SW1=0%とし、内気導入口6aを全閉し、外気導入口7aを全開する場合を目標開度SW1=100%とする。
【0049】
次に、上述のステップS5にて算出されたTAO(Fr)に基づいて図9の特性図から第1空調ユニット1aの吹出口モードを決定する(ステップS7)。
次に、第1空調ユニット1aの第1ブロワ4aの送風量を決定する。実際には、上述のステップS5にて算出されたTAO(Fr)に基づいて図10の特性図からブロワモータ9aに印加されるブロワ制御電圧(V)を決定する(ステップS8)。
【0050】
次に、下記に示す数2の式に基づいて、第2空調ユニット1bの吹出口から吹き出される空調風の第2目標吹出温度TAO(Rr)を算出する(第2目標吹出温度決定手段:ステップS9)。
【0051】
【数2】

ここで、Kset(Rr)、KR(Rr)、KAM(Rr)、KS(Rr)はそれぞれ第2設定温度Tset(Rr)、第2内気温度TR(Rr)、外気温度TAMおよび日射量TSの補正ゲインであり、C(Rr)は補正定数である。
【0052】
次に、上述のステップS9にて算出されたTAO(Rr)に基づいて図11の特性図から第2空調ユニット1bの吹出口モードを決定する(ステップS10)。
次に、図13ないし図15のルーチンが起動して、各吹出状態可変装置の制御状態を決定する。具体的には、第2空調ユニット1bの複数個の中席側、後席側FACE吹出口31b、32b、つまり複数個のRrFACEグリル49からの空調風の吹出方向を決定する(吹出方向決定手段:ステップS11)。次に、第2空調ユニット1bの第2ブロワ4bの送風量を決定する。実際には、上述のステップS9にて算出されたTAO(Rr)に基づいて図12の特性図からブロワモータ9bに印加されるブロワ制御電圧(V)を決定する(ステップS12)。次に、上述のステップS5およびステップS9にて算出されたTAO(Fr)、TAO(Rr)に基づいて第1、第2A/Mドア15a、15bの各目標開度θ(Fr)、θ(Rr)を下記の数3の式および数4の式から算出する(ステップS13)。
【0053】
【数3】

【数4】

【0054】
次に、上述のステップS4〜ステップS13にて決定または算出された空調制御状態となるように、上記の各種空調機能部品に制御信号を出力する(ステップS14)。次に、所定の制御周期時間(τ)が経過したか否かを判定する(ステップS15)。この判定結果がYESの場合には、ステップS2にリターンされ、その判定結果がNOの場合には、制御周期時間(τ)の経過を待つ。
【0055】
次に、エアコンECU50によるスイングルーバ制御決定を図13ないし図15に基づいて説明する。ここで、図13ないし図15はエアコンECU50によるスイングルーバ制御決定を示したフローチャートである。このフローチャートは、各RrFACEグリル49の吹出状態可変装置毎に行われる。
【0056】
先ず、ステップS10で決定された第2空調ユニット1bの吹出口モードがFACEモードまたはB/Lモードであるか否かを判定する(ステップS21)。この判定結果がNOの場合には、図13のルーチンを抜ける。
また、ステップS21の判定結果がYESの場合には、クールダウン時であるか否かを判定する。具体的には、外気温度TAMが30℃以上で、第2空調ユニット1bの起動(エンジン始動)時から所定時間(例えば10分間)以内の時、あるいは第2設定温度Tset(Rr)よりも第2内気温度TR(Rr)が例えば5℃以上高い時であるか否かを判定する(ステップS22)。この判定結果がYESの場合には、図14のルーチンが起動して、ルーバ43、46を停止(オートストップ)させる(ステップS23)。その後に、図13のルーチンを抜ける。
【0057】
また、ステップS22の判定結果がNOの場合には、第2内気温度TR(Rr)が所定の温度α(例えば30℃)以上であるか否かを判定する(ステップS24)。この判定結果がYESの場合には、ステップS23に進む。
また、ステップS24の判定結果がNOの場合には、日射量TSが一定量β(例えば500W/m2 )以上であるか否かを判定する(ステップS25)。この判定結果がYESの場合には、ステップS23に進む。
また、ステップS25の判定結果がNOの場合には、日射左右角が一定角度γ(例えば60°)以上であるか否かを判定する(ステップS26)。この判定結果がYESの場合には、ステップS23に進む。
また、ステップS26の判定結果がNOの場合には、図15のルーチンが起動して、ルーバ43、46をオートスイングさせる(ステップS27)。その後に、図13のルーチンを抜ける。
【0058】
次に、図14のルーチンが起動すると、前回(例えば初期設定)の通りのルーバ43、46のオートストップ位置θcをRAM等から読み込む(停止位置指令手段:ステップS31)。
次に、ステップS31で読み込んだオートストップ位置θc、すなわち、空調風の吹出方向が中席側、後席側の乗員が居る位置でルーバ43、46が停止するようにルーバモータ43a、46aを制御する(ステップS32)。
【0059】
次に、オートストップ中、すなわち、ルーバモータ43a、46aの作動停止中に、各ポテンショメータ97にて検出したルーバ43の左右方向の検出角度(現在位置)θsがステップS31で読み込んだオートストップ位置(停止位置)θcと異なっているか否かを判定する。また、各ポテンショメータ98にて検出したルーバ46の上下方向の検出角度(現在位置)θsがステップS31で読み込んだオートストップ位置(停止位置)θcと異なっているか否かを判定する(ステップS33)。この判定結果がNOの場合には、図14のルーチンを抜ける。
【0060】
また、ステップS33の判定結果がYESの場合には、ルーバ43、46のオートストップ位置θcを補正する。具体的には、各ポテンショメータ97、98にて検出したルーバ43、46の検出角度θsをオートストップ位置θcとして記憶する。すなわち、オートストップ位置θcを書き換える(停止位置補正手段、停止位置記憶手段:ステップS34)。
次に、ルーバ43、46のオートスイングの中心位置θcを補正する。具体的には、各ポテンショメータ97、98にて検出したルーバ43、46の検出角度θsをオートスイングの中心位置として記憶する。すなわち、オートスイングの中心位置θcを書き換える(中心位置補正手段、中心位置記憶手段:ステップS35)。その後に、図14のルーチンを抜ける。
【0061】
一方、図15のルーチンが起動すると、前回(例えば初期設定)の通りのオートスイングの中心位置θcを読み込む(中心位置指令手段:ステップS41)。
次に、ステップS41で読み込んだ中心位置θcを中心としたオートスイング範囲(目標揺動範囲)を決定する(目標揺動範囲決定手段:ステップS42)。
次に、前回(例えば初期設定)の通りの中心位置θcを中心に、すなわち、空調風の吹出方向が中席側、後席側の乗員が居る位置を中心にルーバ43、46がオートスイング範囲(例えば往復120°)でスイングするようにルーバモータ43a、46aを制御する(ステップS43)。
次に、ルーバモータ43a、46aの作動速度から予測される、ルーバ43、46の目標ルーバ角度(目標位置)θnを算出する(目標位置決定手段:ステップS44)。具体的には、ルーバ43、46のスイング速度が一定速度(例えば10°/sec)の時には、図15のルーチンの制御周期時間が例えば1秒間とすると10°ルーバ43、46がスイングすることになるので、1秒後の目標ルーバ角度θnは{前回の目標位置(θn)+10°}となる。
【0062】
次に、オートスイング中、すなわち、ルーバモータ43a、46aの作動中の場合に、各ポテンショメータ97にて検出したルーバ43の左右方向の検出角度(現在位置)θsが、ステップS44で決定した目標ルーバ角度θnと異なっているか否かを判定する。また、各ポテンショメータ98にて検出したルーバ46の上下方向の検出角度(現在位置)θsが、ステップS44で決定した目標ルーバ角度θnと異なっているか否かを判定する(ステップS45)。この判定結果がNOの場合には、図15のルーチンを抜ける。
【0063】
また、ステップS45の判定結果がYESの場合には、ルーバ43、46のオートストップ位置θcを補正する。具体的には、各ポテンショメータ97、98にて検出したルーバ43、46の検出角度θsをオートストップ位置θcとして記憶する。すなわち、オートストップ位置θcを書き換える(停止位置補正手段、停止位置記憶手段:ステップS46)。
次に、ルーバ43、46のオートスイングの中心位置θcを補正する。具体的には、各ポテンショメータ97、98にて検出したルーバ43、46の検出角度θsをオートスイングの中心位置θcとして記憶する。すなわち、オートスイングの中心位置θcを書き換える(中心位置補正手段、中心位置記憶手段:ステップS47)。その後に、図15のルーチンを抜ける。
【0064】
〔第1実施形態の作用〕
次に、本実施形態の車両用空調装置の作用を図1ないし図17に基づいて簡単に説明する。
【0065】
例えば第1空調ユニット1aの吹出口モードがFACEモード(B/Lモードでも良い)の場合には、第1ブロワ4aの作用によって内気導入口6aから第1空調ダクト2a内に吸い込まれた内気が第1エバポレータ10aで例えば4℃程度まで冷やされた後に、第1A/Mドア15aの開度に応じて第1ヒータコア13aを通過する空気量が調節されて、前席側の乗員が設定した第1設定温度Tset(Fr)に応じた最適な温度の空調風となる。
その後に、空調風(冷風)は、第1空調ダクト2aの最下流側端で開口した複数個の前席側FACE吹出口21aから、車両400の車室内の前席側の第1空調ゾーン内に吹き出される。特に冷風は、第1空調ゾーン内の前席側の乗員の頭胸部に向けて吹き出される。
【0066】
一方、第2空調ユニット1bの吹出口モードがFACEモード(B/Lモードでも良い)の場合には、第1空調ユニット1aと同様にして、第2ブロワ4bの作用によって内気導入口6bから第2空調ダクト2b内に吸い込まれた内気が第2エバポレータ10bで例えば4℃程度まで冷やされた後に、第2A/Mドア15bの開度に応じて第2ヒータコア13bを通過する空気量が調節されて、中席側、後席側の乗員が設定した第2設定温度Tset(Rr)に応じた最適な温度の空調風となる。
その後に、空調風(冷風)は、第2空調ダクト2bの最下流側端で開口した複数個の中席側、後席側FACE吹出口31b、32bから、車両400の車室内の後席側の第2空調ゾーン内に吹き出される。特に冷風は、第2空調ゾーン内の中席側、後席側の乗員の頭胸部に向けて吹き出される。
【0067】
ここで、車両400の車室内の中席側、後席側の第2空調ゾーン内の空調状態がクールダウン時や日射あり時の場合には、図16および図17(a)に示したように、中席側、後席側FACE吹出口31b、32bから吹き出される空調風を中席側、後席側の乗員に局所的(スポット的)に向けようと、初期設定されているオートストップ位置(初期設定位置)にルーバ43、46が駆動された後にルーバ43、46が停止する。このときの空調風の吹出方向を、図16に初期設定時の矢印で、図17(a)に矢印で示す。
ところが、図16に示したように、中席側の乗員が中席402を180°回して回転対面状態にしたり、後席側の乗員が後席403を車両400の後方側にスライドさせたりする等して、上記の作動後にルーバ43、46が向いた方向、つまり初期設定により決められた空調風の吹出方向と中席側、後席側の乗員の居る位置がずれてしまうことがある。
【0068】
この場合には、中席側の乗員はルーバ43、46に直接触れてルーバ43、46を自分の方へ向けることにより、中席側FACE吹出口31bから吹き出される空調風の吹出方向を自分の方(図16のシート移動後の矢印方向)へ向ける。また、後席側の乗員はルーバ43、46に直接触れてルーバ43、46を自分の方へ向けることにより、図17(b)に示したように、中席側、後席側FACE吹出口31b、32bから吹き出される空調風の吹出方向を自分の方(図16の黒点入り矢印方向)へ向ける。
【0069】
以上のように、中席側、後席側の乗員がルーバ43、46を操作した場合で、しかもルーバ43、46がオートストップの場合には、ルーバモータ43a、46aの作動が停止しているのにも拘らず、各ポテンショメータ97、98の検出角度、すなわち、ルーバ43、46の現在位置(ポテンショメータの出力信号)が変化しているのをエアコンECU50が検出することになる。このとき、エアコンECU50は、中席側、後席側の乗員の居る位置がシート移動後の位置であると判断して、予め記憶されていたルーバ43、46のオートストップ位置およびオートスイングの中心位置を今回検出した検出角度に補正して記憶するようにしている。
【0070】
したがって、上記のようなクールダウン時や日射あり時の状態から、第2空調ユニット1bが定常運転されている時(例えば第2設定温度に第2内気温度が接近している時)や日射なし時の状態に空調状態が変化して、ルーバ43、46を所定のルーバ角度でスイングさせるスイングモードに切り替わった場合でも、中席側、後席側の乗員が向けたルーバ43、46の位置をオートスイングの中心位)として書き換え、図17(b)に示したように、その書き換えた中心位置(図17の破線位置)を中心にしてルーバ43、46が所定のスイング範囲(例えば往復120°)でスイングすることになる。
なお、この補正されたルーバ43、46のオートストップ位置およびオートスイングの中心位置は、上下方向および左右方向共に更新される。その後、クールダウン時や日射あり時等、中席側、後席側の乗員に局所的(スポット的)に向けるようにルーバ43、46をオートストップする時は、この補正されたオートストップ位置を目標に制御される。
【0071】
一方、中席側、後席側の乗員がルーバ43、46を操作した場合で、しかもルーバ43、46がオートスイングの場合には、図16および図17(a)、(b)に示したように、初期設定されたスイング範囲では理想のスイング範囲を外れていることを意味しているので補正をかける。この場合も、ルーバ43、46のオートストップ位置およびオートスイングの中心位置は、上下方向および左右方向共に更新される。
ここで、中席側、後席側の乗員がルーバ43、46を操作することにより、ルーバ43、46のスイング範囲が初期設定されたスイング範囲より大幅にずれていた場合は、オートスイング中に検出するはずのないルーバ角度が検出されることになる。このため、エアコンECU50が中席側、後席側の乗員がルーバ43、46に直接触れてルーバ43、46を操作したことを容易に検出できる。
このとき、エアコンECU50は、このオートスイング範囲から外れた場所に中席側、後席側の乗員が居るものとして、今回検出した検出角度θsをオートスイングの中心位置として記憶し、その中心位置を中心にスイングするように補正する。その後に、第2空調ゾーン内の空調状態が変化して、クールダウン時や日射あり時のように、中席側、後席側の乗員に空調風を局所的(スポット的)に向けてオートルーバ制御を行いたい時は、補正された中心位置をオートストップ位置として制御される。
【0072】
一方、オートスイングのスイング範囲内に中席側、後席側の乗員が操作した時は複雑となる。その理由は、ルーバ43、46のスイングスピード(ルーバモータ43a、46aの作動速度)は一定速度であるため、例えば往復120°のスイング範囲でスイングしているルーバ43、46が12秒かけて1回スイングしているとすると、エアコンECU50は1回のルーバ43、46の位置検出毎に2度のポテンショ変化を検出することになる。
それによって、ルーバ43、46のスイングスピード、つまりルーバモータ43a、46aの作動速度から予測した目標位置θnよりずれたことを検出した時、すなわち、各ポテンショメータ97、98により前回検出された検出角度θsより10°以上の大きい変化が検出された時には、明らかに、中席側、後席側の乗員の操作があったと判断できる(1秒間に5回検出するエアコンECU50の場合)。
したがって、今回検出された検出角度θsが中席側、後席側の乗員の居る位置であるとを判断して、その検出角度θsをオートスイングの中心位置として書き換え、その書き換えた中心位置を中心にして所定のスイング範囲でスイングするように制御する。その後に、第2空調ゾーン内の空調状態が変化して、クールダウン時や日射ある時のように、中席側、後席側の乗員に空調風を局所的(スポット的)に向けてルーバ制御を行いたい時には、補正されたオートスイングの中心位置(=オートストップの位置)を目標に制御される。
【0073】
〔第1実施形態の効果〕
以上のように、前後方向に後席403を大きく移動させるシートスライド、中席402を180°回転させる回転対面シート、全席をフルリクライニングさせるオールフラットシートなどのように、複数のシートアレンジメントが可能な車両400の場合でも、中席側、後席側の乗員がルーバ43、46を直接触れてルーバ43、46を操作したことをエアコンECU50にて検出することにより、中席側、後席側の乗員の居る位置に応じた空調風の目標吹出方向の修正を簡単に行うことができる。
この結果、仮に中席402や後席403のシートアレンジメントを変更することにより、中席側、後席側の乗員の居る位置が初期設定位置から大幅にずれても、記憶されているオートストップ位置およびオートスイングの中心位置をシート移動後のものに書き換えるようにしているので、シート移動後に、中席側、後席側FACE吹出口31b、32bから吹き出される空調風の吹出方向が中席側、後席側の乗員を外すことはない。
したがって、中席側、後席側の乗員の居る位置が初期設定位置から大幅にずれていても、中席側、後席側FACE吹出口31b、32bから吹き出される空調風の吹出方向が乗員に向かうことで乗員の冷房フィーリングを飛躍的に向上することができる。また、中席側、後席側の乗員の居る位置を検出する専用のセンサを追加する必要はないので、部品点数が減少し、車両400全体の製品価格を低下させることもできる。
【実施例2】
【0074】
〔第2実施形態の構成〕
図18ないし図30は本発明の第2実施形態を示したもので、図18は車両用空調装置の全体構成を示した図で、図19はエアコン操作パネルおよびDr側、Pa側ルーバ操作パネルを示した図である。
【0075】
本実施形態の車両用空調装置の空調ユニット1は、Dr側空調ゾーンとPa側空調ゾーンとの温度調節、オートルーバ制御およびマニュアルルーバ制御等を互いに独立して行うことが可能なエアコンユニットである。空調ユニット1は、空調ダクト2を備えている。この空調ダクト2の上流側には、サーボモータ5により駆動されて内気吸込口6と外気吸込口7とを開閉する内外気切替ドア3と、ブロワ駆動回路8によって制御されるブロワモータ9により回転駆動されるブロワ4とが設けられている。
そして、空調ダクト2内には、エバポレータ10が設けられている。また、そのエバポレータ10の下流側には、ヒータコア13が設けられている。なお、第1空気通路11および第2空気通路12は仕切り板14により区画されており、ヒータコア13は仕切り板14を貫通して設けられている。そして、ヒータコア13の上流側には、車室内のDr側空調ゾーンとPa側空調ゾーンとの温度調節を互いに独立して行うためのDr側、Pa側A/Mドア15、16が設けられている。そして、Dr側、Pa側A/Mドア15、16は、サーボモータ17、18により駆動される。
【0076】
第1空気通路11の下流側では、DEF吹出口20、Dr側センタFACE吹出口21、Dr側サイドFACE吹出口22およびDr側FOOT吹出口23が開口している。また、第2空気通路12の下流側では、Pa側センタFACE吹出口31、Pa側サイドFACE吹出口32およびPa側FOOT吹出口33が開口している。そして、第1、第2空気通路11、12内には、車室内のDr側とPa側との吹出口モードの設定を互いに独立して行うDr側、Pa側吹出口切替ドア24〜26、35、36が設けられている。そして、Dr側、Pa側吹出口切替ドア24〜26、35、36は、サーボモータ28、29、39により駆動される。ここで、Dr側、Pa側の吹出口モードとしては、FACEモード、B/Lモード、FOOTモード、F/Dモード、DEFモード等がある。
【0077】
そして、Dr側センタFACE吹出口21、Dr側サイドFACE吹出口22、Pa側センタFACE吹出口31およびPa側サイドFACE吹出口32には、吹出状態可変装置がそれぞれ取り付けられている。各吹出状態可変装置は、Dr側、Pa側センタグリル41、Dr側、Pa側サイドグリル42内にそれぞれ設けられている。なお、これらのDr側、Pa側センタ、サイドグリル41、42内の空気通路は、上記のDr側センタFACE吹出口21、Dr側サイドFACE吹出口22、Pa側センタFACE吹出口31およびPa側サイドFACE吹出口32として利用される。そして、それらのDr側、Pa側センタ、サイドグリル41、42内には、ルーバ水平方向揺動機構(図5参照)およびルーバ上下方向揺動機構(図6参照)がそれぞれ設けられている。ここで、本実施形態のルーバフィン43、46は、センタルーバまたはサイドルーバと言う。
【0078】
本実施形態のエアコンECU50には、図18および図19に示したように、エアコン操作パネル51、Dr側ルーバ操作(SWINGSW)パネル52およびPa側ルーバ操作(SWINGSW)パネル53から各スイッチ信号が入力される。エアコン操作パネル51は、車室内前面の車幅方向の中央部、つまりインストルメントパネル40に一体的に設置されている。エアコン操作パネル51には、エアコン(A/C)スイッチ54、吸込口モード切替スイッチ55、フロントデフロスタスイッチ56、リヤデフロスタスイッチ57、DUALスイッチ58、吹出口モード切替スイッチ59、ブロワ風量切替スイッチ60、オートスイッチ61、オフスイッチ62、液晶表示装置63、Dr側温度設定スイッチ64およびPa側温度設定スイッチ65等が設置されている。
【0079】
上記のうちのDUALスイッチ58は、Dr側空調ゾーン内の温度調節とPa側空調ゾーン内の温度調節とを互いに独立して行う左右独立温度コントロールを指令する左右独立制御指令手段である。また、吹出口モード切替スイッチ59は、FACEモード、B/Lモード、FOOTモードまたはF/Dモードのうちのいずれかの吹出口モードに固定する吹出口切替手段である。
ブロワ風量切替スイッチ60は、ブロワ4のブロワ風量を段階的に切り替える風量切替手段である。そのブロワ風量切替スイッチ60は一回押す毎に、OFF、Lo、M1、M2、M3およびHiのように順に切り替わる。ブロワ風量切替スイッチ60を押して液晶表示装置63にOFFが表示されると、ブロワモータ9への通電を停止する。また、Lo、M1、M2、M3およびHiが表示されると、ブロワモータ9に印加するブロワ制御電圧VAを最小値(最小風量)、第1中間値(第1中間風量)、第2中間値(第2中間風量)、第3中間値(第3中間風量)および最大値(最大風量)に固定される。
【0080】
そして、Dr側温度設定スイッチ64は、Dr側空調ゾーン内の温度を所望の温度に設定するためのDr側温度設定手段である。また、Pa側温度設定スイッチ65は、Pa側空調ゾーン内の温度を所望の温度に設定するためのPa側温度設定手段である。Dr側温度設定スイッチ64およびPa側温度設定スイッチ65は、20℃〜30℃の間で例えば0.5℃毎にDr側設定温度およびPa側設定温度を設定可能なものである。
Dr側ルーバ操作パネル52は、インストルメントパネル40の中央部においてエアコン操作パネル51の右隣に設置され、Dr側センタ、サイドグリル41、42の両方をスイング可能にするMATCHスイッチ66、Dr側センタグリル41をスイング可能にするCENTERスイッチ67、Dr側サイドグリル42をスイング可能にするSIDEスイッチ68およびスイングモード切替スイッチ69とから構成されている。
【0081】
上記のうちMATCHスイッチ66、CENTERスイッチ67、SIDEスイッチ68は、平常位置(OFF)と押込位置(ON)とを持つプッシュ式スイッチである。スイングモード切替スイッチ69は、STOP(スイング停止)、AUTO(オートスイング)、Rr、U−DSWING(上下方向スイング)、R−LSWING(左右方向スイング)の各切替位置を有するロータリー式スイッチである。
なお、スイングモード切替スイッチ69は、AUTOに設定されると、Dr側センタグリル41またはDr側サイドグリル42のセンタ、サイドルーバ43、46をオートルーバ制御を行うように指令を出力する。そして、スイングモード切替スイッチ69は、Rrに設定されると、車両の前部座席側空調ゾーンよりも後部座席側空調ゾーンの方が風量配分が多くなるようにセンタ、サイドルーバ43、46をスイングさせる。例えばDr側センタグリル41のセンタ、サイドルーバ43、46のスイング速度を、Dr側空調ゾーン内の乗員に当たるように空調風が吹き出すゾーンでは速く、Dr側空調ゾーン内の乗員に当たらないように空調風が吹き出すゾーンでは遅くする。
【0082】
また、スイングモード切替スイッチ69は、U−DSWINGに設定されると、Dr側センタグリル41またはDr側サイドグリル42のセンタ、サイドルーバ46を所定のスイング範囲で上下方向(U−D方向)にスイングさせるマニュアルルーバ制御を行うように指令を出力する。さらに、スイングモード切替スイッチ69は、R−LSWINGに設定されると、Dr側センタグリル41またはDr側サイドグリル42のセンタ、サイドルーバ43を所定のスイング範囲で左右方向(R−L方向)にスイングさせるマニュアルルーバ制御を行うように指令を出力する。
Pa側ルーバ操作パネル53は、Dr側ルーバ操作パネル52と同様にして、Pa側センタ、サイドグリル41、42の両方をスイング可能にするMATCHスイッチ70、Pa側センタグリル41をスイング可能にするCENTERスイッチ71、Pa側サイドグリル42をスイング可能にするSIDEスイッチ72およびスイングモード切替スイッチ73とから構成されている。
【0083】
上記のうちMATCHスイッチ70、CENTERスイッチ71、SIDEスイッチ72は、平常位置(OFF)と押込位置(ON)とを持つプッシュ式スイッチである。スイングモード切替スイッチ73は、STOP(スイング停止)、AUTO(オートスイング)、Rr、U−DSWING(上下方向スイング)、R−LSWING(左右方向スイング)の各切替位置を有するロータリー式スイッチである。
なお、スイングモード切替スイッチ73は、スイングモード切替スイッチ69と同様にして、AUTOに設定されると、Pa側センタグリル41またはPa側サイドグリル42のセンタ、サイドルーバ43、46を自動制御するオートルーバ制御を行うように指令を出力する。そして、スイングモード切替スイッチ73は、Rrに設定されると、車両の前部座席側空調ゾーンよりも後部座席側空調ゾーンの方が風量配分が多くなるようにセンタ、サイドルーバ43、46をスイングさせる。例えばPa側センタグリル41のセンタ、サイドルーバ43、46のスイング速度を、Pa側空調ゾーン内の乗員に当たるように空調風が吹き出すゾーンでは速く、Pa側空調ゾーン内の乗員に当たらないように空調風が吹き出すゾーンでは遅くする。
【0084】
また、スイングモード切替スイッチ73は、U−DSWINGに設定されると、Pa側センタグリル41またはPa側サイドグリル42のセンタ、サイドルーバ46を所定のスイング範囲で上下方向(U−D方向)にスイングさせるマニュアルルーバ制御を行うように指令を出力する。さらに、スイングモード切替スイッチ73は、R−LSWINGに設定されると、Pa側センタグリル41またはPa側サイドグリル42のセンタ、サイドルーバ43を所定のスイング範囲で左右方向(R−L方向)にスイングさせるマニュアルルーバ制御を行うように指令を出力する。
ここで、図19に示したように、Dr側、Pa側センタグリル41間には、Dr側、Pa側センタFACE吹出口21、31を開閉するシャッタ(図示せず)を手動操作するためのドア開閉スイッチ74が設けられている。また、Dr側、Pa側センタグリル41およびDr側、Pa側サイドグリル42には、各センタ、サイドルーバ43、46のルーバ方向を手動操作により左右方向、上下方向に動かすためのノブ75、76が設けられている。
【0085】
さらに、エアコンECU50には、内気温度を検出する内気温度センサ91、外気温度を検出する外気温度センサ92、およびDr側、Pa側空調ゾーン内に照射される日射量を検出するDr側、Pa側日射量検知手段としての日射センサ93が接続されている。また、Dr側、Pa側空調ゾーン内に吹き出す空調風の吹出温度を検出するDr側、Pa側吹出温度センサ94a、94b、エバポレータ10による実際の空気冷却度合を検出するエバ後温度センサ95、車両のエンジンの冷却水の温度を検出する冷却水温度センサ96、および各吹出状態可変装置のセンタ、サイドルーバ43、46の現在位置(空調風の吹出方向)を検出するポテンショメータ97、98が接続されている。
なお、日射センサ93は、Dr側、Pa側空調ゾーン内に照射される日射量(日射強度)を検知する日射強度検知手段(例えばフォトトランジスタ、フォトダイオード、太陽電池)、太陽光の照射方向(日射方向、日射方位角)を検知する日射方向検知手段(例えばフォトダイオード、太陽電池、サーミスタ等の感温素子)、および太陽光の高度(日射仰角、日射高度、太陽仰角)を検知する日射高度検知手段(例えばフォトダイオード、太陽電池、サーミスタ等の感温素子)を有している。
【0086】
〔第2実施形態の制御方法〕
次に、本実施形態のエアコンECU50による制御方法を、図20ないし図30に基づいて説明する。ここで、図20はエアコンECU50の制御プログラムの一例を示したフローチャートである。
【0087】
先ず、データ処理用メモリ(RAM)の記憶内容等を初期化する(ステップ100)。次に、各種データをデータ処理用メモリに読み込む(ステップ110)。次に、上記のような記憶データおよび下記の数5の式、数6の式に基づいて、Dr側の目標吹出温度TAO(Dr)、およびPa側の目標吹出温度TAO(Pa)を演算する(ステップ120)。
【数5】

【数6】

【0088】
但し、Tset(Dr)およびTset(Pa)は、それぞれDr側空調ゾーン内の設定温度、Pa側空調ゾーン内の設定温度を表し、TSは、それぞれDr側、Pa側空調ゾーン内の日射量を表す。また、TR、TAMは、それぞれ内気温度、外気温度を表す。Kset、KR、KAM、KS、Kd(Dr)およびKd(Pa)は、それぞれ温度設定ゲイン、内気温度ゲイン、外気温度ゲイン、日射量ゲイン、第1、第2空調ゾーンの温度差補正ゲインを表す。
なお、Ka(Dr)、Ka(Pa)は、それぞれ外気温度TAMがDr側空調ゾーンおよびPa側空調ゾーンの各空調温度に及ぼす影響度合を補正するゲインを表し、CD(Dr)、CD(Pa)は上記影響度合に応じた定数、Cは補正定数を表す。ここで、Ka(Dr)、Ka(Pa)、CD(Dr)、CD(Pa)といった値は、車両の形や大きさ、空調ユニット1の吹出風向等様々なパラメータで変化する。
【0089】
次に、上記のステップ120で求めたDr側の目標吹出温度TAO(Dr)およびPa側の目標吹出温度TAO(Pa)と、図21の特性図に示した目標吹出温度に対するブロワ制御電圧特性とに基づいてブロワモータ9に印加するブロワ制御電圧VA(Dr)、VA(Pa)を演算する(ステップ130)。次に、上記のステップ120で求めたDr側の目標吹出温度TAO(Dr)およびPa側の目標吹出温度TAO(Pa)と、図22の特性図に示した目標吹出温度に対する吹出口モード特性とに基づいてDr側空調ゾーンおよびPa側空調ゾーンの各吹出口モードを決定する(ステップ140)。
なお、エアコン操作パネル51に設けられた吹出口モード切替スイッチ59を操作することにより、FACEモード、B/Lモード、FOOTモードまたはF/Dモードのうちのいずれかの吹出口モードに固定される。ここで、本実施形態では、フロントデフロスタスイッチ56を操作するとDEFモードが設定される。また、吹出口モードがFOOTモード、F/DモードまたはDEFモードであっても、Dr側サイドFACE吹出口22およびPa側サイドFACE吹出口32は常に開口している。
【0090】
次に、各センタ、サイドグリル41、42の吹出状態可変装置を作動させる場合の作動パターンを決定する(ステップ150)。このステップ150の制御処理は後述する。
次に、Dr側A/Mドア15のA/M開度SW(Dr)(%)およびPa側A/Mドア16のA/M開度SW(Pa)(%)の演算を、Dr側の目標吹出温度TAO(Dr)およびPa側の目標吹出温度TAO(Pa)と、エバ後温度センサ95にて検知したエバ後温度(TE)と、冷却水温度センサ96にて検知した冷却水温度(TW)と、下記の数7の式および数8の式とに基づいて行う(ステップ160)。
【数7】

【数8】

【0091】
次に、ステップ130で決定されたブロワ制御電圧VAとなるようにブロワ駆動回路8に制御信号を出力する(ステップ170)。次に、ステップ160で決定されたA/M開度SW(Dr)およびA/M開度SW(Pa)となるようにサーボモータ17、18に制御信号を出力する(ステップ180)。次に、ステップ140で決定された吹出口モードとなるようにサーボモータ28、29、39に制御信号を出力する(ステップ190)。次に、ステップ150で決定された吹出方向、吹出位置およびスイング範囲となるようにルーバモータ43a、46aに制御信号を出力する(ステップ200)。
次に、上記ステップ150の制御処理について図23のフローチャートに基づいて説明する。最初に吹出口モードがFACEモードまたはB/Lモードであるか否かを判定する(ステップ301)。この判定結果がNOの場合には、サイドウインドへ空調風を吹き出すことにより、サイドウインドの防曇や冷輻射のカットを行う目的で、サイドルーバ43、46を近傍のサイドウインドへ向けるようにルーバ方向を決定する(ステップ302)。その後に、ステップ150の制御処理を抜ける。
【0092】
また、ステップ301の判定結果がYESの場合には、タイマーカウント中であるか否かを判定する(ステップ303)。この判定結果がYESの場合には、ステップ314の制御処理に進む。
また、ステップ303の判定結果がNOの場合には、冷房時にクールダウン中であるか否かを判定する。すなわち、下記の数9の式および数10の式を満足するか否かを判定する(ステップ304)。
【数9】

【数10】

但し、TRは内気温度センサ91にて検知した内気温度を表し、Tset(Dr)、Tset(Pa)はDr側、Pa側温度設定スイッチ64、65にて設定されたDr側、Pa側設定温度を表す。
【0093】
ステップ304の判定結果がYESの場合、すなわち、クールダウン中である場合には、センタルーバ43、46を、Dr側、Pa側空調ゾーン内の乗員の首付近A(図24参照)に向ける(固定する)ようにルーバ方向を決定し、サイドルーバ43、46を、Dr側、Pa側空調ゾーン内の乗員の首付近B(図24参照)に向ける(固定する)ようにルーバ方向を決定する(ステップ305)。これにより、Dr側、Pa側空調ゾーン内の乗員に空調風が集中して吹き出される(局所冷房)。
次に、乗員がセンタルーバ43、46を例えばCに動かしたか否かを判定する(ステップ306)。この判定結果がNOの場合には、センタルーバ43、46のスイング範囲の基準位置(目標位置)を前回の位置(A)にする(ステップ307)。また、ステップ306の判定結果がYESの場合には、センタルーバ43、46のスイング範囲の基準位置(目標位置)を今回の位置(C)に変更(補正)する(吹出状態補正手段:ステップ308)。
次に、乗員がサイドルーバ43、46を例えばDに動かしたか否かを判定する(ステップ309)。この判定結果がNOの場合には、サイドルーバ43、46のスイング範囲の基準位置(目標位置)を前回の位置(B)にする(ステップ310)。また、ステップ309の判定結果がYESの場合には、サイドルーバ43、46のスイング範囲の基準位置(目標位置)を今回の位置(D)に変更(補正)する(吹出状態補正手段:ステップ311)。
【0094】
次に、乗員によってルーバの操作があったか否かを判定する(ステップ312)。この判定結果がNOの場合には、ステップ150の制御処理を抜ける。
また、ステップ312の判定結果がYESの場合には、タイマーのカウントを開始し、操作のあったセンタルーバ43、46またはサイドルーバ43、46のスイングを図25(a)〜図25(c)に示した所定時間が経過するまで停止する(吹出状態補正手段:ステップ313)。ここで、図25(a)のグラフの横軸の吹出温度は、Dr側、Pa側吹出温度センサ94a、94bの検出値の他に、目標吹出温度、冷却水温度、A/M開度またはエバ後温度から求められる。この図25(a)で求めた基準の停止時間に内気温度や日射量に応じた補正時間を加えることで、より乗員の温感に合った所定時間を算出することができる。
なお、補正後の停止時間は最大30分間、最小30秒間とする。また、所定時間は、空調風の吹出方向が乗員に向かう方向の時に、空調熱負荷(例えば日射強度等)が大きい程長く設定され、且つ空調風の吹出方向が乗員を外す方向の時に、空調熱負荷(例えば日射強度等)が大きい程短く設定される。
【数11】

【0095】
次に、タイマーのカウントが終了したか否かを判定する。すなわち、所定時間が経過したか否かを判定する(ステップ314)。この判定結果がNOの場合には、ステップ150の制御処理を抜ける。
また、ステップ314の判定結果がYESの場合には、タイマーのカウントを終了して、ステップ313の制限を解除する(ステップ315)。その後に、ステップ150の制御処理を抜ける。
また、ステップ304の判定結果がNOの場合、すなわち、冷房時のクールダウン中ではない場合または暖房時の場合には、センタ、サイドルーバ43、46を、スイング範囲の基準位置を中心に、空調熱負荷に対応したスイング範囲でスイングするように決定する。ここで、初期設定では、センタルーバの基準位置は、Dr側、Pa側空調ゾーン内の乗員の首付近A(図24参照)、およびサイドルーバの基準位置はDr側、Pa側空調ゾーン内の乗員の首付近B(図24参照)である。
【0096】
そして、Dr側、Pa側空調ゾーン内の日射方向、日射量(日射強度)と、図26(a)の特性図とに基づいて、センタ、サイドルーバ43、46の揺動範囲(スイング範囲)θ(Dr)、θ(Pa)を決定する。そして、センタ、サイドルーバ43、46のスイング範囲と図26(b)の特性図と下記の数12の式、数13の式とに基づいて、図27に示した目標揺動範囲(目標スイング範囲)θ(Dr)、θ(Pa)を決定する(ステップ316)。
【数12】

【数13】

【0097】
次に、上記のステップ316で求めたセンタ、サイドルーバ43、46の目標スイング範囲θ(Dr)、θ(Pa)と、図28および図29の特性図とに基づいて、各センタ、サイドルーバ43、46の揺動速度を算出する(ステップ317)。例えばセンタ、サイドルーバ43、46のスイング範囲が広い程、センタ、サイドルーバ43、46の揺動速度を速くして揺動周期を一定にする。
次に、センタルーバ43、46のスイング中に乗員の操作があった否かを判定する(ステップ318)。ここで、この乗員操作の有無の判定は、図30(a)、(b)に示したように、ルーバモータ43a、46aの作動速度(ルーバの揺動速度)とポテンショメータ97、98の移動速度との差から求めても良いし、現状のスイング範囲外にポテンショメータ97、98の検出値が移動したことを判定しても良い。また、ルーバを動かすスイッチが有る時には、そのスイッチの入力を検出しても良い。
【0098】
ステップ318の判定結果がNOの場合には、センタルーバ43、46のスイング範囲の基準位置を前回の位置にする(ステップ319)。また、ステップ318の判定結果がYESの場合には、センタルーバ43、46のスイング範囲の基準位置を今回の位置に変更(補正)する(吹出状態補正手段:ステップ320)。
次に、サイドルーバ43、46のスイング中に乗員の操作があったか否かを判定する(ステップ321)。この判定結果がNOの場合には、サイドルーバ43、46のスイング範囲の基準位置を前回の位置にする(ステップ322)。また、ステップ321の判定結果がYESの場合には、サイドルーバ43、46のスイング範囲の基準位置を今回の位置に変更(補正)する(吹出状態補正手段:ステップ323)。その後に、ステップ312の制御処理に進む。
【0099】
〔第2実施形態の効果〕
以上のように、本実施形態の車両用空調装置では、クールダウンが終了して車室内の空調状態が定常状態に近づき、センタ、サイドルーバ43、46の向きを乗員方向に向けた状態で固定する局所冷房から、センタ、サイドルーバ43、46を所定のスイング範囲でスイングさせる際に、スイングしようとしているセンタ、サイドルーバ43、46を乗員が自分の方向に引き戻すと、空調熱負荷に応じて変化する所定時間が経過するまではセンタ、サイドルーバ43、46の向きを乗員方向に向いた状態で固定される。
【0100】
逆に、乗員が寒いと感じている時に、スイングしてきたセンタ、サイドルーバ43、46の向きを自分の方向から外すと、同様に、空調熱負荷に応じて変化する所定時間が経過するまではセンタ、サイドルーバ43、46の向きが乗員を外す方向に向く。あるいは、後部座席の乗員に配慮して、スイングしてきたセンタ、サイドルーバ43、46の向きを後部座席の乗員に向けると、同様に、空調熱負荷に応じて変化する所定時間が経過するまではセンタ、サイドルーバ43、46の向きが後部座席の乗員方向(前部座席の乗員を外す方向)に向く。そして、上記のような乗員の要望を記憶して次回にはその乗員が動かした位置を中心にスイングするようにオートスイング制御することにより、乗員が希望する吹出状態を制御に反映することができる。
【実施例3】
【0101】
〔第3実施形態〕
図31および図32は本発明の第3実施形態を示したもので、図31(a)、(b)はスイング中に乗員がルーバを操作した場合を示した図で、図32はルーバ制御演算の一部を示したフローチャートである。
【0102】
ここで、第2実施形態のステップ320のように、センタルーバ43、46のスイング範囲の基準位置を今回の位置に変更(補正)した場合には、乗員がルーバを動かす前と同じスイング範囲(例えば70°:1往復10秒間)を保つと、左右独立コントロール中であっても、隣の空調ゾーンに空調風が吹き出されてしまう(ステップ324)場合が考えられる。この判定結果がYESの場合には、図31(b)に示したように、隣の空調ゾーンへの空調風の吹出方向を制限する制限地点を越えて隣の空調ゾーンに入り、再び制限地点に戻ってくるのに必要な時間(例えば4.3秒間)が経過するまで、スイング範囲の揺動端で一時停止させる(ステップ325)。これにより、乗員がルーバを動かす前よりも狭いスイング範囲(例えば40°:1往復10秒間)となり、あまり空調風に当たりたくないDr側空調ゾーン内の乗員の要求と左右独立コントロール性を維持したいPa側空調ゾーン内の乗員の要求とを同時に満足することができる。
【実施例4】
【0103】
〔第4実施形態〕
図33は本発明の第4実施形態を示したもので、Dr側、Pa側センタグリルおよびエアコン操作パネルを示した図である。
【0104】
本実施形態では、エアコン操作パネル51と一体的に、Dr側空調ゾーンおよびPa側空調ゾーン内の各FACE吹出口21、22、31、32から吹き出される空調風の吹出状態(センタ、サイドルーバ43、46のスイング状態)を操作するためのルーバ操作(SWINGSW)パネル100が設けられている。
このルーバ操作パネル100は、MATCHスイッチ101、Drスイッチ102、Paスイッチ103およびスイングモード切替スイッチ104とから構成されている。なお、スイングモード切替スイッチ104は、第2実施形態のスイングモード切替スイッチ69、73と同様に、STOP(スイング停止)、AUTO(オートスイング)、Rr、U−DSWING(上下方向スイング)、R−LSWING(左右方向スイング)の各切替位置を有するロータリー式スイッチである。
【0105】
また、MATCHスイッチ101、Drスイッチ102およびPaスイッチ103は、平常位置(OFF)と押込位置(ON)とを持つプッシュ式スイッチである。MATCHスイッチ101がONされると、センタ、サイドルーバ43、46のうちの少なくとも一方をスイングさせるように出力する。そして、Drスイッチ102がONされると、Dr側のセンタ、サイドルーバ43、46のうちの少なくとも一方をスイングさせるように出力する。さらに、Paスイッチ103がONされると、Pa側のセンタ、サイドルーバ43、46のうちの少なくとも一方をスイングさせるように出力する。
【実施例5】
【0106】
〔第5実施形態〕
図34および図35は本発明の第5実施形態を示したもので、図34は車両のインストルメントパネルを示した正面図で、図35は空調ユニットのフェイスダクトを示した断面図である。
【0107】
本実施形態では、第2実施形態の空調ダクト2内の仕切り板14を廃止している。そして、前部座席側FACE吹出口として、空調ダクト2の空気下流側端部に連結されたフェイスダクト160の最空気下流側で開口するワイドフローFACE吹出口161が設けられている。ワイドフローFACE吹出口161は、インストルメントパネル40の前面中央で開口するDr側、Pa側センタFACE吹出口162、163と、インストルメントパネル40の車両幅方向両側、すなわち、車両のサイドウインド近傍で開口するDr側、Pa側サイドFACE吹出口164、165と、これらのFACE吹出口の間で開口するDr側、Pa側ミドルFACE吹出口166、167とから構成されている。なお、各FACE吹出口162〜167には、乗員の手動操作により空調風の吹出方向を変更するための複数のルーバがそれぞれ設けられている。
そして、フェイスダクト160には、各FACE吹出口162〜167を開閉するためのFACEドア171が回動自在に取り付けられており、Dr側サイド、ミドルFACE吹出口164、166を開閉するためのDr側ミドルFACEドア172が回動自在に取り付けられており、Pa側サイド、ミドルFACE吹出口165、167を開閉するためのPa側ミドルFACEドア173が回動自在に取り付けられている。なお、Dr側、Pa側ミドルFACEドア172、173は、本発明の吹出状態可変手段に相当するもので、開度に応じてDr、Pa側サイドFACE吹出口164、165およびDr、Pa側ミドルFACE吹出口166、167から各空調エリア内に吹き出す空調風の吹出状態(例えばワイド吹出モードとスポット吹出モード)を変更する。
【0108】
本実施形態では、サーボモータ等のアクチュエータによりFACEドア171を開放側に動かし、サーボモータ等のアクチュエータによりDr側、Pa側ミドルFACEドア172、173を閉塞側に動かす。それによって、Dr側、Pa側センタFACE吹出口162、163およびDr側、Pa側サイドFACE吹出口164、165を開放し、Dr側、Pa側ミドルFACE吹出口166、167を閉塞することにより、ワイドフローFACE吹出口161の開口面積を小さくすることで、ワイドフローFACE吹出口161から吹き出される空調風の吹出範囲を小さくして空調エリア内の乗員の身体の一部分に局所的に空調風を吹き出す(スポット吹出モード)。
また、FACEドア171を開放側に動かし、Dr側、Pa側ミドルFACEドア172、173を中間位置に動かす。それによって、Dr側、Pa側センタFACE吹出口162、163、Dr側、Pa側サイドFACE吹出口164、165およびDr側、Pa側ミドルFACE吹出口166、167を開放することにより、ワイドフローFACE吹出口161の開口面積を大きくすることで、ワイドフローFACE吹出口161から吹き出される空調風の吹出範囲を大きくして空調エリア内に拡散的に空調風を吹き出す(ワイド吹出モード)。
なお、フェイスダクト160内にFACEドアを追加して更に細やかな配風量の変更制御を行うようにしても良いし、空調ダクト2およびフェイスダクト160内に仕切り板を1個または2個以上入れて、それぞれの空気通路毎に送風機を配置して、各送風機の送風量を異ならせることで、Dr側、Pa側空調エリア内の乗員毎の配風量を変更しても良い。
【実施例6】
【0109】
〔第6実施形態〕
図36および図37は本発明の第6実施形態を示したもので、図36は吹出状態可変装置を示した図である。
【0110】
本実施形態の吹出状態可変装置は、複数のルーバ201、ルーバモータ202、リンクプレート203およびリンクレバー204等から構成されている。ルーバ201は、FACE吹出口205を形成するFACEグリル206に回転自在に支持された回転軸207を中心として回動可能に設けられ、回転軸207と反対側の上端部に図示上方へ突出するピン208を具備している。
ルーバモータ202は、出力軸(図示せず)の先端外周にギヤ209が固定されている。リンクプレート203は、FACEグリル206の上部に配されて、その一端部にルーバモータ202のギヤ209と噛み合うラック210を具備し、出力軸の回転に伴ってFACEグリル206の前後にスライド可能に設けられている。また、リンクプレート203には、複数本(ルーバ201の個数と同じ)のリンク溝211が形成されている。
リンクレバー204は、リンクプレート203の動きをルーバ201に伝達するもので、ルーバ201と同じ個数だけ設けられ、リンクプレート203のリンク溝211に嵌合するピン212と、ルーバ201に具備されたピン208が嵌合するガイド溝213とが形成されている。
【0111】
本実施形態では、ルーバモータ202の出力軸が回転してリンクプレート203がFACEグリル206上を前方へ移動すると、図37(a)に示したように、各リンクレバー204を介して各ルーバ201の向きがそれぞれ乗員方向を向いた位置に駆動される。これにより、センタFACEグリル206とサイドFACEグリル206より空調風が乗員方向へ集中的に吹き出される(集中モード)。
一方、ルーバモータ202の出力軸が逆回転してリンクプレート203がFACEグリル206上を後方へ移動すると、図37(b)に示したように、各リンクレバー204を介して各ルーバ201の向きが外側へ拡がるように駆動される。これにより、センタFACEグリル206とサイドFACEグリル206より吹き出される空調風がそれぞれ拡散される(拡散モード)。
この吹出状態可変装置によれば、集中モードを選択することで空調風を集中的に乗員に向けることができる。また、拡散モードを選択すれば、空調ゾーン内に広く空調風を当てることができると共に、乗員への空調風の配風量を減らすこともできる。
【実施例7】
【0112】
〔第7実施形態〕
図38は本発明の第7実施形態を示したもので、吹出状態可変装置を示した図である。 本実施形態の吹出状態可変装置は、ケース221と、このケース221に対して回動自在に組み付けられたドラム222と、このドラム222に取り付けられたルーバ223等から構成されている。この吹出状態可変装置は、ケース221に対しドラム222を回動させることにより、ドラム222と一体的にルーバ223の向きが変化して空調風の吹出方向を変えることができる。
【実施例8】
【0113】
〔第8実施形態〕
図39ないし図43は本発明の第8実施形態を示したもので、図39および図40(a)は吹出状態可変装置を示した図である。
本実施形態の吹出状態可変装置は、細長い円筒状態に設けられたルーバ本体301と、このルーバ本体301を回転駆動するルーバモータ302とを備えている。ルーバ本体301には、図40(b)に示したように、回転中心より偏心した位置に一定幅の円弧状を成す空気通路301aが形成されている。
この吹出状態可変装置は、例えば図41に示したように、ワンボックスカー等の車両303の空気吹出口304(図40(a)参照)に取り付けて使用することができる。
【0114】
ルーバ本体301は、ルーバモータ302により回転駆動されることで、空気吹出口304より吹き出される空調風の吹出方向を上下方向の任意の方向に選択できる。例えば図42(a)に示す位置では、主に乗員の上半身に向けて空調風を吹き出すことができる。また、図42(b)に示す位置では、主に乗員の下半身に向けて空調風を吹き出すことができる。そして、図42(c)に示す位置では、車両303の天井方向に向けて空調風を吹き出すことができる。さらに、図42(d)に示す位置では、空気吹出口304を閉塞することができる。
また、ルーバ本体301をスイングさせると、図43(a)〜図43(c)に示したように、ルーバ本体301のスイング幅に応じて、空気吹出口304より吹き出される空調風を所定のスイング範囲で吹き出すことができる。
【実施例9】
【0115】
〔第9実施形態〕
図44ないし図47は本発明の第9実施形態を示したもので、図44は吹出状態可変装置を示した図である。
本実施形態の吹出状態可変装置は、空調風の吹出領域を車幅方向で変更できるもので、FACE吹出口307を形成するケース308に対し回転自在に取り付けられた回転バルブ309を備えている。ケース308には、背面に接続された2本の送風ダクト310より空調風が供給される。ケース308の前面には、格子状のFACEグリル311が取り付けられている。
回転バルブ309は、両端に取り付けられた調整ダイヤル312、および図示しないバルブモータによって回転位置を調整することができ、例えば図45(a)〜図45(c)および図46(a)〜図46(c)に示したように、回転バルブ309の回転位置によりFACE吹出口307の開口状態を変更することにより、空調風の吹出領域を車幅方向で変更することができる。また、図47(a)〜図47(e)に示したように、回転バルブ309の形状を変更することで多様な吹出状態を得ることが可能である。なお、この回転バルブ309を第8実施形態のルーバ本体301として使用することもできる。
【0116】
〔他の実施形態〕
本実施形態では、本発明をワンボックスカー等の車両303、400に搭載される車両用空調装置に適用した例を説明したが、本発明をバス車両や鉄道車両等の大型車両に搭載される大型車両用空調装置に使用しても良い。
本実施形態では、吹出口から吹き出される空調風の吹出状態を変更する吹出状態可変手段として、空調風の吹出方向または配風量(吹出風量)を変更する吹出方向可変手段または吹出風量可変手段を使用した例を説明したが、吹出状態可変手段として、空調風の吹出位置(吹出高さ、吹出幅)を変更する吹出位置可変手段を使用しても良い。
本実施形態では、1個のブロワ4を回転させることにより空調ダクト2の各FACE吹出口21、22、31、32から車室内に空調風を吹き出すように構成したが、2個の送風機を回転させることにより空調ダクト2のDr側、Pa側FACE吹出口から車室内に空調風を吹き出す配風量を変更可能なように構成しても良く、FACE吹出口の数に対応した個数の送風機を回転させることにより空調ダクト2の各FACE吹出口から車室内に空調風を吹き出す配風量(吹出風量)を変更可能なように構成しても良い。また、各FACE吹出口毎、または一方側、他方側吹出口毎に互いに独立して風量調節を行えるようにしても良い。
【0117】
本実施形態では、吹出口モードがFOOTモードまたはF/Dモードの時もDr側サイドFACE吹出口22およびPa側サイドFACE吹出口32から空調風(主に温風)を吹き出すようにしたが、吹出口モードがFACEモードまたはB/Lモードの時のみDr側サイドFACE吹出口22およびPa側サイドFACE吹出口32から空調風を吹き出すようにしても良い。
本実施形態では、Dr側、Pa側センタグリル41、Dr側、Pa側サイドグリル42をインストルメントパネル40に固定したが、各センタ、サイドグリルを左右方向に回動自在に支持された状態で格納部材に取り付けても良く、各センタ、サイドグリルを上下方向に回動自在に支持された状態で格納部材に取り付けても良い。この場合には、グリル本体を吹出方向可変手段または吹出状態可変手段として揺動させるようにしても良い。
【0118】
本実施形態では、ルーバとして、各FACE吹出口に左右方向に揺動運動するセンタ、サイドルーバ43および上下方向に揺動運動するセンタ、サイドルーバ46の両方を設けたが、ルーバとして、各FACE吹出口に水平方向に揺動運動するセンタ、サイドルーバ43または上下方向に揺動運動するセンタ、サイドルーバ46のいずれか一方のみを設けても良い。
本実施形態では、空調負荷検知手段として日射強度検知手段、日射方向検知手段および日射高度検知手段を有する日射センサ93を設けたが、少なくとも日射強度検知手段を有する日射センサを設けても良い。この場合には、マイクロコンピュータで日射センサからの日射強度信号を入力して日射方向および日射高度(太陽仰角)を算出するようにする。また、日射センサとして、カーナビゲーションシステムのマイクロコンピュータにその日時の太陽高度や車両の現在位置に対する日射方向を記憶させている場合には、そのカーナビゲーションシステムの出力信号を日射センサ信号としてエアコンECUに読み込むようにしても良い。
【0119】
本実施形態では、ルーバ43、46を駆動するアクチュエータとしてDCサーボモータを用いたが、ルーバ43、46を駆動するアクチュエータとしてステッピングモータを用いても良い。この場合には、基準位置からのパルス数をカウントすることでルーバ43、46の移動量を算出することができるので、ルーバ位置検出手段(吹出状態検出手段)として使用でき、ポテンショメータ97、98を設けなくても良い。なお、この場合には、スイッチ以外では乗員がルーバ43、46を動かすことができないようにすることが望ましい。
本実施形態の各機能は、マルチディスプレイ等の操作によりON、OFFを乗員が選択できることが望ましい。
【0120】
本実施形態では、ルーバ43、46のスイング範囲を一定のスイング範囲となるようにオートルーバ制御したが、空調ゾーン内の冷房熱負荷が小さければ小さい程、オートスイングの中心位置を中心とした、ルーバ43、46の目標揺動範囲(スイング範囲)を広く設定するようにしても良い。また、空調ゾーン内の冷房熱負荷が大きければ大きい程、オートスイングの中心位置を中心とした、ルーバ43、46の目標揺動範囲(スイング範囲)を狭く設定するようにしても良い。
【0121】
本実施形態では、複数個のRrFACEグリル49を車両400の天井部の、中席側、後席側の車両幅方向の両側に固定したが、各グリルを左右方向に回動自在に支持された状態で格納部材に取り付けても良く、また各グリルを上下方向に回動自在に支持された状態で格納部材に取り付けても良い。この場合には、グリル本体を吹出状態可変手段としてスイングさせるようにしても良い。
本実施形態では、左右方向に一文字状にスイングするルーバ43と、上下方向に一文字状にスイングするルーバ46とを設けたが、何れか一方でも良い。また、吹出状態可変手段として、8の字型、∞の字型や×の字型にスイングするルーバフィンを設けても良い。
【0122】
本実施形態では、停止位置指令手段として、予め記憶された初期設定位置(オートストップ位置)でルーバ43、46が停止するように指令すると共に、停止位置補正手段から補正指令を入力した際にオートストップ位置を書き換える停止位置記憶手段(例えばRAM)を使用したが、乗員の手動操作によって決められた手動操作位置(オートストップ位置)でルーバ43、46が停止するように指令するマニュアルスイッチ等の手動設定手段を使用しても良い。なお、手動設定手段としては、ルーバ43、46のスイングの停止を指令するオンオフスイッチを使用したり、ルーバ43、46を乗員が直接触れてスイングを停止させたりしても良い。
本実施形態では、中心位置指令手段として、予め記憶された初期設定位置(オートスイングの中心位置)を中心にしてルーバ43、46がスイングするように指令すると共に、中心位置補正手段から補正指令を入力した際にオートスイングの中心位置を書き換える中心位置記憶手段(例えばRAM)を使用したが、乗員の手動操作によって決められた手動操作位置(オートスイングの中心位置)を中心にしてルーバ43、46が揺動運動するように指令するマニュアルスイッチ等の手動設定手段を使用しても良い。なお、手動設定手段としては、ルーバ43、46のスイングを指令するオンオフスイッチを使用したり、ルーバ43、46を乗員が直接触れてスイングさせたりしても良い。
【図面の簡単な説明】
【0123】
【図1】車両用空調装置の全体構成を示した構成図である(第1実施形態)。
【図2】車両用空調装置を搭載した車両の車室内を示した概略図である(第1実施形態)。
【図3】車両のインストルメントパネルを示した正面図である(第1実施形態)。
【図4】吹出状態可変装置の全体構成を示した概略図である(第1実施形態)。
【図5】ルーバ水平方向揺動機構の構成を示した概略図である(第1実施形態)。
【図6】ルーバ上下方向揺動機構の構成を示した概略図である(第1実施形態)。
【図7】エアコンECUの制御プログラムの一例を示したフローチャートである(第1実施形態)。
【図8】TAO(Fr)と内外気モードとの関係を表す特性図である(第1実施形態)。
【図9】TAO(Fr)と吹出口モードとの関係を表す特性図である(第1実施形態)。
【図10】TAO(Fr)とブロワ制御電圧との関係を表す特性図である(第1実施形態)。
【図11】TAO(Rr)と吹出口モードとの関係を表す特性図である(第1実施形態)。
【図12】TAO(Rr)とブロワ制御電圧との関係を表す特性図である(第1実施形態)。
【図13】スイングルーバ制御決定を示したフローチャートである(第1実施形態)。
【図14】スイングルーバ制御決定を示したフローチャートである(第1実施形態)。
【図15】スイングルーバ制御決定を示したフローチャートである(第1実施形態)。
【図16】中席側、後席側の吹出状態可変装置の使用状態を示した説明図である(第1実施形態)。
【図17】(a)は初期設定時の空調風の吹出方向および空調風のスイング範囲を示した説明図で、(b)はシート移動後の空調風の吹出方向および空調風のスイング範囲を示した説明図である(第1実施形態)。
【図18】車両用空調装置の全体構成を示した構成図である(第2実施形態)。
【図19】エアコン操作パネルを示した正面図である(第2実施形態)。
【図20】エアコンECUの制御プログラムの一例を示したフローチャートである(第2実施形態)。
【図21】TAO(Dr)、TAO(Pa)とブロワ制御電圧との関係を表す特性図である(第2実施形態)。
【図22】TAO(Dr)、TAO(Pa)と吹出口モードとの関係を表す特性図である(第2実施形態)。
【図23】ルーバ制御演算を示したフローチャートである(第2実施形態)。
【図24】乗員がルーバを操作した状態を示した説明図である(第2実施形態)。
【図25】(a)は吹出温度と基準停止時間との関係を表すグラフで、(b)は内気温度と補正時間との関係を表すグラフで、(c)は日射量と補正時間との関係を表すグラフである(第2実施形態)。
【図26】(a)は日射方向、日射強度とスイング範囲との関係を表す特性図で、(b)は内気温度とスイング範囲との関係を表すグラフである(第2実施形態)。
【図27】目標スイング範囲を示した説明図である(第2実施形態)。
【図28】Dr側の揺動範囲と揺動周期との関係を表すグラフである(第2実施形態)。
【図29】Pa側の揺動範囲と揺動周期との関係を表すグラフである(第2実施形態)。
【図30】(a)、(b)はスイング中に乗員がルーバを操作した状態を示した説明図である(第2実施形態)。
【図31】(a)、(b)はスイング中に乗員がルーバを操作した状態を示した説明図である(第3実施形態)。
【図32】ルーバ制御演算の一部を示したフローチャートである(第3実施形態)。
【図33】エアコン操作パネルを示した正面図である(第4実施形態)。
【図34】車両のインストルメントパネルを示した正面図である(第5実施形態)。
【図35】空調ユニットのフェイスダクトを示した断面図である(第5実施形態)。
【図36】吹出状態可変装置を示した斜視図である(第6実施形態)。
【図37】(a)、(b)は吹出状態可変装置を示した作動説明図である(第6実施形態)。
【図38】吹出状態可変装置を示した断面図である(第7実施形態)。
【図39】吹出状態可変装置を示した斜視図である(第8実施形態)。
【図40】(a)は吹出状態可変装置を示した断面図で、(b)はルーバ本体を示した断面図である(第8実施形態)。
【図41】吹出状態可変装置の取付位置を示した車両の模式図である(第8実施形態)。
【図42】(a)〜(d)は吹出状態可変装置の作動説明図である(第8実施形態)。
【図43】(a)〜(c)は空調風のスイング範囲を示した模式図である(第8実施形態)。
【図44】吹出状態可変装置を示した分解斜視図である(第9実施形態)。
【図45】(a)〜(c)は吹出状態可変装置の作動説明図である(第9実施形態)。
【図46】(a)〜(c)は吹出状態可変装置の作動説明図である(第9実施形態)。
【図47】(a)〜(e)は回転バルブの変形例を示した斜視図である(第9実施形態)。
【符号の説明】
【0124】
43 ルーバ、センタルーバ、サイドルーバ(吹出状態可変手段)
46 ルーバ、センタルーバ、サイドルーバ(吹出状態可変手段)
50 エアコンECU(吹出状態制御手段)
93 日射センサ(日射量検出手段)
97 ポテンショメータ(吹出状態検出手段)
98 ポテンショメータ(吹出状態検出手段)
31b 中席側FACE吹出口(吹出口)
32b 後席側FACE吹出口(吹出口)
43a ルーバモータ(アクチュエータ)
46a ルーバモータ(アクチュエータ)
64b 第2温度設定スイッチ(温度設定手段)
91b 第2内気温度センサ(内気温度検出手段)

【特許請求の範囲】
【請求項1】
(a)車室内の空調ゾーンに向けて空調風を吹き出すための吹出口を有する空調ダクトと、
(b)前記吹出口から吹き出される空調風の吹出状態を変更することが可能な吹出状態可変手段と、
(c)この吹出状態可変手段を駆動するアクチュエータと、
(d)前記吹出状態可変手段の現在位置を検知して空調風の吹出状態を検出する吹出状態検出手段と、
(e)前記吹出状態可変手段が所定の位置を中心にして揺動運動するように指令する中心位置指令手段と、
(f)この中心位置指令手段により指令された中心位置を中心とした、前記吹出状態可変手段の目標揺動範囲を決定する目標揺動範囲決定手段と、
(g)この目標揺動範囲決定手段にて決定された目標揺動範囲で前記吹出状態可変手段が揺動運動するように前記アクチュエータの作動状態を制御する吹出状態制御手段と、
(h)前記アクチュエータの作動速度から予測される、前記吹出状態可変手段の目標位置を決定する目標位置決定手段と、
(i)前記吹出状態可変手段が揺動運動している時、前記吹出状態検出手段にて検知した前記吹出状態可変手段の現在位置と前記目標位置決定手段にて決定された目標位置とが異なる場合に、
前記吹出状態可変手段の目標揺動範囲の中心位置を、前記吹出状態検出手段にて検知した前記吹出状態可変手段の現在位置またはその付近に補正するように前記中心位置指令手段に出力する中心位置補正手段と
を備えた車両用空調装置。
【請求項2】
請求項1に記載の車両用空調装置において、
前記中心位置指令手段は、予め記憶されている初期設定位置を中心にして前記吹出状態可変手段が揺動運動するように指令すると共に、前記中心位置補正手段から補正指令を入力した際に前記吹出状態可変手段の目標揺動範囲の中心位置を書き換える中心位置記憶手段であることを特徴とする車両用空調装置。
【請求項3】
請求項1に記載の車両用空調装置において、
前記中心位置指令手段は、乗員の手動操作によって決められた手動操作位置を中心にして前記吹出状態可変手段が揺動運動するように指令する手動設定手段であることを特徴とする車両用空調装置。
【請求項4】
請求項1ないし請求項3のうちのいずれか1つに記載の車両用空調装置において、
車室内の空調状態を検出する空調状態検出手段と、
車室内の空調状態を所望の空調状態に設定する空調状態設定手段とを備え、
前記吹出状態制御手段は、前記空調状態検出手段にて検出した空調状態と前記空調状態設定手段にて設定した目標空調状態とが大きく異なる際に、前記吹出状態可変手段の揺動運動が前記目標揺動範囲の中心位置で停止するように前記アクチュエータの作動状態を制御することを特徴とする車両用空調装置。
【請求項5】
請求項4に記載の車両用空調装置において、
前記空調状態検出手段は、車室内に進入する日射量を検出する日射量検出手段であり、 前記吹出状態制御手段は、前記日射量検出手段にて検出した日射量が所定の日射量以上の際に、前記吹出状態可変手段の揺動運動が前記目標揺動範囲の中心位置で停止するように前記アクチュエータの作動状態を制御することを特徴とする車両用空調装置。
【請求項6】
請求項4または請求項5に記載の車両用空調装置において、
前記空調状態検出手段は、車室内の空気温度を検出する内気温度検出手段であり、
前記空調状態設定手段は、車室内の温度を所望の温度に設定する温度設定手段であり、 前記吹出状態制御手段は、前記内気温度検出手段にて検出した内気温度と前記温度設定手段にて設定した設定温度とが大きく異なる際に、前記吹出状態可変手段の揺動運動を前記目標揺動範囲の中心位置で停止するように前記アクチュエータの作動状態を制御することを特徴とする車両用空調装置。
【請求項7】
(a)車室内の空調ゾーンに向けて空調風を吹き出すための吹出口を有する空調ダクトと、
(b)前記吹出口から吹き出される空調風の吹出状態を変更することが可能な吹出状態可変手段と、
(c)この吹出状態可変手段を駆動するアクチュエータと、
(d)所定の揺動範囲で前記吹出状態可変手段が揺動運動するように前記アクチュエータの作動状態を制御する吹出状態制御手段と、
(e)前記吹出状態可変手段を乗員が操作したか否かを判定する乗員操作判定手段と、 (f)前記吹出状態可変手段の現在位置を検知して空調風の吹出状態を検出する吹出状態検出手段と、
(g)前記乗員操作判定手段にて前記吹出状態可変手段を乗員が操作したと判定した場合に、
前記吹出状態検出手段にて検知した前記吹出状態可変手段の現在位置またはその付近で前記吹出状態可変手段の揺動運動を所定時間が経過するまで停止させる吹出状態補正手段と
を備えた車両用空調装置。
【請求項8】
請求項7に記載の車両用空調装置において、
前記乗員操作判定手段は、前記吹出状態可変手段が前記アクチュエータの作動速度から予想される移動量以上に移動したことを検出した場合に、前記吹出状態可変手段を乗員が操作したと判定することを特徴とする車両用空調装置。
【請求項9】
請求項7に記載の車両用空調装置において、
前記乗員操作判定手段は、前記吹出状態可変手段が前記所定の揺動範囲外に移動したことを検出した場合に、前記吹出状態可変手段を乗員が操作したと判定することを特徴とする車両用空調装置。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【図8】
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【図9】
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【図10】
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【図11】
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【図12】
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【図13】
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【図14】
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【図15】
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【図16】
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【図17】
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【図18】
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【図19】
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【図20】
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【図21】
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【図22】
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【図23】
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【図24】
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【図25】
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【図26】
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【図27】
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【図28】
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【図29】
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【図30】
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【図31】
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【図32】
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【図33】
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【図34】
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【図35】
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【図36】
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【図37】
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【図38】
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【図39】
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【図40】
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【図41】
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【図42】
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【図43】
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【図44】
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【図45】
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【図46】
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【図47】
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【公開番号】特開2007−216962(P2007−216962A)
【公開日】平成19年8月30日(2007.8.30)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2007−144544(P2007−144544)
【出願日】平成19年5月31日(2007.5.31)
【分割の表示】特願平10−43043の分割
【原出願日】平成10年2月25日(1998.2.25)
【出願人】(000004260)株式会社デンソー (27,639)
【Fターム(参考)】