車両用空調装置
【課題】車載機器の廃熱が適切な暖房を行うために不十分となることがある車両用空調装置において、車両燃費の悪化を抑制しつつ、車室内の暖房を実現する。
【解決手段】車室内へ送風される送風空気の流れに対して、車載機器であるエンジン10の廃熱により加熱されたエンジン冷却水を熱源として送風空気を加熱するヒータコア13と、冷凍サイクル20にて圧縮機21吐出冷媒を放熱させる室内凝縮器22とをこの順に配置する。そして、流量調整弁14によってヒータコア13へ供給するエンジン冷却水流量を調整することによって、ヒータコア13におけるエンジン冷却水の放熱量を、エンジン10の暖機を必要としない程度に制限する。さらに、圧縮機21の冷媒吐出能力を調整することによって、車室内温度が所望の温度となるように室内凝縮器22の加熱能力を調整する。
【解決手段】車室内へ送風される送風空気の流れに対して、車載機器であるエンジン10の廃熱により加熱されたエンジン冷却水を熱源として送風空気を加熱するヒータコア13と、冷凍サイクル20にて圧縮機21吐出冷媒を放熱させる室内凝縮器22とをこの順に配置する。そして、流量調整弁14によってヒータコア13へ供給するエンジン冷却水流量を調整することによって、ヒータコア13におけるエンジン冷却水の放熱量を、エンジン10の暖機を必要としない程度に制限する。さらに、圧縮機21の冷媒吐出能力を調整することによって、車室内温度が所望の温度となるように室内凝縮器22の加熱能力を調整する。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、車両の走行状態に応じて作動が制御される車載機器の廃熱を熱源として車室内暖房を行う車両用空調装置に関する。
【背景技術】
【0002】
従来、特許文献1に、ヒートポンプサイクルにおいて冷媒を凝縮させる凝縮器として機能する室内熱交換器、およびエンジン冷却水を熱源とする加熱用熱交換器であるヒータコアの双方の加熱手段にて車室内へ送風される送風空気を加熱し、車室内の暖房を行う車両用空調装置が開示されている。
【0003】
さらに、この特許文献1の車両用空調装置では、ヒータコアに対して送風空気流れ上流側に室内熱交換器を配置して、室内熱交換器にて加熱された送風空気をヒータコアにて再加熱する構成を採用している。そして、流量調整弁によってヒータコアへ供給されるエンジン冷却水の流量を調整することで、車室内へ吹き出される送風空気の温度調整を可能としている。
【0004】
つまり、特許文献1の車両用空調装置では、車載機器であるエンジンの廃熱を熱源として室内熱交換器にて加熱された送風空気を再加熱する際に、エンジンの廃熱の利用度合を変化させることによって車室内へ吹き出される送風空気の温度を調整して、快適な車室内温度となる適切な暖房を実現しようとしている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0005】
【特許文献1】特開2001−1749号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
ところで、特許文献1の車両用空調装置の構成で車室内の適切な暖房を行うためには、エンジン冷却水の温度が室内熱交換器にて加熱された送風空気の温度よりも高くなっている必要がある。そのため、特許文献1の車両用空調装置を、エンジンおよび走行用電動モータから走行用駆動力を得る、いわゆるハイブリッド車両に適用すると、車室内の適切な暖房を実現できなくなってしまうことがある。
【0007】
その理由は、ハイブリッド車両では、燃費向上のためにエンジンを停止した状態で走行用電動モータの駆動力のみによって走行する走行状態となることがあり、このような走行状態では、エンジンの廃熱を十分に得ることができなくなってしまうからである。その結果、エンジン冷却水の温度が室内熱交換器にて加熱された送風空気の温度よりも低くなり、車室内の適切な暖房を実現できなくなってしまう。
【0008】
この問題を解決する手段として、ハイブリッド車両であっても車室内の暖房時にはエンジンを作動させて、適切な暖房を実現するために必要な廃熱を得る手段が考えられる。しかしながら、走行用電動モータの駆動力のみによって走行する走行状態は、車両走行のためにエンジンに駆動力を出力させる必要のない走行状態であるから、適切な暖房を実現するためにエンジンを作動させることは、車両燃費を著しく悪化させてしまう要因となる。
【0009】
また、このような燃費悪化の問題は、特許文献1の車両用空調装置を、燃料電池から走行用電動モータへ電力を供給する、いわゆる燃料電池車両に適用して、ヒータコアの熱源として電池冷却水を用いる場合であっても同様に生じ得る。その理由は、燃料電池車両では、燃料電池の発電効率向上のために、走行状態に応じて電池冷却水の循環流量を制御する等の手段を用いて、燃料電池自体の温度を所定の温度に維持しているからである。
【0010】
この際、電池冷却水の温度が室内熱交換器にて加熱された送風空気の温度よりも低く維持されていると、車室内の適切な暖房を実現できなくなってしまう。さらに、車室内の暖房時に、適切な暖房を実現するために電池冷却水の温度を上昇させると、燃料電池の発電効率が低下して車両燃費を悪化させてしまう。
【0011】
上記点に鑑みて、本発明は、車室内を暖房する際の熱源となる車載機器の廃熱が適切な暖房を行うために不十分となることがある車両用空調装置において、車両燃費の悪化を抑制しつつ、車室内の暖房を実現することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0012】
上記目的を達成するため、請求項1に記載の発明では、車両の走行状態に応じて作動が制御される車載機器(10)の廃熱によって加熱される熱媒体を循環させる循環回路(11)に配置されて、熱媒体を熱源として車室内へ送風される送風空気を加熱する加熱手段(13)と、加熱手段(13)にて加熱された送風空気をさらに加熱する補助加熱手段(22)と、加熱手段(13)の加熱能力を制御する加熱能力制御手段(60a)と、補助加熱手段(22)の加熱能力を制御する補助加熱能力制御手段(60b)とを備え、
さらに、車載機器(10)は、車載機器(10)自体の温度が予め定めた基準温度(T1)に近づくように、作動が制御されており、加熱能力制御手段(60a)は、加熱手段(13)にて送風空気を加熱した後の熱媒体が車載機器(10)に戻った際に、車載機器(10)自体の温度が基準温度(T1)に近づくように、加熱手段(13)の加熱能力を制御し、補助加熱能力制御手段(60b)は、送風空気が所望の温度となるように、補助加熱手段(22)の加熱能力を制御する車両用空調装置を特徴とする。
【0013】
これによれば、加熱手段(13)にて加熱された送風空気を補助加熱手段(22)にて再加熱する構成を採用して、送風空気の温度が所望の温度となるように補助加熱手段(22)の加熱能力が制御されるので、熱媒体の温度が適切な暖房を行うために不十分となっても、補助加熱手段(22)の加熱能力によって車室内へ吹き出される送風空気の温度を十分に上昇させて、車室内の暖房を実現することができる。
【0014】
さらに、加熱手段(13)にて送風空気を加熱した後の温度低下した熱媒体が車載機器(10)に戻った際に、車載機器(10)自体の温度が基準温度(T1)に近づくように、加熱手段(13)の加熱能力が制御されるので、車載機器(10)自体の温度が基準温度(T1)に対して大きく低下してしまうことを抑制できる。
【0015】
従って、車室内の暖房を行うために車載機器(10)の廃熱を用いても、これに起因して車載機器(10)を不必要に作動させて車両燃費を悪化させることを抑制できる。その結果、熱媒体を加熱する車載機器(10)の廃熱が適切な暖房を行うために不十分となっても、車両燃費の悪化を抑制しつつ、車室内の暖房を実現することができる。
【0016】
また、請求項2に記載の発明では、車両の走行状態に応じて作動が制御される車載機器(10)の廃熱によって加熱される熱媒体を循環させる循環回路(11)に配置されて、熱媒体を熱源として車室内へ送風される送風空気を加熱する加熱手段(13)と、加熱手段(13)にて加熱された送風空気をさらに加熱する補助加熱手段(22)と、加熱手段(13)の加熱能力を制御する加熱能力制御手段(60a)と、補助加熱手段(22)の加熱能力を制御する補助加熱能力制御手段(60b)とを備え、
さらに、車載機器(10)は、車載機器(10)自体の温度が予め定めた基準温度(T1)以上となるように、作動が制御されており、加熱能力制御手段(60a)は、加熱手段(13)にて送風空気を加熱した後の熱媒体が車載機器(10)に戻った際に、車載機器(10)自体の温度が基準温度(T1)以上となるように、加熱手段(13)の加熱能力を制御し、補助加熱能力制御手段(60b)は、送風空気が所望の温度となるように、補助加熱手段(22)の加熱能力を制御することを特徴とする。
【0017】
これによれば、請求項1に記載の発明と同様に、熱媒体の温度が適切な暖房を行うために不十分となっても、補助加熱手段(22)の加熱能力によって車室内へ吹き出される送風空気の温度を十分に上昇させて、車室内の暖房を実現することができる。
【0018】
さらに、加熱手段(13)にて送風空気を加熱した後の温度低下した熱媒体が車載機器(10)に戻った際に、車載機器(10)自体の温度が基準温度(T1)以上となるように、加熱手段(13)の加熱能力が制御されるので、車載機器(10)自体の温度が基準温度(T1)より低くなってしまうことを抑制できる。
【0019】
従って、車室内の暖房を行うために車載機器(10)の廃熱を用いても、これに起因して車載機器(10)を不必要に作動させて車両燃費を悪化させることを抑制できる。その結果、熱媒体を加熱する車載機器(10)の廃熱が適切な暖房を行うために不十分となっても、車両燃費の悪化を抑制しつつ、車室内の暖房を実現することができる。
【0020】
なお、請求項1および請求項2における車載機器(10)自体の温度としては、車載機器(10)の内部温度あるいは外表面温度のような車載機器(10)そのものの温度のみを意味するものではなく、車載機器(10)自体の温度に相関を有する温度を含む意味である。
【0021】
つまり、請求項3に記載の発明のように、請求項1または2に記載の車両用空調装置において、車載機器(10)自体の温度として、熱媒体の温度(Tw)が用いられていてもよい。より具体的には、熱媒体の温度のうち、車載機器(10)自体の温度に高い相関関係を有する、車載機器(10)の内部を流通する熱媒体の温度、車載機器(10)から流出した直後の熱媒体の温度、車載機器(10)へ流入する直前の熱媒体(T1)の温度が、車載機器(10)自体の温度として用いられていてもよい。
【0022】
請求項4に記載の発明では、請求項1ないし3のいずれか1つに記載の車両用空調装置において、具体的に、さらに、加熱手段(13)の加熱能力を変化させる加熱能力変更手段(14、16、17、37)を備え、加熱能力制御手段(60a)は、加熱能力変更手段(14、16、17、37)の作動を制御することによって、加熱手段(13)の加熱能力を制御することを特徴としている。
【0023】
そして、請求項5に記載の発明のように、請求項4に記載の車両用空調装置において、加熱手段は、熱媒体と送風空気とを熱交換させる加熱用熱交換器(13)であり、加熱能力変更手段(14、16、17)は、加熱用熱交換器(13)を流通する熱媒体の流量を変化させることによって、加熱手段(13)の加熱能力を変化させるようになっていてもよい。
【0024】
さらに、具体的に、請求項6に記載の発明のように、この加熱能力変更手段は、加熱用熱交換器(13)を流通する熱媒体の流量を調整する流量調整弁(14)であってもよいし、請求項7に記載の発明のように、この加熱能力変更手段は、熱媒体が加熱用熱交換器(13)を迂回して流れるバイパス通路(16)およびバイパス通路(16)の開度を調整する開度調整弁(17)で構成されていてもよい。これにより、容易に加熱能力変更手段を構成することができる。
【0025】
請求項8に記載の発明では、請求項5ないし7のいずれか1つに記載の車両用空調装置において、加熱能力制御手段(60a)は、加熱用熱交換器(13)にて送風空気を加熱する前の熱媒体の温度の上昇に伴って、加熱用熱交換器(13)を流通する熱媒体の流量を増加させることを特徴とする。
【0026】
ここで、加熱手段(13)にて送風空気を加熱する前の熱媒体の温度が十分に上昇している場合は、加熱用熱交換器(13)を流通する熱媒体の流量を増加させて加熱用熱交換器(13)の加熱能力を上昇させても、加熱手段(13)にて送風空気を加熱した後の温度低下した熱媒体が車載機器(10)に戻ったとしても、車載機器(10)自体の温度が低下してしまう低下度合が少ない。
【0027】
さらに、加熱用熱交換器(13)の加熱能力の上昇に伴って、補助加熱手段(22)の加熱能力を低下させることができる。従って、車載機器(10)の廃熱を有効に活用しながら、車両燃費の悪化を抑制しつつ、車室内の暖房を実現することができる。
【0028】
また、請求項9に記載の発明のように、請求項4に記載の車両用空調装置において、加熱手段は、熱媒体と送風空気とを熱交換させる加熱用熱交換器(13)であり、加熱能力変更手段(37)は、加熱用熱交換器(13)を流通する送風空気の流量を変化させることによって、前記加熱手段(13)の加熱能力を変化させるようになっていてもよい。これにより、容易に加熱能力変更手段を構成することができる。
【0029】
さらに、具体的に、請求項10に記載の車両用空調装置のように、加熱能力変更手段(37)は、加熱用熱交換器(13)を流通させる送風空気の流量と加熱用熱交換器(13)を迂回させる送風空気の流量との流量割合を変化させることによって、加熱用熱交換器(13)を流通する送風空気の流量を変化させるようにしてもよい。
【0030】
請求項11に記載の発明のように、請求項1ないし10のいずれか1つに記載の車両用空調装置において、熱媒体は、車載機器(10)を冷却する冷却水であってもよい。
【0031】
請求項12に記載の発明のように、請求項1ないし11のいずれか1つに記載の車両用空調装置において、基準温度(T1)は、車載機器(10)に暖機が必要とされる温度以上の値に設定されていてもよい。
【0032】
なお、本請求項における暖機が必要とされる温度とは、車載機器(10)そのものの性能を適切に発揮するために必要とされる車載機器(10)自体の温度のみを意味するものではなく、車載機器(10)に接続された他の機器類の性能を適切に発揮するために必要とされる温度を含む意味である。
【0033】
請求項13に記載の発明では、請求項1ないし12のいずれか1つに記載の車両用空調装置において、加熱能力制御手段(60a)は、車両の速度(Vv)が予め定めた基準車速(KVv)より低くなっている場合は、車速(Vv)が基準車速(KVv)以上となっている場合よりも、加熱手段(13)にて送風空気を加熱した後の熱媒体が車載機器(10)に戻った際の車載機器(10)自体の温度が増加するように、加熱手段(13)の加熱能力を制御することを特徴とする。
【0034】
これによれば、低車速時に高車速時よりも車載機器(10)自体の温度を高温に維持できるので、車載機器(10)の廃熱が少なくなる低車速時に、送風空気を加熱した後の温度低下した熱媒体を車載機器(10)に戻して車載機器(10)自体の温度が急低下したとしても、車載機器(10)自体の温度が基準温度(T1)より低くなってしまうことを、効果的に抑制できる。
【0035】
請求項14に記載の発明のように、請求項1ないし13のいずれか1つに記載の車両用空調装置において、具体的に、補助加熱手段は、蒸気圧縮式の冷凍サイクル(20)において圧縮機(21)から吐出された冷媒を放熱させる放熱器(22)であり、補助加熱能力制御手段(60b)は、圧縮機(21)の冷媒吐出能力を変化させることによって、放熱器(22)の加熱能力を制御するようになっていてもよい。これにより、容易に補助加熱手段(22)の加熱能力を変更することができる。
【0036】
さらに、請求項15に記載の発明のように、この圧縮機は、電力を供給されることによって作動する電動圧縮機(21)であってもよい。
【0037】
請求項16に記載の発明では、請求項1ないし15のいずれか1つに記載の車両用空調装置において、補助加熱能力制御手段(60b)は、加熱能力制御手段(60a)が加熱手段(13)の加熱能力を低下させる前に、補助加熱手段(22)の加熱能力を増加させることを特徴とする。
【0038】
これによれば、加熱能力制御手段(60a)が加熱手段(13)の加熱能力を低下させる前に、補助加熱能力制御手段(60b)が補助加熱手段(22)の加熱能力を増加させるので、加熱手段(13)の加熱能力の低下によって送風空気の温度が低下してしまう前に、補助加熱手段(22)によって送風空気を加熱できる。従って、乗員の暖房感を損ねることがない。
【0039】
請求項17に記載の発明のように、上記した車載機器は、車両の走行用駆動力を出力する内燃機関(10)であってもよいし、請求項18に記載の発明のように、上記した車載機器は、車両走行用モータに電力を出力する燃料電池であってもよい。
【0040】
なお、この欄および特許請求の範囲で記載した各手段の括弧内の符号は、後述する実施形態に記載の具体的手段との対応関係を示す一例である。
【図面の簡単な説明】
【0041】
【図1】第1実施形態の車両用空調装置の全体構成図である。
【図2】第1実施形態の車両用空調装置の電気制御部を示すブロック図である。
【図3】(a)は、エンジン作動時の冷却水温度の変化を示す説明図であり、(b)は、暖機制御時の冷却水温度の変化を示す説明図である。
【図4】第1実施形態の暖機制御における制御特性図である。
【図5】第1実施形態の車両用空調装置の制御を示すフローチャートである。
【図6】第1実施形態の許容加熱能力を決定するための制御特性図である。
【図7】冷却水温度、冷却水流量および許容加熱能力の関係を示す説明図である。
【図8】ヒータコアと室内凝縮器を通過する送風空気の温度変化を示す説明図である。
【図9】(a)は、ヒータコアの加熱能力制御を行わない場合の冷却水温度の変化を示す説明図であり、(b)は、本実施形態の冷却水温度の変化を示す説明図である。
【図10】第2実施形態の車両用空調装置の全体構成図である。
【図11】第3実施形態の車両用空調装置の全体構成図である。
【図12】第4実施形態による送風空気の合計加熱能力の変化を示す説明図である。
【図13】第5実施形態の車両用空調装置の全体構成図である。
【図14】第5実施形態の暖機制御における制御特性図である。
【図15】第6実施形態の車両用空調装置の全体構成図である。
【発明を実施するための形態】
【0042】
(第1実施形態)
図1〜8により、本発明の第1実施形態を説明する。図1は、本実施形態の車両用空調装置1の全体構成図である。本実施形態では、車両用空調装置1を、内燃機関(エンジン)10および走行用電動モータから車両走行用の駆動力を得る、いわゆるハイブリッド車両に適用している。
【0043】
本実施形態のハイブリッド車両は、車両の走行負荷に応じてエンジン10を作動あるいは停止させて、エンジン10および走行用電動モータの双方から駆動力を得て走行する走行状態や、エンジンを停止させて走行用電動モータのみから駆動力を得て走行する、EV走行と呼ばれる走行状態等を切り替えることができる。これにより、車両走行用の駆動源としてエンジン10のみを有する車両に対して燃費を向上させている。
【0044】
従って、本実施形態のエンジン10は、車両の走行状態に応じて作動が制御される車載機器である。具体的には、エンジン10は、後述するエンジン制御装置50から出力される制御信号によって、その作動が制御される。また、エンジン10は作動時に発熱を伴うので、エンジン10には、エンジン10を冷却するためのエンジン冷却水(熱媒体)を循環させる循環回路としての冷却水回路11が接続されている。
【0045】
冷却水回路11には、冷却水ポンプ12、ヒータコア13、流量調整弁14、およびラジエータ15等が配置されている。冷却水ポンプ12は、エンジン制御装置50から出力される制御信号によって回転数(エンジン冷却水循環量)が制御される電動式の水ポンプである。なお、図1の冷却水回路11における破線矢印は、エンジン冷却水の流れ方向を示している。
【0046】
ヒータコア13は、後述する車両用空調装置1の室内空調ユニット30内に形成された車室内へ送風される送風空気の空気通路に配置され、車室内の暖房時および除湿暖房時に、エンジン冷却水と送風空気とを熱交換させて送風空気を加熱する加熱用熱交換器である。換言すると、ヒータコア13は、エンジン10の廃熱によって加熱された熱媒体であるエンジン冷却水を熱源として送風空気を加熱する加熱手段である。
【0047】
流量調整弁14は、ヒータコア13を流通するエンジン冷却水の流量を変化させることによって、ヒータコア13の加熱能力(放熱能力)を変化させる加熱能力変更手段である。具体的には、流量調整弁14は、開度を変更可能に構成された弁体と、この弁体の開度を可変制御する電動アクチュエータとを有して構成されている。さらに、流量調整弁14は、後述する空調制御装置60から出力される制御信号によって、その作動が制御される。
【0048】
ラジエータ15は、エンジン冷却水と室外空気(外気)とを熱交換させてエンジン冷却水を冷却する放熱用の熱交換器である。従って、ラジエータ15は、エンジン冷却水がエンジン10の内部を貫流する際に吸熱したエンジン10の廃熱を、大気に放熱する機能を果たす。なお、本実施形態の冷却水回路11では、ヒータコア13とラジエータ15とをエンジン冷却水の流れに対して並列的に配置している。
【0049】
また、冷却水回路11には、ラジエータ15を迂回する図示しないバイパス回路が設けられ、さらにエンジン冷却水の温度が所定値(本実施形態では、90℃)以下になるとバイパス回路側へエンジン冷却水を流すサーモスタット弁(図示せず)が配置されている。これにより、エンジン10自体の温度が低下して、エンジンオイルの粘度増加によるフリクションロスの発生や、排気ガスの温度低下による排気ガス浄化用触媒の作動不良を抑制している。
【0050】
ところで、前述の如く、本実施形態のハイブリッド車両では、車両の走行負荷に応じてエンジン10が停止することがある。このような走行状態では、エンジン10自体の温度が低下してしまうことがある。そこで、エンジン制御装置50では、後述するように、エンジン冷却水の温度が所定値以下になったときに、走行状態とは無関係にエンジンを作動させる暖機制御を行っている。
【0051】
次に、本実施形態の車両用空調装置1の構成について説明する。この車両用空調装置1は、車室内を冷房する冷房モード、車室内を暖房する暖房モード、および、車室内を除湿して暖房する除湿暖房モードの冷媒回路を切替可能に構成された蒸気圧縮式の冷凍サイクル20を備えている。なお、図1の冷凍サイクル20における太線矢印は、冷房モードにおける冷媒の流れ方向を示している。
【0052】
冷凍サイクル20は、圧縮機21、冷媒と車室内へ送風される送風空気とを熱交換させる室内熱交換器としての室内凝縮器22および室内蒸発器23、冷媒を減圧膨張させる減圧手段としての電気式膨張弁24および固定絞り25、冷媒と室外空気(外気)とを熱交換させる室外熱交換器26、並びに、冷媒回路を切り替える冷媒回路切替手段としての複数(本実施形態では2つ)の電気式切替弁27、28等を備えている。
【0053】
また、この冷凍サイクル20では、冷媒として通常のフロン系冷媒を採用しており、高圧側冷媒圧力が冷媒の臨界圧力を超えない亜臨界冷凍サイクルを構成している。
【0054】
圧縮機21は、エンジンルーム内に配置され、冷凍サイクル20において冷媒を吸入し、圧縮して吐出するもので、吐出容量が固定された固定容量型圧縮機構21aを電動モータ21bにて駆動する電動圧縮機として構成されている。固定容量型圧縮機構21aとしては、具体的に、スクロール型圧縮機構、ベーン型圧縮機構等の各種圧縮機構を採用できる。
【0055】
電動モータ21bは、インバータ66から出力される交流電圧によって、その作動(回転数)が制御される交流モータである。また、インバータ66は、後述する空調制御装置60から出力される制御信号に応じた周波数の交流電圧を出力する。そして、この回転数制御によって、圧縮機21の冷媒吐出能力が変更される。従って、電動モータ21bは、圧縮機21の吐出能力変更手段を構成している。
【0056】
圧縮機21の吐出側には、室内凝縮器22の冷媒入口側が接続されている。室内凝縮器22は、室内空調ユニット30内に形成された送風空気の空気通路のうち、ヒータコア13の送風空気流れ下流側に配置されて、その内部を流通する冷媒と後述する室内蒸発器23通過後の送風空気とを熱交換させる。
【0057】
従って、室内凝縮器22は、冷媒を放熱させる放熱器として機能するとともに、送風空気を加熱する加熱用熱交換器として機能する。より詳細には、室内凝縮器22は、ヒータコア13の空気流れ下流側に配置されて、加熱手段であるヒータコア13にて加熱された送風空気をさらに加熱する補助加熱手段を構成している。
【0058】
ところで、室内凝縮器22へ流入する圧縮機21吐出冷媒の温度は、圧縮機21吐出冷媒の圧力上昇に伴って上昇する。このことは、室内凝縮器22の加熱能力が、圧縮機21の冷媒吐出能力の増加に伴って増加することを意味している。従って、圧縮機21の吐出能力変更手段を構成する電動モータ21bは、補助加熱手段の補助加熱能力変更手段としての機能を兼ね備えている。
【0059】
室内凝縮器22の冷媒出口側には、第1電気式切替弁27が接続されている。この第1電気式切替弁27は、空調制御装置60から出力される制御信号によって、その作動が制御される冷媒回路切替手段である。より具体的には、第1電気式切替弁27は、室内凝縮器22の出口側と室外熱交換器26の入口側とを接続する冷媒回路、および室内凝縮器22の出口側と固定絞り25の入口側とを接続する冷媒回路を切り替える。
【0060】
固定絞り25は、暖房モード時および除湿暖房モード時に、第1電気式切替弁27から流出した冷媒を減圧膨張させる暖房用の減圧手段である。この固定絞り25としては、キャピラリチューブ、オリフィス等を採用できる。固定絞り25の冷媒出口側には、室外熱交換器26の入口側が接続されている。
【0061】
室外熱交換器26は、エンジンルーム内に配置されて、内部を流通する冷媒と送風ファン26aから送風された車室外空気(外気)とを熱交換させるものである。送風ファン26aは、空調制御装置60から出力される制御電圧によって回転数(送風空気量)が制御される電動式送風機である。
【0062】
さらに、本実施形態の送風ファン26aは、室外熱交換器26のみならず、前述した冷却水回路11に配置されたラジエータ15にも室外空気を送風している。具体的には、送風ファン26aから送風された車室外空気は、室外熱交換器26→ラジエータ15の順に流れる。
【0063】
室外熱交換器26の冷媒出口側には、冷媒回路切替手段としての第2電気式切替弁28が接続されている。この第2電気式切替弁28の基本的構成は、第1電気式切替弁27と同様である。より具体的には、第2電気式切替弁28は、室外熱交換器26の出口側と電気式膨張弁24の入口側とを接続する冷媒回路、および室外熱交換器26の出口側とアキュムレータ29の入口側とを接続する冷媒回路を切り替える。
【0064】
電気式膨張弁24は、冷房モード時に、第2電気式切替弁28から流出した冷媒を減圧膨張させる減圧手段である。この電気式膨張弁24は、空調制御装置60から出力される制御信号によって絞り通路面積が調整される電気式の可変絞り機構である。さらに、本実施形態の電気式膨張弁24は、絞り通路面積を最大にすると冷媒を減圧膨張させる機能を殆ど発揮することなく、単なる冷媒通路として機能する。
【0065】
電気式膨張弁24の冷媒出口側には、室内蒸発器23の冷媒入口側が接続されている。室内蒸発器23は、室内空調ユニット30内に形成された送風空気の空気通路のうち、室内凝縮器22およびヒータコア13の送風空気流れ上流側に配置されている。そして、冷房モードおよび除湿暖房モード時に、その内部を流通する冷媒と送風空気とを熱交換させ、冷媒を蒸発させ吸熱作用を発揮させることによって、送風空気を冷却する冷却用熱交換器である。
【0066】
室内蒸発器23の冷媒出口側には、アキュムレータ29の冷媒入口側が接続されている。アキュムレータ29は、内部に流入した冷媒の気液を分離して、余剰冷媒を蓄える低圧側気液分離器である。さらに、アキュムレータ29の気相冷媒出口には、圧縮機21の冷媒吸入口が接続されている。
【0067】
次に、室内空調ユニット30について説明する。室内空調ユニット30は、車室内最前部の計器盤(インストルメントパネル)の内側に配置されて、その外殻を形成するケーシング31内に送風機32、冷凍サイクル20の室内凝縮器22および室内蒸発器23、冷却水回路11のヒータコア13等を収容したものである。
【0068】
ケーシング31は、内部に車室内に送風される送風空気の空気通路を形成しており、ある程度の弾性を有し、強度的にも優れた樹脂(例えば、ポリプロピレン)にて形成されている。このケーシング31内の送風空気流れ最上流側には、ケーシング31内へ内気(車室内空気)と外気(車室外空気)とを切替導入する図示しない内外気切替装置が配置されている。
【0069】
内外気切替装置は、ケーシング31内へ内気のみを導入する内気モード、ケーシング31内へ外気のみを導入する外気モード、およびケーシング31内へ内気と外気との導入比率を連続的に変化させながら内気と外気との双方を導入する内外気混入モードの3つの吸込口モードを切り替えるものである。また、内外気切替装置は、空調制御装置60から出力される制御信号によって、その作動が制御される。
【0070】
内外気切替装置の空気流れ下流側には、内外気切替装置を介して吸入した空気を車室内へ向けて送風する送風機32が配置されている。この送風機32は、遠心多翼ファン(シロッコファン)を電動モータにて駆動する電動送風機であって、空調制御装置60から出力される制御電圧によって回転数(送風量)が制御される。
【0071】
送風機32の空気流れ下流側には、前述の室内蒸発器23が配置されている。さらに、室内蒸発器23の空気流れ下流側には、室内蒸発器23通過後の送風空気を流す加熱用冷風通路33、冷風バイパス通路34といった空気通路、並びに、加熱用冷風通路33および冷風バイパス通路34から流出した空気を混合させる混合空間35が形成されている。
【0072】
加熱用冷風通路33には、ヒータコア13および室内凝縮器22が送風空気流れ方向に向かってこの順で配置されている。一方、冷風バイパス通路34は、室内蒸発器23通過後の冷風を、ヒータコア13および室内凝縮器22を通過させることなく、混合空間35に導くための空気通路である。
【0073】
従って、混合空間35にて混合された送風空気の温度は、加熱用冷風通路33を通過する空気および冷風バイパス通路34を通過する空気の風量割合によって変化する。そこで、本実施形態では、室内蒸発器23の空気流れ下流側であって、加熱用冷風通路33および冷風バイパス通路34の入口側に、加熱用冷風通路33および冷風バイパス通路34へ流入する送風空気の風量割合を連続的に変化させるエアミックスドア38を配置している。
【0074】
このエアミックスドア38は、混合空間35内の空気温度(車室内へ吹き出される送風空気の温度)を調整する温度調整手段としての機能を果たすものである。さらに、また、エアミックスドア38は、エアミックスドア用の電動アクチュエータによって駆動され、この電動アクチュエータは、空調制御装置60から出力される制御信号によって、その作動が制御される。
【0075】
ケーシング31の送風空気流れ最下流部には、混合空間35から冷却対象空間である車室内へ温度調整された送風空気を吹き出す吹出口(図示せず)が配置されている。この吹出口としては、具体的に、車室内の乗員の上半身に向けて空調風を吹き出すフェイス吹出口、乗員の足元に向けて空調風を吹き出すフット吹出口、および、車両前面窓ガラス内側面に向けて空調風を吹き出すデフロスタ吹出口が設けられている。
【0076】
さらに、フェイス吹出口、フット吹出口、およびデフロスタ吹出口の空気流れ上流側には、それぞれ、フェイス吹出口の開口面積を調整するフェイスドア、フット吹出口の開口面積を調整するフットドア、デフロスタ吹出口の開口面積を調整するデフロスタドア(いずれも図示せず)が配置されている。
【0077】
これらのフェイスドア、フットドア、デフロスタドアは、吹出口モードを切替える吹出口モード切替手段を構成するものであって、図示しないリンク機構を介して、吹出口モードドア駆動用の電動アクチュエータに連結されて連動して回転駆動される。なお、この電動アクチュエータも、空調制御装置60から出力される制御信号によって、その作動が制御される。
【0078】
また、吹出口モードとしては、フェイス吹出口を全開してフェイス吹出口から車室内乗員の上半身に向けて空気を吹き出すフェイスモード、フェイス吹出口とフット吹出口の両方を開口して車室内乗員の上半身と足元に向けて空気を吹き出すバイレベルモード、フット吹出口を全開するとともにデフロスタ吹出口を小開度だけ開口して、フット吹出口から主に空気を吹き出すフットモード、およびフット吹出口およびデフロスタ吹出口を同程度開口して、フット吹出口およびデフロスタ吹出口の双方から空気を吹き出すフットデフロスタモードがある。
【0079】
さらに、乗員が、後述する操作パネル70のスイッチをマニュアル操作することによって、デフロスタ吹出口を全開してデフロスタ吹出口から車両フロント窓ガラス内面に空気を吹き出すデフロスタモードとすることもできる。
【0080】
次に、図2により、本実施形態の電気制御部について説明する。エンジン制御装置50および空調制御装置60は、CPU、ROMおよびRAM等を含む周知のマイクロコンピュータとその周辺回路から構成される。そして、このROM内に記憶された制御プログラムに基づいて各種演算、処理を行って、出力側に接続された各種機器の作動を制御する。
【0081】
エンジン制御装置50の出力側には、上述した冷却水ポンプ12の他に、エンジン10を構成する各種エンジン構成機器等が接続されている。具体的には、エンジン10を始動させるスタータ、エンジン10に燃料を供給する燃料噴射弁(インジェクタ)の駆動回路等が接続されている。
【0082】
エンジン制御装置50の入力側には、エンジン10から流出した直後のエンジン冷却水の冷却水温度Twを検出する冷却水温度センサ51、図示しないバッテリの電圧VBを検出する電圧計52、アクセル開度Accを検出するアクセル開度センサ53、エンジン回転数Neを検出するエンジン回転数センサ54、車速Vvを検出する車速センサ55等のエンジン制御用センサ群が接続されている。
【0083】
なお、本実施形態の冷却水温度センサ51は、エンジン冷却水の冷却水温度Twを検出するものであるが、エンジン10から流出した直後のエンジン冷却水は、エンジン10自体の温度に相関を有する温度である。従って、本実施形態のエンジン制御装置50では、冷却水温度センサ51の検出値(冷却水温度Tw)をエンジン10自体の温度として、上述した冷却水ポンプ12等の制御に用いている。
【0084】
空調制御装置60の出力側には、流量調整弁14、圧縮機21の電動モータ21b用のインバータ66、電気式膨張弁24、送風ファン26a、第1、第2電気式切替弁27、28、送風機32、内外気切替装置、エアミックスドア駆動用および吹出口モードドア駆動用の電動アクチュエータ等の各種空調制御機器が接続されている。
【0085】
なお、空調制御装置60は、上述した各種空調制御機器を制御する制御手段が一体に構成されたものであるが、本実施形態では、特に、ヒータコア13の加熱能力変更手段である流量調整弁14の作動を制御する構成(ハードウェアおよびソフトウェア)を加熱能力制御手段60aとする。
【0086】
また、圧縮機21の吐出能力変更手段である電動モータ21bの作動(冷媒吐出能力)を制御する構成を吐出能力制御手段60bとする。なお、前述の如く、電動モータ21bは、補助加熱手段の補助加熱能力変更手段としての機能を兼ね備えているので、吐出能力制御手段60bについても、補助加熱能力制御手段としての機能を兼ね備える。
【0087】
もちろん、加熱能力制御手段60aおよび吐出能力制御手段(補助加熱能力制御手段)60bを空調制御装置60に対して別体で構成してもよい。
【0088】
空調制御装置60の入力側には、車室内温度Trを検出する内気センサ61、外気温Taを検出する外気温センサ62、車室内の日射量Tsを検出する日射センサ63、室内蒸発器23からの吹出空気温度(冷媒蒸発温度に対応)Teを検出する蒸発器温度センサ64(蒸発器温度検出手段)、車室内に吹き出される吹出空気温度Toutを検出する吹出空気温度センサ65等の空調制御用センサ群が接続されている。
【0089】
さらに、空調制御装置60の入力側には、車室内前部の計器盤付近に配置された操作パネル70が接続され、この操作パネル70に設けられた各種空調操作スイッチの操作信号が空調制御装置60へ入力される。各種空調操作スイッチとしては、具体的に、車両用空調装置1のオート運転スイッチ、車室内の設定温度Tsetを設定する温度設定スイッチ、運転モード切替スイッチ、吹出口モードの切替スイッチ、送風機32の風量設定スイッチ等が設けられている。
【0090】
なお、本実施形態のエンジン制御装置50および空調制御装置60は、互いに電気的に接続されて、通信可能に構成されている。これにより、一方の制御装置に入力された検出信号あるいは操作信号に基づいて、他方の制御装置が出力側に接続された各種機器の作動を制御することもできる。従って、エンジン制御装置50および空調制御装置60を1つの制御装置として一体的に構成してもよい。
【0091】
次に、上記構成における本実施形態の作動を説明する。まず、エンジン制御装置50の基本的作動を図3を用いて説明する。なお、図3は、エンジン10の作動状態とエンジン冷却水温度との関係を示す説明図である。
【0092】
車両スタートスイッチが投入されて車両が起動すると、エンジン制御装置50は、上述のエンジン制御用センサ群51〜55の検出信号に基づいて車両の走行負荷を検出し、走行負荷に応じてエンジン10を作動あるいは停止させる。この際、エンジン制御装置50は、エンジン10の作動に連動して冷却水ポンプ12を作動させる。
【0093】
これにより、エンジン10の作動時には、エンジン冷却水がエンジン10内を流通し、エンジン10の廃熱を吸熱してエンジン10を冷却するとともに、吸熱した廃熱をラジエータ15にて大気に放熱する。さらに、エンジン冷却水の温度が90℃以下になると、サーモスタット弁がエンジン冷却水をバイパス通路側に流すので、ラジエータ15における放熱は行われない
従って、エンジン10が作動している際のエンジン冷却水の冷却水温度Twは、図3(a)に示すように、所定の温度帯(本実施形態では、90℃〜100℃)に保たれる。その結果、エンジン10自体の温度も所定の温度帯に維持されて、エンジン10のオーバーヒートが防止される。
【0094】
一方、走行用の動力源を出力させるためにエンジン10を作動させる必要がなく、エンジン10が停止している際には、エンジン10自体からの放熱等により、エンジン冷却水の温度が低下してしまう。
【0095】
そこで、エンジン制御装置50は、冷却水温度センサ51によって検出された冷却水温度Twが予め定めた第1基準温度T1(本実施形態では、40℃)以下になると、エンジン制御装置50が、図4の制御特性図に示すように、冷却水温度Twが予め定めた第2基準温度T2(本実施形態では、50℃)となるまで、走行状態とは無関係にエンジン10を作動させる暖機制御を行う。
【0096】
これにより、図3(b)に示すように、冷却水温度Twが、第1基準温度T1以下に低下してしまうことが抑制される。その結果、エンジン10自体の温度が、前述のフリクションロスの発生や、排気ガス浄化用触媒の作動不良が抑制される。
【0097】
なお、第1基準温度T1と第2基準温度T2との温度差は、制御ハンチング防止のためのヒステリシス幅である。また、第1基準温度T1は、前述のフリクションロスの発生や、排気ガス浄化用触媒の作動不良を抑制して、エンジン10および排気ガス浄化用触媒の性能を適切に発揮するためにエンジン10に暖機が必要とされる温度と同等の値に設定されている。
【0098】
従って、本実施形態の暖機制御では、冷却水温度センサ51によって検出されるエンジン10から流出した直後のエンジン冷却水の冷却水温度Twを、エンジン10自体の温度として用い、エンジン10自体の温度が、第1基準温度T1以上となる予め定めた温度帯の範囲で、第1基準温度T1に近づくように、エンジン10の作動が制御されることになる。
【0099】
次に、図5により、車両用空調装置1の作動を説明する。図5は、空調制御装置60が実行する制御処理を示すフローチャートである。この制御処理は、車両スタートスイッチが投入された状態で、操作パネル70のオート運転スイッチが投入(ON)されると開始される。
【0100】
まず、ステップS1では、フラグ、タイマ、制御変数等のイニシャライズ(初期化)が行われる。そして、次のステップS2にて、空調制御用センサ群61〜65の検出信号、エンジン制御装置50からの制御信号、および操作パネル70の操作信号を読み込んで、ステップS3へ進む。
【0101】
ステップS3では、操作パネル70の運転モード切替スイッチの操作信号に基づいて運転モードの決定が行われる。さらに、ステップS3では、決定された運転モードに応じて、冷媒回路切替手段としての第1、第2電気式切替弁27、28、および電気式膨張弁24の制御状態を決定する。
【0102】
具体的には、冷房モードでは、第1電気式切替弁27を室内凝縮器22の出口側と室外熱交換器26の入口側とを接続する冷媒回路に切り替え、第2電気式切替弁28を室外熱交換器26の出口側と電気式膨張弁24の入口側とを接続する冷媒回路に切り替え、さらに、電気式膨張弁24を減圧作用を発揮する絞り状態とする。
【0103】
また、暖房モードでは、第1電気式切替弁27を室内凝縮器22の出口側と固定絞り25の入口側とを接続する冷媒回路に切り替え、第2電気式切替弁28を室外熱交換器26の出口側とアキュムレータ29の入口側とを接続する冷媒回路に切り替える。
【0104】
また、除湿暖房モードでは、第1電気式切替弁27を室内凝縮器22の出口側と固定絞り25の入口側とを接続する冷媒回路に切り替え、第2電気式切替弁28を室外熱交換器26の出口側と電気式膨張弁24の入口側とを接続する冷媒回路に切り替え、さらに、電気式膨張弁24を減圧作用を発揮しない全開状態とする。
【0105】
ステップS4では、車室内吹出空気の目標吹出温度TAOを算出する。目標吹出温度TAOは、下記数式F1により算出される。
TAO=Kset×Tset−Kr×Tr−Ka×Ta−Ks×Ts+C…(F1)
ここで、Tsetは温度設定スイッチによって設定された設定温度であり、Trは内気センサ61によって検出された車室内温度であり、Taは外気温センサ62によって検出された外気温であり、Tsは日射センサ63によって検出された日射量であり、Kset、Kr、Ka、Ksは制御ゲインであり、Cは補正用の定数である。
【0106】
次のステップS5では、ステップS3で決定された運転モードが冷房モードであるか否かを判定する。ステップS5にて運転モードが冷房モードであると判定された場合は、ステップS6へ進み、予め空調制御装置60に記憶された制御マップを参照して、送風機32の送風量Ga(具体的には、電動モータに印加するブロワモータ電圧)、および室内蒸発器23の目標冷媒蒸発温度TEO等を決定する。
【0107】
具体的には、本実施形態の制御マップでは、TAOの極低温域(最大冷房域)および極高温域(最大暖房域)でブロワモータ電圧を最大値にして、送風機32の送風量Gaを最大風量に制御する。さらに、TAOが極低温域あるいは極高温域から中間温度域に向かうに伴って、ブロワモータ電圧を減少させて送風量Gaを減少させる。また、目標冷媒蒸発温度TEOについては、TAOの上昇に伴ってTEOを上昇させるように決定する。
【0108】
次のステップS7では、吹出空気温度センサ65によって検出された吹出空気温度Toutが目標吹出温度TAOとなるように、フィードバック制御手法等を用いて、エアミックスドア38の開度を決定する。さらに、蒸発器温度センサ64によって検出された冷媒蒸発温度Teが目標冷媒蒸発温度TEOとなるように、フィードバック制御手法等を用いて、圧縮機21の電動モータ21bの回転数(具体的には、インバータ66が出力する交流電圧の周波数)を決定する。
【0109】
一方、ステップS5にて運転モードが冷房モードでないと判定された場合、すなわち運転モードが暖房モードあるいは除湿暖房モードであると判定された場合は、ステップS8へ進む。
【0110】
ステップS8では、ステップS6と同様に、送風機32の送風量Gaを決定するとともに、エアミックスドア38の開度を、加熱用冷風通路33を全開とし冷風バイパス通路34を全閉とする最大暖房位置に決定する。これにより、冷風バイパス通路34側に送風空気が流入することを防止して、加熱手段であるヒータコア13および補助加熱手段である室内凝縮器22の加熱能力を低減させている。
【0111】
次に、ステップS9では、エンジン制御装置50から取得した冷却水ポンプ12へ出力される制御信号(冷却水ポンプ12の吐出流量)、および流量調整弁14へ出力される制御信号(流量調整弁14の弁開度)に基づいて、ヒータコア13へ流入するエンジン冷却水の冷却水流量Gwを算出して、ステップS10へ進む。
【0112】
ここで、ヒータコア13はエンジン冷却水と送風空気とを熱交換させて、送風空気を加熱するものなので、ヒータコア13では、送風空気がエンジン冷却水の有する熱量を吸熱する。従って、ヒータコア13から流出したエンジン冷却水の温度は、ヒータコア13へ流入するエンジン冷却水の温度、すなわちエンジン10から流出した直後のエンジン冷却水の温度である冷却水温度Twよりも低下する。
【0113】
さらに、本実施形態では、前述の如くエンジン制御装置50が暖機制御を行っているので、ヒータコア13から流出したエンジン冷却水の温度が過度に低下すると、冷却水温度Twが第1基準温度T1以下になりやすく、暖機制御によるエンジン10の作動回数の増加や、エンジン10作動継続時間の長時間化による暖機遅延を招くことになる。
【0114】
つまり、ヒータコア13から流出したエンジン冷却水の温度が過度に低下してしまうと、エンジン制御装置50がヒータコア13にて送風空気の加熱用熱源を確保するために、エンジン10を作動させてしまうこととなり、燃費を悪化させてしまう。
【0115】
そこで、本実施形態のステップS10では、ヒータコア13から流出したエンジン冷却水が、ラジエータ15側からエンジン10へ戻るエンジン冷却水と合流して、エンジン10へ戻った際に、エンジン10自体の温度が、暖機制御と同様の第1基準温度T1以上となる予め定めた温度帯の範囲で、第1基準温度T1に近づくように、ヒータコア13におけるエンジン冷却水の許容加熱能力Qw_capを決定する。
【0116】
なお、許容加熱能力Qw_capは、エンジン冷却水がヒータコア13にて放熱して、その熱量を失ったとしても、ヒータコア13から流出したエンジン冷却水が、エンジン10へ戻った際に、エンジン10自体の温度を第1基準温度T1以上となる予め定めた温度帯の範囲で、第1基準温度T1に近づけることのできる許容放熱量と表現することもできる。
【0117】
具体的には、この許容加熱能力Qw_capは、冷却水温度Twに基づいて、予め空調制御装置60に記憶された制御マップを参照して決定する。より詳細には、図6の実線で示すように、冷却水温度Twが上昇過程にあるときは、予め定めた所定温度tk2となるまで、許容加熱能力Qw_capを最小値(min)とする。その後、冷却水温度Twの上昇に伴って、許容加熱能力Qw_capを増加させ、予め定めた所定温度tk4以上では、許容加熱能力Qw_capを最大値(max)とする。
【0118】
一方、冷却水温度Twが下降過程にあるときは、予め定めた所定温度tk3となるまで、許容加熱能力Qw_capを最大値とする。その後、冷却水温度Twの低下に伴って、許容加熱能力Qw_capを低下させ、予め定めた所定温度tk1以下では、許容加熱能力Qw_capを最小値とする。
【0119】
さらに、冷却水温度Twが所定温度tk1以下では、空調制御装置60がエンジン制御装置50に対して、暖機制御の実行を禁止する暖機禁止信号を出力する。なお、本実施形態では、上記の各所定温度は、第1基準温度T1<tk1<tk2<tk3<tk4の関係になっている。
【0120】
また、本実施形態の空調制御装置60では、許容加熱能力Qw_capを決定するための制御マップを、エンジン制御装置50から取得した車速センサ55によって検出された車速Vvに応じて変化させている。具体的には、車速Vvが予め定めた基準車速KVv以上となっている高車速時には、上述の制御マップを参照して許容加熱能力Qw_capを決定する。
【0121】
一方、車速Vvが予め定めた基準車速KVvより低くなっている低車速時には、図6の破線で示すように、tk1〜tk4を予め定めた付加温度βを加算した値に変化させた制御マップを参照して許容加熱能力Qw_capを決定する。これにより、低車速時には、高車速時よりも、許容加熱能力Qw_capを低下させて、ヒータコア13から流出したエンジン冷却水がエンジン10へ戻った際のエンジン10自体の温度を高温に維持することができる。
【0122】
さらに、ステップS10では、ヒータコア13の許容放熱量がQw_capとなったときのヒータコア13通過後の送風空気の温度Thcoを算出する。この温度Thcoは、エンジン冷却水の加熱能力と送風空気の吸熱能力のバランス点から算出することができる。バランス点では、エンジン冷却水が放熱した総熱量と送風空気が吸熱した総熱量が等しくなるからである。
【0123】
ここで、ヒータコア13にてエンジン冷却水が放熱した総熱量は、許容加熱能力Qw_capであり、ヒータコア13にて送風空気が吸熱した総熱量は、ヒータコア13から流出する送風空気の温度Thcoからヒータコア13へ流入する送風空気の温度(本実施形態では、冷媒蒸発温度Teが対応)を減算した値に対して、送風量Gaを積算することで求めることができる。
【0124】
次に、ステップS11では、ステップS10にて決定された許容加熱能力Qw_capに基づいて、予め空調制御装置60に記憶された制御マップを参照して、ヒータコア13の加熱能力が許容加熱能力Qw_capとなるように、冷却水流量Gwを変更する。
【0125】
具体的には、本実施形態のステップS11では、加熱能力変更手段の作動状態、すなわち流量調整弁14の弁開度を決定する。より詳細には、ヒータコア13にて前記送風空気を加熱する前のエンジン冷却水温度である冷却水温度Twの増加に伴って、ヒータコア13を流通するエンジン冷却水の流量を増加させるように、流量調整弁14の弁開度を決定する。
【0126】
例えば、ステップS10で決定された許容加熱能力Qw_capが最小値となっているときは、流量調整弁14を全閉として、許容加熱能力Qw_capが最大値となっているときは、流量調整弁14を全開としてもよい。
【0127】
なお、ステップS11で参照する制御マップは、図7に示す冷却水流量Gwおよび冷却水温度Twの増加に伴って許容加熱能力Qw_capが増加する関係に基づいて決定されている。さらに、本実施形態では、ヒータコア13の熱交換性能(加熱手段の性能特性)を考慮して、冷却水流量Gwが少ないときに対して、冷却水流量Gwが多いときの許容加熱能力Qw_capの増加度合を減少させている。
【0128】
次に、ステップS12にて、吹出空気温度センサ65によって検出された吹出空気温度Toutが目標吹出温度TAOとなるように、フィードバック制御手法等を用いて、室内凝縮器22の加熱能力、すなわち圧縮機21の電動モータ21bの回転数を決定して、ステップS13へ進む。
【0129】
この際、目標吹出温度TAOからステップS10で決定されたヒータコア13から流出する送風空気の温度Thcoを減算した温度差の増加に伴って、圧縮機21の電動モータ21bの回転数を増加させればよい。
【0130】
次に、ステップS13では、目標吹出温度TAOに基づいて、予め空調制御装置60に記憶された制御マップを参照して、内外気切替装置の作動状態および吹出口モードが決定される。具体的には、内外気切替装置の作動状態は、基本的に外気を導入する外気モードが優先されるが、TAOが極低温域となって高い冷房性能を得たい場合等に内気を導入する内気モードが選択される。
【0131】
また、吹出口モードについては、TAOが低温域から高温域へと上昇するにつれて吹出口モードをフットモード→バイレベルモード→フェイスモードへと順次切り替える。従って、夏季は主にフェイスモード、春秋季は主にバイレベルモード、そして冬季は主にフットモードが選択される。
【0132】
そして、次のステップS14にて、上述のステップS6〜S13で決定された制御状態が得られるように、空調制御装置60から各種空調制御機器に対して制御信号が出力される。例えば、圧縮機21の電動モータ21b用のインバータ66に対しては、圧縮機21の回転数がステップS7あるいはS12で決定された回転数となるように制御信号が出力される。
【0133】
次に、ステップS15では、制御周期τの間待機し、制御周期τの経過を判定するとステップS2に戻るようになっている。
【0134】
本実施形態の車両用空調装置1は、以上の如く制御されるので、制御ステップS3にて選択された運転モードに応じて以下のように作動する。
【0135】
(a)冷房モード
冷房モードでは、第1電気式切替弁27が室内凝縮器22の出口側と室外熱交換器26の入口側とを接続し、第2電気式切替弁28が室外熱交換器26の出口側と電気式膨張弁24の入口側とを接続し、さらに、電気式膨張弁24が絞り状態となる。
【0136】
これにより、圧縮機21→室内凝縮器22→第1電気式切替弁27→室外熱交換器26→第2電気式切替弁28→電気式膨張弁24→室内蒸発器23→アキュムレータ29→圧縮機21の順に冷媒が循環する蒸気圧縮式冷凍サイクルが構成される。すなわち、室内凝縮器22および室外熱交換器26を凝縮器(放熱器)として機能させ、室内蒸発器23を蒸発器として機能させる冷凍サイクルが構成される。
【0137】
従って、冷房モードでは、送風機32から送風された送風空気が、室内蒸発器23にて冷却される。そして室内蒸発器23にて冷却された冷風は、エアミックスドア38の開度に応じて、加熱用冷風通路33および冷風バイパス通路34へ流入する。
【0138】
加熱用冷風通路33へ流入した冷風は、ヒータコア13および室内凝縮器22を通過する際に加熱されて、混合空間35にて冷風バイパス通路34を通過した冷風と混合される。そして、混合空間35にて温度調整された冷風が、混合空間35から各吹出口を介して車室内に吹き出される。これにより、車室内の冷房がなされる。
【0139】
なお、冷房モードは、車室内へ主に冷風を吹き出す運転モードであるから、加熱用冷風通路33へ流入する冷風が、冷風バイパス通路34へ流入する冷風よりも少なくなるようにエアミックスドア38の開度が制御される。そのため、本実施形態の空調制御装置60は、冷房モードでは、流量調整弁14の開度制御を行っていない。もちろん冷房モードでは、流量調整弁14の開度を全開に維持してもよい。
【0140】
(b)暖房モードおよび除湿暖房モード
暖房モードでは、第1電気式切替弁27が室内凝縮器22の出口側と固定絞り25の入口側とを接続し、第2電気式切替弁28が室外熱交換器26の出口側とアキュムレータ29の入口側とを接続する。
【0141】
これにより、圧縮機21→室内凝縮器22→第1電気式切替弁27→固定絞り25→室外熱交換器26→第2電気式切替弁28→アキュムレータ29→圧縮機21の順に冷媒が循環する蒸気圧縮式冷凍サイクルが構成される。すなわち、室内凝縮器22を凝縮器(放熱器)として機能させ、室外熱交換器26を蒸発器として機能させる冷凍サイクルが構成される。
【0142】
従って、暖房モードでは、送風機32から送風された送風空気が、室内蒸発器23にて冷却されることなく加熱用冷風通路33へ流入する。そして、加熱用冷風通路33へ流入した送風空気は、ヒータコア13および室内凝縮器22の順に通過して目標吹出温度TAOとなるまで加熱されて温風となり、混合空間35から各吹出口を介して車室内に吹き出される。これにより、車室内の暖房がなされる。
【0143】
また、除湿暖房モードでは、第1電気式切替弁27が室内凝縮器22の出口側と固定絞り25の入口側とを接続し、第2電気式切替弁28が室外熱交換器26の出口側と電気式膨張弁24の入口側とを接続し、さらに、電気式膨張弁24を減圧作用を発揮しない全開状態とする。
【0144】
これにより、圧縮機21→室内凝縮器22→第1電気式切替弁27→固定絞り25→室外熱交換器26→第2電気式切替弁28(→電気式膨張弁24)→室内蒸発器23→アキュムレータ29→圧縮機21の順に冷媒が循環する蒸気圧縮式冷凍サイクルが構成される。すなわち、室内凝縮器22を凝縮器(放熱器)として機能させ、室外熱交換器26および室内蒸発器23を蒸発器として機能させる冷凍サイクルが構成される。
【0145】
従って、除湿暖房モードでは、送風機32から送風された送風空気が、室内蒸発器23にて冷却されて除湿され、加熱用冷風通路33へ流入する。そして、加熱用冷風通路33へ流入した冷風は、ヒータコア13および室内凝縮器22の順に通過して目標吹出温度TAOとなるまで加熱されて温風となり、混合空間35から各吹出口を介して車室内に吹き出される。これにより、車室内の除湿暖房がなされる。
【0146】
この際、本実施形態では、送風空気をヒータコア13→室内凝縮器22の順に通過させて、ヒータコア13にて加熱された送風空気を室内凝縮器22にて再加熱している。さらに、車室内に吹き出される送風空気の温度が目標吹出温度TAOとなるように室内凝縮器22の加熱能力を制御している。
【0147】
従って、エンジン冷却水を加熱するエンジン10の廃熱が車室内温度を所望の温度(目標吹出温度TAO)まで上昇させるために不十分であっても、補助加熱手段である室内凝縮器22の加熱能力によって車室内へ吹き出される送風空気の温度を十分に上昇させて、車室内の適切な暖房あるいは除湿暖房を実現することができる。
【0148】
さらに、本実施形態では、ヒータコア13にて送風空気を加熱した後の温度低下したエンジン冷却水がエンジン10に戻った際に、エンジン10自体の温度が、第1基準温度T1以上となる予め定めた温度帯の範囲で、第1基準温度T1に近づくように、ヒータコア13へ流入するエンジン冷却水の冷却水流量Gwが制御されている。従って、エンジン10自体の温度が第1基準温度T1より低くなってしまうことを抑制できる。
【0149】
しかも、暖房モードおよび除湿暖房モードでは、冷却水温度Twが所定温度tk1以下になると、空調制御装置60がエンジン制御装置50に対して暖機禁止信号を出力する。従って、車室内の暖房あるいは除湿暖房を行うためにエンジン10の廃熱を用い、この暖房あるいは除湿暖房によって冷却水温度Twが低下したとしても、これに起因してエンジン10を不必要に作動させて燃費を悪化させてしまうことを抑制できる。
【0150】
その結果、エンジン10の廃熱を有効に活用しながら、燃費の悪化を抑制しつつ、車室内の適切な暖房あるいは除湿暖房を実現することができる。このことを、図8、9を用いてより詳細に説明する。図8は、ヒータコア13と室内凝縮器22を通過する送風空気の温度変化を示す説明図であり、図9は、エンジン10の作動状態とエンジン冷却水温度との関係を示す説明図である。
【0151】
まず、図8の破線で示す温度変化は、ヒータコア13の加熱能力の制御を行っていない車両用空調装置において、エンジン冷却水がヒータコア13にて成り行き的に送風空気へ放熱したときの送風空気の温度変化である。
【0152】
この場合は、図9(a)に示すように、ヒータコア13における送風空気の吸熱によって、冷却水温度Twが第1基準温度T1以下になってしまうことがあり、暖機制御によるエンジン10の作動回数を増加させやすい。さらに、暖機制御時にエンジンを作動させている最中も、エンジン冷却水が送風空気へ放熱してしまうので、冷却水温度Twが第2基準温度以上となる迄の時間が長時間化してしまう暖機遅延を招きやすい。
【0153】
これに対して、本実施形態では、加熱能力制御手段60aが流量調整弁14の弁開度を低下させているので、図8の実線で示す温度変化のように、エンジン10の廃熱を送風空気の加熱に利用しつつ、ヒータコア13における加熱能力を低下させることができる。
【0154】
これにより、ヒータコア13から流出したエンジン冷却水が、エンジン10へ戻っても、冷却水温度Twを第1基準温度T1以上に維持しやすい。さらに、暖房モードおよび除湿暖房モードでは、冷却水温度Twが所定温度tk1以下になると、空調制御装置60がエンジン制御装置50に対して暖機禁止信号を出力するので、図9(b)に示すように、冷却水温度Twが第1基準温度T1以下となっても、エンジン10を作動させない。
【0155】
この際、エンジン10自体の温度が第1基準温度以上となるようにヒータコア13の加熱能力が許容加熱能力Qw_capに制御されているので、エンジン10自体の温度低下による不具合の発生も抑制できる。また、仮に、冷却水温度Twが第1基準温度T1以下となり、暖機制御が実行されたとしても、エンジン冷却水が送風空気へ放熱する放熱量が制限されているので、冷却水温度Twを速やかに上昇させて暖機遅延を抑制できる。
【0156】
従って、本実施形態によれば、エンジン10の廃熱を有効に活用しながらも、車両燃費の悪化を抑制しつつ、車室内の適切な暖房あるいは除湿暖房を実現することができる。
【0157】
さらに、本実施形態では、加熱手段として加熱用熱交換器であるヒータコア13を採用し、加熱能力変更手段としてヒータコア13を流通するエンジン冷却水の流量を変化させる流量調整弁14を採用しているので、簡素な構成で、容易に加熱能力変更手段を構成することができる。
【0158】
さらに、本実施形態では、車速に応じて許容加熱能力Qw_capを決定するための制御マップを変化させて、低車速時に高車速時よりもエンジン10自体の温度を高温に維持している。
【0159】
従って、低速走行時やアイドル時のようにエンジン10の廃熱が少なくなる場合に、ヒータコア13にて温度低下したエンジン冷却水をエンジン10へ戻して冷却水温度Twが急低下したとしても、エンジン10自体の温度が第1基準温度T1より低くなってしまうことを効果的に抑制できる。
【0160】
(第2実施形態)
第1実施形態では、加熱能力変更手段として流量調整弁14を採用した例を説明したが、本実施形態では、図10の全体構成図に示すように、流量調整弁14を廃止して、加熱能力変更手段を、エンジン冷却水がヒータコア13を迂回して流れるバイパス通路16、およびバイパス通路16の開度を調整することで、ヒータコア13を流通するエンジン冷却水の流量を変化させる開度調整弁17で構成した例を説明する。
【0161】
さらに、本実施形態では、図5に示すステップS11にて、第1実施形態と同様にヒータコア13の加熱能力が許容加熱能力Qw_capとなるように冷却水流量Gwを決定し、決定された冷却水流量Gwを実現するように開度調整弁17の弁開度を決定する。その他の構成および制御については、第1実施形態と同様である。
【0162】
従って、本実施形態の車両用空調装置1においても第1実施形態と全く同様に、エンジン10の廃熱を有効に活用しながら、燃費の悪化を抑制しつつ、車室内の適切な暖房あるいは除湿暖房を実現することができる。さらに、簡素な構成で、容易に加熱能力変更手段を構成することができる。
【0163】
(第3実施形態)
上述の実施形態では、加熱能力変更手段として、ヒータコア13を流通するエンジン冷却水の流量を変化させる手段を採用した例を説明したが、本実施形態では、図11の全体構成図に示すように、ヒータコア13を流通する送風空気の流量を変化させることによって、ヒータコア13の加熱能力を変化させる手段を採用した例を説明する。
【0164】
ここで、前述の如く、ヒータコア13における許容加熱能力Qw_capは、ヒータコア13の許容放熱量であるから、このヒータコア13の許容放熱量は、ヒータコア13における送風空気の最大吸熱量でもある。従って、この送風空気の最大吸熱量を変化させることで、ヒータコア13の放熱量、すなわちヒータコア13の加熱能力を変化させることができる。
【0165】
そこで、本実施形態では、加熱用冷風通路33内にヒータコア13を迂回させて室内蒸発器23から直接、室内凝縮器22へ送風空気を導くヒータコアバイパス通路36を設け、さらに、ヒータコア13の送風空気流れ上流側に、ヒータコア13を流通する送風空気の流量とヒータコアバイパス通路36を流通する送風空気の流量との流量割合を変化させるヒータコアバイパスドア37を配置している。
【0166】
さらに、本実施形態では、図5に示すステップS11にて、ヒータコア13の加熱能力が許容加熱能力Qw_capとなるヒータコア13を流通する送風空気の流量を決定し、決定された送風空気の流量を実現するようにヒータコアバイパスドア37の開度を決定する。その他の構成および制御については、第1実施形態と同様である。
【0167】
従って、本実施形態の車両用空調装置1においても第1実施形態と全く同様に、エンジン10の廃熱を有効に活用しながら、燃費の悪化を抑制しつつ、車室内の適切な暖房あるいは除湿暖房を実現することができる。さらに、ヒータコアバイパス通路36およびヒータコアバイパスドア37という簡素な構成で、容易に加熱能力変更手段を構成することができる。
【0168】
なお、本実施形態の加熱能力変更手段は、第1、第2実施形態の加熱能力変更手段と併用することもできる。
【0169】
(第4実施形態)
本実施形態では、第1実施形態に対して、図5に示す空調制御装置60の制御態様を変更したものである。具体的には、ステップS11にて、流量調整弁14の弁開度を決定した後、今回決定された流量調整弁14の弁開度が、前回の流量調整弁14の弁開度よりも低下しているか否かを判定する。つまり、今回決定された流量調整弁14の弁開度によって、ヒータコア13の加熱能力が低下するか否かを判定する。
【0170】
そして、今回決定された流量調整弁14の弁開度が、前回の流量調整弁14の弁開度よりも小さくなっている場合は、流量調整弁14の弁開度を前回の流量調整弁14の弁開度に維持した状態で、圧縮機21の冷媒吐出能力を予め定めた基準量だけ増加させる。さらに、圧縮機21の冷媒吐出能力を増加させた後、所定時間(本実施形態では、2秒〜3秒)経過後、流量調整弁14の弁開度を今回決定された弁開度に低下させる。
【0171】
その他の構成および制御は第1実施形態と同様である。従って、本実施形態によれば、加熱能力制御手段60aがヒータコア13の加熱能力を低下させる前に、吐出能力制御手段(補助加熱能力制御手段)60bが室内凝縮器22の加熱能力を増加させることができる。これにより、図12に示すように、ヒータコア13と室内凝縮器22の合計加熱能力が、車室内を暖房あるいは除湿暖房するために必要な加熱能力を下回ることがない。
【0172】
その結果、ヒータコア13の加熱能力の低下によって送風空気の温度が低下してしまう前に、室内凝縮器22によって送風空気を加熱でき、乗員の暖房感を損ねることがない。なお、図12は、本実施形態の制御態様によるヒータコア13と室内凝縮器22の合計加熱能力の変化を示す説明図である。また、本実施形態の制御態様は、第2、第3実施形態に対しても適用可能である。
【0173】
(第5実施形態)
本実施形態では、第1実施形態に対して、冷却水温度センサ51の配置を変更して、冷却水温度センサ51が検出する温度を変更した例を説明する。具体的には、本実施形態の冷却水温度センサ51は、図13の全体構成図に示すように、エンジン10へ流入する直前のエンジン冷却水の温度を検出するように配置されている。
【0174】
この冷却水温度センサ51の検出するエンジン冷却水の冷却水温度Twは、エンジン10自体の温度に相関を有する温度であるものの、ヒータコア13にて放熱した熱量分だけ実際のエンジン10自体の温度よりも低い値となる。そこで、本実施形態のエンジン制御装置50では、冷却水温度センサ51の検出したエンジン冷却水の冷却水温度Twをエンジン10自体の温度として用いるだけでなく、暖機制御の制御内容を変更している。
【0175】
具体的には、本実施形態の暖機制御では、エンジン制御装置50は、冷却水温度センサ51によって検出された冷却水温度Twが予め定めた第3基準温度T3(本実施形態では、40℃)以下になると、エンジン制御装置50が、図14の制御特性図に示すように、冷却水温度Twが予め定めた第1基準温度T1(本実施形態では、50℃)となるまで、走行状態とは無関係にエンジン10を作動させる暖機制御を行う。
【0176】
さらに、本実施形態では、冷却水温度Twとしてエンジン10へ流入する直前のエンジン冷却水の温度を採用しているので、第1基準温度T1は、第1実施形態よりも高い値に設定されている。換言すると、本実施形態の第1基準温度T1は、フリクションロスの発生や、排気ガス浄化用触媒の作動不良を抑制するために、エンジン10に暖機が必要とされる温度よりも高い値に設定されている。
【0177】
従って、本実施形態の暖機制御では、冷却水温度センサ51によって検出されるエンジン10へ流入する直前のエンジン冷却水の冷却水温度Twを、エンジン10自体の温度として用い、エンジン10自体の温度が、第1基準温度T1以下となる予め定めた温度帯の範囲で、第1基準温度T1に近づくように、エンジン10の作動が制御されることになる。
【0178】
また、本実施形態のステップS10では、ヒータコア13から流出したエンジン冷却水が、ラジエータ15側からエンジン10へ戻るエンジン冷却水と合流して、エンジン10へ戻った際に、エンジン10自体の温度が、暖機制御と同様の第1基準温度T1以下となる予め定めた温度帯の範囲で、第1基準温度T1に近づくように、ヒータコア13におけるエンジン冷却水の許容加熱能力Qw_capを決定する。
【0179】
その他の構成および制御は、第1実施形態と同様である。本実施形態の如く、冷却水温度センサ51によって検出される冷却水温度Twをエンジン10自体の温度とし、第1基準温度T1をエンジン10に暖機が必要とされる温度よりも高い値に設定しても、第1実施形態と同様に、車室内の適切な暖房あるいは除湿暖房を実現することができる。
【0180】
さらに、本実施形態では、ヒータコア13にて送風空気を加熱した後の温度低下したエンジン冷却水がエンジン10に戻った際に、エンジン10自体の温度が、第1基準温度T1以下となる予め定めた温度帯の範囲で、第1基準温度T1に近づくように、ヒータコア13へ流入するエンジン冷却水の冷却水流量Gwが制御されている。これにより、実際のエンジン10の温度が、暖機が必要となる温度よりも低くなってしまうことを抑制できる。
【0181】
従って、第1実施形態と同様に、エンジン10の廃熱を有効に活用しながらも、車両燃費の悪化を抑制しつつ、車室内の適切な暖房あるいは除湿暖房を実現することができる。なお、本実施形態の制御態様を、第1〜第4実施形態に対して適用してもよい。また、第2〜第4実施形態において、冷却水温度センサ51がエンジン10へ流入する直前のエンジン冷却水の温度を検出するように配置されていてもよい。
【0182】
(第6実施形態)
本実施形態では、第1実施形態に対して、図15の全体構成図に示すように、冷却水温度センサ51を廃止して、エンジン10の外表面温度を検出するエンジン温度センサ56を設けた例を説明する。さらに、本実施形態では、このエンジン温度センサ56の検出値を第1実施形態における冷却水の冷却水温度Twの代わりに用いて、第1実施形態と同様の制御を行っている。
【0183】
その他の構成および制御は、第1実施形態と同様である。本実施形態の如く、エンジン温度センサ56によって検出されるエンジン10の外表面温度をエンジン10自体の温度としても、第1実施形態と同様の効果を得ることができる。さらに、第2〜5実施形態において、本実施形態の如く、エンジン温度センサ56を採用してもよい。
【0184】
(他の実施形態)
本発明は上述の実施形態に限定されることなく、本発明の趣旨を逸脱しない範囲内で、以下のように種々変形可能である。
【0185】
(1)上述の実施形態では、本発明の車両用空調装置1をハイブリッド車両に適用して、車両の走行状態に応じて作動が制御される車載機器としてエンジン10を採用した例を説明したが、車載機器は、これに限定されない。例えば、車両用空調装置1を燃料電池車両に適用して、車載機器として車両走行用モータに電力を供給する燃料電池を採用し、この燃料電池を冷却するための電池冷却水を熱媒体としてヒータコア13に供給してもよい。
【0186】
燃料電池は、車両の走行負荷に応じて発電量が変化するものの、発電効率を向上させるために燃料電池自体の温度を一定に保っておく必要がある。そのため、燃料電池の廃熱によって加熱される電池冷却水の温度が適切な暖房を行うために不十分となっていることもある。さらに、ヒータコア13から流出した電池冷却水が燃料電池に戻った際に、燃料電池自体の温度を低下させてしまうと、発電効率が低下して燃費の悪化を招いてしまう。
【0187】
従って、車両用空調装置1を適用することによって、燃料電池の廃熱を有効に活用しながら、燃費の悪化を抑制しつつ、車室内の適切な暖房あるいは除湿暖房を実現できることは、極めて有効である。
【0188】
(2)上述の実施形態では、補助加熱手段として、冷凍サイクル20の室内凝縮器22を採用して、吐出能力制御手段(補助加熱能力制御手段)60bが圧縮機21の冷媒吐出能力を変化させることによって、室内凝縮器22の加熱能力を制御した例を説明したが、補助加熱手段はこれに限定されない。
【0189】
例えば、電力を供給することによって発熱する電気ヒータを採用することができる。この場合は、補助加熱能力制御手段から出力される電力によって電気ヒータの加熱能力を制御すればよい。さらに、補助加熱手段としては、加熱手段の熱源を供給する車載機器とは異なる車載機器から供給されるエネルギによって加熱能力を発揮する手段を採用することができる。
【0190】
(3)上述の実施形態では、冷却水温度Twに基づいて、予め空調制御装置60に記憶された制御マップを参照して許容加熱能力Qw_capを決定した例を説明したが、Qw_capの決定はこれに限定されない。例えば、冷却水温度Tw、燃料消費量Qfuelおよび廃熱効率Hehに基づいて、予め空調制御装置60に記憶された制御マップを参照して決定してもよい。
【0191】
また、Qw_capは、エンジンで燃料を燃焼させることによる熱量と、エンジン自体が有している熱量からエンジン表面からの放熱を差し引くことで定義ができる。そこで、冷却水温度Tw、冷却水回路を構成する機器の熱容量Kmass、車速Vv、エンジン10自体の放熱係数Krad、外気温Ta、第1基準温度T1、燃料消費量Qfuelおよび廃熱効率Hehに基づいて、下記数式F2を用いて決定してもよい。
Qw_cap=Qfuel×Heh+Q(Tw、T1、Kmass)−Q(Vv、Krad、Ta)…(F2)
ここで、Qfuelは、消費された燃料の有しているエネルギであり、消費された燃料によってエンジンが出力可能な仕事量とも表現できる。一般的に、1リットルのガソリンが有するエネルギは3MJ程度である。
【0192】
廃熱効率Hehは、消費された燃料によってエンジンが出力可能な仕事量に対する、エンジンが実際に出力した仕事量および排気熱以外の熱量(仕事量)の合算値の割合を示す値である。一般的に、消費された燃料によってエンジンが出力可能な仕事量に対するエンジンが実際に出力した仕事量は30%程度であり、排気熱の熱量は20%であり、排気熱以外の熱量は50%程度になる。
【0193】
また、式F2のQ(Tw、T1、Kmass)の項は、エンジン冷却系自体が有している熱量(熱マス分)を示す項であり、エンジン冷却系自体が有する温度が第1基準温度T1以上であれば送風空気を加熱するための熱量として利用できる。
【0194】
(4)上述の実施形態にて例示した加熱能力変更手段の他に、加熱能力変更手段として冷却水ポンプ12を採用することができる。そして、ヒータコア13の加熱能力を増加させる際には冷却水ポンプ12の流量を増加させるように冷却水ポンプ12の作動を制御すればよい。この場合は、空調制御装置60がエンジン制御装置50に対して、冷却水ポンプ12の回転数変更信号を出力すればよい。
【0195】
(5)上述の実施形態では、図5の制御ステップS3にて、操作パネル70の運転モード切替スイッチの操作信号に基づいて運転モードを決定した例を説明したが、運転モードの決定は、これに限定されない。
【0196】
例えば、内気センサ61によって検出された車室内温度Trに対して温度設定スイッチによって設定された設定温度Tsetが低い場合は冷房モードに決定し、車室内温度Trに対して設定温度Tsetが高い場合は暖房モードに決定し、さらに、車室内温度Trに対して設定温度Tsetが高くかつ外気温センサ62によって検出された外気温Taが所定温度以下の場合は除湿暖房モードに決定するようにしてもよい。
【0197】
(6)上述の実施形態では、図5の制御ステップS10にて、ヒータコア13へ流入する送風空気の温度として冷媒蒸発温度Teを用いてヒータコア13から流出する送風空気の温度Thcoを算出できる例を説明したが、暖房モードでは、室内蒸発器23にて冷媒が蒸発していないので、暖房モードについては、冷媒蒸発温度Teの代わりに外気温Taを用いてThcoを算出してもよい。
【0198】
(7)上述の実施形態では、本発明の車両用空調装置を、ハイブリッド車両のうちエンジンEGおよび走行用電動モータの双方から直接駆動力を得て走行可能な、いわゆるパラレル型のハイブリッド車両に適用した例を説明しているが、本発明の車両用空調装置の適用はこれに限定されない。
【0199】
例えば、エンジンEGを発電機の駆動源として用い、発電された電力をバッテリに蓄え、さらに、バッテリに蓄えられた電力を供給されることによって作動する走行用電動モータから駆動力を得て走行する、いわゆるシリアル型のハイブリッド車両に適用してもよい。
【0200】
(8)上述の第1〜第5実施形態では、車載機器であるエンジン10自体の温度として、熱媒体であるエンジン冷却水の冷却水温度Twを用いた例を説明し、第6実施形態では、エンジン10の外表面の温度を用いた例を説明したが、この他にも、エンジン10自体の温度としては、エンジン10自体の温度に相関を有する物理量を採用できる。
【0201】
なお、エンジン10自体の温度には温度分布が生じ易い。そのため、この温度分布のうち高温側の温度に相関を有する温度を採用する場合は、第1実施形態のように、第1基準温度T1以上となる予め定めた温度帯の範囲で、第1基準温度T1に近づける暖機制御を行うようにし、低温側の温度に相関を有する温度を採用する場合は、第5実施形態のように、第1基準温度T1以下となる予め定めた温度帯の範囲で、第1基準温度T1に近づける暖機制御を行うようにしてもよい。
【符号の説明】
【0202】
10 エンジン
11 冷却水回路
13 ヒータコア
14 流量調整弁
16 バイパス通路
17 開度調整弁
20 冷凍サイクル
21 圧縮機
22 室内凝縮器
37 ヒータコアバイパスドア
60a 加熱能力制御手段
60b 補助加熱能力制御手段(吐出能力制御手段)
【技術分野】
【0001】
本発明は、車両の走行状態に応じて作動が制御される車載機器の廃熱を熱源として車室内暖房を行う車両用空調装置に関する。
【背景技術】
【0002】
従来、特許文献1に、ヒートポンプサイクルにおいて冷媒を凝縮させる凝縮器として機能する室内熱交換器、およびエンジン冷却水を熱源とする加熱用熱交換器であるヒータコアの双方の加熱手段にて車室内へ送風される送風空気を加熱し、車室内の暖房を行う車両用空調装置が開示されている。
【0003】
さらに、この特許文献1の車両用空調装置では、ヒータコアに対して送風空気流れ上流側に室内熱交換器を配置して、室内熱交換器にて加熱された送風空気をヒータコアにて再加熱する構成を採用している。そして、流量調整弁によってヒータコアへ供給されるエンジン冷却水の流量を調整することで、車室内へ吹き出される送風空気の温度調整を可能としている。
【0004】
つまり、特許文献1の車両用空調装置では、車載機器であるエンジンの廃熱を熱源として室内熱交換器にて加熱された送風空気を再加熱する際に、エンジンの廃熱の利用度合を変化させることによって車室内へ吹き出される送風空気の温度を調整して、快適な車室内温度となる適切な暖房を実現しようとしている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0005】
【特許文献1】特開2001−1749号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
ところで、特許文献1の車両用空調装置の構成で車室内の適切な暖房を行うためには、エンジン冷却水の温度が室内熱交換器にて加熱された送風空気の温度よりも高くなっている必要がある。そのため、特許文献1の車両用空調装置を、エンジンおよび走行用電動モータから走行用駆動力を得る、いわゆるハイブリッド車両に適用すると、車室内の適切な暖房を実現できなくなってしまうことがある。
【0007】
その理由は、ハイブリッド車両では、燃費向上のためにエンジンを停止した状態で走行用電動モータの駆動力のみによって走行する走行状態となることがあり、このような走行状態では、エンジンの廃熱を十分に得ることができなくなってしまうからである。その結果、エンジン冷却水の温度が室内熱交換器にて加熱された送風空気の温度よりも低くなり、車室内の適切な暖房を実現できなくなってしまう。
【0008】
この問題を解決する手段として、ハイブリッド車両であっても車室内の暖房時にはエンジンを作動させて、適切な暖房を実現するために必要な廃熱を得る手段が考えられる。しかしながら、走行用電動モータの駆動力のみによって走行する走行状態は、車両走行のためにエンジンに駆動力を出力させる必要のない走行状態であるから、適切な暖房を実現するためにエンジンを作動させることは、車両燃費を著しく悪化させてしまう要因となる。
【0009】
また、このような燃費悪化の問題は、特許文献1の車両用空調装置を、燃料電池から走行用電動モータへ電力を供給する、いわゆる燃料電池車両に適用して、ヒータコアの熱源として電池冷却水を用いる場合であっても同様に生じ得る。その理由は、燃料電池車両では、燃料電池の発電効率向上のために、走行状態に応じて電池冷却水の循環流量を制御する等の手段を用いて、燃料電池自体の温度を所定の温度に維持しているからである。
【0010】
この際、電池冷却水の温度が室内熱交換器にて加熱された送風空気の温度よりも低く維持されていると、車室内の適切な暖房を実現できなくなってしまう。さらに、車室内の暖房時に、適切な暖房を実現するために電池冷却水の温度を上昇させると、燃料電池の発電効率が低下して車両燃費を悪化させてしまう。
【0011】
上記点に鑑みて、本発明は、車室内を暖房する際の熱源となる車載機器の廃熱が適切な暖房を行うために不十分となることがある車両用空調装置において、車両燃費の悪化を抑制しつつ、車室内の暖房を実現することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0012】
上記目的を達成するため、請求項1に記載の発明では、車両の走行状態に応じて作動が制御される車載機器(10)の廃熱によって加熱される熱媒体を循環させる循環回路(11)に配置されて、熱媒体を熱源として車室内へ送風される送風空気を加熱する加熱手段(13)と、加熱手段(13)にて加熱された送風空気をさらに加熱する補助加熱手段(22)と、加熱手段(13)の加熱能力を制御する加熱能力制御手段(60a)と、補助加熱手段(22)の加熱能力を制御する補助加熱能力制御手段(60b)とを備え、
さらに、車載機器(10)は、車載機器(10)自体の温度が予め定めた基準温度(T1)に近づくように、作動が制御されており、加熱能力制御手段(60a)は、加熱手段(13)にて送風空気を加熱した後の熱媒体が車載機器(10)に戻った際に、車載機器(10)自体の温度が基準温度(T1)に近づくように、加熱手段(13)の加熱能力を制御し、補助加熱能力制御手段(60b)は、送風空気が所望の温度となるように、補助加熱手段(22)の加熱能力を制御する車両用空調装置を特徴とする。
【0013】
これによれば、加熱手段(13)にて加熱された送風空気を補助加熱手段(22)にて再加熱する構成を採用して、送風空気の温度が所望の温度となるように補助加熱手段(22)の加熱能力が制御されるので、熱媒体の温度が適切な暖房を行うために不十分となっても、補助加熱手段(22)の加熱能力によって車室内へ吹き出される送風空気の温度を十分に上昇させて、車室内の暖房を実現することができる。
【0014】
さらに、加熱手段(13)にて送風空気を加熱した後の温度低下した熱媒体が車載機器(10)に戻った際に、車載機器(10)自体の温度が基準温度(T1)に近づくように、加熱手段(13)の加熱能力が制御されるので、車載機器(10)自体の温度が基準温度(T1)に対して大きく低下してしまうことを抑制できる。
【0015】
従って、車室内の暖房を行うために車載機器(10)の廃熱を用いても、これに起因して車載機器(10)を不必要に作動させて車両燃費を悪化させることを抑制できる。その結果、熱媒体を加熱する車載機器(10)の廃熱が適切な暖房を行うために不十分となっても、車両燃費の悪化を抑制しつつ、車室内の暖房を実現することができる。
【0016】
また、請求項2に記載の発明では、車両の走行状態に応じて作動が制御される車載機器(10)の廃熱によって加熱される熱媒体を循環させる循環回路(11)に配置されて、熱媒体を熱源として車室内へ送風される送風空気を加熱する加熱手段(13)と、加熱手段(13)にて加熱された送風空気をさらに加熱する補助加熱手段(22)と、加熱手段(13)の加熱能力を制御する加熱能力制御手段(60a)と、補助加熱手段(22)の加熱能力を制御する補助加熱能力制御手段(60b)とを備え、
さらに、車載機器(10)は、車載機器(10)自体の温度が予め定めた基準温度(T1)以上となるように、作動が制御されており、加熱能力制御手段(60a)は、加熱手段(13)にて送風空気を加熱した後の熱媒体が車載機器(10)に戻った際に、車載機器(10)自体の温度が基準温度(T1)以上となるように、加熱手段(13)の加熱能力を制御し、補助加熱能力制御手段(60b)は、送風空気が所望の温度となるように、補助加熱手段(22)の加熱能力を制御することを特徴とする。
【0017】
これによれば、請求項1に記載の発明と同様に、熱媒体の温度が適切な暖房を行うために不十分となっても、補助加熱手段(22)の加熱能力によって車室内へ吹き出される送風空気の温度を十分に上昇させて、車室内の暖房を実現することができる。
【0018】
さらに、加熱手段(13)にて送風空気を加熱した後の温度低下した熱媒体が車載機器(10)に戻った際に、車載機器(10)自体の温度が基準温度(T1)以上となるように、加熱手段(13)の加熱能力が制御されるので、車載機器(10)自体の温度が基準温度(T1)より低くなってしまうことを抑制できる。
【0019】
従って、車室内の暖房を行うために車載機器(10)の廃熱を用いても、これに起因して車載機器(10)を不必要に作動させて車両燃費を悪化させることを抑制できる。その結果、熱媒体を加熱する車載機器(10)の廃熱が適切な暖房を行うために不十分となっても、車両燃費の悪化を抑制しつつ、車室内の暖房を実現することができる。
【0020】
なお、請求項1および請求項2における車載機器(10)自体の温度としては、車載機器(10)の内部温度あるいは外表面温度のような車載機器(10)そのものの温度のみを意味するものではなく、車載機器(10)自体の温度に相関を有する温度を含む意味である。
【0021】
つまり、請求項3に記載の発明のように、請求項1または2に記載の車両用空調装置において、車載機器(10)自体の温度として、熱媒体の温度(Tw)が用いられていてもよい。より具体的には、熱媒体の温度のうち、車載機器(10)自体の温度に高い相関関係を有する、車載機器(10)の内部を流通する熱媒体の温度、車載機器(10)から流出した直後の熱媒体の温度、車載機器(10)へ流入する直前の熱媒体(T1)の温度が、車載機器(10)自体の温度として用いられていてもよい。
【0022】
請求項4に記載の発明では、請求項1ないし3のいずれか1つに記載の車両用空調装置において、具体的に、さらに、加熱手段(13)の加熱能力を変化させる加熱能力変更手段(14、16、17、37)を備え、加熱能力制御手段(60a)は、加熱能力変更手段(14、16、17、37)の作動を制御することによって、加熱手段(13)の加熱能力を制御することを特徴としている。
【0023】
そして、請求項5に記載の発明のように、請求項4に記載の車両用空調装置において、加熱手段は、熱媒体と送風空気とを熱交換させる加熱用熱交換器(13)であり、加熱能力変更手段(14、16、17)は、加熱用熱交換器(13)を流通する熱媒体の流量を変化させることによって、加熱手段(13)の加熱能力を変化させるようになっていてもよい。
【0024】
さらに、具体的に、請求項6に記載の発明のように、この加熱能力変更手段は、加熱用熱交換器(13)を流通する熱媒体の流量を調整する流量調整弁(14)であってもよいし、請求項7に記載の発明のように、この加熱能力変更手段は、熱媒体が加熱用熱交換器(13)を迂回して流れるバイパス通路(16)およびバイパス通路(16)の開度を調整する開度調整弁(17)で構成されていてもよい。これにより、容易に加熱能力変更手段を構成することができる。
【0025】
請求項8に記載の発明では、請求項5ないし7のいずれか1つに記載の車両用空調装置において、加熱能力制御手段(60a)は、加熱用熱交換器(13)にて送風空気を加熱する前の熱媒体の温度の上昇に伴って、加熱用熱交換器(13)を流通する熱媒体の流量を増加させることを特徴とする。
【0026】
ここで、加熱手段(13)にて送風空気を加熱する前の熱媒体の温度が十分に上昇している場合は、加熱用熱交換器(13)を流通する熱媒体の流量を増加させて加熱用熱交換器(13)の加熱能力を上昇させても、加熱手段(13)にて送風空気を加熱した後の温度低下した熱媒体が車載機器(10)に戻ったとしても、車載機器(10)自体の温度が低下してしまう低下度合が少ない。
【0027】
さらに、加熱用熱交換器(13)の加熱能力の上昇に伴って、補助加熱手段(22)の加熱能力を低下させることができる。従って、車載機器(10)の廃熱を有効に活用しながら、車両燃費の悪化を抑制しつつ、車室内の暖房を実現することができる。
【0028】
また、請求項9に記載の発明のように、請求項4に記載の車両用空調装置において、加熱手段は、熱媒体と送風空気とを熱交換させる加熱用熱交換器(13)であり、加熱能力変更手段(37)は、加熱用熱交換器(13)を流通する送風空気の流量を変化させることによって、前記加熱手段(13)の加熱能力を変化させるようになっていてもよい。これにより、容易に加熱能力変更手段を構成することができる。
【0029】
さらに、具体的に、請求項10に記載の車両用空調装置のように、加熱能力変更手段(37)は、加熱用熱交換器(13)を流通させる送風空気の流量と加熱用熱交換器(13)を迂回させる送風空気の流量との流量割合を変化させることによって、加熱用熱交換器(13)を流通する送風空気の流量を変化させるようにしてもよい。
【0030】
請求項11に記載の発明のように、請求項1ないし10のいずれか1つに記載の車両用空調装置において、熱媒体は、車載機器(10)を冷却する冷却水であってもよい。
【0031】
請求項12に記載の発明のように、請求項1ないし11のいずれか1つに記載の車両用空調装置において、基準温度(T1)は、車載機器(10)に暖機が必要とされる温度以上の値に設定されていてもよい。
【0032】
なお、本請求項における暖機が必要とされる温度とは、車載機器(10)そのものの性能を適切に発揮するために必要とされる車載機器(10)自体の温度のみを意味するものではなく、車載機器(10)に接続された他の機器類の性能を適切に発揮するために必要とされる温度を含む意味である。
【0033】
請求項13に記載の発明では、請求項1ないし12のいずれか1つに記載の車両用空調装置において、加熱能力制御手段(60a)は、車両の速度(Vv)が予め定めた基準車速(KVv)より低くなっている場合は、車速(Vv)が基準車速(KVv)以上となっている場合よりも、加熱手段(13)にて送風空気を加熱した後の熱媒体が車載機器(10)に戻った際の車載機器(10)自体の温度が増加するように、加熱手段(13)の加熱能力を制御することを特徴とする。
【0034】
これによれば、低車速時に高車速時よりも車載機器(10)自体の温度を高温に維持できるので、車載機器(10)の廃熱が少なくなる低車速時に、送風空気を加熱した後の温度低下した熱媒体を車載機器(10)に戻して車載機器(10)自体の温度が急低下したとしても、車載機器(10)自体の温度が基準温度(T1)より低くなってしまうことを、効果的に抑制できる。
【0035】
請求項14に記載の発明のように、請求項1ないし13のいずれか1つに記載の車両用空調装置において、具体的に、補助加熱手段は、蒸気圧縮式の冷凍サイクル(20)において圧縮機(21)から吐出された冷媒を放熱させる放熱器(22)であり、補助加熱能力制御手段(60b)は、圧縮機(21)の冷媒吐出能力を変化させることによって、放熱器(22)の加熱能力を制御するようになっていてもよい。これにより、容易に補助加熱手段(22)の加熱能力を変更することができる。
【0036】
さらに、請求項15に記載の発明のように、この圧縮機は、電力を供給されることによって作動する電動圧縮機(21)であってもよい。
【0037】
請求項16に記載の発明では、請求項1ないし15のいずれか1つに記載の車両用空調装置において、補助加熱能力制御手段(60b)は、加熱能力制御手段(60a)が加熱手段(13)の加熱能力を低下させる前に、補助加熱手段(22)の加熱能力を増加させることを特徴とする。
【0038】
これによれば、加熱能力制御手段(60a)が加熱手段(13)の加熱能力を低下させる前に、補助加熱能力制御手段(60b)が補助加熱手段(22)の加熱能力を増加させるので、加熱手段(13)の加熱能力の低下によって送風空気の温度が低下してしまう前に、補助加熱手段(22)によって送風空気を加熱できる。従って、乗員の暖房感を損ねることがない。
【0039】
請求項17に記載の発明のように、上記した車載機器は、車両の走行用駆動力を出力する内燃機関(10)であってもよいし、請求項18に記載の発明のように、上記した車載機器は、車両走行用モータに電力を出力する燃料電池であってもよい。
【0040】
なお、この欄および特許請求の範囲で記載した各手段の括弧内の符号は、後述する実施形態に記載の具体的手段との対応関係を示す一例である。
【図面の簡単な説明】
【0041】
【図1】第1実施形態の車両用空調装置の全体構成図である。
【図2】第1実施形態の車両用空調装置の電気制御部を示すブロック図である。
【図3】(a)は、エンジン作動時の冷却水温度の変化を示す説明図であり、(b)は、暖機制御時の冷却水温度の変化を示す説明図である。
【図4】第1実施形態の暖機制御における制御特性図である。
【図5】第1実施形態の車両用空調装置の制御を示すフローチャートである。
【図6】第1実施形態の許容加熱能力を決定するための制御特性図である。
【図7】冷却水温度、冷却水流量および許容加熱能力の関係を示す説明図である。
【図8】ヒータコアと室内凝縮器を通過する送風空気の温度変化を示す説明図である。
【図9】(a)は、ヒータコアの加熱能力制御を行わない場合の冷却水温度の変化を示す説明図であり、(b)は、本実施形態の冷却水温度の変化を示す説明図である。
【図10】第2実施形態の車両用空調装置の全体構成図である。
【図11】第3実施形態の車両用空調装置の全体構成図である。
【図12】第4実施形態による送風空気の合計加熱能力の変化を示す説明図である。
【図13】第5実施形態の車両用空調装置の全体構成図である。
【図14】第5実施形態の暖機制御における制御特性図である。
【図15】第6実施形態の車両用空調装置の全体構成図である。
【発明を実施するための形態】
【0042】
(第1実施形態)
図1〜8により、本発明の第1実施形態を説明する。図1は、本実施形態の車両用空調装置1の全体構成図である。本実施形態では、車両用空調装置1を、内燃機関(エンジン)10および走行用電動モータから車両走行用の駆動力を得る、いわゆるハイブリッド車両に適用している。
【0043】
本実施形態のハイブリッド車両は、車両の走行負荷に応じてエンジン10を作動あるいは停止させて、エンジン10および走行用電動モータの双方から駆動力を得て走行する走行状態や、エンジンを停止させて走行用電動モータのみから駆動力を得て走行する、EV走行と呼ばれる走行状態等を切り替えることができる。これにより、車両走行用の駆動源としてエンジン10のみを有する車両に対して燃費を向上させている。
【0044】
従って、本実施形態のエンジン10は、車両の走行状態に応じて作動が制御される車載機器である。具体的には、エンジン10は、後述するエンジン制御装置50から出力される制御信号によって、その作動が制御される。また、エンジン10は作動時に発熱を伴うので、エンジン10には、エンジン10を冷却するためのエンジン冷却水(熱媒体)を循環させる循環回路としての冷却水回路11が接続されている。
【0045】
冷却水回路11には、冷却水ポンプ12、ヒータコア13、流量調整弁14、およびラジエータ15等が配置されている。冷却水ポンプ12は、エンジン制御装置50から出力される制御信号によって回転数(エンジン冷却水循環量)が制御される電動式の水ポンプである。なお、図1の冷却水回路11における破線矢印は、エンジン冷却水の流れ方向を示している。
【0046】
ヒータコア13は、後述する車両用空調装置1の室内空調ユニット30内に形成された車室内へ送風される送風空気の空気通路に配置され、車室内の暖房時および除湿暖房時に、エンジン冷却水と送風空気とを熱交換させて送風空気を加熱する加熱用熱交換器である。換言すると、ヒータコア13は、エンジン10の廃熱によって加熱された熱媒体であるエンジン冷却水を熱源として送風空気を加熱する加熱手段である。
【0047】
流量調整弁14は、ヒータコア13を流通するエンジン冷却水の流量を変化させることによって、ヒータコア13の加熱能力(放熱能力)を変化させる加熱能力変更手段である。具体的には、流量調整弁14は、開度を変更可能に構成された弁体と、この弁体の開度を可変制御する電動アクチュエータとを有して構成されている。さらに、流量調整弁14は、後述する空調制御装置60から出力される制御信号によって、その作動が制御される。
【0048】
ラジエータ15は、エンジン冷却水と室外空気(外気)とを熱交換させてエンジン冷却水を冷却する放熱用の熱交換器である。従って、ラジエータ15は、エンジン冷却水がエンジン10の内部を貫流する際に吸熱したエンジン10の廃熱を、大気に放熱する機能を果たす。なお、本実施形態の冷却水回路11では、ヒータコア13とラジエータ15とをエンジン冷却水の流れに対して並列的に配置している。
【0049】
また、冷却水回路11には、ラジエータ15を迂回する図示しないバイパス回路が設けられ、さらにエンジン冷却水の温度が所定値(本実施形態では、90℃)以下になるとバイパス回路側へエンジン冷却水を流すサーモスタット弁(図示せず)が配置されている。これにより、エンジン10自体の温度が低下して、エンジンオイルの粘度増加によるフリクションロスの発生や、排気ガスの温度低下による排気ガス浄化用触媒の作動不良を抑制している。
【0050】
ところで、前述の如く、本実施形態のハイブリッド車両では、車両の走行負荷に応じてエンジン10が停止することがある。このような走行状態では、エンジン10自体の温度が低下してしまうことがある。そこで、エンジン制御装置50では、後述するように、エンジン冷却水の温度が所定値以下になったときに、走行状態とは無関係にエンジンを作動させる暖機制御を行っている。
【0051】
次に、本実施形態の車両用空調装置1の構成について説明する。この車両用空調装置1は、車室内を冷房する冷房モード、車室内を暖房する暖房モード、および、車室内を除湿して暖房する除湿暖房モードの冷媒回路を切替可能に構成された蒸気圧縮式の冷凍サイクル20を備えている。なお、図1の冷凍サイクル20における太線矢印は、冷房モードにおける冷媒の流れ方向を示している。
【0052】
冷凍サイクル20は、圧縮機21、冷媒と車室内へ送風される送風空気とを熱交換させる室内熱交換器としての室内凝縮器22および室内蒸発器23、冷媒を減圧膨張させる減圧手段としての電気式膨張弁24および固定絞り25、冷媒と室外空気(外気)とを熱交換させる室外熱交換器26、並びに、冷媒回路を切り替える冷媒回路切替手段としての複数(本実施形態では2つ)の電気式切替弁27、28等を備えている。
【0053】
また、この冷凍サイクル20では、冷媒として通常のフロン系冷媒を採用しており、高圧側冷媒圧力が冷媒の臨界圧力を超えない亜臨界冷凍サイクルを構成している。
【0054】
圧縮機21は、エンジンルーム内に配置され、冷凍サイクル20において冷媒を吸入し、圧縮して吐出するもので、吐出容量が固定された固定容量型圧縮機構21aを電動モータ21bにて駆動する電動圧縮機として構成されている。固定容量型圧縮機構21aとしては、具体的に、スクロール型圧縮機構、ベーン型圧縮機構等の各種圧縮機構を採用できる。
【0055】
電動モータ21bは、インバータ66から出力される交流電圧によって、その作動(回転数)が制御される交流モータである。また、インバータ66は、後述する空調制御装置60から出力される制御信号に応じた周波数の交流電圧を出力する。そして、この回転数制御によって、圧縮機21の冷媒吐出能力が変更される。従って、電動モータ21bは、圧縮機21の吐出能力変更手段を構成している。
【0056】
圧縮機21の吐出側には、室内凝縮器22の冷媒入口側が接続されている。室内凝縮器22は、室内空調ユニット30内に形成された送風空気の空気通路のうち、ヒータコア13の送風空気流れ下流側に配置されて、その内部を流通する冷媒と後述する室内蒸発器23通過後の送風空気とを熱交換させる。
【0057】
従って、室内凝縮器22は、冷媒を放熱させる放熱器として機能するとともに、送風空気を加熱する加熱用熱交換器として機能する。より詳細には、室内凝縮器22は、ヒータコア13の空気流れ下流側に配置されて、加熱手段であるヒータコア13にて加熱された送風空気をさらに加熱する補助加熱手段を構成している。
【0058】
ところで、室内凝縮器22へ流入する圧縮機21吐出冷媒の温度は、圧縮機21吐出冷媒の圧力上昇に伴って上昇する。このことは、室内凝縮器22の加熱能力が、圧縮機21の冷媒吐出能力の増加に伴って増加することを意味している。従って、圧縮機21の吐出能力変更手段を構成する電動モータ21bは、補助加熱手段の補助加熱能力変更手段としての機能を兼ね備えている。
【0059】
室内凝縮器22の冷媒出口側には、第1電気式切替弁27が接続されている。この第1電気式切替弁27は、空調制御装置60から出力される制御信号によって、その作動が制御される冷媒回路切替手段である。より具体的には、第1電気式切替弁27は、室内凝縮器22の出口側と室外熱交換器26の入口側とを接続する冷媒回路、および室内凝縮器22の出口側と固定絞り25の入口側とを接続する冷媒回路を切り替える。
【0060】
固定絞り25は、暖房モード時および除湿暖房モード時に、第1電気式切替弁27から流出した冷媒を減圧膨張させる暖房用の減圧手段である。この固定絞り25としては、キャピラリチューブ、オリフィス等を採用できる。固定絞り25の冷媒出口側には、室外熱交換器26の入口側が接続されている。
【0061】
室外熱交換器26は、エンジンルーム内に配置されて、内部を流通する冷媒と送風ファン26aから送風された車室外空気(外気)とを熱交換させるものである。送風ファン26aは、空調制御装置60から出力される制御電圧によって回転数(送風空気量)が制御される電動式送風機である。
【0062】
さらに、本実施形態の送風ファン26aは、室外熱交換器26のみならず、前述した冷却水回路11に配置されたラジエータ15にも室外空気を送風している。具体的には、送風ファン26aから送風された車室外空気は、室外熱交換器26→ラジエータ15の順に流れる。
【0063】
室外熱交換器26の冷媒出口側には、冷媒回路切替手段としての第2電気式切替弁28が接続されている。この第2電気式切替弁28の基本的構成は、第1電気式切替弁27と同様である。より具体的には、第2電気式切替弁28は、室外熱交換器26の出口側と電気式膨張弁24の入口側とを接続する冷媒回路、および室外熱交換器26の出口側とアキュムレータ29の入口側とを接続する冷媒回路を切り替える。
【0064】
電気式膨張弁24は、冷房モード時に、第2電気式切替弁28から流出した冷媒を減圧膨張させる減圧手段である。この電気式膨張弁24は、空調制御装置60から出力される制御信号によって絞り通路面積が調整される電気式の可変絞り機構である。さらに、本実施形態の電気式膨張弁24は、絞り通路面積を最大にすると冷媒を減圧膨張させる機能を殆ど発揮することなく、単なる冷媒通路として機能する。
【0065】
電気式膨張弁24の冷媒出口側には、室内蒸発器23の冷媒入口側が接続されている。室内蒸発器23は、室内空調ユニット30内に形成された送風空気の空気通路のうち、室内凝縮器22およびヒータコア13の送風空気流れ上流側に配置されている。そして、冷房モードおよび除湿暖房モード時に、その内部を流通する冷媒と送風空気とを熱交換させ、冷媒を蒸発させ吸熱作用を発揮させることによって、送風空気を冷却する冷却用熱交換器である。
【0066】
室内蒸発器23の冷媒出口側には、アキュムレータ29の冷媒入口側が接続されている。アキュムレータ29は、内部に流入した冷媒の気液を分離して、余剰冷媒を蓄える低圧側気液分離器である。さらに、アキュムレータ29の気相冷媒出口には、圧縮機21の冷媒吸入口が接続されている。
【0067】
次に、室内空調ユニット30について説明する。室内空調ユニット30は、車室内最前部の計器盤(インストルメントパネル)の内側に配置されて、その外殻を形成するケーシング31内に送風機32、冷凍サイクル20の室内凝縮器22および室内蒸発器23、冷却水回路11のヒータコア13等を収容したものである。
【0068】
ケーシング31は、内部に車室内に送風される送風空気の空気通路を形成しており、ある程度の弾性を有し、強度的にも優れた樹脂(例えば、ポリプロピレン)にて形成されている。このケーシング31内の送風空気流れ最上流側には、ケーシング31内へ内気(車室内空気)と外気(車室外空気)とを切替導入する図示しない内外気切替装置が配置されている。
【0069】
内外気切替装置は、ケーシング31内へ内気のみを導入する内気モード、ケーシング31内へ外気のみを導入する外気モード、およびケーシング31内へ内気と外気との導入比率を連続的に変化させながら内気と外気との双方を導入する内外気混入モードの3つの吸込口モードを切り替えるものである。また、内外気切替装置は、空調制御装置60から出力される制御信号によって、その作動が制御される。
【0070】
内外気切替装置の空気流れ下流側には、内外気切替装置を介して吸入した空気を車室内へ向けて送風する送風機32が配置されている。この送風機32は、遠心多翼ファン(シロッコファン)を電動モータにて駆動する電動送風機であって、空調制御装置60から出力される制御電圧によって回転数(送風量)が制御される。
【0071】
送風機32の空気流れ下流側には、前述の室内蒸発器23が配置されている。さらに、室内蒸発器23の空気流れ下流側には、室内蒸発器23通過後の送風空気を流す加熱用冷風通路33、冷風バイパス通路34といった空気通路、並びに、加熱用冷風通路33および冷風バイパス通路34から流出した空気を混合させる混合空間35が形成されている。
【0072】
加熱用冷風通路33には、ヒータコア13および室内凝縮器22が送風空気流れ方向に向かってこの順で配置されている。一方、冷風バイパス通路34は、室内蒸発器23通過後の冷風を、ヒータコア13および室内凝縮器22を通過させることなく、混合空間35に導くための空気通路である。
【0073】
従って、混合空間35にて混合された送風空気の温度は、加熱用冷風通路33を通過する空気および冷風バイパス通路34を通過する空気の風量割合によって変化する。そこで、本実施形態では、室内蒸発器23の空気流れ下流側であって、加熱用冷風通路33および冷風バイパス通路34の入口側に、加熱用冷風通路33および冷風バイパス通路34へ流入する送風空気の風量割合を連続的に変化させるエアミックスドア38を配置している。
【0074】
このエアミックスドア38は、混合空間35内の空気温度(車室内へ吹き出される送風空気の温度)を調整する温度調整手段としての機能を果たすものである。さらに、また、エアミックスドア38は、エアミックスドア用の電動アクチュエータによって駆動され、この電動アクチュエータは、空調制御装置60から出力される制御信号によって、その作動が制御される。
【0075】
ケーシング31の送風空気流れ最下流部には、混合空間35から冷却対象空間である車室内へ温度調整された送風空気を吹き出す吹出口(図示せず)が配置されている。この吹出口としては、具体的に、車室内の乗員の上半身に向けて空調風を吹き出すフェイス吹出口、乗員の足元に向けて空調風を吹き出すフット吹出口、および、車両前面窓ガラス内側面に向けて空調風を吹き出すデフロスタ吹出口が設けられている。
【0076】
さらに、フェイス吹出口、フット吹出口、およびデフロスタ吹出口の空気流れ上流側には、それぞれ、フェイス吹出口の開口面積を調整するフェイスドア、フット吹出口の開口面積を調整するフットドア、デフロスタ吹出口の開口面積を調整するデフロスタドア(いずれも図示せず)が配置されている。
【0077】
これらのフェイスドア、フットドア、デフロスタドアは、吹出口モードを切替える吹出口モード切替手段を構成するものであって、図示しないリンク機構を介して、吹出口モードドア駆動用の電動アクチュエータに連結されて連動して回転駆動される。なお、この電動アクチュエータも、空調制御装置60から出力される制御信号によって、その作動が制御される。
【0078】
また、吹出口モードとしては、フェイス吹出口を全開してフェイス吹出口から車室内乗員の上半身に向けて空気を吹き出すフェイスモード、フェイス吹出口とフット吹出口の両方を開口して車室内乗員の上半身と足元に向けて空気を吹き出すバイレベルモード、フット吹出口を全開するとともにデフロスタ吹出口を小開度だけ開口して、フット吹出口から主に空気を吹き出すフットモード、およびフット吹出口およびデフロスタ吹出口を同程度開口して、フット吹出口およびデフロスタ吹出口の双方から空気を吹き出すフットデフロスタモードがある。
【0079】
さらに、乗員が、後述する操作パネル70のスイッチをマニュアル操作することによって、デフロスタ吹出口を全開してデフロスタ吹出口から車両フロント窓ガラス内面に空気を吹き出すデフロスタモードとすることもできる。
【0080】
次に、図2により、本実施形態の電気制御部について説明する。エンジン制御装置50および空調制御装置60は、CPU、ROMおよびRAM等を含む周知のマイクロコンピュータとその周辺回路から構成される。そして、このROM内に記憶された制御プログラムに基づいて各種演算、処理を行って、出力側に接続された各種機器の作動を制御する。
【0081】
エンジン制御装置50の出力側には、上述した冷却水ポンプ12の他に、エンジン10を構成する各種エンジン構成機器等が接続されている。具体的には、エンジン10を始動させるスタータ、エンジン10に燃料を供給する燃料噴射弁(インジェクタ)の駆動回路等が接続されている。
【0082】
エンジン制御装置50の入力側には、エンジン10から流出した直後のエンジン冷却水の冷却水温度Twを検出する冷却水温度センサ51、図示しないバッテリの電圧VBを検出する電圧計52、アクセル開度Accを検出するアクセル開度センサ53、エンジン回転数Neを検出するエンジン回転数センサ54、車速Vvを検出する車速センサ55等のエンジン制御用センサ群が接続されている。
【0083】
なお、本実施形態の冷却水温度センサ51は、エンジン冷却水の冷却水温度Twを検出するものであるが、エンジン10から流出した直後のエンジン冷却水は、エンジン10自体の温度に相関を有する温度である。従って、本実施形態のエンジン制御装置50では、冷却水温度センサ51の検出値(冷却水温度Tw)をエンジン10自体の温度として、上述した冷却水ポンプ12等の制御に用いている。
【0084】
空調制御装置60の出力側には、流量調整弁14、圧縮機21の電動モータ21b用のインバータ66、電気式膨張弁24、送風ファン26a、第1、第2電気式切替弁27、28、送風機32、内外気切替装置、エアミックスドア駆動用および吹出口モードドア駆動用の電動アクチュエータ等の各種空調制御機器が接続されている。
【0085】
なお、空調制御装置60は、上述した各種空調制御機器を制御する制御手段が一体に構成されたものであるが、本実施形態では、特に、ヒータコア13の加熱能力変更手段である流量調整弁14の作動を制御する構成(ハードウェアおよびソフトウェア)を加熱能力制御手段60aとする。
【0086】
また、圧縮機21の吐出能力変更手段である電動モータ21bの作動(冷媒吐出能力)を制御する構成を吐出能力制御手段60bとする。なお、前述の如く、電動モータ21bは、補助加熱手段の補助加熱能力変更手段としての機能を兼ね備えているので、吐出能力制御手段60bについても、補助加熱能力制御手段としての機能を兼ね備える。
【0087】
もちろん、加熱能力制御手段60aおよび吐出能力制御手段(補助加熱能力制御手段)60bを空調制御装置60に対して別体で構成してもよい。
【0088】
空調制御装置60の入力側には、車室内温度Trを検出する内気センサ61、外気温Taを検出する外気温センサ62、車室内の日射量Tsを検出する日射センサ63、室内蒸発器23からの吹出空気温度(冷媒蒸発温度に対応)Teを検出する蒸発器温度センサ64(蒸発器温度検出手段)、車室内に吹き出される吹出空気温度Toutを検出する吹出空気温度センサ65等の空調制御用センサ群が接続されている。
【0089】
さらに、空調制御装置60の入力側には、車室内前部の計器盤付近に配置された操作パネル70が接続され、この操作パネル70に設けられた各種空調操作スイッチの操作信号が空調制御装置60へ入力される。各種空調操作スイッチとしては、具体的に、車両用空調装置1のオート運転スイッチ、車室内の設定温度Tsetを設定する温度設定スイッチ、運転モード切替スイッチ、吹出口モードの切替スイッチ、送風機32の風量設定スイッチ等が設けられている。
【0090】
なお、本実施形態のエンジン制御装置50および空調制御装置60は、互いに電気的に接続されて、通信可能に構成されている。これにより、一方の制御装置に入力された検出信号あるいは操作信号に基づいて、他方の制御装置が出力側に接続された各種機器の作動を制御することもできる。従って、エンジン制御装置50および空調制御装置60を1つの制御装置として一体的に構成してもよい。
【0091】
次に、上記構成における本実施形態の作動を説明する。まず、エンジン制御装置50の基本的作動を図3を用いて説明する。なお、図3は、エンジン10の作動状態とエンジン冷却水温度との関係を示す説明図である。
【0092】
車両スタートスイッチが投入されて車両が起動すると、エンジン制御装置50は、上述のエンジン制御用センサ群51〜55の検出信号に基づいて車両の走行負荷を検出し、走行負荷に応じてエンジン10を作動あるいは停止させる。この際、エンジン制御装置50は、エンジン10の作動に連動して冷却水ポンプ12を作動させる。
【0093】
これにより、エンジン10の作動時には、エンジン冷却水がエンジン10内を流通し、エンジン10の廃熱を吸熱してエンジン10を冷却するとともに、吸熱した廃熱をラジエータ15にて大気に放熱する。さらに、エンジン冷却水の温度が90℃以下になると、サーモスタット弁がエンジン冷却水をバイパス通路側に流すので、ラジエータ15における放熱は行われない
従って、エンジン10が作動している際のエンジン冷却水の冷却水温度Twは、図3(a)に示すように、所定の温度帯(本実施形態では、90℃〜100℃)に保たれる。その結果、エンジン10自体の温度も所定の温度帯に維持されて、エンジン10のオーバーヒートが防止される。
【0094】
一方、走行用の動力源を出力させるためにエンジン10を作動させる必要がなく、エンジン10が停止している際には、エンジン10自体からの放熱等により、エンジン冷却水の温度が低下してしまう。
【0095】
そこで、エンジン制御装置50は、冷却水温度センサ51によって検出された冷却水温度Twが予め定めた第1基準温度T1(本実施形態では、40℃)以下になると、エンジン制御装置50が、図4の制御特性図に示すように、冷却水温度Twが予め定めた第2基準温度T2(本実施形態では、50℃)となるまで、走行状態とは無関係にエンジン10を作動させる暖機制御を行う。
【0096】
これにより、図3(b)に示すように、冷却水温度Twが、第1基準温度T1以下に低下してしまうことが抑制される。その結果、エンジン10自体の温度が、前述のフリクションロスの発生や、排気ガス浄化用触媒の作動不良が抑制される。
【0097】
なお、第1基準温度T1と第2基準温度T2との温度差は、制御ハンチング防止のためのヒステリシス幅である。また、第1基準温度T1は、前述のフリクションロスの発生や、排気ガス浄化用触媒の作動不良を抑制して、エンジン10および排気ガス浄化用触媒の性能を適切に発揮するためにエンジン10に暖機が必要とされる温度と同等の値に設定されている。
【0098】
従って、本実施形態の暖機制御では、冷却水温度センサ51によって検出されるエンジン10から流出した直後のエンジン冷却水の冷却水温度Twを、エンジン10自体の温度として用い、エンジン10自体の温度が、第1基準温度T1以上となる予め定めた温度帯の範囲で、第1基準温度T1に近づくように、エンジン10の作動が制御されることになる。
【0099】
次に、図5により、車両用空調装置1の作動を説明する。図5は、空調制御装置60が実行する制御処理を示すフローチャートである。この制御処理は、車両スタートスイッチが投入された状態で、操作パネル70のオート運転スイッチが投入(ON)されると開始される。
【0100】
まず、ステップS1では、フラグ、タイマ、制御変数等のイニシャライズ(初期化)が行われる。そして、次のステップS2にて、空調制御用センサ群61〜65の検出信号、エンジン制御装置50からの制御信号、および操作パネル70の操作信号を読み込んで、ステップS3へ進む。
【0101】
ステップS3では、操作パネル70の運転モード切替スイッチの操作信号に基づいて運転モードの決定が行われる。さらに、ステップS3では、決定された運転モードに応じて、冷媒回路切替手段としての第1、第2電気式切替弁27、28、および電気式膨張弁24の制御状態を決定する。
【0102】
具体的には、冷房モードでは、第1電気式切替弁27を室内凝縮器22の出口側と室外熱交換器26の入口側とを接続する冷媒回路に切り替え、第2電気式切替弁28を室外熱交換器26の出口側と電気式膨張弁24の入口側とを接続する冷媒回路に切り替え、さらに、電気式膨張弁24を減圧作用を発揮する絞り状態とする。
【0103】
また、暖房モードでは、第1電気式切替弁27を室内凝縮器22の出口側と固定絞り25の入口側とを接続する冷媒回路に切り替え、第2電気式切替弁28を室外熱交換器26の出口側とアキュムレータ29の入口側とを接続する冷媒回路に切り替える。
【0104】
また、除湿暖房モードでは、第1電気式切替弁27を室内凝縮器22の出口側と固定絞り25の入口側とを接続する冷媒回路に切り替え、第2電気式切替弁28を室外熱交換器26の出口側と電気式膨張弁24の入口側とを接続する冷媒回路に切り替え、さらに、電気式膨張弁24を減圧作用を発揮しない全開状態とする。
【0105】
ステップS4では、車室内吹出空気の目標吹出温度TAOを算出する。目標吹出温度TAOは、下記数式F1により算出される。
TAO=Kset×Tset−Kr×Tr−Ka×Ta−Ks×Ts+C…(F1)
ここで、Tsetは温度設定スイッチによって設定された設定温度であり、Trは内気センサ61によって検出された車室内温度であり、Taは外気温センサ62によって検出された外気温であり、Tsは日射センサ63によって検出された日射量であり、Kset、Kr、Ka、Ksは制御ゲインであり、Cは補正用の定数である。
【0106】
次のステップS5では、ステップS3で決定された運転モードが冷房モードであるか否かを判定する。ステップS5にて運転モードが冷房モードであると判定された場合は、ステップS6へ進み、予め空調制御装置60に記憶された制御マップを参照して、送風機32の送風量Ga(具体的には、電動モータに印加するブロワモータ電圧)、および室内蒸発器23の目標冷媒蒸発温度TEO等を決定する。
【0107】
具体的には、本実施形態の制御マップでは、TAOの極低温域(最大冷房域)および極高温域(最大暖房域)でブロワモータ電圧を最大値にして、送風機32の送風量Gaを最大風量に制御する。さらに、TAOが極低温域あるいは極高温域から中間温度域に向かうに伴って、ブロワモータ電圧を減少させて送風量Gaを減少させる。また、目標冷媒蒸発温度TEOについては、TAOの上昇に伴ってTEOを上昇させるように決定する。
【0108】
次のステップS7では、吹出空気温度センサ65によって検出された吹出空気温度Toutが目標吹出温度TAOとなるように、フィードバック制御手法等を用いて、エアミックスドア38の開度を決定する。さらに、蒸発器温度センサ64によって検出された冷媒蒸発温度Teが目標冷媒蒸発温度TEOとなるように、フィードバック制御手法等を用いて、圧縮機21の電動モータ21bの回転数(具体的には、インバータ66が出力する交流電圧の周波数)を決定する。
【0109】
一方、ステップS5にて運転モードが冷房モードでないと判定された場合、すなわち運転モードが暖房モードあるいは除湿暖房モードであると判定された場合は、ステップS8へ進む。
【0110】
ステップS8では、ステップS6と同様に、送風機32の送風量Gaを決定するとともに、エアミックスドア38の開度を、加熱用冷風通路33を全開とし冷風バイパス通路34を全閉とする最大暖房位置に決定する。これにより、冷風バイパス通路34側に送風空気が流入することを防止して、加熱手段であるヒータコア13および補助加熱手段である室内凝縮器22の加熱能力を低減させている。
【0111】
次に、ステップS9では、エンジン制御装置50から取得した冷却水ポンプ12へ出力される制御信号(冷却水ポンプ12の吐出流量)、および流量調整弁14へ出力される制御信号(流量調整弁14の弁開度)に基づいて、ヒータコア13へ流入するエンジン冷却水の冷却水流量Gwを算出して、ステップS10へ進む。
【0112】
ここで、ヒータコア13はエンジン冷却水と送風空気とを熱交換させて、送風空気を加熱するものなので、ヒータコア13では、送風空気がエンジン冷却水の有する熱量を吸熱する。従って、ヒータコア13から流出したエンジン冷却水の温度は、ヒータコア13へ流入するエンジン冷却水の温度、すなわちエンジン10から流出した直後のエンジン冷却水の温度である冷却水温度Twよりも低下する。
【0113】
さらに、本実施形態では、前述の如くエンジン制御装置50が暖機制御を行っているので、ヒータコア13から流出したエンジン冷却水の温度が過度に低下すると、冷却水温度Twが第1基準温度T1以下になりやすく、暖機制御によるエンジン10の作動回数の増加や、エンジン10作動継続時間の長時間化による暖機遅延を招くことになる。
【0114】
つまり、ヒータコア13から流出したエンジン冷却水の温度が過度に低下してしまうと、エンジン制御装置50がヒータコア13にて送風空気の加熱用熱源を確保するために、エンジン10を作動させてしまうこととなり、燃費を悪化させてしまう。
【0115】
そこで、本実施形態のステップS10では、ヒータコア13から流出したエンジン冷却水が、ラジエータ15側からエンジン10へ戻るエンジン冷却水と合流して、エンジン10へ戻った際に、エンジン10自体の温度が、暖機制御と同様の第1基準温度T1以上となる予め定めた温度帯の範囲で、第1基準温度T1に近づくように、ヒータコア13におけるエンジン冷却水の許容加熱能力Qw_capを決定する。
【0116】
なお、許容加熱能力Qw_capは、エンジン冷却水がヒータコア13にて放熱して、その熱量を失ったとしても、ヒータコア13から流出したエンジン冷却水が、エンジン10へ戻った際に、エンジン10自体の温度を第1基準温度T1以上となる予め定めた温度帯の範囲で、第1基準温度T1に近づけることのできる許容放熱量と表現することもできる。
【0117】
具体的には、この許容加熱能力Qw_capは、冷却水温度Twに基づいて、予め空調制御装置60に記憶された制御マップを参照して決定する。より詳細には、図6の実線で示すように、冷却水温度Twが上昇過程にあるときは、予め定めた所定温度tk2となるまで、許容加熱能力Qw_capを最小値(min)とする。その後、冷却水温度Twの上昇に伴って、許容加熱能力Qw_capを増加させ、予め定めた所定温度tk4以上では、許容加熱能力Qw_capを最大値(max)とする。
【0118】
一方、冷却水温度Twが下降過程にあるときは、予め定めた所定温度tk3となるまで、許容加熱能力Qw_capを最大値とする。その後、冷却水温度Twの低下に伴って、許容加熱能力Qw_capを低下させ、予め定めた所定温度tk1以下では、許容加熱能力Qw_capを最小値とする。
【0119】
さらに、冷却水温度Twが所定温度tk1以下では、空調制御装置60がエンジン制御装置50に対して、暖機制御の実行を禁止する暖機禁止信号を出力する。なお、本実施形態では、上記の各所定温度は、第1基準温度T1<tk1<tk2<tk3<tk4の関係になっている。
【0120】
また、本実施形態の空調制御装置60では、許容加熱能力Qw_capを決定するための制御マップを、エンジン制御装置50から取得した車速センサ55によって検出された車速Vvに応じて変化させている。具体的には、車速Vvが予め定めた基準車速KVv以上となっている高車速時には、上述の制御マップを参照して許容加熱能力Qw_capを決定する。
【0121】
一方、車速Vvが予め定めた基準車速KVvより低くなっている低車速時には、図6の破線で示すように、tk1〜tk4を予め定めた付加温度βを加算した値に変化させた制御マップを参照して許容加熱能力Qw_capを決定する。これにより、低車速時には、高車速時よりも、許容加熱能力Qw_capを低下させて、ヒータコア13から流出したエンジン冷却水がエンジン10へ戻った際のエンジン10自体の温度を高温に維持することができる。
【0122】
さらに、ステップS10では、ヒータコア13の許容放熱量がQw_capとなったときのヒータコア13通過後の送風空気の温度Thcoを算出する。この温度Thcoは、エンジン冷却水の加熱能力と送風空気の吸熱能力のバランス点から算出することができる。バランス点では、エンジン冷却水が放熱した総熱量と送風空気が吸熱した総熱量が等しくなるからである。
【0123】
ここで、ヒータコア13にてエンジン冷却水が放熱した総熱量は、許容加熱能力Qw_capであり、ヒータコア13にて送風空気が吸熱した総熱量は、ヒータコア13から流出する送風空気の温度Thcoからヒータコア13へ流入する送風空気の温度(本実施形態では、冷媒蒸発温度Teが対応)を減算した値に対して、送風量Gaを積算することで求めることができる。
【0124】
次に、ステップS11では、ステップS10にて決定された許容加熱能力Qw_capに基づいて、予め空調制御装置60に記憶された制御マップを参照して、ヒータコア13の加熱能力が許容加熱能力Qw_capとなるように、冷却水流量Gwを変更する。
【0125】
具体的には、本実施形態のステップS11では、加熱能力変更手段の作動状態、すなわち流量調整弁14の弁開度を決定する。より詳細には、ヒータコア13にて前記送風空気を加熱する前のエンジン冷却水温度である冷却水温度Twの増加に伴って、ヒータコア13を流通するエンジン冷却水の流量を増加させるように、流量調整弁14の弁開度を決定する。
【0126】
例えば、ステップS10で決定された許容加熱能力Qw_capが最小値となっているときは、流量調整弁14を全閉として、許容加熱能力Qw_capが最大値となっているときは、流量調整弁14を全開としてもよい。
【0127】
なお、ステップS11で参照する制御マップは、図7に示す冷却水流量Gwおよび冷却水温度Twの増加に伴って許容加熱能力Qw_capが増加する関係に基づいて決定されている。さらに、本実施形態では、ヒータコア13の熱交換性能(加熱手段の性能特性)を考慮して、冷却水流量Gwが少ないときに対して、冷却水流量Gwが多いときの許容加熱能力Qw_capの増加度合を減少させている。
【0128】
次に、ステップS12にて、吹出空気温度センサ65によって検出された吹出空気温度Toutが目標吹出温度TAOとなるように、フィードバック制御手法等を用いて、室内凝縮器22の加熱能力、すなわち圧縮機21の電動モータ21bの回転数を決定して、ステップS13へ進む。
【0129】
この際、目標吹出温度TAOからステップS10で決定されたヒータコア13から流出する送風空気の温度Thcoを減算した温度差の増加に伴って、圧縮機21の電動モータ21bの回転数を増加させればよい。
【0130】
次に、ステップS13では、目標吹出温度TAOに基づいて、予め空調制御装置60に記憶された制御マップを参照して、内外気切替装置の作動状態および吹出口モードが決定される。具体的には、内外気切替装置の作動状態は、基本的に外気を導入する外気モードが優先されるが、TAOが極低温域となって高い冷房性能を得たい場合等に内気を導入する内気モードが選択される。
【0131】
また、吹出口モードについては、TAOが低温域から高温域へと上昇するにつれて吹出口モードをフットモード→バイレベルモード→フェイスモードへと順次切り替える。従って、夏季は主にフェイスモード、春秋季は主にバイレベルモード、そして冬季は主にフットモードが選択される。
【0132】
そして、次のステップS14にて、上述のステップS6〜S13で決定された制御状態が得られるように、空調制御装置60から各種空調制御機器に対して制御信号が出力される。例えば、圧縮機21の電動モータ21b用のインバータ66に対しては、圧縮機21の回転数がステップS7あるいはS12で決定された回転数となるように制御信号が出力される。
【0133】
次に、ステップS15では、制御周期τの間待機し、制御周期τの経過を判定するとステップS2に戻るようになっている。
【0134】
本実施形態の車両用空調装置1は、以上の如く制御されるので、制御ステップS3にて選択された運転モードに応じて以下のように作動する。
【0135】
(a)冷房モード
冷房モードでは、第1電気式切替弁27が室内凝縮器22の出口側と室外熱交換器26の入口側とを接続し、第2電気式切替弁28が室外熱交換器26の出口側と電気式膨張弁24の入口側とを接続し、さらに、電気式膨張弁24が絞り状態となる。
【0136】
これにより、圧縮機21→室内凝縮器22→第1電気式切替弁27→室外熱交換器26→第2電気式切替弁28→電気式膨張弁24→室内蒸発器23→アキュムレータ29→圧縮機21の順に冷媒が循環する蒸気圧縮式冷凍サイクルが構成される。すなわち、室内凝縮器22および室外熱交換器26を凝縮器(放熱器)として機能させ、室内蒸発器23を蒸発器として機能させる冷凍サイクルが構成される。
【0137】
従って、冷房モードでは、送風機32から送風された送風空気が、室内蒸発器23にて冷却される。そして室内蒸発器23にて冷却された冷風は、エアミックスドア38の開度に応じて、加熱用冷風通路33および冷風バイパス通路34へ流入する。
【0138】
加熱用冷風通路33へ流入した冷風は、ヒータコア13および室内凝縮器22を通過する際に加熱されて、混合空間35にて冷風バイパス通路34を通過した冷風と混合される。そして、混合空間35にて温度調整された冷風が、混合空間35から各吹出口を介して車室内に吹き出される。これにより、車室内の冷房がなされる。
【0139】
なお、冷房モードは、車室内へ主に冷風を吹き出す運転モードであるから、加熱用冷風通路33へ流入する冷風が、冷風バイパス通路34へ流入する冷風よりも少なくなるようにエアミックスドア38の開度が制御される。そのため、本実施形態の空調制御装置60は、冷房モードでは、流量調整弁14の開度制御を行っていない。もちろん冷房モードでは、流量調整弁14の開度を全開に維持してもよい。
【0140】
(b)暖房モードおよび除湿暖房モード
暖房モードでは、第1電気式切替弁27が室内凝縮器22の出口側と固定絞り25の入口側とを接続し、第2電気式切替弁28が室外熱交換器26の出口側とアキュムレータ29の入口側とを接続する。
【0141】
これにより、圧縮機21→室内凝縮器22→第1電気式切替弁27→固定絞り25→室外熱交換器26→第2電気式切替弁28→アキュムレータ29→圧縮機21の順に冷媒が循環する蒸気圧縮式冷凍サイクルが構成される。すなわち、室内凝縮器22を凝縮器(放熱器)として機能させ、室外熱交換器26を蒸発器として機能させる冷凍サイクルが構成される。
【0142】
従って、暖房モードでは、送風機32から送風された送風空気が、室内蒸発器23にて冷却されることなく加熱用冷風通路33へ流入する。そして、加熱用冷風通路33へ流入した送風空気は、ヒータコア13および室内凝縮器22の順に通過して目標吹出温度TAOとなるまで加熱されて温風となり、混合空間35から各吹出口を介して車室内に吹き出される。これにより、車室内の暖房がなされる。
【0143】
また、除湿暖房モードでは、第1電気式切替弁27が室内凝縮器22の出口側と固定絞り25の入口側とを接続し、第2電気式切替弁28が室外熱交換器26の出口側と電気式膨張弁24の入口側とを接続し、さらに、電気式膨張弁24を減圧作用を発揮しない全開状態とする。
【0144】
これにより、圧縮機21→室内凝縮器22→第1電気式切替弁27→固定絞り25→室外熱交換器26→第2電気式切替弁28(→電気式膨張弁24)→室内蒸発器23→アキュムレータ29→圧縮機21の順に冷媒が循環する蒸気圧縮式冷凍サイクルが構成される。すなわち、室内凝縮器22を凝縮器(放熱器)として機能させ、室外熱交換器26および室内蒸発器23を蒸発器として機能させる冷凍サイクルが構成される。
【0145】
従って、除湿暖房モードでは、送風機32から送風された送風空気が、室内蒸発器23にて冷却されて除湿され、加熱用冷風通路33へ流入する。そして、加熱用冷風通路33へ流入した冷風は、ヒータコア13および室内凝縮器22の順に通過して目標吹出温度TAOとなるまで加熱されて温風となり、混合空間35から各吹出口を介して車室内に吹き出される。これにより、車室内の除湿暖房がなされる。
【0146】
この際、本実施形態では、送風空気をヒータコア13→室内凝縮器22の順に通過させて、ヒータコア13にて加熱された送風空気を室内凝縮器22にて再加熱している。さらに、車室内に吹き出される送風空気の温度が目標吹出温度TAOとなるように室内凝縮器22の加熱能力を制御している。
【0147】
従って、エンジン冷却水を加熱するエンジン10の廃熱が車室内温度を所望の温度(目標吹出温度TAO)まで上昇させるために不十分であっても、補助加熱手段である室内凝縮器22の加熱能力によって車室内へ吹き出される送風空気の温度を十分に上昇させて、車室内の適切な暖房あるいは除湿暖房を実現することができる。
【0148】
さらに、本実施形態では、ヒータコア13にて送風空気を加熱した後の温度低下したエンジン冷却水がエンジン10に戻った際に、エンジン10自体の温度が、第1基準温度T1以上となる予め定めた温度帯の範囲で、第1基準温度T1に近づくように、ヒータコア13へ流入するエンジン冷却水の冷却水流量Gwが制御されている。従って、エンジン10自体の温度が第1基準温度T1より低くなってしまうことを抑制できる。
【0149】
しかも、暖房モードおよび除湿暖房モードでは、冷却水温度Twが所定温度tk1以下になると、空調制御装置60がエンジン制御装置50に対して暖機禁止信号を出力する。従って、車室内の暖房あるいは除湿暖房を行うためにエンジン10の廃熱を用い、この暖房あるいは除湿暖房によって冷却水温度Twが低下したとしても、これに起因してエンジン10を不必要に作動させて燃費を悪化させてしまうことを抑制できる。
【0150】
その結果、エンジン10の廃熱を有効に活用しながら、燃費の悪化を抑制しつつ、車室内の適切な暖房あるいは除湿暖房を実現することができる。このことを、図8、9を用いてより詳細に説明する。図8は、ヒータコア13と室内凝縮器22を通過する送風空気の温度変化を示す説明図であり、図9は、エンジン10の作動状態とエンジン冷却水温度との関係を示す説明図である。
【0151】
まず、図8の破線で示す温度変化は、ヒータコア13の加熱能力の制御を行っていない車両用空調装置において、エンジン冷却水がヒータコア13にて成り行き的に送風空気へ放熱したときの送風空気の温度変化である。
【0152】
この場合は、図9(a)に示すように、ヒータコア13における送風空気の吸熱によって、冷却水温度Twが第1基準温度T1以下になってしまうことがあり、暖機制御によるエンジン10の作動回数を増加させやすい。さらに、暖機制御時にエンジンを作動させている最中も、エンジン冷却水が送風空気へ放熱してしまうので、冷却水温度Twが第2基準温度以上となる迄の時間が長時間化してしまう暖機遅延を招きやすい。
【0153】
これに対して、本実施形態では、加熱能力制御手段60aが流量調整弁14の弁開度を低下させているので、図8の実線で示す温度変化のように、エンジン10の廃熱を送風空気の加熱に利用しつつ、ヒータコア13における加熱能力を低下させることができる。
【0154】
これにより、ヒータコア13から流出したエンジン冷却水が、エンジン10へ戻っても、冷却水温度Twを第1基準温度T1以上に維持しやすい。さらに、暖房モードおよび除湿暖房モードでは、冷却水温度Twが所定温度tk1以下になると、空調制御装置60がエンジン制御装置50に対して暖機禁止信号を出力するので、図9(b)に示すように、冷却水温度Twが第1基準温度T1以下となっても、エンジン10を作動させない。
【0155】
この際、エンジン10自体の温度が第1基準温度以上となるようにヒータコア13の加熱能力が許容加熱能力Qw_capに制御されているので、エンジン10自体の温度低下による不具合の発生も抑制できる。また、仮に、冷却水温度Twが第1基準温度T1以下となり、暖機制御が実行されたとしても、エンジン冷却水が送風空気へ放熱する放熱量が制限されているので、冷却水温度Twを速やかに上昇させて暖機遅延を抑制できる。
【0156】
従って、本実施形態によれば、エンジン10の廃熱を有効に活用しながらも、車両燃費の悪化を抑制しつつ、車室内の適切な暖房あるいは除湿暖房を実現することができる。
【0157】
さらに、本実施形態では、加熱手段として加熱用熱交換器であるヒータコア13を採用し、加熱能力変更手段としてヒータコア13を流通するエンジン冷却水の流量を変化させる流量調整弁14を採用しているので、簡素な構成で、容易に加熱能力変更手段を構成することができる。
【0158】
さらに、本実施形態では、車速に応じて許容加熱能力Qw_capを決定するための制御マップを変化させて、低車速時に高車速時よりもエンジン10自体の温度を高温に維持している。
【0159】
従って、低速走行時やアイドル時のようにエンジン10の廃熱が少なくなる場合に、ヒータコア13にて温度低下したエンジン冷却水をエンジン10へ戻して冷却水温度Twが急低下したとしても、エンジン10自体の温度が第1基準温度T1より低くなってしまうことを効果的に抑制できる。
【0160】
(第2実施形態)
第1実施形態では、加熱能力変更手段として流量調整弁14を採用した例を説明したが、本実施形態では、図10の全体構成図に示すように、流量調整弁14を廃止して、加熱能力変更手段を、エンジン冷却水がヒータコア13を迂回して流れるバイパス通路16、およびバイパス通路16の開度を調整することで、ヒータコア13を流通するエンジン冷却水の流量を変化させる開度調整弁17で構成した例を説明する。
【0161】
さらに、本実施形態では、図5に示すステップS11にて、第1実施形態と同様にヒータコア13の加熱能力が許容加熱能力Qw_capとなるように冷却水流量Gwを決定し、決定された冷却水流量Gwを実現するように開度調整弁17の弁開度を決定する。その他の構成および制御については、第1実施形態と同様である。
【0162】
従って、本実施形態の車両用空調装置1においても第1実施形態と全く同様に、エンジン10の廃熱を有効に活用しながら、燃費の悪化を抑制しつつ、車室内の適切な暖房あるいは除湿暖房を実現することができる。さらに、簡素な構成で、容易に加熱能力変更手段を構成することができる。
【0163】
(第3実施形態)
上述の実施形態では、加熱能力変更手段として、ヒータコア13を流通するエンジン冷却水の流量を変化させる手段を採用した例を説明したが、本実施形態では、図11の全体構成図に示すように、ヒータコア13を流通する送風空気の流量を変化させることによって、ヒータコア13の加熱能力を変化させる手段を採用した例を説明する。
【0164】
ここで、前述の如く、ヒータコア13における許容加熱能力Qw_capは、ヒータコア13の許容放熱量であるから、このヒータコア13の許容放熱量は、ヒータコア13における送風空気の最大吸熱量でもある。従って、この送風空気の最大吸熱量を変化させることで、ヒータコア13の放熱量、すなわちヒータコア13の加熱能力を変化させることができる。
【0165】
そこで、本実施形態では、加熱用冷風通路33内にヒータコア13を迂回させて室内蒸発器23から直接、室内凝縮器22へ送風空気を導くヒータコアバイパス通路36を設け、さらに、ヒータコア13の送風空気流れ上流側に、ヒータコア13を流通する送風空気の流量とヒータコアバイパス通路36を流通する送風空気の流量との流量割合を変化させるヒータコアバイパスドア37を配置している。
【0166】
さらに、本実施形態では、図5に示すステップS11にて、ヒータコア13の加熱能力が許容加熱能力Qw_capとなるヒータコア13を流通する送風空気の流量を決定し、決定された送風空気の流量を実現するようにヒータコアバイパスドア37の開度を決定する。その他の構成および制御については、第1実施形態と同様である。
【0167】
従って、本実施形態の車両用空調装置1においても第1実施形態と全く同様に、エンジン10の廃熱を有効に活用しながら、燃費の悪化を抑制しつつ、車室内の適切な暖房あるいは除湿暖房を実現することができる。さらに、ヒータコアバイパス通路36およびヒータコアバイパスドア37という簡素な構成で、容易に加熱能力変更手段を構成することができる。
【0168】
なお、本実施形態の加熱能力変更手段は、第1、第2実施形態の加熱能力変更手段と併用することもできる。
【0169】
(第4実施形態)
本実施形態では、第1実施形態に対して、図5に示す空調制御装置60の制御態様を変更したものである。具体的には、ステップS11にて、流量調整弁14の弁開度を決定した後、今回決定された流量調整弁14の弁開度が、前回の流量調整弁14の弁開度よりも低下しているか否かを判定する。つまり、今回決定された流量調整弁14の弁開度によって、ヒータコア13の加熱能力が低下するか否かを判定する。
【0170】
そして、今回決定された流量調整弁14の弁開度が、前回の流量調整弁14の弁開度よりも小さくなっている場合は、流量調整弁14の弁開度を前回の流量調整弁14の弁開度に維持した状態で、圧縮機21の冷媒吐出能力を予め定めた基準量だけ増加させる。さらに、圧縮機21の冷媒吐出能力を増加させた後、所定時間(本実施形態では、2秒〜3秒)経過後、流量調整弁14の弁開度を今回決定された弁開度に低下させる。
【0171】
その他の構成および制御は第1実施形態と同様である。従って、本実施形態によれば、加熱能力制御手段60aがヒータコア13の加熱能力を低下させる前に、吐出能力制御手段(補助加熱能力制御手段)60bが室内凝縮器22の加熱能力を増加させることができる。これにより、図12に示すように、ヒータコア13と室内凝縮器22の合計加熱能力が、車室内を暖房あるいは除湿暖房するために必要な加熱能力を下回ることがない。
【0172】
その結果、ヒータコア13の加熱能力の低下によって送風空気の温度が低下してしまう前に、室内凝縮器22によって送風空気を加熱でき、乗員の暖房感を損ねることがない。なお、図12は、本実施形態の制御態様によるヒータコア13と室内凝縮器22の合計加熱能力の変化を示す説明図である。また、本実施形態の制御態様は、第2、第3実施形態に対しても適用可能である。
【0173】
(第5実施形態)
本実施形態では、第1実施形態に対して、冷却水温度センサ51の配置を変更して、冷却水温度センサ51が検出する温度を変更した例を説明する。具体的には、本実施形態の冷却水温度センサ51は、図13の全体構成図に示すように、エンジン10へ流入する直前のエンジン冷却水の温度を検出するように配置されている。
【0174】
この冷却水温度センサ51の検出するエンジン冷却水の冷却水温度Twは、エンジン10自体の温度に相関を有する温度であるものの、ヒータコア13にて放熱した熱量分だけ実際のエンジン10自体の温度よりも低い値となる。そこで、本実施形態のエンジン制御装置50では、冷却水温度センサ51の検出したエンジン冷却水の冷却水温度Twをエンジン10自体の温度として用いるだけでなく、暖機制御の制御内容を変更している。
【0175】
具体的には、本実施形態の暖機制御では、エンジン制御装置50は、冷却水温度センサ51によって検出された冷却水温度Twが予め定めた第3基準温度T3(本実施形態では、40℃)以下になると、エンジン制御装置50が、図14の制御特性図に示すように、冷却水温度Twが予め定めた第1基準温度T1(本実施形態では、50℃)となるまで、走行状態とは無関係にエンジン10を作動させる暖機制御を行う。
【0176】
さらに、本実施形態では、冷却水温度Twとしてエンジン10へ流入する直前のエンジン冷却水の温度を採用しているので、第1基準温度T1は、第1実施形態よりも高い値に設定されている。換言すると、本実施形態の第1基準温度T1は、フリクションロスの発生や、排気ガス浄化用触媒の作動不良を抑制するために、エンジン10に暖機が必要とされる温度よりも高い値に設定されている。
【0177】
従って、本実施形態の暖機制御では、冷却水温度センサ51によって検出されるエンジン10へ流入する直前のエンジン冷却水の冷却水温度Twを、エンジン10自体の温度として用い、エンジン10自体の温度が、第1基準温度T1以下となる予め定めた温度帯の範囲で、第1基準温度T1に近づくように、エンジン10の作動が制御されることになる。
【0178】
また、本実施形態のステップS10では、ヒータコア13から流出したエンジン冷却水が、ラジエータ15側からエンジン10へ戻るエンジン冷却水と合流して、エンジン10へ戻った際に、エンジン10自体の温度が、暖機制御と同様の第1基準温度T1以下となる予め定めた温度帯の範囲で、第1基準温度T1に近づくように、ヒータコア13におけるエンジン冷却水の許容加熱能力Qw_capを決定する。
【0179】
その他の構成および制御は、第1実施形態と同様である。本実施形態の如く、冷却水温度センサ51によって検出される冷却水温度Twをエンジン10自体の温度とし、第1基準温度T1をエンジン10に暖機が必要とされる温度よりも高い値に設定しても、第1実施形態と同様に、車室内の適切な暖房あるいは除湿暖房を実現することができる。
【0180】
さらに、本実施形態では、ヒータコア13にて送風空気を加熱した後の温度低下したエンジン冷却水がエンジン10に戻った際に、エンジン10自体の温度が、第1基準温度T1以下となる予め定めた温度帯の範囲で、第1基準温度T1に近づくように、ヒータコア13へ流入するエンジン冷却水の冷却水流量Gwが制御されている。これにより、実際のエンジン10の温度が、暖機が必要となる温度よりも低くなってしまうことを抑制できる。
【0181】
従って、第1実施形態と同様に、エンジン10の廃熱を有効に活用しながらも、車両燃費の悪化を抑制しつつ、車室内の適切な暖房あるいは除湿暖房を実現することができる。なお、本実施形態の制御態様を、第1〜第4実施形態に対して適用してもよい。また、第2〜第4実施形態において、冷却水温度センサ51がエンジン10へ流入する直前のエンジン冷却水の温度を検出するように配置されていてもよい。
【0182】
(第6実施形態)
本実施形態では、第1実施形態に対して、図15の全体構成図に示すように、冷却水温度センサ51を廃止して、エンジン10の外表面温度を検出するエンジン温度センサ56を設けた例を説明する。さらに、本実施形態では、このエンジン温度センサ56の検出値を第1実施形態における冷却水の冷却水温度Twの代わりに用いて、第1実施形態と同様の制御を行っている。
【0183】
その他の構成および制御は、第1実施形態と同様である。本実施形態の如く、エンジン温度センサ56によって検出されるエンジン10の外表面温度をエンジン10自体の温度としても、第1実施形態と同様の効果を得ることができる。さらに、第2〜5実施形態において、本実施形態の如く、エンジン温度センサ56を採用してもよい。
【0184】
(他の実施形態)
本発明は上述の実施形態に限定されることなく、本発明の趣旨を逸脱しない範囲内で、以下のように種々変形可能である。
【0185】
(1)上述の実施形態では、本発明の車両用空調装置1をハイブリッド車両に適用して、車両の走行状態に応じて作動が制御される車載機器としてエンジン10を採用した例を説明したが、車載機器は、これに限定されない。例えば、車両用空調装置1を燃料電池車両に適用して、車載機器として車両走行用モータに電力を供給する燃料電池を採用し、この燃料電池を冷却するための電池冷却水を熱媒体としてヒータコア13に供給してもよい。
【0186】
燃料電池は、車両の走行負荷に応じて発電量が変化するものの、発電効率を向上させるために燃料電池自体の温度を一定に保っておく必要がある。そのため、燃料電池の廃熱によって加熱される電池冷却水の温度が適切な暖房を行うために不十分となっていることもある。さらに、ヒータコア13から流出した電池冷却水が燃料電池に戻った際に、燃料電池自体の温度を低下させてしまうと、発電効率が低下して燃費の悪化を招いてしまう。
【0187】
従って、車両用空調装置1を適用することによって、燃料電池の廃熱を有効に活用しながら、燃費の悪化を抑制しつつ、車室内の適切な暖房あるいは除湿暖房を実現できることは、極めて有効である。
【0188】
(2)上述の実施形態では、補助加熱手段として、冷凍サイクル20の室内凝縮器22を採用して、吐出能力制御手段(補助加熱能力制御手段)60bが圧縮機21の冷媒吐出能力を変化させることによって、室内凝縮器22の加熱能力を制御した例を説明したが、補助加熱手段はこれに限定されない。
【0189】
例えば、電力を供給することによって発熱する電気ヒータを採用することができる。この場合は、補助加熱能力制御手段から出力される電力によって電気ヒータの加熱能力を制御すればよい。さらに、補助加熱手段としては、加熱手段の熱源を供給する車載機器とは異なる車載機器から供給されるエネルギによって加熱能力を発揮する手段を採用することができる。
【0190】
(3)上述の実施形態では、冷却水温度Twに基づいて、予め空調制御装置60に記憶された制御マップを参照して許容加熱能力Qw_capを決定した例を説明したが、Qw_capの決定はこれに限定されない。例えば、冷却水温度Tw、燃料消費量Qfuelおよび廃熱効率Hehに基づいて、予め空調制御装置60に記憶された制御マップを参照して決定してもよい。
【0191】
また、Qw_capは、エンジンで燃料を燃焼させることによる熱量と、エンジン自体が有している熱量からエンジン表面からの放熱を差し引くことで定義ができる。そこで、冷却水温度Tw、冷却水回路を構成する機器の熱容量Kmass、車速Vv、エンジン10自体の放熱係数Krad、外気温Ta、第1基準温度T1、燃料消費量Qfuelおよび廃熱効率Hehに基づいて、下記数式F2を用いて決定してもよい。
Qw_cap=Qfuel×Heh+Q(Tw、T1、Kmass)−Q(Vv、Krad、Ta)…(F2)
ここで、Qfuelは、消費された燃料の有しているエネルギであり、消費された燃料によってエンジンが出力可能な仕事量とも表現できる。一般的に、1リットルのガソリンが有するエネルギは3MJ程度である。
【0192】
廃熱効率Hehは、消費された燃料によってエンジンが出力可能な仕事量に対する、エンジンが実際に出力した仕事量および排気熱以外の熱量(仕事量)の合算値の割合を示す値である。一般的に、消費された燃料によってエンジンが出力可能な仕事量に対するエンジンが実際に出力した仕事量は30%程度であり、排気熱の熱量は20%であり、排気熱以外の熱量は50%程度になる。
【0193】
また、式F2のQ(Tw、T1、Kmass)の項は、エンジン冷却系自体が有している熱量(熱マス分)を示す項であり、エンジン冷却系自体が有する温度が第1基準温度T1以上であれば送風空気を加熱するための熱量として利用できる。
【0194】
(4)上述の実施形態にて例示した加熱能力変更手段の他に、加熱能力変更手段として冷却水ポンプ12を採用することができる。そして、ヒータコア13の加熱能力を増加させる際には冷却水ポンプ12の流量を増加させるように冷却水ポンプ12の作動を制御すればよい。この場合は、空調制御装置60がエンジン制御装置50に対して、冷却水ポンプ12の回転数変更信号を出力すればよい。
【0195】
(5)上述の実施形態では、図5の制御ステップS3にて、操作パネル70の運転モード切替スイッチの操作信号に基づいて運転モードを決定した例を説明したが、運転モードの決定は、これに限定されない。
【0196】
例えば、内気センサ61によって検出された車室内温度Trに対して温度設定スイッチによって設定された設定温度Tsetが低い場合は冷房モードに決定し、車室内温度Trに対して設定温度Tsetが高い場合は暖房モードに決定し、さらに、車室内温度Trに対して設定温度Tsetが高くかつ外気温センサ62によって検出された外気温Taが所定温度以下の場合は除湿暖房モードに決定するようにしてもよい。
【0197】
(6)上述の実施形態では、図5の制御ステップS10にて、ヒータコア13へ流入する送風空気の温度として冷媒蒸発温度Teを用いてヒータコア13から流出する送風空気の温度Thcoを算出できる例を説明したが、暖房モードでは、室内蒸発器23にて冷媒が蒸発していないので、暖房モードについては、冷媒蒸発温度Teの代わりに外気温Taを用いてThcoを算出してもよい。
【0198】
(7)上述の実施形態では、本発明の車両用空調装置を、ハイブリッド車両のうちエンジンEGおよび走行用電動モータの双方から直接駆動力を得て走行可能な、いわゆるパラレル型のハイブリッド車両に適用した例を説明しているが、本発明の車両用空調装置の適用はこれに限定されない。
【0199】
例えば、エンジンEGを発電機の駆動源として用い、発電された電力をバッテリに蓄え、さらに、バッテリに蓄えられた電力を供給されることによって作動する走行用電動モータから駆動力を得て走行する、いわゆるシリアル型のハイブリッド車両に適用してもよい。
【0200】
(8)上述の第1〜第5実施形態では、車載機器であるエンジン10自体の温度として、熱媒体であるエンジン冷却水の冷却水温度Twを用いた例を説明し、第6実施形態では、エンジン10の外表面の温度を用いた例を説明したが、この他にも、エンジン10自体の温度としては、エンジン10自体の温度に相関を有する物理量を採用できる。
【0201】
なお、エンジン10自体の温度には温度分布が生じ易い。そのため、この温度分布のうち高温側の温度に相関を有する温度を採用する場合は、第1実施形態のように、第1基準温度T1以上となる予め定めた温度帯の範囲で、第1基準温度T1に近づける暖機制御を行うようにし、低温側の温度に相関を有する温度を採用する場合は、第5実施形態のように、第1基準温度T1以下となる予め定めた温度帯の範囲で、第1基準温度T1に近づける暖機制御を行うようにしてもよい。
【符号の説明】
【0202】
10 エンジン
11 冷却水回路
13 ヒータコア
14 流量調整弁
16 バイパス通路
17 開度調整弁
20 冷凍サイクル
21 圧縮機
22 室内凝縮器
37 ヒータコアバイパスドア
60a 加熱能力制御手段
60b 補助加熱能力制御手段(吐出能力制御手段)
【特許請求の範囲】
【請求項1】
車両の走行状態に応じて作動が制御される車載機器(10)の廃熱によって加熱される熱媒体を循環させる循環回路(11)に配置されて、前記熱媒体を熱源として車室内へ送風される送風空気を加熱する加熱手段(13)と、
前記加熱手段(13)にて加熱された前記送風空気をさらに加熱する補助加熱手段(22)と、
前記加熱手段(13)の加熱能力を制御する加熱能力制御手段(60a)と、
前記補助加熱手段(22)の加熱能力を制御する補助加熱能力制御手段(60b)とを備え、
さらに、前記車載機器(10)は、前記車載機器(10)自体の温度が予め定めた基準温度(T1)に近づくように、作動が制御されており、
前記加熱能力制御手段(60a)は、前記加熱手段(13)にて前記送風空気を加熱した後の熱媒体が前記車載機器(10)に戻った際に、前記車載機器(10)自体の温度が前記基準温度(T1)に近づくように、前記加熱手段(13)の加熱能力を制御し、
前記補助加熱能力制御手段(60b)は、前記送風空気が所望の温度となるように、前記補助加熱手段(22)の加熱能力を制御することを特徴とする車両用空調装置。
【請求項2】
車両の走行状態に応じて作動が制御される車載機器(10)の廃熱によって加熱される熱媒体を循環させる循環回路(11)に配置されて、前記熱媒体を熱源として車室内へ送風される送風空気を加熱する加熱手段(13)と、
前記加熱手段(13)にて加熱された前記送風空気をさらに加熱する補助加熱手段(22)と、
前記加熱手段(13)の加熱能力を制御する加熱能力制御手段(60a)と、
前記補助加熱手段(22)の加熱能力を制御する補助加熱能力制御手段(60b)とを備え、
さらに、前記車載機器(10)は、前記車載機器(10)自体の温度が予め定めた基準温度(T1)以上となるように、作動が制御されており、
前記加熱能力制御手段(60a)は、前記加熱手段(13)にて前記送風空気を加熱した後の熱媒体が前記車載機器(10)に戻った際に、前記車載機器(10)自体の温度が前記基準温度(T1)以上となるように、前記加熱手段(13)の加熱能力を制御し、
前記補助加熱能力制御手段(60b)は、前記送風空気が所望の温度となるように、前記補助加熱手段(22)の加熱能力を制御することを特徴とする車両用空調装置。
【請求項3】
前記車載機器(10)自体の温度として、前記熱媒体(T1)の温度が用いられていることを特徴とする請求項1または2に記載の車両用空調装置。
【請求項4】
さらに、前記加熱手段(13)の加熱能力を変化させる加熱能力変更手段(14、16、17、37)を備え、
前記加熱能力制御手段(60a)は、前記加熱能力変更手段(14、16、17、37)の作動を制御することによって、前記加熱手段(13)の加熱能力を制御することを特徴とする請求項1ないし3のいずれか1つに記載の車両用空調装置。
【請求項5】
前記加熱手段は、前記熱媒体と前記送風空気とを熱交換させる加熱用熱交換器(13)であり、
前記加熱能力変更手段(14、16、17)は、前記加熱用熱交換器(13)を流通する前記熱媒体の流量を変化させることによって、前記加熱手段(13)の加熱能力を変化させることを特徴とする請求項4に記載の車両用空調装置。
【請求項6】
前記加熱能力変更手段は、前記加熱用熱交換器(13)を流通する前記熱媒体の流量を調整する流量調整弁(14)であることを特徴とする請求項5に記載の車両用空調装置。
【請求項7】
前記加熱能力変更手段は、前記熱媒体が前記加熱用熱交換器(13)を迂回して流れるバイパス通路(16)および前記バイパス通路(16)の開度を調整する開度調整弁(17)で構成されていることを特徴とする請求項5に記載の車両用空調装置。
【請求項8】
前記加熱能力制御手段(60a)は、前記加熱用熱交換器(13)にて前記送風空気を加熱する前の前記熱媒体の温度の上昇に伴って、前記加熱用熱交換器(13)を流通する前記熱媒体の流量を増加させることを特徴とする請求項5ないし7のいずれか1つに記載の車両用空調装置。
【請求項9】
前記加熱手段は、前記熱媒体と前記送風空気とを熱交換させる加熱用熱交換器(13)であり、
前記加熱能力変更手段(37)は、前記加熱用熱交換器(13)を流通する前記送風空気の流量を変化させることによって、前記加熱手段(13)の加熱能力を変化させることを特徴とする請求項4に記載の車両用空調装置。
【請求項10】
前記加熱能力変更手段(37)は、前記加熱用熱交換器(13)を流通させる前記送風空気の流量と前記加熱用熱交換器(13)を迂回させる前記送風空気の流量との流量割合を変化させることによって、前記加熱用熱交換器(13)を流通する前記送風空気の流量を変化させることを特徴とする請求項9に記載の車両用空調装置。
【請求項11】
前記熱媒体は、前記車載機器(10)を冷却する冷却水であることを特徴とする請求項1ないし10のいずれか1つに記載の車両用空調装置。
【請求項12】
前記基準温度(T1)は、前記車載機器(10)に暖機が必要とされる温度以上の値に設定されていることを特徴とする請求項1ないし11のいずれか1つに記載の車両用空調装置。
【請求項13】
前記加熱能力制御手段(60a)は、前記車両の車速(Vv)が予め定めた基準車速(KVv)より低くなっている場合は、前記車速(Vv)が前記基準車速(KVv)以上となっている場合よりも、前記加熱手段(13)にて前記送風空気を加熱した後の熱媒体が前記車載機器(10)に戻った際の前記車載機器(10)自体の温度が増加するように、前記加熱手段(13)の加熱能力を制御することを特徴とする請求項1ないし12のいずれか1つに記載の車両用空調装置。
【請求項14】
前記補助加熱手段は、蒸気圧縮式の冷凍サイクル(20)において圧縮機(21)から吐出された冷媒を放熱させる放熱器(22)であり、
前記補助加熱能力制御手段(60b)は、前記圧縮機(21)の冷媒吐出能力を変化させることによって、前記放熱器(22)の加熱能力を制御することを特徴とする請求項1ないし13のいずれか1つに記載の車両用空調装置。
【請求項15】
前記圧縮機は、電力を供給されることによって作動する電動圧縮機(21)であることを特徴とする請求項14に記載の車両用空調装置。
【請求項16】
前記補助加熱能力制御手段(60b)は、前記加熱能力制御手段(60a)が前記加熱手段(13)の加熱能力を低下させる前に、前記補助加熱手段(22)の加熱能力を増加させることを特徴とする請求項1ないし15のいずれか1つに記載の車両用空調装置。
【請求項17】
前記車載機器は、前記車両の走行用駆動力を出力する内燃機関(10)であることを特徴とする請求項1ないし16のいずれか1つに記載の車両用空調装置。
【請求項18】
前記車載機器は、車両走行用モータに電力を出力する燃料電池であることを特徴とする請求項1ないし16のいずれか1つに記載の車両用空調装置。
【請求項1】
車両の走行状態に応じて作動が制御される車載機器(10)の廃熱によって加熱される熱媒体を循環させる循環回路(11)に配置されて、前記熱媒体を熱源として車室内へ送風される送風空気を加熱する加熱手段(13)と、
前記加熱手段(13)にて加熱された前記送風空気をさらに加熱する補助加熱手段(22)と、
前記加熱手段(13)の加熱能力を制御する加熱能力制御手段(60a)と、
前記補助加熱手段(22)の加熱能力を制御する補助加熱能力制御手段(60b)とを備え、
さらに、前記車載機器(10)は、前記車載機器(10)自体の温度が予め定めた基準温度(T1)に近づくように、作動が制御されており、
前記加熱能力制御手段(60a)は、前記加熱手段(13)にて前記送風空気を加熱した後の熱媒体が前記車載機器(10)に戻った際に、前記車載機器(10)自体の温度が前記基準温度(T1)に近づくように、前記加熱手段(13)の加熱能力を制御し、
前記補助加熱能力制御手段(60b)は、前記送風空気が所望の温度となるように、前記補助加熱手段(22)の加熱能力を制御することを特徴とする車両用空調装置。
【請求項2】
車両の走行状態に応じて作動が制御される車載機器(10)の廃熱によって加熱される熱媒体を循環させる循環回路(11)に配置されて、前記熱媒体を熱源として車室内へ送風される送風空気を加熱する加熱手段(13)と、
前記加熱手段(13)にて加熱された前記送風空気をさらに加熱する補助加熱手段(22)と、
前記加熱手段(13)の加熱能力を制御する加熱能力制御手段(60a)と、
前記補助加熱手段(22)の加熱能力を制御する補助加熱能力制御手段(60b)とを備え、
さらに、前記車載機器(10)は、前記車載機器(10)自体の温度が予め定めた基準温度(T1)以上となるように、作動が制御されており、
前記加熱能力制御手段(60a)は、前記加熱手段(13)にて前記送風空気を加熱した後の熱媒体が前記車載機器(10)に戻った際に、前記車載機器(10)自体の温度が前記基準温度(T1)以上となるように、前記加熱手段(13)の加熱能力を制御し、
前記補助加熱能力制御手段(60b)は、前記送風空気が所望の温度となるように、前記補助加熱手段(22)の加熱能力を制御することを特徴とする車両用空調装置。
【請求項3】
前記車載機器(10)自体の温度として、前記熱媒体(T1)の温度が用いられていることを特徴とする請求項1または2に記載の車両用空調装置。
【請求項4】
さらに、前記加熱手段(13)の加熱能力を変化させる加熱能力変更手段(14、16、17、37)を備え、
前記加熱能力制御手段(60a)は、前記加熱能力変更手段(14、16、17、37)の作動を制御することによって、前記加熱手段(13)の加熱能力を制御することを特徴とする請求項1ないし3のいずれか1つに記載の車両用空調装置。
【請求項5】
前記加熱手段は、前記熱媒体と前記送風空気とを熱交換させる加熱用熱交換器(13)であり、
前記加熱能力変更手段(14、16、17)は、前記加熱用熱交換器(13)を流通する前記熱媒体の流量を変化させることによって、前記加熱手段(13)の加熱能力を変化させることを特徴とする請求項4に記載の車両用空調装置。
【請求項6】
前記加熱能力変更手段は、前記加熱用熱交換器(13)を流通する前記熱媒体の流量を調整する流量調整弁(14)であることを特徴とする請求項5に記載の車両用空調装置。
【請求項7】
前記加熱能力変更手段は、前記熱媒体が前記加熱用熱交換器(13)を迂回して流れるバイパス通路(16)および前記バイパス通路(16)の開度を調整する開度調整弁(17)で構成されていることを特徴とする請求項5に記載の車両用空調装置。
【請求項8】
前記加熱能力制御手段(60a)は、前記加熱用熱交換器(13)にて前記送風空気を加熱する前の前記熱媒体の温度の上昇に伴って、前記加熱用熱交換器(13)を流通する前記熱媒体の流量を増加させることを特徴とする請求項5ないし7のいずれか1つに記載の車両用空調装置。
【請求項9】
前記加熱手段は、前記熱媒体と前記送風空気とを熱交換させる加熱用熱交換器(13)であり、
前記加熱能力変更手段(37)は、前記加熱用熱交換器(13)を流通する前記送風空気の流量を変化させることによって、前記加熱手段(13)の加熱能力を変化させることを特徴とする請求項4に記載の車両用空調装置。
【請求項10】
前記加熱能力変更手段(37)は、前記加熱用熱交換器(13)を流通させる前記送風空気の流量と前記加熱用熱交換器(13)を迂回させる前記送風空気の流量との流量割合を変化させることによって、前記加熱用熱交換器(13)を流通する前記送風空気の流量を変化させることを特徴とする請求項9に記載の車両用空調装置。
【請求項11】
前記熱媒体は、前記車載機器(10)を冷却する冷却水であることを特徴とする請求項1ないし10のいずれか1つに記載の車両用空調装置。
【請求項12】
前記基準温度(T1)は、前記車載機器(10)に暖機が必要とされる温度以上の値に設定されていることを特徴とする請求項1ないし11のいずれか1つに記載の車両用空調装置。
【請求項13】
前記加熱能力制御手段(60a)は、前記車両の車速(Vv)が予め定めた基準車速(KVv)より低くなっている場合は、前記車速(Vv)が前記基準車速(KVv)以上となっている場合よりも、前記加熱手段(13)にて前記送風空気を加熱した後の熱媒体が前記車載機器(10)に戻った際の前記車載機器(10)自体の温度が増加するように、前記加熱手段(13)の加熱能力を制御することを特徴とする請求項1ないし12のいずれか1つに記載の車両用空調装置。
【請求項14】
前記補助加熱手段は、蒸気圧縮式の冷凍サイクル(20)において圧縮機(21)から吐出された冷媒を放熱させる放熱器(22)であり、
前記補助加熱能力制御手段(60b)は、前記圧縮機(21)の冷媒吐出能力を変化させることによって、前記放熱器(22)の加熱能力を制御することを特徴とする請求項1ないし13のいずれか1つに記載の車両用空調装置。
【請求項15】
前記圧縮機は、電力を供給されることによって作動する電動圧縮機(21)であることを特徴とする請求項14に記載の車両用空調装置。
【請求項16】
前記補助加熱能力制御手段(60b)は、前記加熱能力制御手段(60a)が前記加熱手段(13)の加熱能力を低下させる前に、前記補助加熱手段(22)の加熱能力を増加させることを特徴とする請求項1ないし15のいずれか1つに記載の車両用空調装置。
【請求項17】
前記車載機器は、前記車両の走行用駆動力を出力する内燃機関(10)であることを特徴とする請求項1ないし16のいずれか1つに記載の車両用空調装置。
【請求項18】
前記車載機器は、車両走行用モータに電力を出力する燃料電池であることを特徴とする請求項1ないし16のいずれか1つに記載の車両用空調装置。
【図1】
【図2】
【図3】
【図4】
【図5】
【図6】
【図7】
【図8】
【図9】
【図10】
【図11】
【図12】
【図13】
【図14】
【図15】
【図2】
【図3】
【図4】
【図5】
【図6】
【図7】
【図8】
【図9】
【図10】
【図11】
【図12】
【図13】
【図14】
【図15】
【公開番号】特開2011−73668(P2011−73668A)
【公開日】平成23年4月14日(2011.4.14)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2010−161416(P2010−161416)
【出願日】平成22年7月16日(2010.7.16)
【出願人】(000004260)株式会社デンソー (27,639)
【Fターム(参考)】
【公開日】平成23年4月14日(2011.4.14)
【国際特許分類】
【出願日】平成22年7月16日(2010.7.16)
【出願人】(000004260)株式会社デンソー (27,639)
【Fターム(参考)】
[ Back to top ]