車体前部構造
【課題】衝突形態によらず、斜め方向からの入力に対しても高い車体反力を実現することの可能な車両前部構造を提供すること。
【解決手段】本発明の車体前部構造では、エンジンルーム上部両側縁部に延設された上部骨格構造部材3と、各上部骨格構造部材3の下方に延設された下部骨格構造部材7と、上部骨格構造部材3及び下部骨格構造部材7の各前端及び後端同士をそれぞれ連結する前側連結部材5及び後側連結部材13,21と、上部骨格構造部材3及び下部骨格構造部材7の各中間部同士を連結するジョイント部材15とを備え、車体側視方向から見てエンジンルームの前部及び後部にそれぞれ環状構造が構築されている。上部骨格構造3の前端部とジョイント部材15とを結合するサブメンバ17が設けられており、上部骨格構造3の前方部、ジョイント部材15、及び、サブメンバ17が、平面視及び側面視の双方で三角形を形成するように配置されている。
【解決手段】本発明の車体前部構造では、エンジンルーム上部両側縁部に延設された上部骨格構造部材3と、各上部骨格構造部材3の下方に延設された下部骨格構造部材7と、上部骨格構造部材3及び下部骨格構造部材7の各前端及び後端同士をそれぞれ連結する前側連結部材5及び後側連結部材13,21と、上部骨格構造部材3及び下部骨格構造部材7の各中間部同士を連結するジョイント部材15とを備え、車体側視方向から見てエンジンルームの前部及び後部にそれぞれ環状構造が構築されている。上部骨格構造3の前端部とジョイント部材15とを結合するサブメンバ17が設けられており、上部骨格構造3の前方部、ジョイント部材15、及び、サブメンバ17が、平面視及び側面視の双方で三角形を形成するように配置されている。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、車体前部構造、詳しくはエンジンコンパートメントの構造に関する。
【背景技術】
【0002】
従来、車両のエンジンコンパートメントは、例えば車体前部に配設されており、車体前端に設けられたシュラウドメンバ、車体側部に配設された上部側のフードリッジメンバ及び下部側のサイドメンバ、これらのフードリッジメンバ及びサイドメンバの後端に配設されたダッシュパネルなどによって画成されている。下記[特許文献1]には、ガラス繊維強化されたプラスチックによって構成された車体前部構造が開示されている。
【特許文献1】特開2003−246281号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0003】
上記[特許文献1]に記載の車体前部構造では、車体前方からの衝突荷重を車両前後方向に真っ直ぐ受ける構造となっているようである。このような構造では、斜め方向からの衝突荷重が入力された際に、エンジンコンパートメントを構成する骨格構造に曲げ入力が生じて折れ変形が生じやすい。即ち、車両前後方向に真っ直ぐに入力に対して、斜めからの入力に関しては車体反力が低下するという傾向がある。従って、本発明は、衝突形態によらず、斜め方向からの入力に対しても高い車体反力を実現することの可能な車両前部構造を提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0004】
本発明の車体前部構造では、車体前部のエンジンルームの上部両側縁部に車体前後方向に延設された一対の上部骨格構造部材と、各上部骨格構造部材の下方に車体前後方向にそれぞれ延設された下部骨格構造部材と、車体各側部において上部骨格構造部材及び下部骨格構造部材の各前端同士を連結する前側連結部材と、車体各側部において上部骨格構造部材及び下部骨格構造部材の各後端同士を連結する後側連結部材と、上部骨格構造部材及び下部骨格構造部材の各中間部同士を連結するジョイント部材とを備え、車体側視方向から見てエンジンルームの前部及び後部にそれぞれ環状骨格構造が構築されている。そして、車体各側部において、上部骨格構造の前端部とジョイント部材とを結合するサブメンバがそれぞれ設けられており、上部骨格構造の前方部、ジョイント部材、及び、サブメンバが、平面視及び側面視の双方で三角形を形成するように配置されている。
【発明の効果】
【0005】
本発明の車体前部構造によれば、エンジンコンパートメントの前部と後部に、側面視で環状に構成された前側環状骨格部と後側環状骨格部とをそれぞれ形成しているため、車体のエンジンコンパートメント部分の剛性、特に上下方向の入力荷重に対する剛性を大幅に向上させることができる。また、上部骨格構造の前方部、ジョイント部材の上方部、及び、サブメンバが、平面視及び側面視の双方で三角形が形成されるように配置されているため、衝突形態によらず(正突・オフセット・斜突)、衝突荷重の入力によって上部骨格構造の前方部及びサブメンバがジョイント部材に引っ張り力を作用させる。この引っ張り力にジョイント部材が抗することで高い車体反力が実現される。
【発明を実施するための最良の形態】
【0006】
以下、本発明の車体前部構造の一実施形態について、図面を参照しつつ説明する。図1は、本実施形態の車体前部構造(エンジンコンパートメント構造)を示す斜視図である。車体前部には、内部にエンジン等の車両部品を搭載するためのエンジンコンパートメント1(エンジンルーム)が設けられている。エンジンコンパートメント1の左右両側の上部には、車両前後方向に沿って左右一対のフードリッジメンバ(上部骨格構造部材)3,3が延設されており、フードリッジメンバ3,3の前端には前側連結部材5,5の上端がそれぞれ結合されている。
【0007】
また、フードリッジメンバ3の下方で、エンジンコンパートメント1の下端部には、平面視略H字状のサスペンションメンバ(下部骨格構造部材)7が配設されている。サスペンションメンバ7は、車体の左右両側に前後方向に沿って延びる側部9,9と、これら側部9,9の後端同士を車体幅方向に結合させる連接部11とからなる。側部9の前端9aが上述した前側連結部材5の下端と結合されており、側部9の後端9bが後述する取付部材13に結合されている。
【0008】
フードリッジメンバ3の中間部とサスペンションメンバ7とは、ジョイントメンバ(ジョイント部材)15によって連結されている。ジョイントメンバ15の上端15aはフードリッジメンバ3の車幅方向内側の側面に締結され、下端15bはサスペンションメンバ7の側部の中間部分に締結されている。さらに、フードリッジメンバ3とサスペンションメンバ7との間には、車両前後方向に沿って延びるサブメンバ17及びサイドメンバ19が配設されている。前側のサブメンバ17は、前側連結部材5とジョイントメンバ15とを前後方向に沿って連結している。また、後側のサイドメンバ19は、ジョイントメンバ15とダッシュパネル下部の取付部材13とを連結している。この取付部材13は、ダッシュパネル23の下部に配設され、ピラーロア部材21に繋がっている。取付部材13及びピラーロア部材21によって後側連結部材が構成されている。サスペンションメンバ7の後端9b及びサイドメンバ19は、取付部材13及びピラーロア部材21を介して、フードリッジメンバ3に繋がっている。
【0009】
また、エンジンコンパートメント1の後端には、ダッシュパネル23が配設されており、ダッシュパネル23を介して、エンジンコンパートメント1と車両室内とが分離されている。ダッシュパネル23の上部には、車幅方向に沿ってカウルボックス(エアボックス)25が延設され、カウルボックス25の左右両端は、左右のピラーロア部材21,21同士を車体幅方向で結合させている。また、カウルボックス25の左右両端とジョイントメンバ15の上端との間には、サスペンションタワー27が配設されている。なお、フードリッジメンバ3の前端同士は、車幅方向に延びる支持メンバ29によって連結され、前側連結部材5の下端同士は、取付メンバ31によって連結されている。
【0010】
図2は、図1の側面図である。図3は、図1の平面図(車両左側のみ)である。エンジンコンパートメント1を車体側方から見ると、前部と後部とにそれぞれ前側環状骨格部33と後側環状骨格部35とが形成されている。前側環状骨格部33は、フードリッジメンバ3、サスペンションメンバ7、前側連結部材5、及び、ジョイントメンバ15から構成され、側面視ほぼ台形状に形成されている。また、後側環状骨格部35は、フードリッジメンバ3、サスペンションメンバ7、ジョイントメンバ15、及び、後側連結部材(ピラーロア部材21・取付部材13)とから構成され、側面視ほぼ矩形状に形成されている。また、フードリッジメンバ3の前方部、ジョイント部材15、及び、サブメンバ7が、平面視(図3)及び側面視(図2)の双方で三角形を形成するように配置されている。
【0011】
図4は図1のエンジンコンパートメントを前後に分割した状態を示す分解斜視図、図5は図4の分割した前側エンジンコンパートメントにエンジン等を組み付けた状態を示す分解斜視図である。本実施形態のエンジンコンパートメントは、図4及び図5に示されるように、当初は分割されて構築された前後部構造を結合させて構成されている。図5に示すように、分割した前側エンジンコンパートメント37にエンジン51等の車両部品39やその他の部品(サスペンション53、ステアリングラック[図示せず]、ラジエータ55、及びヘッドランプ79)を搭載したのち、前側エンジンコンパートメント37と後側エンジンコンパートメント41とを結合させることにより、車体前部の組付作業が完了する。
【0012】
本実施形態においては、フードリッジメンバ3が前後に2分割されて前側フードリッジメンバ43と後側フードリッジメンバ45とから構成されている。前側フードリッジメンバ43と後側フードリッジメンバ45との結合部47は、ジョイントメンバ15の上端15aと前側フードリッジメンバ43との連結部49の後側に設定されている。また、本実施形態では、サスペンションメンバ7は分割されておらず、サスペンションメンバ7の側部9の後端9bがダッシュパネル23の下部に設けられた取付部材13に締結されている。そして、サイドメンバ19の後端部は前記取付部材13に支持されており、前端部がジョイントメンバ15に締結可能に構成されている。
【0013】
図6は本実施形態のエンジンコンパートメントに下方向の荷重が入力された後の変形状態を示す車体前部の側面図、図7は比較例のエンジンコンパートメントに下方向の荷重が入力された後の変形状態を示す車体前部の側面図である。本実施形態によるエンジンコンパートメント1では、上述したように、環状骨格部33,35が形成されて車体前部の剛性が向上している。このため、図6に示すように、車体前部に下方向の荷重Fが入力された場合に、この荷重Fを環状骨格部33,35によって確実に受け止めるので、車体前部の下方への変形量は小さくなる。一方、図7に示した比較例のエンジンコンパートメント2には、本実施形態のような環状骨格部が設けられていない。このため、荷重Fが入力された場合に、この荷重Fをエンジンコンパートメント2で確実に受け止めることができず、図7に示すように、車体前部の下方への変形量が大きくなる。
【0014】
上述したように、本実施形態の車体前部構造は、前側環状骨格部33と後側環状骨格部35とを有している。このため、エンジンコンパートメント1の剛性が大幅に向上する。また、エンジンコンパートメントを構成する各部材の板厚を薄くして軽量化を図っても、従来構造と同等の剛性を維持することができる。また、サブメンバ17及びサイドメンバ19によって、前記前側環状骨格部33と後側環状骨格部35をそれぞれ補強しているため、エンジンコンパートメント1の剛性が更に向上する。また、エンジンコンパートメント1を前後に分割し、エンジン51などの部品を搭載後にこれらを結合する構造としてある。このため、車両組立工程を大幅に簡素化することができる。また、後側エンジンコンパートメント41がない状態でも、前記車両部品39を前側エンジンコンパートメント37に組み付けることができるため、車両部品39の搭載作業が非常に容易になる。
【0015】
さらに、上述したように、フードリッジメンバ3の前方部、ジョイント部材15、及び、サブメンバ7が、平面視(図3)及び側面視(図2)の双方で三角形を形成するように配置されている。フードリッジメンバ3とサブメンバ17との結合点、フードリッジメンバ3とジョイント部材15との結合点、及び、サブメンバ17とジョイント部材15との結合点、の計三点を頂点として三角形が形成されている。この三角形の一つの頂点(フードリッジメンバ3とサブメンバ17との結合点)は車両前方に向けられており、残りの二つの頂点を結んだ辺は車両幅方向又は上下方向にほぼ平行である。
【0016】
このため、図2及び図3中に矢印によって示されているように、車両衝突時などに車両前方から荷重入力があったときは、フードリッジメンバ3及びサブメンバ17にその荷重が分散伝達されて、ジョイント部材15に対して引っ張り力を作用させる。ジョイント部材15がこの引っ張り力に対抗するため、骨格部材の折れ等による車体反力低下をもたらすことなく、高い車体反力を実現することができる。高い車体反力によって、衝突エネルギーの効率的な吸収を行うことができる。
【0017】
このようなジョイント部材15の引っ張りによる車体反力の確保は、車両前方からの入力角度によらない。即ち、車両真正面からの入力であっても、斜めからの入力であっても、ジョイント部材15の引っ張りによって車体反力が確保される。また、車体の左右何れか一方に対する荷重入力に対しても、荷重入力側のみで成立する。なお、車体側視及び平面視の双方で三角形を形成するように骨格構造が構成されているため、衝突時などの荷重入力によって三角形全体が倒れるように骨格構造が変形してしまうようなことも発生しにくくなっている。
【0018】
図8に、本実施形態におけるサスペンションタワー27(車両右側)付近の拡大斜視図を示す。図8に示されるように、サスペンションタワー27は、フードリッジメンバ3に結合されている(一体的にプレス成形されてもよい)。そして、フードリッジメンバ3に結合されている上述したジョイントメンバ15の上端15aは、サスペンションタワー27の前面側にも結合されている。さらに、本実施形態では、サスペンションタワー27の後面側は、カウルボックス25と接続されている。
【0019】
このため、サスペンションからの入力は、サスペンションタワー27を介して、フードリッジメンバ3やジョイントメンバ15などの骨格構造に伝達されるため、車両剛性が確保される。本実施形態ではさらに、サスペンションからの入力は、カウルボックス25自体や、カウルボックス25を介してピラーロア部材21などの骨格構造にも伝達されるため、車両剛性が一層確保される。このように剛性を確保しやすいため、サスペンションタワー27に図8中一点鎖線で示したようなスカート部28を剛性確保のために設ける必要もなくなり、材料減や軽量化の効果もある。
【0020】
サスペンションタワー27部分を車両前後方向に切断した断面模式図を図9及び図10に示す。図9及び図10は、サスペンションタワー27と、ジョイントメンバ15又はカウルボックス25との接合相互位置のバリエーションを示している。図9はサスペンションタワー27とジョイントメンバ15との接合バリエーションを、図10はサスペンションタワー27とカウルボックス25との接合バリエーションを示している。なお、図中○で示した位置が接合箇所である。この接合は、溶接であっても良いし、ボルトナットなどによる溶接であってもよい。
【0021】
図9(a)では、サスペンションタワー27の上面とジョイントメンバ15の上面とが同じ高さとなるようにしている。このようにすると、サスペンションタワー27への入力をジョイントメンバ15に効率的に伝達させることができ、前後剛性を効率的に向上させることができる。図9(b)では、サスペンションタワー27の上面がジョイントメンバ15の上面よりも高くなるようにしており、図9(c)では、サスペンションタワー27の上面がジョイントメンバ15の上面よりも低くなるようにしている。このように、サスペンションタワー27に対してジョイントメンバ15を上下にオフセットさせると、車両衝突時にジョイントメンバ15の前方から荷重入力があった際にジョイントメンバ15をねじるモーメントが発生しやすい。この結果、サスペンションタワー27が潰れやすくなり、これによって衝突エネルギーを吸収しやすくなる。
【0022】
図10(a)では、サスペンションタワー27の上面とカウルボックス25の上面とが同じ高さとなるようにしている。このようにすると、サスペンションタワー27への入力をカウルボックス25に効率的に伝達させることができ、前後剛性を効率的に向上させることができる。図10(b)では、サスペンションタワー27の上面がカウルボックス25の上面よりも高くなるようにしており、図10(c)では、サスペンションタワー27の上面がカウルボックス25の上面よりも低くなるようにしている。このように、サスペンションタワー27に対してカウルボックス25を上下にオフセットさせると、車両衝突時に前方から荷重入力があった際にカウルボックス25に対してモーメントが発生しやすい。この結果、カウルボックス25が潰れやすくなり、これによって衝突エネルギーを吸収しやすくなる。なお、図9(a)〜(c)及び図10(a)〜(c)は任意の組み合わせで適用可能である。
【0023】
上述したように、本実施形態におけるエンジンコンパートメント1は、前後に分割されたものが一体化された構造を備えている。図11に、図8に示した部分の分割状態を示す。図11に示されるように、フードリッジメンバ3は、前側フードリッジメンバ43と後側フードリッジメンバ45とに分割されている。ジョイントメンバ15は、前側フードリッジメンバ43に予め結合されており、サスペンションタワー27は、後側フードリッジメンバ45に予め結合されている(一体的に形成されていてもよい)。そして、前側フードリッジメンバ43と後側フードリッジメンバ45とが結合されると共に、ジョイントメンバ15の上端15aとサスペンションタワー27とが結合される。
【0024】
このような結合状態とすることで、前側フードリッジメンバ43と後側フードリッジメンバ45との結合部(締結部)で荷重伝達が行われると共に、ジョイントメンバ15の上端15aとサスペンションタワー27との結合部(締結部)でも外力を支持でき、剛性を向上させることができる。また、接合点数も増え、接合範囲が車体幅方向に長くとれるため、モーメントに対しても高い剛性を確保することができる。
【0025】
なお、図11では、前側フードリッジメンバ43と後側フードリッジメンバ45との分割位置が、ジョイントメンバ15とサスペンションタワー27との境界部分に一致されていた。しかし、この分割位置は、前側あるいは後側に移動させることができる。この場合の平面図を図12に示す。図12(a)が、図11の分割位置の場合を示している。これに対して、図12(b)は、前側フードリッジメンバ43と後側フードリッジメンバ45との分割位置を、ジョイントメンバ15の前後方向幅内に位置させた例である。この場合は、後側フードリッジメンバ45とジョイントメンバ15との結合も行っている。図12(c)は、前側フードリッジメンバ43と後側フードリッジメンバ45との分割位置を、サスペンションタワー27の前後方向幅内に位置させた例である。この場合は、前側フードリッジメンバ43とサスペンションタワー27との結合も行っている。
【0026】
上述したように、各上部骨格構造部材は内側にサスペンションタワーをそれぞれ備えており、各ジョイント部材の上部骨格構造部材側の端部近傍がサスペンションタワーの前面側にそれぞれ結合されている。上下方向の入力荷重が顕著な箇所であるサスペンションタワーの前面側をジョイント部材と結合させることで、サスペンションからの入力を上部骨格構造部材とジョイント部材とで受けることができ、上下方向の入力荷重に対する剛性を効果的に向上させることができる。エンジンコンパートメントの剛性を向上させるために、フードリッジメンバ等の骨格部材の板厚を厚くしたり高強度の材質のものを用いたりすると、部品コストが高くなってしまったり、車体重量が増加してしまったりという弊害があるが、上述したように、サスペンションタワーの前面側をジョイント部材と結合させることで、このような弊害を回避できる。
【0027】
また、各上部骨格構造部材は、ジョイント部材が結合された前側上部骨格構造部材とサスペンションタワーが結合された後側上部骨格構造部材とに分割されており、前側上部骨格構造部材及びジョイント部材と後側上部骨格構造部材及びサスペンションタワーとを結合させて構成されたものである。このため、前側上部骨格構造部材と後側上部骨格構造部材との結合部(締結部)で荷重伝達が行われると共に、ジョイント部材とサスペンションタワーとの結合部(締結部)でも外力を支持でき、剛性を向上させることができる。また、接合点数も増え、接合範囲が車体幅方向に長くとれるため、モーメントに対しても高い剛性を確保することができる。
【0028】
また、一対の上部骨格構造部材の後端がカウルボックスによって車両幅方向で結合されており、サスペンションタワーの後面側がカウルボックスに結合されている。このため、サスペンションからの入力をジョイント部材だけでなくカウルボックスでも支持でき、同一質量でさらに高い剛性を得ることができる。等剛性を得るだけでよければ、板厚などを薄くすることができ、軽量化を行うことができる。
【0029】
本発明の車体前部構造は、上述した実施形態に限定されるものではない。たとえば、下部骨格構造部材の分割位置は、図13のような分割位置としてもよい。この例では、エンジンコンパートメント1が、前側エンジンコンパートメント57と後側エンジンコンパートメント59とから構成されている。サスペンションメンバ7においては、側部9が前後に2分割されており、側部9の前部側63と後部側65とが締結可能に構成されている。これらの前部側63と後部側65との結合部66は、ジョイントメンバ15の下端と側部9の前部側63との連結部64の後側に設定されている。そして、サイドメンバ19の後端は取付部材13に支持されており、前端がジョイントメンバ15に締結可能に構成されている。
【図面の簡単な説明】
【0030】
【図1】本発明の車体前部構造の一実施形態におけるエンジンコンパートメントを示す斜視図である。
【図2】図1の側面図である。
【図3】図1の平面図(車体左側のみ)である。
【図4】図1のエンジンコンパートメントを前後に分割した状態を示す分解斜視図である。
【図5】図4の分割した前側エンジンコンパートメントにエンジン等を組み付けた状態を示す分解斜視図である。
【図6】図1のエンジンコンパートメントに下方に向かう荷重が入力された後の変形状態を示す車体前部の側面図である。
【図7】比較例のエンジンコンパートメントに下方に向かう荷重が入力された後の変形状態を示す車体前部の側面図である。
【図8】図1のエンジンコンパートメントにおけるサスペンションタワー近傍の拡大斜視図である。
【図9】ジョイント部材の位置バリエーションを示す、サスペンションタワー近傍の断面模式図である。
【図10】カウルボックスの位置バリエーションを示す、サスペンションタワー近傍の断面模式図である。
【図11】図8部分の分割状態を示す分解斜視図である。
【図12】分割位置のバリエーションを示す平面図である。
【図13】エンジンコンパートメントの前後分割の他の例を示す分解斜視図である。
【符号の説明】
【0031】
1…エンジンコンパートメント
3…フードリッジメンバ(上部骨格構造部材)
5…前側連結部材
7…サスペンションメンバ(下部骨格構造部材)
13…取付部材(後側連結部材)
15…ジョイントメンバ(ジョイント部材)
17…サブメンバ
19…サイドメンバ
21…ピラー部材(後側連結部材)
25…カウルボックス
27…サスペンションタワー
33…前側環状骨格部
35…後側環状骨格部
43…前側フードリッジメンバ(上部骨格構造部材)
45…後側フードリッジメンバ(上部骨格構造部材)
【技術分野】
【0001】
本発明は、車体前部構造、詳しくはエンジンコンパートメントの構造に関する。
【背景技術】
【0002】
従来、車両のエンジンコンパートメントは、例えば車体前部に配設されており、車体前端に設けられたシュラウドメンバ、車体側部に配設された上部側のフードリッジメンバ及び下部側のサイドメンバ、これらのフードリッジメンバ及びサイドメンバの後端に配設されたダッシュパネルなどによって画成されている。下記[特許文献1]には、ガラス繊維強化されたプラスチックによって構成された車体前部構造が開示されている。
【特許文献1】特開2003−246281号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0003】
上記[特許文献1]に記載の車体前部構造では、車体前方からの衝突荷重を車両前後方向に真っ直ぐ受ける構造となっているようである。このような構造では、斜め方向からの衝突荷重が入力された際に、エンジンコンパートメントを構成する骨格構造に曲げ入力が生じて折れ変形が生じやすい。即ち、車両前後方向に真っ直ぐに入力に対して、斜めからの入力に関しては車体反力が低下するという傾向がある。従って、本発明は、衝突形態によらず、斜め方向からの入力に対しても高い車体反力を実現することの可能な車両前部構造を提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0004】
本発明の車体前部構造では、車体前部のエンジンルームの上部両側縁部に車体前後方向に延設された一対の上部骨格構造部材と、各上部骨格構造部材の下方に車体前後方向にそれぞれ延設された下部骨格構造部材と、車体各側部において上部骨格構造部材及び下部骨格構造部材の各前端同士を連結する前側連結部材と、車体各側部において上部骨格構造部材及び下部骨格構造部材の各後端同士を連結する後側連結部材と、上部骨格構造部材及び下部骨格構造部材の各中間部同士を連結するジョイント部材とを備え、車体側視方向から見てエンジンルームの前部及び後部にそれぞれ環状骨格構造が構築されている。そして、車体各側部において、上部骨格構造の前端部とジョイント部材とを結合するサブメンバがそれぞれ設けられており、上部骨格構造の前方部、ジョイント部材、及び、サブメンバが、平面視及び側面視の双方で三角形を形成するように配置されている。
【発明の効果】
【0005】
本発明の車体前部構造によれば、エンジンコンパートメントの前部と後部に、側面視で環状に構成された前側環状骨格部と後側環状骨格部とをそれぞれ形成しているため、車体のエンジンコンパートメント部分の剛性、特に上下方向の入力荷重に対する剛性を大幅に向上させることができる。また、上部骨格構造の前方部、ジョイント部材の上方部、及び、サブメンバが、平面視及び側面視の双方で三角形が形成されるように配置されているため、衝突形態によらず(正突・オフセット・斜突)、衝突荷重の入力によって上部骨格構造の前方部及びサブメンバがジョイント部材に引っ張り力を作用させる。この引っ張り力にジョイント部材が抗することで高い車体反力が実現される。
【発明を実施するための最良の形態】
【0006】
以下、本発明の車体前部構造の一実施形態について、図面を参照しつつ説明する。図1は、本実施形態の車体前部構造(エンジンコンパートメント構造)を示す斜視図である。車体前部には、内部にエンジン等の車両部品を搭載するためのエンジンコンパートメント1(エンジンルーム)が設けられている。エンジンコンパートメント1の左右両側の上部には、車両前後方向に沿って左右一対のフードリッジメンバ(上部骨格構造部材)3,3が延設されており、フードリッジメンバ3,3の前端には前側連結部材5,5の上端がそれぞれ結合されている。
【0007】
また、フードリッジメンバ3の下方で、エンジンコンパートメント1の下端部には、平面視略H字状のサスペンションメンバ(下部骨格構造部材)7が配設されている。サスペンションメンバ7は、車体の左右両側に前後方向に沿って延びる側部9,9と、これら側部9,9の後端同士を車体幅方向に結合させる連接部11とからなる。側部9の前端9aが上述した前側連結部材5の下端と結合されており、側部9の後端9bが後述する取付部材13に結合されている。
【0008】
フードリッジメンバ3の中間部とサスペンションメンバ7とは、ジョイントメンバ(ジョイント部材)15によって連結されている。ジョイントメンバ15の上端15aはフードリッジメンバ3の車幅方向内側の側面に締結され、下端15bはサスペンションメンバ7の側部の中間部分に締結されている。さらに、フードリッジメンバ3とサスペンションメンバ7との間には、車両前後方向に沿って延びるサブメンバ17及びサイドメンバ19が配設されている。前側のサブメンバ17は、前側連結部材5とジョイントメンバ15とを前後方向に沿って連結している。また、後側のサイドメンバ19は、ジョイントメンバ15とダッシュパネル下部の取付部材13とを連結している。この取付部材13は、ダッシュパネル23の下部に配設され、ピラーロア部材21に繋がっている。取付部材13及びピラーロア部材21によって後側連結部材が構成されている。サスペンションメンバ7の後端9b及びサイドメンバ19は、取付部材13及びピラーロア部材21を介して、フードリッジメンバ3に繋がっている。
【0009】
また、エンジンコンパートメント1の後端には、ダッシュパネル23が配設されており、ダッシュパネル23を介して、エンジンコンパートメント1と車両室内とが分離されている。ダッシュパネル23の上部には、車幅方向に沿ってカウルボックス(エアボックス)25が延設され、カウルボックス25の左右両端は、左右のピラーロア部材21,21同士を車体幅方向で結合させている。また、カウルボックス25の左右両端とジョイントメンバ15の上端との間には、サスペンションタワー27が配設されている。なお、フードリッジメンバ3の前端同士は、車幅方向に延びる支持メンバ29によって連結され、前側連結部材5の下端同士は、取付メンバ31によって連結されている。
【0010】
図2は、図1の側面図である。図3は、図1の平面図(車両左側のみ)である。エンジンコンパートメント1を車体側方から見ると、前部と後部とにそれぞれ前側環状骨格部33と後側環状骨格部35とが形成されている。前側環状骨格部33は、フードリッジメンバ3、サスペンションメンバ7、前側連結部材5、及び、ジョイントメンバ15から構成され、側面視ほぼ台形状に形成されている。また、後側環状骨格部35は、フードリッジメンバ3、サスペンションメンバ7、ジョイントメンバ15、及び、後側連結部材(ピラーロア部材21・取付部材13)とから構成され、側面視ほぼ矩形状に形成されている。また、フードリッジメンバ3の前方部、ジョイント部材15、及び、サブメンバ7が、平面視(図3)及び側面視(図2)の双方で三角形を形成するように配置されている。
【0011】
図4は図1のエンジンコンパートメントを前後に分割した状態を示す分解斜視図、図5は図4の分割した前側エンジンコンパートメントにエンジン等を組み付けた状態を示す分解斜視図である。本実施形態のエンジンコンパートメントは、図4及び図5に示されるように、当初は分割されて構築された前後部構造を結合させて構成されている。図5に示すように、分割した前側エンジンコンパートメント37にエンジン51等の車両部品39やその他の部品(サスペンション53、ステアリングラック[図示せず]、ラジエータ55、及びヘッドランプ79)を搭載したのち、前側エンジンコンパートメント37と後側エンジンコンパートメント41とを結合させることにより、車体前部の組付作業が完了する。
【0012】
本実施形態においては、フードリッジメンバ3が前後に2分割されて前側フードリッジメンバ43と後側フードリッジメンバ45とから構成されている。前側フードリッジメンバ43と後側フードリッジメンバ45との結合部47は、ジョイントメンバ15の上端15aと前側フードリッジメンバ43との連結部49の後側に設定されている。また、本実施形態では、サスペンションメンバ7は分割されておらず、サスペンションメンバ7の側部9の後端9bがダッシュパネル23の下部に設けられた取付部材13に締結されている。そして、サイドメンバ19の後端部は前記取付部材13に支持されており、前端部がジョイントメンバ15に締結可能に構成されている。
【0013】
図6は本実施形態のエンジンコンパートメントに下方向の荷重が入力された後の変形状態を示す車体前部の側面図、図7は比較例のエンジンコンパートメントに下方向の荷重が入力された後の変形状態を示す車体前部の側面図である。本実施形態によるエンジンコンパートメント1では、上述したように、環状骨格部33,35が形成されて車体前部の剛性が向上している。このため、図6に示すように、車体前部に下方向の荷重Fが入力された場合に、この荷重Fを環状骨格部33,35によって確実に受け止めるので、車体前部の下方への変形量は小さくなる。一方、図7に示した比較例のエンジンコンパートメント2には、本実施形態のような環状骨格部が設けられていない。このため、荷重Fが入力された場合に、この荷重Fをエンジンコンパートメント2で確実に受け止めることができず、図7に示すように、車体前部の下方への変形量が大きくなる。
【0014】
上述したように、本実施形態の車体前部構造は、前側環状骨格部33と後側環状骨格部35とを有している。このため、エンジンコンパートメント1の剛性が大幅に向上する。また、エンジンコンパートメントを構成する各部材の板厚を薄くして軽量化を図っても、従来構造と同等の剛性を維持することができる。また、サブメンバ17及びサイドメンバ19によって、前記前側環状骨格部33と後側環状骨格部35をそれぞれ補強しているため、エンジンコンパートメント1の剛性が更に向上する。また、エンジンコンパートメント1を前後に分割し、エンジン51などの部品を搭載後にこれらを結合する構造としてある。このため、車両組立工程を大幅に簡素化することができる。また、後側エンジンコンパートメント41がない状態でも、前記車両部品39を前側エンジンコンパートメント37に組み付けることができるため、車両部品39の搭載作業が非常に容易になる。
【0015】
さらに、上述したように、フードリッジメンバ3の前方部、ジョイント部材15、及び、サブメンバ7が、平面視(図3)及び側面視(図2)の双方で三角形を形成するように配置されている。フードリッジメンバ3とサブメンバ17との結合点、フードリッジメンバ3とジョイント部材15との結合点、及び、サブメンバ17とジョイント部材15との結合点、の計三点を頂点として三角形が形成されている。この三角形の一つの頂点(フードリッジメンバ3とサブメンバ17との結合点)は車両前方に向けられており、残りの二つの頂点を結んだ辺は車両幅方向又は上下方向にほぼ平行である。
【0016】
このため、図2及び図3中に矢印によって示されているように、車両衝突時などに車両前方から荷重入力があったときは、フードリッジメンバ3及びサブメンバ17にその荷重が分散伝達されて、ジョイント部材15に対して引っ張り力を作用させる。ジョイント部材15がこの引っ張り力に対抗するため、骨格部材の折れ等による車体反力低下をもたらすことなく、高い車体反力を実現することができる。高い車体反力によって、衝突エネルギーの効率的な吸収を行うことができる。
【0017】
このようなジョイント部材15の引っ張りによる車体反力の確保は、車両前方からの入力角度によらない。即ち、車両真正面からの入力であっても、斜めからの入力であっても、ジョイント部材15の引っ張りによって車体反力が確保される。また、車体の左右何れか一方に対する荷重入力に対しても、荷重入力側のみで成立する。なお、車体側視及び平面視の双方で三角形を形成するように骨格構造が構成されているため、衝突時などの荷重入力によって三角形全体が倒れるように骨格構造が変形してしまうようなことも発生しにくくなっている。
【0018】
図8に、本実施形態におけるサスペンションタワー27(車両右側)付近の拡大斜視図を示す。図8に示されるように、サスペンションタワー27は、フードリッジメンバ3に結合されている(一体的にプレス成形されてもよい)。そして、フードリッジメンバ3に結合されている上述したジョイントメンバ15の上端15aは、サスペンションタワー27の前面側にも結合されている。さらに、本実施形態では、サスペンションタワー27の後面側は、カウルボックス25と接続されている。
【0019】
このため、サスペンションからの入力は、サスペンションタワー27を介して、フードリッジメンバ3やジョイントメンバ15などの骨格構造に伝達されるため、車両剛性が確保される。本実施形態ではさらに、サスペンションからの入力は、カウルボックス25自体や、カウルボックス25を介してピラーロア部材21などの骨格構造にも伝達されるため、車両剛性が一層確保される。このように剛性を確保しやすいため、サスペンションタワー27に図8中一点鎖線で示したようなスカート部28を剛性確保のために設ける必要もなくなり、材料減や軽量化の効果もある。
【0020】
サスペンションタワー27部分を車両前後方向に切断した断面模式図を図9及び図10に示す。図9及び図10は、サスペンションタワー27と、ジョイントメンバ15又はカウルボックス25との接合相互位置のバリエーションを示している。図9はサスペンションタワー27とジョイントメンバ15との接合バリエーションを、図10はサスペンションタワー27とカウルボックス25との接合バリエーションを示している。なお、図中○で示した位置が接合箇所である。この接合は、溶接であっても良いし、ボルトナットなどによる溶接であってもよい。
【0021】
図9(a)では、サスペンションタワー27の上面とジョイントメンバ15の上面とが同じ高さとなるようにしている。このようにすると、サスペンションタワー27への入力をジョイントメンバ15に効率的に伝達させることができ、前後剛性を効率的に向上させることができる。図9(b)では、サスペンションタワー27の上面がジョイントメンバ15の上面よりも高くなるようにしており、図9(c)では、サスペンションタワー27の上面がジョイントメンバ15の上面よりも低くなるようにしている。このように、サスペンションタワー27に対してジョイントメンバ15を上下にオフセットさせると、車両衝突時にジョイントメンバ15の前方から荷重入力があった際にジョイントメンバ15をねじるモーメントが発生しやすい。この結果、サスペンションタワー27が潰れやすくなり、これによって衝突エネルギーを吸収しやすくなる。
【0022】
図10(a)では、サスペンションタワー27の上面とカウルボックス25の上面とが同じ高さとなるようにしている。このようにすると、サスペンションタワー27への入力をカウルボックス25に効率的に伝達させることができ、前後剛性を効率的に向上させることができる。図10(b)では、サスペンションタワー27の上面がカウルボックス25の上面よりも高くなるようにしており、図10(c)では、サスペンションタワー27の上面がカウルボックス25の上面よりも低くなるようにしている。このように、サスペンションタワー27に対してカウルボックス25を上下にオフセットさせると、車両衝突時に前方から荷重入力があった際にカウルボックス25に対してモーメントが発生しやすい。この結果、カウルボックス25が潰れやすくなり、これによって衝突エネルギーを吸収しやすくなる。なお、図9(a)〜(c)及び図10(a)〜(c)は任意の組み合わせで適用可能である。
【0023】
上述したように、本実施形態におけるエンジンコンパートメント1は、前後に分割されたものが一体化された構造を備えている。図11に、図8に示した部分の分割状態を示す。図11に示されるように、フードリッジメンバ3は、前側フードリッジメンバ43と後側フードリッジメンバ45とに分割されている。ジョイントメンバ15は、前側フードリッジメンバ43に予め結合されており、サスペンションタワー27は、後側フードリッジメンバ45に予め結合されている(一体的に形成されていてもよい)。そして、前側フードリッジメンバ43と後側フードリッジメンバ45とが結合されると共に、ジョイントメンバ15の上端15aとサスペンションタワー27とが結合される。
【0024】
このような結合状態とすることで、前側フードリッジメンバ43と後側フードリッジメンバ45との結合部(締結部)で荷重伝達が行われると共に、ジョイントメンバ15の上端15aとサスペンションタワー27との結合部(締結部)でも外力を支持でき、剛性を向上させることができる。また、接合点数も増え、接合範囲が車体幅方向に長くとれるため、モーメントに対しても高い剛性を確保することができる。
【0025】
なお、図11では、前側フードリッジメンバ43と後側フードリッジメンバ45との分割位置が、ジョイントメンバ15とサスペンションタワー27との境界部分に一致されていた。しかし、この分割位置は、前側あるいは後側に移動させることができる。この場合の平面図を図12に示す。図12(a)が、図11の分割位置の場合を示している。これに対して、図12(b)は、前側フードリッジメンバ43と後側フードリッジメンバ45との分割位置を、ジョイントメンバ15の前後方向幅内に位置させた例である。この場合は、後側フードリッジメンバ45とジョイントメンバ15との結合も行っている。図12(c)は、前側フードリッジメンバ43と後側フードリッジメンバ45との分割位置を、サスペンションタワー27の前後方向幅内に位置させた例である。この場合は、前側フードリッジメンバ43とサスペンションタワー27との結合も行っている。
【0026】
上述したように、各上部骨格構造部材は内側にサスペンションタワーをそれぞれ備えており、各ジョイント部材の上部骨格構造部材側の端部近傍がサスペンションタワーの前面側にそれぞれ結合されている。上下方向の入力荷重が顕著な箇所であるサスペンションタワーの前面側をジョイント部材と結合させることで、サスペンションからの入力を上部骨格構造部材とジョイント部材とで受けることができ、上下方向の入力荷重に対する剛性を効果的に向上させることができる。エンジンコンパートメントの剛性を向上させるために、フードリッジメンバ等の骨格部材の板厚を厚くしたり高強度の材質のものを用いたりすると、部品コストが高くなってしまったり、車体重量が増加してしまったりという弊害があるが、上述したように、サスペンションタワーの前面側をジョイント部材と結合させることで、このような弊害を回避できる。
【0027】
また、各上部骨格構造部材は、ジョイント部材が結合された前側上部骨格構造部材とサスペンションタワーが結合された後側上部骨格構造部材とに分割されており、前側上部骨格構造部材及びジョイント部材と後側上部骨格構造部材及びサスペンションタワーとを結合させて構成されたものである。このため、前側上部骨格構造部材と後側上部骨格構造部材との結合部(締結部)で荷重伝達が行われると共に、ジョイント部材とサスペンションタワーとの結合部(締結部)でも外力を支持でき、剛性を向上させることができる。また、接合点数も増え、接合範囲が車体幅方向に長くとれるため、モーメントに対しても高い剛性を確保することができる。
【0028】
また、一対の上部骨格構造部材の後端がカウルボックスによって車両幅方向で結合されており、サスペンションタワーの後面側がカウルボックスに結合されている。このため、サスペンションからの入力をジョイント部材だけでなくカウルボックスでも支持でき、同一質量でさらに高い剛性を得ることができる。等剛性を得るだけでよければ、板厚などを薄くすることができ、軽量化を行うことができる。
【0029】
本発明の車体前部構造は、上述した実施形態に限定されるものではない。たとえば、下部骨格構造部材の分割位置は、図13のような分割位置としてもよい。この例では、エンジンコンパートメント1が、前側エンジンコンパートメント57と後側エンジンコンパートメント59とから構成されている。サスペンションメンバ7においては、側部9が前後に2分割されており、側部9の前部側63と後部側65とが締結可能に構成されている。これらの前部側63と後部側65との結合部66は、ジョイントメンバ15の下端と側部9の前部側63との連結部64の後側に設定されている。そして、サイドメンバ19の後端は取付部材13に支持されており、前端がジョイントメンバ15に締結可能に構成されている。
【図面の簡単な説明】
【0030】
【図1】本発明の車体前部構造の一実施形態におけるエンジンコンパートメントを示す斜視図である。
【図2】図1の側面図である。
【図3】図1の平面図(車体左側のみ)である。
【図4】図1のエンジンコンパートメントを前後に分割した状態を示す分解斜視図である。
【図5】図4の分割した前側エンジンコンパートメントにエンジン等を組み付けた状態を示す分解斜視図である。
【図6】図1のエンジンコンパートメントに下方に向かう荷重が入力された後の変形状態を示す車体前部の側面図である。
【図7】比較例のエンジンコンパートメントに下方に向かう荷重が入力された後の変形状態を示す車体前部の側面図である。
【図8】図1のエンジンコンパートメントにおけるサスペンションタワー近傍の拡大斜視図である。
【図9】ジョイント部材の位置バリエーションを示す、サスペンションタワー近傍の断面模式図である。
【図10】カウルボックスの位置バリエーションを示す、サスペンションタワー近傍の断面模式図である。
【図11】図8部分の分割状態を示す分解斜視図である。
【図12】分割位置のバリエーションを示す平面図である。
【図13】エンジンコンパートメントの前後分割の他の例を示す分解斜視図である。
【符号の説明】
【0031】
1…エンジンコンパートメント
3…フードリッジメンバ(上部骨格構造部材)
5…前側連結部材
7…サスペンションメンバ(下部骨格構造部材)
13…取付部材(後側連結部材)
15…ジョイントメンバ(ジョイント部材)
17…サブメンバ
19…サイドメンバ
21…ピラー部材(後側連結部材)
25…カウルボックス
27…サスペンションタワー
33…前側環状骨格部
35…後側環状骨格部
43…前側フードリッジメンバ(上部骨格構造部材)
45…後側フードリッジメンバ(上部骨格構造部材)
【特許請求の範囲】
【請求項1】
車体前部のエンジンルームの上部両側縁部に車体前後方向に延設された一対の上部骨格構造部材と、前記各上部骨格構造部材の下方に車体前後方向にそれぞれ延設された下部骨格構造部材と、車体各側部において前記上部骨格構造部材及び前記下部骨格構造部材の各前端同士を連結する前側連結部材と、車体各側部において前記上部骨格構造部材及び前記下部骨格構造部材の各後端同士を連結する後側連結部材と、前記上部骨格構造部材及び前記下部骨格構造部材の各中間部同士を連結するジョイント部材とを備え、車体側視方向から見て前記エンジンルームの前部及び後部にそれぞれ環状骨格構造が構築されている車体前部構造であって、
車体各側部において、前記上部骨格構造の前端部と前記ジョイント部材とを結合するサブメンバがそれぞれ設けられており、前記上部骨格構造の前方部、前記ジョイント部材、及び、前記サブメンバが、平面視及び側面視の双方で三角形を形成するように配置されていることを特徴とする車体前部構造。
【請求項2】
前記各上部骨格構造部材は内側にサスペンションタワーをそれぞれ備えており、前記各ジョイント部材の前記上部骨格構造部材側の端部近傍が前記サスペンションタワーの前面側にそれぞれ結合されていることを特徴とする請求項1に記載の車体前部構造。
【請求項3】
前記各上部骨格構造部材は、前記ジョイント部材が結合された前側上部骨格構造部材と前記サスペンションタワーが結合された後側上部骨格構造部材とに分割されており、前記前側上部骨格構造部材及び前記ジョイント部材と前記後側上部骨格構造部材及び前記サスペンションタワーとを結合させて構成されたものであることを特徴とする請求項2に記載の車体前部構造。
【請求項4】
一対の前記上部骨格構造部材の後端がカウルボックスによって車両幅方向で結合されており、前記サスペンションタワーの後面側が前記カウルボックスに結合されていることを特徴とする請求項2又は3に記載の車体前部構造。
【請求項1】
車体前部のエンジンルームの上部両側縁部に車体前後方向に延設された一対の上部骨格構造部材と、前記各上部骨格構造部材の下方に車体前後方向にそれぞれ延設された下部骨格構造部材と、車体各側部において前記上部骨格構造部材及び前記下部骨格構造部材の各前端同士を連結する前側連結部材と、車体各側部において前記上部骨格構造部材及び前記下部骨格構造部材の各後端同士を連結する後側連結部材と、前記上部骨格構造部材及び前記下部骨格構造部材の各中間部同士を連結するジョイント部材とを備え、車体側視方向から見て前記エンジンルームの前部及び後部にそれぞれ環状骨格構造が構築されている車体前部構造であって、
車体各側部において、前記上部骨格構造の前端部と前記ジョイント部材とを結合するサブメンバがそれぞれ設けられており、前記上部骨格構造の前方部、前記ジョイント部材、及び、前記サブメンバが、平面視及び側面視の双方で三角形を形成するように配置されていることを特徴とする車体前部構造。
【請求項2】
前記各上部骨格構造部材は内側にサスペンションタワーをそれぞれ備えており、前記各ジョイント部材の前記上部骨格構造部材側の端部近傍が前記サスペンションタワーの前面側にそれぞれ結合されていることを特徴とする請求項1に記載の車体前部構造。
【請求項3】
前記各上部骨格構造部材は、前記ジョイント部材が結合された前側上部骨格構造部材と前記サスペンションタワーが結合された後側上部骨格構造部材とに分割されており、前記前側上部骨格構造部材及び前記ジョイント部材と前記後側上部骨格構造部材及び前記サスペンションタワーとを結合させて構成されたものであることを特徴とする請求項2に記載の車体前部構造。
【請求項4】
一対の前記上部骨格構造部材の後端がカウルボックスによって車両幅方向で結合されており、前記サスペンションタワーの後面側が前記カウルボックスに結合されていることを特徴とする請求項2又は3に記載の車体前部構造。
【図1】
【図2】
【図3】
【図4】
【図5】
【図6】
【図7】
【図8】
【図9】
【図10】
【図11】
【図12】
【図13】
【図2】
【図3】
【図4】
【図5】
【図6】
【図7】
【図8】
【図9】
【図10】
【図11】
【図12】
【図13】
【公開番号】特開2007−196888(P2007−196888A)
【公開日】平成19年8月9日(2007.8.9)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2006−18970(P2006−18970)
【出願日】平成18年1月27日(2006.1.27)
【出願人】(000003997)日産自動車株式会社 (16,386)
【Fターム(参考)】
【公開日】平成19年8月9日(2007.8.9)
【国際特許分類】
【出願日】平成18年1月27日(2006.1.27)
【出願人】(000003997)日産自動車株式会社 (16,386)
【Fターム(参考)】
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