説明

車両駆動用電源装置

【課題】リレースイッチを介して電圧源から電圧が印加される車両駆動用電源装置において、簡単な構成でリレースイッチの電気的負担を軽減することを目的とする。
【解決手段】電池10から2つの電圧印加端の間に出力された電圧をスイッチング制御により昇圧し、昇圧後の電圧をインバータ36に出力する昇圧コンバータ34と、電圧印加端の間に接続される低圧側コンデンサ16と、電池10の正極から電圧印加端の一方へと至る経路に設けられ、電池10の正極と低圧側コンデンサ16の一端との間に設けられる第1リレースイッチ12と、電圧印加端の他方から電池10の負極へと至る経路に設けられ、電圧印加端の他方と低圧側コンデンサ16の他端との間に設けられる第2リレースイッチ14とを備える。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、リレースイッチを介して電圧源から電圧が印加される車両駆動用電源装置に関する。
【背景技術】
【0002】
モータの駆動力によって走行する電気自動車、ハイブリッド自動車等が広く用いられている。このような電力駆動車両は、モータに電力を供給するための電池、電池の出力電圧を昇圧し、昇圧後の電圧をモータ駆動用の回路に出力する昇圧コンバータ等を備える。
【0003】
電池の正極から昇圧コンバータに至るまでの経路、および昇圧コンバータから電池の負極に至るまでの経路には、それぞれ、リレースイッチが設けられる。車両の運転開始時には各リレースイッチをオンにすることにより、電池の出力電圧が昇圧コンバータに印加され、昇圧コンバータを介して電池からモータ駆動用の回路に電力が供給される。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【特許文献1】特開2007−288899号公報
【特許文献2】特開2007−295699号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
このような電力駆動車両においては、リレースイッチをオフからオンにしたときに、リレースイッチに大きい初期電流が流れる。リレースイッチに大きい電流が流れると、その接点が溶着する可能性が高くなる。そこで、従来は、抵抗器および補助リレースイッチを直列接続したプリチャージ回路をリレースイッチに並列接続した構成を採用していた。この構成では、先にプリチャージ回路をオンにした後に、プリチャージ回路に並列接続されたリレースイッチをオンにすることで、リレースイッチに大きい初期電流が流れることを回避する。しかし、このような構成では、リレースイッチとは別にプリチャージ回路を設ける必要があるため部品点数が増加するという問題があった。
【0006】
本発明はこのような課題に対してなされたものである。すなわち、リレースイッチを介して電圧源から電圧が印加される車両駆動用電源装置において、簡単な構成でリレースイッチの電気的負担を軽減することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0007】
本発明は、電圧源から2つの電圧印加端の間に出力された電圧をスイッチング制御により調整し、調整後の電圧をモータ駆動回路に出力するスイッチング回路と、前記電圧印加端の間に接続されるコンデンサと、前記電圧源の一端から前記電圧印加端の一方へと至る経路に設けられ、前記電圧源の一端と前記コンデンサの一端との間に設けられる第1スイッチと、前記電圧印加端の他方から前記電圧源の他端へと至る経路に設けられ、前記電圧印加端の他方と前記コンデンサの他端との間に設けられる第2スイッチと、を備えることを特徴とする。
【発明の効果】
【0008】
本発明によれば、リレースイッチを介して電圧源から電圧が印加される車両駆動用電源装置において、簡単な構成でリレースイッチの電気的負担を軽減することができる。
【図面の簡単な説明】
【0009】
【図1】本発明の実施形態に係る車両駆動システムの構成を示す図である。
【図2】第1リレースイッチおよび第2リレースイッチの制御電圧、ならびに、第1リレースイッチおよび第2リレースイッチに流れる電流を示す図である。
【図3】変形例に係る車両駆動システムの構成を示す図である。
【発明を実施するための形態】
【0010】
図1に本発明の実施形態に係る車両駆動システムの構成を示す。電池10の正極は、第1リレースイッチ12を介して低圧側コンデンサ16の一端およびインダクタ18の一端に接続される。低圧側コンデンサ16の他端は電池10の負極に接続される。インダクタ18の他端は、上トランジスタ20と下トランジスタ22との接続節点に接続される。
【0011】
上トランジスタ20および下トランジスタ22には、IGBT(Insulated Gate Bipolar Transistor)を用いることができる。上トランジスタ20のエミッタ端子は下トランジスタ22のコレクタ端子に接続される。下トランジスタ22のエミッタ端子は、第2リレースイッチ14を介して、低圧側コンデンサの他端および電池10の負極に接続される。上トランジスタ20のコレクタ端子とエミッタ端子との間、および下トランジスタ22のコレクタ端子とエミッタ端子との間には、それぞれ、エミッタ端子側をアノード端子としてフリーホイールダイオード24およびフリーホイールダイオード26が接続される。上トランジスタ20のコレクタ端子はインバータ側正極端子28に接続され、下トランジスタ22のエミッタ端子は、インバータ側負極端子30に接続される。インバータ側正極端子28とインバータ側負極端子30との間には、高圧側コンデンサ32が接続される。
【0012】
第2リレースイッチ14、低圧側コンデンサ16、インダクタ18、上トランジスタ20、下トランジスタ22、フリーホイールダイオード24、フリーホイールダイオード26、インバータ側正極端子28、インバータ側負極端子30、および高圧側コンデンサ32は、このような接続によって昇圧コンバータ34を構成する。第1リレースイッチ12および第2リレースイッチ14がオンの状態において、上トランジスタ20がオンであるときに下トランジスタ22がオフとなり、上トランジスタ20がオフであるときに下トランジスタ22がオンとなるよう、上トランジスタ20および下トランジスタ22のオンオフ制御を行うことで、電池10の出力電圧を昇圧し、昇圧後の電圧をインバータ側正極端子28とインバータ側負極端子30との間に出力することができる。インバータ側正極端子28とインバータ側負極端子30との間の電圧は、上トランジスタ20および下トランジスタ22のオンオフ時間を変化させることで調整することができる。
【0013】
インバータ側正極端子28およびインバータ側負極端子30にはインバータ36が接続される。インバータ36にはモータ38が接続される。インバータ36は、昇圧コンバータ34とモータ38との間で直流交流変換を行う。モータ38は、インバータ36から供給された電力に基づいて車両を加速し、または、インバータ36に電力を供給して車両を回生制動する。
【0014】
次に、第1リレースイッチ12および第2リレースイッチ14をオンにする制御について説明する。コントロールユニット40は、ある時刻t1に運転開始の操作が行われることにより第1リレースイッチ12をオンにする。そして、時刻t1から所定の時間経過した時刻t2に第2リレースイッチ14をオンにする。その後、コントロールユニット40は、運転操作および走行状態に応じて上トランジスタ20および下トランジスタ22のオンオフ制御を行う。なお、上トランジスタ20および下トランジスタ22のオンオフ制御は、第1リレースイッチ12および第2リレースイッチ14をオンにする制御と共に開始してもよい。
【0015】
図2(a)および(b)は、それぞれ、第1リレースイッチ12および第2リレースイッチ14の制御電圧を示す。横軸は時間を示し縦軸は電圧値を示す。第1リレースイッチ12および第2リレースイッチ14は制御電圧がHのときにオンになり制御電圧がLのときにオフになる。また、図2(c)および(d)は、それぞれ、第1リレースイッチ12および第2リレースイッチ14に流れる電流を示す。横軸は時間を示し縦軸は電流値を示す。
【0016】
時刻t1に第1リレースイッチ12をオンにすることで、第1リレースイッチ12には電池10の正極から第1リレースイッチ12および低圧側コンデンサ16を介して電池10の負極に至る電流が流れる。この電流は、低圧側コンデンサ16が充電され、その端子間電圧が電池10の出力電圧に近づくにつれて減少する。
【0017】
時刻t1の後の時刻t2に第2リレースイッチ14をオンにしたときには、電池10の正極および低圧側コンデンサ16の一端からインダクタ18、フリーホイールダイオード24、および高圧側コンデンサ32を介して低圧側コンデンサ16の他端および電池10の負極へと至る高圧側コンデンサ32の充電電流が流れる。
【0018】
この電流は、低圧側コンデンサ16の静電容量が十分大きい場合には、低圧側コンデンサ16から流出する電流が支配的となり、電池10の正極から流出する電流は微少となる。これによって、図2(c)に示されるように、時刻t2以降、第1リレースイッチ12に流れる電流を少なくすることができる。また、図2(d)に示されるように、第2リレースイッチ14には時刻t2以降、高圧側コンデンサ32の充電電流が流れる。
【0019】
また、時刻t2において下トランジスタ22がオンとなっていた場合には、電池10の正極および低圧側コンデンサ16の一端からインダクタ18、下トランジスタ22を介して低圧側コンデンサ16の他端および電池10の負極へと至る電流が流れる。この場合においても、下トランジスタ22を流れる電流は、低圧側コンデンサ16の静電容量が十分大きい場合には、低圧側コンデンサ16から流出する電流が支配的となり、電池10の正極から流出する電流は微少となる。
【0020】
仮に、第1リレースイッチ12の位置は図1のままとし、第2リレースイッチ14を低圧側コンデンサ16の下側の一端と電池10の負極との間に設けた構成とした場合には、第1リレースイッチ12および第2リレースイッチ14の電気的負担が重くなる可能性が高い。この場合において第1リレースイッチ12および第2リレースイッチ14をオンとした場合、第1リレースイッチ12および第2リレースイッチ14には、低圧側コンデンサ16に流れる電流およびインダクタ18に流れる電流を合わせた電流が流れるからである。
【0021】
本実施形態に係る回路構成および回路制御によれば、低圧側コンデンサ16の充電電流を第1リレースイッチ12に流し第2リレースイッチ14には流さないようにすると共に、第1リレースイッチ12からインダクタ18に流入する電流を小さくすることができる。これによって、第1リレースイッチ12および第2リレースイッチ14に大きい電流が流れることを回避することができ、これらの接点が溶着することを回避することができる。さらに、従来技術のようにプリチャージ回路を設けなくてもよいため、構成を簡単にすることができる。
【0022】
図3に本実施形態の変形例に係る車両駆動システムの構成を示す。図1の構成部と同一の構成部については同一の符号を付してその説明を省略する。この車両駆動システムは、並列接続された複数の単位コンデンサ42によって低圧側コンデンサを構成したものである。この場合、低圧側コンデンサを構成する単位コンデンサ42のうちの2つの単位コンデンサ42の下端の接続線に第2リレースイッチ14を設ける。
【0023】
この構成においても、コントロールユニット40は、第1リレースイッチ12をオンにした後所定時間が経過したときに、第2リレースイッチ14をオンにする。これによって、第2リレースイッチ14より電池10側にある単位コンデンサ42の充電電流を第1リレースイッチ12に流し第2リレースイッチ14には流さないようにすることができる。そして、電池10から流出し、第2リレースイッチ14よりインダクタ18側にある単位コンデンサ42およびインダクタ18に流入する電流を小さくすることができる。これによって、第1リレースイッチ12および第2リレースイッチ14に大きい電流が流れることを回避することができる。
【符号の説明】
【0024】
10 電池、12 第1リレースイッチ、14 第2リレースイッチ、16 低圧側コンデンサ、18 インダクタ、20 上トランジスタ、22 下トランジスタ、24,26 フリーホイールダイオード、28 インバータ側正極端子、30 インバータ側負極端子、32 高圧側コンデンサ、34 昇圧コンバータ、36 インバータ、38 モータ、40 コントロールユニット、42 単位コンデンサ。

【特許請求の範囲】
【請求項1】
電圧源から2つの電圧印加端の間に出力された電圧をスイッチング制御により調整し、調整後の電圧をモータ駆動回路に出力するスイッチング回路と、
前記電圧印加端の間に接続されるコンデンサと、
前記電圧源の一端から前記電圧印加端の一方へと至る経路に設けられ、前記電圧源の一端と前記コンデンサの一端との間に設けられる第1スイッチと、
前記電圧印加端の他方から前記電圧源の他端へと至る経路に設けられ、前記電圧印加端の他方と前記コンデンサの他端との間に設けられる第2スイッチと、
を備えることを特徴とする車両駆動用電源装置。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【公開番号】特開2010−220342(P2010−220342A)
【公開日】平成22年9月30日(2010.9.30)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2009−62762(P2009−62762)
【出願日】平成21年3月16日(2009.3.16)
【出願人】(000003207)トヨタ自動車株式会社 (59,920)
【Fターム(参考)】