車両用通風冷却回転電機
【課題】十分な強度と機内の通風冷却性能を確保した車両用通風冷却回転電機を提供する。
【解決手段】車両用通風冷却回転電機は、冷却風導入口21から機内の軸方向一端側に冷却風を取入れ、冷却風を機内の他端側に通風させて排風口より機外に排気すると共に、冷却風導入口から機内に取入れた冷却風の一部をステータ鉄心2の外周に形成されている鉄心外周冷却通風路51a〜51dに通風させる。鉄心外周冷却通風路51a〜51dは、少なくとも、ステータ鉄心2の外周部に形成されている第1通風路51aと、冷却風導入口21から第1通風路51aよりも離れた位置であって、ステータ鉄心2の外周部に形成されている第2通風路51bとを含む。第1通風路51aの軸方向に略垂直な断面の面積は、第2通風路51bの軸方向に略垂直な断面の面積よりも小さい。
【解決手段】車両用通風冷却回転電機は、冷却風導入口21から機内の軸方向一端側に冷却風を取入れ、冷却風を機内の他端側に通風させて排風口より機外に排気すると共に、冷却風導入口から機内に取入れた冷却風の一部をステータ鉄心2の外周に形成されている鉄心外周冷却通風路51a〜51dに通風させる。鉄心外周冷却通風路51a〜51dは、少なくとも、ステータ鉄心2の外周部に形成されている第1通風路51aと、冷却風導入口21から第1通風路51aよりも離れた位置であって、ステータ鉄心2の外周部に形成されている第2通風路51bとを含む。第1通風路51aの軸方向に略垂直な断面の面積は、第2通風路51bの軸方向に略垂直な断面の面積よりも小さい。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、主に電車等の鉄道車両の主電動機として台車に設置される車両用通風冷却回転電機に関する。
【背景技術】
【0002】
特許文献1(特開平6−169548号公報)には、車両用通風冷却形回転電機(以下、単に「モータ」という)の一般的構造が開示されている。
【0003】
図10は、モータの組立状態の例を示す縦断面図(軸方向の断面図)である。
【0004】
図11は、図10のXI−XI線に沿う横断面図(軸方向に垂直な断面図)である。
【0005】
モータのフレーム1は円筒形である。フレーム1の内周面には、ステータ鉄心2がステータ鉄心押え3a,3bで両端から押え付けられ、取り付けられている。
【0006】
固定子は、ステータ鉄心2の内周面にスロットを介してステータコイル4を取り付けて構成される。
【0007】
固定子のフレーム1の一端に備えられている端板1a及びハウジング1aaと、フレーム1の他端に嵌合されている鏡蓋5とは、それぞれ軸受6a,6bを備えている。軸受6a,6bは、シャフト(回転子軸)7を回転自在に支持する。シャフト7のロータ鉄心8は、ロータ鉄心押え9a,9bで両端から押え付けられ、シャフト7に固着されている。
【0008】
ロータ鉄心8の外周面には、スロットを介してロータバー10が取り付けられている。ロータバー10の両端には、リング状の短絡環(エンドリング)11が溶着されている。これにより、カゴ形回転子が構成される。
【0009】
図12は、従来のモータの台車への取付状態の例を示す図であり、図13は、この図12のXIII−XIII線に沿う断面図である。
【0010】
図12及び図13に示すように、モータは、車両の車体12の床下の台車内の台車梁13と車軸14との間に配置される。モータは、フレーム1の外周に突出した取付ノーズ15A〜15C等を介して台車梁13等にボルト止めされ、取り付けられる。
【0011】
通電運転により回転子は回転する。回転子の回転力は、シャフト7の軸端に装着されているカップリング16を介して駆動歯車17a,17bに伝わる。回転力は、車軸14を駆動させ、左右の車輪18をレール19上で転動させて車両を走行させる。なお、フレーム1の外周下部には、一対の置足20が突設されている。
【0012】
このようなモータは、運転稼動時に発熱し、過熱しやすい。モータがある程度以上に加熱すると、コイル絶縁物の劣化が促進されて寿命が低下し、発熱体の強度が低下する。このため、回転電機内(以下、単に「機内」という)の温度上昇を抑えるために、冷却用の空気(以下、単に「冷却風」という)を流入させて冷却する必要がある。冷却方式には、自己通風冷却形と他力強制通風冷却形との2種類がある。
【0013】
上記図10及び図11に示すモータは、自己通風冷却形である。このモータにおいては、フレーム1の外周の軸方向一端側寄りに、冷却風導入口21が形成されている。反対側の軸方向他端側機内部には、シャフト7に通風ファン22が取り付けられている。また、フレーム1の外周に配列する状態で、多数の排風口23がフレーム1の他端側に形成されている。
【0014】
また、上記図13に示すように、冷却風導入口21は、たわみ風道24を介して車体12の床下側のダクト25に連結されている。
【0015】
運転稼動時に、通風ファン22は、シャフト7と一体に回転する。通風ファン22の吸引作用により、新鮮な冷却風は、ダクト25からたわみ風道24を介して冷却風導入口21より機内一端側に取入れられる。冷却風は、機内の各通風路を矢印のように流れ、ステータコイル4とロータバー10とを直接冷却する。また、冷却風は、ステータ鉄心2及びロータ鉄心8を介して間接的にステータコイル4とロータバー10とを冷却する。そして、冷却風は、排風口23から機外に排気される。
【0016】
なお、冷却風は、車体12の床下側のダクト25からたわみ風道24を介して機内に取入れる方式とは別に、冷却風導入口21上に図示しない通風濾過器を設け、この通風濾過器経由で外気を冷却風として機内に取入れる方式もある。
【0017】
他力強制通風冷却形のモータは、車体に設置されているブロアから冷却風をダクト25及びたわみ風道24を介して冷却風導入口21より強制的に機内一端側に押し込み、冷却風により機内の通風冷却を行い、冷却風を機外に排気する。
【0018】
自己通風冷却形のモータ又は他力強制通風冷却形のモータにおける機内の冷却通風路としては、ステータ鉄心2とロータ鉄心8との間のギャップG、ロータ鉄心8を軸方向に貫通するように設けた多数の通風穴26、ステータ鉄心2の外周部を冷却するために設けられておりフレーム1の内周面に軸方向にそって形成された複数の通風溝27等がある。冷却通風路に冷却風を通風させることにより、機内の略全域がバランスよく冷却される。
【0019】
近年、車両の保守の省力化の要求が高まり、車両の一編成あたりのモータの台数を減らすことにより、保守点検の際の回転電機の台車からの取り外しなどのような分解作業を極力軽減させる試みがなされている。
【0020】
この場合、少ないモータで現状と同等以上の車両性能を実現させる必要があるため、一台あたりのモータの出力をできるだけ増やすことが望まれる。加えて、加速性能、高速性能のアップなどの車両の高性能化対策のためにも、モータの大出力化が最大のニーズとなっている。
【0021】
上記のような種のモータの大出力化には、以下のような難点がある。
【0022】
上記図12及び図13に示すように、モータは、台車内の制約された狭い据付スペースSに納める必要がある。
【0023】
モータは、左右の車輪18間の減速歯車17a,17b及びカップリング16の設置スペースを除いた左右幅空間A、台車梁13と車軸14との間の車両の前後幅空間B、車体12の床下(ダクト25の下面)からレール19までの間の上下空間Cによって定まる範囲内に収める必要がある。製作公差、取付誤差、ばね撓み変位を考慮した余裕分a,b,c,dを車両の前後方向並びに上下方向に確保する必要がある。したがって、モータの大きさは、上記図13に示す2点鎖線で表される据付スペースS内に納まる大きさに制約される。
【0024】
この大きさについての制約を受けつつ従来以上にモータの出力を大きくするためには、モータの外径(直径)Dを変えることなくステータ鉄心2の外径Eを大きくしなければならない。
【0025】
この場合において、冷却通風路であるフレーム1内周面部分の複数の通風溝27の総断面積を現状より少なくすることは、ステータ鉄心2の外周部の通風冷却性能に影響を与え、異常な温度上昇の原因になり、妥当ではない。
【0026】
そこで、鉄心外周冷却通風路としての通風溝27のトータル断面積を変えることなくフレーム1の肉厚Tを薄くしてステータ鉄心2の外径Eを大きくする方法が考えられる。
【0027】
しかしながら、フレーム1の肉厚Tを薄くした場合、以下に説明するような問題が発生する場合がある。
【0028】
すなわち、図14(図11の一部拡大図)に示すように、フレーム1は、ステータ鉄心2の外周に、タガのように適当な締付け力Xにより締まりばめ嵌合し、ステータ鉄心2を固定支持している。このため、フレーム1には、締付け力Xと同等の反力Yが作用している。通風溝27のトータル断面積を変えることなくフレーム1の肉厚Tを現状より薄くすると、通風溝27外側の薄肉部がさらに薄くなって強度的に低下し、この薄肉部が反力Yにより周方向に引っ張られて矢印Z方向への変形が生じ、この変形によりフレーム1が緩んでステータ鉄心2に対する締付け力Xが極端に低下し、ステータ鉄心2の固定支持が困難になるという重大な問題が発生する。また、ステータ鉄心2の電磁振動がフレーム1を共振させて大きな騒音を発生する問題が生じる。
【0029】
図15は、フレームレス構造のモータの例を示す縦断面図である。この図15は、下半分を省略した縦断面図である。
【0030】
図16は、図15のXVI−XVI線に沿う横断面図である。
【0031】
このモータでは、ステータ鉄心2の外径E1をできるだけ大きくするために、外被部材であるフレームが一部削除されている。
【0032】
このフレームレス構造のモータでは、ステータ鉄心2の両端のステータ鉄心押え3a,3bの外側一部を軸方向にそれぞれ円筒状に延出し、分割フレーム1A,1Bとする。モータには、分割フレーム1Aからステータ鉄心2の一部外周を覆い、分割フレーム1Bに渡る継ぎ板30が溶接結合されている。
【0033】
継ぎ板30には、取付ノーズ15A,15B,15Cが突設されている。また、継ぎ板30には、置足20が突設されている。
【0034】
このモータはフレームレスであるため、ステータ鉄心2の外周冷却通風路として、ステータ鉄心2を軸方向に貫通する多数の通風穴31が直接ステータ鉄心2に設けられている。
【0035】
なお、上記図15及び図16の他の部分については、上記図10及び図11と同様であるため、説明を省略する。
【0036】
フレームレス構造のモータは、ステータ鉄心2の外周にフレームが備えられない。したがって、フレームが備えられない分だけ、ステータ鉄心2の外径E1を大きくしても、上記図13において2点鎖線で表した狭い据付スペースS内に納めることができる。
【0037】
しかしながら、このフレームレス構造のモータでは、ステータ鉄心2に直接多数の通風穴31が設けられるため、モータの出力は上記図10及び図11に示すモータより小さくなる場合がある。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0038】
【特許文献1】特開平6−169548号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0039】
以上のように、従来のモータにおいては、台車内の狭い据付スペースSに取り付けられることにより大きさの制約の観点、フレームの薄肉化に伴う強度の観点、機内の通風冷却性能の観点から、現状よりも大出力化を図ることが困難である。このため、台数の低減による保守の省力化、車両の高性能化などのニーズに応じることが困難である。
【0040】
本発明は、以上のような実情に鑑みてなされたもので、現状の据付スペースSに設置可能であり大出力化を実現し、効果的な冷却を行う車両用通風冷却回転電機を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0041】
本発明を実現するにあたって講じた具体的手段について以下に説明する。
【0042】
上記課題は、本態様に係る車両用通風冷却回転電機によって解決される。本態様に係る車両用通風冷却回転電機は、冷却風導入口から機内の軸方向一端側に冷却風を取入れ、冷却風を機内の他端側に通風させて排風口より機外に排気すると共に、冷却風導入口から機内に取入れた冷却風の一部をステータ鉄心の外周に形成されている鉄心外周冷却通風路に通風させる。鉄心外周冷却通風路は、少なくとも、ステータ鉄心の外周部に形成されている第1通風路と、冷却風導入口から第1通風路よりも離れた位置であって、ステータ鉄心の外周部に形成されている第2通風路とを具備する。第1通風路の軸方向に略垂直な断面の面積は、第2通風路の軸方向に略垂直な断面の面積よりも小さい。
【発明の効果】
【0043】
本発明においては、現状の据付スペースSに設置可能であり大出力化を実現し、効果的な冷却を行う車両用通風冷却回転電機を提供することができる。
【図面の簡単な説明】
【0044】
【図1】本発明の第1の実施の形態に係るモータの例を示す横断面図。
【図2】同実施の形態に係るモータの例を示す縦断面図。
【図3】ステータ鉄心と鉄心外周冷却通風路との間の位置関係の例を示す断面図。
【図4】本発明の第2の実施の形態に係るモータの例を示す縦断面図。
【図5】本発明の第3の実施の形態に係るモータの例を示す縦断面図。
【図6】同実施の形態に係るモータの例を示す横断面図。
【図7】本発明の第4の実施の形態に係るモータの例を示す縦断面図。
【図8】同実施の形態に係るモータの例を示す横断面図。
【図9】本発明の第5の実施の形態に係るモータの例を示す縦断面図。
【図10】従来のモータの組立状態の例を示す縦断面図。
【図11】モータの組立状態の例を示す横断面図。
【図12】モータの台車への取付状態の第1例を示す図。
【図13】モータの取付状態の第2例を示す図。
【図14】フレームとステータ鉄心との間に作用する力関係の例を示す図。
【図15】フレームレス構造のモータの例を示す縦断面図。
【図16】フレームレス構造のモータの例を示す横断面図。
【発明を実施するための形態】
【0045】
以下、図面を参照しながら本発明の実施の形態について説明する。なお、上記図10〜16及び以下の各図において同一の部分については同一の符号を付して説明を省略する。
【0046】
(第1の実施の形態)
図1は、本実施の形態に係るモータの例を示す横断面図である。
【0047】
図2は、本実施の形態に係るモータの例を示す縦断面図である。この図2は、下半分を省略した縦断面図であり、図1のII−II線に沿う断面図である。
【0048】
本実施の形態に係るモータのフレーム41は、円筒状であり、外径は上記従来のフレーム1と同様のDであるとする。フレーム41には、従来のフレーム1のように通風溝27は設けられていない。この通風溝27が設けられていない分だけ、フレーム41の肉厚tは、薄い状態となっている。フレーム41の内径は、従来のフレーム2の内径よりも大きくなる。このようにフレーム41の内径を大きくすることに応じて、ステータ鉄心42の外径E2を大きくする。ステータ鉄心42の外周面は、直接フレーム41の内周面に接合する。これにより、ステータ鉄心42とフレーム41とは、締付け固定された状態となる。
【0049】
ステータ鉄心42の外周部の通風冷却を行うために、モータには、ステータ鉄心42の周方向と平行な断面における水平軸で表される車両の前後方向並びに垂直軸で表される車両の上下方向の斜め45°付近の位置及び下部置足20相互間位置などのような適当な据付余裕空間部に鉄心外周冷却通風路43a〜43eを、それぞれ構成している。
【0050】
このモータでは、上記図13において2点鎖線で表した台車内の狭い据付スペースS内に支障なく納まるように、ステータ鉄心42の外周に備えられているフレーム41の周方向と平行な断面における水平軸で表される車両の前後方向並びに垂直軸で表される車両の上下方向の斜め45°付近の位置及び下部置足20相互間部位を軸方向に長くにわたって部分的に膨出して膨出ダクト41A〜41Eを形成し、この膨出ダクト41A〜41Eの内面とステータ鉄心42の外周面との間の空間を鉄心外周冷却通風路43a〜43eとする。鉄心外周冷却通風路43a〜43eの各両端は、機内の一端側と他端側とに内部連通している。冷却風導入口21より機内一端側に取入れられた冷却風の一部は、他端側に向けて流通する。
【0051】
本実施の形態では、上記図13における点鎖線で表した台車内の狭い据付スペースSからはみ出さない範囲内で大きな鉄心外周冷却通風路43a〜43eが形成される。このために、車両の前後方向及び上下方向の斜め45°付近の位置の膨出ダクト41A〜41Dについての軸方向から見た場合の断面は、ほぼ三角形状になるように、膨出ダクト41A〜41Dは形成される。
【0052】
膨出ダクト41A〜41Cは、台車への取付ノーズ15A〜15Cの一部又は全部を兼ねている。すなわち、膨出ダクト41A〜41Cは、取付ノーズ15A〜15Cと一体的に形成されている。
【0053】
ステータ鉄心42の下部の膨出ダクト41Eを軸方向から見た場合の断面は、ほぼU字形状になるように、膨出ダクト41Eは形成される。
【0054】
膨出ダクト41Eは、下部置足20の一部又は全部を兼ねている。すなわち、膨出ダクト41Eは、下部置足20と一体的に形成されている。
【0055】
フレーム41は、ステータ鉄心42の外周面に直接接合して締付け固定されている。このため、フレーム41は、かなり肉薄にしても、上記図14を用いて説明したような締付け強度の低下を招く変形が発生することを防止できる。本実施の形態では、フレーム41の肉厚tを従来のモータよりも通風溝27の溝深さ分以上に薄くすることが可能である。したがって、本実施の形態に係るモータでは、ステータ鉄心42の外径E2を従来のモータと比べてかなり大径とすることができ、モータ出力を増大可能である。
【0056】
フレーム41の鉄心外周冷却通風路43a〜43eを構成する膨出ダクト41A〜41Eは、上記図14を用いて説明したような締付け強度の低下を招く変形が発生しない程度の肉厚t1としている。本実施の形態では、t1>tの関係が成り立つとする。なお、膨出ダクト41A〜41C及び41Eは、取付ノーズ15A〜15C及び下部置足20が一種の補強リブの作用をなすため、肉厚t1をt以上厚くする必要がない場合もある。
【0057】
ここで、ステータ鉄心42と、鉄心外周冷却通風路43a〜43eとの間の位置関係について説明する。
【0058】
図3は、ステータ鉄心42と、鉄心外周冷却通風路43a〜43eとの間の位置関係の例を示す断面図である。
【0059】
この図3では、軸方向からステータ鉄心42と鉄心外周冷却通風路43a〜43eとを見た場合の断面図を表している。したがって、図3の左右方向は、上記の車両の前後方向となる。
【0060】
鉄心外周冷却通風路43aは、ステータ鉄心42の上側外周部P1と左側外周部P2との間であり、ステータ鉄心42の外周部に形成されている。
【0061】
鉄心外周冷却通風路43bは、ステータ鉄心42の左側外周部P2と下側外周部P3との間であり、ステータ鉄心42の外周部に形成されている。
【0062】
鉄心外周冷却通風路43cは、ステータ鉄心42の上側外周部P1と右側外周部P4との間であり、ステータ鉄心42の外周部に形成されている。
【0063】
鉄心外周冷却通風路43dは、ステータ鉄心42の右側外周部P4と下側外周部P3との間であり、ステータ鉄心42の外周部に形成されている。
【0064】
さらに、鉄心外周冷却通風路43a〜43dは、モータの回転軸を通り垂直軸と水平軸に対して略45度となる線L1,L2と、ステータ鉄心42の外周面とが交差する位置の近傍に形成されている。
【0065】
鉄心外周冷却通風路43eは、モータの軸方向から見た場合において、フレーム41の下側でこのモータの軸方向に互いに平行に設けられている2つの下部置足20の間であり、ステータ鉄心42の外周部に形成されている。
【0066】
上述したように、鉄心外周冷却通風路43a〜43eは、フレーム41とステータ鉄心42との間に形成される。
【0067】
上記のような構成を持つ車両用通風冷却形回転電機の作用について説明する。
【0068】
まず、モータの運転に伴って、シャフト7と一体に通風ファン22が回転し、この通風ファン22の吸引作用により新鮮な冷却風が冷却風導入口21より機内一端側に取入れられる。
【0069】
冷却風は、機内の通風路の一種であるステータ鉄心2とロータ鉄心8との間のギャップG、ロータ鉄心8の通風穴26を介して、機内他端側に向けて流通する。また、冷却風の一部は、機内の一端側から、ステータ鉄心2外周の各鉄心外周冷却通風路43a〜43eを介して、機内の他端側に向けて流通する。
【0070】
このような冷却風の機内一端側から機内他端側への流通により、機内のステータコイル4及びロータバー10は、直接通風冷却されると共に、ステータ鉄心2及びロータ鉄心8を介して間接的に冷却される。その後、冷却風は、排風口23より機外に排気される。本実施の形態では、機内各部が平均的に通風冷却作用を受け、各部の温度上昇が抑制される。
【0071】
また、本実施の形態では、鉄心外周冷却通風路43a〜43dが、ステータ鉄心2の外周方向と平行な断面の水平軸に対して斜め45°付近の位置に設けられている。また、鉄心外周冷却通風路43eは、下部置足20相互の間に設けられている。このように、鉄心外周冷却通風路43a〜43eは、据付余裕空間部にフレーム41を膨出させて構成されている。このため、モータは、上記図13の2点鎖線で示した据付スペースSから出ることがない。本実施の形態では、何ら支障なく台車内へのモータ据付を行うことができ、従来のモータのような通風溝27をフレーム2の内周面に形成する必要がない。これにより、フレーム41の肉厚tを締付け強度の低下を招くことなく薄肉化でき、その分ステータ鉄心2の外径E2を大径にし、従来のモータよりも大出力化を図ることができる。
【0072】
鉄心外周冷却通風路43a〜43eは、フレーム41を部分的に膨出させた膨出ダクト41A〜41Eで構成されているため、容易に形成可能である。膨出ダクト41A〜41C,41Eは、取付ノーズ15A〜15C,41E及び下部置足20と兼用されるため、取付ノーズ15A〜15C,41E及び下部置足20の形成も容易になる。取付ノーズ15A〜15C,41E及び下部置足20は、一種の補強リブとなるので、膨出ダクト41A〜41Eは、薄くしても十分な強度を得ることができる。
【0073】
すなわち、本実施の形態では、台車内の狭い据付スペースSに取り付け可能であり、十分な強度と機内の通風冷却性能を確保でき、ステータ鉄心42の外径を大きくすることができ、ステータ鉄心42の通風穴を省略可能であり、大出力化を実現でき、車両に設置されるモータ数を低減でき、保守の省力化、車両の性能の向上を実現できる。
【0074】
なお、本実施の形態において、鉄心外周冷却通風路43a〜43eは、ステータ鉄心42の周方向と平行な断面における水平軸で表される車両の前後方向並びに垂直軸で表される車両の上下方向の斜め45°付近の位置及び下部置足20相互間位置に形成されている。しかしながら、鉄心外周冷却通風路は、例えば上記図13に示すように車両にモータを搭載した場合における他の据付余裕空間部に形成するとしてもよい。具体的には、上記図13における車体12の底面(ダクト25下面)とステータ鉄心42の上部外周部との間の据付余裕空間部に、鉄心外周冷却通風路が配置されるとしてもよい。
【0075】
(第2の実施の形態)
本実施の形態では、上記第1の実施の形態の変形例について説明する。
【0076】
図4は、本実施の形態に係るモータの例を示す縦断面図であり、上記図2と同様の条件で示されている。
【0077】
本実施の形態に係るモータは、各鉄心外周冷却通風路43a〜43eの底面であるステータ鉄心42の外周面に、フレーム部41a〜41eを残した構成である。すなわち、上記第1の実施の形態では、ステータ鉄心42の外周面と膨出ダクト41A〜41Eの内面とにより、鉄心外周冷却通風路43a〜43eが形成されているが、本実施の形態では、ステータ鉄心42の外周面に備えられたフレーム部41〜41eの外周面と、膨出ダクト41A〜41Eの内面とにより、鉄心外周冷却通風路43a〜43eが形成されている。
【0078】
鉄心外周冷却通風路43a〜43dについてより具体的に説明すると、鉄心外周冷却通風路43a〜43dは、ステータ鉄心42の外周側に備えられるフレーム41の外周面とフレーム41の外周面の外周側に備えられている膨出ダクト41A〜41Dの内面との間に形成されており、軸方向一端側から他端側に冷却風の一部を導く。モータを軸方向から見た場合、鉄心外周冷却通風路43aはフレーム41の上側外周部と左側外周部との間のフレーム41の外周部に形成されている。鉄心外周冷却通風路43bは、フレーム41の左側外周部と下側外周部との間のフレーム41の外周部に形成されている。鉄心外周冷却通風路43cは、フレーム41の上側外周部と右側外周部との間のフレーム41の外周部に形成されている。鉄心外周冷却通風路43dは、フレーム41の右側外周部と下側外周部との間のフレーム41の外周部に形成されている。
【0079】
このような構成とすることで、膨出ダクト41A〜41Eの肉厚t1を一層薄くすることができる。
【0080】
なお、上記図4では、鉄心外周冷却通風路43d、膨出ダクト41D、フレーム部41dの関係を例示している。
【0081】
(第3の実施の形態)
図5は、本実施の形態に係るモータの例を示す縦断面図である。この図5は、下半分を省略した縦断面図である。
【0082】
図6は、本実施の形態に係るモータの例を示す横断面図である。この図6は、図5のVI−VI線に沿う横断面図である。
【0083】
本実施の形態では、上記図15及び図16で示すようなフレームレス構造のモータに鉄心外周冷却通風路を適用する例について説明する。
【0084】
断面アングル形状のダクト50A〜50Dは、両端側の円筒状の分割フレーム1A,1Bを相互に結合する継ぎ板としての機能を有する。ダクト50A〜50Dは、分割フレーム1A,1Bとステータ鉄心2との外周面に溶接固定される。鉄心外周冷却通風路51a〜51dは、ダクト50A〜50Dの内面とステータ鉄心2の外周面とにより形成される。
【0085】
ダクト50A〜50Dは、分割フレーム1A,1Bと溶接固定されているが、ステータ鉄心2の外周面とは溶接されなくてもよい。
【0086】
鉄心外周冷却通風路51a〜51dを形成するダクト50A〜50Dは、ステータ鉄心2の周方向と平行な断面における水平軸で表される車両の前後方向並びに垂直軸で表される車両の上下方向の斜め45°付近の位置などのような適当な据付余裕空間部に設けられており、上記図13において2点鎖線で表した据付スペースS内からはみ出さないように構成されている。
【0087】
ダクト50A〜50Dの外周側には、取付ノーズ15A〜15C及び置足20が設けられている。
【0088】
本実施の形態においては、鉄心外周冷却通風路51a〜51dを流通する冷却風によってステータ鉄心2の外周部を通風冷却できるため、フレームレス構造のモータでありながら、上記図15及び図16のようにステータ鉄心2を軸方向に貫通する多数の通風穴31を設ける必要がなく、その分、モータ出力を増大させることができる。
【0089】
(第4の実施の形態)
本実施の形態においては、ステータ鉄心の外周側に形成されている複数の鉄心外周冷却通風路の軸方向に垂直な断面(ステータ鉄心の周方向と平行な断面)の面積の関係について説明する。
【0090】
図7は、本実施の形態に係るモータの例を示す縦断面図である。この図7は、下半分を省略した縦断面図である。
【0091】
図8は、本実施の形態に係るモータの例を示す横断面図である。この図8は、図7のVIII−VIII線に沿う断面図である。
【0092】
本実施の形態の車両用通風冷却形回転電機は、図7に示すように、分割フレーム1Aとステータ鉄心押え3aとは、分割フレーム1Aとステータ鉄心押え3aとの間の嵌合部52Aにより接続され、分割フレーム1Bとステータ鉄心押え3bとは、分割フレーム1Bとステータ鉄心押え3bとの間の嵌合部52Bにより接続されている。
【0093】
鉄心外周冷却通風路51a〜51dは、分割フレーム1Aに形成されている案内ダクト1AA、ダクト50A、分割フレーム1Bに形成されている案内ダクト1BBにより形成されている。
【0094】
冷却風は、一端側の機内から案内ダクト1AAに流入し、鉄心外周冷却通風路51a〜51dを流通し、案内ダクト1BBから他端側の機内に流出する。
【0095】
さらに、本実施の形態において、鉄心外周冷却通風路51a〜51dのモータの軸方向に垂直な断面の面積は、冷却風導入口21から離れた位置にある通風路の方が冷却風導入口21に近い位置にある通風路よりも大きいとする。
【0096】
具体的には、モータを軸方向から見た場合におけるモータの回転軸を通る水平軸Jよりも上側に位置する鉄心外周冷却通風路51a,51cの通風断面積を、水平軸Jよりも下側に位置する鉄心外周冷却通風路51b,51dの通風断面積よりも小さくしている。
【0097】
冷却風導入口21が上側に設けられている場合において、冷却風は、モータの下側の鉄心外周冷却通風路51b,51dよりも、上側の鉄心外周冷却通風路51a,51cに多く流れる傾向にある。このため、下部のステータコイル4は、上部のステータコイル4と比べて冷却効果が低下する場合がある。また、上下の冷却風の流量のアンバランスにより、ロータバー10の冷却効果が影響を受け、冷却効果が低減する場合もある。
【0098】
しかしながら、本実施の形態に係るモータでは、鉄心外周冷却通風路51a〜51dについて、冷却風導入口21側である上側の鉄心外周冷却通風路51a,51cの断面積を、冷却風導入口21の逆側である下側の鉄心外周冷却通風路51b,51dの断面積よりも小さくすることで、ステータコイル4とロータバー10の冷却アンバランスが改善でき、効果的な冷却を行うことができる。
【0099】
本実施の形態において、鉄心外周冷却通風路51a〜51dにおける風量の調整は、ダクト50A〜50D部分の断面積で行うとしてもよく、分割フレーム1A,1Bの案内ダクト1AA,1BB部分の断面積で行うとしてもよい。
【0100】
なお、本実施の形態では、各鉄心外周冷却通風路51a〜51dは、入気側から排気側まで一定の断面積を持つとして説明している。しかしながら、モータの冷却バランスを均等化できればよいため、例えば上側の鉄心外周冷却通風路51a,51cと下側の鉄心外周冷却通風路51b,51dとの入気側の断面積については略等しくし、排気側の断面については下側の鉄心外周冷却通風路51b,51dの断面積の方が上側の鉄心外周冷却通風路51a,51cの断面よりも大きくしてもよい。また、本発明に基づく第3の実施の形態の車両用通風冷却形回転電機の上側の鉄心外周冷却通風路51a,51cの内部に遮断板等を取り付け、上側の鉄心外周冷却通風路51a,51cと下側の鉄心外周冷却通風路51b,51dとの間で冷却風の流量アンバランスを調整させるとしてもよい。遮断板を設置した場合には、上側の鉄心外周冷却通風路51a,51cの冷却効果を向上させることが可能な構成とすることもできる。
【0101】
(第5の実施の形態)
本実施の形態においては、上記第4の実施の形態の変形例について説明する。
【0102】
図9は、本実施の形態に係るモータの例を示す縦断面図である。この図9は、上記図7と同様の条件により記載されている。
【0103】
本実施の形態では、一端側のステータ鉄心押え53aと他端側のステータ鉄心押え53bとは、ステータ鉄心2とダクト50A〜50Dとを軸方向に支持する。
【0104】
分割フレーム1Aとステータ鉄心押え53aとは、分割フレーム1Aとステータ鉄心押え53aとの間の嵌合部54Aにより接続され、分割フレーム1Bとステータ鉄心押え53bとは、分割フレーム1Bとステータ鉄心押え53bとの間の嵌合部54Bにより接続されるとしてもよい。
【0105】
鉄心外周冷却通風路51a〜51dは、一端側のステータ鉄心押え53aに形成されている案内ダクト53AA、ダクト50A、他端側のステータ鉄心押え53bに形成されている案内ダクト53BBにより形成されている。
【0106】
冷却風は、一端側の機内から案内ダクト53AAに流入し、鉄心外周冷却通風路51a〜51dを流通し、案内ダクト53BBから他端側の機内に流出する。
【0107】
本実施の形態において、鉄心外周冷却通風路51a〜51dにおける風量の調整は、ダクト50A〜50D部分の断面積で行うとしてもよく、ステータ鉄心押え53a,53bの案内ダクト53AA,53BB部分の断面積で行うとしてもよい。
【0108】
なお、上記第4の実施の形態及び本実施の形態では、フレームレス構造のモータにおける鉄心外周冷却通風路51a〜51dの通過風量の調整を、鉄心外周冷却通風路51a〜51dの断面積を調整することにより行っている。しかしながら、フレームを具備するモータについても、同様に、鉄心外周冷却通風路43a〜43eの通過風量の調整を、鉄心外周冷却通風路43a〜43eの断面積により調整することができる。
【0109】
また、上記各実施の形態において、鉄心外周冷却通風路43a〜43e及び鉄心外周冷却通風路51a〜51dは、全て設けられている必要はなく、部分的に削除されていてもよい。
【0110】
また、上記各実施の形態では、モータが通風ファン22を備えた自己通風冷却形の回転電機の場合を例として説明しているが、機外のブロアで強制的に冷却風を機内に押し込んで冷却風を通風させる他力強制通風冷却形の回転電機についても同様に適用可能である。
【産業上の利用可能性】
【0111】
本発明は、回転電機の冷却機構の分野に有効である。
【符号の説明】
【0112】
1,41…フレーム、1a…端板、1aa…ハウジング、1AA,1BB,53AA,53BB…案内ダクト、2,42…ステータ鉄心、3a,3b,53a,53b…ステータ鉄心押え、4…ステータコイル、5…鏡蓋、6a,6b…軸受、7…シャフト、8…ロータ鉄心、9a,9b…ロータ鉄心押え、10…ロータバー、11短絡環短絡環、12…車体、13…台車梁、14…車軸、15A〜15C…取付ノーズ、16…カップリング、17a,17b…駆動歯車、18…車輪、19…レール、20…置足、21…冷却風導入口、22…通風ファン、23…排風口、24…たわみ風道、25…ダクト、26,31…通風穴、27…通風溝、30…継ぎ板、43a〜43e,51a〜51d…鉄心外周冷却通風路、50A〜50D…ダクト、52A,52B,54A,54B…嵌合部
【技術分野】
【0001】
本発明は、主に電車等の鉄道車両の主電動機として台車に設置される車両用通風冷却回転電機に関する。
【背景技術】
【0002】
特許文献1(特開平6−169548号公報)には、車両用通風冷却形回転電機(以下、単に「モータ」という)の一般的構造が開示されている。
【0003】
図10は、モータの組立状態の例を示す縦断面図(軸方向の断面図)である。
【0004】
図11は、図10のXI−XI線に沿う横断面図(軸方向に垂直な断面図)である。
【0005】
モータのフレーム1は円筒形である。フレーム1の内周面には、ステータ鉄心2がステータ鉄心押え3a,3bで両端から押え付けられ、取り付けられている。
【0006】
固定子は、ステータ鉄心2の内周面にスロットを介してステータコイル4を取り付けて構成される。
【0007】
固定子のフレーム1の一端に備えられている端板1a及びハウジング1aaと、フレーム1の他端に嵌合されている鏡蓋5とは、それぞれ軸受6a,6bを備えている。軸受6a,6bは、シャフト(回転子軸)7を回転自在に支持する。シャフト7のロータ鉄心8は、ロータ鉄心押え9a,9bで両端から押え付けられ、シャフト7に固着されている。
【0008】
ロータ鉄心8の外周面には、スロットを介してロータバー10が取り付けられている。ロータバー10の両端には、リング状の短絡環(エンドリング)11が溶着されている。これにより、カゴ形回転子が構成される。
【0009】
図12は、従来のモータの台車への取付状態の例を示す図であり、図13は、この図12のXIII−XIII線に沿う断面図である。
【0010】
図12及び図13に示すように、モータは、車両の車体12の床下の台車内の台車梁13と車軸14との間に配置される。モータは、フレーム1の外周に突出した取付ノーズ15A〜15C等を介して台車梁13等にボルト止めされ、取り付けられる。
【0011】
通電運転により回転子は回転する。回転子の回転力は、シャフト7の軸端に装着されているカップリング16を介して駆動歯車17a,17bに伝わる。回転力は、車軸14を駆動させ、左右の車輪18をレール19上で転動させて車両を走行させる。なお、フレーム1の外周下部には、一対の置足20が突設されている。
【0012】
このようなモータは、運転稼動時に発熱し、過熱しやすい。モータがある程度以上に加熱すると、コイル絶縁物の劣化が促進されて寿命が低下し、発熱体の強度が低下する。このため、回転電機内(以下、単に「機内」という)の温度上昇を抑えるために、冷却用の空気(以下、単に「冷却風」という)を流入させて冷却する必要がある。冷却方式には、自己通風冷却形と他力強制通風冷却形との2種類がある。
【0013】
上記図10及び図11に示すモータは、自己通風冷却形である。このモータにおいては、フレーム1の外周の軸方向一端側寄りに、冷却風導入口21が形成されている。反対側の軸方向他端側機内部には、シャフト7に通風ファン22が取り付けられている。また、フレーム1の外周に配列する状態で、多数の排風口23がフレーム1の他端側に形成されている。
【0014】
また、上記図13に示すように、冷却風導入口21は、たわみ風道24を介して車体12の床下側のダクト25に連結されている。
【0015】
運転稼動時に、通風ファン22は、シャフト7と一体に回転する。通風ファン22の吸引作用により、新鮮な冷却風は、ダクト25からたわみ風道24を介して冷却風導入口21より機内一端側に取入れられる。冷却風は、機内の各通風路を矢印のように流れ、ステータコイル4とロータバー10とを直接冷却する。また、冷却風は、ステータ鉄心2及びロータ鉄心8を介して間接的にステータコイル4とロータバー10とを冷却する。そして、冷却風は、排風口23から機外に排気される。
【0016】
なお、冷却風は、車体12の床下側のダクト25からたわみ風道24を介して機内に取入れる方式とは別に、冷却風導入口21上に図示しない通風濾過器を設け、この通風濾過器経由で外気を冷却風として機内に取入れる方式もある。
【0017】
他力強制通風冷却形のモータは、車体に設置されているブロアから冷却風をダクト25及びたわみ風道24を介して冷却風導入口21より強制的に機内一端側に押し込み、冷却風により機内の通風冷却を行い、冷却風を機外に排気する。
【0018】
自己通風冷却形のモータ又は他力強制通風冷却形のモータにおける機内の冷却通風路としては、ステータ鉄心2とロータ鉄心8との間のギャップG、ロータ鉄心8を軸方向に貫通するように設けた多数の通風穴26、ステータ鉄心2の外周部を冷却するために設けられておりフレーム1の内周面に軸方向にそって形成された複数の通風溝27等がある。冷却通風路に冷却風を通風させることにより、機内の略全域がバランスよく冷却される。
【0019】
近年、車両の保守の省力化の要求が高まり、車両の一編成あたりのモータの台数を減らすことにより、保守点検の際の回転電機の台車からの取り外しなどのような分解作業を極力軽減させる試みがなされている。
【0020】
この場合、少ないモータで現状と同等以上の車両性能を実現させる必要があるため、一台あたりのモータの出力をできるだけ増やすことが望まれる。加えて、加速性能、高速性能のアップなどの車両の高性能化対策のためにも、モータの大出力化が最大のニーズとなっている。
【0021】
上記のような種のモータの大出力化には、以下のような難点がある。
【0022】
上記図12及び図13に示すように、モータは、台車内の制約された狭い据付スペースSに納める必要がある。
【0023】
モータは、左右の車輪18間の減速歯車17a,17b及びカップリング16の設置スペースを除いた左右幅空間A、台車梁13と車軸14との間の車両の前後幅空間B、車体12の床下(ダクト25の下面)からレール19までの間の上下空間Cによって定まる範囲内に収める必要がある。製作公差、取付誤差、ばね撓み変位を考慮した余裕分a,b,c,dを車両の前後方向並びに上下方向に確保する必要がある。したがって、モータの大きさは、上記図13に示す2点鎖線で表される据付スペースS内に納まる大きさに制約される。
【0024】
この大きさについての制約を受けつつ従来以上にモータの出力を大きくするためには、モータの外径(直径)Dを変えることなくステータ鉄心2の外径Eを大きくしなければならない。
【0025】
この場合において、冷却通風路であるフレーム1内周面部分の複数の通風溝27の総断面積を現状より少なくすることは、ステータ鉄心2の外周部の通風冷却性能に影響を与え、異常な温度上昇の原因になり、妥当ではない。
【0026】
そこで、鉄心外周冷却通風路としての通風溝27のトータル断面積を変えることなくフレーム1の肉厚Tを薄くしてステータ鉄心2の外径Eを大きくする方法が考えられる。
【0027】
しかしながら、フレーム1の肉厚Tを薄くした場合、以下に説明するような問題が発生する場合がある。
【0028】
すなわち、図14(図11の一部拡大図)に示すように、フレーム1は、ステータ鉄心2の外周に、タガのように適当な締付け力Xにより締まりばめ嵌合し、ステータ鉄心2を固定支持している。このため、フレーム1には、締付け力Xと同等の反力Yが作用している。通風溝27のトータル断面積を変えることなくフレーム1の肉厚Tを現状より薄くすると、通風溝27外側の薄肉部がさらに薄くなって強度的に低下し、この薄肉部が反力Yにより周方向に引っ張られて矢印Z方向への変形が生じ、この変形によりフレーム1が緩んでステータ鉄心2に対する締付け力Xが極端に低下し、ステータ鉄心2の固定支持が困難になるという重大な問題が発生する。また、ステータ鉄心2の電磁振動がフレーム1を共振させて大きな騒音を発生する問題が生じる。
【0029】
図15は、フレームレス構造のモータの例を示す縦断面図である。この図15は、下半分を省略した縦断面図である。
【0030】
図16は、図15のXVI−XVI線に沿う横断面図である。
【0031】
このモータでは、ステータ鉄心2の外径E1をできるだけ大きくするために、外被部材であるフレームが一部削除されている。
【0032】
このフレームレス構造のモータでは、ステータ鉄心2の両端のステータ鉄心押え3a,3bの外側一部を軸方向にそれぞれ円筒状に延出し、分割フレーム1A,1Bとする。モータには、分割フレーム1Aからステータ鉄心2の一部外周を覆い、分割フレーム1Bに渡る継ぎ板30が溶接結合されている。
【0033】
継ぎ板30には、取付ノーズ15A,15B,15Cが突設されている。また、継ぎ板30には、置足20が突設されている。
【0034】
このモータはフレームレスであるため、ステータ鉄心2の外周冷却通風路として、ステータ鉄心2を軸方向に貫通する多数の通風穴31が直接ステータ鉄心2に設けられている。
【0035】
なお、上記図15及び図16の他の部分については、上記図10及び図11と同様であるため、説明を省略する。
【0036】
フレームレス構造のモータは、ステータ鉄心2の外周にフレームが備えられない。したがって、フレームが備えられない分だけ、ステータ鉄心2の外径E1を大きくしても、上記図13において2点鎖線で表した狭い据付スペースS内に納めることができる。
【0037】
しかしながら、このフレームレス構造のモータでは、ステータ鉄心2に直接多数の通風穴31が設けられるため、モータの出力は上記図10及び図11に示すモータより小さくなる場合がある。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0038】
【特許文献1】特開平6−169548号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0039】
以上のように、従来のモータにおいては、台車内の狭い据付スペースSに取り付けられることにより大きさの制約の観点、フレームの薄肉化に伴う強度の観点、機内の通風冷却性能の観点から、現状よりも大出力化を図ることが困難である。このため、台数の低減による保守の省力化、車両の高性能化などのニーズに応じることが困難である。
【0040】
本発明は、以上のような実情に鑑みてなされたもので、現状の据付スペースSに設置可能であり大出力化を実現し、効果的な冷却を行う車両用通風冷却回転電機を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0041】
本発明を実現するにあたって講じた具体的手段について以下に説明する。
【0042】
上記課題は、本態様に係る車両用通風冷却回転電機によって解決される。本態様に係る車両用通風冷却回転電機は、冷却風導入口から機内の軸方向一端側に冷却風を取入れ、冷却風を機内の他端側に通風させて排風口より機外に排気すると共に、冷却風導入口から機内に取入れた冷却風の一部をステータ鉄心の外周に形成されている鉄心外周冷却通風路に通風させる。鉄心外周冷却通風路は、少なくとも、ステータ鉄心の外周部に形成されている第1通風路と、冷却風導入口から第1通風路よりも離れた位置であって、ステータ鉄心の外周部に形成されている第2通風路とを具備する。第1通風路の軸方向に略垂直な断面の面積は、第2通風路の軸方向に略垂直な断面の面積よりも小さい。
【発明の効果】
【0043】
本発明においては、現状の据付スペースSに設置可能であり大出力化を実現し、効果的な冷却を行う車両用通風冷却回転電機を提供することができる。
【図面の簡単な説明】
【0044】
【図1】本発明の第1の実施の形態に係るモータの例を示す横断面図。
【図2】同実施の形態に係るモータの例を示す縦断面図。
【図3】ステータ鉄心と鉄心外周冷却通風路との間の位置関係の例を示す断面図。
【図4】本発明の第2の実施の形態に係るモータの例を示す縦断面図。
【図5】本発明の第3の実施の形態に係るモータの例を示す縦断面図。
【図6】同実施の形態に係るモータの例を示す横断面図。
【図7】本発明の第4の実施の形態に係るモータの例を示す縦断面図。
【図8】同実施の形態に係るモータの例を示す横断面図。
【図9】本発明の第5の実施の形態に係るモータの例を示す縦断面図。
【図10】従来のモータの組立状態の例を示す縦断面図。
【図11】モータの組立状態の例を示す横断面図。
【図12】モータの台車への取付状態の第1例を示す図。
【図13】モータの取付状態の第2例を示す図。
【図14】フレームとステータ鉄心との間に作用する力関係の例を示す図。
【図15】フレームレス構造のモータの例を示す縦断面図。
【図16】フレームレス構造のモータの例を示す横断面図。
【発明を実施するための形態】
【0045】
以下、図面を参照しながら本発明の実施の形態について説明する。なお、上記図10〜16及び以下の各図において同一の部分については同一の符号を付して説明を省略する。
【0046】
(第1の実施の形態)
図1は、本実施の形態に係るモータの例を示す横断面図である。
【0047】
図2は、本実施の形態に係るモータの例を示す縦断面図である。この図2は、下半分を省略した縦断面図であり、図1のII−II線に沿う断面図である。
【0048】
本実施の形態に係るモータのフレーム41は、円筒状であり、外径は上記従来のフレーム1と同様のDであるとする。フレーム41には、従来のフレーム1のように通風溝27は設けられていない。この通風溝27が設けられていない分だけ、フレーム41の肉厚tは、薄い状態となっている。フレーム41の内径は、従来のフレーム2の内径よりも大きくなる。このようにフレーム41の内径を大きくすることに応じて、ステータ鉄心42の外径E2を大きくする。ステータ鉄心42の外周面は、直接フレーム41の内周面に接合する。これにより、ステータ鉄心42とフレーム41とは、締付け固定された状態となる。
【0049】
ステータ鉄心42の外周部の通風冷却を行うために、モータには、ステータ鉄心42の周方向と平行な断面における水平軸で表される車両の前後方向並びに垂直軸で表される車両の上下方向の斜め45°付近の位置及び下部置足20相互間位置などのような適当な据付余裕空間部に鉄心外周冷却通風路43a〜43eを、それぞれ構成している。
【0050】
このモータでは、上記図13において2点鎖線で表した台車内の狭い据付スペースS内に支障なく納まるように、ステータ鉄心42の外周に備えられているフレーム41の周方向と平行な断面における水平軸で表される車両の前後方向並びに垂直軸で表される車両の上下方向の斜め45°付近の位置及び下部置足20相互間部位を軸方向に長くにわたって部分的に膨出して膨出ダクト41A〜41Eを形成し、この膨出ダクト41A〜41Eの内面とステータ鉄心42の外周面との間の空間を鉄心外周冷却通風路43a〜43eとする。鉄心外周冷却通風路43a〜43eの各両端は、機内の一端側と他端側とに内部連通している。冷却風導入口21より機内一端側に取入れられた冷却風の一部は、他端側に向けて流通する。
【0051】
本実施の形態では、上記図13における点鎖線で表した台車内の狭い据付スペースSからはみ出さない範囲内で大きな鉄心外周冷却通風路43a〜43eが形成される。このために、車両の前後方向及び上下方向の斜め45°付近の位置の膨出ダクト41A〜41Dについての軸方向から見た場合の断面は、ほぼ三角形状になるように、膨出ダクト41A〜41Dは形成される。
【0052】
膨出ダクト41A〜41Cは、台車への取付ノーズ15A〜15Cの一部又は全部を兼ねている。すなわち、膨出ダクト41A〜41Cは、取付ノーズ15A〜15Cと一体的に形成されている。
【0053】
ステータ鉄心42の下部の膨出ダクト41Eを軸方向から見た場合の断面は、ほぼU字形状になるように、膨出ダクト41Eは形成される。
【0054】
膨出ダクト41Eは、下部置足20の一部又は全部を兼ねている。すなわち、膨出ダクト41Eは、下部置足20と一体的に形成されている。
【0055】
フレーム41は、ステータ鉄心42の外周面に直接接合して締付け固定されている。このため、フレーム41は、かなり肉薄にしても、上記図14を用いて説明したような締付け強度の低下を招く変形が発生することを防止できる。本実施の形態では、フレーム41の肉厚tを従来のモータよりも通風溝27の溝深さ分以上に薄くすることが可能である。したがって、本実施の形態に係るモータでは、ステータ鉄心42の外径E2を従来のモータと比べてかなり大径とすることができ、モータ出力を増大可能である。
【0056】
フレーム41の鉄心外周冷却通風路43a〜43eを構成する膨出ダクト41A〜41Eは、上記図14を用いて説明したような締付け強度の低下を招く変形が発生しない程度の肉厚t1としている。本実施の形態では、t1>tの関係が成り立つとする。なお、膨出ダクト41A〜41C及び41Eは、取付ノーズ15A〜15C及び下部置足20が一種の補強リブの作用をなすため、肉厚t1をt以上厚くする必要がない場合もある。
【0057】
ここで、ステータ鉄心42と、鉄心外周冷却通風路43a〜43eとの間の位置関係について説明する。
【0058】
図3は、ステータ鉄心42と、鉄心外周冷却通風路43a〜43eとの間の位置関係の例を示す断面図である。
【0059】
この図3では、軸方向からステータ鉄心42と鉄心外周冷却通風路43a〜43eとを見た場合の断面図を表している。したがって、図3の左右方向は、上記の車両の前後方向となる。
【0060】
鉄心外周冷却通風路43aは、ステータ鉄心42の上側外周部P1と左側外周部P2との間であり、ステータ鉄心42の外周部に形成されている。
【0061】
鉄心外周冷却通風路43bは、ステータ鉄心42の左側外周部P2と下側外周部P3との間であり、ステータ鉄心42の外周部に形成されている。
【0062】
鉄心外周冷却通風路43cは、ステータ鉄心42の上側外周部P1と右側外周部P4との間であり、ステータ鉄心42の外周部に形成されている。
【0063】
鉄心外周冷却通風路43dは、ステータ鉄心42の右側外周部P4と下側外周部P3との間であり、ステータ鉄心42の外周部に形成されている。
【0064】
さらに、鉄心外周冷却通風路43a〜43dは、モータの回転軸を通り垂直軸と水平軸に対して略45度となる線L1,L2と、ステータ鉄心42の外周面とが交差する位置の近傍に形成されている。
【0065】
鉄心外周冷却通風路43eは、モータの軸方向から見た場合において、フレーム41の下側でこのモータの軸方向に互いに平行に設けられている2つの下部置足20の間であり、ステータ鉄心42の外周部に形成されている。
【0066】
上述したように、鉄心外周冷却通風路43a〜43eは、フレーム41とステータ鉄心42との間に形成される。
【0067】
上記のような構成を持つ車両用通風冷却形回転電機の作用について説明する。
【0068】
まず、モータの運転に伴って、シャフト7と一体に通風ファン22が回転し、この通風ファン22の吸引作用により新鮮な冷却風が冷却風導入口21より機内一端側に取入れられる。
【0069】
冷却風は、機内の通風路の一種であるステータ鉄心2とロータ鉄心8との間のギャップG、ロータ鉄心8の通風穴26を介して、機内他端側に向けて流通する。また、冷却風の一部は、機内の一端側から、ステータ鉄心2外周の各鉄心外周冷却通風路43a〜43eを介して、機内の他端側に向けて流通する。
【0070】
このような冷却風の機内一端側から機内他端側への流通により、機内のステータコイル4及びロータバー10は、直接通風冷却されると共に、ステータ鉄心2及びロータ鉄心8を介して間接的に冷却される。その後、冷却風は、排風口23より機外に排気される。本実施の形態では、機内各部が平均的に通風冷却作用を受け、各部の温度上昇が抑制される。
【0071】
また、本実施の形態では、鉄心外周冷却通風路43a〜43dが、ステータ鉄心2の外周方向と平行な断面の水平軸に対して斜め45°付近の位置に設けられている。また、鉄心外周冷却通風路43eは、下部置足20相互の間に設けられている。このように、鉄心外周冷却通風路43a〜43eは、据付余裕空間部にフレーム41を膨出させて構成されている。このため、モータは、上記図13の2点鎖線で示した据付スペースSから出ることがない。本実施の形態では、何ら支障なく台車内へのモータ据付を行うことができ、従来のモータのような通風溝27をフレーム2の内周面に形成する必要がない。これにより、フレーム41の肉厚tを締付け強度の低下を招くことなく薄肉化でき、その分ステータ鉄心2の外径E2を大径にし、従来のモータよりも大出力化を図ることができる。
【0072】
鉄心外周冷却通風路43a〜43eは、フレーム41を部分的に膨出させた膨出ダクト41A〜41Eで構成されているため、容易に形成可能である。膨出ダクト41A〜41C,41Eは、取付ノーズ15A〜15C,41E及び下部置足20と兼用されるため、取付ノーズ15A〜15C,41E及び下部置足20の形成も容易になる。取付ノーズ15A〜15C,41E及び下部置足20は、一種の補強リブとなるので、膨出ダクト41A〜41Eは、薄くしても十分な強度を得ることができる。
【0073】
すなわち、本実施の形態では、台車内の狭い据付スペースSに取り付け可能であり、十分な強度と機内の通風冷却性能を確保でき、ステータ鉄心42の外径を大きくすることができ、ステータ鉄心42の通風穴を省略可能であり、大出力化を実現でき、車両に設置されるモータ数を低減でき、保守の省力化、車両の性能の向上を実現できる。
【0074】
なお、本実施の形態において、鉄心外周冷却通風路43a〜43eは、ステータ鉄心42の周方向と平行な断面における水平軸で表される車両の前後方向並びに垂直軸で表される車両の上下方向の斜め45°付近の位置及び下部置足20相互間位置に形成されている。しかしながら、鉄心外周冷却通風路は、例えば上記図13に示すように車両にモータを搭載した場合における他の据付余裕空間部に形成するとしてもよい。具体的には、上記図13における車体12の底面(ダクト25下面)とステータ鉄心42の上部外周部との間の据付余裕空間部に、鉄心外周冷却通風路が配置されるとしてもよい。
【0075】
(第2の実施の形態)
本実施の形態では、上記第1の実施の形態の変形例について説明する。
【0076】
図4は、本実施の形態に係るモータの例を示す縦断面図であり、上記図2と同様の条件で示されている。
【0077】
本実施の形態に係るモータは、各鉄心外周冷却通風路43a〜43eの底面であるステータ鉄心42の外周面に、フレーム部41a〜41eを残した構成である。すなわち、上記第1の実施の形態では、ステータ鉄心42の外周面と膨出ダクト41A〜41Eの内面とにより、鉄心外周冷却通風路43a〜43eが形成されているが、本実施の形態では、ステータ鉄心42の外周面に備えられたフレーム部41〜41eの外周面と、膨出ダクト41A〜41Eの内面とにより、鉄心外周冷却通風路43a〜43eが形成されている。
【0078】
鉄心外周冷却通風路43a〜43dについてより具体的に説明すると、鉄心外周冷却通風路43a〜43dは、ステータ鉄心42の外周側に備えられるフレーム41の外周面とフレーム41の外周面の外周側に備えられている膨出ダクト41A〜41Dの内面との間に形成されており、軸方向一端側から他端側に冷却風の一部を導く。モータを軸方向から見た場合、鉄心外周冷却通風路43aはフレーム41の上側外周部と左側外周部との間のフレーム41の外周部に形成されている。鉄心外周冷却通風路43bは、フレーム41の左側外周部と下側外周部との間のフレーム41の外周部に形成されている。鉄心外周冷却通風路43cは、フレーム41の上側外周部と右側外周部との間のフレーム41の外周部に形成されている。鉄心外周冷却通風路43dは、フレーム41の右側外周部と下側外周部との間のフレーム41の外周部に形成されている。
【0079】
このような構成とすることで、膨出ダクト41A〜41Eの肉厚t1を一層薄くすることができる。
【0080】
なお、上記図4では、鉄心外周冷却通風路43d、膨出ダクト41D、フレーム部41dの関係を例示している。
【0081】
(第3の実施の形態)
図5は、本実施の形態に係るモータの例を示す縦断面図である。この図5は、下半分を省略した縦断面図である。
【0082】
図6は、本実施の形態に係るモータの例を示す横断面図である。この図6は、図5のVI−VI線に沿う横断面図である。
【0083】
本実施の形態では、上記図15及び図16で示すようなフレームレス構造のモータに鉄心外周冷却通風路を適用する例について説明する。
【0084】
断面アングル形状のダクト50A〜50Dは、両端側の円筒状の分割フレーム1A,1Bを相互に結合する継ぎ板としての機能を有する。ダクト50A〜50Dは、分割フレーム1A,1Bとステータ鉄心2との外周面に溶接固定される。鉄心外周冷却通風路51a〜51dは、ダクト50A〜50Dの内面とステータ鉄心2の外周面とにより形成される。
【0085】
ダクト50A〜50Dは、分割フレーム1A,1Bと溶接固定されているが、ステータ鉄心2の外周面とは溶接されなくてもよい。
【0086】
鉄心外周冷却通風路51a〜51dを形成するダクト50A〜50Dは、ステータ鉄心2の周方向と平行な断面における水平軸で表される車両の前後方向並びに垂直軸で表される車両の上下方向の斜め45°付近の位置などのような適当な据付余裕空間部に設けられており、上記図13において2点鎖線で表した据付スペースS内からはみ出さないように構成されている。
【0087】
ダクト50A〜50Dの外周側には、取付ノーズ15A〜15C及び置足20が設けられている。
【0088】
本実施の形態においては、鉄心外周冷却通風路51a〜51dを流通する冷却風によってステータ鉄心2の外周部を通風冷却できるため、フレームレス構造のモータでありながら、上記図15及び図16のようにステータ鉄心2を軸方向に貫通する多数の通風穴31を設ける必要がなく、その分、モータ出力を増大させることができる。
【0089】
(第4の実施の形態)
本実施の形態においては、ステータ鉄心の外周側に形成されている複数の鉄心外周冷却通風路の軸方向に垂直な断面(ステータ鉄心の周方向と平行な断面)の面積の関係について説明する。
【0090】
図7は、本実施の形態に係るモータの例を示す縦断面図である。この図7は、下半分を省略した縦断面図である。
【0091】
図8は、本実施の形態に係るモータの例を示す横断面図である。この図8は、図7のVIII−VIII線に沿う断面図である。
【0092】
本実施の形態の車両用通風冷却形回転電機は、図7に示すように、分割フレーム1Aとステータ鉄心押え3aとは、分割フレーム1Aとステータ鉄心押え3aとの間の嵌合部52Aにより接続され、分割フレーム1Bとステータ鉄心押え3bとは、分割フレーム1Bとステータ鉄心押え3bとの間の嵌合部52Bにより接続されている。
【0093】
鉄心外周冷却通風路51a〜51dは、分割フレーム1Aに形成されている案内ダクト1AA、ダクト50A、分割フレーム1Bに形成されている案内ダクト1BBにより形成されている。
【0094】
冷却風は、一端側の機内から案内ダクト1AAに流入し、鉄心外周冷却通風路51a〜51dを流通し、案内ダクト1BBから他端側の機内に流出する。
【0095】
さらに、本実施の形態において、鉄心外周冷却通風路51a〜51dのモータの軸方向に垂直な断面の面積は、冷却風導入口21から離れた位置にある通風路の方が冷却風導入口21に近い位置にある通風路よりも大きいとする。
【0096】
具体的には、モータを軸方向から見た場合におけるモータの回転軸を通る水平軸Jよりも上側に位置する鉄心外周冷却通風路51a,51cの通風断面積を、水平軸Jよりも下側に位置する鉄心外周冷却通風路51b,51dの通風断面積よりも小さくしている。
【0097】
冷却風導入口21が上側に設けられている場合において、冷却風は、モータの下側の鉄心外周冷却通風路51b,51dよりも、上側の鉄心外周冷却通風路51a,51cに多く流れる傾向にある。このため、下部のステータコイル4は、上部のステータコイル4と比べて冷却効果が低下する場合がある。また、上下の冷却風の流量のアンバランスにより、ロータバー10の冷却効果が影響を受け、冷却効果が低減する場合もある。
【0098】
しかしながら、本実施の形態に係るモータでは、鉄心外周冷却通風路51a〜51dについて、冷却風導入口21側である上側の鉄心外周冷却通風路51a,51cの断面積を、冷却風導入口21の逆側である下側の鉄心外周冷却通風路51b,51dの断面積よりも小さくすることで、ステータコイル4とロータバー10の冷却アンバランスが改善でき、効果的な冷却を行うことができる。
【0099】
本実施の形態において、鉄心外周冷却通風路51a〜51dにおける風量の調整は、ダクト50A〜50D部分の断面積で行うとしてもよく、分割フレーム1A,1Bの案内ダクト1AA,1BB部分の断面積で行うとしてもよい。
【0100】
なお、本実施の形態では、各鉄心外周冷却通風路51a〜51dは、入気側から排気側まで一定の断面積を持つとして説明している。しかしながら、モータの冷却バランスを均等化できればよいため、例えば上側の鉄心外周冷却通風路51a,51cと下側の鉄心外周冷却通風路51b,51dとの入気側の断面積については略等しくし、排気側の断面については下側の鉄心外周冷却通風路51b,51dの断面積の方が上側の鉄心外周冷却通風路51a,51cの断面よりも大きくしてもよい。また、本発明に基づく第3の実施の形態の車両用通風冷却形回転電機の上側の鉄心外周冷却通風路51a,51cの内部に遮断板等を取り付け、上側の鉄心外周冷却通風路51a,51cと下側の鉄心外周冷却通風路51b,51dとの間で冷却風の流量アンバランスを調整させるとしてもよい。遮断板を設置した場合には、上側の鉄心外周冷却通風路51a,51cの冷却効果を向上させることが可能な構成とすることもできる。
【0101】
(第5の実施の形態)
本実施の形態においては、上記第4の実施の形態の変形例について説明する。
【0102】
図9は、本実施の形態に係るモータの例を示す縦断面図である。この図9は、上記図7と同様の条件により記載されている。
【0103】
本実施の形態では、一端側のステータ鉄心押え53aと他端側のステータ鉄心押え53bとは、ステータ鉄心2とダクト50A〜50Dとを軸方向に支持する。
【0104】
分割フレーム1Aとステータ鉄心押え53aとは、分割フレーム1Aとステータ鉄心押え53aとの間の嵌合部54Aにより接続され、分割フレーム1Bとステータ鉄心押え53bとは、分割フレーム1Bとステータ鉄心押え53bとの間の嵌合部54Bにより接続されるとしてもよい。
【0105】
鉄心外周冷却通風路51a〜51dは、一端側のステータ鉄心押え53aに形成されている案内ダクト53AA、ダクト50A、他端側のステータ鉄心押え53bに形成されている案内ダクト53BBにより形成されている。
【0106】
冷却風は、一端側の機内から案内ダクト53AAに流入し、鉄心外周冷却通風路51a〜51dを流通し、案内ダクト53BBから他端側の機内に流出する。
【0107】
本実施の形態において、鉄心外周冷却通風路51a〜51dにおける風量の調整は、ダクト50A〜50D部分の断面積で行うとしてもよく、ステータ鉄心押え53a,53bの案内ダクト53AA,53BB部分の断面積で行うとしてもよい。
【0108】
なお、上記第4の実施の形態及び本実施の形態では、フレームレス構造のモータにおける鉄心外周冷却通風路51a〜51dの通過風量の調整を、鉄心外周冷却通風路51a〜51dの断面積を調整することにより行っている。しかしながら、フレームを具備するモータについても、同様に、鉄心外周冷却通風路43a〜43eの通過風量の調整を、鉄心外周冷却通風路43a〜43eの断面積により調整することができる。
【0109】
また、上記各実施の形態において、鉄心外周冷却通風路43a〜43e及び鉄心外周冷却通風路51a〜51dは、全て設けられている必要はなく、部分的に削除されていてもよい。
【0110】
また、上記各実施の形態では、モータが通風ファン22を備えた自己通風冷却形の回転電機の場合を例として説明しているが、機外のブロアで強制的に冷却風を機内に押し込んで冷却風を通風させる他力強制通風冷却形の回転電機についても同様に適用可能である。
【産業上の利用可能性】
【0111】
本発明は、回転電機の冷却機構の分野に有効である。
【符号の説明】
【0112】
1,41…フレーム、1a…端板、1aa…ハウジング、1AA,1BB,53AA,53BB…案内ダクト、2,42…ステータ鉄心、3a,3b,53a,53b…ステータ鉄心押え、4…ステータコイル、5…鏡蓋、6a,6b…軸受、7…シャフト、8…ロータ鉄心、9a,9b…ロータ鉄心押え、10…ロータバー、11短絡環短絡環、12…車体、13…台車梁、14…車軸、15A〜15C…取付ノーズ、16…カップリング、17a,17b…駆動歯車、18…車輪、19…レール、20…置足、21…冷却風導入口、22…通風ファン、23…排風口、24…たわみ風道、25…ダクト、26,31…通風穴、27…通風溝、30…継ぎ板、43a〜43e,51a〜51d…鉄心外周冷却通風路、50A〜50D…ダクト、52A,52B,54A,54B…嵌合部
【特許請求の範囲】
【請求項1】
冷却風導入口から機内の軸方向一端側に冷却風を取入れ、前記冷却風を前記機内の他端側に通風させて排風口より機外に排気すると共に、前記冷却風導入口から前記機内に取入れた前記冷却風の一部をステータ鉄心の外周に形成されている鉄心外周冷却通風路に通風させる車両用通風冷却回転電機において、
前記鉄心外周冷却通風路は、少なくとも、
前記ステータ鉄心の外周部に形成されている第1通風路と、
前記冷却風導入口から前記第1通風路よりも離れた位置であって、前記ステータ鉄心の外周部に形成されている第2通風路と
を具備し、
前記第1通風路の軸方向に略垂直な断面の面積は、前記第2通風路の軸方向に略垂直な断面の面積よりも小さい、ことを特徴とする車両用通風冷却回転電機。
【請求項2】
請求項1記載の車両用通風冷却回転電機において、
前記第1通風路と前記第2通風路は、前記一端側の第1案内ダクト部分と、前記他端側の第2案内ダクト部分と、前記第1案内ダクト部分と前記第2案内ダクト部分との間のダクト部分とを具備し、
前記第1通風路の前記第1案内ダクト部分の断面積は、前記第2通風路の前記第1案内ダクト部分の断面積よりも小さい、ことを特徴とする車両用通風冷却回転電機。
【請求項3】
請求項1記載の車両用通風冷却回転電機において、
前記第1通風路と前記第2通風路は、前記一端側の第1案内ダクト部分と、前記他端側の第2案内ダクト部分と、前記第1案内ダクト部分と前記第2案内ダクト部分との間のダクト部分とを具備し、
前記第1通風路の前記ダクト部分の断面積は、前記第2通風路の前記ダクト部分の断面積よりも小さい、ことを特徴とする車両用通風冷却回転電機。
【請求項1】
冷却風導入口から機内の軸方向一端側に冷却風を取入れ、前記冷却風を前記機内の他端側に通風させて排風口より機外に排気すると共に、前記冷却風導入口から前記機内に取入れた前記冷却風の一部をステータ鉄心の外周に形成されている鉄心外周冷却通風路に通風させる車両用通風冷却回転電機において、
前記鉄心外周冷却通風路は、少なくとも、
前記ステータ鉄心の外周部に形成されている第1通風路と、
前記冷却風導入口から前記第1通風路よりも離れた位置であって、前記ステータ鉄心の外周部に形成されている第2通風路と
を具備し、
前記第1通風路の軸方向に略垂直な断面の面積は、前記第2通風路の軸方向に略垂直な断面の面積よりも小さい、ことを特徴とする車両用通風冷却回転電機。
【請求項2】
請求項1記載の車両用通風冷却回転電機において、
前記第1通風路と前記第2通風路は、前記一端側の第1案内ダクト部分と、前記他端側の第2案内ダクト部分と、前記第1案内ダクト部分と前記第2案内ダクト部分との間のダクト部分とを具備し、
前記第1通風路の前記第1案内ダクト部分の断面積は、前記第2通風路の前記第1案内ダクト部分の断面積よりも小さい、ことを特徴とする車両用通風冷却回転電機。
【請求項3】
請求項1記載の車両用通風冷却回転電機において、
前記第1通風路と前記第2通風路は、前記一端側の第1案内ダクト部分と、前記他端側の第2案内ダクト部分と、前記第1案内ダクト部分と前記第2案内ダクト部分との間のダクト部分とを具備し、
前記第1通風路の前記ダクト部分の断面積は、前記第2通風路の前記ダクト部分の断面積よりも小さい、ことを特徴とする車両用通風冷却回転電機。
【図1】
【図2】
【図3】
【図4】
【図5】
【図6】
【図7】
【図8】
【図9】
【図10】
【図11】
【図12】
【図13】
【図14】
【図15】
【図16】
【図2】
【図3】
【図4】
【図5】
【図6】
【図7】
【図8】
【図9】
【図10】
【図11】
【図12】
【図13】
【図14】
【図15】
【図16】
【公開番号】特開2011−177017(P2011−177017A)
【公開日】平成23年9月8日(2011.9.8)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2011−70881(P2011−70881)
【出願日】平成23年3月28日(2011.3.28)
【分割の表示】特願2010−140948(P2010−140948)の分割
【原出願日】平成16年12月8日(2004.12.8)
【出願人】(000003078)株式会社東芝 (54,554)
【Fターム(参考)】
【公開日】平成23年9月8日(2011.9.8)
【国際特許分類】
【出願日】平成23年3月28日(2011.3.28)
【分割の表示】特願2010−140948(P2010−140948)の分割
【原出願日】平成16年12月8日(2004.12.8)
【出願人】(000003078)株式会社東芝 (54,554)
【Fターム(参考)】
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