説明

車両運動制御装置

【課題】車両に横運動が発生していない状態においても、ドライバフィーリングよく車両を加減速する車両運動制御装置を提供する。
【解決手段】車両運動制御装置において、自車両前方のカーブ形状を取得するカーブ形状取得手段と、自車両の位置を取得する自車位置取得手段と、そのカーブ形状及びその自車両の位置に基づいて、車両に発生させる前後加速度指令値を演算する車両運動制御演算手段と、を有し、車両運動制御演算手段は、自車両がカーブ前からカーブ進入し、カーブ曲率が一定、もしくは最大になる地点まで走行する際に、複数の異なる負の前後加速度指令値を演算する。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
車両の運動状態が好適になるよう車両を加減速する車両運動制御装置に関する。
【背景技術】
【0002】
従来、ナビゲーションシステムのカーブ情報や旋回時の横加速度から、車両に発生する横加速度が設定値よりも過大となる際に減速を行うシステムが知られている(例えば特許文献1)。
【0003】
このような装置では、カーブを通過する際に発生する横加速度の大きさが設定値以上にならないように、予め設定された横加速度設定値と自車前方のカーブ曲率からカーブ走行時の目標車両速度を設定し、前記目標車両速度と実際の車両速度から、必要な減速度を作成している。このような減速度の作成方法は、車両がカーブを旋回走行可能な限界速度を超過してカーブに進入する場合、路外への逸脱を抑制する上で有効である。
【0004】
しかし、この設定横加速度を旋回可能な限界横加速度ではなく、ドライバが通常旋回時に許容するであろう横加速度に設定し、カーブ前での減速制御を実行した場合、必ずしもドライバの減速フィーリングにあった減速になるとは限らない。この一因として、上述の目標車両速度による減速度作成方法では、カーブ進入前の総減速量(減速度の積分値)は規定できるが、減速度の時間変化を規定できないことがあげられる。
【0005】
仮にこのカーブ前の減速度が一定となるように減速制御をした場合、カーブや車両速度によってはドライバの減速フィーリングに合わない可能性がある。またカーブ毎にこの減速度の時間変化を設定しようとした場合、莫大な適合工数と膨大なデータが必要となる。
【0006】
ドライバの減速フィーリングにあった加減速度の時間変化を規定する方法として、ドライバ操作により発生する横加加速度に基づく加減速度の作成方法が提案されている(例えば特許文献2,非特許文献1)。この方法により、カーブ毎に減速度の時間変化を設定することなくスキルドライバと同様の加減速を行うことができる。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0007】
【特許文献1】特開2009−51487号公報
【特許文献2】特開2008−285066号公報
【非特許文献1】自動車技術会論文集Vol39,No.3,2008
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0008】
しかし横加加速度に基づく加減速度の作成方法は、車両に横運動が発生した際に、その横運動と連係した加減速度の作成方法であり、カーブ進入前、直線路での減速のような、車両に横運動が発生していない状態での減速度を設定することはできない。
【0009】
本発明の目的は、上記のような事情に鑑みてなされたものであり、車両に横運動が発生していない状態においても、ドライバフィーリングよく車両を加減速する車両運動制御装置を提供することである。
【課題を解決するための手段】
【0010】
上記目的を達成するために、本発明の車両運動制御装置は、自車両前方のカーブ形状を取得するカーブ形状取得手段と、自車両の位置を取得する自車位置取得手段と、カーブ形状及び自車両の位置に基づいて、車両に発生させる前後加速度指令値を演算する車両運動制御演算手段と、を有し、車両運動制御演算手段は、自車両進行方向を正とする前後加速度指令値において、自車両がカーブ前からカーブに進入し、カーブ曲率が一定、もしくは最大になる地点まで走行する際に、複数の異なる負の前後加速度指令値を演算する構成とする。
【0011】
また、自車両前方のカーブ形状を取得するカーブ形状取得手段と、自車両の位置を取得する自車位置取得手段と、カーブ形状及び自車両の位置に基づいて、車両に発生させる前後加速度指令値を演算する車両運動制御演算手段と、を有し、車両運動制御演算手段は、自車両進行方向を正とする前後加速度指令値において、自車両がカーブ前からカーブに進入し、カーブ曲率が一定、もしくは最大になる地点まで走行する際に、負の前後加速度指令値を演算し、負の前後加速度指令値は、前後加速度の時間変化である前後加加速度が、減速開始直後以外にカーブ進入前からカーブ曲率が一定、もしくは最大になる期間において増減される構成とする。
【発明の効果】
【0012】
本発明は、車両に横運動が発生していない状態においても、ドライバフィーリングよく車両を加減速する車両運動制御装置を提供できる。
【図面の簡単な説明】
【0013】
【図1】本発明に係る車両運動制御装置のカーブ前での前後加速度変化を示した概念図である。
【図2】本発明に係る車両運動制御装置の自車両と前方注視点の関係を示した概念図である。
【図3】本発明に係る車両運動制御装置の横加速度推定値とカーブ遠方での前後加速度指令値の関係を示す図である。
【図4】本発明に係る車両運動制御装置の前方注視点までの距離との前方注視点の移動速度の関係を示す図である。
【図5】本発明に係るカーブ曲率,速度,前後加速度の時間変化を示す図である。
【図6】本発明に係る車両運動制御装置の第一の実施形態を示す図である。
【図7】図6の車両運動制御装置のフローチャートを示す図である。
【図8】図6の車両運動制御装置の自車位置とノード点位置を示す概念図である。
【図9】図6の車両運動制御装置の距離とカーブ曲率,カーブ曲率変化の関係図である。
【図10】図6の車両運動制御装置のカーブ曲率,カーブ曲率変化と、前後加速度の時間変化を示す図である。
【図11】本発明に係る車両運動制御装置の第二の実施形態を示す図である。
【図12】図11の車両運動制御装置のフローチャートを示す図である。
【図13】図11の車両運動制御装置の自車位置とノード点位置の関係を示す概念図である。
【図14】図11の車両運動制御装置の前後加速度の時間変化を示す図である。
【図15】本発明に係る車両運動制御装置の第三の実施形態の一例を示す図である。
【図16】本発明に係る車両運動制御装置の第三の実施形態の他例を示す図である。
【図17】本発明に係る車両運動制御装置の第四の実施形態を示す図である。
【図18】本発明に係る車両運動制御装置の第五の実施形態のフローチャートを示す図である。
【図19】本発明に係る車両運動制御装置の第五の実施形態のカーブ曲率,カーブ曲率変化の関係図である。
【図20】本発明に係る車両運動制御装置の第五の前方注視点までの距離との前方注視点の移動速度の関係を示す図である。
【図21】本発明に係る車両運動制御装置の第五の前方注視点までの距離との前方注視点位置でのカーブ曲率の時間変化制限値の関係を示す図である。
【図22】本発明に係る車両運動制御装置の第五のカーブ曲率,速度,前後加速度,前後加速度の時間変化を示す図である。
【発明を実施するための形態】
【0014】
図1に本発明によるカーブ前での前後加速度変化の概念図を示す。
【0015】
図1のaおよびa′がそれぞれ従来技術による前後加速度,前後加加速度、bおよびb′がそれぞれ本発明による前後加速度,前後加加速度である。
【0016】
図1に示すように、従来技術では車両がカーブ前のある地点に達した時間Aからカーブ進入開始の時間Bまでの間、一定の減速となる。この結果、車両速度が高い条件ではドライバがどの程度のカーブ曲率かを明確に認識する前に強い減速度が発生する可能性があり、結果、旋回時に所定の横加速度となっていたとしても、カーブ手前に過度に減速したという感じを受ける。
【0017】
本発明では、前記時間Aからカーブ曲率が一定になる時間Cまで前後加速度が変化し、自車位置がカーブ遠方である時の区間Dにおける、カーブ曲率に基づく減速から、自車位置がカーブ近傍である時の区間Eにおける、カーブ曲率の時間変化による減速へと移行する。この結果、減速開始から減速度が最大となるまでの区間Fにおいて、減速開始直後の区間Gとカーブ近傍での減速へ移行する区間Hの2区間において、前後加加速度の増減が発生するという特徴をもつ。
【0018】
これにより、カーブ遠方にてドライバが“カーブがあるから減速が必要”と認識したことによる減速から、カーブ近傍にてドライバがカーブの曲率変化を認識し、“曲率変化が大きいからもう少し減速が必要”といった、カーブ曲率の時間変化に応じた減速へと移行することができ、ドライバフィーリングにあった減速が可能となる。
【0019】
(カーブ曲率およびカーブ曲率変化に基づく前後加速度指令値の演算方法)
実施形態の説明に先立ち、本発明の理解が容易になるよう、以下、図2を用いてカーブ曲率、およびカーブ曲率変化に基づく前後加速度指令値の演算方法について説明する。なお本明細において、前後加速度は加速側が正、減速側が負であり、減速度は減速側が正となる値である。図2に示すように、自車両が車両速度Vにて破線で示す走行コースを走行するシーンを考える。この時ドライバは自車前方の走行コースの形状を見て加減速を行うと考えられる。この時ドライバの見ている点を疑似的に表現した点として、自車両進行方向に前方注視点を設定し、この位置のカーブ曲率κPP、カーブ曲率変化dκPP/dxとする。ここで前方注視点は、自車両前方のコース上にあって、自車両からある距離Lpp離れた点であり、Lppは車両速度Vに予め設定される時間Tppを積算して得られる値である。またカーブ曲率κPPはカーブの方向によらず0以上の値とし、カーブ曲率半径が十分大きければ、カーブ曲率κPPを0とする。車両速度Vのままで前方注視点の位置へ進入すると考えた場合、発生するであろう横加速度推定値GyESTおよび横加速度の時間変化である横加加速度推定値dGyESTは、それぞれ以下の式(1)(2)で与えられる。ここで横加速度推定値GyESTは、式(1)からわかるように、右旋回,左旋回によらず、常に0以上の値となる。
【0020】
【数1】

【0021】
【数2】

【0022】
ここで自車位置がカーブ近傍にあり、車両から前方注視点までの距離が短い条件では、ドライバは上述の横加加速度に基づく加減速度の作成方法(特許文献2,非特許文献1)と同様のアルゴリズムで加減速すると仮定すると、横加加速度推定値dGyESTに基づく前後加速度指令値GxREQは以下の式(3)で与えられる。
【0023】
【数3】

【0024】
xyは比例定数であり、予め設定される値である。ここで式(2)の第二項

の影響が第一項

と比べ十分小さいとし、式(2)を式(3)に代入すると以下の式(4)が得られる。
【0025】
【数4】

【0026】
このように前方注視点におけるカーブ曲率の時間変化(dκPP/dt)に基づいた前後加速度指令値が得られる。更に(dκPP/dt)は式(5)のように変形することができる。
【0027】
【数5】

【0028】
ここで(dx/dt)は前方注視点の移動速度VPPであるため、式(4)はVPPを用いて以下の式(6)で与えられる。
【0029】
【数6】

【0030】
これによりカーブ近傍における前後加速度指令値が作成できる。
【0031】
一方、自車位置がカーブ遠方にて、車両から前方注視点までの距離が長い条件では、ドライバはカーブ曲率変化のような詳細な情報を把握できず、漠然としたカーブ曲率に応じて減速を行っていると考えられる。この時の前後加速度指令値GxREQfarは、例えば上述の式(1)により得られた横加速度推定値GyESTを用いて、図3に示すように、横加速度推定値GyESTに応じてある横加速度設定値GyLMT0からGyLMT1まで前後加速度指令値GxREQfarが最小でGxREQfar_minとなるように減少(減速度としては増加)するように作成してもよい。また自車両から遠方の前方注視点までの距離をLfarとし、ある設定横加速度GySETを用いて、前後加速度指令値GxREQfarを以下の式(7)で与えてもよい。ここでmin(A,B)はAとBの内どちらか小さい値を選択する関数であり、max(A,B)はAとBの内どちら大きい方を選択する関数である。
【0032】
【数7】

【0033】
ここでLfarは、0より大きい値であれば、予め設定される値であっても、車両速度Vに予め設定される時間Tppを積算して得られる値であってもよい。またGySET、およびGxREQfar_minは予め設定される値であっても、路面摩擦係数取得手段やドライバによる設定手段を備える構成であれば、路面摩擦係数やドライバによる設定値に応じて変化する値であってもよい。
【0034】
またCxは予め設定される値であっても、ドライバによるアクセル操作等に応じて変化する値であってもよい。GxREQfarの作成方法はこれらに限定するものではないが、GxREQfarによる減速度は、カーブ近傍での前後加速度GxREQによる減速度以下となるように作成する。
【0035】
以上のようにして得られたカーブ近傍およびカーブ遠方の前後加速度指令に基づいて、最終的な前後加速度指令値を作成することで、図1bに示したようにカーブ遠方(区間D)のカーブ曲率による減速から、カーブ近傍(区間E)のカーブ曲率変化による減速へと減速度が増加する前後加速度を発生させることができる。
【0036】
また上述のように自車位置がカーブ近傍の場合と、カーブ遠方の場合で前後加速度指令を別々に作成するのではなく、前記式(6)における前方注視点の移動速度VPPをカーブまでの距離で変化させることにより、自車位置がカーブ遠方にある時の減速からカーブ近傍での減速へと変化させてもよい。例えば前方注視点でのカーブ曲率κPPがある値κPPlmt以上となった場合、図4に示すように、前方注視距離LppκがLppκ_lmtよりも大きい領域では、前方注視点の移動速度VPPをVPPminとし、自車両がカーブに近づき、前方注視距離Lppκ_nearで車両速度Vとなるように、前方注視距離Lppκが小さくなるに応じて前方注視点の移動速度VPPを増加させる。
【0037】
ここでLppκ_lmt,Lppκ_nearは、Lppκ_lmtがLppκ_near以上となるように、またVPPminは0以上、かつ車両速度V以下となるよう予め設定される値である。
【0038】
これは、自車位置がカーブ遠方で、ドライバが漠然とカーブを認識しているような状態では、ドライバの視線の移動速度が小さく、カーブに近づき、ドライバがカーブにそって視線を移動させるようになるに応じて視線の移動速度が増加するという行動を、前方注視点の移動速度の形で表現したものである。
【0039】
これにより、図5に示すように、自車位置でのカーブ曲率がκvとなるコースを走行した場合、前方注視点でのカーブ曲率κpp、前方注視点の移動速度VPPは図5に示すように変化し、この結果、カーブ遠方での小さな減速度から、カーブが近づくにつれて徐々に減速度を増加させることができる。
【0040】
(発明を実施するための実施形態1)
以下、図6〜図10を用いて、本発明の第1の実施形態による車両運動制御装置の構成及び動作について説明する。
【0041】
最初に、図6を用いて、本発明の第1の実施形態による車両運動制御装置の構成について説明する。
【0042】
図6は、本発明の第1の実施形態による車両運動制御装置の構成を示すシステムブロック図である。
【0043】
本実施形態の車両運動制御装置1は車両に搭載されるものであり、自車両前方のカーブ形状を取得するカーブ形状取得手段2と、自車位置を取得する自車位置取得手段3と、前記カーブ形状取得手段2と前記自車位置取得手段3により得られた情報に基づいて車両に発生させる前後加速度を演算する車両運動制御演算手段4を備える。また前記車両運動制御演算手段4の演算結果は、前後加速度発生手段5に送られ、車両に前後加速度を発生可能なアクチュエータの駆動を行う。
【0044】
カーブ形状取得手段2としては、自車両が走行するコースの地図情報からカーブ形状を取得する方法であっても、路車間通信により自車両進行方向のカーブ情報を取得する方法であっても、車車間通信により自車両進行方向の前方を走行する車両から、カーブ情報を取得する方法であっても、撮像手段により自車両前方のカーブ形状を取得する方法であってもよい。また地図情報取得手段、路車間通信手段、もしくは車車間通信手段、もしくは撮像手段との通信によりカーブ形状情報を取得する方法であってもよい。
【0045】
自車位置取得手段3としては、グローバルポジショニングシステム(GPS)により自車両の座標から自車両前方のカーブに対する自車位置を取得する方法であっても、路車間通信により自車両前方のカーブに対する自車位置を取得する方法であっても、撮像手段により自車両前方もしくは周囲、もしくはその両方の画像を取得し、自車両前方のカーブに対する自車位置を取得する方法であってもよい。またGPS、もしくは路車間通信手段、もしくは撮像手段との通信によりカーブに対する自車位置を取得する方法であってもよい。
【0046】
ここでカーブ形状取得手段2および自車位置取得手段3として、複数の方法を備えていてもよい。例えばカーブ形状取得手段2として地図情報および撮像手段によりカーブ形状情報を取得する手段を備え、自車位置取得手段3として、GPSおよび撮像手段により自車位置を取得する手段を備えていてもよい。複数の方法を組合せることで、カーブ遠方の情報は地図情報、およびGPSによるカーブ形状情報および自車位置情報を用い、カーブ近傍では前記地図情報、およびGPSによるカーブ形状情報および自車位置情報に加え、撮像手段によるカーブ形状情報および自車位置情報を用いることで、より精度のよいカーブ形状情報および自車位置情報が得られる。
【0047】
また、GPSによる自車位置情報を取得困難である際に、撮像手段によりカーブ形状情報、および自車位置情報を取得することで、前後加速度制御に必要なカーブ形状情報、および自車位置情報を取得することができる。逆に撮像手段ではカーブ形状情報、および自車位置情報が取得困難な状況では、GPSおよび地図情報によりカーブ形状情報、および自車位置情報を取得することで、前後加速度制御に必要なカーブ形状情報、および自車位置情報を取得することができる。
【0048】
前後加速度発生手段5として、エンジンのスロットル開度を制御することで前後加速度を発生させるエンジン、もしくはモータの駆動トルクを制御することで前後加速度を発生させるモータ、もしくは動力を各車輪に伝達する際の変速比を変えることで前後加速度を発生させる変速機、もしくは各車輪のブレーキパッドにブレーキディスクを押しつけることで前後加速度を発生させる摩擦ブレーキといった前後加速度を発生可能な加減速アクチュエータである。
【0049】
車両運動制御演算手段4は、記憶領域、および演算処理能力、および信号の入出力手段をもつ演算装置であり、前記カーブ形状取得手段2および前記自車位置取得手段3により得られたカーブ形状および自車位置から車両に発生させる前後加速度指令値を演算し、前記前後加速度指令値となる前後加速度を発生可能な前記加減速アクチュエータを前後加速度発生手段5とし、前記加減速アクチュエータの駆動制御器へ前記前後加速度指令値を送る。
【0050】
ここで送る信号は前後加速度ではなく、前記加減速アクチュエータにより前記前後加速度指令値を実現する信号であればよい。
【0051】
例えば前記加減速アクチュエータが油圧によりブレーキパッドをブレーキディスクに押し付ける油圧式摩擦ブレーキである場合、前後加速度指令値を実現する油圧指令値を油圧式摩擦ブレーキ制御器へ送る。また油圧式摩擦ブレーキ制御器を介さず、前後加速度指令値を実現する油圧式摩擦ブレーキ駆動アクチュエータの駆動信号を油圧式摩擦ブレーキ駆動アクチュエータに直接送ってもよい。
【0052】
また前後加速度指令値を実現する際に前後加速度指令値に応じて駆動制御を行う前記加減速アクチュエータを変更してもよい。
【0053】
例えば自車位置がカーブ遠方での減速における前後加速度指令値を実現するために、前記変速機の変速比を変更する指令値を変速機制御器に送り、カーブ近傍での減速における前後加速度指令値を実現するために、油圧指令値を油圧式摩擦ブレーキ制御器へ送ってもよい。
【0054】
以下、前記カーブ形状取得手段2として自車両が走行するコースの地図情報を用い、前記自車位置取得手段3としてGPSを用いる場合における前後加速度指令値の作成方法を示す。
【0055】
図7に前記車両運動制御装置1における演算フローチャートを示す。
【0056】
S000では、GPSによる自車位置データPv(Xv,Yv)、および自車位置情報と地図情報からカーブ形状データとして自車両自車両進行方向にあるノード点位置データPn(Xn,Yn)を取得し、演算を行う。ここでnは図8に示すように、自車両進行方向と逆方向に最初にあるノード点位置を0とし、自車両進行方向に向かって1,2・・・,nmaxと増加する整数である。またnmaxは取得可能なノード点位置データ番号nの最大値である。演算後S100へ進む。
【0057】
S100では、GPSによる自車位置データPv(Xv,Yv)が更新されたか否かの判定を行い、データが更新されていればデータ更新フラグFGPSrefを1に、されていなければ0とする。演算後S200へ進む。更新の判定方法として、自車位置データPv(Xv,Yv)の前回値Pv_z1(Xv_z1,Yv_z1)との比較により更新されたか否かを判定しても、GPSから自車位置データの他に更新フラグを取得することで、更新されたか否かを判定してもよい。
【0058】
S200では、自車位置の時間変化から、車両速度の算出を行う。ここでデータ更新フラグが0の時、前回の車両速度算出結果を車両速度とする。データ更新フラグが1の時、前回データ更新フラグが1になってから、今回データ更新フラグが1になるまでに要した時間ΔtPと、前回データ更新フラグが1だった時の自車位置データPv_Pz1(Xv_Pz1,Yv_Pz1)と今回の自車位置データPv(Xv,Yv)から算出した自車両の移動距離ΔLvから、自車両の移動速度である車両速度Vを算出する。
【0059】
S300では前方注視距離の演算を行う。図9に示すように、自車両進行方向のコース上に自車両の極近傍から遠方まで前方注視点PP0,PP1,PP2という3つの前方注視点を設定し、自車両から前方注視点PP0,PP1,PP2までの前方注視距離LPP0,LPP1,LPP2を算出する。
【0060】
ここでLPP0,LPP1,LPP2は以下の式(8)の関係を満たすように予め設定される値であっても、予め設定される前方注視時間TPP0,TPP1,TPP2(ただしTPP0<TPP1<TPP2)と車両速度Vを用いて、それぞれ式(9)に示すように与えてもよい。ただし前方注視点PP0は自車両の極近傍の注視点とし、Lmaxは自車位置からノード点位置P1までの距離とノード点位置P1からノード点位置Pnmaxまでの各ノード点間距離を合計した値である。演算後S400へと進む。
【0061】
【数8】

【0062】
【数9】

【0063】
S400では、前後加速度制御許可フラグの演算を行う。前後加速度制御許可フラグは、その値が1の時、前後加速度制御を許可し、0の時、前後加速度制御を禁止するものとする。前後加速度制御許可フラグの作成方法としては、例えば前記データ更新フラグFGPSrefが0となっている時間が所定時間以上となった場合、GPSによる自車位置データ取得が困難として前後加速度制御許可フラグを0とする。
【0064】
また自車位置データによる走行軌跡と地図データ上で自車が走行していると想定しているコース形状との乖離が大きい場合、地図データ上の自車の走行コースが実際のコースと異なるとして、前後加速度制御許可フラグを0とする。
【0065】
また車両速度Vにより前後加速度制御許可フラグを0としてもよい。例えば制御を開始する最低車両速度を予め設定しておき、最低車両速度よりも車両速度Vが小さければ、前後加速度制御許可フラグを0とする。
【0066】
また上述のように、複数のカーブ形状データの取得手段、および自車位置データの取得手段を備える場合、その全ての取得手段において、カーブ形状データ、および自車位置データの取得が困難であると判断された場合、前後加速度制御許可フラグを0とする。例えば、GPSの他に撮像手段により、カーブ形状データ、および自車位置データを取得している場合、上述のようにGPSによる自車位置データ取得が困難と判定された上に、更に撮像手段によるカーブ形状データ、および自車位置データの取得が困難と判定された際に、前後加速度制御許可フラグを0とする。これら以外の条件では1とする。演算後S500へ進む。
【0067】
S500では、ノード点位置データPn(Xn,Yn)からnが1以上の点における各ノード点位置のカーブ曲率κn、および自車位置のカーブ曲率κvと、ノード点間のカーブ曲率変化dκn/dxを算出し、前方注視距離LPP0,LPP1,LPP2でのカーブ曲率κPP0,κPP1,κPP2、およびカーブ曲率変化dκPP0/dx,dκPP1/dx,dκPP2/dxを算出する。ここでカーブ曲率の算出方法としては、連続する3点のノード点Pn-1,Pn,Pn+1を通る円弧のカーブ曲率半径を求め、その逆数をとることでノード点Pnのカーブ曲率κnを求めることができる。
【0068】
また自車位置のカーブ曲率κvは、自車位置がノード点位置P1と一致していれば、カーブ曲率κvはカーブ曲率κ1となり、一致していなければ、ノード点P0,Pv,P1からカーブ曲率κvを算出することができる。ここでカーブ曲率κnおよびカーブ曲率κvはカーブの方向によらず正の値とする。
【0069】
またカーブ曲率半径が十分大きければ、カーブ曲率κnを0としてもよい。これにより得られた各ノード点のカーブ曲率κnと各ノード点間距離からカーブ曲率変化dκn/dxを算出する。図9に示すように、ノード点間を線系補完し、ノード点Pn,Pn+1間の距離をLnとすると、ノード点Pn,Pn+1間のカーブ曲率変化dκn/dxは以下の式(10)で与えられる。
【0070】
【数10】

【0071】
同様に自車位置Pvとノード点P1間のカーブ曲率変化dκv/dxは、自車位置Pvとノード点P1間の距離をLv1とすると、以下の式(11)で与えられる。
【0072】
【数11】

【0073】
各ノード点のカーブ曲率κn、およびカーブ曲率変化dκn/dx算出後、前方注視距離LPP0,LPP1,LPP2に対応したカーブ曲率κPP0,κPP1,κPP2、およびカーブ曲率変化dκPP0/dx、dκPP1/dx、dκPP2/dxを算出する。例えば図9に示すように、PP0がPvとP1の間、PP1がP2とP3の間、PP2がPnとPn+1の間にある場合、カーブ曲率κPP0,κPP1,κPP2、およびカーブ曲率変化dκPP0/dx,dκPP1/dx,dκPP2/dxは、以下の式(12)〜(17)で与えられる。
【0074】
【数12】

【0075】
【数13】

【0076】
【数14】

【0077】
【数15】

【0078】
【数16】

【0079】
【数17】

【0080】
ここで各ノード点のカーブ曲率κn、およびカーブ曲率変化dκn/dxの算出方法は上記方法に限らず、各ノード点でのカーブ曲率、およびカーブ曲率変化を算出可能な方法であればよい。演算後S600へと進む。
【0081】
S600では前方注視距離LPP0,LPP1,LPP2でのカーブ曲率κPP0,κPP1,κPP2、およびカーブ曲率変化dκPP0/dx,dκPP1/dx,dκPP2/dx、および車両速度Vに基づいて前後加速度指令値初期値を作成する。ここで車両近傍のカーブ曲率変化dκPP0/dx、dκPP1/dxによる前後加速度指令値GxREQiniPP0,GxREQiniPP1は上述の式(6)により算出し、車両遠方のカーブ曲率κPP2による前後加速度指令値GxREQiniPP2は、上述の図3に示した方法で作成する。
【0082】
ここで前方注視距離LPP0,LPP1,LPP2を上述の式(9)で示した前方注視時間TPP0,TPP1,TPP2で作成するとした場合、前方注視点PP0,PP1,PP2の移動速度VPP0,VPP1,VPP2は、車両速度Vを微分して得られる車両前後加速度Gxを用いて、以下の式(18)で与えられる。
【0083】
ここで他の制御器との通信や、加速度センサによる直接測定により前後加速度を取得する手段を備える構成であれば、それにより得られた前後加速度から車両前後加速度Gxを作成してもよい。
【0084】
【数18】

【0085】
式(6),(18)から、GxREQiniPP0,GxREQiniPP1を以下の式(19)により演算する。また図3からGxREQiniPP2を演算する。
【0086】
【数19】

【0087】
ここでCxy0,Cxy1は予め設定される定数であっても、他の条件に応じて変更する値であってもよい。例えばdκPPm/dxが正の場合とdκPPm/dxが負の場合で異なる値としてもよい。また路面摩擦係数やドライバのアクセル操作といった他の情報を利用可能であれば、その情報に基づいて値を変更してもよい。例えば圧雪路のように路面摩擦係数が低い場合、アスファルト路のような路面摩擦係数が高い条件よりも、Cxy0,Cxy1を小さな値に設定する。
【0088】
またドライバがアクセル操作をしている場合、そのアクセル操作量に応じてdκPPm/dxが正となる時の値を小さくする。これらカーブ形状や自車位置以外の情報を利用する構成については、実施形態2にて説明する。演算後、S700へと進む。
【0089】
S700では前後加速度指令値初期値GxREQiniPP0,GxREQiniPP1,GxREQiniPP2に前後加速度制御の介入閾値による処理や、フィルタ処理,セレクト処理,加算処理等を行い最終的な前後加速度指令値GxREQfinを作成する。例えば、GxREQiniPP0,GxREQiniPP1,GxREQiniPP2に対して、その符号や増減方向に応じた時定数をそれぞれ設定したフィルタ処理を行い、その値に応じたセレクト処理や加算処理を行う。
【0090】
更に減速側の前後加速度制御介入閾値GxBRKs、および加速側の前後加速度制御介入閾値GxACCsとし、これらの値による前後加速度制御の介入閾値による処理を行う。ここでGxBRKs,GxACCsは予め設定される値である。
【0091】
またGxREQiniPP0,GxREQiniPP1,GxREQiniPP2の内、2つが同時に0以外の値となっている領域では、両者が同符号であれば、その絶対値が大きい方の値とし、異符合であれば、両者を加算した値とする。またGxREQiniPP0,GxREQiniPP1,GxREQiniPP2の内、3つが同時に0以外の値となっている領域では、3つの内同符号の2つの絶対値を比較し、その大きい方の値と、残る異符合の値を加算した値とする。これにより、GxREQiniPP0が正でGxREQiniPP2が負、すなわち自車両極近傍の位置ではカーブ曲率変化が負で、自車両前方にカーブ曲率変化が正となるカーブが存在する場合での減速度を小さくすることができ、連続カーブを走行している際の減速フィーリングを向上することができる。
【0092】
またここで加算をする際に、その符号に応じて重み付けをしてもよい。例えば減速を優先したければ、正となっている値が小さくなるような係数を積算して加算し、逆に加速を優先するのであれば、負となっている値が小さくなるような係数を積算して加算してもよい。
【0093】
これにより、図10に示すようなカーブ曲率κPP0,κPP1,κPP2、およびカーブ曲率変化dκPP0/dx,dκPP1/dx,dκPP2/dxとなるカーブを走行し、点線で示すGxREQiniPP0,破線で示すGxREQiniPP1,一点鎖線で示すGxREQiniPP2が得られた場合、実線で示したような前後加速度指令値GxREQfinが得られる。ここでGxREQiniPP0,GxREQiniPP1,GxREQiniPP2からGxREQfinを作成する方法は上記内容に限ったものではないが、図10のT21で示した、負の前後加速度、すなわち減速している際のGxREQiniPP2からGxREQiniPP1へと遷移する区間において、減速度が過度に減少しないようにする。
【0094】
同様に図10のT10で示したGxREQiniPP1からGxREQiniPP0へと遷移する区間においても、負の前後加速度、すなわち減速している際のGxREQiniPP1からGxREQiniPP0へと遷移する区間において、減速度が過度に減少しないようにする。演算後S800へと進む。
【0095】
S800では、前後加速度制御許可フラグが1であれば、前後加速度指令値GxREQfinを実現する指令値を、前後加速度制御許可フラグが0であれば、前後加速度制御を行わないようにする指令値を前記前後加速度発生手段5へ送信する。
【0096】
ここで前後加速度制御許可フラグが1の時に送信する信号は、上述の通り、前後加速度指令値GxREQfinを送信することで前記前後加速度発生手段5により前後加速度指令値GxREQfinを実現できる場合、前後加速度指令値GxREQfinを制御指令値として送信する。
【0097】
また前記前後加速度発生手段5に応じた指令値にする必要があれば、前後加速度指令値GxREQfinに基づいて前記前後加速度発生手段5を制御する指令値を作成し、送信する。例えば前記前後加速度発生手段5が油圧式摩擦ブレーキであり、油圧指令値を油圧式摩擦ブレーキ制御器に送ることで前後加速度制御を行う場合、前後加速度指令値GxREQfinに基づいて油圧指令値を作成し、作成した油圧指令値を制御指令値として送信する。
【0098】
これにより車両に前後加速度指令値GxREQfinに基づく前後加速度を発生させる。
【0099】
また上述のように、前後加速度指令値を実現する指令を複数の前後加速度発生手段5に送信してもよい。例えば、カーブ遠方からの前後加速度指令値であるGxREQiniPP2に基づいて作成された前後加速度を実現する前後加速度発生手段5を前記変速機もしくはエンジン、もしくはその両方とし、カーブ近傍での前後加速度指令値であるGxREQiniPP1、およびGxREQiniPP0に基づいて作成された前後加速度を実現する前後加速度発生手段5として更に前記油圧摩擦ブレーキを加える。
【0100】
これによりカーブ遠方の比較的一定な減速をエンジンのスロットル開度や、変速機のギア比を変更することによりエンジンブレーキでの減速を行い、カーブ近傍の変化が大きい減速を油圧摩擦ブレーキにより実現する。これによりドライバがカーブ遠方で進行方向にある程度カーブ曲率の大きいカーブを視認した際に、アクセルをオフにしてエンジンブレーキによる減速を行い、カーブ近傍にてカーブ曲率変化を明確に認識してからブレーキを操作して減速を行うことと同様の減速を実現できる。
【0101】
以上のように、本発明では、車両に発生する減速が、カーブ遠方の減速からカーブ近傍への減速へと減速パターンが変化することで、ドライバが前方のカーブを詳細に認識する前から過度の減速を行うことなく、ドライバフィーリングを向上できる。
【0102】
(発明を実施するための実施形態2)
以下、図11〜図14を用いて、本発明の第2の実施形態による車両運動制御装置の構成及び動作について説明する。
【0103】
最初に、図11を用いて、本発明の第2の実施形態による車両運動制御装置の構成について説明する。
【0104】
図11は、本発明の第2の実施形態による車両運動制御装置の構成を示すシステムブロック図である。
【0105】
本実施形態の車両運動制御装置1′は車両に搭載されるものであり、自車両前方のカーブ形状を取得するカーブ形状取得手段2と、自車位置を取得する自車位置取得手段3と、車両運動情報取得手段6と、ドライバ入力情報取得手段7と、横運動連係前後加速度取得手段8と、路面情報取得手段9と、前記カーブ形状取得手段2と前記自車位置取得手段3、および前記車両運動情報取得手段6、前記ドライバ入力情報取得手段7、前記横運動連係前後加速度取得手段8と、前記路面情報取得手段9により得られた情報に基づいて車両に発生させる前後加速度を演算する車両運動制御演算手段4′を備える。
【0106】
また前記車両運動制御演算手段4′の演算結果は、前後加速度発生手段5、および情報提示器10に送られ、車両に前後加速度を発生可能なアクチュエータの駆動、およびドライバへの情報提示を行う。
【0107】
ここでカーブ形状取得手段2、自車位置を取得する自車位置取得手段3、および前後加速度発生手段5は上述の実施形態1と同様であるため、説明は省略する。
【0108】
前記車両運動情報取得手段6では、車両の運動情報として、少なくとも車両速度Vもしくは前後加速度Gx、もしくはその両方を取得する。ここで車両速度Vおよび前後加速度Gxはセンサ等により直接検出された値を取得しても、他の電子制御器が演算した結果を通信により取得してもよい。
【0109】
また車両速度Vおよび前後加速度Gxそのものが入力されなくとも、これらを推定可能な値であればよい。例えば車両速度Vの代わりに各車輪の車輪速度Vw[wheel](wheelにはFL(左前輪),FR(右前輪),RL(左後輪),RR(右前輪)がそれぞれ入る)を取得し、車両速度Vを推定してもよい。
【0110】
ドライバ入力情報取得手段7では、ドライバからの入力情報として、少なくともドライバ要求前後加速度GxDrvREQを取得する。ここでドライバ要求前後加速度GxDrvREQは、ドライバが直接入力した値を取得しても、他の電子制御器が演算した結果を通信により取得してもよい。またドライバ要求加速度GxDrvREQそのものが入力されなくとも、これを推定可能な値であればよい。例えばドライバ要求前後加速度GxDrvREQの代わりに、アクセルペダル操作量,ブレーキペダル操作量から、ドライバ要求前後加速度GxDrvREQを推定してもよい。またアクセルペダル操作量のみから、ブレーキ操作による減速を除いたドライバ要求前後加速度GxDrvREQを推定してもよい。
【0111】
またエンジンを駆動源とした車両であれば、エンジントルク、およびシフトポジションを取得し、ドライバ要求前後加速度GxDrvREQを推定してもよい。またドライバ要求前後加速度GxDrvREQの他に制御のON/OFF情報や、ドライバが制御量を調整、もしくは選択した際の値を取得してもよい。
【0112】
横運動連係前後加速度取得手段8では、例えば特許文献2,非特許文献1に示されている車両の横加加速度に基づく前後加速度GxGVCを取得する。ここで前後加速度GxGVCそのものが入力されなくとも、これを推定可能な値であればよい。例えば前後加速度GxGVCの代わりに横加加速度を取得し、前後加速度GxGVCを演算してもよい。また操舵角やヨーレイト,横加速度といった横運動情報を取得し、前後加速度GxGVCを演算してもよい。
【0113】
路面情報取得手段9では、路面情報として、少なくとも路面摩擦係数μおよび路面縦断勾配Gradを取得する。ここで路面摩擦係数μおよび路面縦断勾配Gradそのものが入力されなくとも、これを推定可能な値であればよい。例えば路面摩擦係数μの代わりに前後加速度Gx、前記各車輪速Vw[wheel]、前記車両速度Vを取得し、路面摩擦係数μを推定する方法であってもよい。また操舵により発生するセルフアライニングトルクを取得し、路面摩擦係数μを推定する方法であってもよい。
【0114】
また各車輪の制駆動力Fwx[wheel]、もしくはそれに代わる情報(例えばエンジントルクやブレーキ圧)を取得し、路面摩擦係数μを推定する方法であってもよい。また路面縦断勾配Gradの代わりに、各車輪の制駆動力Fwx[wheel]、もしくはそれに代わる情報(例えばエンジントルクやブレーキ圧)と車両の前後加速度Gxを取得し、車輪で発生している力と実際に発生した前後加速度の差分から路面縦断勾配Gradを推定してもよい。また平坦路での車両前後方向の加速度を測定するよう取り付けられた加速度センサによる値を取得し、車両速度Vを微分して得られた前後加速度の差分から路面縦断勾配Gradを推定してもよい。
【0115】
車両運動制御演算手段4′は、記憶領域、および演算処理能力、および信号の入出力手段をもつ演算装置であり、前記カーブ形状取得手段2と前記自車位置取得手段3、および前記車両運動情報取得手段6,前記ドライバ入力情報取得手段7,前記横運動連係前後加速度取得手段8と、前記路面情報取得手段9により得られた情報に基づいて車両に発生させる前後加速度、およびドライバへの情報提示を演算し、前後加速度発生手段5、および情報提示手段10に指令値を送る。ここで前後加速度発生手段5に送る指令値としては、上述の実施形態1と同様に対象とする加減速アクチュエータに応じた指令値とする。
【0116】
また情報提示手段10として、ドライバが五感の少なくとも一つにより認識可能な情報を提示する情報提示器とし、情報提示手段10に送る指令値として、前記情報提示器を駆動可能な指令値とする。例えば表示ランプやディスプレイのようにドライバの視覚に情報を与える表示器を情報提示手段10とする場合、車両に発生させる前後加速度に基づいて表示ランプの点灯やディスプレイへの表示を行う指令値を送る。
【0117】
またビープ音や音声のようにドライバの聴覚に情報を与える音発生器を情報提示手段10とする場合、車両に発生させる前後加速度に基づいてビープ音や音声による案内をする指令値を送る。
【0118】
またハンドルやペダル,シートの振動のようにドライバの触覚に情報を与える振動発生器を情報提示手段10とする場合、車両に発生させる前後加速度に基づいてハンドルやペダル,シートを振動する振動発生器に指令値を送る。また情報提示手段10として、前記表示器,音発生器,振動発生器を組合せて用いてもよい。
【0119】
以下、前記カーブ形状取得手段2として自車両が走行するコースの地図情報、前記自車位置取得手段3としてGPSを用い、車両運動情報取得手段6,ドライバ入力情報取得手段7,横運動連係前後加速度取得手段8,路面情報取得手段9として、他の電子制御器との通信手段を用いて、車両速度V,前後加速度Gx,ドライバ要求前後加速度GxDrvREQ,横運動連係前後加速度GxGVC,路面摩擦係数μ,路面縦断勾配Gradを取得し、他の電子制御器との通信手段、もしくはスイッチ等の入力手段を用いて、前後加速度制御スイッチON/OFF情報Fctrlsw,ドライバ設定値GDrvSetを取得する場合での前後加速度指令値の作成方法を示す。
【0120】
図12に前記車両運動制御装置1′における演算フローチャートを示す。
【0121】
S000では、実施形態1と同様にカーブ形状、および自車位置データを取得し、演算を行う。演算後S010へと進む。
【0122】
S010では、車両速度V,前後加速度Gx,ドライバ要求前後加速度GxDrvREQ,横運動連係前後加速度GxGVC,路面摩擦係数μ,路面縦断勾配Grad,前後加速度制御スイッチON/OFF情報Fctrlsw,ドライバ設定値GDrvSetを取得する。また上述のように、これらの値を直接取得せず、推定を行う場合、推定に必要なデータを取得し、演算を行う。演算後S100へと進む。
【0123】
S100では、実施形態1と同様にGPSによる自車位置データPv(Xv,Yv)が更新されたか否かの判定を行い、データが更新されていればデータ更新フラグFGPSrefを1に、されていなければ0とする。演算後S110へ進む。
【0124】
S110では、S000で得られたカーブ形状・自車位置データの更新を行う。S100にて演算されたデータ更新フラグが0である場合、すなわちS000にて取得するGPSによる自車位置データが更新されず、S010にて取得する車両運動情報等のデータのみが更新されている場合、S000で得られたカーブ形状・自車位置データと車両運動情報により得られた車両速度Vから演算される自車両の移動距離に基づいて、カーブ形状・自車位置データを更新する。
【0125】
例えば、ある時間t0においてデータ更新フラグが1、すなわちGPSによるデータ更新が行われたとし、この時得られたカーブ形状データをPt0_n(Xt0_n,Yt0_n)(nは0以上nmax_t0以下の整数)、自車位置データをPt0_V(Xt0_V,Yt0_V)とする。
【0126】
また図13に示すように、この時のノード点Pt0_n,Pt0_n+1の距離をDt0_n+1、自車位置Pt0_Vとノード点Pt0_1の距離をDt0_V1とする。t0のΔtv後であるt1での演算では、データ更新フラグが0、すなわちGPSによるデータ更新が行われず、車両運動情報等の更新のみが行われた場合、車両速度VとΔtvから自車両の移動距離Dt1_Vを算出し、自車位置と各ノード点の位置関係を更新する。
【0127】
本発明では、上述の通り、自車両の進行方向と逆方向にある最初のノード点をP0と設定している。そのためDvとDt0_V1の大小関係により、各ノード点の番号nが変わることになる。Dt1_VがDt0_V1以下の場合、図13(a)に示すように、t1においても自車位置はノード点Pt0_0、Pt0_1の間にあるため、t1における各ノード点および、ノード点間距離、ノード点番号の最大値nmax_t1、およびDt1_V1は以下の式(20)〜(23)で与えられる。
【0128】
【数20】

【0129】
【数21】

【0130】
【数22】

【0131】
【数23】

【0132】
またDt1_VがDt0_V1よりも大きい場合、t1において自車位置がノード点Pt0_1よりも先にあるため、t1における各ノード点および、ノード点間距離、およびDt1_V1は以下の式(24)〜(27)で与えられる。
【0133】
【数24】

【0134】
【数25】

【0135】
【数26】

【0136】
【数27】

【0137】
ここでkは式(25)で得られるDt1_V1が0以上、かつnmax_t1が正となる最小の整数である。
【0138】
例えば、図13(b)に示すように、自車位置がノード点Pt0_1,Pt0_2の間にあれば、kは1となる。S000で得られたカーブ形状データの内、上述の条件を満たすkが存在しない場合、nmax_t0をkとする。またデータ更新フラグが1であれば、S000で得られた各ノード点でのデータ、および自車位置データを、カーブ形状データ、および自車位置データとする。演算後S310へと進む。
【0139】
S310では、前方注視距離の演算を行う。上述の実施形態1と同様に、自車両進行方向のコース上に自車両の極近傍から遠方まで前方注視点PP0,PP1,PP2という3つの前方注視点を設定し、自車両から前方注視点PP0,PP1,PP2までの前方注視距離LPP0,LPP1,LPP2を算出する。
【0140】
ここでLPP0,LPP1,LPP2は以下の式(8)の関係を満たすように予め設定される値であっても、予め設定される前方注視時間TPP0,TPP1,TPP2(ただしTPP0<TPP1<TPP2)と車両速度Vを用いて、それぞれ式上述の式(9)に示すように与えてもよい。
【0141】
また路面摩擦係数μに応じて前方注視距離LPP0,LPP1,LPP2を変更してもよい。例えば路面摩擦係数μがある値以下であれば、路面摩擦係数μが小さいほどLPP0,LPP1,LPP2が長くなるように変更する。ただし前方注視点PP0は自車両の極近傍の注視点とし、Lmaxは自車位置からノード点位置P1までの距離とノード点位置P1からノード点位置Pnmaxまでの各ノード点間距離を合計した値である。演算後S410へと進む。
【0142】
S410では、前後加速度制御モードGxModeの演算を行う。前後加速度制御モードGxModeは、その値が0の時、前後加速度制御を行わず、1の時、横運動連係前後加速度GxGVCに基づく前後加速度制御を行い、2の時、横運動連係前後加速度GxGVCおよび自車位置データ、およびカーブ形状データに基づく前後加速度制御を行うように設定される値である。
【0143】
前後加速度制御モードGxModeの作成方法としては、例えば前後加速度制御スイッチON/OFF情報Fctrlswにおいて、前後加速度制御スイッチOFFの時のFctrlswが0、前後加速度制御スイッチONの時のFctrlswが1とすると、Fctrlswが0の時、前後加速度制御モードGxModeを0とする。
【0144】
また車両速度Vにより前後加速度制御モードGxModeを0としてもよい。
【0145】
例えば制御を開始する最低車両速度を予め設定しておき、最低車両速度よりも車両速度Vが小さければ、前後加速度制御モードGxModeを0とする。
【0146】
また横運動連係前後加速度GxGVCが取得困難、かつ自車位置データ、およびカーブ形状データが取得困難な際に前後加速度制御モードGxModeを0とする。前後加速度制御モードGxModeが0となる条件にない場合、カーブ形状データ、および自車位置データの状況に応じて、前後加速度制御モードGxModeを1、もしくは2とする。
【0147】
例えば前記データ更新フラグFGPSrefが0となっている時間が所定時間以上となった場合、GPSによる自車位置データ取得が困難として前後加速度制御モードGxModeを1とする。またS110の式(27)で演算されたDt1_V1が0の場合、前後加速度制御モードGxModeを1とする。また自車位置データによる走行軌跡と地図データ上で自車が走行していると想定しているコース形状との乖離が大きい場合、地図データ上の自車の走行コースが実際のコースと異なるとして、前後加速度制御モードGxModeを1とする。
【0148】
また車両運動として車両速度Vに加え、操舵角やヨーレイト,横加速度といった横運動情報が取得可能である場合、これらから推定される走行軌跡とGPSにより得られた自車位置軌跡を演算し、これらの乖離が大きければ、GPSの精度が低下しているとして、前後加速度制御モードGxModeを1とする。またこれら以外の条件では2とする。
【0149】
これにより、GPSによるデータ取得が困難な状況においても、横運動連係前後加速度GxGVCに基づく前後加速度制御を実施することができる。演算後S510へ進む。
【0150】
S510では、前記前後加速度制御モードGxModeが2であれば、上述の実施形態1のS500と同様にカーブ曲率,カーブ曲率変化を演算し、それ以外であれば、カーブ曲率,カーブ曲率変化共に0とする。演算後、S610へと進む。
【0151】
S610では前方注視距離LPP0,LPP1,LPP2でのカーブ曲率κPP0,κPP1,κPP2、およびカーブ曲率変化dκPP0/dx,dκPP1/dx,dκPP2/dx、および車両速度Vに基づいて前後加速度指令値初期値を作成する。ここで車両近傍のカーブ曲率変化dκPP0/dx,dκPP1/dxによる前後加速度指令値GxREQiniPP0,GxREQiniPP1は上述の式(6)により算出し、車両遠方のカーブ曲率κPP2による前後加速度指令値GxREQiniPP2は、上述の式(7)により算出する。
【0152】
ここで前方注視距離LPP0,LPP1,LPP2を上述の式(9)で示した前方注視時間TPP0,TPP1,TPP2で作成するとした場合、前方注視点PP0,PP1,PP2の移動速度VPP0,VPP1,VPP2は、前後加速度Gxを用いて、上述の式(18)で与えられる。またこれにより得られた値から、GxREQiniPP0,GxREQiniPP1を上述の式(19)により演算する。また上述の式(7)からGxREQiniPP2を演算する。ここでCxy0,Cxy1、およびCxは、路面摩擦係数μやドライバ要求前後加速度GxDrvREQにより変化する値である。
【0153】
その設定方法としては、例えばdκPPm/dxが正の場合の定数として予め設定された値Cxy0_ini,Cxy1_ini、およびCx_iniと路面摩擦係数μよる補正係数kμ、およびドライバ要求前後加速度GxDrvREQによる補正係数kGxDrvを用いて以下の式(28)〜(29)で与える。
【0154】
【数28】

【0155】
【数29】

【0156】
ここでkμおよびkGxDrvは0から1の値であり、kμは路面摩擦係数μが小さい領域では大きい領域よりもその値が小さくなるように設定し、kGxDrvはドライバ要求前後加速度GxDrvREQがある値以上では、その増加に応じて減少し、最終的に0となるように設定する。またGxREQiniPP2を演算する際、式(7)におけるGySET、およびGxREQfar_minは路面摩擦係数μに応じて値を変更する。例えば路面摩擦係数μがある値以下では、GySET、およびGxREQfar_minを小さな値に変更する。
【0157】
また実施形態1で述べたように、dκPPm/dxが負の場合では、上述のdκPPm/dxが正の場合と異なる値に設定してもよい。演算後、S620へと進む。
【0158】
S620では前後加速度指令値初期値を路面縦断勾配Gradにより補正した前後加速度指令値補正値GxREQhoseiPPm(m=0,1,2)を作成する。ここで路面縦断勾配Gradにより車両に発生する前後加速度GxGradを用いて、前後加速度指令値補正値を以下の式(30)で与える。
【0159】
【数30】

【0160】
ここでGxGradは上り勾配で負、下り勾配で正となる値である。演算後S710へと進む。
【0161】
S710では、前後加速度指令値補正値GxREQhoseiPP0,GxREQhoseiPP1,GxREQhoseiPP2に前後加速度制御の介入閾値による処理や、フィルタ処理,セレクト処理,加算処理等を行って得られた値GxREQfinに、更に横運動連係前後加速度GxGVCを組合せることで、最終的な前後加速度指令値GxREQfinGVCを作成する。ここでGxREQfinの演算は上述の実施形態1に示したS700での演算のGxREQiniPP0,GxREQiniPP1,GxREQiniPP2をそれぞれGxREQhoseiPP0,GxREQhoseiPP1,GxREQhoseiPP2として同様の演算を行う。GxREQfinとGxGVCの組合せ方法としては、例えば図14に示すように、両者が同符合であれば、その絶対値の大きい方をGxREQfinGVCとし、異符合であれば、両者を加算した値をGxREQfinGVCとする。
【0162】
また両者を加算する際、重み付けをして加算してもよい。
【0163】
ここでGxREQfinGVCの演算方法として、GxREQfinを演算してから、GxGVCと組合せる方法について説明したが、この方法に限ったものではない。例えばGxREQfinを演算する際の自車両の極近傍の前方注視点PP0による前後加速度指令値補正値GxREQhoseiPP0の代わりに、GxGVCを用いてGxREQfinを演算し、この値をGxREQfinGVCとしてもよい。演算後S810へと進む。
【0164】
S810では、前後加速度制御モードが1もしくは2であれば、前後加速度指令値GxREQfinGVCを実現する指令値を、前後加速度制御モードが0であれば、前後加速度制御を行わないようにする指令値を前記前後加速度発生手段5へ送信し、同時に前後加速度制御状態に応じた情報提示指令値を情報提示器10へと送信する。
【0165】
ここで前後加速度制御モードが0以外の時に送信する信号は、上述の通り、前後加速度指令値GxREQfinGVCを送信することで前記前後加速度発生手段5により前後加速度指令値GxREQfinGVCを実現できる場合、前後加速度指令値GxREQfinGVCを制御指令値として送信する。
【0166】
また前記前後加速度発生手段5に応じた指令値にする必要があれば、前後加速度指令値GxREQfinGVCに基づいて前記前後加速度発生手段5を制御する指令値を作成し、送信する。例えば前記前後加速度発生手段5が油圧式摩擦ブレーキであり、油圧指令値を油圧式摩擦ブレーキ制御器に送ることで前後加速度制御を行う場合、前後加速度指令値GxREQfinGVCに基づいて油圧指令値を作成し、作成した油圧指令値を制御指令値として送信する。これにより車両に前後加速度指令値GxREQfinGVCに基づく前後加速度を発生させる。
【0167】
また上述のように、前後加速度指令値を実現する指令を複数の前後加速度発生手段5に送信してもよい。例えば、自車位置がカーブ遠方での前後加速度指令値であるGxREQhoseiPP2に基づいて作成された前後加速度を実現する前後加速度発生手段5を、前記変速機もしくはエンジン、もしくはその両方とし、カーブ近傍での前後加速度指令値であるGxREQhoseiPP1,GxREQhoseiPP0およびGxGVCに基づいて作成された前後加速度を実現する前後加速度発生手段5として更に前記油圧摩擦ブレーキを加える。
【0168】
これによりカーブ遠方の比較的一定な減速をエンジンのスロットル開度や、変速機のギア比を変更することでエンジンブレーキによる減速を行い、カーブ近傍の変化が大きい減速を油圧摩擦ブレーキにより実現する。これによりドライバがカーブ遠方で進行方向にある程度カーブ曲率の大きいカーブを視認した際に、アクセルをオフにしてエンジンブレーキによる減速を行い、カーブ近傍にてカーブ曲率変化を明確に認識してからブレーキを操作して減速を行うことと同様の減速を実現できる。
【0169】
情報提示器10への指令値としては、例えば前後加速度制御中であることをドライバへ伝えるよう表示器、または音発生器への駆動指令値を送信する。また前後加速度制御モードが1の時、カーブ前での減速が行われないことと、その理由をドライバへ伝えるよう表示器、または音発生器への駆動指令値を送信する。
【0170】
また本実施形態で用いた予め設定する値(例えば前方注視時間TPP0,TPP1,TPP2や横加速度設定値GySET)はドライバ設定値GDrvSetに応じて変更してもよい。例えばドライバ設定値GDrvSetが0〜10の値を取るとし、ドライバ設定値GDrvSetが0では、前方注視点によるカーブ前からの前後加速度制御を行わず、横運動連係前後加速度GxGVCによる前後加速度制御のみを行うものとし、GDrvSetが大きいほどカーブ遠方からの減速が大きくなるとした場合、GDrvSetが0ではTPP0、TPP1、TPP2を全て非常に小さな値とし、GDrvSetの増加に応じてTPP2を大きな値としySETを小さな値としてもよい。これによりカーブ遠方からの減速度が変化するため、ドライバの嗜好に応じてカーブ前の減速開始タイミングやその減速量を変更することができる。
【0171】
以上のように、本実施形態では、自車位置がカーブ遠方にある時の減速からカーブ近傍に近づいた時の減速へと減速パターンを変化させるにあたり、車両運動情報や路面情報を用いることで、よりドライバフィーリングにあった前後加速度制御が実現できる。
【0172】
(発明を実施するための実施形態3)
以下、図15,図16を用いて、本発明の第3の実施形態による車両運動制御装置の構成及び動作について説明する。
【0173】
最初に、図15を用いて、本発明の第3の実施形態による車両運動制御装置の構成について説明する。
【0174】
図15は、本発明の第3の実施形態による車両運動制御装置の構成を示すシステムブロック図である。
【0175】
本実施形態の車両運動制御装置1″は、自車両前方のカーブ形状を取得するカーブ形状取得手段2と、自車位置を取得する自車位置取得手段3と、車載電子制御器12と通信する車両通信手段11と、前記カーブ形状取得手段2と前記自車位置取得手段3、および前記車両通信手段11により得られた情報に基づいて車両に発生させる前後加速度を演算する車両運動制御演算手段4″を備える。
【0176】
また前記車両運動制御演算手段4″の演算結果は、車載電子制御器12を介し前後加速度発生手段5、および情報提示手段10に送られ、車両に前後加速度を発生可能なアクチュエータの駆動を行う。ここで車載電子制御器12は、車両運動制御装置1″と通信する手段、および前後加速度発生手段5、および情報提示手段10を駆動制御可能な車載の電子制御器である。また前後加速度発生手段5を駆動制御する際に、車両に前後加速度を発生させる加減速アクチュエータを車載電子制御器12が直接駆動制御しても、加減速アクチュエータを制御する電子制御器との通信により、加減速アクチュエータを駆動制御してもよい。同様に、情報提示手段10を駆動制御する際に、情報提示器を車載電子制御器12が直接駆動制御しても、情報提示器を制御する電子制御器との通信により、情報提示器を駆動制御してもよい。また本実施形態の車両運動制御装置1″は、必ずしも車両に組込まれている必要はなく、ドライバが容易に持ち出し可能な形状であってもよい。
【0177】
ここでカーブ形状取得手段2,自車位置を取得する自車位置取得手段3、および前後加速度発生手段5,情報提示手段10は上述の実施形態1,2と同様であるため、説明は省略する。
【0178】
車両運動制御演算手段4″は、前記カーブ形状取得手段2と前記自車位置取得手段3,前記車両通信手段11により得られた情報に基づいて車両に発生させる前後加速度指令値を作成し、前記車両通信手段11を介して、車載電子制御器12と通信をすることで、車両の前後加速度制御を行う。ここで本実施例での前後加速度指令値の作成方法は、上述の実施形態1,2と同様であるため、説明は省略する。
【0179】
車両通信手段11は、車両に搭載された車載電子制御器12と通信する手段である。例えば車両運動制御装置1″と車載電子制御器12をコネクタにより結線することで、車両に搭載された電子制御器と通信する方法であっても、予め車両運動制御装置1″の識別符号を車両に搭載された車載電子制御器12に登録し、無線通信により車載電子制御器12と通信する方法であってもよい。
【0180】
ここで前後加速度発生手段5、および情報提示手段10が車両通信手段11と通信する手段を備える場合、図16に示すように、車両運動制御装置1″が車両通信手段11を介して、直接前後加速度発生手段5、および情報提示手段10と通信して前後加速度発生手段5、および情報提示手段10の駆動制御をしてもよい。
【0181】
これにより、GPS搭載の携帯電話、もしくは小型の携帯ナビゲーション機器等に本発明を組込むことが可能となり、ドライバは自分の携帯電話、もしくは小型の携帯ナビゲーション機器を車両に持ち込むことで、本発明の前後加速度制御を実現できる。
【0182】
(発明を実施するための実施形態4)
以下、図17を用いて、本発明の第4の実施形態による車両運動制御装置の構成及び動作について説明する。
【0183】
最初に、図17を用いて、本発明の第4の実施形態による車両運動制御装置の構成について説明する。
【0184】
図17は、本発明の第4の実施形態による車両運動制御装置の構成を示すシステムブロック図である。
【0185】
本実施形態の車両運動制御装置1′′′は、自車両前方のカーブ形状を取得するカーブ形状取得手段2と、自車位置を取得する自車位置取得手段3と、車載電子制御器12と通信する車両通信手段11と、設定情報取得手段13と、前記カーブ形状取得手段2と前記自車位置取得手段3,前記設定情報取得手段13,前記車両通信手段11により得られた情報に基づいて車両に発生させる前後加速度を演算する車両運動制御演算手段4′′′を備える。
【0186】
また前記車両運動制御演算手段4′′′の演算結果は、車載電子制御器12を介し前後加速度発生手段5、および情報提示手段10に送られ、車両に前後加速度を発生可能なアクチュエータの駆動を行う。また本実施形態の車両運動制御装置1′′′は、必ずしも車両に組込まれている必要はなく、ドライバが容易に持ち出し可能な形状であってもよい。
【0187】
ここでカーブ形状取得手段2,自車位置を取得する自車位置取得手段3、および前後加速度発生手段5,情報提示手段10,車両通信手段11,車載電子制御器12は上述の実施形態1,2,3と同様であるため、説明は省略する。
【0188】
設定情報取得手段13は、上述の前方注視時間TPP0,TPP1,TPP2や横加速度設定値GySET等、ドライバが設定可能な定数の設定情報、もしくは予めいくつかの設定された定数の組合せにより、複数の制御モードを備える場合は、その制御モードの選択した設定情報を取得する。例えば上記前方注視時間TPP0,TPP1,TPP2や横加速度設定値GySETをある範囲内でドライバが直接入力し、その入力された値を設定情報としてもよい。
【0189】
また“スポーツモード”や“ノーマルモード”といったいくつかの定数の組合せによる制御モードを持ち、ドライバが選択した制御モードに対応する定数を設定情報としてもよい。
【0190】
車両運動制御演算手段4′′′は、前記設定情報取得手段13により取得した設定情報を記憶する手段を備え、前記カーブ形状取得手段2と前記自車位置取得手段3,前記設定情報取得手段13,前記車両通信手段11により得られた情報に基づいて車両に発生させる前後加速度指令値を作成し、前記車両通信手段11を介して、車載電子制御器12と通信をすることで、車両の前後加速度制御を行う。ここで本実施例での前後加速度指令値の作成方法は、上述の実施形態1,2と同様であるため、説明は省略する。
【0191】
これにより、GPS搭載の携帯電話、もしくは小型の携帯ナビゲーション機器等に本発明を組込むことが可能となり、更にドライバ毎にその設定を変更することが可能となる。これにより一台の車両を複数人でシェアする状況にあっても、ドライバは自分で定数を設定した携帯電話、もしくは小型の携帯ナビゲーション機器を車両に持ち込むことで、自分で設定した本発明の前後加速度制御を実現できる。
【0192】
(発明を実施するための実施形態5)
以下、図18,図19を用いて、本発明の第5の実施形態による車両運動制御装置の構成及び動作について説明する。
【0193】
本発明の第5の実施形態による車両運動制御装置の構成は、実施形態1と同様であり、前後加速度指令値を演算する際の前方注視点の数が異なる。
【0194】
図18に前記車両運動制御装置1における演算フローチャートを示す。
【0195】
S000では、実施形態1と同様にカーブ形状、および自車位置データを取得し、演算を行う。演算後S010へと進む。
【0196】
S100では、実施形態1と同様にGPSによる自車位置データPv(Xv,Yv)が更新されたか否かの判定を行い、データが更新されていればデータ更新フラグFGPSrefを1に、されていなければ0とする。演算後S200へ進む。
【0197】
S200では、実施形態1と同様に自車位置の時間変化から、車両速度の算出を行う。演算後S320へと進む。
【0198】
S320では前方注視距離の演算を行う。図9に示すように、自車両進行方向のコース上に自車両の極近傍から遠方まで前方注視点PP0,PP3という2つの前方注視点を設定し、自車両から前方注視点PP0、PP3までの前方注視距離LPP0,LPP3を算出する。
【0199】
ここでLPP0,LPP3は、予め設定される前方注視時間TPP0,TPP3(ただしTPP0<TPP3)と車両速度V、および前方注視点の移動速度VPP0,VPP3を用いて、式(31)により与えられる。
【0200】
【数31】

【0201】
ここでLPP0_z1,LPP3_z1はLPP0,LPP3それぞれの前回値、κPP0_z1,κPP3_z1はκPP0,κPP3それぞれの前回値、Δtは演算の単位ステップ時間であり、min(A,B)はAとBの内小さい方の値を選択する関数である。また前方注視点の移動速度VPP0、VPP3は、車両速度Vを微分して得られる車両前後加速度Gx、および前方注視点の移動速度制限値VPPlmt0,VPPlmt3を用いて、以下の式(32)で与えられる。ここで他の制御器との通信や、加速度センサによる直接測定により前後加速度を取得する手段を備える構成であれば、それにより得られた前後加速度から車両前後加速度Gxを作成してもよい。また前方注視点の移動速度制限値VPPlmt0,VPPlmt3は、前方注視距離の前回値LPP0_z1,LPP3_z1に基づいて予め設定される値であり、図20に示すように、LPP0_z1,LPP3_z1がLPP_nearより小さければVppmin,LPP_near以上LPP_lmt以下では、LPP0_z1,LPP3_z1の増加に応じて下に凸の曲線で値が減少し、LPP_lmtより大きければVPPminとなるように設定してもよい。また図21に示すように、前方注視点位置でのカーブ曲率の時間変化制限値dκPPlmt0/dt,dκPPlmt3/dtを、LPP0_z1,LPP3_z1がLPP_nearより小さければdκPPmax/dt、LPP_near以上LPP_lmt以下では、LPP0_z1,LPP3_z1の増加に応じて下に凸の曲線で値が減少し、LPP_lmtより大きければ0となるよう設定し、前方注視点の移動速度制限値VPPlmt0,VPPlmt3を、それぞれdκPPlmt0/dt,dκPPlmt3/dtおよび前方注視点位置でのカーブ曲率変化の前回値dκPP0_z1/dx,dκPP3_z1/dxを用いて式(33)で与えてもよい。
【0202】
【数32】

【0203】
【数33】

【0204】
演算後S400へと進む。
【0205】
S400では、実施形態1と同様に前後加速度制御許可フラグの演算を行う。演算後S500へ進む。
【0206】
S520では、ノード点位置データPn(Xn,Yn)からnが1以上の点における各ノード点位置のカーブ曲率κn、および自車位置のカーブ曲率κvと、ノード点間のカーブ曲率変化dκn/dxを算出し、前方注視距離LPP0,LPP3でのカーブ曲率κPP0,κPP3、およびカーブ曲率変化dκPP0/dx,dκPP3/dxを算出する。ここでカーブ曲率の算出方法としては、連続する3点のノード点Pn-1,Pn,Pn+1を通る円弧のカーブ曲率半径を求め、その逆数をとることでノード点Pnのカーブ曲率κnを求めることができる。
【0207】
上述の実施形態1と同様に各ノード点のカーブ曲率κn、およびカーブ曲率変化dκn/dx算出後、前方注視距離LPP0,LPP3に対応したカーブ曲率κPP0,κPP3、およびカーブ曲率変化dκPP0/dx,dκPP3/dxを算出する。例えば図19に示すように、PP0がPvとP1の間、PP3がPnとPn+1の間にある場合、カーブ曲率κPP0,κPP3、およびカーブ曲率変化dκPP0/dx,dκPP3/dxは、以下の式(34)〜(37)で与えられる。
【0208】
【数34】

【0209】
【数35】

【0210】
【数36】

【0211】
【数37】

【0212】
ここで各ノード点のカーブ曲率κn、およびカーブ曲率変化dκn/dxの算出方法は上記方法に限らず、各ノード点でのカーブ曲率、およびカーブ曲率変化を算出可能な方法であればよい。演算後S620へと進む。
【0213】
S620では上述の式(4)に示したように、前方注視距離LPP0,LPP3でのカーブ曲率の時間変化および車両速度Vに基づいて前後加速度指令値初期値を作成する。ここで上述の式(5)で示したように、前方注視点でのカーブ曲率の時間変化は、前方注視点でのカーブ曲率変化dκPP/dx、および前方注視点の移動速度VPPにより表わすことができ、前後加速度指令値初期値GxREQiniPP0,GxREQiniPP3は、上述の式(4)〜(6),(31)〜(37)を用いて以下の式(38)により演算できる。
【0214】
【数38】

【0215】
ここでCxy0,Cxy3は予め設定される定数であっても、他の条件に応じて変更する値であってもよい。例えばdκPPm/dxが正の場合とdκPPm/dxが負の場合で異なる値としてもよい。また路面摩擦係数やドライバのアクセル操作といった他の情報を利用可能であれば、その情報に基づいて値を変更してもよい。例えば圧雪路のように路面摩擦係数が低い場合、アスファルト路のような路面摩擦係数が高い条件よりも、Cxy0,Cxy3を小さな値に設定する。
【0216】
またドライバがアクセル操作をしている場合、そのアクセル操作量に応じてdκPPm/dxが正となる時の値を小さくする。これらカーブ形状や自車位置以外の情報を利用する構成については、実施形態2にて説明する。演算後、S720へと進む。
【0217】
S720では前後加速度指令値初期値GxREQiniPP0,GxREQiniPP3に前後加速度制御の介入閾値による処理や、フィルタ処理,セレクト処理,加算処理等を行い最終的な前後加速度指令値GxREQfinを作成する。例えば、GxREQiniPP0,GxREQiniPP3に対して、その符号や増減方向に応じた時定数をそれぞれ設定したフィルタ処理を行い、その値に応じたセレクト処理や加算処理を行う。
【0218】
更に減速側の前後加速度制御介入閾値GxBRKs、および加速側の前後加速度制御介入閾値GxACCsとし、これらの値による前後加速度制御の介入閾値による処理を行う。ここでGxBRKs,GxACCsは予め設定される値である。
【0219】
またGxREQiniPP0,GxREQiniPP3が同時に0以外の値となっている領域では、両者が同符号であれば、その絶対値が大きい方の値とし、異符合であれば、両者を加算した値とする。これにより、GxREQiniPP0が正でGxREQiniPP3が負、すなわち自車両極近傍の位置ではカーブ曲率変化が負で、自車両前方にカーブ曲率変化が正となるカーブが存在する場合での減速度を小さくすることができ、連続カーブを走行している際の減速フィーリングを向上することができる。
【0220】
またここで加算をする際に、その符号に応じて重み付けをしてもよい。例えば減速を優先したければ、正となっている値が小さくなるような係数を積算して加算し、逆に加速を優先するのであれば、負となっている値が小さくなるような係数を積算して加算してもよい。
【0221】
これにより、図22に示すようなカーブ曲率κPP0,κPP3、およびカーブ曲率変化dκPP0/dx,dκPP3/dxとなるカーブを走行し、点線で示すGxREQiniPP0、一点鎖線で示すGxREQiniPP3が得られた場合、実線で示したような前後加速度指令値GxREQfinが得られる。またこの時の前後加加速度は、負の前後加速度指令値が最初に演算された際の増減に加え、カーブ進入前からカーブ曲率最大値となる前に再度増減が発生している。ここでGxREQiniPP0,GxREQiniPP3からGxREQfinを作成する方法は上記内容に限ったものではないが、図22のT30示した、負の前後加速度、すなわち減速している際のGxREQiniPP3からGxREQiniPP0へと遷移する区間において、減速度が過度に減少しないようにする。演算後S800へと進む。
【0222】
S800では、実施形態1と同様に前後加速度制御許可フラグが1であれば、前後加速度指令値GxREQfinを実現する指令値を、前後加速度制御許可フラグが0であれば、前後加速度制御を行わないようにする指令値を前記前後加速度発生手段5へ送信する。
【0223】
ここで前後加速度制御許可フラグが1の時に送信する信号は、実施形態1と同様に、前後加速度指令値GxREQfinを送信することで前記前後加速度発生手段5により前後加速度指令値GxREQfinを実現できる場合、前後加速度指令値GxREQfinを制御指令値として送信する。
【0224】
以上のように、前方注視点の移動速度をカーブまでの距離に応じて変化させることで、ドライバがカーブ曲率の時間変化を詳細に認識できないと考えられるカーブ遠方において過度の減速を行うことなく、ドライバがカーブ曲率の時間変化を詳細に認識し始めるカーブ近傍において減速度を増加させることで、ドライバの期待した減速を実現でき、ドライバフィーリングを向上できる。また本実施形態5を上述の実施形態2〜4の構成において実現することも可能である。
【符号の説明】
【0225】
1 車両運動制御装置
2 カーブ形状取得手段
3 自車位置取得手段
4 車両運動制御演算手段
5 前後加速度発生手段
6 車両運動情報取得手段
7 ドライバ入力情報取得手段
8 横運動連係前後加速度取得手段
9 路面情報取得手段
10 情報提示器
11 車両通信手段
12 車載電子制御器
13 設定情報取得手段

【特許請求の範囲】
【請求項1】
自車両前方のカーブ形状を取得するカーブ形状取得手段と、
自車両の位置を取得する自車位置取得手段と、
前記カーブ形状及び前記自車両の位置に基づいて、車両に発生させる前後加速度指令値を演算する車両運動制御演算手段と、を有し、
前記車両運動制御演算手段は、自車両進行方向を正とする前後加速度指令値において、自車両がカーブ前からカーブに進入し、カーブ曲率が一定、もしくは最大になる地点まで走行する際に、複数の異なる負の前後加速度指令値を演算する車両運動制御装置。
【請求項2】
自車両前方のカーブ形状を取得するカーブ形状取得手段と、
自車両の位置を取得する自車位置取得手段と、
前記カーブ形状及び前記自車両の位置に基づいて、車両に発生させる前後加速度指令値を演算する車両運動制御演算手段と、を有し、
前記車両運動制御演算手段は、自車両進行方向を正とする前後加速度指令値において、自車両がカーブ前からカーブに進入し、カーブ曲率が一定、もしくは最大になる地点まで走行する際に、負の前後加速度指令値を演算し、
前記負の前後加速度指令値は、前後加速度の時間変化である前後加加速度が、減速開始直後以外にカーブ進入前からカーブ曲率が一定、もしくは最大になる期間において増減される車両運動制御装置。
【請求項3】
請求項1記載の車両運動制御装置において、
前記複数の異なる前後加速度指令値は、前記カーブ前に自車両に最初の減速度を発生させ、その後略一定となる第1の前後加速度指令値と、前記カーブ進入開始前に自車両に発生する減速度が増加するよう変化する第2の前後加速度指令値と、を有し、
前記第1の前後加速度指令値の絶対値最大値は、前記第2の前後加速度指令値の絶対値最大値以下となる車両運動制御装置。
【請求項4】
請求項2記載の車両運動制御装置において、
前記負の前後加速度指令値は、カーブ進入前からカーブ曲率が一定、もしくは最大になる期間において、前後加速度の時間変化である前後加加速度の増減前よりも、前後加加速度の増減後の前記負の前後加速度指令値の絶対値が増加することを特徴とする車両運動制御装置。
【請求項5】
請求項1記載の車両運動制御装置において、
前記カーブ前での前後加速度指令値は、自車両の位置のカーブ曲率の時間変化によって異なり、
前記自車両の位置のカーブ曲率の時間変化が負の場合では、自車両の位置のカーブ曲率の時間変化が0以上の場合に比べ、前記カーブ前の前後加速度指令値の絶対値を小さくする車両運動制御装置。
【請求項6】
請求項2記載の車両運動制御装置において、
前記カーブ前での前後加速度指令値は、自車両の位置のカーブ曲率の時間変化によって異なり、
前記自車両の位置のカーブ曲率の時間変化が負の場合では、自車両の位置のカーブ曲率の時間変化が0以上の場合に比べ、前記カーブ前の前後加速度指令値の絶対値を小さくする車両運動制御装置。
【請求項7】
請求項1記載の車両運動制御装置において、
前記車両運動制御演算手段は、自車両の位置を原点として、前記自車両の位置から予め定めた距離、もしくは車両速度と予め定めた時間の積により得られる距離の位置におけるカーブ曲率の時間変化に基づいて、前後加速度の時間変化である前後加加速度の増減を発生させる前後加速度指令値の減少を生成する車両運動制御装置。
【請求項8】
請求項2記載の車両運動制御装置において、
前記車両運動制御演算手段は、自車両の位置を原点として、前記自車両の位置から予め定めた距離、もしくは車両速度と予め定めた時間の積により得られる距離の位置におけるカーブ曲率の時間変化に基づいて、前記前後加加速度の増減を発生させる前後加速度指令値の減少を生成する車両運動制御装置。
【請求項9】
請求項1記載の車両運動制御装置において、
前記車両運動制御演算手段は、前記自車両の前方のカーブ曲率又はカーブ曲率の時間変化割合と車両速度に基づいて、前後加速度の時間変化である前後加加速度の増減を発生させる前後加速度指令値の減少を生成する車両運動制御装置。
【請求項10】
請求項2記載の車両運動制御装置において、
前記車両運動制御演算手段は、前記自車両の前方のカーブ曲率又はカーブ曲率の時間変化割合と車両速度に基づいて、前記前後加加速度の増減を発生させる前後加速度指令値の減少を生成する車両運動制御装置。
【請求項11】
請求項1記載の車両運動制御装置において、
前記車両運動制御演算手段は、
自車両の速度を算出する自車速度算出手段と、
自車両進行方向のコース上に複数の予め定めた前方注視点を設定し、前記自車両の位置から前記前方注視点までの前方注視距離を算出する前方注視距離算出手段と、
前記前方注視距離におけるカーブ曲率及びカーブ曲率の時間変化を算出するカーブ曲率算出手段と、
前記前方注視距離におけるカーブ曲率及びカーブ曲率の時間変化と、前記車両速度と、に基づいて前後加速度指令値を演算する前後加速度指令値演算手段と、を有する車両運動制御装置。
【請求項12】
請求項1記載の車両運動制御装置において、
自車両の速度と前後加速度の少なくとも1つの車両運動情報を取得する車両運動情報取得手段と、
ドライバから要求するドライバ要求前後加速度を取得するドライバ入力情報取得手段と、
車両の横加加速度に基づく横運動連係前後加速度を取得する横運動連係前後加速度取得手段と、
自車両が走行する路面の路面摩擦係数及び路面縦断勾配の路面情報を取得する路面情報取得手段と、を有し、
前記車両運動制御演算手段は、前記カーブ形状と、前記自車両の位置と、前記車両運動情報と、前記ドライバ要求前後加速度と、前記横運動連係前後加速度と、前記路面情報と、に基づいて、車両に発生させる前後加速度指令値を演算する車両運動制御装置。
【請求項13】
請求項12記載の車両運動制御装置において、
前記ドライバ入力情報取得手段は、前後加速度制御スイッチのON又はOFFを検知し、前後加速度制御スイッチON/OFF情報を出力し、
前記車両運動制御演算手段は、
自車両進行方向のコース上に複数の予め定めた前方注視点を設定し、前記自車両の位置から前記前方注視点までの前方注視距離を算出する前方注視距離算出手段と、
前記前後加速度制御スイッチON/OFF情報と、前記自車両の速度と、前記カーブ形状と、前記自車両の位置と、前記横運動連係前後加速度と、に基づいて前後加速度制御モードを演算する前後加速度制御モード演算手段と、
演算された前記前後加速度制御モードに基づいて、前記前方注視距離におけるカーブ曲率及びカーブ曲率の時間変化を算出するカーブ曲率算出手段と、
前記前方注視距離におけるカーブ曲率及びカーブ曲率の時間変化と、前記車両速度と、に基づいて前後加速度指令値を演算する前後加速度指令値演算手段と、
演算された前記前後加速度制御モードに基づいて、演算された前記前後加速度指令値を実現する制御指令値を出力する制御指令値出力手段と、を有する車両運動制御装置。
【請求項14】
請求項1記載の車両運動制御装置において、
前記車両運動制御演算手段と、前記車両運動制御装置外の車載電子制御器と、情報の通信をする車両通信手段を有する車両運動制御装置。
【請求項15】
請求項1,2,13の少なくとも1項に記載の車両運動制御装置において、
前方注視点は、車両速度と予め設定される前方注視時間の積により得られる距離、もしくは、車両の前後加速度と前記前方注視時間の積に車両速度を加算して得られた第1の前方注視点速度と、前方注視点位置におけるカーブ曲率、および前方注視距離に基づいて作成される第2の前方注視点速度と、のどちらか小さい方の値を前方注視点速度とし、前記前方注視点速度の積分により得られる距離に基づいて設定される車両運動制御装置。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【図8】
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【図9】
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【図10】
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【図11】
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【図12】
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【図13】
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【図14】
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【図15】
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【図16】
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【図17】
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【図18】
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【図19】
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【図20】
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【図21】
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【図22】
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【公開番号】特開2012−30674(P2012−30674A)
【公開日】平成24年2月16日(2012.2.16)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2010−171304(P2010−171304)
【出願日】平成22年7月30日(2010.7.30)
【出願人】(509186579)日立オートモティブシステムズ株式会社 (2,205)
【Fターム(参考)】