説明

車両

【課題】内燃機関の排気系に設けられた触媒を燃料消費を抑制しつつ加熱できる車両を提供する。
【解決手段】車両に動力源として備わる内燃機関10の排気管20に設けられた触媒30に設置され、複数部材同士の摩擦により発熱可能な摩擦発熱機構304と、動力源の動力の一部を発熱に必要な力として摩擦発熱機構304へ伝達すると共に、その伝達経路にクラッチ302を備える伝達機構300Aとを有し、伝達機構300Aは、車両の減速時にクラッチ302が連結され、これにより、摩擦発熱機構304は制動力を車両の駆動軸50に及ぼすと共に触媒30を加熱する構成とした。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、駆動源として少なくとも内燃機関を備える車両に関する。
【背景技術】
【0002】
内燃機関の始動時や減速時には、排気系に設けられた触媒の温度は活性温度以下である、あるいは、活性温度以下に低下することがあるため、排気ガスの浄化の観点から、排気系に設けられた触媒を加熱してできるだけ速やかに活性させる必要がある。
【0003】
例えば、特許文献1は、内燃機関の内燃機関の排気系に設けられた触媒を加熱するために、触媒の外周に固定された第1の摩擦体の外周面に第2の摩擦体を係合させて第2の摩擦体をモータにより回転駆動させることにより摩擦熱を発生させ、触媒を加熱する技術を開示している。
【特許文献1】特開2003−239731号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
しかしながら、上記した技術では、摩擦体を回転駆動させるモータに供給する電力が必要であり、エネルギー消費が増加して燃料の消費量が増えるという問題が存在した。
【0005】
本発明は、上記の事情に鑑みて成されたものであり、その目的とするところは内燃機関の排気系に設けられた触媒を燃料消費を抑制しつつ加熱できる車両を提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0006】
本発明に係る車両は、車両に動力源として備わる内燃機関の排気系に設けられた触媒に設置され、複数部材同士の摩擦により発熱可能な摩擦発熱機構と、前記動力源の動力の一部を発熱に必要な力として前記摩擦発熱機構へ伝達すると共に、その伝達経路にクラッチを備える伝達機構とを有し、前記伝達機構は、前記車両の減速時に前記クラッチが連結され、これにより、前記摩擦発熱機構は制動力を車両の駆動軸に及ぼすと共に前記触媒を加熱することを特徴とする。
【0007】
上記構成において、動力源として電動モータをさらに有し、走行開始時に前記電動モータの動力のみで走行し、走行中の減速期間に前記クラッチが連結されて前記摩擦発熱機構が車両の駆動軸に制動力を及ぼすと共に前記触媒を加熱する構成を採用できる。
【0008】
上記構成において、前記触媒の活性後に、前記電動モータの動力のみで走行する場合に、前記触媒の温度を推定する触媒温度推定手段をさらに有し、前記触媒温度推定手段が推定する前記触媒の推定温度に基いて、前記伝達機構の前記クラッチが制御される、構成を採用できる。
【発明の効果】
【0009】
本発明によれば、内燃機関の排気系に設けられた触媒を燃料消費を抑制しつつ加熱可能な車両が得られる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0010】
以下、本発明の最良の実施形態について、添付図面を参照しつつ説明する。
【0011】
図1は、本発明の一実施形態に係る車両の要部構成を示す図である。
【0012】
この車両は、内燃機関10、この内燃機関10の排気管20に設けられた排気ガス浄化のための三元触媒等からなる触媒30、後述する動力伝達機構200から回転駆動力が伝達される駆動軸50、この駆動軸50から回転トルクが伝達される車輪60、車両を総合的に制御する電子制御ユニット(ECU)100、動力伝達機構200、伝達機構300A、摩擦発熱機構304等を備えている。
【0013】
摩擦発熱機構304は、複数部材同士の摩擦により発熱可能な構成を有している。具体的には、摩擦発熱機構304は、例えば、触媒30の外周に固定された第1の摩擦体と、この第1の摩擦体の外周面に係合させる第2の摩擦体とを備え、第2の摩擦体に伝達機構300Aから回転駆動力を供給する構成とすることがえできるが、このような構成に限定されるわけではなく、複数の部材同士の摩擦により発熱して触媒30を加熱できる構成であればよい。
【0014】
伝達機構300Aは、歯車機構300,303、伝達軸301、クラッチ302等から構成される。
【0015】
歯車機構300は、駆動軸50の回転トルク(動力)の一部を伝達軸301に伝達するように、互いに噛合する複数の歯車で構成されている。
【0016】
伝達軸301は、歯車機構300から伝達される回転トルクを歯車機構303に伝達する。
【0017】
クラッチ302は、例えば、電磁クラッチ等から構成され、伝達軸301の途中に設けられ、上記したECU100からの制御指令に応じて連結、開放される。クラッチ302が連結された状態では、駆動軸50の回転トルクは、伝達軸301を介して歯車機構303に伝達され、クラッチ302が開放された状態では、駆動軸50の回転トルクは、歯車機構303に伝達されない。
【0018】
歯車機構303は、伝達軸301を通じて供給される回転トルクを摩擦発熱機構304へ伝達するように、互いに噛合する複数の歯車で構成されている。
【0019】
動力伝達機構200は、動力分割機構201、発電機及び動力源として機能するジェネレータ202、動力分割機構201から伝達される回転を減速して駆動軸50へ伝達する減速機203、動力源として機能するモータ204、インバータ210、バッテリ220等から構成される。
【0020】
インバータ210は、ECU100により制御され、直流/交流変換を行うと共に、バッテリ220、ジェネレータ202及びモータ204との間で電力の授受を行う。
【0021】
バッテリ220は、充電した直流電力をインバータ210へ供給し、また、インバータ210から供給される直流電力を充電する。
【0022】
動力分割機構201は、上記したECU100により制御され、内燃機関10と、ジェネレータ202と、減速機203と、モータ204との間で動力(回転トルク)の授受を行う。
【0023】
例えば、内燃機関10の始動時には、動力分割機構201は、内燃機関10のクランキングのために、ジェネレータ202から供給される回転トルクを内燃機関10へ供給する。
【0024】
車両の停車中に、バッテリ220の充電状態が低下したような場合には、内燃機関10の動力をジェネレータ202へ供給して発電させる。
【0025】
車両の発進時、通常走行時等には、モータ204の回転トルクを減速機203へ伝達して駆動軸50を回転駆動させる。
【0026】
定常走行時などの内燃機関の効率のよい運転領域では、内燃機関10の動力を減速機203に伝達して駆動軸50を回転駆動させると共に、内燃機関10の動力の一部を、ジェネレータ202へ供給する。このとき、モータ204の回転トルクを減速機203に追加的に伝達することもできる。
【0027】
次に、上記構成の車両における伝達機構300A及び摩擦発熱機構304の制御方法の一例について説明する。
【0028】
ECU100は、車両の走行中、通常は、伝達機構300Aのクラッチ302を開放する、すなわち、摩擦発熱機構304を動作させないようにする。そして、車両の減速時には、伝達機構300Aのクラッチ302を連結させて、摩擦発熱機構304を動作させる。これにより、摩擦発熱機構304は、車両に制動力を与えるブレーキとして機能するとともに、その摩擦熱により触媒30を加熱する。すなわち、車両の減速時に、摩擦発熱機構304が車両の減速をアシストしつつ、触媒30を加熱する。
【0029】
このとき、摩擦発熱機構304が車両に及ぼす制動力は、クラッチ302の滑り量を制御することで調整可能である。また、別の方法として、摩擦発熱機構304における摩擦部材同士の面圧を調整する面圧調整機構を設けて、この面圧を制御することにより摩擦発熱機構304が車両に及ぼす制動力を調整可能である。さらに、歯車機構300や歯車機構303をその減速比を可変できる構造のものとし、摩擦発熱機構304に伝達される回転数を可変にすることでも、摩擦発熱機構304が車両に及ぼす制動力を調整可能である。
【0030】
尚、歯車機構300や歯車機構303の減速比は、駆動軸50側からみてできるだけ低いほうが摩擦発熱機構304の摩擦部材を高速で回転させるのには有利であるが、自己のイナーシャの加速分によりトルクを消費するため、車両毎に最適値が存在する。
【0031】
次に、上記構成の車両におけるECU100による伝達機構300A及び摩擦発熱機構304の制御方法の他の例について図2を参照して説明する。
【0032】
図2に示すように、車両の走行開始当初はモータ204の動力のみで走行するEV走行を実施する。走行開始時に内燃機関10を始動させないので、このEV走行中に排気ガスは排出されず、また、触媒30も活性温度以下である。
【0033】
そして、上記EV走行中の減速時において、伝達機構300Aのクラッチ302を連結し、触媒30を加熱する。同時に、外気温度、摩擦発熱機構304の回転数、摩擦発熱機構304の動作回数等の触媒30の温度変化に影響を及ぼす情報に基いて触媒30の温度を推定する。
【0034】
図2に示すように、触媒30の推定温度が触媒活性温度を越えたところで、内燃機関10の始動を許可する。これにより、内燃機関10の始動時には触媒30が既に活性状態になっているので、内燃機関1の始動直後から排気ガスを浄化することができる。
【0035】
また、例えば、触媒30の温度が活性温度以上になっている状態で、長時間EV走行(モータ204の動力のみで走行)を続けたような場合には、図2の円Aに示すように、触媒30の温度が活性温度よりも低下する可能性がある。
【0036】
このため、外気温度、燃料カット時間、触媒30への流入空気量等の触媒30の温度変化に関わる情報から触媒30の温度を常時推定し、この推定温度が活性温度を下回るかを常に監視する。
【0037】
そして、触媒30の推定温度が活性温度を下回り、かつ、車両の減速時に、伝達機構300Aのクラッチ302を連結し、触媒30を加熱し、触媒30の温度を活性温度以上に保持させる。これにより、エネルギー消費を抑えつつ内燃機関1の始動に備えることができる。
【0038】
上記実施形態では、いわゆるハイブリッド車両を例示したが、これに限定されるわけではなく、動力源が内燃機関のみの車両にも本発明を適用可能である。
【0039】
また、触媒30の温度を推定する構成としたが、触媒30に温度センサを設けて触媒30の温度を直接検出することも可能である。
【図面の簡単な説明】
【0040】
【図1】本発明の一実施形態に係る車両の要部構成を示す図である。
【図2】走行状態、触媒温度及び車速との関係を示す図である。
【符号の説明】
【0041】
10 内燃機関
20 排気管(排気系)
30 触媒
50 駆動軸
60 車輪
100 ECU
200 動力伝達機構
201 動力分割機構
202 ジェネレータ
203 減速機
204 モータ
210 インバータ
220 バッテリ
300 歯車機構(伝達機構)
301 伝達軸(伝達機構)
302 クラッチ(伝達機構)
303 歯車機構(伝達機構)
304 摩擦発熱機構

【特許請求の範囲】
【請求項1】
車両に動力源として備わる内燃機関の排気系に設けられた触媒に設置され、複数部材同士の摩擦により発熱可能な摩擦発熱機構と、
前記動力源の動力の一部を発熱に必要な力として前記摩擦発熱機構へ伝達すると共に、その伝達経路にクラッチを備える伝達機構と、を有し、
前記伝達機構は、前記車両の減速時に前記クラッチが連結され、これにより、前記摩擦発熱機構は制動力を車両の駆動軸に及ぼすと共に前記触媒を加熱することを特徴とする車両。
【請求項2】
動力源として電動モータをさらに有し、
走行開始時に前記電動モータの動力のみで走行し、走行中の減速期間に前記クラッチが連結されて前記摩擦発熱機構が車両の駆動軸に制動力を及ぼすと共に前記触媒を加熱することを特徴とする請求項1に記載の車両。
【請求項3】
前記触媒の活性後に、前記電動モータの動力のみで走行する場合に、前記触媒の温度を推定する触媒温度推定手段をさらに有し、
前記触媒温度推定手段が推定する前記触媒の推定温度に基いて、前記伝達機構の前記クラッチが制御される、ことを特徴とする請求項2に記載の車両。

【図1】
image rotate

【図2】
image rotate


【公開番号】特開2009−264106(P2009−264106A)
【公開日】平成21年11月12日(2009.11.12)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2008−110524(P2008−110524)
【出願日】平成20年4月21日(2008.4.21)
【出願人】(000003207)トヨタ自動車株式会社 (59,920)
【Fターム(参考)】