説明

車両用表示装置

【課題】電源ノイズを抑制しつつ、省スペースで車室内の複数個所に画像を表示することができる車両用表示装置を提供すること。
【解決手段】車室内に設けられ光を投射することによって画像を表示するものであって、半導体基板に形成されたミラー部13とミラー部13を駆動する第1の圧電振動板15a,15bなどを含む2次元スキャナ10と、ミラー部13に対して光を照射する半導体レーザ21〜23とを含むプロジェクター40を備え、運転者の視線方向に応じて画像を表示する領域を変更するようにプロジェクターを動作させるものであり、ステアリングホイールの回転角度が90°を超えた場合は、助手席側のドア又は助手席側のサイドガラスに設けられたスクリーン53、もしくは、ステアリングホイールの回転方向側のピラーに設けられたスクリーン51にプロジェクター40による画像を表示する。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、車両用表示装置に関するものである。
【背景技術】
【0002】
従来、車室内で使用される車両用表示装置の一例として特許文献1に示されるプロジェクター装置がある。
【0003】
特許文献1に示されるプロジェクター装置は、天井側に取り付けられたレール部材と、このレール部材に沿って前後方向に移動自在に設けられた投射型の液晶プロジェクターと、この液晶プロジェクターの移動量と同期して液晶プロジェクターのレンズを前後動させるレンズ駆動機構と、液晶プロジェクターの停止状態においてレンズのみを前後動させるレンズ調整機構と、液晶プロジェクターの前方に配置されたスクリーンとで構成される。これにより、スクリーンの画面サイズを自由に可変することができると同時に自動的に画面のピントを合わせることができる。従って、スクリーンに映し出される画面の大きさを見易い大きさに自由に調節することがでる。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【特許文献1】特開平7−154723号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
ところで、車両は、運転者の他に助手席や後部座席にも乗員がいる場合がある。また、車両を運転しているときの運転者は、常に直進方向を見ているわけではなく、車両を右左折などさせる場合には車両の右側もしくは左側を見たり、車両を後進などさせる場合には車両の後方を見たりするものである。したがって、車両用表示装置は、車室内の一箇所のみではなく、複数個所に画像を表示させると好ましい。
【0006】
これに対して、特許文献1に示されるプロジェクター装置は、液晶プロジェクターをレール部材に沿って前後方向に移動させることによって、スクリーンに映し出される画像のサイズを自由にかえることはできるものの、一台の液晶プロジェクターで車室内の複数個所に画像を表示させることはできなかった。
【0007】
また、車室内の複数個所にディスプレイを設置することも考えられる。ところが、車室内の複数個所にディスプレイを設置すると、設置スペースが増えるだけでなく、電磁ノイズの源になったり、配線が増え車両重量が増したりするなどの課題がある。
【0008】
本発明は、上記問題点に鑑みなされたものであり、電源ノイズを抑制しつつ、省スペースで車室内の複数個所に画像を表示することができる車両用表示装置を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0009】
上記目的を達成するために請求項1に記載の車両用表示装置は、車室内に設けられ光を投射することによって画像を表示するものであって、半導体基板に形成されたミラー部とミラー部を駆動するアクチュエーター部とを含む走査部と、ミラー部に対して光を照射する光源部とを含むプロジェクターと、一つのプロジェクターによる画像を車室内の複数の領域におけるいずれかの領域に表示させるようにプロジェクターを動作させる表示駆動手段と、ステアリングホイールの回転角度を検出する回転角センサと、を備え、表示駆動手段は、運転者の視線方向に応じて画像を表示する領域を変更するようにプロジェクターを動作させるものであり、運転者の視線方向として回転角センサの検出結果に応じて画像を表示する領域を変更し、ステアリングホイールの回転角度が90°を超えた場合は、助手席側のドア又は助手席側のサイドガラス、もしくは、ステアリングホイールの回転方向側のピラーにプロジェクターによる画像を表示することを特徴とするものである。
【0010】
このように、半導体基板に形成されたミラー部とミラー部を駆動するアクチュエーター部とを含む走査部と、ミラー部に対して光を照射する光源部とを含むプロジェクターを設け、一つのこのプロジェクターを用いて、車室内の複数の領域に画像を表示することによって省スペース化することができる。また、プロジェクターを一つしか用いないため配線を減らすことができ、電源ノイズを抑制することもできる。さらに、上述のようなプロジェクターは、液晶ディスプレイなどに比べて表示する単位面積あたりの重量も軽いので、車両用表示装置による車両重量の増加も抑制することができる。
【0011】
また、一つのプロジェクターによる画像を車室内の複数の領域におけるいずれかの領域に表示させる際には、請求項1に示すように、運転者の視線方向に応じて画像を表示する領域を変更するようにプロジェクターを動作させる。
【0012】
このように、運転者の視線方向、つまり、運転者が車両を右左折や後進などさせる際に見る方向に画像を表示させることによって、運転者が見やすい位置に画像を表示できるので好ましい。
【0013】
また、請求項1に示すように、ステアリングホイールの回転角度を検出する回転角センサを備え、表示駆動手段は、運転者の視線方向として、回転角センサの検出結果に応じて、画像を表示する領域を変更する。
【0014】
例えば、車両を右左折などさせる場合、運転者の視線方向は、ステアリングホイールの回転角度に対応することが多い。したがって、請求項1によれば、運転者の視線方向に画像を表示することができる。
【0015】
なお、ステアリングホイールは、左右共に90°以上回転するものである。また、運転者の視線方向に応じて表示する画像は、例えば、車両の周辺情報などを示す画像などである。
【0016】
そこで、請求項1に示すように、表示駆動手段は、ステアリングホイールの回転角度が90°を超えた場合は、フロントガラスにおけるステアリングホイールの回転方向側の端部もしくは、ステアリングホイールの回転方向側のピラーにプロジェクターによる画像を表示するようにしてもよい。
【0017】
このようにすることによって、ステアリングホイールが左又は右に90°以上回転している場合であっても、運転者の視線方向に近い位置に画像を表示することができる。
【0018】
また、運転者の視線方向に応じて画像を表示する領域を変更する場合、請求項2に示すように、運転者の顔を撮像する撮像手段と、撮像手段にて撮像された画像から運転者の視線方向を検出する視線検出装置とを備え、表示駆動手段は、視線検出装置にて検出された運転者の視線方向に応じて、画像を表示する領域を変更するようにしてもよい。
【0019】
このように、撮像手段にて撮像された画像から運転者の視線方向を検出して、その検出結果に応じて画像を表示する領域を変更することによって、より一層適切に運転者の視線方向に応じて画像を表示することができる。
【0020】
また、請求項3に示すように、シフトレバーのポジションを検出するポジションセンサを備え、表示駆動手段は、運転者の視線方向として、ポジションの検出結果に応じて、画像を表示する領域を変更するようにしてもよい。
【0021】
例えば、車両を後進させる場合、運転者の視線方向は、シフトレバーのポジションに対応することが多い。したがって、請求項3によれば、運転者の視線方向に画像を表示することができる。
【0022】
また、請求項4に示すように、乗員によって操作されるものであり、プロジェクターによる画像を表示させる領域を指示する指示信号を出力する操作手段を備え、表示駆動手段は、指示信号に応じて、画像を表示する領域を変更するようにプロジェクターを動作させるようにしてもよい。
【0023】
このようにすることによって、乗員が表示させたいと考えている領域に画像を表示させることができるので好ましい。
【0024】
また、請求項5に示すように、プロジェクターは、車室内の天井に配置されるようにしてもよい。
【0025】
天井は、センターコンソールやインスツルメントパネルに比べて、他の車載用電化製品や配線などが配置されてない場合が多い。したがって、このようにプロジェクターを天井に配置することによって、他の車載用電化製品などへの影響が少なく好適である。
【0026】
また、請求項6に示すように、車室内の天井には、少なくとも車両の進行方向に延びるレールが設けられ、プロジェクターは、レールに移動可能なように配置されるようにしてもよい。
【0027】
このようにすることによって、車室内の前方、及び後方にも簡単に画像を表示させることができるので好ましい。
【0028】
また、請求項7に示すように、プロジェクターは、レールを転がるものであり、プロジェクターから投射される光を通す投射窓を有するボールの中に設けられるようにしてもよい。
【0029】
上記目的を達成するために請求項8に記載の車両用表示装置は、車両のステアリングホイールにおけるフロントガラスに対向する部位に設けられるものであって、光を投射することによって画像を表示するものであり、半導体基板に形成されたミラー部とミラー部を駆動するアクチュエーター部とを含む走査部と、ミラー部に対して光を照射する光源部とを含むプロジェクターと、ステアリングホイールの回転角度を検出する回転角センサと、回転角センサの検出結果に応じて、プロジェクターの投射角度を調整する角度調整手段とを備えることを特徴とするものである。
【0030】
このように、半導体基板に形成されたミラー部とミラー部を駆動するアクチュエーター部とを含む走査部と、ミラー部に対して光を照射する光源部とを含むプロジェクターを設け、このプロジェクターをステアリングホイールに設けることによって、ステアリングホイールに連動して車室内の複数の領域に画像を表示することができる。よって、一つのプロジェクターで複数の領域に画像表示することができるので、省スペース化することができる。また、プロジェクターを一つしか用いないため配線を減らすことができ、電源ノイズを抑制することもできる。さらに、上述のようなプロジェクターは、液晶ディスプレイなどに比べて重量も軽いので、車両用表示装置による車両重量の増加も抑制することができる。
【0031】
さらに、プロジェクターをステアリングホイールに設けることによって、プロジェクターはステアリングホイールに連動して動くことになる。したがって、ステアリングホイールの回転角度に応じた位置に画像を表示することができる。つまり、車両を右左折などさせる場合、運転者の視線方向は、ステアリングホイールの回転角度に対応することが多い。したがって、このようにすることによって運転者の視線方向(運転者が車両を右左折などさせる際に見る方向)に画像を表示することができる。
【0032】
また、請求項9に示すように、プロジェクターは、ステアリングホイールの内部に設置されるものであり、ステアリングホイールは、フロントガラスに対向する部位にプロジェクターから投射される光を通す投射窓を有するようにしてもよい。
【0033】
ステアリングホイールは、スペース的な制約があるため、センターコンソールやインスツルメントパネルに比べて、他の車載用電化製品や配線などが配置されてない場合が多い。したがって、請求項9に示すようにすることによって、他の車載用電化製品などへの影響が少なく好適である。
【0034】
なお、ステアリングホイールは、左右共に90°以上回転するものである。したがって、ステアリングホイールが左又は右に90°以上回転した場合、ステアリングホイールに連動して動くプロジェクターでは、適切な位置に画像を表示できない可能性がある。
【0035】
そこで、請求項10に示すように、プロジェクターは、ステアリングホイールの回転角度が左あるいは右に90°となるまでは、ステアリングホイールと共に回転し、回転角度が90°を超えた場合は、ステアリングホイールが90°の位置に戻るまで、回転角度が90°の位置に固定されるようにしてもよい。
【0036】
このようにすることによって、ステアリングホイールが左又は右に90°以上回転した場合であっても、運転者が向いている方向に画像を表示できるので好ましい。
【図面の簡単な説明】
【0037】
【図1】本発明の第1の実施の形態における車両用表示装置の概略構成を示すイメージ図である。
【図2】本発明の第1の実施の形態における車両用表示装置の運転席(フロントガラス)付近のスクリーンの配置例を示すイメージ図である。
【図3】本発明の第1の実施の形態における車両用表示装置の助手席付近のスクリーンの配置例を示すイメージ図である。
【図4】本発明の第1の実施の形態における車両用表示装置のバックガラス付近のスクリーンの配置例を示すイメージ図であり、(a)は側面図であり、(b)は平面図である。
【図5】本発明の第1の実施の形態における車両用表示装置の後部座席用のスクリーンの配置例を示すイメージ図である。
【図6】本発明の第1の実施の形態における車両用表示装置のプロジェクターの走査部の概略構成を示す平面図である。
【図7】本発明の第1の実施の形態における車両用表示装置のプロジェクターによる表示原理を示すイメージ図である。
【図8】本発明の第1の実施の形態における天井に設けられたレールの概略構成を示す平面図である。
【図9】本発明の第1の実施の形態における天井に設けられたレールの概略構成を示す断面図である。
【図10】本発明の第1の実施の形態の変形例1における天井に設けられたレールの概略構成を示す平面図である。
【図11】本発明の第1の実施の形態の変形例2における天井に設けられたプロジェクターの概略構成を示す図面であり、(a)は断面図であり、(b)は車室内から見た場合の透視図である。
【図12】本発明の第2の実施の形態における車両用表示装置のスクリーンとプロジェクターの配置例を示すイメージ図である。
【図13】本発明の第2の実施の形態における車両用表示装置のプロジェクターの配置例を示す側面図である。
【図14】本発明の第2の実施の形態の変形例1における車両用表示装置のプロジェクターの概略構成を示すステアリングホイールの透視図である。
【図15】本発明の第2の実施の形態の変形例2における車両用表示装置のプロジェクターの概略構成を示すステアリングホイールの透視図である。
【図16】本発明の第2の実施の形態の変形例3における車両用表示装置のスクリーンとプロジェクターの配置例を示すイメージ図である。
【図17】本発明の第2の実施の形態の変形例3における車両用表示装置のプロジェクターの配置例を示す側面図である。
【図18】その他の実施の形態における車両用表示装置の表示部の一例を示すイメージ図である。
【発明を実施するための形態】
【0038】
以下、本発明の実施の形態を図に基づいて説明する。
【0039】
(第1の実施の形態)
まず、第1の実施の形態について説明する。図1は、本発明の第1の実施の形態における車両用表示装置の概略構成を示すイメージ図である。図2は、本発明の第1の実施の形態における車両用表示装置の運転席(フロントガラス)付近のスクリーンの配置例を示すイメージ図である。図3は、本発明の第1の実施の形態における車両用表示装置の助手席付近のスクリーンの配置例を示すイメージ図である。図4は、本発明の第1の実施の形態における車両用表示装置のバックガラス付近のスクリーンの配置例を示すイメージ図であり、(a)は側面図であり、(b)は平面図である。図5は、本発明の第1の実施の形態における車両用表示装置の後部座席用のスクリーンの配置例を示すイメージ図である。図6は、本発明の第1の実施の形態における車両用表示装置のプロジェクターの走査部の概略構成を示す平面図である。図7は、本発明の第1の実施の形態における車両用表示装置のプロジェクターによる表示原理を示すイメージ図である。図8は、本発明の第1の実施の形態における天井に設けられたレールの概略構成を示す平面図である。図9は、本発明の第1の実施の形態における天井に設けられたレールの概略構成を示す断面図である。
【0040】
図1に示すように、本実施の形態における車両用表示装置は、一つのプロジェクター40で複数の領域(スクリーン51,52,53,54a,54b,55,56)に画像を表示するものである。つまり、車両用表示装置は、レール61,62に沿ってプロジェクター40を移動させることによって、スクリーン51,52,53,54a,54b,55,56のいずれか一つに投影画像を表示するものである。プロジェクター40からの投影画像を表示可能な透明スクリーンなどを採用することができる。
【0041】
スクリーン51は、図2に示すように、運転者用のものであり、運転席S1側のピラーに設けられる。スクリーン52は、図2に示すように、運転者用または助手席の乗員用のものであり、フロントガラスFGの表面に設けられる。スクリーン53は、図3に示すように、運転者の左側視認用のものであり、助手席S2側のドアに設けられる。なお、助手席S2には、乗員が座っている可能性もある、この場合、運転者は、助手席S2側のドアに設けたスクリーン53を視認できない可能性がある。そこで、スクリーン53は、助手席S2側のサイドガラスSGに設けるようにしてもよい。
【0042】
このように助手席S2側のドアもしくは助手席S2側のサイドガラスSGにスクリーン53を設けることによって、運転者が左側を見る際に画像を見やすくできる。また、スクリーン53に表示する画像としては、車両外の左側面の撮像画像を採用することができる。このように車両外の左側面の撮像画像をスクリーン53に表示することで、運転者が車両の左側面の様子をイメージしやすくできる。
【0043】
スクリーン54a,54bは、図4(a)、(b)に示すように、運転者の後方視認用のものであり、バックガラスBGの表面(54b)やバックガラスBGの周囲(54a)に設けられる。例えば、スクリーン54a,54bに表示する画像としては、車両外の後方の撮像画像や後方確認時の注意喚起情報を採用することができる。
【0044】
スクリーン55,56は、図5に示すように、後部座席用のものであり、前席(運転席S1、助手席S2)の背もたれの上部や、天井に設けられ、車両の側面側から見た場合運転手の頭の位置とほぼ同じ位置に配置される。このスクリーン55,56は、リアプロジェクション(後部から光を入れる)タイプのものを採用する。なお、スクリーン55が左側後部座席S4用であり、スクリーン56が右側後部座席S3用である。
【0045】
レール61及び62は、図1又は図8などに示すように、車両の天井70に設けられるものである。レール61は、車両の進行方向に伸びるように設けられる。レール62は、前席(運転席S1と助手席S2)と後席(右側後席S3と左側後席S4)との間にレール61と直行するように設けられる。
【0046】
レール61は、図9に示すように、底が車室内に連通するように設けられた溝状をなすものである。なお、レール62に関しても同様であるため説明を省略する。そして、この溝内にプロジェクター40が内蔵されたボール40aが移動可能な状態で配置される。このボール40aは、プロジェクター40のミラー部13から照射された光を車室内へ通す投射窓40a1が設けられており、モータなどによってレール61及び62を移動可能となっている(表示駆動手段)。ボール40aは、レール61及び62ないで回転可能となっている(表示駆動手段)。そして、スクリーン51,52,53,54a,54b,55,56のいずれか一つに投影画像を表示する場合、ボール40aをレール61及び62に沿って所望の位置へ移動させ、ボール40aを回転させることによって、プロジェクター40から照射する光の角度を調整することによって行う。
【0047】
なお、プロジェクター40への電源と信号の供給は例えば無線、または、レール61とプロジェクター40の接点を通じて行うことができる。また、プロジェクター40をモノレールのように吊り下げるようにしてもよい。
【0048】
また、変形例1として、図10に示すように、ボール40aの下方に円状に回転するミラーMを設ける。そして、ボール40aの回転角度とミラーMの回転角度とを用いてプロジェクター40から照射される光の角度(照射角度)を調整するようにしてもよい。
【0049】
このように、レール61、62を用いることによって、荷物や乗員などによってプロジェクター40とスクリーンとの間に死角ができた場合であっても、プロジェクター40の位置を移動させることによって、死角による影響を低減して表示することができる。車室内の前方、及び後方にも簡単に画像を表示させることができるので好ましい。
【0050】
ここで、図6を用いて、本実施の形態におけるプロジェクター40の2次元スキャナ10に関して説明する。
【0051】
2次元スキャナ10は、半導体基板のエッチング加工により形成された各構成部分と、圧電振動板の表面に形成された圧電素子で構成される。2次元スキャナ10は、中央に、表面に反射膜を有する円形状のミラー部13が形成されている。
【0052】
ミラー部13の中心を通る軸Y2上の第1のトーションバー14a、14bが各々の一端でミラー部13を軸支している。第1のトーションバー14a、14bの両側において、半円環状の第1の圧電振動板15a、15bが接続され、ミラー部13を囲むように配置されている。第1の圧電振動板15a、15bの表面上には、半円環状の圧電素子が形成されている。
【0053】
第1の圧電振動板15a、15bの周囲には、第1の圧電振動板15a、15bにY2軸と交差するX2軸上で接続された、円環状の内部可動枠12が形成されている。言い換えると、第1の圧電振動板は、それぞれの中間部分を内部可動枠12に接続されている。X2軸上の第2のトーションバー16a、16bの一端が、内部可動枠12を軸支している。支持体11が、第2のトーションバー16a、16bの他端に接続されている。
【0054】
支持体11と内部可動枠の間には、半円環状の第2の圧電振動板17a、17bが配置され、内部可動枠12を囲んでいる。第2の圧電振動板17a、17bは、第2のトーションバー16a、16bと支持体11とをY2軸上において接続している。言い換えると、第2の圧電振動板は、それぞれの中間部分を支持体11に接続されている。また、第2の圧電振動板17a、17bの表面上には、半円環状の圧電素子が形成されている。なお、図6中の構成では、X2軸とY2軸は直交する。
【0055】
第1の圧電振動板15a(および15b)上の圧電素子は、支持体11上に形成された引き出し電極15ap(および15bp)と配線で接続されており、引き出し電極を通じて外部から電圧を供給することができる。第2の圧電振動板17a(および17b)上の圧電素子についても、支持体11上に形成された引き出し電極17ap(および17bp)を通じて外部から電圧を供給することができる。
【0056】
第2のトーションバー16a、16bは、後述する内部可動枠12の揺動を行い易くするために、支持体11および内部可動枠12の一部に加工を施し、回転軸を長くしている。同様に、第1のトーションバー14a、14bについても、ミラー部13を加工することにより、その回転軸長さを長くすることができる。また、第1のトーションバーは、ミラー部13と内部可動枠12とを接続する構造でも良い。
【0057】
2次元スキャナ10の動作について説明する。図6に示す配線(単線)により、第2の圧電振動板17a(および17b)の圧電素子に互いに位相の異なる(逆位相が好ましい)交流電圧VX3(およびVX4)を印加すると、圧電素子がその円周方向に収縮する。圧電素子が収縮しても、各圧電振動板の長さは変わらず、一部は支持体11に保持されているので、圧電振動板は圧電素子側に引っ張り上げられる。電圧が小さくなると、収縮していた圧電素子は元の長さに戻ろうとする。それに伴い、圧電振動板も元に戻ろうとする。印加電圧が0Vにあると、多少のオーバーシュートはあるが、圧電振動板は元の位置に戻る。こうして、バイアスされた交流電圧を印加することにより、圧電振動板がその厚さ方向に振動する。特に、圧電振動板17a、17bの圧電素子にかける電圧の位相が逆位相の場合には、圧電振動板17a(および17b)の振動方向はトーションバー16a(および16b)を中心として逆になる。
【0058】
このとき、内部可動枠12にはトーションバー16a、16bを通じて回転トルクが作用し、内部可動枠12はトーションバー16a、16bを中心軸として傾く。交流電圧VX3、VX4を印加し続けると、内部可動枠12にはシーソー的な回転トルクが作用し、内部可動枠12はX2軸回りに所定の角度で揺動する。なお、圧電素子にかける交流電圧が16aと16bとで逆位相でない場合にも、このような揺動は可能である。
【0059】
同様の原理で第1の圧電振動板15a、15b上の圧電素子に交流電圧を印加して圧電振動板15a、15bを振動させることにより、第1のトーションバー14a、14bを通るY2軸(X2軸と交差)回りにミラー部13が所定角度で揺動する。第1の圧電振動板15a、15bおよび第2の圧電振動板17a、17bの圧電素子に所定の交流電圧を印加することにより、内部可動枠12とミラー部13は互いに交差するX2軸、Y2軸回りをそれぞれ揺動するので、ミラー部13表面の反射膜に入射する光の反射光は2次元的に走査される。
【0060】
このような2次元スキャナ10を用いて、図7に示すように、半導体レーザ21(半導体レーザ22、23も同様)からの光を2次元的に走査する。そして、走査されたレーザ光は、レンズ30を通してスクリーン51(その他のスクリーンも同様)に画像を形成する。なお、プロジェクター40は、制御ECU(図示省略)などからの信号に基づいて半導体レーザ21〜23を発光させて、2次元スキャナ10を操作することによって、画像を形成(投影)する。また、このような2次元スキャナ10と半導体レーザ21とを用いたプロジェクター40は、例えば40mm×25mm×8mm程度の箱に収納することができる程度に小型化することができる。なお、プロジェクター40を入れる箱は、プロジェクター40から照射された光を車室内へ通す投射窓などが設けられるものである。
【0061】
ここで、プロジェクター40による画像をスクリーン51,52,53,54a,54b,55,56のいずれに表示するかに関して説明する。
【0062】
例えば、テレビ画像やDVD等のアミューズメント画像は、助手席S2の乗員、後部座席S3、S4の乗員が見る場合が多いので、スクリーン52、55、56のいずれかに表示する。この場合、スクリーン52、55、56のいずれに表示するかは、乗員が選択することが可能である。つまり、図示は省略するが、乗員によって操作されるものであり、プロジェクター40による画像を表示させる領域を指示する指示信号を出力する操作装置を設ける。そして、プロジェクター40が内蔵されたボールのモータは、この指示信号に基づいて指示されたスクリーンの近くにボールを移動させ、及び/又はこの指示信号に基づいて指示されたスクリーンの方に投射窓40a1が向くように回転させる。そして、制御ECUは、乗員の指示に応じた画像を表示するために、プロジェクター40に信号を出力する。プロジェクター40は、制御ECUからの信号に基づいて半導体レーザ21〜23を発光させて、2次元スキャナ10を操作することによって、画像を形成(投影)する。
【0063】
このようにすることによって、乗員が表示させたいと考えているスクリーン(領域)に画像を表示させることができるので好ましい。また、スクリーン52に画像を表示する場合は、後部座席S3、S4から見やすいような大きさにすると好ましい。
【0064】
また、例えば、車両の周辺を監視するカメラにて撮像された画像(情報)は、運転手が見る場合が多いので、スクリーン51、52、53、54a、54bのいずれかに表示する。この場合、スクリーン51、52、53、54a、54bのいずれに表示するかは、上述の場合と同様に乗員が選択することが可能である。さらに、ステアリングホイールHの回転角度を検出する回転角センサ(図示省略)やシフトレバーのポジションを検出するポジションセンサ(図示省略)を設け、ステアリングホイールHの回転角度やシフトレバーのポジションに応じて選択するようにしてもよい。なお、回転角センサやポジションセンサは、周知技術であるため説明を省略する。
【0065】
車両を右左折などさせる場合、運転者の視線方向は、ステアリングホイールHの回転角度に対応することが多い。また、車両を後進させる場合、運転者の視線方向は、シフトレバーのポジションに対応することが多い。したがって、ステアリングホイールHの切れ角
(回転角度)やシフトレバーのポジションで選択することによって、運転者の視線方向に画像を表示することができる。
【0066】
この場合、プロジェクター40が内蔵されたボール40aのモータは、回転角センサやポジションセンサからの検出結果に応じて、適切な位置のスクリーンの近くにボール40aを移動させ、及び/又はこの指示信号に基づいて指示されたスクリーンの方に投射窓40a1が向くように回転させる。そして、制御ECUは、乗員の指示に応じた画像を表示するために、プロジェクター40に信号を出力する。プロジェクター40は、制御ECUからの信号に基づいて半導体レーザ21〜23を発光させて、2次元スキャナ10を操作することによって、画像を形成(投影)する。なお、制御ECUが回転角センサやポジションセンサからの検出結果に応じてモータに指示信号を出力してもよい。
【0067】
なお、回転角センサやポジションセンサからの検出結果に応じた適切な位置のスクリーンとは、例えば、回転角センサからステアリングホイールHを左に回転させていることを示す信号が出力された場合(左折など)はスクリーン53であり、回転角センサからステアリングホイールHを右に回転させていることを示す信号が出力された場合(右折など)はスクリーン51であり、回転角センサからステアリングホイールHを回転させていないことを示す信号が出力された場合(直進)はスクリーン52であり、ポジションセンサからシフトレバーがリバースの位置にあることを示す信号が出力された場合(後進)はスクリーン54aもしくは54bである。
【0068】
なお、ステアリングホイールHは、左右共に90°以上回転するものである。また、ステアリングホイールHが左又は右両方に90°以上回転している場合、車両はかなり減速しているものである。従って、ステアリングホイールHが左又は右に90°以上回転している場合には、上述のような画像を表示しなくても差し支えない場合が多い。従って、ステアリングホイールHの回転角度が90°を超えた場合は、プロジェクター40による画像の表示を停止するようにしてもよい。この場合、制御ECUは、回転角センサからの検出結果によってステアリングホイールHの回転角度が90°を超えたか否かを判定する。そして、ステアリングホイールHの回転角度が90°を超えたと判定した場合は、プロジェクター40に対する画像を表示するための信号の出力を停止する。
【0069】
なお、図1に示すようにスクリーンを配置している場合は、ステアリングホイールHが左側に90°以上回転した場合はスクリーン53に画像を表示し、ステアリングホイールHが右側に90°以上回転した場合はスクリーン51に画像を表示するようにしてもよい。
【0070】
また、例えば、車速やエンジン回転数警告など車を動かすために必要な情報を示す画像は、車両が前進しているときに運転手が見る場合が多いので、スクリーン51、52、53のいずれかに表示する。この場合、スクリーン51、52、53のいずれに表示するかは、上述の場合と同様に乗員が選択、ステアリングホイールHの回転角度によって選択することが可能であると共に、ドライバーの目線方向で選択することも可能である。
【0071】
運転者の顔を撮像するカメラ(撮像手段)と、カメラにて撮像された画像から運転者の黒目などを検出して視線方向を検出する視線検出装置とを備えることによって、運転者がどの方向を見ているのかを検出することができる。なお、このような、運転者の視線方向を検出する方法、装置は、周知技術であるため説明を省略する。
【0072】
この場合、プロジェクター40が内蔵されたボールのモータは、視線検出装置からの検出結果に応じて、適切な位置のスクリーンの近くにボールを移動させ、及び/又はこの指示信号に基づいて指示されたスクリーンの方に投射窓40a1が向くように回転させる。そして、制御ECUは、乗員の指示に応じた画像を表示するために、プロジェクター40に信号を出力する。プロジェクター40は、制御ECUからの信号に基づいて半導体レーザ21〜23を発光させて、2次元スキャナ10を操作することによって、画像を形成(投影)する。
【0073】
なお、視線検出装置からの検出結果に応じた適切な位置のスクリーンとは、例えば、視線検出装置から運転者の視線が左側(車両の直進方向に対して左側)であることを示す信号が出力された場合はスクリーン53であり、視線検出装置から運転者の視線が右側(車両の直進方向に対して右側)であることを示す信号が出力された場合はスクリーン51であり、視線検出装置から運転者の視線が真直ぐ(車両の直進方向)であることを示す信号が出力された場合はスクリーン52である。
【0074】
このように、運転者の視線方向に応じて画像を表示するスクリーンを変更することによって、より一層適切に運転者の視線方向に応じて画像を表示することができる。
【0075】
なお、本実施の形態においては、レール61、62を用いる例を採用して説明したが、本発明はこれに限定されるものではない。例えば、図11に示すように、プロジェクター40を天井70の一箇所に固定して設けるようにしてもよい。この場合、天井70にプロジェクター40を配置する取り付け凹部71を設ける。そして、レンズ30を介してミラー部13から照射された光を車室内に照射するものであり、レンズ駆動用アクチュエーター31によってレンズ30を動かすことによって、スクリーン51,52,53,54a,54b,55,56のいずれか一つに投影画像を表示するものである。天井70は、センターコンソールやインスツルメントパネルに比べて、他の車載用電化製品や配線などが配置されてない場合が多い。したがって、このようにプロジェクター40を天井70に配置することによって、他の車載用電化製品などへの影響が少なく好適である。
【0076】
このように、半導体基板に形成されたミラー部13とミラー部13を駆動するアクチュエーター部(第1の圧電振動板15a,15b、第2の圧電振動板17a、17bなど)とを含む2次元スキャナ10(走査部)と、ミラー部13に対して光を照射する半導体レーザ21〜23(光源部)とを含むプロジェクター40を設け、一つのこのプロジェクター40を用いて、車室内の複数のスクリーンいずれかに画像を表示することによって省スペース化することができる。また、プロジェクター40を一つしか用いないため配線を減らすことができ、電源ノイズを抑制することもできる。さらに、上述のようなプロジェクター40は、液晶ディスプレイなどに比べて重量も軽いので、車両用表示装置による車両重量の増加も抑制することができる。
【0077】
また、運転者の視線方向、つまり、運転者が車両を右左折や後進などさせる際に見る方向に画像を表示させることによって、運転者が見やすい位置に画像を表示できるので好ましい。
【0078】
(第2の実施の形態)
次に、本発明の第2の実施の形態について説明する。図12は、本発明の第2の実施の形態における車両用表示装置のスクリーンとプロジェクターの配置例を示すイメージ図である。図13は、本発明の第2の実施の形態における車両用表示装置のプロジェクターの配置例を示す側面図である。図14は、本発明の第2の実施の形態の変形例1における車両用表示装置のプロジェクターの概略構成を示すステアリングホイールの透視図である。図15は、本発明の第2の実施の形態の変形例2における車両用表示装置のプロジェクターの概略構成を示すステアリングホイールの透視図である。図16は、本発明の第2の実施の形態の変形例3における車両用表示装置のスクリーンとプロジェクターの配置例を示すイメージ図である。図17は、本発明の第2の実施の形態の変形例3における車両用表示装置のプロジェクターの配置例を示す側面図である。
【0079】
第2の実施の形態における車両用表示装置は、上述の第1の実施の形態によるものと共通するところが多いので、以下、共通部分についての詳しい説明は省略し、異なる部分を重点的に説明する。第2の実施の形態において、上述の第1の実施の形態と異なる点は主にプロジェクター40をステアリングホイールHに設け、フロントガラスFGの一部の領域に画像を表示する点である。
【0080】
図12に示すように、フロントガラスFGの下部領域に横長のスクリーン57(運転席S1と対向するあたりから助手席S2と対向するあたりまでのスクリーン)を設ける。そして、図12、図13に示すように、プロジェクター40をステアリングホイールHに設ける。なお、プロジェクター40は、上述の実施の形態と同様に、半導体基板に形成されたミラー部13とミラー部13を駆動するアクチュエーター部第1の圧電振動板15a,15b、第2の圧電振動板17a、17bなどを含む2次元スキャナ10(走査部)と、ミラー部13に対して光を照射する半導体レーザ21〜23(光源部)とを含むものである。また、このプロジェクター40は、ステアリングホイールHの表面におけるフロントガラスFGに対向する部位に設けられる。
【0081】
プロジェクター40は、ステアリングホイールHに設けられているため、ステアリングホイールH(ステアリングホイールHの回転角度)の回転に連動する。このように、プロジェクター40がステアリングホイールH(ステアリングホイールHの回転角度)に連動することによって、一つのこのプロジェクター40を用いて、車室内のスクリーン57における複数の領域に画像を表示することができる。よって省スペース化することができる。
【0082】
ただし、プロジェクター40をステアリングホイールHに設けた場合、ステアリングホイールHが左右に回転するに従って、プロジェクター40の位置が下側(地面方向)に移動してしまう。したがって、ステアリングホイールHの回転角度によってはプロジェクター40による画像がスクリーン57に表示できなくなる。そこで、図13に示すように、ステアリングホイールHが回転してもプロジェクター40からの画像がフロントガラスFGに映るようにプロジェクター40の投射角度を調整する角度調整用アクチュエーター(角度調整手段)40bを設ける。スクリーン57は、フロントガラスFGに設ける場合について述べたが、ダッシュボード等運転者が見える範囲に設置してもよい。
【0083】
角度調整用アクチュエーター40bは、ステアリングホイールHの回転角度を検出する回転角センサ(図示省略)からの信号(検出結果)に応じて、プロジェクター40の投射角度が上側もしくは下側になるように動かす。つまり、車両が直進している場合のステアリングホイールHの位置を回転角度の基準として、この基準からステアリングホイールHが右側もしくは左側にどれくらい回転したかによってプロジェクター40を動かして投射角度を調整する。
【0084】
この場合、例えば、回転角度と角度調整用アクチュエーター40bによるプロジェクター40の駆動量とを関連付けてメモリなどに記憶させておく(回転角度・駆動量マップ)。回転角センサからの信号(検出結果)を取得した制御ECU(図示省略)は、回転角度
・駆動量マップに基づいて、角度調整用アクチュエーター40bに対して駆動信号を出力する。そして、角度調整用アクチュエーター40bは、制御ECUからの駆動信号に応じてプロジェクター40の投射角度が上側もしくは下側になるように動かす。このようにしてプロジェクター40の投射角度を調整する。
【0085】
例えば、車両が直進している場合のステアリングホイールHの位置から、ステアリングホイールHを左側もしくは右側に回転させた場合、ステアリングホイールHの回転角度が大きくなるにつれてプロジェクター40は下側に移動し、ステアリングホイールHが元に戻るにつれてプロジェクター40は上側に移動する。したがって、車両が直進している場合のステアリングホイールHの位置から、ステアリングホイールHの回転角度が大きくなるにつれてプロジェクター40の投射角度が上側になるように動かし、ステアリングホイールHが元に戻るにつれてプロジェクター40の投射角度が下側になるように動かす。
【0086】
このように本実施の形態における車両用表示装置は、上述の実施の形態と同様のプロジェクター40をステアリングホイールHに設けることによって、ステアリングホイールHの回転に連動して車室内のスクリーン57の複数の領域に画像を表示することができ、その複数の領域のいずれか一つであり、ステアリングホイールHの回転角度に応じた位置に画像を表示することができる。つまり、ステアリングホイールHの回転に連動して車室内のスクリーン57における表示領域を変更することができる。
【0087】
よって、一つのこのプロジェクター40を用いて、フロントガラスFGの複数の領域のいずれかに画像を表示することによって省スペース化することができる。また、プロジェクター40を一つしか用いないため配線を減らすことができ、電源ノイズを抑制することもできる。さらに、上述のようなプロジェクター40は、液晶ディスプレイなどに比べて重量も軽いので、車両用表示装置による車両重量の増加も抑制することができる。
【0088】
また、車両を右左折などさせる場合、運転者の視線方向は、ステアリングホイールHの回転角度に対応することが多い。上述のように本実施の形態における車両用表示装置は、ステアリングホイールHの回転角度に応じた位置に画像を表示することができるので、運転者の視線方向(運転者が車両を右左折などさせる際に見る方向)に画像を表示することができる。なお、ステアリングホイールHの回転角度に応じた位置に表示する画像は、例えば、車両の周辺を監視するカメラにて撮像された画像(情報)、車速やエンジン回転する警告など車を動かすために必要な情報を示す画像はなどである。
【0089】
また、第2の実施の形態の変形例1として、プロジェクター40は、図14に示すように、ステアリングホイールHの内部に設けるようにしてもよい。つまり、2次元スキャナ10、角度調整用アクチュエーター(角度調整手段)40b、半導体レーザ21〜23、レンズ30をステアリングホイールHの内部に設ける。レンズ30は、ステアリングホイールHに設けられた貫通孔であり、2次元スキャナ10から投射される光を通す投射窓H2に設けられるものである。また、投射窓H2(レンズ30)は、ステアリングホイールHのフロントガラスに対向する部位に設けられる。
【0090】
ステアリングホイールHは、スペース的な制約があるため、センターコンソールやインスツルメントパネルに比べて、他の車載用電化製品や配線などが配置されてない場合が多い。したがって、変形例1のように、ステアリングホイールHの内部にプロジェクター40を設けることによって、他の車載用電化製品などへの影響が少なく好適である。
【0091】
なお、図14においては、2次元スキャナ10、角度調整用アクチュエーター(角度調整手段)40b、半導体レーザ21〜23、レンズ30を別体でステアリングホイールHの内部に設ける例を採用しているが、本発明はこれに限定されるものではない。2次元スキャナ10、角度調整用アクチュエーター(角度調整手段)40b、半導体レーザ21〜23、レンズ30を一つの箱の内部に設け、この箱をステアリングホイールHの内部に設けるようにしてもよい。また、レンズ30は、2次元スキャナ10からの光のピントを調整したりするものである。
【0092】
また、ステアリングホイールHは、左右共に90°以上回転するものである。したがって、ステアリングホイールHが左又は右に90°以上回転した場合、ステアリングホイールHに連動して動くプロジェクター40では、適切な位置に画像を表示できない可能性がある。
【0093】
そこで、第2の実施の形態の変形例2として、プロジェクター40を一つの箱の内部に設ける場合、そのプロジェクター40は、ステアリングホイールHの回転角度が左あるいは右に90°となるまでは、ステアリングホイールHと共に回転し、回転角度が90°を超えた場合は、ステアリングホイールが90°の位置に戻るまで、回転角度が90°の位置に固定されるようにしてもよい。
【0094】
例えば、図15に示すように、ステアリングホイールHの中を空洞にしておいて、電磁石でステアリングホイールHとプロジェクター40が入った箱が接着するようにする。また、プロジェクター40が入った箱と、その箱を90°以上回転させないようにする着磁していないバランス錘41とを紐で結ぶ。そして、ステアリングホイールHを90°以上回転させると電磁石をオフになるようにし、ステアリングホイールHの動きとプロジェクター40が入った箱とを同期しないようにする。
【0095】
このようにすることによって、ステアリングホイールHが左又は右に90°以上回転した場合であっても、運転者が向いている方向に画像を表示できるので好ましい。
【0096】
また、ステアリングホイールHが左又は右両方に90°以上回転している場合、車両はかなり減速しているものである。従って、ステアリングホイールHが左又は右に90°以上回転している場合には、上場のような車両の周辺の画像、車速やエンジン回転する警告のなどの画像を表示しなくても差し支えない場合が多い。従って、ステアリングホイールHの回転角度が90°を超えた場合は、プロジェクター40による画像の表示を停止するようにしてもよい。この場合、制御ECUは、回転角センサからの検出結果によってステアリングホイールHの回転角度が90°を超えたか否かを判定する。そして、ステアリングホイールHの回転角度が90°を超えたと判定した場合は、プロジェクター40に対する画像を表示するための信号の出力を停止する。
【0097】
また、フロントガラスFGの複数の領域のいずれかに画像を表示する場合、図16、図17に示す本実施の変形例3のように、プロジェクター40は、ステアリングシャフトのハウジングH1の上部に設けるようにしてもよい。このように、2次元スキャナ10、半導体レーザ21〜23、レンズ30が入った箱と角度調整用アクチュエーター(角度調整手段)40bとをステアリングシャフトのハウジングH1の上部に設けることによって、フロントガラスFGにおけるステアリングホイールHの回転角度に応じた位置に画像を表示しやすくすることができる。
【0098】
さらに、フロントガラスFGの複数の領域のいずれかに画像を表示する場合、プロジェクター40は、ルームミラーに設けるようにしてもよい。このように、2次元スキャナ10、半導体レーザ21〜23、レンズ30が入った箱と角度調整用アクチュエーター(角度調整手段)40bとをルームミラーに設けることによっても、フロントガラスFGにおけるステアリングホイールHの回転角度に応じた位置に画像を表示しやすくすることができる。
【0099】
また、図18に示すその他の実施の形態としては、上述の第1の実施の形態におけるスクリーン(例えば、スクリーン55、56)として、透明ELスクリーン81と上述のような小型のプロジェクター40とを用いるようにしてもよい。ここでは、ハウジング80にプロジェクター40と透明ELスクリーン81とが対向するように配置する。
【0100】
そして、透明ELスクリーン81にてオレンジ色は表示すると共に、プロジェクター40から透明ELスクリーン81に対して青色の絵を出すようにする。このようにすることによって、透明ELスクリーン81は、透明ELスクリーン81にてオレンジ色とプロジェクター40からの青色とによって白色に見える。また、プロジェクター40から透明ELスクリーン81に対して緑色の絵を出すようにすると、透明ELスクリーン81は、透明ELスクリーン81にてオレンジ色と緑色によって黄色に見える。
【符号の説明】
【0101】
10 2次元スキャナ(走査部)、11 支持体、12 内部可動枠、13 ミラー部、14a,14b 第1のトーションバー、15a,15b 第1の圧電振動板、15ap,15bp 引き出し電極、16a,16b 第2のトーションバー、17a、17b 第2の圧電振動板、17ap,17bp 引き出し電極、21〜23 半導体レーザ(光源部)、30 レンズ、31 レンズ駆動用アクチュエーター、40 プロジェクター、40a ボール、40a1 投射窓、41 バランス錘、40b 角度調整用アクチュエーター(角度調整手段)、51,52,53,54a,54b,55,56,57 スクリーン、61,62 レール、70 天井、71 取り付け凹部、80 ハウジング、81 透明ELスクリーン、S1〜S4 座席、H ステアリングホイール、H1 ハウジング、H2 投射窓、FG フロントガラス、SG サイドガラス、BG バックガラス、M ミラー

【特許請求の範囲】
【請求項1】
車室内に設けられ光を投射することによって画像を表示するものであって、半導体基板に形成されたミラー部と当該ミラー部を駆動するアクチュエーター部とを含む走査部と、前記ミラー部に対して光を照射する光源部とを含むプロジェクターと、
一つの前記プロジェクターによる画像を前記車室内の複数の領域におけるいずれかの領域に表示させるように前記プロジェクターを動作させる表示駆動手段と、
ステアリングホイールの回転角度を検出する回転角センサと、を備え、
前記表示駆動手段は、運転者の視線方向に応じて前記画像を表示する領域を変更するように前記プロジェクターを動作させるものであり、運転者の視線方向として前記回転角センサの検出結果に応じて前記画像を表示する領域を変更し、前記ステアリングホイールの回転角度が90°を超えた場合は、助手席側のドア又は助手席側のサイドガラス、もしくは、当該ステアリングホイールの回転方向側のピラーに前記プロジェクターによる画像を表示することを特徴とする車両用表示装置。
【請求項2】
運転者の顔を撮像する撮像手段と、前記撮像手段にて撮像された画像から運転者の視線方向を検出する視線検出装置とを備え、前記表示駆動手段は、前記視線検出装置にて検出された運転者の視線方向に応じて、前記画像を表示する領域を変更することを特徴とする請求項1に記載の車両用表示装置。
【請求項3】
シフトレバーのポジションを検出するポジションセンサを備え、前記表示駆動手段は、運転者の視線方向として、前記ポジションの検出結果に応じて、前記画像を表示する領域を変更することを特徴と請求項1に記載の車両用表示装置。
【請求項4】
乗員によって操作されるものであり、前記プロジェクターによる画像を表示させる領域を指示する指示信号を出力する操作手段を備え、前記表示駆動手段は、前記指示信号に応じて、前記画像を表示する領域を変更するように前記プロジェクターを動作させることを特徴とする請求項1に記載の車両用表示装置。
【請求項5】
前記プロジェクターは、前記車室内の天井に配置されることを特徴とする請求項1乃至請求項4のいずれか一項に記載の車両用表示装置。
【請求項6】
前記車室内の天井には、少なくとも車両の進行方向に延びるレールが設けられ、前記プロジェクターは、前記レールに移動可能なように配置されることを特徴とする請求項5に記載の車両用表示装置。
【請求項7】
前記プロジェクターは、前記レールを転がるものであり、前記プロジェクターから投射される光を通す投射窓を有するボールの中に設けられることを特徴とする請求項6に記載の車両用表示装置。
【請求項8】
車両のステアリングホイールにおけるフロントガラスに対向する部位に設けられるものであって、光を投射することによって画像を表示するものであり、半導体基板に形成されたミラー部と当該ミラー部を駆動するアクチュエーター部とを含む走査部と、前記ミラー部に対して光を照射する光源部とを含むプロジェクターと、
ステアリングホイールの回転角度を検出する回転角センサと、
前記回転角センサの検出結果に応じて、前記プロジェクターの投射角度を調整する角度調整手段と、を備えることを特徴とする車両用表示装置。
【請求項9】
前記プロジェクターは、前記ステアリングホイールの内部に設置されるものであり、前記ステアリングホイールは、前記フロントガラスに対向する部位に前記プロジェクターから投射される光を通す投射窓を有することを特徴とする請求項8に記載の車両用表示装置。
【請求項10】
前記プロジェクターは、前記ステアリングホイールの回転角度が左あるいは右に90°となるまでは、前記ステアリングホイールと共に回転し、前記回転角度が90°を超えた場合は、前記ステアリングホイールが90°の位置に戻るまで、前記回転角度が90°の位置に固定されることを特徴とする請求項9に記載の車両用表示装置。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【図8】
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【図9】
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【図10】
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【図11】
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【図12】
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【図13】
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【図14】
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【図15】
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【図16】
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【図17】
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【図18】
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【公開番号】特開2013−29855(P2013−29855A)
【公開日】平成25年2月7日(2013.2.7)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2012−221624(P2012−221624)
【出願日】平成24年10月3日(2012.10.3)
【分割の表示】特願2008−152135(P2008−152135)の分割
【原出願日】平成20年6月10日(2008.6.10)
【出願人】(000004260)株式会社デンソー (27,639)
【Fターム(参考)】