説明

車体前部構造

【課題】衝突等の際に発生するパワーユニットの後退に伴うオイルパンの破損を防止する車体前部構造を提供する。
【解決手段】フロントサイドフレーム2間にクロスメンバ30が掛け渡されると共に、クロスメンバ30の前面と対向配置される排気マニホールドEM及びオイルパンOPを備えたパワーユニットP/Uが搭載され、排気マニホールドEMと対向してクロスメンバ30にマニホールド当接部材66を備える。衝突等による後退するパワーユニットP/Uの排気マニホールドEMにマニホールド当接部材66が当接して、オイルパンOPとクロスメンバ30の当接を防止、或いは衝撃を緩和してオイルパンの破損を防止してオイルパンOPからのオイル漏れ等が防止できる。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、車体前部構造に関し、特に車体前後方向に延在する左右のフロントサイドフレーム間に車幅方向に延在して掛け渡されたクロスメンバの前面と対向配置される排気マニホールド及びオイルパンを備えたパワーユニットが左右のフロントサイドフレーム間に搭載される車体前部構造に関する。
【背景技術】
【0002】
車体前部において車体前後方向に延在する左右のフロントサイドフレーム間に車幅方向に延在したクロスメンバが掛け渡され、エンジン等のパワーユニットが左右のフロントサイドフレーム間に搭載される車体前部構造がある。
【0003】
左右のフロントサイドフレーム間に掛け渡されるクロスメンバには、前輪のサスペンション装置、前輪の操向装置、エンジン等のパワーユニットが支持される。一般にクロスメンバはプレス加工した上下一対の鋼板の周囲を溶接した中空形状を有して剛性を確保している。
【0004】
この種の車体前部構造に関しては、例えば特許文献1がある。特許文献1の車体前部構造は、左右のフロントサイドフレームに両端部が支持されるクロスメンバの下面に操向装置のステアリングギヤボックスを収容する凹部を車幅方向に沿って形成して前部及び後部に車幅方向に連続する中空部を形成している。このクロスメンバの中央部上面にエンジンマウントブラケットを介してパワーユニットが支持され、車幅方向の両端部下面にサスペンション装置のサスペンションアームが支持されている。更に、クロスメンバの両端部近傍において凹部を前後に架設する補強ブラケット及び補強プレートを設けている。
【0005】
【特許文献1】特開平6−122378号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
上記特許文献1の車体前部構造によると、クロスメンバの下面に形成された凹部を前後に架設する補強ブラケット及び補強プレートを設けることから、サスペンション装置からサスペンション支持部に入力される荷重に対抗する剛性が確保できる。
【0007】
一方、左右のフロントサイドフレーム間に掛け渡されるクロスメンバの前面と対向配置されるオイルパンを備えたパワーユニットが左右のフロントサイドフレーム間に搭載される車体前部構造にあっては、車両が前面衝突等によりパワーユニットが後退した際に、後退するパワーユニットに配設されたオイルパンがクロスメンバに当接して破損したオイルパンからオイルが漏れ出して、オイル漏れによる二次障害が発生することが懸念される。
【0008】
従って、かかる点に鑑みなされた本発明の目的は、前面衝突等の際に発生するパワーユニットの後退に伴うオイルパンの変形及び破損が防止できる車体前部構造を提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0009】
上記目的を達成する請求項1に記載の車体前部構造の発明は、車体前後方向に延在する左右のフロントサイドフレーム間に車幅方向に延在してクロスメンバが掛け渡されると共に、上記クロスメンバの前面と対向配置される排気マニホールド及びオイルパンを備えたパワーユニットが上記左右のフロントサイドフレーム間に搭載される車体前部構造において、上記クロスメンバより剛性が低く、中央部が上記オイルパンと対向すると共に上記クロスメンバとの間に間隙を有して車幅方向に延在して両端部が上記クロスメンバに取付支持されるサポートクロスメンバと、該サポートクロスメンバの上記排気マニホールドと対向する部位に他の部位より車体前方に突出したマニホールド当接部とを備えたことを特徴とする。
【0010】
この発明によると、クロスメンバに配設されたサポートクロスメンバにパワーユニットの排気マニホールドと対向するマニホールド当接部を配設することから、衝突等による衝撃荷重によって後退するパワーユニットに配設された排気マニホールドがマニホールド当接部に当接させて受け止めてパワーユニットの後退を抑制し、オイルパンとクロスメンバの当接及び干渉量を減らすことができ、オイルパンの破損を防止或いは変形等が防止されてオイルパンからのオイル漏れ等が防止できる。また、サスペンション装置等を支持する剛性が高いクロスメンバより剛性の低いサポートクロスメンバの中央部とクロスメンバとの間に間隔を形成することから、仮にオイルパンがサポートクロスメンバに当接しても衝撃を吸収でき、剛性の高いクロスメンバの当接による衝撃を緩和できる。また、クロスメンバがサポートクロスメンバによって補剛されて車体剛性が向上する。
【0011】
請求項2に記載の発明は、請求項1の車体前部構造において、上記マニホールド当接部材は、サポートクロスメンバに着脱自在に配設されたことを特徴とする。
【0012】
この発明によると、マニホールド当接部材をサポートクロスメンバに着脱自在に配設することから、パワーユニットの仕様やクロスメンバに取付支持される部品の仕様等によって異なる仕様のマニホールド当接部材が要求される場合には、その要求に応じた仕様のマニホールド当接部材と容易に交換することができる。
【発明の効果】
【0013】
この発明によると、クロスメンバに配設されたサポートクロスメンバにパワーユニットの排気マニホールドと対向するマニホールド当接部を配設することから、衝突等による衝撃荷重によって後退するパワーユニットに配設された排気マニホールドがマニホールド当接部に当接させて受け止めてパワーユニットの後退を抑制してオイルパンとクロスメンバの当接及び干渉量を減らすことができる。また、仮にオイルパンがサポートクロスメンバに当接しても衝撃を吸収でき、剛性の高いクロスメンバの当接による衝撃を緩和できる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0014】
以下本発明の車体前部構造の実施の形態を、パワーユニットが水平対向式エンジン及びトランスミッションを備えた場合を例に図1乃至図6を参照して説明する。なお、各図において矢印Fは車体前方方向を示している。
図1は、本実施の形態に係る車体前部1の概要を示すパワーユニットを省略した斜視図、図2は図1の下面図、図3はクロスメンバの斜視図、図4は図3のA部拡大図、図5は図2のI−I線断面図、図6は分解斜視図である。
【0015】
図1に示すように、車体前部1には、車体前後方向に延在する中空断面形状に形成された左右のフロントサイドフレーム2が配設されている。各フロントサイドフレーム2は略水平で前後方向に延在する直線状で前端下面に前部取付部4が形成され後端下面に中間部5が形成された前部範囲3と、前部範囲3の後端に連続すると共に後方に移行するに従って漸次下方に変移するように傾斜したキックアップ部7及びキックアップ部7の後端に連続形成されて図示しないフロアフレームに接続される後部8が連続形成された後部範囲6を備えている。前部取付部4には下方に延在する前部支持部材9が設けられている。
【0016】
左右のフロントサイドフレーム2の前端にブラケット10を介して車幅方向に延在するバンパフレーム11が掛け渡される。バンパフレーム11の前面に図示しないポリプロピレン発泡材等によって形成された衝撃緩衝部材が配置され、衝撃緩衝部材の外表面を樹脂製のバンパフェイスによって被覆して車幅方向に延在するバンパを形成する。なお、左右のフロントサイドフレーム2の間にエンジンルームが形成され、エンジンルーム内にパワーユニットP/Uが搭載される。
【0017】
パワーユニットP/Uは、図2に概要を示すように、縦置き配置された水平対向式エンジンEの後方に図示しないトランスミッション等が一体的に配置されている。エンジンEの中央部に配置されるクランクケースECの下面にオイルパンOPが下方に突出して配置されている。また、クランクケースECを隔てて配置される左右の各バンクEBの下面から先端部分EPaが下方に突出すると共に前方に湾曲して延在してする左右の排気パイプEPの基端部を集合した排気マニホールドEMを有し、排気マニホールドEMは触媒コンバータCC及び排気管等を介して車体後部に搭載された図示しないマフラーに接続される。
【0018】
左右のフロアフレームに上方から覆うように図示しないフロアパネルが設けられ、フロアパネルの前端部近傍は、フロントサイドフレーム2のキックアップ部7に沿って上方側に向かって延設され、その前端部に上方に延設してエンジンルームと車室とを区分するバルクヘッド部が形成されている。
【0019】
左右のフロントサイドフレーム2の下方に、それぞれ前後方向に中空断面形状で延在する左右の一対のサイドメンバ22と、車幅方向に延在して左右のサイドメンバ22の前端間に掛け渡される前部メンバ28とを備えたサブフレーム21が配置されている。
【0020】
サブフレーム21の各サイドメンバ22は、前端上面に前端取付部24が形成されて後方に延在する第1屈曲促進部23aを介して後端上面に中間取付部25が形成される前部範囲23と、前部範囲23の後端に連続する第2屈曲促進部26aの後端に後端部27が形成された後部範囲26とが連続形成されている。
【0021】
これら第1座屈促進部23a及び第2座屈促進部26aによってサイドメンバ22は、前方からの衝撃荷重に対する座屈抗力が中間取付部25より前方の前部範囲23に対して後部範囲26が大きく設定されている。
【0022】
左右のサイドメンバ22の前端に、図1に示すようにブラケット29aを介して車幅方向に延在するリンホース29が掛け渡されている。このリンホース29の前面に図示しないポリプロピレン発泡材等によって形成された衝撃緩衝部材が配置され、衝撃緩衝部材の外表面はバンパフェイスによって被覆されている。
【0023】
このように構成されたサブフレーム21は、左右のサイドメンバ22の前端上面に形成された前端取付部24がフロントサイドフレーム2の前部取付部4に設けられた前部支持部材9の下端にボルト結合され、後端に形成された後端部27がフロントサイドフレーム2の後部8に複数、例えば3本のボルトにより強固に固定されてフロントサイドフレーム2とサブフレーム21の高い荷重伝達効率を確保している。更に、サイドメンバ22の中間取付部25がクロスメンバ30を介してフロントサイドフレーム2の中間取付部5に取り付けられる。
【0024】
クロスメンバ30は、図1乃至図4に示すように車幅方向に延在するクロスメンバ本体31及び後部クロスメンバ32と、このクロスメンバ本体31及び後部クロスメンバ32の左右に一体的に形成された中間支持部35及び結合手段41を備え、中間支持部35が結合手段41によってフロントサイドフレーム2の中間部5に取り付けられる。
【0025】
クロスメンバ本体31は、車幅方向に延在する上側面31Aの前縁及び後縁に沿って下方に折曲形成された前側面31B及び後側面31Cを有して車幅方向に延在する下方が開放された断面逆U字状に形成されている。また、クロスメンバ本体31の後縁に沿って後部クロスメンバ32が延在している。
【0026】
このクロスメンバ本体31は、前側面31Bがエンジンルーム内に搭載されるパワーユニットP/Uに配設されたオイルパンOPの後面OPa及び左右のバンクEBから下方に突出する排気マニホールドEMの排気パイプEPの先端部分EPaと対向配置して車幅方向に延在する一方、後部クロスメンバ32にはパワーユニットP/Uを支持するためのエンジンマウント33が配設される。
【0027】
クロスメンバ本体31の両端に結合される中間支持部35は、図1、図3、図4に示すように車幅方向に延在して対向する前面36及び後面37と、前面36及び後面37の各下縁を連結する下面38と、前面36及び後面37の各上縁を連結する上面39とを備えた車幅方向に延在する略矩形断面形状を有し、下面38がサイドメンバ22の中間取付部25に溶接結合されている。この中間支持部35の上面39、前面36、後面37にそれぞれクロスメンバ本体31の上側面31A、前側面31B、後側面31Cが溶接結合される。
【0028】
更に、中間支持部35の上面39に下方が開放された断面逆U字状のサスペンション支持ブラケット40が設けられ、このサスペンション支持ブラケット40にサスペンション部材、例えば図示しないサスペンションロアアームが取り付け支持される。
【0029】
結合手段41は、図1、図3及び図6に要部分解斜視図を示すように中間支持部材35の上面39に取り付けられる結合部材42と、この結合部材42とフロントサイドフレーム2の中間部5との間に介装されるスペーサ49と、フロントサイドフレーム2の中間部5に穿設された一対のボルト取付孔にそれぞれ対応して配置されて中間部5に溶接されたナット52c、52d及び一対の取付ボルト52、53を備えている。
【0030】
結合部材42は、中間支持部材35の上面39に載置して結合される矩形平板状のベース45を備え、ベース45の車幅方向外側に沿って前後方向に一対のボルト挿入孔45c、45dが穿設されている。
【0031】
ベース45上に、ベース45の上面をほぼ覆うと共に車幅方向外方側にボルト挿入孔45c及び45dを間隙を有して覆うように、断面逆U字状乃至半円弧状で前後方向に連続して隆起して前縁47a側が開放された第1結合部47が形成されたブラケット46が溶接結合される。この第1結合部47の前部及び後部に前方向に長く前端が前縁47aに開放されたU字形のスリット状に形成されたボルト取付穴47c及びボルト挿入孔47dがそれぞれ開口している。
【0032】
更に、第1結合部47の後部上に、ボルト挿入孔47dの上方を間隙を有して覆うように断面逆U字状乃至半円弧状で前後方向に連続すると共に両側縁及び後縁が第1結合部47上に溶接結合され、かつ前側となる前縁48a側が開放された第2結合部48が設けられている。第2結合部48に前方向に長く前端が前縁48aに開放されたU字形のスリット状に形成されたボルト取付穴48dが開口している。
【0033】
スペーサ49は、断面逆U字状乃至半円弧状で前後方向に連続して第1結合部47の上面に嵌合する第1下面49aと、第1下面49aの後縁に段部を介して連続する断面逆U字状乃至半円弧状で前後方向に連続して第2結合部48の上面に嵌合する第2下面49bと、フロントサイドフレーム2の中間取付部5に接面する上面49cを有するブロック状に形成される。このスペーサ49には、第1下面49aと上面49c及び第2下面49bと上面49cを貫通するボルト貫通孔50c及び50dが穿設されている。
【0034】
これらベース45のボルト挿入孔45c、第1結合部47のボルト取付穴47c、スペーサ49のボルト貫通孔50c、フロントサイドフレーム2に形成されたボルト取付孔及びナット51cが上下方向に延在する基準線c上に配置されている。同様にベース45のボルト挿入孔45d、第1結合部47のボルト挿入孔47d、第2結合部48のボルト取付穴48d、スペーサ49のボルト貫通孔50d、フロントサイドフレーム2のボルト取付孔及びナット52dが基準線cより後方で上下方向に延在する基準線d上に配置されている。
【0035】
また、ベース45のボルト挿入孔45cは取付ボルト52の頭部52aの径より大きな径を有する一方、第1結合部47のボルト取付穴47cは軸部52bの径より大きく頭部52aの径より小さな径に設定されている。同様にベース49のボルト挿入孔49d及び第1結合部47のボルト挿入孔47dは取付ボルト53の頭部53aの径より大きな径を有する一方、第2結合部48のボルト取付穴48dは軸部53bの径より大きく頭部53aの径より小さな径に設定される。
【0036】
そして、取付ボルト52をベース45のボルト挿入孔45cから挿入し、第1結合部47のボルト取付穴47c、スペーサ49のボルト貫通孔49c、及びサイドフレーム2のボルト取付孔を貫通してナット51cに予め設定された締結トルクで螺合することによって、取付ボルト52及びナット51cによってスペーサ48を介在して第1結合部47とフロントサイドフレーム2の中間部5を締結する。同様に取付ボルト52をベース45のボルト挿入孔45dから挿入し、第1結合部47のボルト挿入孔47d、第2結合部48のボルト取付穴48d、スペーサ49のボルト貫通孔50d、及びフロントサイドフレーム2のボルト取付孔を貫通してナット51dに予め設定された締結トルクで螺合することによって、取付ボルト53及びナット51dによってスペーサ49を介在して第2結合部48とフロントサイドフレーム2の中間部5を締結する。
【0037】
一方、フロントサイドフレーム2の中間部5に対しサイドメンバ22の中間取付部28に結合された中間支持部材35が予め設定された以上の荷重で車体後方に相対移動した際には、中間支持部材35に取り付けられた結合部材44がスペーサ49の第1下面49a及び第2下面49bに沿って後方に移動し、この移動に伴って前端が開放されたスリット状の第1結合部47のボルト取付穴47c及び第2結合部48のボルト取付穴48dがフロントサイドフレーム2の支持された取付ボルト52、53から外れ、中間支持部材35とフロントサイドフレーム2との結合が解除される。
【0038】
このように構成されたクロスメンバ30のクロスメンバ本体31の前側面31Bに沿って、その前側面31Bとの間に間隙を有して車幅方向に延在するサポートクロスメンバ61が配置される。
【0039】
サポートクロスメンバ61は、車幅方向中央部がパワーユニットP/Uに配設されたオイルパンOPの後面OPaと間隙を隔てて対向する頂面62を有し、頂面62の上縁及び下縁に沿ってそれぞれ後方に折曲形成された上側フランジ63及び下側フランジ64が形成されて車幅方向に延在する断面略コ字状に形成され、その頂面62の両端部が中間支持部35の前面36にボルト65によって脱着可能に取り付けられる。このサポートクロスメンバ61は比較的薄板によって形成された簡単形状でクロスメンバ本体31に比べて剛性が小さく設定される。
【0040】
サポートクロスメンバ61の排気マニホールドEMと対向する部位となる各端部に他の部位より車体前方に突出するマニホールド当接部材66が突設される。マニホールド当接部材66は、左右のバンクEBから下方に突出する排気パイプEPの先端部分EPaと間隙を隔てて対向する頂端部67と、この頂端部67の上縁及び下縁から後方に折曲された上側取付部68及び下側取付部69を備えた断面コ字状の板状によって形成され、これら上側取付部68及び下側取付部69の後端がサポートクロスメンバ61の上側フランジ63及び下側フランジ64にそれぞれ溶接結合されてサポートクロスメンバ61に取り付けられる。
【0041】
次にこのように構成された車体前部構造の作用を説明する。
【0042】
通常走行時には、車幅方向に延在するサポートクロスメンバ61によって補剛されたクロスメンバ30によって左右のサイドメンバ22が結合されてサブフレーム21の剛性が確保され、サイドメンバ22の前端取付部24が前部支持部材9を介してフロントサイドフレーム2の前部取付部4と連結し、後端部27がサイドフレーム2の後部8に結合されると共に、サブフレーム21の中間取付部25がクロスメンバ30の中間支持部35及び結合手段41によってサイドフレーム2の中間部5に結合することによって、フロントサブフレーム2とサイドフレーム21が強固に結合されてフロントサイドフレーム2及びサブフレーム21の剛性が増大してサスペンション支持剛性及び車体剛性が確保されて良好な操縦安定性が得られる。
【0043】
一方、自動車が障害物と前方衝突した場合、障害物からの衝突荷重Pは、フロントサイドフレーム2の前端に設けられたバンパフレーム11と、サブフレーム21の前端設けられたリンホース29に分散されて入力され、衝突が軽度の場合であれば、ブラケット10及び29aの変形によって衝撃エネルギを吸収することができ、その後の修理もブレケット10及び29aの交換のみで行える。
【0044】
しかし、衝突度合が大きき場合には、バンパフレーム11及びブラケット10により吸収されなかった衝撃荷重Pが、フロントサイドフレーム2の前端から後方に向かって入力される。一方、リンホース29及びブラケット29aにより吸収されなかった衝撃荷重Pはフロントサブフレーム21の前端から後方に向かって入力される。
【0045】
この衝突初期においては、フロントサイドフレーム2の前端から入力された衝撃荷重Pにより、フロントサイドフレーム2の後部範囲6に対し剛性が比較的低い前部範囲3が前端から軸方向に沿って順に潰れる圧壊変形により衝撃荷重Pの衝撃エネルギが吸収されて衝撃荷重Pが低減される。同様に、サブフレーム21においても、後部範囲26の剛性が確保されることからサイドメンバ22の前端から入力された衝撃荷重Pによる前部範囲23の第1屈曲促進部の座屈変形により衝撃エネルギが吸収され衝撃荷重が低減される。
【0046】
衝撃荷重Pによるフロントサイドフレーム2の前部範囲3及びサブフレーム21の前部範囲23の変形と共に、衝撃荷重PによりパワーユニットP/Uが後方に押しやられる。このパワーユニットP/Uの後退に伴って、エンジンEの下面から突出する排気マニホールドEMの左右の排気パイプEPの先端部分EPaが、クロスメンバ30の左右前面に突出して配設された左右のマニホールド当接部材66の頂端部67に当接し、パワーユニットP/Uからの衝撃荷重に伴って潰れ変形するマニホールド当接部材66によって受け止められてパワーユニットP/Uの後退が抑制される。
【0047】
排気マニホールドEMの左右の排気パイプEPの先端部分EPaがマニホールド当接部材66の頂端部67に当接した際には、パワーユニットP/Uの下面に取り付けられたオイルパンOPの後面OPaとクロスメンバ本体31との間に間隙が維持されて、オイルパンOPとクロスメンバ本体31との当接に起因するオイルパンOPの干渉量が減少して変形や破損を招くことない。また、オイルパンOPの後面OPaがサポートクロスメンバ61を介在してクロスメンバ本体31に当接した際にもその衝撃が緩和されてオイルパンOPの破損或いは変形が防止される。
【0048】
また、マニホールド当接部66によってパワーユニットP/Uの後退が十分に阻止できず、パワーユニットP/Uが更に後退する際には、後退するパワーユニットP/Uの下面に配設されたオイルパンOPの後面OPaが、左右の中間支持部材35の前面36に支持されたサポートクロスメンバ61の中央部に当接する。この当接により変形するサポートクロスメンバ61によって衝撃が緩和されてオイルパンOPが受け止められる。サポートクロスメンバ61によって受け止められたオイルパンOPは、剛性を有するクロスメンバ本体31と衝撃的な当接が防止されてオイルパンOPの破損や変形の発生が回避されて、オイルパンOPからのオイル漏れ等が防止できる。また、パワーユニットP/Uとクロスメンバ本体31との直接的な衝突が回避されて、乗員への衝撃が緩和される。
【0049】
更に、この衝突度合いが大きくサイドフレーム2の前部範囲3の圧壊変形及びサイドメンバ22の前部範囲23の座屈変形では衝撃エネルギが吸収されずに、車体前方の潰れ変形に伴って衝突荷重がパワーユニットP/Uに作用してパワーユニットP/Uを更に後方に移動する衝突後期にあっては、後方に移動するパワーユニットP/Uがサポートクロスメンバ61を介在してクロスメンバ本体31を押圧、或いはエンジンマウント33を介してクロスメンバ30に後方へ向かう荷重が伝達され、クロスメンバ30がパワーユニットP/Uと共に後方へ移動する。このクロスメンバ30の後方移動に伴って中間支持部材35がサイドメンバ22の後部範囲26を座屈変形させつつフロントサイドフレーム2の中間部5に対して相対的に後方に若干移動する。
【0050】
中間支持部材35がフロントサイドフレーム2の中間部5に対し後方に相対移動すると、中間支持部材35に取り付けられた結合部材44がスペーサ49の第1下面49a及び第2下面49bに沿って相対的に後方に移動し、第1結合部47及び第2結合部48に形成されたスリット状のボルト取付穴47c及び48dがそれぞれフロントサイドフレーム2の中間取付部5にナット52c、52dに螺合して支持された取付ボルト52、53の軸部52b、52bから離脱する。
【0051】
この離脱によりフロントサイドフレーム2によるサブフレーム21の変形拘束が解除され、更なるパワーユニットP/Uの後方移動に伴うクロスメンバ30の後方移動により中間支持部材35を介してサブフレーム21の後部範囲26が更に座屈変形して衝撃エネルギを吸収する。
【0052】
ここで、衝突後期において、後方に移動するパワーユニットP/Uによって中間支持部材35及び結合手段41によるフロントサイドフレーム2とサブフレーム21の結合を解除されて、フロントサブフレーム2によるパワーユニットP/Uの後方移動に対する抗力が大幅に低減される。また、サブフレーム22の後部範囲26が座屈変形することにより、脱落したパワーユニットP/Uが積極的に下方に誘導されて、パワーユニットP/Uの後方移動に対する抗力を抑制されると共に、パワーユニットP/Uの後退による車室への影響が軽減できる。
【0053】
従って、本実施の形態によると、通常走行時においては、サポートクロスメンバ61によって補剛されたクロスメンバ30が左右のサイドメンバ22が強固に結合され、かつフロントサブフレーム2とサイドフレーム21が強固に結合されてフロントサイドフレーム2及びサブフレーム21の剛性が増大し、サスペンション支持剛性及び車体剛性が確保されて通常走行時の良好な操縦安定性が得られる。
【0054】
一方、衝撃荷重PによりパワーユニットP/Uが後退した際には、エンジンEの左右のバンク下面から突出する排気マニホールドEMの左右の排気パイプEPが、クロスメンバ30の左右前面に突出して配設された左右のマニホールド当接支持部材66に当接してパワーユニットP/Uの後退が抑制される。この排気マニホールドEMの左右の排気パイプEPがマニホールド当接部材66に当接した際には、パワーユニットP/Uの下面に取り付けられたオイルパンOPとクロスメンバ30との間に間隙が維持され、或いはオイルパンOPとクロスメンバ30との干渉量が低減され、衝撃が緩和されてオイルパンOPの変形や損傷を招くことなく、オイルパンOPからのオイル漏れ等が回避できる。
【0055】
仮にパワーユニットP/Uが更に後退する際には、後退するパワーユニットP/Uの下面に配設されたオイルパンOPの後面がサポートクロスメンバ61の中央部に当接して変形を伴うサポートクロスメンバ61によって衝撃が緩和されて受け止められて剛性を有するクロスメンバ30との当接が防止されて保護され、変形や損傷を招くことなく、オイルパンOPからのオイル漏れ等が回避できる。
【0056】
また、左右のクロスメンバ30の中間支持部35間に掛け渡されてボルト65によって脱着可能に取り付けられたサポートクロスメンバ61にマニホールド当接部材66を配設することから、パワーユニットP/Uの仕様やクロスメンバ30に取付支持されるステアリングギヤボックス等の部品の仕様等によって、例えば板厚や形状の異なる仕様のマニホールド当接部材66やサポートクロスメンバ61が要求される場合には、その要求に応じた仕様のマニホールド当接部材66が配設されたサポートクロスメンバ61と容易に交換することができる。この際、比較的大きな部品であるクロスメンバ30を変更することなく、マニホールド当接部材66が取り付けられたサポートクロスメンバ61の仕様変更によって対処可能であり、仕様の異なるサポートクロスメンバ61によって容易に変更できる。
【0057】
更に、クロスメンバ30に取り付けられるステアリングギヤボックス等の部品等の整備や交換等の作業性に影響する場合には、サポートクロスメンバ61を取り外すことにより作業性が確保できる。
【0058】
なお、本発明は上記実施の形態に限定されることなく、発明の趣旨を逸脱しない範囲で種々変更可能である。例えば、上記実施の形態ではマニホールド当接部材66を、頂端部67に折曲形成された上側取付部68及び下側取付部69を備えた板状部材をサポートクロスメンバ61に溶接して形成した場合を例に説明したが、マニホールド当接部材をサポートクロスメンバに着脱自在に配設することもできる。この場合、パワーユニットの仕様やクロスメンバに取付支持される部品の仕様等によって異なる仕様のマニホールド当接部材が要求される場合には、その要求に応じた仕様のマニホールド当接部材と容易に交換することができる。
【0059】
更に、マニホールド当接部は、ブロック状の弾性部材からなる緩衝部材、例えば緩衝ゴムパッドによって形成することもできる。
【0060】
また、水平対向式エンジンを備えたパワーユニットを例に説明したが、V字型エンジン等他のエンジンを備えたパワーユニットを搭載する車体前部構造に適用することができる。
【図面の簡単な説明】
【0061】
【図1】本発明の実施の形態に係わる車体前部構造の斜視図である。
【図2】図1の下面図である
【図3】クロスメンバの斜視図である。
【図4】図2のA部拡大図である。
【図5】図2のI−I線断面図である。面図である。
【図6】結合手段の要部分解斜視図である。
【符号の説明】
【0062】
1 車体前部
2 フロントサイドフレーム
21 サブフレーム
30 クロスメンバ
31 クロスメンバ本体
61 サポートクロスメンバ
65 ボルト
66 マニホールド当接部材
P/U パワーユニット
OP オイルパン
EM 排気マニホールド

【特許請求の範囲】
【請求項1】
車体前後方向に延在する左右のフロントサイドフレーム間に車幅方向に延在してクロスメンバが掛け渡されると共に、上記クロスメンバの前面と対向配置される排気マニホールド及びオイルパンを備えたパワーユニットが上記左右のフロントサイドフレーム間に搭載される車体前部構造において、
上記クロスメンバより剛性が低く、中央部が上記オイルパンと対向すると共に上記クロスメンバとの間に間隙を有して車幅方向に延在して両端部が上記クロスメンバに取付支持されるサポートクロスメンバと、
該サポートクロスメンバの上記排気マニホールドと対向する部位に他の部位より車体前方に突出したマニホールド当接部とを備えたことを特徴とする車体前部構造。
【請求項2】
上記マニホールド当接部は、サポートクロスメンバに着脱自在に配設されたことを特徴とする請求項1に記載の車体前部構造。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【公開番号】特開2008−284894(P2008−284894A)
【公開日】平成20年11月27日(2008.11.27)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2007−129162(P2007−129162)
【出願日】平成19年5月15日(2007.5.15)
【出願人】(000005348)富士重工業株式会社 (3,010)
【Fターム(参考)】