説明

車両用荷台支持構造及び装置

【課題】 簡単かつ安価な構成で、取り付けなども容易でありながら、荷台を車体等に振動等を抑制しつつ支持することができる車両用荷台支持構造を提供する。
【解決手段】 車体のフレーム1にマウンティング2が載置され、マウンティング2は、一対のラバー要素2A、2Aの下側と係合する下側プレート2Bを介して車体フレーム1に、固定用ボルト3、固定部材4、補強部材5等により取り付けられる。マウンティング2の構成要素である一対のラバー要素2A、2Aの上側と係合する上側プレート2Cには、木等からなる縦根太6がフレーム1に沿って載置され、固定部材6、固定用ボルト7等を介して、上側プレート2Cと縦根太6とが締結固定される。ラバー要素2A延いてはマウンティング2は、フレーム1側から荷台側への20Hzを含む10Hzから30Hzの領域の振動の伝達を抑制できるように調整されている。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、荷台等を車体等に振動等を抑制しつつ支持する車両用荷台支持構造及び装置に関する。
【背景技術】
【0002】
近年、精密機械などの振動に対してデリケートな物品の輸送に関し、その輸送品質の向上を図ることが望まれており、かかる観点から、車両のフレームと、荷台と、の間にスプリングやエアスプリングなどを介装したものが、特許文献1や特許文献2において提案されている。
【0003】
また、特許文献3には、車両のフレームと、荷台と、の間にエアスプリングを備え、積載荷重が変化しても支持高さを一定に維持でき、かつ、ばね定数を低く維持できると共に、水平方向における位置決めも行なえるようにした制振支持装置が提案されている。
【0004】
【特許文献1】特開2001−271873号公報
【特許文献2】実開昭57−154575号公報
【特許文献3】特開2006−105223号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
しかしながら、これら特許文献1〜3に記載のものは、荷台に積載される物品の輸送時における具体的な状態などが十分に考慮されておらず、輸送される物品によっては、振動の影響を受けて損傷等が生じ商品価値を低下させてしまうといったことが想定される。
また、特許文献1〜3に記載のものは、スプリング、ショックアブソーバー、ラテラルロッド、エアスプリング等の比較的複雑で高価な構成要素が必要であり、製品コストや取付工数の低減が難しく、また設置スペース等に多くの制限が課されるなどといった実情もある。
【0006】
本発明は、かかる実情に鑑みなされたもので、簡単かつ安価な構成で、取り付けなども容易でありながら、荷台等を車体等に振動等を抑制しつつ支持することができる車両用荷台支持構造及び装置を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0007】
このため、本発明に係る車両用荷台支持構造は、
車両のフレームに荷台を支持させるための車両用荷台支持構造であって、
車両のフレームと、荷台と、の間に、弾性要素が介装されると共に、
当該弾性要素により、少なくとも10Hzから30Hzの周波数領域の荷台の振動を、当該弾性要素を介装しない場合と比較して低減したことを特徴とする。
【0008】
また、本発明に係る車両用荷台支持構造は、
車両のフレームに荷台を支持させるための車両用荷台支持構造であって、
車両のフレームと、荷台と、の間に、弾性要素を含んで構成される支持装置を複数介装すると共に、
前記少なくとも1つの支持装置の弾性要素が、車両前後方向において複数に分割されていることを特徴とする。
【0009】
本発明は、前記支持装置の弾性要素により、少なくとも10Hzから30Hzの周波数領域の荷台の振動を、前記支持装置を介装しない場合と比較して低減したことを特徴とすることができる。
【0010】
また、本発明は、前記支持装置が締結手段を介して締結固定されることを特徴とすることができる。
【0011】
本発明に係る車両用荷台支持装置は、
車両のフレームに荷台を支持させるための車両用荷台支持装置であって、
車両のフレームに固定されるフレーム側部材と、荷台に固定される荷台側部材と、の間に弾性要素を介装すると共に、
当該弾性要素が、少なくとも10Hzから30Hzの周波数領域の荷台の振動を、当該弾性要素を介装しない場合と比較して低減するよう調整されていることを特徴とする。
【0012】
また、本発明に係る車両用荷台支持装置は、
車両のフレームに荷台を支持させるための車両用荷台支持装置であって、
車両のフレームに固定されるフレーム側部材と、荷台に固定される荷台側部材と、の間に弾性要素を介装すると共に、
前記弾性要素が、車両前後方向において複数に分割されていることを特徴とする。
【0013】
本発明は、前記弾性要素が、少なくとも10Hzから30Hzの周波数領域の荷台の振動を、当該弾性要素を介装しない場合と比較して低減するように調整されていることを特徴とすることができる。
【発明の効果】
【0014】
本発明によれば、簡単かつ安価な構成で、取り付けなども容易でありながら、荷台等を車体等に振動等を抑制しつつ支持することができる車両用荷台支持構造及び装置を提供することができる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0015】
以下、本発明に係る一実施の形態を、添付の図面を参照しつつ説明する。なお、以下で説明する実施の形態により、本発明が限定されるものではない。
【0016】
本発明の一実施の形態に係る車両用荷台支持構造及び装置は、図1に示すように、例えば輸送用車両の車体フレーム1にマウンティング2が載置され、このマウンティング2は、一対のラバー要素2A、2Aの図1中下側と係合する下側プレート2Bを介して車体フレーム1に、固定用ボルト3、固定部材4、補強部材5等により取り付けられている。なお、マウンティング2は、例えば、車両前後方向に延在される左右のそれぞれのフレーム1の車両前後方向において少なくとも2つ備えられることができる。
【0017】
前記マウンティング2の構成要素である一対のラバー要素2A、2Aの図1中上側と係合する上側プレート2Cには、木等からなる縦根太6が前記フレーム1に沿って載置され、固定部材7、固定用ボルト8等を介して、当該上側プレート2Cと前記縦根太6とが締結固定されている。
なお、前記縦根太6には、例えば、当該縦根太6と交差する方向に延在される金属製等の横根太9が載置され、この横根太9の上に荷台(図示せず)が載置されるようになっている。
【0018】
前記マウンティング2は、図2に示すように、例えば車両の前後方向に一対のラバー要素2A、2Aが並んで配設され、当該一対のラバー要素2A、2Aの下面には下側プレート2Bが接合され、当該一対のラバー要素2A、2Aの上面には上側プレート2Cが接合されている。
【0019】
下側プレート2Bの車両前後方向の両端部は図2中上向きに折曲され、当該下側プレート2Bの折曲部を上側プレート2Cの車両前後方向の両端部が覆うように、上側プレート2Cは図2中下向きに折曲されている。すなわち、車両前後方向から見たときに、下側プレート2Bの折曲部と、上側プレーと2Cの折曲部と、は所定に重畳するようになっている。
【0020】
そして、この重畳部分の例えば下側プレート2の折曲部側にラバー2Dが接合されており、例えば車両の制動時に上側プレート2C(荷台側)が下側プレート2B(フレーム1側)に対して比較的大きな減速加速度を受けて前方に相対変位するような場合に、上側プレート2Cの折曲部がラバー2D延いては下側プレート2の折曲部に当接することで、上側プレート2C(荷台側)が下側プレート2B(フレーム1側)に対して所定以上に相対変位するのを規制し、ラバー2Aが損傷等するような惧れを抑制するように構成されている。
【0021】
また、図3に示すように、マウンティング2の下側プレート2Bの車両左右方向の一端部は図3中上向きに折曲され、当該下側プレート2Bの折曲部を上側プレート2Cの前記一端部に対応する一端部が覆うように、上側プレート2Cは図2中下向きに折曲されている。すなわち、車両左右方向から見たときに、下側プレート2Bの折曲部と、上側プレート2Cの折曲部と、は所定に重畳するようになっている。
【0022】
そして、この重畳部分の例えば下側プレート2の折曲部側にラバー2Eが接合されており、例えば車両の旋回時に上側プレート2C(荷台側)が下側プレート2B(フレーム1側)に対して比較的大きな旋回加速度を受けて図2中左方に相対変位するような場合に、上側プレート2Cの折曲部がラバー2E延いては下側プレート2の折曲部に当接することで、上側プレート2C(荷台側)が下側プレート2B(フレーム1側)に対して所定以上に相対変位するのを規制し、ラバー2Aが損傷等するような惧れを抑制するように構成されている。
【0023】
ここで、ラバー要素2A、2Aを2分割しているのは、補強部材5を車両左右方向に貫通させることができ、かつ、既述したように上側プレート2C(荷台側)は下側プレート2B(フレーム1側)に対して図2中前後方向或いは図3中左右方向に相対変位するが、その相対変位方向に略直交するラバー要素表面の面積を2分割することで大きくすることができるため、ラバー要素に所望の弾性係数を持たせた場合においても、比較的大きな加速或いは減速Gが作用する方向におけるラバー要素の劣化等を効果的に抑制することができるからである。
【0024】
なお、本実施の形態のような構成とすれば、本実施の形態に係る車両用荷台支持装置をフレーム1に取り付けるためにフレーム1に対して特別な加工等が必要ないため、当該車両用荷台支持装置の要求されない車両と共通のフレーム1を用いることができ、以って製品コストの低減等を図ることができる。
【0025】
また、例えば車両の出荷後に荷台(所謂平ボディー、ウィングタイプ、アルミバン、保冷車等の荷台など)を要求に応じて取り付けたり変更することも容易であり、ユーザーフレンドリーな車両用荷台支持装置を提供することができるものである。
【0026】
ここにおいて、エアサス等を用いた車両においても、例えば、いちご等の振動にデリケートな物品を輸送する場合に振動により傷み等が生じる場合があり、本発明者等は、振動に対してデリケートな物品の輸送に関して種々の研究実験を行った結果、以下のような知見を得た。
【0027】
すなわち、市場において実際に輸送車両の走行状態を把握した結果、図6に示すように、荷傷みと振動(周波数)との関係を得ることができた。
【0028】
図6は、周波数毎の荷傷みの寄与密度を示しており、かかる図6から、輸送時の振動を周波数毎に見ると20Hz付近の振動が荷傷みに最も大きく寄与する周波数であることが判った。
【0029】
前記寄与密度は、以下のようにして求める。
(1)輸送車両の市場走行における荷台振動を実際に測定して、振動の頻度分布を求める。
(2)台上実験において、積荷の振動と、傷みと、の関係を把握し、図7に示すような線図を作成する。
(3)図7と、上記(1)で得た振動の頻度分布と、に基づいて、輸送車両の市場走行中における振動のどの周波数が、積荷の傷みの発生にどの程度寄与しているかを示す寄与密度が求められる。
【0030】
かかる周波数毎の荷傷みの寄与密度を示す図6から、周波数20Hzの振動は、傷みに対して約10%(寄与密度約0.1)程度寄与していることが判るが、10Hzから30Hzの振動を合わせると、傷みに対して約80%程度寄与しており、かかる10Hzから30Hzの領域の振動を抑制することで、効果的に傷みを抑制することができる。
【0031】
ところで、積載高さ位置における振動の伝達特性について調べた結果を、図8に示す。
荷台の床を基準として、三段のうちの一番下の下段に積まれた梱包(ダンボール箱)と、その上の中段に積まれた梱包と、最上の上段に積まれた梱包と、を荷台に積載した状態において、床面に水平方向の振動を与えた場合、図8に示されるように、20Hz付近に伝達のピークがあり、入力振動に対して当該20Hz付近の周波数の振動は増幅されることが判る。なお、積荷の積載高さ位置によってレベルは異なるものの、積荷の積載高さ位置が異なっても振動の伝達特性は同様の傾向を示すことが判る。
【0032】
かかる点からも、20Hzを含む10Hzから30Hzの領域の振動を抑制することで、効果的に傷みを抑制することができることが判る。なお、かかる知見は、いちごに限らず他の物品においても同様に適用可能であることが確認されている。
【0033】
従って、輸送用車両において、車体フレーム1と、荷台と、の間に介装されるマウンティング2のラバー要素2Aの弾性係数等の適宜の設定により、フレーム1側から荷台側への20Hzを含む10Hzから30Hzの領域の振動の伝達を抑制することで、いちごを含む、振動にデリケートな物品を輸送する場合に傷み等の損傷の発生を効果的に抑制することが可能となる。
【0034】
このため、本実施の形態に係るラバー要素2A延いてはマウンティング2は、フレーム1側から荷台側への20Hzを含む10Hzから30Hzの領域の振動の伝達を抑制できるように調整されている。
【0035】
ここで、本実施の形態に係るマウンティング2を採用した場合における荷台の振動の周波数と振動レベルとの関係の測定結果を、図9に示す。
かかる図9に示されるように、フレーム1側から荷台側への20Hzを含む10Hzから30Hzの領域の振動の伝達を抑制するようにラバー要素2Aの調整を行ったことで、この周波数帯域における振動レベルが低減され、これにより積荷の傷み等の損傷の発生を効果的に抑制することが可能となる。
【0036】
ところで、本実施の形態では、マウンティング2として一対のラバー要素2A、2Aを備えた一例について説明したが、フレーム1側から荷台側への20Hzを含む10Hzから30Hzの領域の振動の伝達を抑制するという作用効果については、かかる一例に限定されるものではなく、分割されない一体的なラバー要素であっても奏することができるものである。
以上で説明した一実施の形態は、本発明を説明するための例示に過ぎず、本発明の要旨を逸脱しない範囲内において、種々変更を加え得ることは可能である。
【図面の簡単な説明】
【0037】
【図1】本発明の一実施の形態に係る車両用荷台支持構造及び装置の全体的な構成を示す斜視図である。
【図2】図1の車両用荷台支持構造及び装置を車両前後方向で切断した断面図である。
【図3】図1の車両用荷台支持構造及び装置を車両前後方向から見た側面図である。
【図4】図1の車両用荷台支持構造及び装置を荷台方向から見た上面図である。
【図5】車両用荷台支持装置を抜き出して示す斜視図である。
【図6】荷傷みの寄与密度を周波数毎に示した図である。
【図7】荷傷みが発生するまでの加振回数と加速度との関係を周波数毎に示した図(SN線図)である。
【図8】積載高さと振動伝達特性との関係(測定結果)を示した図である。
【図9】本発明に係る車両用荷台支持装置を採用した場合における荷台の振動の周波数と振動レベルとの関係(測定結果)を示した図である。
【符号の説明】
【0038】
1 フレーム
2 マウンティング(本発明に係る支持装置)
2A ラバー要素(本発明に係る弾性要素)
2B 下側プレート(本発明に係るフレーム側部材)
2C 上側プレート(本発明に係る荷台側部材)

【特許請求の範囲】
【請求項1】
車両のフレームに荷台を支持させるための車両用荷台支持構造であって、
車両のフレームと、荷台と、の間に、弾性要素が介装されると共に、
当該弾性要素により、少なくとも10Hzから30Hzの周波数領域の荷台の振動を、当該弾性要素を介装しない場合と比較して低減したことを特徴とする車両用荷台支持構造。
【請求項2】
車両のフレームに荷台を支持させるための車両用荷台支持構造であって、
車両のフレームと、荷台と、の間に、弾性要素を含んで構成される支持装置を複数介装すると共に、
前記少なくとも1つの支持装置の弾性要素が、車両前後方向において複数に分割されていることを特徴とする車両用荷台支持構造。
【請求項3】
前記支持装置の弾性要素により、少なくとも10Hzから30Hzの周波数領域の荷台の振動を、前記支持装置を介装しない場合と比較して低減したことを特徴とする請求項2に記載の車両用荷台支持構造。
【請求項4】
前記支持装置が締結手段を介して締結固定されることを特徴とする請求項2又は請求項3に記載の車両用荷台支持構造。
【請求項5】
車両のフレームに荷台を支持させるための車両用荷台支持装置であって、
車両のフレームに固定されるフレーム側部材と、荷台に固定される荷台側部材と、の間に弾性要素を介装すると共に、
当該弾性要素が、少なくとも10Hzから30Hzの周波数領域の荷台の振動を、当該弾性要素を介装しない場合と比較して低減するよう調整されていることを特徴とする車両用荷台支持装置。
【請求項6】
車両のフレームに荷台を支持させるための車両用荷台支持装置であって、
車両のフレームに固定されるフレーム側部材と、荷台に固定される荷台側部材と、の間に弾性要素を介装すると共に、
前記弾性要素が、車両前後方向において複数に分割されていることを特徴とする車両用荷台支持装置。
【請求項7】
前記弾性要素が、少なくとも10Hzから30Hzの周波数領域の荷台の振動を、当該弾性要素を介装しない場合と比較して低減するように調整されていることを特徴とする請求項6に記載の車両用荷台支持装置。


【図1】
image rotate

【図2】
image rotate

【図3】
image rotate

【図4】
image rotate

【図5】
image rotate

【図6】
image rotate

【図7】
image rotate

【図8】
image rotate

【図9】
image rotate


【公開番号】特開2009−210035(P2009−210035A)
【公開日】平成21年9月17日(2009.9.17)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2008−54304(P2008−54304)
【出願日】平成20年3月5日(2008.3.5)
【出願人】(000005463)日野自動車株式会社 (1,484)
【Fターム(参考)】