説明

車両用表示装置

【課題】異常が発生した場合に表示の明るさにより運転者を幻惑させることなく効果的に運転者に警告を伝達すると共に、複数の異常が発生している場合には重要度の高い警告と重要度の低い警告との判別を容易にする。
【解決手段】複数の警告表示意匠の少なくとも1つを照明している場合にさらに別の警告表示意匠の少なくとも一つを照明するための警告表示指令を入力したとき、既に照明している第1の警告表示意匠に割り当てられた表示優先度と、警告表示指令によって照明することが指示されている第2の警告表示意匠に割り当てられた表示優先度と、の高低を判別し(S18)、第1の警告表示意匠及び第2の警告表示意匠のうち表示優先度が低い警告表示意匠の照明輝度を、表示優先度が高い警告表示意匠の照明輝度に対して下げる(S19)。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、自動車用メータとして利用可能な車両用表示装置に関し、特にメータに形成された計器や警告表示意匠を照明するための照明部を備えた車両用表示装置に関する。
【背景技術】
【0002】
自動車の運転席前方に配置される自動車用メータには、一般的に車速を表示するための速度計、エンジン回転数を表示するための回転計などの計器や、様々な警告表示意匠を必要に応じて(異常の発生時に)表示するための警告表示部が設けられている。警告表示意匠の代表例としては、エンジン油圧異常、冷却水残量異常、ブレーキ異常、排気温度異常などがある。
【0003】
自動車が暗い場所を通過する場合や夜間であっても運転者が表示内容を容易に認識できるように、一般的に自動車用メータには計器を照明するための照明装置が搭載されている。すなわち、暗い時には照明装置の光源を点灯して計器を照明する。また、いわゆるブラックフェイスメータと呼ばれる自動車用メータの場合には、照明を常時点灯する。
【0004】
ブラックフェイスメータは、計器の文字板上の目盛りなどの箇所が光透過性の材料で形成されており、文字板をその裏側から照明することにより運転者側から見える目盛り等の意匠とその周囲とのコントラストを上げる。照明を行わない状態では目盛り等の表示が見えにくいので、ブラックフェイスメータの場合は昼夜を問わず常時照明を点灯しておく必要がある。
【0005】
自動車用メータの警告表示部については、各警告表示意匠を表す図形やマークあるいは文字列などの意匠と各々の警告表示衣装の表示/非表示を区別するための照明とが設けられている。すなわち、何らかの異常の発生を検出すると、それを運転者に警告するために該当する照明を点灯し、特定の警告表示意匠を非表示から表示状態に切り替える。
【0006】
本発明と関連のある従来技術としては、例えば特許文献1〜特許文献4に開示された技術が知られている。
特許文献1においては、複数の異常が発生した場合に、各異常項目の表示に関する優先順位を識別し、優先順位に応じた位置に並ぶように各異常項目の警告表示(ワーニングシンボル)の表示位置を制御している。
【0007】
特許文献2においては、緊急性や重要性の高い表示をユーザが容易に認識できるように、複数の表示部をそれぞれ異なる表示形態で表示することを提案している。また、表示形態の具体例として、表示のネガ/ポジ反転を行うことや、表示色を変えることを開示している。
【0008】
特許文献3においては、警告が必要な表示項目が複数存在する場合でも警告の全容と個別の表示項目の詳細とをユーザに分かりやすく知らせるための技術を提案している。具体的には、警告が必要な全ての表示項目の警告灯を点灯すると共に、各表示項目の詳細を優先度順に従って順次に表示している。更に、詳細を表示中の表示項目を区別可能にするために、該当する警告灯を点滅表示したりその輝度を変えることを開示している。
【0009】
特許文献4においては、液晶表示パネルを用いて、速度計などの計器と警告表示とをそれぞれパネル内の画像として表示する場合に、見やすさを優先した画像と表示目的の達成を優先した画像とを適切に表示するための技術を提案している。すなわち、夜間や暗所通過時に液晶表示が運転者の目にまぶしく映らないように、液晶表示パネルの表示画像の全体について階調や照明の輝度を下げると、警告表示の画像も暗く見えにくくなり、異常の発生を知らせる警告が運転者に伝わりにくくなる。そこで、特許文献4では第二モードにおいてメータ表示画像と、警告表示画像とを独立に階調比率制御し、メータ表示画像の階調比率や明るさは可変にして夜間などに階調や明るさを低下させ、警告表示画像については階調や明るさを維持するように制御することを提案している。従って、夜間になると速度計等の表示画像は昼間よりも暗く表示されるため運転者にとって見やすくなる。また、何らかの異常が発生した場合に表示される警告表示画像については夜間であっても比較的高い階調比率や明るさで表示されるので、運転者は警告表示画像により異常の発生を容易に認識できる。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0010】
【特許文献1】特開昭62−58111号公報
【特許文献2】特開2003−191772号公報
【特許文献3】特開2006−214757号公報
【特許文献4】特開2008−158497号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0011】
ところで、自動車用メータにおいては、車両の主要な動作、すなわち走る、曲がる、止まるという動作に関連する異常が発生した場合には、高い優先度でその異常を運転者に知らせる必要がある。しかし、自動車用メータ上には多数の警告表示意匠が存在しているので、異常が発生した場合に運転者が警告表示の内容から発生した異常が重大な異常かどうかを直ちに区別することはできないのが実情である。特に、複数の異常が検出されている時には、該当する複数の警告表示意匠が同時に表示状態(点灯状態)になるので、重要度の高い警告と重要度の低い警告との区別がつきにくいという問題がある。
【0012】
例えば、特許文献1に開示されている技術を採用すれば、検出された複数の異常の中で重要度の高い警告表示が特定の位置に表示されるように表示位置を制御することができる。しかし、重要度の高い警告表示が現れる位置を運転者が把握しているとは限らないし、運転者が姿勢や位置を変更すれば、運転者と警告表示との相対的な位置関係が変わってしまうので、位置の違いだけで重要度の大小を区別するのは困難である。
【0013】
また、特許文献2のように、複数の表示形態を実現するために表示のネガ/ポジ反転を行ったり表示色を変えるためには、高価な表示器を採用する必要があり、表示制御も複雑になってしまうので装置コストの上昇は避けられない。
【0014】
また、特許文献4に開示されている技術を採用すれば、夜間のように周囲が暗い時にメータ表示画像の明るさだけが低下するため、メータ表示画像の表示内容が見やすくなる。しかし、警告表示画像の明るさは変化しないので、夜間は警告表示が眩しすぎる状態になる可能性がある。特に、複数の警告表示事項が同時に点灯状態になった場合には、明るすぎる警告表示によって運転者の視覚が幻惑され運転に支障を来す可能性も考えられる。
【0015】
本発明は、上述した事情に鑑みてなされたものであり、その目的は、異常が発生した場合に表示の明るさにより運転者を幻惑させることなく効果的に運転者に警告を伝達すると共に、複数の異常が発生している場合には重要度の高い警告と重要度の低い警告との判別が容易な車両用表示装置を提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0016】
前述した目的を達成するために、本発明に係る車両用表示装置は、下記(1)〜(3)を特徴としている。
(1) 警告すべき事項を知らせるための警告表示意匠が複数形成された文字板と、
それぞれの前記警告表示意匠を照明するための複数の光源を有する第1の照明部と、
前記警告表示意匠の少なくとも一つを照明するための警告表示指令を入力した場合に、前記第1の照明部の光源の照明輝度を制御して該警告表示意匠を照明する照明輝度制御手段と、
を備え、
複数の前記警告表示意匠の少なくとも1つを照明している場合にさらに別の前記警告表示意匠の少なくとも一つを照明するための警告表示指令を入力したとき、既に照明している第1の警告表示意匠に割り当てられた表示優先度と、前記警告表示指令によって照明することが指示されている第2の警告表示意匠に割り当てられた表示優先度と、の高低を判別する表示優先度判別手段をさらに備え、
前記照明輝度制御手段は、前記第1の警告表示意匠及び第2の警告表示意匠のうち表示優先度が低い警告表示意匠の照明輝度を、表示優先度が高い警告表示意匠の照明輝度に対して下げる、
こと。
(2) 上記(1)に記載の車両用表示装置において、
前記文字板には、計測値に応じて駆動される少なくとも1つの指針と、前記指針によって指示される少なくとも目盛りが形成され、
前記指針または前記目盛りを照明するための少なくとも1つの光源を有する第2の照明部をさらに備え、
前記照明輝度制御手段は、表示優先度が所定以上の警告表示意匠を照明するための警告表示指令を入力した場合、前記第2の照明部の光源の照明輝度を制御して、該照明輝度を定常状態に比べて下げる、
こと。
(3) 上記(2)に記載の車両用表示装置において、
前記第2の照明部は、前記目盛りを照明するための第1の光源と、前記指針を照明するための第2の光源とを備え、
前記照明輝度制御手段は、表示優先度が所定以上の警告表示意匠を照明するための警告表示指令を入力した場合、前記第1の光源の照明輝度を下げ、前記第2の光源の照明輝度は定常状態に維持する、
こと。
【0017】
上記(1)の構成の車両用表示装置によれば、表示の明るさによって運転者の視覚を幻惑することなく、表示優先度が高い警告表示事項の警告を効果的に運転者に伝えることができる。すなわち、複数の異常が発生し、複数の警告表示事項を同時に表示(点灯)状態にする場合であっても、表示優先度が低い警告表示事項の照明輝度を、表示優先度が高い警告表示事項の照明輝度に対して下げるので、全体の輝度を上げることなく重要度の高い警告を運転者に確実に伝えることができる。しかも、照明輝度の違いにより、運転者は重要度の高い警告と重要度の低い警告とを容易に判別できる。
【0018】
上記(2)の構成の車両用表示装置によれば、異常が発生して警告表示を点灯する場合に、計器を照明するための照明の照度を自動的に定常状態よりも下げるので、警告表示の輝度を上げなくても相対的に警告表示が目立つことになり、異常の発生を運転者に効果的に伝えることができる。
【0019】
上記(3)の構成の車両用表示装置によれば、警告表示を点灯する時には、計器の目盛りの照明輝度が定常状態よりも低下するが、計器の指針の照明輝度は目盛りの照明輝度よりも高い状態に維持される。従って、警告表示を点灯する時には計器の目盛りが多少読み取りにくくなるが、指針の位置は明確に表示されるので、運転者は指針の位置から計器の指針が示すおおよその数値を把握できる。
【発明の効果】
【0020】
本発明の車両用表示装置によれば、異常が発生した場合に表示の明るさにより運転者を幻惑させることなく効果的に運転者に警告を伝達することができる。しかも、複数の異常が発生している場合には、照明輝度の違いにより重要度の高い警告と重要度の低い警告との判別が容易である。
【0021】
以上、本発明について簡潔に説明した。更に、以下に説明される発明を実施するための形態を添付の図面を参照して通読することにより、本発明の詳細は更に明確化されるであろう。
【図面の簡単な説明】
【0022】
【図1】実施の形態の車両用表示装置の一部分の外観を示す正面図である。
【図2】図1に示す車両用表示装置の電気回路の構成を示すブロック図である。
【図3】図2に示す車両用表示装置の主要な制御動作を示すフローチャートである。
【発明を実施するための形態】
【0023】
本発明の車両用表示装置に関する実施の形態について、図1〜図3を参照しながら以下に説明する。本実施の形態の車両用表示装置の一部分の外観が図1に示されている。図1に示した構成要素は、自動車用メータに含まれるエンジン回転計10の近傍を表している。実際の自動車に搭載される自動車用メータにおいては、エンジン回転計10の他に車速を表示する計器や、冷却水の温度を表示する温度計や、燃料の残量を表示する燃料計などが含まれている場合が多い。
【0024】
図1に示すエンジン回転計10を含む車両用表示装置の構成要素は、自動車の運転席の前方に、表示内容が運転者から良く見えるように設置される。このエンジン回転計10には、ほぼ円形状に形成された文字板11が備わっている。文字板11の手前側(運転者に近い側)には、透明もしくは半透明の樹脂あるいはガラスで構成される見返し12が設けてある。この見返し12は、直射日光等の外来光が運転者側に反射して表示が見えにくくなるのを防止するために設けてある。
【0025】
図1に示すように、文字板11上には、指針部13と、目盛り部14と、警告表示部15が設けてある。指針部13は、文字板11のほぼ中央部に配置された回転軸を中心として回動する指針を有しており、この指針の向きによって計測値すなわちエンジン回転数を指示する。
【0026】
目盛り部14は、文字板11の外周に沿って円弧状にほぼ等間隔で形成された目盛りと、各目盛りが表す数値と、「×1000r/min」の表示内容を含む意匠を有している。これらの意匠は、それぞれ目盛りの位置や数値などを読み取れるような形状に形成され、透明もしくは半透明の材料で構成されている。
【0027】
警告表示部15は、6種類の警告すべき事項(以下、警告表示事項と称することがある。)の表示を可能にするために、6個の警告表示意匠15a〜15fを有している。警告表示意匠15a〜15fのそれぞれは、割り当てられた警告表示事項と関連するシンボルマークの形状を有しており、透明もしくは半透明の材料で構成されている。
【0028】
文字板11上の指針部13の指針や、目盛り部14及び警告表示部15の意匠は、目立たないように形成してあるので、そのままの状態では昼間のように周囲が明るい状況であっても表示内容は見えにくくなっている。従って、運転者から見えるように各意匠の要素を明確に表示するためには、常時照明を行う必要がある。
【0029】
指針部13、目盛り部14、警告表示部15の各意匠の要素を照明するために多数の照明用の光源が文字板11の裏側に設けてある。各光源を点灯すると、その照明光が対向する意匠の要素を透過し、表示内容として運転者の目に映る。
【0030】
6個の警告表示意匠15a〜15fのそれぞれについては、該当する異常が発生している時に照明の点灯によって点灯状態になり、異常がない時には照明は消灯される。複数の異常が発生すると複数の警告表示意匠15a〜15fが同時に照明により点灯し、複数の警告表示が表示状態になる。
【0031】
警告表示意匠15a〜15fに対応する警告表示事項の具体例としては、冷却水残量低下、エンジンオイル残量低下、ヘッドライトハイビーム点灯中、ブレーキ異常、排気温度異常、バッテリー電圧異常などがある。
【0032】
なお、文字板11自体も半透明の材料で構成されており、指針部13、目盛り部14、警告表示部15以外の背景の領域についても、裏側からの照明光によって全体が薄暗く浮き上がるように表示される。
【0033】
次に、電気回路の構成について説明する。図1に示したエンジン回転計10を含む車両用表示装置の電気回路の構成が図2に示されている。図2に示すように、この車両用表示装置の電気回路には、マイクロコンピュータ(CPU)110、電源回路120、インタフェース130、140、操作スイッチ150、モータドライバ160、液晶表示器(LCD)170、液晶ドライバ180、不揮発性メモリ(EEPROM)190、計器照明部210、警告表示照明部220、電気モータM1及びM2が備わっている。
【0034】
マイクロコンピュータ110は、この車両用表示装置に関する各種制御を行うための制御部であり、マイクロプロセッサ、所定のプログラムやデータを保持する読み出し専用メモリ(ROM)、読み書き可能なメモリ(RAM)、通信機能(CAN:Controller Area Network)などを内蔵している。
【0035】
電源回路120は、自動車のバッテリーの電圧(+B)から安定化した直流電圧(VCC、VH)やリセット信号を生成する。マイクロコンピュータ110の入力には電源回路120の出力から直流電圧(VCC)及びリセット信号(RESE)が供給される。
【0036】
インタフェース130、140は、信号の変換やノイズの除去などに利用される。エンジンキーの操作に連動して発生するイグニッション信号IGNは、インタフェース130を経由してマイクロコンピュータ110に入力される。CANの通信経路に現れる信号(CA)、例えば車両用表示装置の表示に利用されるエンジン回転数、車速などの情報や、様々な異常の発生や状態を表す情報は、インタフェース140を経由してマイクロコンピュータ110に入力される。
【0037】
マイクロコンピュータ110の入力ポートに接続されている操作スイッチ150は、運転者が操作可能なスイッチであり、距離計(オドメータ/トリップメータ)のリセット操作や、警告表示のリセット操作のために利用される。
【0038】
図3に示す電気モータM1は、駆動軸がエンジン回転計10の指針部13を駆動する駆動機構(図示せず)と連結されており、指針の向きを変えてエンジン回転数を指示するために利用される。電気モータM2は、駆動軸が図示しない車速計の指針を駆動する駆動機構(図示せず)に連結されており、指針の向きを変えて車速を指示するために利用される。
【0039】
2つの電気モータM1、M2は、モータドライバ160を介してマイクロコンピュータ110と接続されている。また、各電気モータM1、M2の近傍には駆動される各指針の位置を検出するセンサが設けてあり、センサが出力する信号によりマイクロコンピュータ110は各指針の位置(向き)を把握できる。マイクロコンピュータ110は、エンジン回転数及び車速の計測値と、それを指示する指針の向きと目盛りとの対応関係が整合するように、各電気モータM1、M2を駆動する。
【0040】
液晶表示器170は、文字列などの様々な情報を表示する機能を搭載している。液晶表示器170は、液晶ドライバ180を経由してマイクロコンピュータ110と接続されている。マイクロコンピュータ110は、CANの通信経路を経由して入力される様々な情報、例えば走行距離、時刻などを必要に応じて液晶表示器170に表示する。
【0041】
不揮発性メモリ190は、マイクロコンピュータ110が制御に利用する様々な情報を予め保持している。例えば、複数の警告表示事項のそれぞれの優先度を保持する優先度テーブルも不揮発性メモリ190上に存在している。
【0042】
計器照明部210は、計器の各部を照明するための多数の発光ダイオード(LED)を備えている。例えば、図1に示すエンジン回転計10の指針部13の指針を照明する発光ダイオードと、目盛り部14の各目盛りと、目盛りの数値を表す数字と、「×1000r/min」の意匠をそれぞれ照明する発光ダイオードとが計器照明部210に含まれている。
【0043】
計器照明部210の各発光ダイオードのうち、指針を照明する発光ダイオードとそれ以外の箇所を照明する発光ダイオードは、発光輝度すなわち照明輝度を独立して制御するためにマイクロコンピュータ110の互いに異なる出力ポートに接続されている。各発光ダイオードの点灯状態における発光輝度は、マイクロコンピュータ110から出力されるパルス状の制御信号により通電のオンオフを交互に周期的に繰り返すと共に、オンの時間とオフの時間との比率(デューティ)を変更することにより制御できる。
【0044】
警告表示照明部220は、警告表示部15の警告表示意匠15a〜15fをそれぞれ独立して照明(表示)するために6個の発光ダイオード(LED)を備えている。これらの発光ダイオードは、発光輝度すなわち照明輝度を独立して制御するためにマイクロコンピュータ110の互いに異なる出力ポートに接続されている。
【0045】
図2に示した車両用表示装置の照明に関する制御の内容が図3に示されている。図3に示す制御は、マイクロコンピュータ110の処理によって実現される。実際には、図3に示す制御の他に、通信のための制御や、各計器の指針を動かすために電気モータM1、M2を駆動する制御や、液晶表示器170の表示内容を制御するための処理がマイクロコンピュータ110によって実行される。
【0046】
図3に示す制御の内容について以下に説明する。
ステップS11では、この車両用表示装置の動作をリセットするために、マイクロコンピュータ110は記憶内容や制御状態の初期化を行う。例えば、警告表示に関する照明を行う警告表示照明部220を全て消灯して警告表示を非表示状態にすると共に、それらの各々が非表示状態であることを記憶する。各計器の照明については、昼夜を問わず照明しないと計器が運転者から見えないので計器照明部210の各発光ダイオードは常時点灯する。
【0047】
ステップS12では、マイクロコンピュータ110は警告表示指令が入力されたかどうかを識別する。自動車を管理している電子制御装置(ECU:図示せず)は、自動車上で何らかの異常の発生を検知すると、それを警告するための警告表示指令をインタフェース140を経由してマイクロコンピュータ110に入力する。この警告表示指令には、表示すべき警告表示事項の情報が含まれている。この警告表示指令が入力されたかどうかをマイクロコンピュータ110はステップS12で識別する。
【0048】
ステップS13では、マイクロコンピュータ110は入力された警告表示指令の内容を調べて警告表示事項を識別する。すなわち、冷却水残量低下、エンジンオイル残量低下、ヘッドライトハイビーム点灯中、ブレーキ異常、排気温度異常、バッテリー電圧異常などのうち、いずれの警告をすべきかを識別する。
【0049】
ステップS14では、マイクロコンピュータ110はステップS13で識別した警告表示事項に対応する警告表示意匠15a〜15fを照明する発光ダイオード(警告表示照明部220内の特定の発光ダイオード)を点灯状態に切り替える。
【0050】
ステップS15では、マイクロコンピュータ110はステップS14で照明を点灯状態に切り替えた(警告を表示した)警告表示事項について、その制御状態を表示状態として内部メモリ上の所定の領域に記憶する。
【0051】
ステップS16では、マイクロコンピュータ110は、今回入力された警告表示指令に該当する警告表示事項以外の他の警告表示事項の照明が既に点灯中か否かを識別する。各警告表示事項の照明が点灯中か否かを表す制御状態の情報は内部メモリに記憶されているので、この情報を参照することにより識別する。他の警告表示事項の照明が既に点灯中であればステップS17に進み、そうでなければステップS19に進む。
【0052】
ステップS17では、マイクロコンピュータ110は優先度テーブル50の内容を参照し、照明が点灯中のそれぞれの警告表示事項について優先度の情報を取得する。優先度テーブル50は不揮発性メモリ190上に設けてあり、警告表示事項毎にその表示に関する優先度の情報を保持している。
【0053】
すなわち、車両の主要な動作である走る、曲がる、止まるという動作に関連する異常が発生した場合には、高い優先度でその異常を運転者に知らせる必要がある。従って、例えば「ブレーキ異常」の警告表示事項の優先度は、「ヘッドライトハイビーム点灯中」の警告表示事項の優先度よりも高くなるように決定され、このような優先度の情報が定数として予め優先度テーブル50に登録される。
【0054】
ステップS18では、マイクロコンピュータ110は照明を点灯中のそれぞれの警告表示事項についてステップS17で取得した優先度を比較し、相対的に優先度が高い警告表示事項の照明と、優先度が低い警告表示事項の照明とを独立に制御する。そして、優先度が低い警告表示事項に対応する警告表示意匠15a〜15fの照明については、通電オンオフのデューティを制御して定常状態よりも照明輝度を下げる。優先度が高い警告表示事項に対応する警告表示意匠15a〜15fの照明については、定常状態の照明輝度に維持する。つまり、相対的に優先度が低い警告表示事項に対応する警告表示意匠15a〜15fの照明輝度を、優先度が高い警告表示事項に対応する警告表示意匠15a〜15fの照明輝度よりも低下させる。
【0055】
これにより、優先度が高い警告表示事項は優先度が低い警告表示事項と比べ相対的に高い照明輝度で表示されることになり、複数の警告表示事項を同時に点灯する場合には、優先度が高い警告表示事項が目立つように表示される。つまり、運転者は複数の表示の中で重要度の高い警告表示を直ちに認識することが可能になる。しかも、優先度が高い警告表示事項の照明輝度は定常状態に維持され、表示全体の輝度が上がるわけではないので、この制御によって運転者の視覚が幻惑されるような事態は生じない。
【0056】
例えば、「ヘッドライトハイビーム点灯中」の警告表示事項に対応する警告表示意匠15a〜15fの照明を点灯中に、「ブレーキ異常」の異常が発生すると、前者の優先度は後者の優先度よりも低いので、前者の照明輝度が定常状態よりも低下し、後者の照明輝度が定常状態に維持されるようにマイクロコンピュータ110によって制御される。
【0057】
ステップS19では、マイクロコンピュータ110は各計器を照明する計器照明部210の輝度を制御する。具体的には、比較的重要度の低い計器の照明、つまり、各目盛りと、目盛りの数値を表す各数字と、「×1000r/min」を照明する発光ダイオードについては、通電オンオフのデューティを制御して定常状態よりも照明輝度を下げる。また、指針部13の指針の表示については比較的重要度が高いので、これを照明する発光ダイオードについては、定常状態の照明輝度に維持する。
【0058】
なお、複数の計器を搭載した車両用表示装置の場合には、比較的重要度の高い計器である速度計や燃料計の指針の照明輝度は定常状態に維持し、比較的重要度の低い計器であるエンジン回転計の指針については、目盛り等と同様に照明輝度を下げるようにステップS19で処理しても良い。
【0059】
ステップS20では、マイクロコンピュータ110は所定の警告解除指令が入力されたか否かを識別する。本実施の形態においては、操作スイッチ150が2回連続的に押下されたことをマイクロコンピュータ110が検知した場合に、警告解除指令が入力されたものとみなすように制御している。警告解除指令が入力されるとステップS21に進み、入力されてなければステップS12に戻る。
【0060】
ステップS21では、マイクロコンピュータ110は全ての警告表示事項に対応する警告表示意匠15a〜15fの照明を消灯し、警告表示事項に関する表示状態の記憶をクリアすると共に、計器類の照明輝度を定常状態に戻す。
【0061】
以上説明したように、図3に示す制御を実施することにより、複数の警告表示事項の照明を同時に点灯状態にして表示する場合には、優先度の低い警告表示事項の照明輝度が自動的に低下するので、運転者は優先度の高い警告が発生した場合に、照明によって幻惑されることなく、優先度の高い警告表示事項の表示を直ちに認識できるようになる。また、警告を表示する場合には警告表示以外の計器の照明輝度も下げるので、優先度の高い警告表示事項の表示がより目立つようになる。照明輝度の制御については、発光ダイオード等の光源を制御するデューティの調整により簡単に変更できるので、特別な構成要素を追加する必要がなく、装置のコスト上昇を抑制できる。
【0062】
なお、上記の実施の形態においては、計器類を常時照明するブラックフェイスメータの場合を想定しているが、計器類の照明については、夜間や暗い場所を通過する時のように周囲が暗い時だけ点灯するように制御しても良い。
【符号の説明】
【0063】
10 エンジン回転計
11 文字板
12 見返し
13 指針部
14 目盛り部
15 警告表示部
15a〜15f 警告表示意匠
50 優先度テーブル
110 マイクロコンピュータ
120 電源回路
130,140 インタフェース
150 操作スイッチ
160 モータドライバ
170 液晶表示器
180 液晶ドライバ
190 不揮発性メモリ
210 計器照明部
220 警告表示照明部
M1,M2 電気モータ

【特許請求の範囲】
【請求項1】
警告すべき事項を知らせるための警告表示意匠が複数形成された文字板と、
それぞれの前記警告表示意匠を照明するための複数の光源を有する第1の照明部と、
前記警告表示意匠の少なくとも一つを照明するための警告表示指令を入力した場合に、前記第1の照明部の光源の照明輝度を制御して該警告表示意匠を照明する照明輝度制御手段と、
を備え、
複数の前記警告表示意匠の少なくとも1つを照明している場合にさらに別の前記警告表示意匠の少なくとも一つを照明するための警告表示指令を入力したとき、既に照明している第1の警告表示意匠に割り当てられた表示優先度と、前記警告表示指令によって照明することが指示されている第2の警告表示意匠に割り当てられた表示優先度と、の高低を判別する表示優先度判別手段をさらに備え、
前記照明輝度制御手段は、前記第1の警告表示意匠及び第2の警告表示意匠のうち表示優先度が低い警告表示意匠の照明輝度を、表示優先度が高い警告表示意匠の照明輝度に対して下げる、
ことを特徴とする車両用表示装置。
【請求項2】
前記文字板には、計測値に応じて駆動される少なくとも1つの指針と、前記指針によって指示される少なくとも目盛りが形成され、
前記指針または前記目盛りを照明するための少なくとも1つの光源を有する第2の照明部をさらに備え、
前記照明輝度制御手段は、表示優先度が所定以上の警告表示意匠を照明するための警告表示指令を入力した場合、前記第2の照明部の光源の照明輝度を制御して、該照明輝度を定常状態に比べて下げる、
ことを特徴とする請求項1に記載の車両用表示装置。
【請求項3】
前記第2の照明部は、前記目盛りを照明するための第1の光源と、前記指針を照明するための第2の光源とを備え、
前記照明輝度制御手段は、表示優先度が所定以上の警告表示意匠を照明するための警告表示指令を入力した場合、前記第1の光源の照明輝度を下げ、前記第2の光源の照明輝度は定常状態に維持する、
ことを特徴とする請求項2に記載の車両用表示装置。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【公開番号】特開2010−195138(P2010−195138A)
【公開日】平成22年9月9日(2010.9.9)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2009−40751(P2009−40751)
【出願日】平成21年2月24日(2009.2.24)
【出願人】(000006895)矢崎総業株式会社 (7,019)
【Fターム(参考)】