説明

車両監視装置

【課題】電動車両のバッテリの充電中において、電動車両に近づいた人に起因するいたずら又は感電などの不都合な事態の発生を回避できること。
【解決手段】車両監視装置1は、充電中の電動車両9に人が近づいたことを検知する人検知センサとして機能する障害物センサ31と、車両制御ユニット30とを備える。車両制御ユニット30は、障害物センサ31の検知信号が所定の警報条件満たす場合に、予め定められた第1警報処理を実行する。第1警報処理は、電動車両9が備える警音器32を通じて警笛を鳴らす処理又は通信ユニット33,34を通じて外部の端末へ注意喚起情報を送信する処理を含む。注意喚起情報には、警報条件の成立中にカメラ35で得られる映像データが含められる。車両制御ユニット30は、通信ユニット33,34を通じて端末から警報指令が受信された際に、警音器32を通じて警笛を鳴らす処理を実行する。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、電動車両において外部から充電ポートを通じて供給される電力によりバッテリが充電されているときに電動車両を監視する車両監視装置に関する。
【背景技術】
【0002】
昨今、電気自動車及びハイブリッド自動車など、大容量のバッテリを備える電動車両が普及しつつある。電動車両のバッテリは、蓄電の容量が大きいため、現状では、一般家庭における出力の小さな電源が用いられた場合には十数時間、出力の大きな特別な電源が用いられた場合でも数十分から数時間程度の長い充電時間を必要とする。そのため、電動車両の所有者は、通常、電動車両から離れた場所で充電の完了を待つ。
【0003】
従って、充電中の電動車両において、例えば、子供又は不審者などの人が、電動車両にいたずらすること又は電動車両に触れて感電することを未然に防ぐことが重要となっている。さらに、電動車両に接続された給電用ケーブルが、他の電動車両の充電ポートへ無断で接続され、これにより電力が盗まれることを防止することも重要となっている。
【0004】
例えば、特許文献1には、電動車両において、制御装置が、所有者が所持する車両キーとの無線通信が不可能である状況下で、電動車両の充電ポートに対する充電用ケーブルの接続状態の変化が検出された場合に警報を出力するという従来技術が示されている。
【0005】
また、特許文献2には、家屋に配置された認証装置が、充電用ケーブルを通じて電動車両の制御部と電力線通信(PLC)を行うことにより、車両のIDコードの取得及び認証処理と、認証が失敗したときの警報処理とを実行するという従来技術が示されている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0006】
【特許文献1】特開2009−38872号公報
【特許文献2】特開2009−171642号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0007】
しかしながら、特許文献1及び特許文献2に示される従来技術は、電動車両の充電中において、人が電動車両又は充電用ケーブルに触れる前に、いたずら又は感電などの不都合の発生を回避することができないという問題点を有している。
【0008】
また、仮に、充電中の電動車両の周辺を撮影するカメラと、所有者の待機場所においてカメラの映像を表示するモニタとが設けられたとしても、所有者がモニタの映像を監視し続けることは非常に難しい。
【0009】
本発明は、電動車両のバッテリの充電中において、電動車両に近づいた人に起因するいたずら又は感電などの不都合な事態の発生を回避できることを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0010】
上記の目的を達成するために、第1発明に係る車両監視装置は、電動車両において外部から充電ポートを通じて供給される電力によりバッテリが充電されているときに電動車両を監視する装置であり、以下に示される各構成要素を備える。
(1)第1の構成要素は、充電中の電動車両に人が近づいたことを検知する人検知部である。
(2)第2の構成要素は、人検知部の検知信号に基づく所定の警報条件が成立したか否かを判別する警報条件判別部である。
(3)第3の構成要素は、警報条件判別部により警報条件が成立したと判別された際に予め定められた第1警報処理を実行する第1警報処理部である。
【0011】
第2発明に係る車両監視装置は、第1発明に係る車両監視装置の一例である。第2発明に係る車両監視装置において、第1警報処理は、電動車両が備える警音器を通じて警笛を鳴らす第1警笛処理を含む。
【0012】
第3発明に係る車両監視装置は、第1発明又は第2発明に係る車両監視装置の一例であり、外部の端末と通信を行う通信部をさらに備える。そして、第3発明に係る車両監視装置において、第1警報処理は、通信部を通じて端末へ注意喚起情報を送信する注意喚起処理を含む。
【0013】
第4発明に係る車両監視装置は、第3発明に係る車両監視装置の一例であり、電動車両の周辺の映像を撮影するカメラをさらに備える。そして、第4発明に係る車両監視装置において、注意喚起処理は、警報条件の成立中にカメラで得られる映像情報を含む注意喚起情報を送信する処理である。
【0014】
第5発明に係る車両監視装置は、第3発明又は第4発明に係る車両監視装置の一例であり、注意喚起処理の後に通信部を通じて端末から警報指令が受信された際に、電動車両が備える警音器を通じて警笛を鳴らす第2警笛処理を実行する第2警報処理部をさらに備える。
【0015】
第6発明に係る車両監視装置は、第1発明から第3発明のいずれかに係る車両監視装置の一例であり、電動車両に障害物が近づいたことを検知する障害物検知部を備える。そして、第6発明に係る車両監視装置において、障害物検知部が人検知部としても兼用される。
【0016】
第7発明に係る車両監視装置は、第6発明に係る車両監視装置の一例であり、第1電源回路と第2電源回路とをさらに備える。第1電源回路は、電源ポジションが所定の操作に応じて電源OFFのポジションとは異なるポジションに切り替えられているときにのみ電動車両内で得られる電力を入力して出力電力を生成する電源回路である。第2電源回路は、外部から充電ポートを通じて供給される電力を入力して出力電力を生成する電源回路である。そして、第7発明に係る車両監視装置において、障害物検知部は、第1電源回路及び第2電源回路の両方の出力電力が供給される。
【0017】
第8発明に係る車両監視装置は、第1発明から第7発明のいずれかに係る車両監視装置の一例である。第8発明に係る車両監視装置において、警報条件は、充電中の電動車両に人が近づいている状況が予め定められた時間以上継続したことである。
【発明の効果】
【0018】
第1発明から第8発明までのいずれかの発明によれば、電動車両のバッテリの充電中において、所定の警報条件が成立する態様で電動車両に近づく人が検知された場合に、電動車両の所有者又は電動車両に近づいた人などに対する警報処理が実行される。従って、不審者又は子供などの人が、充電中の電動車両又は充電用ケーブルに触れる前の警報処理の実行が可能となる。その結果、充電中の電動車両に近づいた人に起因するいたずら又は感電などの不都合な事態の発生を回避できる。
【0019】
また、第2発明によれば、充電中の電動車両に近づいた人に対して警笛が自動的に鳴らされることにより、所有者が電動車両を監視していなくても、いたずら又は感電などの不都合な事態を防止する処理が迅速に実行される。
【0020】
また、第3発明によれば、充電中の電動車両に人が近づいたために注意が必要となったタイミングで、注意喚起情報が電動車両の所有者の端末へ送信される。従って、電動車両の所有者は、充電中の電動車両を常時監視する手間を必要としない。また、所有者は、電動車両の周辺の状況を確認した上で必要な対処を行うことができる。
【0021】
また、第4発明によれば、電動車両の周辺の映像情報を含む注意喚起情報が電動車両の所有者の端末へ送信される。そのため、所有者は、電動車両の位置まで移動することなく電動車両の周辺の状況を確認することができ、無駄なく必要な対処を行うことができる。
【0022】
また、第5発明によれば、端末の操作者、即ち、電動車両の所有者は、注意喚起情報が受信された後に電動車両の周辺の状況を確認した上で、端末を操作して電動車両から警笛を鳴らすことができる。そのため、所有者は、無駄なく必要なときだけ電動車両の周辺の人に警笛による警告を行うことができる。
【0023】
また、第6発明によれば、電動車両が元々備える障害物検知部が、人検知部としても兼用されるため、充電中の電動車両を監視するためのセンサの追加は必要なく、コスト面で好適である。
【0024】
また、第7発明によれば、電源ポジションが電源OFFのポジション以外のポジション(アクセサリーポジションなど)に設定されているときは、障害物検知部は、バッテリから電力を得て動作し、障害物を検知する。一方、電動車両の充電中においては、電源ポジションが電源OFFのポジションに設定され、障害物検知部は、外部から電力を得て動作し、人検知部として機能する。その結果、電動車両の充電中以外において、電源ポジションが電源OFFのポジションに設定されているときに、障害物検知部が無駄な暗電流を消費することが防止される。
【0025】
また、第8発明によれば、警報処理は、充電中の電動車両に人が近づいている状況が一定時間継続した場合にのみ実行される。そのため、人が充電中の電動車両の周辺を単に通過するごとに警報処理が実行されるようなことはなく、無駄な警報処理の実行が防止される。
【図面の簡単な説明】
【0026】
【図1】本発明の実施形態に係る車両監視装置1を含む車両充電システムのブロック図である。
【図2】車両監視装置1の車両監視処理の手順の一例を示すフローチャートである。
【図3】車両監視装置1における障害物センサ、通信機器及びカメラへの給電系統の一例を示す回路図である。
【発明を実施するための形態】
【0027】
以下、添付の図面を参照しながら、本発明の実施形態について説明する。以下の実施形態は、本発明を具体化した一例であって、本発明の技術的範囲を限定するものではない。
【0028】
まず、図1を参照しつつ、本発明の実施形態に係る車両監視装置1の構成について説明する。車両監視装置1は、電気自動車及びハイブリッド自動車など、大容量のバッテリ25を備える電動車両9に搭載され、電動車両9の充電ポート21を通じて外部から供給される電力により、電動車両9のバッテリ25が充電されているときに電動車両9を監視する装置である。
【0029】
電動車両9は、バッテリ25の充電が行われる際に、給電用のプラグソケットであるコンセント12が近傍に設置された駐車スペースに駐車される。図1に示される例は、電動車両9が、家屋に隣接する駐車スペースに駐車され、バッテリ25が、交流電源11に接続された家屋のコンセント12を通じて充電される様子を示している。コンセント12及び電動車両9の充電ポート21は、給電ケーブル13により接続される。即ち、給電ケーブル13の両端に設けられた電源側プラグ131及び車両側プラグ132は、それぞれコンセント12及び充電ポート21に接続される。なお、複数のコンセント12が、家屋ごとに設けられた不図示の配電盤を介して交流電源11と繋がっており、給電ケーブル13は、複数のコンセント12のうちの1つに接続される。
【0030】
また、図1に示されるように、電動車両9には、充電装置として、充電ポート21、リレー22、充電回路23、電流計24及び車両制御ユニット30が搭載されている。また、電動車両9に搭載された車両監視装置1は、障害物センサ31、警音器32、無線通信ユニット33、電力線通信ユニット34及び車両制御ユニット30を含む。即ち、車両制御ユニット30は、充電装置と車両監視装置1とで兼用される。
【0031】
また、障害物センサ31は、基本的には、電動車両9の動作時に、電動車両9に障害物が近づいたことを検知するセンサである。しかしながら、バッテリ25の充電中においては、障害物センサ31は、電動車両9に人が近づいたことを検知するセンサとして機能する。また、警音器32は、一般に、クラクション又はホーンと称され、運転者が警笛用の操作部を操作した際に警告音を発する機器である。この警音器32は、車両監視装置1の構成要素としても機能する。
【0032】
<充電ポート>
充電ポート21は、電動車両9の一部に設けられ、外部の交流電源11に繋がる給電ケーブル13の端部に設けられた車両側プラグ132が接続される部分である。車両側プラグ132が充電ポート21に接続されることにより、給電ケーブル13は、充電ポート21を通じてリレー22と電気的に接続される。
【0033】
また、充電ポート21は、車両側プラグ132が正常に接続されたときとそうでないときとでON/OFFが切り替わる不図示のマイクロスイッチを備える。このマイクロスイッチの検出信号は、車両制御ユニット30に入力される。
【0034】
<リレー>
リレー22は、充電ポート21と充電回路23との間に電気的に接続されている。このリレー22は、車両制御ユニット30から入力される制御信号に従って、充電ポート21から充電回路23への電力の伝送経路の接続と遮断とを切り替えるスイッチである。
【0035】
<充電回路>
充電回路23は、充電ポート21を通じて外部の交流電源11から伝送される交流電力をバッテリ25の仕様に合った直流電力へ変換し、その直流電力をバッテリ25に供給することにより、バッテリ25の充電を行う回路である。例えば、充電回路23は、交流電力を整流する整流回路、又は交流電圧をバッテリ25の仕様に合った直流電圧へ変換するAC/DCコンバータ回路などである。
【0036】
<電流計>
電流計24は、充電ポート21から充電回路23への電力の伝送経路に流れる電流を検出する回路である。電流計24の検出信号は、車両制御ユニット30へ入力される。
【0037】
<バッテリ>
電動車両9が備えるバッテリ25は、電動車両9の走行のための動力源である電動機及び電動車両9に搭載された各種電装部品に電力を供給する充電池である。バッテリ25は、例えば、ニッケル水素電池又はリチウムイオン電池などである。
【0038】
<車両制御ユニット>
車両制御ユニット30は、電動車両9に設けられた各種センサの検出結果に基づいて各種の情報処理及びデバイスの制御を行う回路である。車両制御ユニット30は、制御プログラムが記憶されたROM(Read Only Memory)などのメモリと、そのメモリに記憶されたプログラムを実行することにより、各種の演算を行うMPU(Micro Processor Unit)又はDSP(Digital Signal Processor)などのプロセッサとを備えている。
【0039】
例えば、車両制御ユニット30は、電流計24及び充電ポート21のマイクロスイッチ各々の検出結果を入力し、それら検出結果を用いてリレー22を制御するとともに、警音器32を通じた警報出力を行う。また、車両制御ユニット30は、バッテリ25の充電中における障害物センサ31の検出結果に基づいて第1の警報処理を実行する。この第1の警報処理には、警音器32を通じて警笛を鳴らす一次警告音出力処理と、無線通信ユニット33及び電力線通信ユニット34各々を通じて不図示の無線端末及び家屋の監視端末40各々に対して注意喚起情報を送信する処理とが含まれる。さらに、車両制御ユニット30は、無線通信ユニット33及び電力線通信ユニット34各々を通じて受信された指令に応じて第2の警報処理を実行する。この第2の警報処理は、警音器32を通じて警笛を鳴らす二次警告音出力処理である。
【0040】
<障害物センサ(人検知センサ)>
障害物センサ31は、電動車両9における外縁を形成する部分の1箇所又は複数箇所に設けられ、電動車両9に障害物が近づいたことを検知するセンサである。例えば、複数の障害物センサ31が、電動車両9の前方のバンパ及び後方のバンパの各々に設けられている。この障害物センサ31は、電動車両9の近くに障害物が存在することを運転者に報知するために用いられる。
【0041】
例えば、障害物センサ31は、超音波センサ、赤外線センサ又は光センサなどであり、超音波、赤外線又は光などをセンシング媒体として、所定範囲内に存在する障害物までの距離を検出するセンサである。障害物センサ31の検出信号は、車両制御ユニット30に入力される。
【0042】
車両制御ユニット30は、障害物を検知した障害物センサ31の位置と、その障害物センサ31の検出信号が示す障害物までの距離とに応じて、不図示の表示ランプの点灯及び不図示の警報ブザーの音響出力を制御する。これにより、障害物の概略の方向及び距離が、表示ランプ及び警報ブザーによって運転者に報知される。なお、障害物センサ31が人検知センサとして利用される方法は、後述する。
【0043】
<警音器>
警音器32は、不図示の警笛用の操作部が操作されたときに警笛を鳴らす装置である。さらに、警音器32は、車両制御ユニット30からの音響出力指令に従って、複数の音響パターンの警笛を鳴らす装置でもある。
【0044】
<無線通信ユニット>
無線通信ユニット33は、例えば、携帯電話機と同等の無線通信機である。従って、無線通信ユニット33は、電動車両9の利用者が所持する無線端末である携帯電話機との間で無線通信を行うことができる。例えば、無線通信ユニット33は、利用者が所持する携帯電話機との間で電子メールを送信及び受信する機能を備えている。さらに、無線通信ユニット33は、利用者が所持する携帯電話機から受信した電子メールのデータを車両制御ユニット30へ伝送するインターフェースも備えている。
【0045】
<電力線通信ユニット>
電力線通信ユニット34は、電力線を通信回線としてデータ通信を行う装置である。車両監視装置1における電力線通信ユニット34は、給電ケーブル13を通信回線として、家屋のコンセント12に接続された監視端末40と通信を行う。
【0046】
<カメラ>
カメラ35は、電動車両9の周辺、特に、充電ポート21の周辺の映像を撮影する装置であり、例えば、CCDカメラ又はCMOSカメラなどである。図1に示されるように、充電ポート21が、電動車両9の後方の面(リアグリル)に配置されている場合、運転席において電動車両9の後方を監視するために設けられたリアカメラが、車両監視装置1におけるカメラ35として兼用される。カメラ35は、車両制御ユニット30により制御され、カメラ35により撮影された映像のデータは、車両制御ユニット30へ伝送される。
【0047】
<障害物センサなどへの給電系統>
次に、図4に示される回路図を参照しつつ、障害物センサ31、無線通信ユニット33、電力線通信ユニット34及びカメラ35への給電系統の一例について説明する。以下、障害物センサ31、無線通信ユニット33、電力線通信ユニット34及びカメラ35を監視用機器(31,33−35)と総称する。
【0048】
図4に示される例では、監視用機器(31,33−35)は、第1電源回路251及び第2電源回路252の両方の出力電力が供給される。第1電源回路251は、電源ポジションが電源OFFのポジションとは異なるポジションに切り替えられているときにのみ、電動車両9内で得られる電力を入力して出力電力を生成する回路である。一方、第2電源回路252は、外部の交流電源11から充電ポート21を通じて供給される電力を入力して出力電力を生成する回路である。
【0049】
電源ポジションは、車両キーの操作又は電源ポジション切り替えボタンの操作に応じて切り替えられる複数段階の通電状態である。電源ポジションには、例えば、ほとんどの電装機器に対する通電が停止され、最も省電力の低い状態である電源OFFのポジションと、オーディオ装置など、走行系の機器以外の電装機器が動作可能な状態となるアクセサリポジションと、走行系の機器を含む全ての電装機器が動作可能な状態となるイグニッションONのポジションとが含まれる。
【0050】
第1電源回路251は、走行系の機器が稼働状態であるときに、走行中においてはオルタネータなどの発電機から給電され、走行停止中においてはバッテリ25から給電される。そして、第1電源回路251から出力される電力は、ヒューズ261及びダイオード271を経て、監視用機器(31,33−35)に供給される。
【0051】
一方、第2電源回路252は、バッテリ25の充電中において、外部の交流電源11から給電ケーブル13及び充電ポート21を通じて給電される。そして、第2電源回路252から出力される電力は、ヒューズ262及びダイオード272を経て、監視用機器(31,33−35)に供給される。
【0052】
図3に示される電源系統によれば、電源ポジションが電源OFFのポジション以外のポジションに設定されているときは、監視用機器(31,33−35)は、バッテリ25から電力を得て動作する。一方、バッテリ25の充電中においては、電源ポジションが電源OFFのポジションに設定され、監視用機器(31,33−35)は、外部から電力を得て動作する。その結果、電動車両9の充電中以外において、電源ポジションが電源OFFのポジションに設定されているときに、監視用機器(31,33−35)が、無駄な暗電流を消費することが防止される。
【0053】
<監視端末>
監視端末40は、利用者により監視及び操作される端末であり、家屋に配置された複数のコンセント12のうちの1つに接続される。監視端末40は、電源プラグ41、電力線通信ユニット42、制御回路43、モニタ44、ブザー45及び警報ボタン46を備える。
【0054】
電源プラグ41は、家屋のコンセント12に接続されるコネクタである。監視端末40は、電源プラグ41を通じて交流電源11から電力を得る。電力線通信ユニット42は、電力線を通信回線としてデータ通信を行う装置である。監視端末40における電力線通信ユニット42は、家屋内の電力配線及び給電ケーブル13を通信回線として、車両監視装置1の電力線通信ユニット34と通信を行う。
【0055】
モニタ44は、例えば、液晶表示パネルなどの映像表示装置であり、車両監視装置1から電力線通信ユニット42を通じて得られたカメラ35の映像データに基づく映像を表示する。ブザー45は、注意喚起情報が、車両監視装置1から電力線通信ユニット42を通じて受信された場合に警報音を出力する機器である。警報ボタン46は、利用者によって操作されるボタンであり、警報ボタン46に対する操作結果は、制御回路43に入力される。
【0056】
制御回路43は、制御プログラムが記憶されたROMなどのメモリと、そのメモリに記憶されたプログラムを実行することにより、各種の演算を行うMPU又はDSPなどのプロセッサとを備えた回路である。制御回路43は、注意喚起情報が、車両監視装置1から電力線通信ユニット42を通じて受信された場合に、ブザー45を通じて警報音を出力する。さらに、制御回路43は、注意喚起情報に含まれる映像データに基づく映像信号をモニタ44に出力する。
【0057】
また、制御回路43は、車両監視装置1から注意喚起情報が受信された後、警報ボタン46に対する操作を検知したときに、電力線通信ユニット42を通じて、車両監視装置1に対して警報指令を送信する。その際、制御回路43は、車両監視装置1から受信した注意喚起情報に含まれる送信IDを警報指令に含める。警報指令は、車両監視装置1に対し、警音器32を通じて警笛を鳴らすことを指示するコマンドである。
【0058】
<充電制御>
次に、車両制御ユニット30による充電制御の一例について説明する。電動車両9の初期状態において、リレー22は経路遮断(OFF)の状態であり、充電ポート21から充電回路23への電力の伝送経路は電気的に遮断されている。
【0059】
バッテリ25の充電が開始される前において、まず、車両制御ユニット30は、給電ケーブル13の車両側プラグ132が充電ポート21に対して正常に接続されているかどうかを判別する。この判別は、充電ポート21に設けられたマイクロスイッチの検出信号に基づいて行われる。
【0060】
そして、車両側プラグ132が充電ポート21に対して正常に接続されたことが検出されると、車両制御ユニット30は、リレー22に対し、電力の伝送経路の接続用の制御信号(ON信号)を出力する。これにより、充電回路23によるバッテリ25の充電が開始される。また、充電回路23は、バッテリ25がフル充電されたことを検出し、その検出結果を車両制御ユニット30に通知する。車両制御ユニット30は、充電回路23によってバッテリ25がフル充電されたことが検出された場合に、リレー22に対して経路遮断用の制御信号(OFF信号)を出力する。また、車両制御ユニット30は、予め定められた充電中断条件が成立したことを検知すると、リレー22に対して経路遮断用の制御信号(OFF信号)を出力する。これらにより、バッテリ25の充電が終了する。充電中断条件は、例えば、車両側プラグ132が充電ポート21に対して正常に接続されていないことが検出されたこと、及び、電流計24によって予め定められた許容範囲から外れる電流が検出されたことなどである。そして、車両制御ユニット30は、リレー22が経路接続状態(ON状態)であるときに、バッテリ25の充電中であると判別する。
【0061】
<車両監視処理>
次に、図2に示されるフローチャートを参照しつつ、車両監視装置1の車両制御ユニット30による車両監視処理の手順の一例について説明する。以下の説明において、S1〜S9は処理手順の識別符号である。
【0062】
車両監視処理において、まず、車両制御ユニット30は、電動車両9の状態が、バッテリ25の充電中の状態であるか否かを監視する(S1)。バッテリ25の充電中であるか否かの判別方法の例は、前述した通りである。そして、車両制御ユニット30は、バッテリ25の充電中において、以下に示すステップS2〜ステップS9の処理を繰り返す。
【0063】
バッテリ25の充電中において、まず、車両制御ユニット30は、障害物センサ31の検出信号を入力する(S2)。さらに、車両制御ユニット30は、障害物センサ31の検出値が予め定められた警報条件を満たすか否かを判別する(S3)。
【0064】
警報条件は、例えば、充電中の電動車両9に人が近づいている状況が、予め設定された時間以上継続したことである。また、車両制御ユニット30は、例えば、バッテリ25の充電中において、障害物センサ31の検出値が、予め定められた近接範囲から外れた値からその近接範囲内の値へ変化した後、その近接範囲内の値を維持する場合に、電動車両9に人が近づいている状況であると判別する。また、警報条件は、充電中の電動車両9に人が近づいている状況が、予め定められた頻度で発生したこと、などであることも考えられる。なお、障害物センサ31は、検出対象が人であるか人以外の物であるかを区別できないが、車両監視装置1は、停車中の電動車両9に近づいた対象は人であるとみなす。
【0065】
そして、障害物センサ31の検出値が警報条件を満たすと判別された場合、車両制御ユニット30は、処理を後述するステップS4〜S7へ移行させる。一方、障害物センサ31の検出値が警報条件を満たさないと判別された場合、車両制御ユニット30は、処理を後述するステップS8へ移行させる。
【0066】
障害物センサ31の検出値が警報条件を満たす場合、車両制御ユニット30は、警音器32を通じて警笛を鳴らす一次警報音出力処理を実行する(S4:第1警笛処理)。この一次警報音出力処理では、例えば、警笛が、軽い警告を表すように比較的小さい音量でごく短時間だけ出力される。
【0067】
続いて、車両制御ユニット30は、利用者の無線端末及び監視端末40へ送信する注意喚起情報を識別する送信IDを自動設定し、その送信IDを車両制御ユニット30が備えるメモリに記録する(S5)。
【0068】
さらに、車両制御ユニット30は、無線通信ユニット33及び電力線通信ユニット34各々を通じて、注意喚起情報を利用者の無線端末及び監視端末40へ送信する(S7)。その際、車両制御ユニット30は、ステップS5で設定された送信IDと、ステップS6において警報条件の成立中にカメラ35で得られた映像データと、を注意喚起情報に含める。例えば、車両制御ユニット30は、無線通信ユニット33を通じて、注意喚起情報を電子メールのデータとして利用者の無線端末へ送信する。利用者の無線端末のメールアドレスは、予め車両制御ユニット30のメモリに記録される。
【0069】
また、車両制御ユニット30は、バッテリ25の受電中において、利用者の無線端末又は監視端末40から、警報指令が受信されたか否かを監視する(S8)。利用者の無線端末からの警報指令は、例えば、無線端末において注意喚起情報として受信された電子メールに対する返信メールとして、無線端末から車両監視装置1へ送信される。また、監視端末40からの警報指令は、警報ボタン46に対する操作に応じて、制御回路43から電力線通信ユニット42を通じて車両監視装置1へ送信される。
【0070】
そして、警報指令が受信されない場合には、車両制御ユニット30は、処理を前述したステップS1へ戻す。一方、警報指令が受信された場合には、車両制御ユニット30は、警音器32を通じて警笛を鳴らす二次警報音出力処理を実行する(S9:第2警笛処理)。この二次警報音出力処理では、例えば、警笛が、重度の警告を表すように比較的大きな音量で比較的長い時間出力される。ステップS9の処理の終了後、車両制御ユニット30は、処理を前述したステップS1へ戻す。
【0071】
以上に示した処理を実行する車両監視装置1によれば、電動車両9のバッテリ25の充電中において、所定の警報条件が成立する態様で電動車両9に近づく人が検知された場合に、電動車両9の所有者又は電動車両に近づいた人などに対する警報処理が実行される(S4,S7,S9)。従って、不審者又は子供などの人が、充電中の電動車両9又は給電ケーブル13に触れる前の警報処理の実行が可能となる。その結果、充電中の電動車両9に近づいた人に起因するいたずら又は感電などの不都合な事態の発生を回避できる。
【0072】
また、ステップS4において、充電中の電動車両9に近づいた人に対して警笛が自動的に鳴らされることにより、所有者が電動車両9を監視していなくても、いたずら又は感電などの不都合な事態を防止する処理が迅速に実行される。
【0073】
また、ステップS7において、充電中の電動車両9に人が近づいたために注意が必要となったタイミングで、注意喚起情報が所有者の無線端末及び監視端末40へ送信される。従って、電動車両9の所有者は、充電中の電動車両9を常時監視する手間を必要としない。また、所有者は、電動車両9の周辺の状況を確認した上で必要な対処を行うことができる。しかも、カメラ35の映像データが注意喚起情報に含まれるため、所有者は、電動車両9の位置まで移動することなく電動車両9の周辺の状況を確認することができ、無駄なく必要な対処を行うことができる。
【0074】
また、無線端末又は監視端末40の操作者、即ち、電動車両9の所有者は、注意喚起情報が受信された後に電動車両9の周辺の状況を確認した上で、無線端末又は監視端末40を操作して電動車両9から警笛を鳴らすことができる(S9)。そのため、所有者は、無駄なく必要なときだけ電動車両9の周辺の人に警笛による警告を行うことができる。
【0075】
また、電動車両9が元々備える障害物センサ31が、人検知センサとしても兼用されるため、充電中の電動車両9を監視するためのセンサの追加は必要なく、コスト面で好適である。
【0076】
また、充電中の電動車両9に人が近づいている状況が一定時間継続した場合にのみ警報処理(S4,S7)が実行されるため、人が充電中の電動車両9の周辺を単に通過するごとに警報処理が実行されるようなことはなく、無駄な警報処理の実行が防止される。
【0077】
以上に示した実施形態では、一次警報音出力処理(S4)と注意喚起情報の送信処理(S7)との両方が、第1警報処理として実行され。しかしながら、それらのうちの一方のみが第1警報処理として実行されることも考えられる。
【0078】
また、注意喚起情報の送信処理(S7)が行われる場合に、注意喚起情報にカメラの映像データ及び送信IDの一方又は両方を含めることは、必須の事項ではない。同様に、警報指令の受信(S8)及び二次警報音出力処理(S9)が行われない実施形態も考えられる。また、注意喚起情報の送信処理(S7)が行われる場合に、注意喚起情報の送信先が、無線端末及び監視端末40のうちの一方のみであることも考えられる。その場合、無線通信ユニット33及び電力線通信ユニット34のうちの一方は省略可能である。
【0079】
また、車両監視装置1が、充電中の電動車両9に近づく人を検知する専用の人検知センサを備えることも考えられる。同様に、車両監視装置1が、充電中の電動車両9に近づく人に警笛を鳴らすためのブザーなどの専用の警音器を備えることも考えられる。
【符号の説明】
【0080】
1 車両監視装置
9 電動車両
11 交流電源
12 コンセント
13 給電ケーブル
21 充電ポート
22 リレー
23 充電回路
24 電流計
25 バッテリ
30 車両制御ユニット
31 障害物センサ(人検知センサ)
32 警音器
33 無線通信ユニット
34 電力線通信ユニット
35 カメラ
40 監視端末
41 電源プラグ
42 電力線通信ユニット
43 制御回路
44 モニタ
45 ブザー
46 警報ボタン
131 電源側プラグ
132 車両側プラグ
251 第1電源回路
252 第2電源回路
261,262 ヒューズ
271,272 ダイオード
S1〜S9 処理手順(ステップ)

【特許請求の範囲】
【請求項1】
電動車両において外部から充電ポートを通じて供給される電力によりバッテリが充電されているときに前記電動車両を監視する車両監視装置であって、
充電中の前記電動車両に人が近づいたことを検知する人検知部と、
前記人検知部の検知信号に基づく所定の警報条件が成立したか否かを判別する警報条件判別部と、
前記警報条件判別部により前記警報条件が成立したと判別された際に予め定められた第1警報処理を実行する第1警報処理部と、を備えることを特徴とする車両監視装置。
【請求項2】
前記第1警報処理は、前記電動車両が備える警音器を通じて警笛を鳴らす第1警笛処理を含む、請求項1に記載の車両監視装置。
【請求項3】
外部の端末と通信を行う通信部をさらに備え、
前記第1警報処理は、前記通信部を通じて前記端末へ注意喚起情報を送信する注意喚起処理を含む、請求項1又は請求項2に記載の車両監視装置。
【請求項4】
前記電動車両の周辺の映像を撮影するカメラをさらに備え、
前記注意喚起処理は、前記警報条件の成立中に前記カメラで得られる映像情報を含む前記注意喚起情報を送信する処理である、請求項3に記載の車両監視装置。
【請求項5】
前記注意喚起処理の後に前記通信部を通じて前記端末から警報指令が受信された際に、前記電動車両が備える警音器を通じて警笛を鳴らす第2警笛処理を実行する第2警報処理部をさらに備える請求項3又は請求項4に記載の車両監視装置。
【請求項6】
前記電動車両に障害物が近づいたことを検知する障害物検知部を備え、
前記障害物検知部が前記人検知部としても兼用される、請求項1から請求項5のいずれかに記載の車両監視装置。
【請求項7】
電源ポジションが所定の操作に応じて電源OFFのポジションとは異なるポジションに切り替えられているときにのみ前記電動車両内で得られる電力を入力して出力電力を生成する第1電源回路と、
外部から前記充電ポートを通じて供給される電力を入力して出力電力を生成する第2電源回路と、をさらに備え、
前記障害物検知部は、前記第1電源回路及び前記第2電源回路の両方の出力電力が供給される、請求項6に記載の車両監視装置。
【請求項8】
前記警報条件は、充電中の前記電動車両に人が近づいている状況が予め定められた時間以上継続したことである、請求項1から請求項7のいずれかに記載の車両監視装置。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【公開番号】特開2012−39776(P2012−39776A)
【公開日】平成24年2月23日(2012.2.23)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2010−178327(P2010−178327)
【出願日】平成22年8月9日(2010.8.9)
【出願人】(395011665)株式会社オートネットワーク技術研究所 (2,668)
【出願人】(000183406)住友電装株式会社 (6,135)
【出願人】(000002130)住友電気工業株式会社 (12,747)
【Fターム(参考)】