車線維持支援装置及び車線維持支援方法
【課題】運転者の意図する走行ラインとのずれからくる違和感を低減しつつ、走行車線逸脱を有効に防止することが可能な車線維持支援装置を提供する。
【解決手段】自車両が走行する走行車線Lの幅方向中央からそれぞれ幅方向左右に横変位基準位置LXL、LXRを設ける。そして、少なくとも左右の横変位基準位置LXL、LXR以内に自車両が位置する場合、ヨー角偏差が小さくなるように自車両をフィードバック制御する。また、走行車線中央に対し左右の横変位基準位置LXL、LXRよりも外に自車両がいる場合、上記角度偏差および横変位偏差が小さくなるようにフィードバック制御する。角度偏差及び横方向偏差の少なくとも一方の偏差に応じて、相対的に前輪の転舵方向に対する後輪の転舵方向の位相を制御する。
【解決手段】自車両が走行する走行車線Lの幅方向中央からそれぞれ幅方向左右に横変位基準位置LXL、LXRを設ける。そして、少なくとも左右の横変位基準位置LXL、LXR以内に自車両が位置する場合、ヨー角偏差が小さくなるように自車両をフィードバック制御する。また、走行車線中央に対し左右の横変位基準位置LXL、LXRよりも外に自車両がいる場合、上記角度偏差および横変位偏差が小さくなるようにフィードバック制御する。角度偏差及び横方向偏差の少なくとも一方の偏差に応じて、相対的に前輪の転舵方向に対する後輪の転舵方向の位相を制御する。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、自車両が走行車線に沿って走行し且つ走行車線から逸脱することを防止するための車線維持支援装置及び車線維持支援方法に関する。
【背景技術】
【0002】
車線維持支援装置としては、例えば特許文献1に記載する発明がある。
この特許文献1に記載の技術では、自車両の進行方向と走行車線との角度偏差が小さくなるように車輪の転舵角を制御する技術である。これによって、自車両が走行車線を逸脱することを防止することを目的としている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【特許文献1】特許第3729494号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
特許文献1に記載のように、単純に、上記走行車線に対する角度偏差がゼロとなるように自車両の進行方向を制御すると、逸脱側へ角度偏差がついている場合と、逸脱回避側へ角度偏差がついている場合とで、同様な制御が介入することになる。このため、逸脱側への角度偏差発生時の逸脱防止効果と、逸脱回避側への角度偏差発生時の制御介入違和感とがトレードオフの関係にある。
【0005】
また、上記従来技術は、角度偏差がゼロとなるように自車両の進行方向を制御するだけである。このため、上記制御により自車両の走行車線からの逸脱を防止しきれなかった場合に、次のような課題がある。すなわち、自車両が走行車線を逸脱しているにも関わらず、自車両が走行車線と平行になった時点で制御が終了してしまい、走行車線内に自車両を戻す、もしくは走行車線内に自車両を留めるという効果が不足するという課題がある。
本発明は、上記のような点に着目したもので、運転者の意図する走行ラインとのずれからくる違和感を低減しつつ、走行車線逸脱を有効に防止することが可能な車線維持支援装置を提供することを課題としている。
【課題を解決するための手段】
【0006】
上記課題を解決するために、本発明は、自車両が走行する走行車線に横方向変位閾値を設ける。そして、自車両が走行車線の中央側から横方向変位閾値を通過する際に、横方向変位閾値より走行車線中央側では、走行車線に対する角度偏差を小さくするように自車両の進行方向を制御して、横方向変位閾値よりも走行車線の幅方向外側では、少なくとも横方向変位閾値からの横変位偏差を小さくするように自車両の進行方向を制御する。
このとき、角度偏差及び横方向偏差の少なくとも一方の偏差に応じて、相対的に前輪の転舵方向に対する後輪の転舵方向の位相を制御する。
【発明の効果】
【0007】
本発明によれば、自車両が走行車線中央側に位置する場合には、角度偏差が小さくなるように制御することで、運転者の意図する走行ラインに応じて、自車両は走行車線に沿って走行する。一方、自車両が走行車線の端部側に位置する場合には、走行車線中央部側に戻す制御が介入することで、適切に走行車線内に留めることができる。
更に、角度偏差や横方向偏差に応じて、相対的に前輪に対する後輪の転舵方向の位相を制御することで、制御の収束性を向上することが可能となる。
以上のように、本発明によれば、運転者の意図する走行ラインとのずれからくる違和感を低減しつつ、有効に走行車線逸脱を防止することが可能となる。
【図面の簡単な説明】
【0008】
【図1】本発明に基づく実施形態に係る車両のシステム構成を説明する図である。
【図2】本発明に基づく第1実施形態に係る車線維持支援コントローラの処理を説明する図である。
【図3】本発明に基づく第1実施形態に係る各値の関係を説明する平面図である。
【図4】本発明に基づく第1実施形態に係る各値の関係を説明する平面図である。
【図5】横変位Xと横変位偏差との関係を示す図である。
【図6】ヨー角θとヨー角偏差との関係を示す図である。
【図7】カーブIN側ゲインマップを示す概念図である。
【図8】カーブOUT側ゲインマップを示す概念図である。
【図9】フィードバックゲインKy_R、Ky_Lの状態を示す概念図である。
【図10】後輪転舵ゲイン算出のための補正ゲインKeyのマップの特性を示す図である。
【図11】後輪転舵ゲイン算出のための補正ゲインKelのマップの特性を示す図である。
【図12】後輪転舵ゲイン算出のための補正ゲインKvyのマップの特性を示す図である。
【図13】後輪転舵ゲイン算出のための補正ゲインKvlのマップの特性を示す図である。
【図14】後輪転舵ゲイン算出のための補正ゲインKdyのマップの特性を示す図である。
【図15】後輪転舵ゲイン算出のための補正ゲインKdlのマップの特性を示す図である。
【図16】横位置と重み付け係数の値を示す図である。
【図17】本発明に基づく第1実施形態に係る横位置偏差優位の動作を説明する図である。
【図18】本発明に基づく第1実施形態に係るヨー角偏差優位の動作を説明する図である。
【図19】本発明に基づく第1実施形態に係る動作を説明する図である。
【図20】本発明に基づく第1実施形態に係るカーブ路における動作を説明する図である。
【図21】本発明に基づく第1実施形態に係る逸脱時の走行軌跡を示す概念図である。
【図22】本発明に基づく第1実施形態の変形例に係る各値の関係を説明する平面図である。
【図23】本発明に基づく第1実施形態に係る逸脱側遷移領域の重み付けを示す図である。
【発明を実施するための形態】
【0009】
次に、本発明の実施形態について図面を参照しつつ説明する。
図1は、本実施形態の車線維持支援装置を適用した自車両のシステム概要構成図である。
この実施形態の自車両は、ステアバイワイヤシステムを採用している。
(構成)
まず構成について図1を参照しながら説明する。
運転者が操作するステアリングホイール12にステアリング入力軸30が連結する。そのステアリング入力軸30には、ステアリングホイール12の操舵角を検出するハンドル角度センサ1を設ける。そのハンドル角度センサ1は、検出した操舵角度信号を操舵用コントローラ11に出力する。
上記ステアリング入力軸30に、操舵トルクセンサ2を介して第1中間軸31が連結する。操舵トルクセンサ2は、ステアリング入力軸30に入力した操舵トルクを検出し、そのトルク信号を操舵用コントローラ11に出力する。
【0010】
上記第1中間軸31に、操舵反力アクチュエータ3が連結する。操舵反力アクチュエータ3は、操舵用コントローラ11からの指令に基づき操舵反力を第1中間軸31に付加する。その操舵反力アクチュエータ3の操舵反力モータに操舵反力モータ角度センサ4を設ける。操舵反力モータ角度センサ4は、操舵反力モータの回転角度位置を検出し、その検出信号を操舵用コントローラ11に出力する。
【0011】
上記第1中間軸31に、メカニカルバックアップ装置10を介して第2中間軸32が連結する。メカニカルバックアップ装置10は、通常状態では、第1中間軸31と第2中間軸32との間のトルク伝達を切った状態とする。また、メカニカルバックアップ装置10は、操舵用コントローラ11からの指令に基づき、第1中間軸31と第2中間軸32とを接続してトルク伝達を可能な状態とする。
【0012】
上記第2中間軸32は、転舵トルクセンサ7を介してステアリング出力軸33に連結している。また、上記第2中間軸32に、転舵アクチュエータ5が連結する。転舵アクチュエータ5は、操舵用コントローラ11からの指令に基づき第2中間軸32を回動変位する。その転舵アクチュエータ5の転舵用モータに転舵アクチュエータ角度センサ6を設ける。転舵アクチュエータ角度センサ6は、転舵アクチュエータ5のモータの回転角度位置を検出し、その検出信号を操舵用コントローラ11に出力する。
【0013】
上記ステアリング出力軸33は、ラックアンドピニオン機構を介してラック軸34に連結する。すなわち、ステアリング出力軸33に連結するピニオンがラック軸34のラックに噛み合う。ラック軸34は、車幅方向に軸を向けて配置してある。そして、ステアリング出力軸33を回動変位させることで、ラック軸34は車幅方向に向けて軸方向変位する。符号8は、ピニオン角度センサ8を示し、ピニオンの回転角度を検出して操舵用コントローラ11に出力する。
【0014】
上記ラック軸34の左右端部は、それぞれ左右のタイロッド35を介してナックルに連結する。符号36はナックルから突出するナックルアームを示す。ナックルは、操向輪である前輪13を回転自在に支持する。上記タイロッド35にタイロッド軸力センサ9を設ける。タイロッド軸力センサ9は、タイロッド35の軸力を検出し、その検出信号を操舵用コントローラ11に出力する。
【0015】
また、符号25は、後輪用転舵アクチュエータである。後輪用転舵アクチュエータ25は、操舵用コントローラ11からの信号に応じて、ラック軸50を車幅方向に向けて軸方向変位する。上記ラック軸50の左右端部は、それぞれ左右のタイロッド51を介して後輪用のナックルに連結する。符号52は後輪用のナックルから突出するナックルアームを示す。ナックルは、後輪40を回転自在に支持する。
また、自車両状態パラメータ14が操舵用コントローラ11に入力する。自車両状態パラメータ14は、例えば車速検出手段が検出した車速や、路面摩擦係数推定手段が検出した走行路面の摩擦係数推定値である。
【0016】
操舵用コントローラ11は、ハンドル角度センサ1が検出した操舵角に相当する転舵角とする転舵指令値を転舵アクチュエータ5に出力すると共に、操舵反力を付与するための指令値を操舵反力アクチュエータ3に出力する。ここで、操舵用コントローラ11は、後述の車線維持支援コントローラ15から補正分の転舵指令を入力すると、その補正転舵指令を上記転舵指令値に付加(加算)することで、転舵指令値を補正する。また、操舵用コントローラ11は、後述の車線維持支援コントローラ15から転舵指令に応じた転舵指令値を転舵アクチュエータ25に出力する。
【0017】
また、前輪13及び後輪40の各車輪にブレーキユニットを備える。各ブレーキユニットは、ブレーキディスク22と、液圧の供給によりブレーキディスク22を摩擦挟持してブレーキ力(制動力)を与えるホイルシリンダ23とを備える。これらブレーキユニットの各ホイルシリンダ23に、圧力制御ユニット24が連結し、圧力制御ユニット24から供給した液圧によって、ブレーキユニットは各車輪に対し個別に制動を付加する。
上記システム構成を備えた自車両に対し、車線維持支援装置を設ける。
【0018】
その構成について次に説明する。
自車両に、画像処理機能付き単眼カメラを搭載する。この画像処理機能付き単眼カメラは、自車両の位置を検出するための外界認識手段16である。画像処理機能付き単眼カメラは、自車両前方の路面を撮像する。その撮像したカメラ画像から路面の状態を判断し、自車が走行する走行車線内の自車両の位置に関する信号を、車線維持支援コントローラ15に出力する。走行車線内の自車両の位置に関する信号は、走行車線に対する自車両の進行方向の角度偏差であるヨー角θ、走行車線中央からの横変位X、及び走行車線の曲率ρに関する情報である。
【0019】
また、方向指示スイッチ17を備える。方向指示スイッチ17の信号は、運転者が走行車線を変更するか否かの判断情報として、車線維持支援コントローラ15に出力する。
また、車線維持支援コントローラ15は、操舵用コントローラ11から、現在のステアの状態やタイヤの操舵状態などの信号が入力する。
車線維持支援コントローラ15は、入力した信号に基づき自車両を走行車線に維持させるための制御量を算出して、少なくとも上記操舵用コントローラ11に出力する。
【0020】
次に、その車線維持支援コントローラ15の処理について、図2を参照しつつ説明する。
この車線維持支援コントローラ15は、所定サンプリング周期毎に繰り返し実行する。
まず作動すると、ステップS100にて、各センサ及び操舵用コントローラ11などからの各種データを読み込む。車輪速センサ18〜21から各車輪速Vwを読み込む。また、操舵角δ、操舵角速度δ′、方向指示スイッチ17の信号を読み込む。外界認識手段16のカメラコントローラからは、自車両の走行車線Lに対する自車両のヨー角θ、走行車線中央Lsからの横変位X、及び走行車線Lの曲率ρをそれぞれ読み込む。ここで、走行車線中央Lsからの横変位Xは、例えば図3及び図4に示すように、自車両Cの重心位置Gを基準とすれば良い。もっとも自車両Cの重心位置Gを基準としなくても良い。例えば、自車両Cの前端部中央を基準にして、走行車線中央Lsからの横変位Xを求めても良い。すなわち、図4のように、ヨー角θに応じて自車両Cの前端部から先に逸脱方向に変位するので、その部分を基準として横変位Xを求めて、より早期に横変位偏差を小さくするようにしても良い。
【0021】
続いてステップS110にて、下記(1)式および(2)式に基づき、左右の横変位基準閾値XLt、XRtの設定を行う。
ここで、図3に示すように、右側の横変位基準閾値XRtは、右逸脱に対して設定する横変位Xの偏差の基準である横変位基準位置LXRの位置を特定するものである。左側の横変位基準閾値XLtは、左逸脱に対して設定する横変位Xの偏差の基準である横変位基準位置LXLの位置を特定するものである。
XRt = ( Wlane/2 ) − ( Wcar/2 )
− Xoffset ・・・(1)
XLt = −((Wlane/2 ) − ( Wcar/2 )
− Xoffset ) ・・・(2)
ここで、走行車線中央Lsからの横変位Xは、走行車線Lに対して自車両Cが中心よりも右側にいる場合を正とし、左側に位置する場合を負とする。このため、右側の横変位基準閾値XRt側を正としている。
【0022】
また、図3に示すように、Wlaneは走行車線幅であり、Wcarは自車両Cの車幅である。
また、Xoffsetは走行車線端部Le(白線や路肩)の位置に対する余裕代である。この余裕代Xoffsetは、走行車線幅Wlaneや車速などに応じて変更しても良い。例えば、走行車線幅Wlaneが狭い程、余裕代Xoffsetを小さくする。また、左右の横変位基準位置LXL、LXR毎に異なる余裕代Xoffsetを使用しても良い。また、この左右の横変位基準位置LXL、LXRは固定値であっても良い。
【0023】
続いて、ステップS120にて、下記(3)式に基づき、右逸脱に対する横変位偏差ΔXRを算出する。
ΔXR = X − XRt ・・・(3)
ただし、ΔXR≦0の場合、ΔXR=0とする(正の値のみをとるようにする)。
上記(3)式によって、横変位Xと、右逸脱に対する横変位偏差ΔXRとは、図5(a)に示す関係となる。
すなわち、上記(3)式を使用することで、「X−XRt≧0」となると、自車両Cが、走行車線中央Lsに対し右の横変位基準位置LXRよりも外に出たと判定する。そして、自車両Cが右側の走行車線端部Le側に寄った場合であるので、自車両Cに近い横変位基準位置として右側の横変位基準位置LXRを横変位偏差の基準として、右逸脱に対する横変位偏差ΔXRを求めることになる。
【0024】
続いて、ステップS130にて、下記(4)式に基づき、左逸脱に対する横変位偏差ΔXLを算出する。
ΔXL = X − XLt ・・・(4)
ただし、ΔXL≧0の場合、ΔXL=0とする(負の値のみをとるようにする)。
上記式によって、横変位Xと、左逸脱に対する横変位偏差ΔXLとは、図5(b)に示す関係となる。
すなわち、上記(4)式を使用することで、「X−XLt≦0」となると、自車両Cが、走行車線中央Lsに対し左の横変位基準位置LXLよりも外に出たと判定する。そして、自車両Cが左側の走行車線端部Le側に寄った場合であるので、自車両Cに近い横変位基準位置として左側の横変位基準位置LXLを横変位偏差の基準として、左逸脱に対する横変位偏差ΔXLを求めることになる。
【0025】
続いて、ステップS140にて、下記(5)式に基づき、右逸脱に対するヨー角偏差ΔθRを算出する。ここで、走行車線Lに対する自車両Cのヨー角θは、右側へヨー角θがついている場合(図4のような状態)を正とし、左側へヨー角θがついている場合を負とする。
ΔθR = θ (θ>0の場合)
ΔθR = 0 (θ≦0の場合)
・・・(5)
上記(5)式によって、ヨー角θと、右逸脱に対してのみ設定するヨー角偏差ΔθRとは、図6(a)に示す関係となる。
【0026】
続いて、ステップS150にて、下記(6)式に基づいて、左逸脱に対するヨー角偏差ΔθLを算出する。
ΔθL = θ (θ<0の場合)
ΔθL = 0 (θ≧0の場合)
・・・(6)
上記(6)式によって、ヨー角θと、左逸脱に対してのみ設定するヨー角偏差ΔθLとは、図6(b)に示す関係となる。
【0027】
続いて、ステップS160にて、走行車線Lのカーブ方向、曲率ρ、及びヨー角θ(逸脱)の方向に応じて、右逸脱に対する走行車線端部制御フィードバック補正ゲインKρL_R、及び左逸脱に対する走行車線端部制御フィードバック補正ゲインKρL_Lを、それぞれ求める。
すなわち、曲率ρの向き(走行車線Lのカーブ方向)に応じて3種類に分けて、下記のように、個別のマップを使用して、右逸脱に対する走行車線端部制御フィードバック補正ゲインKρL_R、及び左逸脱に対する走行車線端部制御フィードバック補正ゲインKρL_Lを設定する。
【0028】
曲率ρ<0(右カーブ)と判定した場合:
KρL_R:図7に示すような、カーブIN側補正ゲインマップから読み込む。
KρL_L:図8に示すような、カーブOUT側補正ゲインマップから読み込む。
曲率ρ>0(左カーブ)と判定した場合
KρL_R:図8に示すような、カーブOUT側補正ゲインマップから読み込む。
KρL_L:図7に示すような、カーブIN側補正ゲインマップから読み込む。
曲率ρ=0(直線路)と判定した場合
KρL_R = 1.0 (補正なし)
KρL_L = 1.0 (補正なし)
ここで、走行車線Lの曲率ρは、旋回半径の逆数であり、直線路でρ=0となり、カーブがきつくなる(旋回半径が小さくなる)につれて、曲率ρの絶対値が大きな値となる。また、左カーブを正とし、右カーブを負とする。
【0029】
上記カーブIN側補正ゲインマップは、図7のように、曲率ρの絶対値が所定以上となると、曲率ρの絶対値が大きくなるにつれて、補正のゲインが小さくなるマップである。そして、左右の走行車線端部Leのうち、カーブ路の内側に位置する走行車線端部Leに対する制御のゲインを、曲率ρの絶対値の増大に応じて低減するように補正するものである。
【0030】
また、上記カーブOUT側補正ゲインマップは、図8のように、曲率ρの絶対値が所定以上となると、曲率ρの絶対値が大きくなるにつれて、補正のゲインが大きくなるマップである。そして、左右の走行車線端部Leのうち、カーブ路の外側に位置する走行車線端部Leに対する制御のゲインを、曲率ρの絶対値の増大に応じて増加するように補正するものである。
【0031】
続いてステップS170では、走行車線Lのカーブ方向、曲率ρ、及び横変位X(逸脱)の方向に応じて、右逸脱に対する走行車線中央部制御フィードバック補正ゲインKρY_R、左逸脱に対する走行車線中央部制御フィードバック補正ゲインKρY_Lをそれぞれ求める。
すなわち、曲率ρの向き(走行車線Lのカーブ方向)に応じて3種類に分けて、下記のように、マップを使用して、右逸脱に対する走行車線中央部制御フィードバック補正ゲインKρY_R、及び左逸脱に対する走行車線中央部制御フィードバック補正ゲインKρY_Lをそれぞれ設定する。
【0032】
曲率ρ<0(右カーブ)と判定した場合
KρY_R : 図7に示すような、カーブIN側補正ゲインマップから読み込む。
KρY_L : 図8に示すような、カーブOUT側補正ゲインマップから読み込む。
曲率ρ>0(左カーブ)と判定した場合
KρY_R : 図8に示すような、カーブOUT側補正ゲインマップから読み込む。
KρY_L : 図7に示すような、カーブIN側補正ゲインマップから読み込む。
曲率ρ=0(直線路)と判定した場合
KρY_R = 1.0 (補正なし)
KρY_L = 1.0 (補正なし)
【0033】
ここで、カーブIN側補正ゲインマップ及びカーブOUT側補正ゲインマップを、走行車線端部制御フィードバック補正ゲインを求める場合と、走行車線中央部制御フィードバック補正ゲインを求める場合とで同じ傾向のマップを使用している。ただし、マップ上の勾配を走行車線端部制御フィードバック補正ゲインKρL_R、KρL_Lを求める場合と、走行車線中央部制御フィードバック補正ゲインKρY_R、KρY_Lを求める場合とで異なるマップを使用するようにしている。すなわち、走行車線端部制御フィードバック補正ゲインKρL_R、KρL_Lを求める際に使用するカーブIN側補正ゲインマップ及びカーブOUT側補正ゲインマップの方が、曲率ρの絶対値の変化に対する勾配を大きく設定する。これは、走行車線端部Le側の方がカーブの内側及び外側での曲率ρに対する補正量を大きくして、その分だけ敏感にするためである。
【0034】
続いてステップS180では、下記(7)式、(8)式に基づいて、右逸脱に対する走行車線端部制御による目標転舵角φL_Rt、及び左逸脱に対する走行車線端部制御による目標転舵角φL_Ltを算出する。
φL_Rt=−(((Kc_L1×Kv_L1×ΔXR)
+(Kc_L2×Kv_L2×θ)
+(Kc_L3×Kv_L3×ρ))
×KρL_R) ・・・(7)
φL_Lt=−(((Kc_L1×Kv_L1×ΔXL)
+(Kc_L2×Kv_L2×θ)
+(Kc_L3×Kv_L3×ρ))
×KρL_R) ・・・(8)
【0035】
ここで、Kc_L1、Kc_L2、Kc_L3は、車両諸元により定まるフィードバックゲインである。
Kv_L1、Kv_L2、Kv_L3は、車速に応じた補正ゲインである。例えば、 Kv_L1、Kv_L2、Kv_L3は、車速に応じて大きくなる。
ここで、上記(7)式及び(8)式の2項目及び3項目は、横変位偏差に対する補正項(収束項)である。このため、補正ゲインKc_L1よりも、補正ゲインKc_L2、Kc_L3を小さく設定してある。同様に、補正ゲインKv_L1よりも、補正ゲインKc_L2、Kc_L3を小さく設定してある。
【0036】
すなわち、右逸脱若しくは左逸脱に対する走行車線端部制御による目標転舵角φL_Lt、φL_Rtは、各横変位基準位置LXL、LXRからの横変位偏差が小さくなる制御量を求めるものである。そして、その際に、自車両Cのヨー角θ及び道路曲率ρでその制御量を補正している。このとき、上記式の第2項の自車両Cのヨー角θ分は、横速度に対するフィードバック制御量として作用する。このため、第2項の自車両Cのヨー角θ分として、ヨー角偏差ΔθR若しくはΔθLを使用することなく、ヨー角θを使用している。
【0037】
以上から、後述のステップS200のように、最終の最終目標転舵角φft、φrtを算出する際に、右逸脱に対する走行車線端部制御による目標転舵角φL_Rtと左逸脱に対する走行車線端部制御による目標転舵角φL_Ltの和として算出する。すなわち、上記目標転舵角φL_Rtと目標転舵角φL_Ltの和を、走行車線端部制御分の目標転舵角としている。
【0038】
このとき、走行車線中央Ls側である左右の横変位基準位置LXL、LXRの間に自車両Cが位置する場合には、図5のように横変位偏差ΔXR、ΔXLの両方の値が0となる。すなわち、上記目標転舵角φL_Rtと目標転舵角φL_Ltの値は、小さな値となる。この結果、走行車線端部制御分の目標転舵角は小さなものとなり、後述の走行車線中央部制御分の目標転舵角φY_Lt、φY_Rtが支配的となる。
【0039】
また、走行車線中央Ls側である左右の横変位基準位置LXL、LXRの間の外に自車両Cが位置する場合には、図5のように横変位偏差ΔXR、ΔXLの一方の値だけが0となる。すなわち、目標転舵角φL_Rtと目標転舵角φL_Ltのうち、自車両Cから離れた側の走行車線端部制御用の目標転舵角φL_Lt若しくはφL_Rtの一方は小さくなり、自車両Cに近い側の走行車線端部制御用の目標転舵角φL_Lt若しくはφL_Rtの他方が、走行車線端部制御分の目標転舵角としては支配的となる。
【0040】
そして、走行車線Lに対する自車両Cのヨー角θを横変位Xに対する微分項(横速度)として第2項に設けてそのままフィードバックして制御し、さらに道路曲率ρに対する補正項として第3項を設けてフィードバックして制御する。この結果、第1項によって、横変位基準位置を基準として走行車線L外側へ自車両Cの位置を制御しようとする動きを無くしつつ適切に走行車線L内に留め、第2項及び第3項を設けることで、走行車線端部Leからの自車両Cのはじき返され感を低減することができる。すなわち、収束項として第2項(横方向変位の微分値)及び第3項(路面のカーブに対する収束項)を設けることで、横変位基準位置への収束が良くなる。
更に、走行車線端部制御フィードバック補正ゲインKρL_R、KρL_Lを乗算して制御ゲインを補正する。すなわち、走行車線Lのカーブ方向、曲率ρ、及び横位置に応じて補正することにより、カーブ路においても違和感なく、適切に、制御を行うことができる。
なお、上記第3項をゼロとしても良い。
【0041】
続いてステップS190において、下記(9)式及び(10)式に基づき、右逸脱に対する走行車線中央部制御による目標転舵角φY_Rt、左逸脱に対する走行車線中央部制御による目標転舵角φY_Ltを算出する。
φY_Rt=−(Kc_Y ×Ky_R ×Kv_Y ×KρY_R ×ΔθR)
・・・(9)
φY_Lt=−(Kc_Y ×Ky_L ×Kv_Y ×KρY_L ×ΔθL)
・・・(10)
ここで、Kc_Yは車両諸元により定まるフィードバックゲインである。また、Kv_Yは車速に応じた補正ゲインである。例えば、Kv_Yは車速が高いほど大きな値とする。
【0042】
また、Ky_R、Ky_Lは、図9に示すような、走行車線Lに対する横変位Xに応じてそれぞれ個別に設定するフィードバックゲインである。
すなわち、右逸脱に対する走行車線中央部制御による目標転舵角φY_Rtは、自車両Cの進行方向が、右側を向いている場合である。このため、右逸脱に対するフィードバックゲインKy_Rは、左側の走行車線端部Le側を基準として右側の走行車線端部Leに近づくにつれて大きくなるように設定してある。
【0043】
また、左逸脱に対する走行車線中央部制御による目標転舵角φY_Ltは、自車両Cの進行方向が、左側を向いている場合である。このため、左逸脱に対するフィードバックゲインKy_Lは、右側の走行車線端部Le側を基準として左側走行車線端部Leに近づくにつれて大きくなるように設定してある。なお、目標転舵角φY_Rt、及びφY_Ltは、右方向への転舵を正とし、左方向への転舵を負とする。
【0044】
ここで、後述のステップS200のように、走行車線中央部制御分の最終目標転舵角を、右逸脱に対する走行車線中央部制御による目標転舵角φY_Rtと左逸脱に対する走行車線中央部制御による目標転舵角φY_Ltの和として算出する。このとき、右側へヨー角θがついている場合には、図6のようにΔθL=0となるため、左逸脱に対する目標転舵角φY_Ltは0となる。すなわち、右逸脱に対する目標転舵角φY_Rtのみを採用することになる。同様に、左側へヨー角θがついている場合には、図6のようにΔθR=0となるため、右逸脱に対する目標転舵角φY_Rtは0となる。すなわち、左逸脱に対する目標転舵角φY_Ltのみを採用することになる。
【0045】
このとき、前述の通り、制御ゲインKy_R、Ky_Lを、図9に示すように、自車両Cのヨー角θの向き側の走行車線端部Leを基準として、その走行車線端部Leに近づくほど大きくなるように設定している。このことから、逸脱側へヨー角θが発生している場合には積極的に逸脱を防止するよう制御量が大きく介入して制御する。また、逸脱回避側へヨー角θが発生している場合には、制御量が小さくなることで、違和感なく、穏やかに、走行車線Lに沿った方向に、自車両Cの進行方向の向きを合わせることができる。
【0046】
また、上記制御ゲインKy_R、Ky_Lは、一方の走行車線端部Leを基準として、その走行車線端部Leに近づくほど大きくなるように設定している。これによって、自車両Cが走行車線中央Lsを跨るように走行しても、連続して制御量が変化して、走行車線中央Lsを跨る際の違和感を抑えることが可能となっている。
更に、カーブ路における走行車線中央Lsに対して内側若しくは外側に変位している場合には、ステップS170において算出するように、走行車線Lのカーブ方向、及び曲率ρに応じて補正することにより、カーブ路においても違和感なく、適切に、制御を行うことができる。
【0047】
続いてステップS195では、後輪転舵ゲインKry、Krl、及び前輪の転舵ゲインKfy、Kflを算出する。
まず後輪転舵ゲインKry、Krlを、下記式に基づき算出する。
Kry = Ksy ×Key ×Kvy ×Kdy ・・・(11)
Krl = Ksl ×Kel ×Kvl ×Kdl ・・・(12)
ここで、Ksy、Kslは、車両諸元により定まるゲインである。ここで、ゲインKsyは負の値となるように設定する。また、ゲインKslは正の値となるように設定する。
【0048】
また、ゲインKey、Kelは、自車両の車線内横位置や走行車線の曲率といった、車両周囲の走行環境に応じ変化するゲインである。
例えば、Key、Kelは、図10及び図11のように設定する。すなわち、車両中央側では、Keyは小さいと共にKelは大きい。逆に車線端部側では、Keyは大きいと共にKelは小さい。この場合、後輪転舵は、車線中央側では横位置制御が主体的となり、車線端側では、ヨー角制御が主体的となる。
【0049】
また、ゲインKvl、Kvyは、自車速によって変化するゲインである。
例えば、Kvl、Kvyは図12、図13のように決定する。すなわち、ゲインKvyは、低車速ではゲインを高く設定し、中車速ではゲインを通常通りとする。さらに高車速では、ゲインを低く設定する。逆に、ゲインKvlは、逆の傾向となる。これによって、低速側では、ヨー角制御が主体的となり、高速側では横位置制御が主体的となる。
【0050】
また、Kdl、Kdyは、ステアリングに設けたトルクセンサまたは舵角センサから推定される運転者操舵意図推定値である。
例えば、Kdl、Kdyは図14,図15のように決定する。Kdl、Kdyは、操舵トルクが小さい場合には、大きな値とし、所定以上の操舵トルクの場合には小さくする。
ここで、Kryは負の値となるように設定し、Krlは正の値となるように設定する。
また、ゲインKey、Kvy、Kdy、Ksl、Kel、Kvl、Kdlは、全て使用する必要な無く、適宜選択若しくは組合わせて使用すればよい。またこのゲインを全て使用しなくても良い。
【0051】
次に、下記式に基づき、前輪転舵ゲインKfy、Kflを、後輪転舵ゲインKry、Krlに応じて算出する。
Kfy = 1 +Kry ・・・(13)
Kfl = 1 +Krl ・・・(14)
ここで、Kryは負であり、Krlは正である。このため、Kryの絶対値が大きくなるほど、Kfyは小さな値となる。一方、Krlが大きくなるほど、Kflも大きくなる。
なお、上記前輪転舵ゲインKfy、Kflを、下記のように設定しても良い。すなわち、後輪転舵分を考慮しないようにしても良い。
Kfy =1
Kfl =1
続いてステップS200では、車線維持支援のための、前輪の最終目標転舵角φftと、後輪の最終目標転舵角φrtとを算出する。
【0052】
本実施例では、前輪の最終目標転舵角φft及び後輪の最終目標転舵角φrtを、下記式のように、ステップS180において算出した走行車線端部制御による左右の目標転舵角φL_Lt、φL_Rtと、ステップS190において算出した走行車線中央部制御による左右目標転舵角φY_Lt、φY_Rtとの和として算出する。
φft=(Kfl ×α_R ×φL_Rt +Kfy ×β_R ×φY_Rt)
+(Kfl ×α_L ×φL_Lt +Kfy ×β_L ×φY_Lt)
φrt=(Krl ×α_R ×φL_Rt +Kry ×β_R ×φY_Rt)
+(Krl ×α_L ×φL_Lt +Kry ×β_L ×φY_Lt)
【0053】
ここで、α_R、β_Rは、それぞれ、右逸脱に対する走行車線端部制御、及び走行車線中央部制御に対する重み付け係数である。また、α_L、β_Lは、それぞれ、左逸脱に対する走行車線端部制御、及び走行車線中央部制御に対する重み付け係数である。
上記重み付け係数α_R、α_L、β_R、β_Lは、図10に示す関係となっていて、自車両Cの横位置に応じて、α_R、α_Lに対するβ_R、β_Lの相対的な大きさが変化するようになっている。
また、下記式の関係となっている。
α_R + β_R = 1.0
α_L + β_L = 1.0
【0054】
この重み付け係数について説明する。
(7)式及び(8)式にあるように、走行車線端部制御による目標転舵角φL_Rt、φL_Ltの第2項としてヨー角要素(横速度)のフィードバックがある。このフィードバックは、走行車線端部Leからのはじき返され感を低減するための、横変位要素の微分項として設定してある。このために、横変位要素のフィードバックと併せて、横変位基準位置への収束性を向上させることが可能となる。
【0055】
一方、(9)式及び(10)式にあるように、走行車線中央部制御におけるヨー角θ要素のフィードバックは、走行車線Lに対して自車両Cの進行方向を合わせることを目的として設定する。
このため、例えば、走行車線Lの左端部において、左側(逸脱側)へのヨー角θがついている場合、走行車線端部制御における横変位フィードバック要素に加えて、走行車線中央部制御におけるヨー角フィードバックを行うと、制御過多となるおそれがある。また、走行車線L左端部において、右側(逸脱回避側)へヨー角θがついている場合、走行車線中央部制御におけるヨー角フィードバックは弱く設定しており、横変位基準位置への収束性が悪く、走行車線端部Leからのはじき返され感が生じてしまう可能性がある。
【0056】
このため、本実施形態では、例えば、図16に示すように、横変位基準閾値よりも走行車線端部Le側に寄るにつれて走行車線端部制御側の重みを大きくする。一方、走行車線中央Ls側に寄るにつれて走行車線中央部制御側の重みを大きくする。このように、自車両Cの走行車線Lに対する横位置に応じてこれらの重みを設定する。このように設定することで、走行車線中央Lsでは、拘束感のない自由なライン取りが実現しつつ、走行車線端部Leでは、適切に走行車線L内に留め、かつ走行車線端部Leからのはじき返され感を低減することができる。
【0057】
上述のように重み付けを行う事で、横変位基準閾値よりも走行車線端部Le側において、横変位フィードバックとヨー角フィードバックの両方の制御を行う重複制御領域を有することになる。
続いて、ステップS210において、運転者の走行車線変更の意思を判定する。具体的には、上記ステップS100で得た方向スイッチ信号及び自車両Cの進行方向に基づき、運転者の走行車線Lを変更するか否かの意思を判定する。
【0058】
すなわち、方向スイッチ信号が示す方向(ウインカ点灯側)と自車両Cの進行方向とが同方向の場合には、運転者が意識的に走行車線Lを変更しようとしていると判定する。この場合には、ステップS220における転舵角の補正を行うこと無く、復帰する。なお、ステアリングホイール12の操舵が、方向スイッチ信号が示す方向(ウインカ点灯側)と同方向の場合に運転者が意識的に走行車線L変更しようとしていると判定しても良い。
【0059】
続いてステップS220にて、ステップS200において算出した前輪側の最終目標転舵角φftの補正転舵角指令値を操舵用コントローラ11に出力する。また、算出した後輪側の最終目標転舵角φrtの転舵角指令値を操舵用コントローラ11に出力する。
ここで、操舵用コントローラ11では、前述の通り、車線維持支援コントローラ15から最終目標転舵角φftの補正転舵角指令値を入力すると、運転者の操舵操作に応じて算出した目標転舵角に当該前輪側の最終目標転舵角φftを付加して、最終的な目標転舵角とし、その目標転舵角に応じた転舵角となるように、前輪用の転舵アクチュエータ5を駆動する。また、操舵用コントローラ11では、車線維持支援コントローラ15から後輪側の最終目標転舵角φrtの転舵角指令値を入力すると、最終目標転舵角φrtの転舵角指令値に応じた転舵角となるように、後輪用の転舵アクチュエータ25を駆動する。
【0060】
ここで、本実施形態の車線維持支援装置を提供する自車両Cとして、ステアバイワイヤシステムの自車両Cを例示している。電動若しくは油圧を使用したパワステアリングシステムを搭載した自車両Cの場合には、上記最終目標転舵角φft、φrtをアシストトルク量の補正量に変換して、アシストルクに付加することで転舵角分の補正を行うようにしても良い。
また、ステアリング軸を回転変位して転舵角を変更可能な自車両Cにあっては、その回転変位量を上記最終目標転舵角φftの分だけ補正するようにすればよい。
【0061】
ここで、左右の横変位基準位置LXL、LXRは、横方向変位閾値及び横変位基準位置の両方を構成する。ステップS180、S190は、制御量算出手段を構成する。ステップS200及び操舵用コントローラ11は、進行方向制御手段を構成する。(4)式及び(5)式は、左右の横方向変位閾値間に位置する場合における、横変位偏差をゼロ、若しくは制御ゲインを小さくする構成に対応する。(9)式及び(10)式が、第2制御量算出手段、第3制御量算出手段、第4制御量算出手段を構成し、その目標転舵角φY_Rt、φY_Ltが第2の制御量、第3の制御量、及び第4の制御量となる。(7)式及び(8)式が、第1制御量算出手段を構成し、その目標転舵角φL_Rt、φL_Ltが第1の制御量となる。また、(11)式は、最終制御量算出手段を構成する。また、最終目標転舵角φft、φrtが、最終的な制御量を構成する。また、補正ゲインKρL_R、KρL_L、KρY_R、KρY_Lがカーブ路補正手段を構成する。左右の走行車線端部Leが横端部基準位置を構成する。重み付け係数α_R、α_Lが第2重み付け係数及び第3重み付け係数を構成する。重み付け係数β_R、β_Lが第1重み付け係数を構成する。ヨー角偏差ΔθR若しくはΔθLが、角度偏差を構成する。(7)式及び(8)式の第2項が、第5の制御量を構成する。
ステップS195、S200は、転舵方向調整手段を構成する。
【0062】
(動作)
「左右の横変位基準位置LXL、LXRの間」
まず自車両Cが、左右の横変位基準位置LXL、LXRの間を走行している場合について説明する。
この場合には、ΔXR及びΔXLは共にゼロとなる。このため、(7)式及び(8)式で示す、走行車線端部制御による左右の目標転舵角φL_Rt及びφL_Ltの第1項はゼロとなる。つまり、走行車線端部制御による左右の目標転舵角φL_Rt及びφL_Ltは、小さな値となる。
ここで、走行車線端部制御による左右の目標転舵角φL_Rt及びφL_Ltの2項は、自車両Cの横速度分をゼロとする制御量となる。また、走行車線端部制御による左右の目標転舵角φL_Rt及びφL_Ltの2項は、直進路であればゼロの値を取る。
【0063】
更に、自車両Cが、左右の横変位基準位置LXL、LXRの間を走行している場合には、走行車線端部制御による左右の目標転舵角φL_Rt及びφL_Ltに対する重み付け係数α_R、α_Lは図10のように小さな値に設定してある。
これによって、自車両Cが、左右の横変位基準位置LXL、LXRの間を走行している場合には、走行車線中央部制御による目標転舵角φY_Rt及びφY_Ltが支配的となる。特に、図16のように、走行車線端部制御による左右の目標転舵角φL_Rt及びφL_Ltに対する重み付け係数α_R、α_Lよりも、走行車線中央部制御による目標転舵角φY_Rt及びφY_Ltのβ_R、β_Lの方が大きくなるように設定してある。このことからも、自車両Cが、左右の横変位基準位置LXL、LXRの間を走行している場合には、走行車線中央部制御による目標転舵角φY_Rt及びφY_Ltが支配的となる。
【0064】
このため、自車両Cが、左右の横変位基準位置LXL、LXRの間を走行している場合には、角度偏差が小さくなるように制御されて、自車両Cは、運転者の意図する走行ラインに沿って、走行車線Lと平行な方向に走行する。
以上のことから、自車両Cが走行車線中央Ls側に位置する場合には、角度偏差が小さくなるように制御する。また、横方向変位に対するフィードバックが無いか小さい。つまり走行車線中央Ls側に戻す制御介入は無いか小さい。この結果、運転者の意図する走行ラインに応じて、自車両Cは走行車線Lに沿って走行する。
【0065】
更に、本実施形態では、角度偏差が小さくなるように前輪の転舵を制御するのに併せて、後輪の転舵も制御する。このとき、走行車線中央部制御による目標転舵角φY_Rt及びφY_Ltが支配的と成っていることから、ゲインKfl、Krlの影響は小さい。
また、ゲインKryは負の値であるのに対して、ゲインKfyが正の値となる。このため、前輪の転舵方向とは逆相方向に後輪が転舵する。これによって、図17に示すように、前輪のみで転舵制御する場合に比べて転舵制御に対する車両運動の追従性及び制御の収束性が向上する。
【0066】
また、ゲインKryが大きくなるにつれて、ゲインKfyを相対的に小さくする。これによって、車両の発生させるヨーレートを前輪のみの状態と同等としながら、運転者に与える回頭性を、前輪のみの転舵制御に比較して大きくする。
またこのとき、目標転舵角φY_Rt及びφY_Ltを算出する際に、(9)式及び(10)式に示すように、制御ゲインとしてKy_R、Ky_Lを乗算して補正している。この制御ゲインKy_R、Ky_Lは、自車両Cの進行方向側の走行方向端部に対して自車両Cの距離が近づくほど大きくなって、上記目標転舵角φY_Rt及びφY_Ltは大きな値となる。
【0067】
このため、自車両Cの進行方向が逸脱側の場合には、目標転舵角φY_Rt及びφY_Ltは大きくなって逸脱防止効果が大きくなる。また、自車両Cの進行方向が逸脱回避側の場合には、目標転舵角φY_Rt及びφY_Ltは小さくなって、制御過多とならずに違和感を低減する。
例えば、自車両Cの進行方向が、走行車線Lに対し右側にヨー角θがついている場合には、自車両Cが走行車線中央Lsに対し右側に横変位Xして位置(逸脱側)しているほど、目標転舵角φY_Rtは大きくなる。つまり、逸脱回避効果が大きくなる。一方、自車両Cが走行車線中央Lsに対し左側に横変位Xして位置(逸脱回避側)しているほど、目標転舵角φY_Rtは小さくなる。
【0068】
また、上記制御ゲインKy_R、Ky_Lは、自車両Cの進行方向側の走行方向端部からの距離に応じて変化させる。このため、自車両Cの進行方向が走行車線Lに対し右側に傾いて、つまり右側にヨー角θがついている場合に、自車両Cが走行車線中央Lsに対して左側から右側に当該走行車線中央Lsを跨るように走行する場合であっても、運転者に違和感を与えにくくなっている。
【0069】
「横変位基準位置LXL、LXRよりも外側に進入する移行期」
次に、自車両Cが、走行車線中央Ls側から、左右の横変位基準位置LXL、LXRよりも外側に移行する場合について説明する。
ここで、横変位基準位置LXL、LXRよりも走行車線端部側の領域を逸脱領域と呼ぶ。
上述のように、自車両Cが、左右の横変位基準位置LXL、LXRの間を走行している場合には、角度偏差が小さくなるように制御する。このため、自車両が逸脱領域に進入する際における、自車両の逸脱方向へのヨー角(角度偏差)を小さく抑制することに繋がる。
すなわち、自車両が逸脱領域に進入する過程における、上記逸脱側への角度偏差を小さくする第2の制御量による制御が、横変位偏差を小さくする第1の制御量を低減するための予備制御として作用する。
【0070】
「逸脱領域に位置する場合」
次に、自車両Cが、走行車線中央Lsに対し、左右の横変位基準位置LXL、LXRよりも外側に位置した場合(逸脱領域に位置する場合)について説明する。
この場合には、(7)式及び(8)式によって示す、走行車線端部制御による目標転舵角φL_Rt、φL_Ltによって、自車両Cが近い側の横変位基準位置との偏差が小さくなるように制御が介入する。すなわち、走行車線中央Lsに対し左右の横変位基準位置LXL、LXR内に向けて、つまり走行車線中央Ls側に戻す制御が介入する。これによって、走行車線L外側へ自車両Cの位置を制御しようとする動きを無くしつつ、適切に走行車線L内に留めることができる。
【0071】
このとき、ゲインKflとKrlとは共に同符号である。このため、自車両Cが近い側の横変位基準位置との偏差を小さくする制御は、図18に示すように、前輪の転舵方向に対して同相方向に後輪も転舵することで実施する。このため、前輪のみでの転舵制御に比べて、横変位基準位置との偏差を小さくするために発生する車線内側へのヨー角が減少する。この結果、制御の安定性及び収束性が向上する。
【0072】
更に、横変位基準位置との偏差を小さくするための後輪の転舵量が増加するほど、前輪の転舵量も増加する。これによって、車両に発生するヨーレートを前輪のみの状態と同等としながら、運転者に与える回頭感を前輪転舵のみに比べて小さくすることが出来る。
このとき、走行車線中央部制御による目標転舵角φY_Rt、φY_Ltによって角度偏差が小さくする制御も介入している。
【0073】
このため、図19の下側部分のように、逸脱側(自車両Cに近い走行車線Lの端部側)へ角度偏差(ヨー角θ)がついている場合には、その角度偏差を解消する制御量と共に、横方向変位を解消する方向の制御量が同方向に発生する。この結果、逸脱回避側への制御量が大きくなって、より有効に逸脱を防止することができる。またこのとき、上述のようにヨー角フィードバックの制御ゲインKy_R、Ky_Rは大きい値となっている。つまり、角度偏差を解消する制御量は大きくなっているので、その効果が大きい。
【0074】
また、このとき、後輪の転舵量は、及び前輪に対する転舵の位相は、角度偏差を解消する制御量と横方向変位を解消する方向の制御量との量によって決定することになる。例えば、角度偏差を解消する制御量と横方向変位を解消する方向の制御量とのより支配的な制御側に、前輪の転舵方向に対して後輪が転舵することとなる。
【0075】
また、図19の上側部分のように、逸脱回避側(自車両Cに近い走行車線Lの端部側から離れる方向)へ角度偏差(ヨー角θ)がついている場合には、角度偏差を解消する逸脱側へ制御量によって、横方向変位を解消する方向の制御量が低減若しくは解消する。この結果、逸脱側へ制御が介入しているかのような違和感を低減出来る。またこのとき、上述のようにヨー角フィードバックの制御ゲインKy_R、Ky_Rは小さい値となっている。つまり、角度偏差を解消する制御量は小さくなっているので、その違和感低減の効果が大きい。
【0076】
また、(7)式及び(8)式によって示すように、走行車線端部制御による目標転舵角φL_Rt、φL_Ltは、第2項で横速度が小さくする制御量、及び、第3項で道路曲率ρを加味した制御量によって、横変位基準位置に沿った方向への収束性が良くなり、走行車線端部Leからのはじき返され感を低減することが出来る。
更に、制御フィードバック補正ゲインKρL_R、KρL_L、KρY_R、KρY_Lで制御量を補正することで、カーブ路においては、カーブ内側とカーブ外側とで、目標転舵角φft、φrtが変わる。
【0077】
すなわち、図20の下側部分のように、走行車線中央Lsに対しカーブ内側に自車両Cが位置する場合には、走行車線Lの曲率が大きくなるほど、つまりカーブがきつくなるほど、制御フィードバック補正ゲインKρL_R、KρL_L、KρY_R、KρY_Lを小さくしている。すなわち、目標転舵角を小さく補正している。これによって制御過多となることを防止して、運転者への違和感を低減する。
一方、図20の上側部分のように、走行車線中央Lsに対しカーブ外側に自車両Cが位置する場合には、走行車線Lの曲率が大きくなるほど、つまりカーブがきつくなるほど、制御フィードバック補正ゲインKρL_R、KρL_L、KρY_R、KρY_Lを大きくしている。すなわち、目標転舵角を大きく補正している。これによって、走行車線逸脱効果を大きくしている。
【0078】
「横方向変位閾値外への逸脱の際の複合的な作用」
横方向変位閾値外への逸脱の際の、自車両の軌跡を図21に示す。
上述のように、ヨー角制御によって、自車両が逸脱領域に進入する際における、自車両の逸脱方向へのヨー角(進入角度)を小さくすることが出来る。
このため、自車両が逸脱領域に進入した後における、横方向変位閾値の外側への逸脱量が小さくなる。この結果、横変位偏差を小さくするための制御量(横位置制御)が小さくなる。この制御量が小さいことから、その分、走行車線端部からのはじき返され感が小さくなる。また、逸脱回避能力の向上に繋がる。
【0079】
また、自車両の角度偏差が逸脱回避方向に向いて、横方向変位閾値に接近するシーンでは、ヨー角と横位置制御の相乗効果で、上述のようにはじき返され感が小さくなる。
このとき、ヨー角制御に対しては後輪逆相転舵となり、横位置制御に対して後輪同相転舵を組み合わせる事で、車線端側では車線内側へのヨー角がほとんど発生しないまま車線内方向へと車両が導かれ、車線中央側ではヨー角の発生に対して制御の追従性が高いため、車線中央に対する車両の収まりが良い。つまり、制御の収束性が良い。
【0080】
(本実施形態の効果)
(1)第2制御量算出手段によって第2の制御量を算出する。すなわち、自車両Cが左右の横方向変位閾値内、つまり横方向変位閾値よりも走行車線中央部側では、角度偏差を小さくする制御である、ヨー角フィードバック制御を行う。これによって、走行車線中央Ls側では、走行車線Lに沿った方向に車両の進行方向を制御する。この結果、走行車線中央Ls側では、拘束感のない自由なライン取りができる。
【0081】
(2)第1制御量算出手段によって第1の制御量を算出する。すなわち、自車両Cが左右の横方向変位閾値外、つまり横方向変位閾値よりも走行車線端部側では、横変位偏差を小さくする制御である、横位置フィードバック制御(横位置制御)を行う。
これによって、自車両Cが横方向変位閾値外の逸脱領域に進入すると、横方向変位閾値内に戻す効果が発生する。
【0082】
(3)このとき、上記自車両Cが左右の横方向変位閾値内では、第2の制御量によってヨー角フィードバック制御を行う結果、自車両が、走行車線中央側から横方向変位閾値を越えて逸脱領域に進入する際における、その進入角度を小さく抑えることが可能となる。これによって、第2の制御量による上記ヨー角フィードバック制御が、逸脱防止のための予備制御としての効果を奏する。
すなわち、上記進入角が小さい場合には、続く自車両が逸脱領域に進入した後おける、横方向変位閾値の外側への逸脱量が小さくなる。そして、自車両が逸脱領域に進入すると、横変位偏差を小さくするフィードバック制御で使用する第1の制御量が小さくなる。
この結果、走行車線端部側からのはじき返され感が低減出来る。すなわち、乗員が感じる拘束感を低減することが可能となる。
【0083】
(4)転舵方向調整手段は、上記第1の制御量若しくは第2の制御量の少なくとも一方の制御量に応じて、相対的に前輪の転舵方向に対する後輪の転舵方向の位相を制御する。
これによって、角度偏差や横方向偏差に応じて、相対的に前輪に対する後輪の転舵方向の位相を制御することで、前輪のみの転舵制御に比べ制御の収束性を向上することが可能となる。
(5)上記転舵方向調整手段は、上記第1の制御量に応じて、前輪の転舵方向と同相方向に後輪を転舵させる。
横位置制御に対して後輪を同相へと転舵することにより、前輪のみでの転舵制御に比べて横位置制御により発生する車線内側へのヨー角が減少する。この結果、制御の安定性及び収束性が向上する。
【0084】
(6)上記後輪の転舵量の増加に応じて、前輪の転舵量を増加する。
車両に発生させるヨーレートを前輪のみの状態と同等としながら、運転者に与える回頭感を前輪転舵のみに比べ小さくする。
すなわち、横位置制御に対して後輪を同相へと転舵する。すなわち、前輪転舵制御量が増加すると共に、後輪が同相で転舵する。これによって、前輪のみでの横位置制御に比べて車両の回頭感を減らすことができる。この結果、横位置が大きく発生した車線逸脱において、壁感を低減し、自然に車線内へ車両を導くことができるようになる。
【0085】
(7)上記転舵方向調整手段は、上記第2の制御量に応じて、前輪の転舵方向とは逆相方向に後輪を転舵させる。
ヨー角制御に対して後輪を逆相へと転舵する。この結果、前輪のみでの転舵制御に比べて、転舵制御に対する車両運動の追従性・制御収束性が向上する。
(8)上記後輪の転舵量の増加に応じて、前輪の転舵量を減少させる。
これにより、車両に発生させるヨーレートを前輪のみの状態と同等としながら、運転者に与える回頭感を、前輪転舵のみに比べ大きく出来る。
すなわち、ヨー角制御に対して後輪を逆相へと転舵する。すなわち、前輪転舵制御量を減少せつつ、後輪を逆相転舵とする。これにより、前輪のみでのヨー角制御に比べて車両の回頭感を増やすことができる。この結果、ヨー角が大きく発生した車線逸脱に対して、壁感を増大し、車両挙動から逸脱リスクを運転者に伝えることができるようになる。
【0086】
(9)転舵方向調整手段は、車両周囲の走行環境に応じ上記後輪の転舵を補正する。
これによって、車両の道路の幅方向位置や曲路などによって後輪の転舵を補正可能となる。
例えば、車線中央付近ではヨーレートの発生は小となるように制御を行い、車線端付近ではヨーレートの発生が大となるように制御を行うようにする。これによって、運転者に対して車線逸脱リスクに応じた車両運動からのインフォメーションを与えることができる。
【0087】
(10)転舵方向調整手段は、車速に応じて上記後輪の転舵を補正する。
これによって、例えば、車速が低い場合に比べて高い場合に当該後輪の転舵を抑えることなどが可能となる。
例えば、低車速ではゲインを高く設定し、中車速ではゲインを通常通りとする。さらに高車速では、ゲインを低く設定する。これによって、制御によって車両が車線中央側へと戻される量を減らすことなく、制御による車線内側へに対するヨーレートの量(車両挙動からの運転者へのインフォメーション)を調節できる。
【0088】
(11)転舵方向調整手段は、上記後輪の転舵を運転者操舵意図推定値に応じて補正し、操舵意図があると推定すると上記後輪の転舵を抑える。
運転者操舵中はヨーレートが発生しないように制御を行い、運転者操舵中では無い時には通常どおりのヨーゲインで制御を行う。これによって、たとえば運転者の操舵方向と制御方向が一致した場合などに急激なヨーレートが発生することを防ぐことができる。すなわち、運転者の意図どおりのヨーレートを発生させることができる。
【0089】
(12)進行方向制御手段は、横方向変位閾値よりも車線端部側の範囲における少なくとも一部の領域(重複制御領域)において、第1の制御量及び第2の制御量の両方の制御量に基づいて制御する。
これによって、自車両Cが、走行車線中央Lsに対し左右の横方向変位閾値の外であれば、横変位Xとヨー角θの両方のフィードバック制御を行う。この結果、走行車線端部Le側では、自車両Cを適切に走行車線L内に留め、かつ走行車線端部Leからのはじき返され感を低減した車線維持支援を行うことができる。
【0090】
すなわち、逸脱領域における横方向変位閾値側の重複制御領域において、横位置制御の制御量とヨー角制御の制御量の両方を使用する。両方の制御量を使用する相乗効果として、次の効果を奏する。
すなわち、逸脱領域に進入する際に、逸脱側への角度偏差となって車両が進行する場合には、横位置制御の制御量とヨー角制御の制御量の向きが同じ方向(逸脱回避方向)への制御量となる。この結果、車両の転舵半径を大きくすることができる。
【0091】
一方、逸脱領域で横方向変位閾値に向かう際に、逸脱回避側への角度偏差となって車両が進行する場合には、横位置制御の制御量とヨー角制御の制御量の向きが反対方向への制御量となっている。この結果、車両の軌跡が横方向変位閾値に漸近するようになる、つまり、車両の転舵半径を大きくすることができる。
このように、横位置制御にヨー角制御を加えることにより、逸脱回避のための車両の転舵半径を大きくすることが出来る。このことは、ヨー方向の加減速度を小さくできて、より確実に、はじき返され感を小さくできる。
【0092】
(13)進行方向制御手段は、上記第1の制御量に第1重み付け係数を掛けた値と、第2の制御量に第2重み付け係数を掛けた値との和から最終的な制御量を算出する。上記第1重み付け係数及び第2重み付け係数は、上記横変位偏差によって変更し、横変位偏差が大きいほど、第2重み付け係数に対し第1重み付け係数を大きく設定する。
すなわち、走行車線端部制御による目標転舵角φL_Rt、φL_Ltと、走行車線中央部制御による目標転舵角φY_Rt、φY_Ltとから、最終目標転舵角φft、φrtを算出している。このとき、上記第1重み付け係数及び第2重み付け係数は、横変位偏差によって変更し、横変位偏差が大きいほど、第1重み付け係数に対し第2重み付け係数を大きく設定する。すなわち、走行車線端部Le側に寄るにつれて走行車線端部制御の重みを大きくする。一方、走行車線中央Ls側に寄るにつれて走行車線中央部制御の重みを大きくする。このように、自車両Cの走行車線Lに対する横位置に応じてこれらの重みを設定する。
【0093】
この結果、走行車線中央Ls側では、ヨー角フィードバックが支配的となって拘束感のない自由なライン取りを実現する。一方、走行車線端部Le側では、横変位Xによるフィードバック制御が支配的となって、適切に走行車線L内に留め、かつ走行車線端部Leからのはじき返され感を低減することができる。
特に、本実施形態では、走行車線端部制御による目標転舵角φL_Rt、φL_Ltにおいて収束項(第2項)としてのヨー角フィードバック分があるが、上記重み付けによって、ヨー角フィードバックが制御過多となることを低減することが可能となる。
【0094】
(14)第1の制御量を横変位速度によって補正する。すなわち、走行車線端部制御による目標転舵角φL_Rt、φL_Lt、つまり横変位Xによるフィードバック制御の制御量の第2項として横変位速度の制御量を付加している。
この結果、横変位基準位置に対する横変位Xに対する収束性が良くなる。これによって、走行車線端部Leからのはじき返され感をさらに低減することが出来る。
また、逸脱側から逸脱回避方向への方向転回の際の車両の転舵半径を大きくする効果もある。
【0095】
(15)左右の走行車線端部Leのうち、自車両Cの進行方向側に位置する走行車線端部Leに対する自車両Cの距離によって、走行車線中央部制御による第2の制御量(第3の制御量、第4の制御量)の制御ゲインを補正する。そして、走行車線中央部制御による目標転舵角φY_Rt、φY_Rtを求めている。
すなわち、走行車線Lに対する車両の横位置に応じて、ヨー角フィードバック制御の制御ゲインを変更している。このとき、上記走行車線端部Leに対する自車両Cの距離が短いほど上記制御ゲインが大きくなるように補正する。
例えば、右側へヨー角θがついている場合には、左側の走行車線端部Leから右側の走行車線端部Leに近づくにつれて大きくする。また、左側へヨー角θがついている場合には、右側の走行車線端部Leから左側の走行車線端部Leに近づくにつれて大きく設定する。
【0096】
その結果、仮に横変位Xによるフィードバック制御を行わなくても、車両の進行方向(ヨー角θ)を制御することにより、運転者の意図する走行ラインとのずれからくる違和感(拘束感)のない車線維持支援を行うことができる。
また、逸脱側へヨー角θがついている場合には制御ゲイン(制御量)を大きくし、逸脱防止効果を確保する。一方、逸脱回避側へヨー角θがついている場合には制御ゲイン(制御量)を小さくし、制御過多という違和感も低減することができる。
このとき、逸脱回避側へヨー角θがついている場合の制御ゲイン(制御量)を小さくすることにより、逸脱側へヨー角θがついている場合の制御ゲイン(制御量)を大きく設定しても振動(ハンチング)が起こりにくく、より逸脱防止効果の大きいものとすることができる。
【0097】
(16)走行車線端部制御による目標転舵角φL_Rt、φL_Lt、つまり横変位Xによるフィードバック制御の制御量の第3項として走行車線Lの曲率に応じた制御量を付加している。
この結果、走行車線Lがカーブ路であっても、横変位基準位置に対する横変位Xに対する収束性が良くなる。
【0098】
(17)カーブ路補正手段を備える。
走行車線Lの曲率ρが所定以上、つまりカーブ路である場合には、走行車線Lの幅方向中央に対してカーブ内側とカーブ外側とで異なる制御ゲインで補正している。すなわち、走行車線Lの幅方向中央に対し走行車線Lのカーブ内側に自車両Cが位置する場合には、上記曲率が小さい場合よりも曲率が大きい場合に制御ゲインを小さく補正する。一方、走行車線Lの幅方向中央に対し走行車線Lのカーブ外側に自車両Cが位置する場合には、上記曲率が小さい場合よりも曲率が大きい場合に制御ゲインを大きく補正する。
この結果、カーブ内側での制御過多を防止出来る。すなわち、制御量が大きい場合に発生する、カーブ外側へはじき返すかのような違和感を低減出来る。
また、カーブ外側での制御不足を防止することが出来る。すなわち、カーブ外側へのヨー角θ発生時の制御介入が強くなり、逸脱防止効果が大きくなる。
【0099】
(18)横変位偏差を小さくする第1の制御量を算出する第1制御量算出手段と、自車両が車線中央部側から横方向変位閾値を通過する際における走行車線に対する自車両の進行方向の角度偏差を小さくする第3の制御量を算出する第3制御量算出手段とを備える。
この第3制御量算出手段によって、自車両が横方向変位閾値外の逸脱領域に進入する際の進入角度を小さくすることが出来る。
この第3の制御量に基づくヨー角フィードバック制御を行う結果、自車両が、走行車線中央側から横方向変位閾値を越えて逸脱領域に進入する際における、その進入角度を小さく抑えることが可能となる。これによって、第2の制御量による上記ヨー角フィードバック制御が、逸脱防止のための予備制御としての効果を奏する。
【0100】
すなわち、上記進入角が小さい場合には、続く自車両が逸脱領域に進入した後おける、横方向変位閾値の外側への逸脱量が小さくなる。そして、自車両が逸脱領域に進入すると、横変位偏差を小さくするフィードバック制御で使用する第1の制御量が小さくなる。
この結果、走行車線端部側からのはじき返され感が低減し、逸脱側へ制御が介入しているかのような違和感を低減出来る。すなわち、乗員が感じる拘束感を低減することが可能となる。
【0101】
(19)横方向変位閾値よりも車線中央部側の逸脱側遷移領域に自車両が位置する場合に、第3制御量算出手段は、自車両の進行方向の上記角度偏差を小さくする制御量を算出する。
自車両の進行方向の上記角度偏差を小さくする制御量によってヨーフィードバックを行う事で、走行車線中央側から横方向変位閾値に近づくにように進行するにつれて、自車両の進行方向の角度偏差(逸脱方向)が小さくなる。この結果、中央側から横方向変位閾値を越えて逸脱領域に進入する際における、その進入角度を小さくことが可能となる。
【0102】
(20)このとき、横方向変位閾値よりも車線端部側の範囲における少なくとも一部の領域(重複制御領域)において、第1の制御量及び第2の制御量の両方の制御量に基づいて制御する。
これによって、自車両Cが、走行車線中央Lsに対し左右の横方向変位閾値の外であれば、横変位Xとヨー角θの両方のフィードバック制御を行う。この結果、走行車線端部Le側では、自車両Cを適切に走行車線L内に留め、かつ走行車線端部Leからのはじき返され感を低減した車線維持支援を行うことができる。
すなわち、逸脱領域における横方向変位閾値側の重複制御領域において、横位置制御の制御量とヨー角制御の制御量の両方を使用する。両方の制御量を使用する相乗効果として、次の効果を奏する。
【0103】
すなわち、逸脱領域に進入する際に、逸脱側への角度偏差となって車両が進行する場合には、横位置制御の制御量とヨー角制御の制御量の向きが同じ方向(逸脱回避方向)への制御量となる。この結果、車両の転舵半径を大きくすることができる。
一方、逸脱領域で横方向変位閾値に向かう際に、逸脱回避側への角度偏差となって車両が進行する場合には、横位置制御の制御量とヨー角制御の制御量の向きが反対方向への制御量となっている。この結果、車両の軌跡が横方向変位閾値に漸近するようになる、つまり、車両の転舵半径を大きくすることができる。
このように、横位置制御にヨー角制御を加えることにより、逸脱回避のための車両の転舵半径を大きくすることが出来る。このことは、ヨー方向の加減速度を小さくできて、より確実に、はじき返され感を小さくできる。
【0104】
(21)上記角度偏差に対する制御ゲインを、車線中央部側が車線端部側よりも大きい。
これによって、逸脱領域におけるヨー角制御の制御量が過多になることを防止しつつ、走行車線中央Ls側では、走行車線Lに沿った方向に車両の進行方向を制御する。
(22)上記横方向変位閾値からの自車両の横変位偏差を小さくする第1の制御量を算出する第1制御量算出手段、及び、自車両が車輪中央部側から上記横方向変位閾値に近づく過程の走行軌跡を、走行車線に対する自車両の進行方向の角度が小さくなる向きに補正するための第4の制御量を算出する第4制御量算出手段を備える。
【0105】
第4制御量算出手段によって、自車両が車輪中央部側から上記横方向変位閾値に近づく過程の走行軌跡を、走行車線に対する自車両の進行方向の角度が小さくなる向きに補正する。この結果、自車両が横方向変位閾値よりも外側の逸脱領域に進入する進入角度を小さくすることが出来る。
上記進入角が小さい場合には、続く自車両が逸脱領域に進入した後おける、横方向変位閾値から外側への逸脱量が小さくなる。そして、自車両が逸脱領域に進入すると、横変位偏差を小さくするフィードバック制御で使用する第1の制御量が小さくなる。
この結果、走行車線端部側からのはじき返され感が低減し、逸脱側へ制御が介入しているかのような違和感を低減出来る。すなわち、乗員が感じる拘束感を低減することが可能となる。
【0106】
(23)第1の制御量による自車両の走行軌跡を、自車両が横方向変位閾値に接近する際に、走行車線に対する自車両の進行方向の角度を小さくする向きに補正する第5の制御量を算出する。
これによって、逸脱領域において、逸脱回避方向に向けて自車両が横方向変位閾値に接近する際に、逸脱回避のための自車両の転舵半径を大きくすることが出来る。このことは、ヨー方向の加減速度を小さくすることに繋がり、より確実に、はじき返され感を小さく出来る。
【0107】
(24)第4制御量算出手段は、自車両が逸脱側遷移領域に位置する場合に、上記走行車線に対する自車両の進行方向の角度偏差を小さくする制御量を算出する。
これによって、自車両が車輪中央部側から上記横方向変位閾値に近づく過程の走行軌跡を、走行車線に対する自車両の進行方向の角度が小さくなる向きにする制御量を算出可能となる。
【0108】
(変形例)
(1)上記実施形態では、横方向変位閾値と横変位基準位置とが、一致している場合を例示した。図22に示すように、横変位基準位置LXL、LXRを、横方向変位閾値LAL、LARよりも内側に設定しても良い。
この場合には、自車両Cが、走行車線中央Lsに対し横方向変位閾値よりも外側に位置すると、横方向変位閾値LAL、LARよりも内側に位置する横変位基準位置LXL、LXRに向けて横変位Xが小さくなるようにフィードバック制御が行われる。
横方向フィードバック制御の制御ゲインを調整することが可能となる。
【0109】
(2)また、横変位基準位置LXL、LXRを、横方向変位閾値LAL、LARよりも内側に設定する場合には、自車両Cが、横変位基準位置LXL、LXRと横方向変位閾値LAL、LARとの間に位置する場合においても、横変位Xが小さくなるようにフィードバック制御を行っても良い。ただし、自車両Cが横方向変位閾値LAL、LARよりも外側にいる場合と比較して制御ゲインを小さく抑える。
(3)上記実施形態では、走行車線端部Leを横方向端部位置とした。これに替えて、横方向端部位置を走行車線端部Leよりも所定量だけ内側に設定しても良い。例えば、上記横変位基準位置LXL、LXRと等しくしても良い。
【0110】
(4)上記実施形態では、上記重み付け係数α_R、α_L、β_R、β_Lは、図16に示す関係となっていて、自車両Cの横位置に応じて、α_R、α_Lに対するβ_R、β_Lの相対的な大きさが変化するようにした。
上記重み付け係数α_R、α_L、β_R、β_Lの関係は、これに限定しない。
例えば、
α_R : β_R = 1:1
α_L : β_L = 1:1
と一定に設定しても良い。このように設定しても効果を得ることができたことを確認している。
【0111】
(5)横方向変位閾値から車線中央部側にオフセットした位置と当該横方向変位閾値との間を逸脱側遷移領域として設定する。そして、逸脱遷移領域よりも車線中央部側の領域では、第2の制御量をゼロとする。
例えば、図23に示すように、重み付け係数β_R、β_Lについて、逸脱遷移領域よりも車線中央部側の領域でゼロに設定する。
この結果、逸脱遷移領域よりも車線中央部側の領域では、より拘束感を減らすことが可能となる。
【0112】
(6)横方向変位閾値から車線中央部側にオフセットした位置と当該横方向変位閾値との間を逸脱側遷移領域として設定する。そして、逸脱遷移領域よりも車線中央部側の領域では、第3の制御量をゼロとする。
例えば、図23に示すように、重み付け係数β_R、β_Lについて、逸脱遷移領域よりも車線中央部側の領域でゼロに設定する。
この結果、逸脱遷移領域よりも車線中央部側の領域では、より拘束感を減らすことが可能となる。
【0113】
(7)逸脱遷移領域において、角度偏差に対する制御ゲインを、車線中央部側が車線端部側よりも大きくする。また、横方向変位偏差に対する制御ゲインを、車線中央部側が車線端部側に対して小さくする。
例えば、図23に示すように、重み付け係数β_R、β_Lについて、逸脱遷移領域では、横方向変位閾値XRt、XLtに近づくほど、大きく設定する。
これによって、自車両Cが横方向変位閾値XRt、XLtに近づくほど、逸脱方向への角度偏差を小さくする効果が発生する。この結果、中央側から横方向変位閾値を越えて逸脱領域に進入する際における、その進入角度を小さくすることができる。
【0114】
(8)上記実施形態では、制御量に基づき、車輪の転舵角もしくは転舵トルクを補正することで自車両の進行方向を制御する場合を例示した。転舵角もしくは転舵トルクを補正する代わりに、制御量に基づき、制駆動量もしくは制駆動力を補正するようにしても良い。この場合には、横変位偏差を小さくする、若しくは角度偏差を小さくするためのヨーモーメントの量で上記各制御量を算出する。そして、その制御量に対応するヨーモーメントを発生するように各制駆動力を補正する。
(9)横方向変位閾値は、左右幅方向一方だけでもよい。または、左右の横方向変位閾値の一方だけを走行車線端部位置に設定しても良い。
(10)上記実施形態では、前輪が操向輪である場合を例示した。後輪がステアリングホイールに応じて転舵する操向輪であっても良い。
【0115】
(第2実施形態)
次に、第2実施形態について図面を参照しつつ説明する。なお、上記第1実施形態と同様な装置などについては同一の符号を付して説明する。
(構成)
本実施形態の基本構成は、上記第1実施形態と同様である。ただし、車線維持支援コントローラ15におけるステップS200の処理が異なる。
その他の構成は、上記第1実施形態と同様である。
【0116】
第2実施形態におけるステップS200の処理について説明する。
このステップS200は、最終目標転舵角φft、φrtを算出する処理部である。第1実施形態では、ステップS180において算出した走行車線端部制御による左右目標転舵角φL_Lt、φL_Rtと、ステップS190において算出した走行車線中央部制御による左右目標転舵角に対して、それぞれ重み付けをした状態で和をとって最終目標転舵角φft、φrtを算出している。
これに対し、本実施形態では、ステップS180において算出した走行車線端部制御による左右目標転舵角と、ステップS190において算出した走行車線中央部制御による左右目標転舵角を選択的に用いてφtL、φtRを算出し、その和を取ることで最終目標転舵角φft、φrtを算出する。
【0117】
次に、その処理例について説明する。
まず、左右それぞれに対する制御量を選択的に算出する。
すなわち、右側の制御量であるφL_RtとφY_Rtとを比較して、大きい値の方をφtRとする。すなわち、φL_RtとφY_Rtとのセレクトハイをとって、φtRとする。
また、φL_Rtの方が大きい場合には、Kfl、KrlをKf_1、Kr_1とする。一方、φY_Rtの方が大きい場合には、Kfy、KryをKf_1、Kr_1とする。
【0118】
同様に、左側の制御量であるφL_LtとφY_Ltとを比較して、大きい値の方をφtLとする。すなわち、φL_LtとφY_Ltとのセレクトハイをとって、φtLとする。
また、φL_Ltの方が大きい場合には、Kfl、KrlをKf_2、Kr_2とする。一方、φY_Ltの方が大きい場合には、Kfy、KryをKf_2、Kr_2とする。
そして、下記式によって、最終目標転舵角φft、φrtを算出する。
φft =Kf_1 ×φtR +Kf_2 ×φtL
φrt =Kr_1 ×φtR +Kr_2 ×φtL
【0119】
(作用及び動作)
最終目標転舵角φft、φrtを算出する際に、単純に横位置フィードバック制御量とヨー角フィードバック制御量とを加算すると、大きくヨー角θがついている場合などにおいて、走行車線Lの端部側で制御量が過大となる可能性があるという問題がある。この問題を解決するためには制御ゲインを一律的に落とすという手法も考えることができる。しかし、ヨー角フィードバックの制御ゲインを下げると走行車線中央Lsでの制御性能が低くなり、また横位置フィードバックの制御ゲインを下げると、走行車線端部Leでの制御性能が低くなってしまう。
【0120】
このため、第1実施形態では、横位置フィードバック制御量とヨー角フィードバック制御量に対して重み付けを実施し、重み付けを横位置によって変化させた。
本実施形態では、これに代えてセレクトハイによって対応するものである。
すなわち、右側の制御量(目標転舵角φL_Rt、目標転舵角φY_Rt)のセレクトハイを行う。同様に、左側の制御量(目標転舵角φL_Lt、目標転舵角φY_Lt)のセレクトハイを行う。その後に、左右の制御量の和をとって最終目標転舵角φft、φrtを算出する。
【0121】
これによって、自車両Cが左右の横方向変位閾値LXL、LXR内に位置する場合には、通常、ヨー角θの向きによって、最終目標転舵角φft、φrtは、走行車線中央部制御による目標転舵角φY_Rt若しくは目標転舵角φY_Ltの一方の値となる。この結果、自車両Cが走行車線中央Ls側に位置する場合には、ヨー角フィードバック制御が行われる。
【0122】
以下の説明では、自車両Cが右側の横方向変位閾値LXL、LXRの外に位置する場合を例に説明する。
まず、自車両Cの進行方向の向きが逸脱側(右側)に向いている場合とする。
このとき、右側の制御量では、次のようになる。
すなわち、横位置フィードバック制御量である、走行車線端部側制御による目標転舵角φL_Rtと、ヨー角フィードバック制御量である走行車線中央側制御による目標転舵角φY_Rtとを比較する。そして、ヨー角θと横変位X量に基づき、走行車線端部側制御による目標転舵角φL_Rtの方が大きければ、φtRは目標転舵角φL_Rtとなる。一方、走行車線中央部制御による目標転舵角φY_Rtの方が大きければ、φtRは目標転舵角φY_Rtとなる。
【0123】
一方、左側の制御量では、次のようになる。
ΔθLがゼロとなるため、走行車線中央部制御による目標転舵角φY_Rt=0となる。また、ΔXLもゼロとなるため、(8)式に基づき第1項がゼロとなる。このため、φtLは、走行車線中央側制御による目標転舵角φY_Ltとなるが、小さな値となる。
このため、最終目標転舵角φft、φrtは、右側の制御量の大きい方の値φtRが支配的な制御量となる。
これによって、走行車線端部Le側における制御量が過多となることが防止できる。
【0124】
次に、自車両Cの進行方向の向きが逸脱回避側(左側)に向いている場合とする。
このとき、右側の制御量では、次のようになる。
すなわち、ヨー角フィードバック制御量である走行車線中央Ls側制御による目標転舵角φY_Rtはゼロとなる。このため、横位置フィードバック制御量である、走行車線端部Le側制御による目標転舵角φL_Rtが、φtRとなる。
【0125】
一方、左側の制御量では、次のようになる。
ΔXLもゼロとなるため、(8)式に基づき第1項がゼロとなる。このため、φtLは、走行車線中央Ls側制御による目標転舵角φY_Ltとなるが、小さな値となる。
このため左側へのヨー角θであるΔθLが所定量以上であれば、走行車線中央部制御による目標転舵角φY_RtがφtLとなる。また、左側へのヨー角θであるΔθLが小さければ、φtLは小さな値となる。
このため、最終目標転舵角φft、φrtは、右側の走行車線端部Leからのはじき返され感を低減することが出来る。
【0126】
(本実施形態の効果)
(1)上記第1の制御量と第2の制御量(第3の制御量、第4の制御量)のうち値が大きい方を、最終的な制御量とする。
すなわち、左右別々に、横位置フィードバック制御量とヨー角フィードバック制御量のセレクトハイを行った後に、左右の制御量を加算して最終目標転舵角φft、φrtを算出している。
この結果、最終目標転舵角φft、φrtの制御量を大きくしすぎることなく、走行車線中央Ls側での制御性能を確保しつつ、走行車線端部Le側での制御性能を確保できる。
(2)その他の効果は上記第1実施形態と同様である。
【0127】
(変形例)
(1)左右個別にセレクトハイを行う上記選択加算処理に対し、次のような閾値処理を追加しても良い。
すなわち、右側の制御量のセレクトハイを取る際に、
φL_Rt>φY_Rt であるならば、上述のように、
φtR =φL_Rtとする。
【0128】
このとき、φY_Rt>φth_Yであるならば、つまり走行車線中央部制御による目標転舵角φY_Rtが所定閾値以上の場合には、下記式のように、補正する。
φtR =φtR + K1 ×(φY_Rt −φth_Y)
逆に、φL_Rt≦φY_Rt であるならば、上述のように、
φtR =φY_Rtとする。
【0129】
このとき、φL_Rt>φth_Lであるならば、つまり走行車線端部制御による目標転舵角φL_Rtが所定閾値以上の場合には、下記式のように、補正する。
φtR =φtR +K2 ×(φL_Rt −φth_L)とする。
同様に、左側の制御量のセレクトハイを取る際に、
φL_Lt>φY_Ltであるならば、上述のように、
φtL =φL_Ltとする。
【0130】
このとき、φY_Lt<−φth_Yであるならば、つまり走行車線中央部制御による目標転舵角φY_Ltが所定閾値以上の場合には、下記式のように、補正する。
φtL =φtL +K3 ×(φY_Lt +φth_Y)とする。
逆に、φL_Lt≦φY_Ltであるならば、上述のように、
φtL =β_L ×φY_Ltとする。
【0131】
このとき、φL_Lt<−φth_Lであるならば、つまり走行車線端部制御による目標転舵角φL_Ltが所定閾値以上の場合には、下記式のように、補正する。
φtL =φtL +K4×(φL_Lt +φth_L)とする。
そして、下記式によって最終目標転舵角φft、φrtを算出する。
φft =Kf_1 ×φtR +Kf_2 ×φtL
φrt =Kr_1 ×φtR +Kr_2 ×φtL
このように、左右のセレクトロー側が所定量よりも大きい場合には、その分の補正を行う。
このようにすると、最終目標転舵角φft、φrtの制御量を大きくしすぎることなく、走行車線端部Le側で横変位Xもヨー角θも大きくついた場合などにおいても、制御性能を確保できる。
【0132】
(2)また、数種の演算に夫々重み係数を乗じた上で、夫々最も制御量が大きいものを選択し、左方向の制御量、右方向の制御量とし、それらを加算して車線維持制御量としても良い。このようにすると、走行状態、道路情報などにより夫々の制御量の選ばれ易さを調整することで、より走行シーンに適した制御が行えるようになる。
【0133】
その処理の例を次に示す。
比較選択する際にヨー角θ、横位置、曲率、ナビゲーション情報等の走行自車両Cの情報、道路情報から決まるゲインγ_yaw、γ_latを用い、選択量に重み付けする。
ここで、γ_yawは、カーブ外側へ逸脱するヨー角θが発生していた場合など、ヨー角θがついていることに対し逸脱リスクが大きいシーンにおいて大きくなるゲインとする。γ_latは、カーブ外側をヨー角θで走行している場合など、現在の横位置を走行していることに対し逸脱リスクが大きいシーンにおいて大きくなるゲインである。
【0134】
そして、
γ_lat × φL_Rt>γ_yaw × φY_Rtであるならば、
φtR =φL_Rtとする
一方、γ_lat × φL_Rt≦γ_yaw × φY_Rtであるならば、
φtR =φY_Rtとする。
同様に、γ_lat × φL_Lt>γ_yaw × φY_Ltであるならば、
φtL =φL_Ltとする
一方、γ_lat × φL_Lt≦γ_yaw × φY_Ltであるならば、
φtL =φY_Ltとする。
そして、下記式によって最終目標転舵角φft、φrtを算出する。
φft =Kf_1 ×φtR +Kf_2 ×φtL
φrt =Kr_1 ×φtR +Kr_2 ×φtL
【0135】
(3)また、走行車線Lの曲率からカーブを判断し、カーブ外側から内側に対する制御量は夫々の演算量の加算とし、カーブ内側から外側に対する制御量は最も制御量が大きいものを選択し、それらを加算して車線維持制御量とするようにしても良い。
このようにすると、カーブ外側への逸脱に対する制御量は夫々の制御量を加算し、カーブ内側への逸脱に対する制御量はセレクトハイを行う。この結果、リスクの大きい(大きい制御量が必要な)カーブ外側への逸脱に対する制御量のみ大きくすることができる。その他のシーンでは最終目標転舵角φft、φrtの制御量を大きくしすぎることなく、走行車線中央Lsでの制御性能を確保しつつ、走行車線L端での制御性能を確保できる。
【0136】
その処理の例を次に示す。
道路曲率ρを用い、以下のようにカーブ外側への逸脱に対しては制御量を加算し、カーブ内側への逸脱に対しては選択的に処理する。
ρ < 0(右カーブ)の場合には次のように算出する。
すなわち、右の制御量については、φL_Rt>φY_Rtであるならば、
φtR =φL_Rtとする。
一方、φL_Rt≦φY_Rtであるならば、φtR =φY_Rtとする。
【0137】
また、左の制御量については、下記式のように加算値を取る。
φtL =φL_Lt + φY_Lt
逆に、ρ > 0(左カーブ)の場合には次のように算出する。
すなわち、右に制御量については、下記式のように加算値を取る。
φtR =φL_Rt + φY_Rt
左の制御量については、φL_Lt> φY_Ltであるならば、
φtL =α_L ×φL_Ltとする。
一方、φL_Lt≦φY_Ltであるならば、
φtL =β_L ×φY_Ltとする。
【0138】
さらに、ρ = 0の場合には、下記のように左右個別にセレクトハイを行う。
右側の制御量に対しては、
φL_Rt> φY_Rtであるならば、φtR =φL_Rtとする。
φL_Rt≦ φY_Rtであるならば、φtR =φY_Rtとする。
左側の制御量に対しては、
φL_Lt> φY_Ltであるならば、φtL =φL_Ltとする。
φL_Lt≦ φY_Ltであるならば、φtL =φY_Ltとする。
そして、下記式によって最終目標転舵角φft、φrtを算出する。
φft =Kf_1 ×φtR +Kf_2 ×φtL
φrt =Kr_1 ×φtR +Kr_2 ×φtL
【符号の説明】
【0139】
5 転舵アクチュエータ
11 操舵用コントローラ
12 ステアリングホイール
13 前輪
14 自車両状態パラメータ
15 車線維持支援コントローラ
16 外界認識手段
17 方向指示スイッチ
25 後輪用の転舵アクチュエータ
C 自車両
Kc_L1 補正ゲイン
Kc_L2 補正ゲイン
Kdl 補正ゲイン
Kdy 補正ゲイン
Kel 補正ゲイン
Key 補正ゲイン
Kfl ゲイン
Kfy 前輪転舵ゲイン
Kfy 前輪転舵ゲイン
Kry 後輪転舵ゲイン
Ksl 補正ゲイン
Ksy 補正ゲイン
Kvl 補正ゲイン
Kvy 補正ゲイン
Kvy 補正ゲイン
Ky_L フィードバックゲイン
Ky_R フィードバックゲイン
KρL_L 走行車線端部制御フィードバック補正ゲイン
KρL_R 走行車線端部制御フィードバック補正ゲイン
KρY_L 走行車線中央部制御フィードバック補正ゲイン
KρY_R 走行車線中央部制御フィードバック補正ゲイン
L 走行車線
Le 左側走行車線端部
Ls 走行車線中央
LXL 横変位基準位置
Vw 各車輪速
Wlane 走行車線幅
X 横変位
XLt 横変位基準閾値
XRt 横変位基準閾値
α_R 係数
β_R 係数
γ_yaw ゲイン
δ 操舵角
ΔXL 横変位偏差
ΔXR 横変位偏差
ΔθL ヨー角偏差
ΔθR ヨー角偏差
θ ヨー角
ρ 曲率
φft 前輪の最終目標転舵角
φrt 後輪の最終目標転舵角
【技術分野】
【0001】
本発明は、自車両が走行車線に沿って走行し且つ走行車線から逸脱することを防止するための車線維持支援装置及び車線維持支援方法に関する。
【背景技術】
【0002】
車線維持支援装置としては、例えば特許文献1に記載する発明がある。
この特許文献1に記載の技術では、自車両の進行方向と走行車線との角度偏差が小さくなるように車輪の転舵角を制御する技術である。これによって、自車両が走行車線を逸脱することを防止することを目的としている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【特許文献1】特許第3729494号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
特許文献1に記載のように、単純に、上記走行車線に対する角度偏差がゼロとなるように自車両の進行方向を制御すると、逸脱側へ角度偏差がついている場合と、逸脱回避側へ角度偏差がついている場合とで、同様な制御が介入することになる。このため、逸脱側への角度偏差発生時の逸脱防止効果と、逸脱回避側への角度偏差発生時の制御介入違和感とがトレードオフの関係にある。
【0005】
また、上記従来技術は、角度偏差がゼロとなるように自車両の進行方向を制御するだけである。このため、上記制御により自車両の走行車線からの逸脱を防止しきれなかった場合に、次のような課題がある。すなわち、自車両が走行車線を逸脱しているにも関わらず、自車両が走行車線と平行になった時点で制御が終了してしまい、走行車線内に自車両を戻す、もしくは走行車線内に自車両を留めるという効果が不足するという課題がある。
本発明は、上記のような点に着目したもので、運転者の意図する走行ラインとのずれからくる違和感を低減しつつ、走行車線逸脱を有効に防止することが可能な車線維持支援装置を提供することを課題としている。
【課題を解決するための手段】
【0006】
上記課題を解決するために、本発明は、自車両が走行する走行車線に横方向変位閾値を設ける。そして、自車両が走行車線の中央側から横方向変位閾値を通過する際に、横方向変位閾値より走行車線中央側では、走行車線に対する角度偏差を小さくするように自車両の進行方向を制御して、横方向変位閾値よりも走行車線の幅方向外側では、少なくとも横方向変位閾値からの横変位偏差を小さくするように自車両の進行方向を制御する。
このとき、角度偏差及び横方向偏差の少なくとも一方の偏差に応じて、相対的に前輪の転舵方向に対する後輪の転舵方向の位相を制御する。
【発明の効果】
【0007】
本発明によれば、自車両が走行車線中央側に位置する場合には、角度偏差が小さくなるように制御することで、運転者の意図する走行ラインに応じて、自車両は走行車線に沿って走行する。一方、自車両が走行車線の端部側に位置する場合には、走行車線中央部側に戻す制御が介入することで、適切に走行車線内に留めることができる。
更に、角度偏差や横方向偏差に応じて、相対的に前輪に対する後輪の転舵方向の位相を制御することで、制御の収束性を向上することが可能となる。
以上のように、本発明によれば、運転者の意図する走行ラインとのずれからくる違和感を低減しつつ、有効に走行車線逸脱を防止することが可能となる。
【図面の簡単な説明】
【0008】
【図1】本発明に基づく実施形態に係る車両のシステム構成を説明する図である。
【図2】本発明に基づく第1実施形態に係る車線維持支援コントローラの処理を説明する図である。
【図3】本発明に基づく第1実施形態に係る各値の関係を説明する平面図である。
【図4】本発明に基づく第1実施形態に係る各値の関係を説明する平面図である。
【図5】横変位Xと横変位偏差との関係を示す図である。
【図6】ヨー角θとヨー角偏差との関係を示す図である。
【図7】カーブIN側ゲインマップを示す概念図である。
【図8】カーブOUT側ゲインマップを示す概念図である。
【図9】フィードバックゲインKy_R、Ky_Lの状態を示す概念図である。
【図10】後輪転舵ゲイン算出のための補正ゲインKeyのマップの特性を示す図である。
【図11】後輪転舵ゲイン算出のための補正ゲインKelのマップの特性を示す図である。
【図12】後輪転舵ゲイン算出のための補正ゲインKvyのマップの特性を示す図である。
【図13】後輪転舵ゲイン算出のための補正ゲインKvlのマップの特性を示す図である。
【図14】後輪転舵ゲイン算出のための補正ゲインKdyのマップの特性を示す図である。
【図15】後輪転舵ゲイン算出のための補正ゲインKdlのマップの特性を示す図である。
【図16】横位置と重み付け係数の値を示す図である。
【図17】本発明に基づく第1実施形態に係る横位置偏差優位の動作を説明する図である。
【図18】本発明に基づく第1実施形態に係るヨー角偏差優位の動作を説明する図である。
【図19】本発明に基づく第1実施形態に係る動作を説明する図である。
【図20】本発明に基づく第1実施形態に係るカーブ路における動作を説明する図である。
【図21】本発明に基づく第1実施形態に係る逸脱時の走行軌跡を示す概念図である。
【図22】本発明に基づく第1実施形態の変形例に係る各値の関係を説明する平面図である。
【図23】本発明に基づく第1実施形態に係る逸脱側遷移領域の重み付けを示す図である。
【発明を実施するための形態】
【0009】
次に、本発明の実施形態について図面を参照しつつ説明する。
図1は、本実施形態の車線維持支援装置を適用した自車両のシステム概要構成図である。
この実施形態の自車両は、ステアバイワイヤシステムを採用している。
(構成)
まず構成について図1を参照しながら説明する。
運転者が操作するステアリングホイール12にステアリング入力軸30が連結する。そのステアリング入力軸30には、ステアリングホイール12の操舵角を検出するハンドル角度センサ1を設ける。そのハンドル角度センサ1は、検出した操舵角度信号を操舵用コントローラ11に出力する。
上記ステアリング入力軸30に、操舵トルクセンサ2を介して第1中間軸31が連結する。操舵トルクセンサ2は、ステアリング入力軸30に入力した操舵トルクを検出し、そのトルク信号を操舵用コントローラ11に出力する。
【0010】
上記第1中間軸31に、操舵反力アクチュエータ3が連結する。操舵反力アクチュエータ3は、操舵用コントローラ11からの指令に基づき操舵反力を第1中間軸31に付加する。その操舵反力アクチュエータ3の操舵反力モータに操舵反力モータ角度センサ4を設ける。操舵反力モータ角度センサ4は、操舵反力モータの回転角度位置を検出し、その検出信号を操舵用コントローラ11に出力する。
【0011】
上記第1中間軸31に、メカニカルバックアップ装置10を介して第2中間軸32が連結する。メカニカルバックアップ装置10は、通常状態では、第1中間軸31と第2中間軸32との間のトルク伝達を切った状態とする。また、メカニカルバックアップ装置10は、操舵用コントローラ11からの指令に基づき、第1中間軸31と第2中間軸32とを接続してトルク伝達を可能な状態とする。
【0012】
上記第2中間軸32は、転舵トルクセンサ7を介してステアリング出力軸33に連結している。また、上記第2中間軸32に、転舵アクチュエータ5が連結する。転舵アクチュエータ5は、操舵用コントローラ11からの指令に基づき第2中間軸32を回動変位する。その転舵アクチュエータ5の転舵用モータに転舵アクチュエータ角度センサ6を設ける。転舵アクチュエータ角度センサ6は、転舵アクチュエータ5のモータの回転角度位置を検出し、その検出信号を操舵用コントローラ11に出力する。
【0013】
上記ステアリング出力軸33は、ラックアンドピニオン機構を介してラック軸34に連結する。すなわち、ステアリング出力軸33に連結するピニオンがラック軸34のラックに噛み合う。ラック軸34は、車幅方向に軸を向けて配置してある。そして、ステアリング出力軸33を回動変位させることで、ラック軸34は車幅方向に向けて軸方向変位する。符号8は、ピニオン角度センサ8を示し、ピニオンの回転角度を検出して操舵用コントローラ11に出力する。
【0014】
上記ラック軸34の左右端部は、それぞれ左右のタイロッド35を介してナックルに連結する。符号36はナックルから突出するナックルアームを示す。ナックルは、操向輪である前輪13を回転自在に支持する。上記タイロッド35にタイロッド軸力センサ9を設ける。タイロッド軸力センサ9は、タイロッド35の軸力を検出し、その検出信号を操舵用コントローラ11に出力する。
【0015】
また、符号25は、後輪用転舵アクチュエータである。後輪用転舵アクチュエータ25は、操舵用コントローラ11からの信号に応じて、ラック軸50を車幅方向に向けて軸方向変位する。上記ラック軸50の左右端部は、それぞれ左右のタイロッド51を介して後輪用のナックルに連結する。符号52は後輪用のナックルから突出するナックルアームを示す。ナックルは、後輪40を回転自在に支持する。
また、自車両状態パラメータ14が操舵用コントローラ11に入力する。自車両状態パラメータ14は、例えば車速検出手段が検出した車速や、路面摩擦係数推定手段が検出した走行路面の摩擦係数推定値である。
【0016】
操舵用コントローラ11は、ハンドル角度センサ1が検出した操舵角に相当する転舵角とする転舵指令値を転舵アクチュエータ5に出力すると共に、操舵反力を付与するための指令値を操舵反力アクチュエータ3に出力する。ここで、操舵用コントローラ11は、後述の車線維持支援コントローラ15から補正分の転舵指令を入力すると、その補正転舵指令を上記転舵指令値に付加(加算)することで、転舵指令値を補正する。また、操舵用コントローラ11は、後述の車線維持支援コントローラ15から転舵指令に応じた転舵指令値を転舵アクチュエータ25に出力する。
【0017】
また、前輪13及び後輪40の各車輪にブレーキユニットを備える。各ブレーキユニットは、ブレーキディスク22と、液圧の供給によりブレーキディスク22を摩擦挟持してブレーキ力(制動力)を与えるホイルシリンダ23とを備える。これらブレーキユニットの各ホイルシリンダ23に、圧力制御ユニット24が連結し、圧力制御ユニット24から供給した液圧によって、ブレーキユニットは各車輪に対し個別に制動を付加する。
上記システム構成を備えた自車両に対し、車線維持支援装置を設ける。
【0018】
その構成について次に説明する。
自車両に、画像処理機能付き単眼カメラを搭載する。この画像処理機能付き単眼カメラは、自車両の位置を検出するための外界認識手段16である。画像処理機能付き単眼カメラは、自車両前方の路面を撮像する。その撮像したカメラ画像から路面の状態を判断し、自車が走行する走行車線内の自車両の位置に関する信号を、車線維持支援コントローラ15に出力する。走行車線内の自車両の位置に関する信号は、走行車線に対する自車両の進行方向の角度偏差であるヨー角θ、走行車線中央からの横変位X、及び走行車線の曲率ρに関する情報である。
【0019】
また、方向指示スイッチ17を備える。方向指示スイッチ17の信号は、運転者が走行車線を変更するか否かの判断情報として、車線維持支援コントローラ15に出力する。
また、車線維持支援コントローラ15は、操舵用コントローラ11から、現在のステアの状態やタイヤの操舵状態などの信号が入力する。
車線維持支援コントローラ15は、入力した信号に基づき自車両を走行車線に維持させるための制御量を算出して、少なくとも上記操舵用コントローラ11に出力する。
【0020】
次に、その車線維持支援コントローラ15の処理について、図2を参照しつつ説明する。
この車線維持支援コントローラ15は、所定サンプリング周期毎に繰り返し実行する。
まず作動すると、ステップS100にて、各センサ及び操舵用コントローラ11などからの各種データを読み込む。車輪速センサ18〜21から各車輪速Vwを読み込む。また、操舵角δ、操舵角速度δ′、方向指示スイッチ17の信号を読み込む。外界認識手段16のカメラコントローラからは、自車両の走行車線Lに対する自車両のヨー角θ、走行車線中央Lsからの横変位X、及び走行車線Lの曲率ρをそれぞれ読み込む。ここで、走行車線中央Lsからの横変位Xは、例えば図3及び図4に示すように、自車両Cの重心位置Gを基準とすれば良い。もっとも自車両Cの重心位置Gを基準としなくても良い。例えば、自車両Cの前端部中央を基準にして、走行車線中央Lsからの横変位Xを求めても良い。すなわち、図4のように、ヨー角θに応じて自車両Cの前端部から先に逸脱方向に変位するので、その部分を基準として横変位Xを求めて、より早期に横変位偏差を小さくするようにしても良い。
【0021】
続いてステップS110にて、下記(1)式および(2)式に基づき、左右の横変位基準閾値XLt、XRtの設定を行う。
ここで、図3に示すように、右側の横変位基準閾値XRtは、右逸脱に対して設定する横変位Xの偏差の基準である横変位基準位置LXRの位置を特定するものである。左側の横変位基準閾値XLtは、左逸脱に対して設定する横変位Xの偏差の基準である横変位基準位置LXLの位置を特定するものである。
XRt = ( Wlane/2 ) − ( Wcar/2 )
− Xoffset ・・・(1)
XLt = −((Wlane/2 ) − ( Wcar/2 )
− Xoffset ) ・・・(2)
ここで、走行車線中央Lsからの横変位Xは、走行車線Lに対して自車両Cが中心よりも右側にいる場合を正とし、左側に位置する場合を負とする。このため、右側の横変位基準閾値XRt側を正としている。
【0022】
また、図3に示すように、Wlaneは走行車線幅であり、Wcarは自車両Cの車幅である。
また、Xoffsetは走行車線端部Le(白線や路肩)の位置に対する余裕代である。この余裕代Xoffsetは、走行車線幅Wlaneや車速などに応じて変更しても良い。例えば、走行車線幅Wlaneが狭い程、余裕代Xoffsetを小さくする。また、左右の横変位基準位置LXL、LXR毎に異なる余裕代Xoffsetを使用しても良い。また、この左右の横変位基準位置LXL、LXRは固定値であっても良い。
【0023】
続いて、ステップS120にて、下記(3)式に基づき、右逸脱に対する横変位偏差ΔXRを算出する。
ΔXR = X − XRt ・・・(3)
ただし、ΔXR≦0の場合、ΔXR=0とする(正の値のみをとるようにする)。
上記(3)式によって、横変位Xと、右逸脱に対する横変位偏差ΔXRとは、図5(a)に示す関係となる。
すなわち、上記(3)式を使用することで、「X−XRt≧0」となると、自車両Cが、走行車線中央Lsに対し右の横変位基準位置LXRよりも外に出たと判定する。そして、自車両Cが右側の走行車線端部Le側に寄った場合であるので、自車両Cに近い横変位基準位置として右側の横変位基準位置LXRを横変位偏差の基準として、右逸脱に対する横変位偏差ΔXRを求めることになる。
【0024】
続いて、ステップS130にて、下記(4)式に基づき、左逸脱に対する横変位偏差ΔXLを算出する。
ΔXL = X − XLt ・・・(4)
ただし、ΔXL≧0の場合、ΔXL=0とする(負の値のみをとるようにする)。
上記式によって、横変位Xと、左逸脱に対する横変位偏差ΔXLとは、図5(b)に示す関係となる。
すなわち、上記(4)式を使用することで、「X−XLt≦0」となると、自車両Cが、走行車線中央Lsに対し左の横変位基準位置LXLよりも外に出たと判定する。そして、自車両Cが左側の走行車線端部Le側に寄った場合であるので、自車両Cに近い横変位基準位置として左側の横変位基準位置LXLを横変位偏差の基準として、左逸脱に対する横変位偏差ΔXLを求めることになる。
【0025】
続いて、ステップS140にて、下記(5)式に基づき、右逸脱に対するヨー角偏差ΔθRを算出する。ここで、走行車線Lに対する自車両Cのヨー角θは、右側へヨー角θがついている場合(図4のような状態)を正とし、左側へヨー角θがついている場合を負とする。
ΔθR = θ (θ>0の場合)
ΔθR = 0 (θ≦0の場合)
・・・(5)
上記(5)式によって、ヨー角θと、右逸脱に対してのみ設定するヨー角偏差ΔθRとは、図6(a)に示す関係となる。
【0026】
続いて、ステップS150にて、下記(6)式に基づいて、左逸脱に対するヨー角偏差ΔθLを算出する。
ΔθL = θ (θ<0の場合)
ΔθL = 0 (θ≧0の場合)
・・・(6)
上記(6)式によって、ヨー角θと、左逸脱に対してのみ設定するヨー角偏差ΔθLとは、図6(b)に示す関係となる。
【0027】
続いて、ステップS160にて、走行車線Lのカーブ方向、曲率ρ、及びヨー角θ(逸脱)の方向に応じて、右逸脱に対する走行車線端部制御フィードバック補正ゲインKρL_R、及び左逸脱に対する走行車線端部制御フィードバック補正ゲインKρL_Lを、それぞれ求める。
すなわち、曲率ρの向き(走行車線Lのカーブ方向)に応じて3種類に分けて、下記のように、個別のマップを使用して、右逸脱に対する走行車線端部制御フィードバック補正ゲインKρL_R、及び左逸脱に対する走行車線端部制御フィードバック補正ゲインKρL_Lを設定する。
【0028】
曲率ρ<0(右カーブ)と判定した場合:
KρL_R:図7に示すような、カーブIN側補正ゲインマップから読み込む。
KρL_L:図8に示すような、カーブOUT側補正ゲインマップから読み込む。
曲率ρ>0(左カーブ)と判定した場合
KρL_R:図8に示すような、カーブOUT側補正ゲインマップから読み込む。
KρL_L:図7に示すような、カーブIN側補正ゲインマップから読み込む。
曲率ρ=0(直線路)と判定した場合
KρL_R = 1.0 (補正なし)
KρL_L = 1.0 (補正なし)
ここで、走行車線Lの曲率ρは、旋回半径の逆数であり、直線路でρ=0となり、カーブがきつくなる(旋回半径が小さくなる)につれて、曲率ρの絶対値が大きな値となる。また、左カーブを正とし、右カーブを負とする。
【0029】
上記カーブIN側補正ゲインマップは、図7のように、曲率ρの絶対値が所定以上となると、曲率ρの絶対値が大きくなるにつれて、補正のゲインが小さくなるマップである。そして、左右の走行車線端部Leのうち、カーブ路の内側に位置する走行車線端部Leに対する制御のゲインを、曲率ρの絶対値の増大に応じて低減するように補正するものである。
【0030】
また、上記カーブOUT側補正ゲインマップは、図8のように、曲率ρの絶対値が所定以上となると、曲率ρの絶対値が大きくなるにつれて、補正のゲインが大きくなるマップである。そして、左右の走行車線端部Leのうち、カーブ路の外側に位置する走行車線端部Leに対する制御のゲインを、曲率ρの絶対値の増大に応じて増加するように補正するものである。
【0031】
続いてステップS170では、走行車線Lのカーブ方向、曲率ρ、及び横変位X(逸脱)の方向に応じて、右逸脱に対する走行車線中央部制御フィードバック補正ゲインKρY_R、左逸脱に対する走行車線中央部制御フィードバック補正ゲインKρY_Lをそれぞれ求める。
すなわち、曲率ρの向き(走行車線Lのカーブ方向)に応じて3種類に分けて、下記のように、マップを使用して、右逸脱に対する走行車線中央部制御フィードバック補正ゲインKρY_R、及び左逸脱に対する走行車線中央部制御フィードバック補正ゲインKρY_Lをそれぞれ設定する。
【0032】
曲率ρ<0(右カーブ)と判定した場合
KρY_R : 図7に示すような、カーブIN側補正ゲインマップから読み込む。
KρY_L : 図8に示すような、カーブOUT側補正ゲインマップから読み込む。
曲率ρ>0(左カーブ)と判定した場合
KρY_R : 図8に示すような、カーブOUT側補正ゲインマップから読み込む。
KρY_L : 図7に示すような、カーブIN側補正ゲインマップから読み込む。
曲率ρ=0(直線路)と判定した場合
KρY_R = 1.0 (補正なし)
KρY_L = 1.0 (補正なし)
【0033】
ここで、カーブIN側補正ゲインマップ及びカーブOUT側補正ゲインマップを、走行車線端部制御フィードバック補正ゲインを求める場合と、走行車線中央部制御フィードバック補正ゲインを求める場合とで同じ傾向のマップを使用している。ただし、マップ上の勾配を走行車線端部制御フィードバック補正ゲインKρL_R、KρL_Lを求める場合と、走行車線中央部制御フィードバック補正ゲインKρY_R、KρY_Lを求める場合とで異なるマップを使用するようにしている。すなわち、走行車線端部制御フィードバック補正ゲインKρL_R、KρL_Lを求める際に使用するカーブIN側補正ゲインマップ及びカーブOUT側補正ゲインマップの方が、曲率ρの絶対値の変化に対する勾配を大きく設定する。これは、走行車線端部Le側の方がカーブの内側及び外側での曲率ρに対する補正量を大きくして、その分だけ敏感にするためである。
【0034】
続いてステップS180では、下記(7)式、(8)式に基づいて、右逸脱に対する走行車線端部制御による目標転舵角φL_Rt、及び左逸脱に対する走行車線端部制御による目標転舵角φL_Ltを算出する。
φL_Rt=−(((Kc_L1×Kv_L1×ΔXR)
+(Kc_L2×Kv_L2×θ)
+(Kc_L3×Kv_L3×ρ))
×KρL_R) ・・・(7)
φL_Lt=−(((Kc_L1×Kv_L1×ΔXL)
+(Kc_L2×Kv_L2×θ)
+(Kc_L3×Kv_L3×ρ))
×KρL_R) ・・・(8)
【0035】
ここで、Kc_L1、Kc_L2、Kc_L3は、車両諸元により定まるフィードバックゲインである。
Kv_L1、Kv_L2、Kv_L3は、車速に応じた補正ゲインである。例えば、 Kv_L1、Kv_L2、Kv_L3は、車速に応じて大きくなる。
ここで、上記(7)式及び(8)式の2項目及び3項目は、横変位偏差に対する補正項(収束項)である。このため、補正ゲインKc_L1よりも、補正ゲインKc_L2、Kc_L3を小さく設定してある。同様に、補正ゲインKv_L1よりも、補正ゲインKc_L2、Kc_L3を小さく設定してある。
【0036】
すなわち、右逸脱若しくは左逸脱に対する走行車線端部制御による目標転舵角φL_Lt、φL_Rtは、各横変位基準位置LXL、LXRからの横変位偏差が小さくなる制御量を求めるものである。そして、その際に、自車両Cのヨー角θ及び道路曲率ρでその制御量を補正している。このとき、上記式の第2項の自車両Cのヨー角θ分は、横速度に対するフィードバック制御量として作用する。このため、第2項の自車両Cのヨー角θ分として、ヨー角偏差ΔθR若しくはΔθLを使用することなく、ヨー角θを使用している。
【0037】
以上から、後述のステップS200のように、最終の最終目標転舵角φft、φrtを算出する際に、右逸脱に対する走行車線端部制御による目標転舵角φL_Rtと左逸脱に対する走行車線端部制御による目標転舵角φL_Ltの和として算出する。すなわち、上記目標転舵角φL_Rtと目標転舵角φL_Ltの和を、走行車線端部制御分の目標転舵角としている。
【0038】
このとき、走行車線中央Ls側である左右の横変位基準位置LXL、LXRの間に自車両Cが位置する場合には、図5のように横変位偏差ΔXR、ΔXLの両方の値が0となる。すなわち、上記目標転舵角φL_Rtと目標転舵角φL_Ltの値は、小さな値となる。この結果、走行車線端部制御分の目標転舵角は小さなものとなり、後述の走行車線中央部制御分の目標転舵角φY_Lt、φY_Rtが支配的となる。
【0039】
また、走行車線中央Ls側である左右の横変位基準位置LXL、LXRの間の外に自車両Cが位置する場合には、図5のように横変位偏差ΔXR、ΔXLの一方の値だけが0となる。すなわち、目標転舵角φL_Rtと目標転舵角φL_Ltのうち、自車両Cから離れた側の走行車線端部制御用の目標転舵角φL_Lt若しくはφL_Rtの一方は小さくなり、自車両Cに近い側の走行車線端部制御用の目標転舵角φL_Lt若しくはφL_Rtの他方が、走行車線端部制御分の目標転舵角としては支配的となる。
【0040】
そして、走行車線Lに対する自車両Cのヨー角θを横変位Xに対する微分項(横速度)として第2項に設けてそのままフィードバックして制御し、さらに道路曲率ρに対する補正項として第3項を設けてフィードバックして制御する。この結果、第1項によって、横変位基準位置を基準として走行車線L外側へ自車両Cの位置を制御しようとする動きを無くしつつ適切に走行車線L内に留め、第2項及び第3項を設けることで、走行車線端部Leからの自車両Cのはじき返され感を低減することができる。すなわち、収束項として第2項(横方向変位の微分値)及び第3項(路面のカーブに対する収束項)を設けることで、横変位基準位置への収束が良くなる。
更に、走行車線端部制御フィードバック補正ゲインKρL_R、KρL_Lを乗算して制御ゲインを補正する。すなわち、走行車線Lのカーブ方向、曲率ρ、及び横位置に応じて補正することにより、カーブ路においても違和感なく、適切に、制御を行うことができる。
なお、上記第3項をゼロとしても良い。
【0041】
続いてステップS190において、下記(9)式及び(10)式に基づき、右逸脱に対する走行車線中央部制御による目標転舵角φY_Rt、左逸脱に対する走行車線中央部制御による目標転舵角φY_Ltを算出する。
φY_Rt=−(Kc_Y ×Ky_R ×Kv_Y ×KρY_R ×ΔθR)
・・・(9)
φY_Lt=−(Kc_Y ×Ky_L ×Kv_Y ×KρY_L ×ΔθL)
・・・(10)
ここで、Kc_Yは車両諸元により定まるフィードバックゲインである。また、Kv_Yは車速に応じた補正ゲインである。例えば、Kv_Yは車速が高いほど大きな値とする。
【0042】
また、Ky_R、Ky_Lは、図9に示すような、走行車線Lに対する横変位Xに応じてそれぞれ個別に設定するフィードバックゲインである。
すなわち、右逸脱に対する走行車線中央部制御による目標転舵角φY_Rtは、自車両Cの進行方向が、右側を向いている場合である。このため、右逸脱に対するフィードバックゲインKy_Rは、左側の走行車線端部Le側を基準として右側の走行車線端部Leに近づくにつれて大きくなるように設定してある。
【0043】
また、左逸脱に対する走行車線中央部制御による目標転舵角φY_Ltは、自車両Cの進行方向が、左側を向いている場合である。このため、左逸脱に対するフィードバックゲインKy_Lは、右側の走行車線端部Le側を基準として左側走行車線端部Leに近づくにつれて大きくなるように設定してある。なお、目標転舵角φY_Rt、及びφY_Ltは、右方向への転舵を正とし、左方向への転舵を負とする。
【0044】
ここで、後述のステップS200のように、走行車線中央部制御分の最終目標転舵角を、右逸脱に対する走行車線中央部制御による目標転舵角φY_Rtと左逸脱に対する走行車線中央部制御による目標転舵角φY_Ltの和として算出する。このとき、右側へヨー角θがついている場合には、図6のようにΔθL=0となるため、左逸脱に対する目標転舵角φY_Ltは0となる。すなわち、右逸脱に対する目標転舵角φY_Rtのみを採用することになる。同様に、左側へヨー角θがついている場合には、図6のようにΔθR=0となるため、右逸脱に対する目標転舵角φY_Rtは0となる。すなわち、左逸脱に対する目標転舵角φY_Ltのみを採用することになる。
【0045】
このとき、前述の通り、制御ゲインKy_R、Ky_Lを、図9に示すように、自車両Cのヨー角θの向き側の走行車線端部Leを基準として、その走行車線端部Leに近づくほど大きくなるように設定している。このことから、逸脱側へヨー角θが発生している場合には積極的に逸脱を防止するよう制御量が大きく介入して制御する。また、逸脱回避側へヨー角θが発生している場合には、制御量が小さくなることで、違和感なく、穏やかに、走行車線Lに沿った方向に、自車両Cの進行方向の向きを合わせることができる。
【0046】
また、上記制御ゲインKy_R、Ky_Lは、一方の走行車線端部Leを基準として、その走行車線端部Leに近づくほど大きくなるように設定している。これによって、自車両Cが走行車線中央Lsを跨るように走行しても、連続して制御量が変化して、走行車線中央Lsを跨る際の違和感を抑えることが可能となっている。
更に、カーブ路における走行車線中央Lsに対して内側若しくは外側に変位している場合には、ステップS170において算出するように、走行車線Lのカーブ方向、及び曲率ρに応じて補正することにより、カーブ路においても違和感なく、適切に、制御を行うことができる。
【0047】
続いてステップS195では、後輪転舵ゲインKry、Krl、及び前輪の転舵ゲインKfy、Kflを算出する。
まず後輪転舵ゲインKry、Krlを、下記式に基づき算出する。
Kry = Ksy ×Key ×Kvy ×Kdy ・・・(11)
Krl = Ksl ×Kel ×Kvl ×Kdl ・・・(12)
ここで、Ksy、Kslは、車両諸元により定まるゲインである。ここで、ゲインKsyは負の値となるように設定する。また、ゲインKslは正の値となるように設定する。
【0048】
また、ゲインKey、Kelは、自車両の車線内横位置や走行車線の曲率といった、車両周囲の走行環境に応じ変化するゲインである。
例えば、Key、Kelは、図10及び図11のように設定する。すなわち、車両中央側では、Keyは小さいと共にKelは大きい。逆に車線端部側では、Keyは大きいと共にKelは小さい。この場合、後輪転舵は、車線中央側では横位置制御が主体的となり、車線端側では、ヨー角制御が主体的となる。
【0049】
また、ゲインKvl、Kvyは、自車速によって変化するゲインである。
例えば、Kvl、Kvyは図12、図13のように決定する。すなわち、ゲインKvyは、低車速ではゲインを高く設定し、中車速ではゲインを通常通りとする。さらに高車速では、ゲインを低く設定する。逆に、ゲインKvlは、逆の傾向となる。これによって、低速側では、ヨー角制御が主体的となり、高速側では横位置制御が主体的となる。
【0050】
また、Kdl、Kdyは、ステアリングに設けたトルクセンサまたは舵角センサから推定される運転者操舵意図推定値である。
例えば、Kdl、Kdyは図14,図15のように決定する。Kdl、Kdyは、操舵トルクが小さい場合には、大きな値とし、所定以上の操舵トルクの場合には小さくする。
ここで、Kryは負の値となるように設定し、Krlは正の値となるように設定する。
また、ゲインKey、Kvy、Kdy、Ksl、Kel、Kvl、Kdlは、全て使用する必要な無く、適宜選択若しくは組合わせて使用すればよい。またこのゲインを全て使用しなくても良い。
【0051】
次に、下記式に基づき、前輪転舵ゲインKfy、Kflを、後輪転舵ゲインKry、Krlに応じて算出する。
Kfy = 1 +Kry ・・・(13)
Kfl = 1 +Krl ・・・(14)
ここで、Kryは負であり、Krlは正である。このため、Kryの絶対値が大きくなるほど、Kfyは小さな値となる。一方、Krlが大きくなるほど、Kflも大きくなる。
なお、上記前輪転舵ゲインKfy、Kflを、下記のように設定しても良い。すなわち、後輪転舵分を考慮しないようにしても良い。
Kfy =1
Kfl =1
続いてステップS200では、車線維持支援のための、前輪の最終目標転舵角φftと、後輪の最終目標転舵角φrtとを算出する。
【0052】
本実施例では、前輪の最終目標転舵角φft及び後輪の最終目標転舵角φrtを、下記式のように、ステップS180において算出した走行車線端部制御による左右の目標転舵角φL_Lt、φL_Rtと、ステップS190において算出した走行車線中央部制御による左右目標転舵角φY_Lt、φY_Rtとの和として算出する。
φft=(Kfl ×α_R ×φL_Rt +Kfy ×β_R ×φY_Rt)
+(Kfl ×α_L ×φL_Lt +Kfy ×β_L ×φY_Lt)
φrt=(Krl ×α_R ×φL_Rt +Kry ×β_R ×φY_Rt)
+(Krl ×α_L ×φL_Lt +Kry ×β_L ×φY_Lt)
【0053】
ここで、α_R、β_Rは、それぞれ、右逸脱に対する走行車線端部制御、及び走行車線中央部制御に対する重み付け係数である。また、α_L、β_Lは、それぞれ、左逸脱に対する走行車線端部制御、及び走行車線中央部制御に対する重み付け係数である。
上記重み付け係数α_R、α_L、β_R、β_Lは、図10に示す関係となっていて、自車両Cの横位置に応じて、α_R、α_Lに対するβ_R、β_Lの相対的な大きさが変化するようになっている。
また、下記式の関係となっている。
α_R + β_R = 1.0
α_L + β_L = 1.0
【0054】
この重み付け係数について説明する。
(7)式及び(8)式にあるように、走行車線端部制御による目標転舵角φL_Rt、φL_Ltの第2項としてヨー角要素(横速度)のフィードバックがある。このフィードバックは、走行車線端部Leからのはじき返され感を低減するための、横変位要素の微分項として設定してある。このために、横変位要素のフィードバックと併せて、横変位基準位置への収束性を向上させることが可能となる。
【0055】
一方、(9)式及び(10)式にあるように、走行車線中央部制御におけるヨー角θ要素のフィードバックは、走行車線Lに対して自車両Cの進行方向を合わせることを目的として設定する。
このため、例えば、走行車線Lの左端部において、左側(逸脱側)へのヨー角θがついている場合、走行車線端部制御における横変位フィードバック要素に加えて、走行車線中央部制御におけるヨー角フィードバックを行うと、制御過多となるおそれがある。また、走行車線L左端部において、右側(逸脱回避側)へヨー角θがついている場合、走行車線中央部制御におけるヨー角フィードバックは弱く設定しており、横変位基準位置への収束性が悪く、走行車線端部Leからのはじき返され感が生じてしまう可能性がある。
【0056】
このため、本実施形態では、例えば、図16に示すように、横変位基準閾値よりも走行車線端部Le側に寄るにつれて走行車線端部制御側の重みを大きくする。一方、走行車線中央Ls側に寄るにつれて走行車線中央部制御側の重みを大きくする。このように、自車両Cの走行車線Lに対する横位置に応じてこれらの重みを設定する。このように設定することで、走行車線中央Lsでは、拘束感のない自由なライン取りが実現しつつ、走行車線端部Leでは、適切に走行車線L内に留め、かつ走行車線端部Leからのはじき返され感を低減することができる。
【0057】
上述のように重み付けを行う事で、横変位基準閾値よりも走行車線端部Le側において、横変位フィードバックとヨー角フィードバックの両方の制御を行う重複制御領域を有することになる。
続いて、ステップS210において、運転者の走行車線変更の意思を判定する。具体的には、上記ステップS100で得た方向スイッチ信号及び自車両Cの進行方向に基づき、運転者の走行車線Lを変更するか否かの意思を判定する。
【0058】
すなわち、方向スイッチ信号が示す方向(ウインカ点灯側)と自車両Cの進行方向とが同方向の場合には、運転者が意識的に走行車線Lを変更しようとしていると判定する。この場合には、ステップS220における転舵角の補正を行うこと無く、復帰する。なお、ステアリングホイール12の操舵が、方向スイッチ信号が示す方向(ウインカ点灯側)と同方向の場合に運転者が意識的に走行車線L変更しようとしていると判定しても良い。
【0059】
続いてステップS220にて、ステップS200において算出した前輪側の最終目標転舵角φftの補正転舵角指令値を操舵用コントローラ11に出力する。また、算出した後輪側の最終目標転舵角φrtの転舵角指令値を操舵用コントローラ11に出力する。
ここで、操舵用コントローラ11では、前述の通り、車線維持支援コントローラ15から最終目標転舵角φftの補正転舵角指令値を入力すると、運転者の操舵操作に応じて算出した目標転舵角に当該前輪側の最終目標転舵角φftを付加して、最終的な目標転舵角とし、その目標転舵角に応じた転舵角となるように、前輪用の転舵アクチュエータ5を駆動する。また、操舵用コントローラ11では、車線維持支援コントローラ15から後輪側の最終目標転舵角φrtの転舵角指令値を入力すると、最終目標転舵角φrtの転舵角指令値に応じた転舵角となるように、後輪用の転舵アクチュエータ25を駆動する。
【0060】
ここで、本実施形態の車線維持支援装置を提供する自車両Cとして、ステアバイワイヤシステムの自車両Cを例示している。電動若しくは油圧を使用したパワステアリングシステムを搭載した自車両Cの場合には、上記最終目標転舵角φft、φrtをアシストトルク量の補正量に変換して、アシストルクに付加することで転舵角分の補正を行うようにしても良い。
また、ステアリング軸を回転変位して転舵角を変更可能な自車両Cにあっては、その回転変位量を上記最終目標転舵角φftの分だけ補正するようにすればよい。
【0061】
ここで、左右の横変位基準位置LXL、LXRは、横方向変位閾値及び横変位基準位置の両方を構成する。ステップS180、S190は、制御量算出手段を構成する。ステップS200及び操舵用コントローラ11は、進行方向制御手段を構成する。(4)式及び(5)式は、左右の横方向変位閾値間に位置する場合における、横変位偏差をゼロ、若しくは制御ゲインを小さくする構成に対応する。(9)式及び(10)式が、第2制御量算出手段、第3制御量算出手段、第4制御量算出手段を構成し、その目標転舵角φY_Rt、φY_Ltが第2の制御量、第3の制御量、及び第4の制御量となる。(7)式及び(8)式が、第1制御量算出手段を構成し、その目標転舵角φL_Rt、φL_Ltが第1の制御量となる。また、(11)式は、最終制御量算出手段を構成する。また、最終目標転舵角φft、φrtが、最終的な制御量を構成する。また、補正ゲインKρL_R、KρL_L、KρY_R、KρY_Lがカーブ路補正手段を構成する。左右の走行車線端部Leが横端部基準位置を構成する。重み付け係数α_R、α_Lが第2重み付け係数及び第3重み付け係数を構成する。重み付け係数β_R、β_Lが第1重み付け係数を構成する。ヨー角偏差ΔθR若しくはΔθLが、角度偏差を構成する。(7)式及び(8)式の第2項が、第5の制御量を構成する。
ステップS195、S200は、転舵方向調整手段を構成する。
【0062】
(動作)
「左右の横変位基準位置LXL、LXRの間」
まず自車両Cが、左右の横変位基準位置LXL、LXRの間を走行している場合について説明する。
この場合には、ΔXR及びΔXLは共にゼロとなる。このため、(7)式及び(8)式で示す、走行車線端部制御による左右の目標転舵角φL_Rt及びφL_Ltの第1項はゼロとなる。つまり、走行車線端部制御による左右の目標転舵角φL_Rt及びφL_Ltは、小さな値となる。
ここで、走行車線端部制御による左右の目標転舵角φL_Rt及びφL_Ltの2項は、自車両Cの横速度分をゼロとする制御量となる。また、走行車線端部制御による左右の目標転舵角φL_Rt及びφL_Ltの2項は、直進路であればゼロの値を取る。
【0063】
更に、自車両Cが、左右の横変位基準位置LXL、LXRの間を走行している場合には、走行車線端部制御による左右の目標転舵角φL_Rt及びφL_Ltに対する重み付け係数α_R、α_Lは図10のように小さな値に設定してある。
これによって、自車両Cが、左右の横変位基準位置LXL、LXRの間を走行している場合には、走行車線中央部制御による目標転舵角φY_Rt及びφY_Ltが支配的となる。特に、図16のように、走行車線端部制御による左右の目標転舵角φL_Rt及びφL_Ltに対する重み付け係数α_R、α_Lよりも、走行車線中央部制御による目標転舵角φY_Rt及びφY_Ltのβ_R、β_Lの方が大きくなるように設定してある。このことからも、自車両Cが、左右の横変位基準位置LXL、LXRの間を走行している場合には、走行車線中央部制御による目標転舵角φY_Rt及びφY_Ltが支配的となる。
【0064】
このため、自車両Cが、左右の横変位基準位置LXL、LXRの間を走行している場合には、角度偏差が小さくなるように制御されて、自車両Cは、運転者の意図する走行ラインに沿って、走行車線Lと平行な方向に走行する。
以上のことから、自車両Cが走行車線中央Ls側に位置する場合には、角度偏差が小さくなるように制御する。また、横方向変位に対するフィードバックが無いか小さい。つまり走行車線中央Ls側に戻す制御介入は無いか小さい。この結果、運転者の意図する走行ラインに応じて、自車両Cは走行車線Lに沿って走行する。
【0065】
更に、本実施形態では、角度偏差が小さくなるように前輪の転舵を制御するのに併せて、後輪の転舵も制御する。このとき、走行車線中央部制御による目標転舵角φY_Rt及びφY_Ltが支配的と成っていることから、ゲインKfl、Krlの影響は小さい。
また、ゲインKryは負の値であるのに対して、ゲインKfyが正の値となる。このため、前輪の転舵方向とは逆相方向に後輪が転舵する。これによって、図17に示すように、前輪のみで転舵制御する場合に比べて転舵制御に対する車両運動の追従性及び制御の収束性が向上する。
【0066】
また、ゲインKryが大きくなるにつれて、ゲインKfyを相対的に小さくする。これによって、車両の発生させるヨーレートを前輪のみの状態と同等としながら、運転者に与える回頭性を、前輪のみの転舵制御に比較して大きくする。
またこのとき、目標転舵角φY_Rt及びφY_Ltを算出する際に、(9)式及び(10)式に示すように、制御ゲインとしてKy_R、Ky_Lを乗算して補正している。この制御ゲインKy_R、Ky_Lは、自車両Cの進行方向側の走行方向端部に対して自車両Cの距離が近づくほど大きくなって、上記目標転舵角φY_Rt及びφY_Ltは大きな値となる。
【0067】
このため、自車両Cの進行方向が逸脱側の場合には、目標転舵角φY_Rt及びφY_Ltは大きくなって逸脱防止効果が大きくなる。また、自車両Cの進行方向が逸脱回避側の場合には、目標転舵角φY_Rt及びφY_Ltは小さくなって、制御過多とならずに違和感を低減する。
例えば、自車両Cの進行方向が、走行車線Lに対し右側にヨー角θがついている場合には、自車両Cが走行車線中央Lsに対し右側に横変位Xして位置(逸脱側)しているほど、目標転舵角φY_Rtは大きくなる。つまり、逸脱回避効果が大きくなる。一方、自車両Cが走行車線中央Lsに対し左側に横変位Xして位置(逸脱回避側)しているほど、目標転舵角φY_Rtは小さくなる。
【0068】
また、上記制御ゲインKy_R、Ky_Lは、自車両Cの進行方向側の走行方向端部からの距離に応じて変化させる。このため、自車両Cの進行方向が走行車線Lに対し右側に傾いて、つまり右側にヨー角θがついている場合に、自車両Cが走行車線中央Lsに対して左側から右側に当該走行車線中央Lsを跨るように走行する場合であっても、運転者に違和感を与えにくくなっている。
【0069】
「横変位基準位置LXL、LXRよりも外側に進入する移行期」
次に、自車両Cが、走行車線中央Ls側から、左右の横変位基準位置LXL、LXRよりも外側に移行する場合について説明する。
ここで、横変位基準位置LXL、LXRよりも走行車線端部側の領域を逸脱領域と呼ぶ。
上述のように、自車両Cが、左右の横変位基準位置LXL、LXRの間を走行している場合には、角度偏差が小さくなるように制御する。このため、自車両が逸脱領域に進入する際における、自車両の逸脱方向へのヨー角(角度偏差)を小さく抑制することに繋がる。
すなわち、自車両が逸脱領域に進入する過程における、上記逸脱側への角度偏差を小さくする第2の制御量による制御が、横変位偏差を小さくする第1の制御量を低減するための予備制御として作用する。
【0070】
「逸脱領域に位置する場合」
次に、自車両Cが、走行車線中央Lsに対し、左右の横変位基準位置LXL、LXRよりも外側に位置した場合(逸脱領域に位置する場合)について説明する。
この場合には、(7)式及び(8)式によって示す、走行車線端部制御による目標転舵角φL_Rt、φL_Ltによって、自車両Cが近い側の横変位基準位置との偏差が小さくなるように制御が介入する。すなわち、走行車線中央Lsに対し左右の横変位基準位置LXL、LXR内に向けて、つまり走行車線中央Ls側に戻す制御が介入する。これによって、走行車線L外側へ自車両Cの位置を制御しようとする動きを無くしつつ、適切に走行車線L内に留めることができる。
【0071】
このとき、ゲインKflとKrlとは共に同符号である。このため、自車両Cが近い側の横変位基準位置との偏差を小さくする制御は、図18に示すように、前輪の転舵方向に対して同相方向に後輪も転舵することで実施する。このため、前輪のみでの転舵制御に比べて、横変位基準位置との偏差を小さくするために発生する車線内側へのヨー角が減少する。この結果、制御の安定性及び収束性が向上する。
【0072】
更に、横変位基準位置との偏差を小さくするための後輪の転舵量が増加するほど、前輪の転舵量も増加する。これによって、車両に発生するヨーレートを前輪のみの状態と同等としながら、運転者に与える回頭感を前輪転舵のみに比べて小さくすることが出来る。
このとき、走行車線中央部制御による目標転舵角φY_Rt、φY_Ltによって角度偏差が小さくする制御も介入している。
【0073】
このため、図19の下側部分のように、逸脱側(自車両Cに近い走行車線Lの端部側)へ角度偏差(ヨー角θ)がついている場合には、その角度偏差を解消する制御量と共に、横方向変位を解消する方向の制御量が同方向に発生する。この結果、逸脱回避側への制御量が大きくなって、より有効に逸脱を防止することができる。またこのとき、上述のようにヨー角フィードバックの制御ゲインKy_R、Ky_Rは大きい値となっている。つまり、角度偏差を解消する制御量は大きくなっているので、その効果が大きい。
【0074】
また、このとき、後輪の転舵量は、及び前輪に対する転舵の位相は、角度偏差を解消する制御量と横方向変位を解消する方向の制御量との量によって決定することになる。例えば、角度偏差を解消する制御量と横方向変位を解消する方向の制御量とのより支配的な制御側に、前輪の転舵方向に対して後輪が転舵することとなる。
【0075】
また、図19の上側部分のように、逸脱回避側(自車両Cに近い走行車線Lの端部側から離れる方向)へ角度偏差(ヨー角θ)がついている場合には、角度偏差を解消する逸脱側へ制御量によって、横方向変位を解消する方向の制御量が低減若しくは解消する。この結果、逸脱側へ制御が介入しているかのような違和感を低減出来る。またこのとき、上述のようにヨー角フィードバックの制御ゲインKy_R、Ky_Rは小さい値となっている。つまり、角度偏差を解消する制御量は小さくなっているので、その違和感低減の効果が大きい。
【0076】
また、(7)式及び(8)式によって示すように、走行車線端部制御による目標転舵角φL_Rt、φL_Ltは、第2項で横速度が小さくする制御量、及び、第3項で道路曲率ρを加味した制御量によって、横変位基準位置に沿った方向への収束性が良くなり、走行車線端部Leからのはじき返され感を低減することが出来る。
更に、制御フィードバック補正ゲインKρL_R、KρL_L、KρY_R、KρY_Lで制御量を補正することで、カーブ路においては、カーブ内側とカーブ外側とで、目標転舵角φft、φrtが変わる。
【0077】
すなわち、図20の下側部分のように、走行車線中央Lsに対しカーブ内側に自車両Cが位置する場合には、走行車線Lの曲率が大きくなるほど、つまりカーブがきつくなるほど、制御フィードバック補正ゲインKρL_R、KρL_L、KρY_R、KρY_Lを小さくしている。すなわち、目標転舵角を小さく補正している。これによって制御過多となることを防止して、運転者への違和感を低減する。
一方、図20の上側部分のように、走行車線中央Lsに対しカーブ外側に自車両Cが位置する場合には、走行車線Lの曲率が大きくなるほど、つまりカーブがきつくなるほど、制御フィードバック補正ゲインKρL_R、KρL_L、KρY_R、KρY_Lを大きくしている。すなわち、目標転舵角を大きく補正している。これによって、走行車線逸脱効果を大きくしている。
【0078】
「横方向変位閾値外への逸脱の際の複合的な作用」
横方向変位閾値外への逸脱の際の、自車両の軌跡を図21に示す。
上述のように、ヨー角制御によって、自車両が逸脱領域に進入する際における、自車両の逸脱方向へのヨー角(進入角度)を小さくすることが出来る。
このため、自車両が逸脱領域に進入した後における、横方向変位閾値の外側への逸脱量が小さくなる。この結果、横変位偏差を小さくするための制御量(横位置制御)が小さくなる。この制御量が小さいことから、その分、走行車線端部からのはじき返され感が小さくなる。また、逸脱回避能力の向上に繋がる。
【0079】
また、自車両の角度偏差が逸脱回避方向に向いて、横方向変位閾値に接近するシーンでは、ヨー角と横位置制御の相乗効果で、上述のようにはじき返され感が小さくなる。
このとき、ヨー角制御に対しては後輪逆相転舵となり、横位置制御に対して後輪同相転舵を組み合わせる事で、車線端側では車線内側へのヨー角がほとんど発生しないまま車線内方向へと車両が導かれ、車線中央側ではヨー角の発生に対して制御の追従性が高いため、車線中央に対する車両の収まりが良い。つまり、制御の収束性が良い。
【0080】
(本実施形態の効果)
(1)第2制御量算出手段によって第2の制御量を算出する。すなわち、自車両Cが左右の横方向変位閾値内、つまり横方向変位閾値よりも走行車線中央部側では、角度偏差を小さくする制御である、ヨー角フィードバック制御を行う。これによって、走行車線中央Ls側では、走行車線Lに沿った方向に車両の進行方向を制御する。この結果、走行車線中央Ls側では、拘束感のない自由なライン取りができる。
【0081】
(2)第1制御量算出手段によって第1の制御量を算出する。すなわち、自車両Cが左右の横方向変位閾値外、つまり横方向変位閾値よりも走行車線端部側では、横変位偏差を小さくする制御である、横位置フィードバック制御(横位置制御)を行う。
これによって、自車両Cが横方向変位閾値外の逸脱領域に進入すると、横方向変位閾値内に戻す効果が発生する。
【0082】
(3)このとき、上記自車両Cが左右の横方向変位閾値内では、第2の制御量によってヨー角フィードバック制御を行う結果、自車両が、走行車線中央側から横方向変位閾値を越えて逸脱領域に進入する際における、その進入角度を小さく抑えることが可能となる。これによって、第2の制御量による上記ヨー角フィードバック制御が、逸脱防止のための予備制御としての効果を奏する。
すなわち、上記進入角が小さい場合には、続く自車両が逸脱領域に進入した後おける、横方向変位閾値の外側への逸脱量が小さくなる。そして、自車両が逸脱領域に進入すると、横変位偏差を小さくするフィードバック制御で使用する第1の制御量が小さくなる。
この結果、走行車線端部側からのはじき返され感が低減出来る。すなわち、乗員が感じる拘束感を低減することが可能となる。
【0083】
(4)転舵方向調整手段は、上記第1の制御量若しくは第2の制御量の少なくとも一方の制御量に応じて、相対的に前輪の転舵方向に対する後輪の転舵方向の位相を制御する。
これによって、角度偏差や横方向偏差に応じて、相対的に前輪に対する後輪の転舵方向の位相を制御することで、前輪のみの転舵制御に比べ制御の収束性を向上することが可能となる。
(5)上記転舵方向調整手段は、上記第1の制御量に応じて、前輪の転舵方向と同相方向に後輪を転舵させる。
横位置制御に対して後輪を同相へと転舵することにより、前輪のみでの転舵制御に比べて横位置制御により発生する車線内側へのヨー角が減少する。この結果、制御の安定性及び収束性が向上する。
【0084】
(6)上記後輪の転舵量の増加に応じて、前輪の転舵量を増加する。
車両に発生させるヨーレートを前輪のみの状態と同等としながら、運転者に与える回頭感を前輪転舵のみに比べ小さくする。
すなわち、横位置制御に対して後輪を同相へと転舵する。すなわち、前輪転舵制御量が増加すると共に、後輪が同相で転舵する。これによって、前輪のみでの横位置制御に比べて車両の回頭感を減らすことができる。この結果、横位置が大きく発生した車線逸脱において、壁感を低減し、自然に車線内へ車両を導くことができるようになる。
【0085】
(7)上記転舵方向調整手段は、上記第2の制御量に応じて、前輪の転舵方向とは逆相方向に後輪を転舵させる。
ヨー角制御に対して後輪を逆相へと転舵する。この結果、前輪のみでの転舵制御に比べて、転舵制御に対する車両運動の追従性・制御収束性が向上する。
(8)上記後輪の転舵量の増加に応じて、前輪の転舵量を減少させる。
これにより、車両に発生させるヨーレートを前輪のみの状態と同等としながら、運転者に与える回頭感を、前輪転舵のみに比べ大きく出来る。
すなわち、ヨー角制御に対して後輪を逆相へと転舵する。すなわち、前輪転舵制御量を減少せつつ、後輪を逆相転舵とする。これにより、前輪のみでのヨー角制御に比べて車両の回頭感を増やすことができる。この結果、ヨー角が大きく発生した車線逸脱に対して、壁感を増大し、車両挙動から逸脱リスクを運転者に伝えることができるようになる。
【0086】
(9)転舵方向調整手段は、車両周囲の走行環境に応じ上記後輪の転舵を補正する。
これによって、車両の道路の幅方向位置や曲路などによって後輪の転舵を補正可能となる。
例えば、車線中央付近ではヨーレートの発生は小となるように制御を行い、車線端付近ではヨーレートの発生が大となるように制御を行うようにする。これによって、運転者に対して車線逸脱リスクに応じた車両運動からのインフォメーションを与えることができる。
【0087】
(10)転舵方向調整手段は、車速に応じて上記後輪の転舵を補正する。
これによって、例えば、車速が低い場合に比べて高い場合に当該後輪の転舵を抑えることなどが可能となる。
例えば、低車速ではゲインを高く設定し、中車速ではゲインを通常通りとする。さらに高車速では、ゲインを低く設定する。これによって、制御によって車両が車線中央側へと戻される量を減らすことなく、制御による車線内側へに対するヨーレートの量(車両挙動からの運転者へのインフォメーション)を調節できる。
【0088】
(11)転舵方向調整手段は、上記後輪の転舵を運転者操舵意図推定値に応じて補正し、操舵意図があると推定すると上記後輪の転舵を抑える。
運転者操舵中はヨーレートが発生しないように制御を行い、運転者操舵中では無い時には通常どおりのヨーゲインで制御を行う。これによって、たとえば運転者の操舵方向と制御方向が一致した場合などに急激なヨーレートが発生することを防ぐことができる。すなわち、運転者の意図どおりのヨーレートを発生させることができる。
【0089】
(12)進行方向制御手段は、横方向変位閾値よりも車線端部側の範囲における少なくとも一部の領域(重複制御領域)において、第1の制御量及び第2の制御量の両方の制御量に基づいて制御する。
これによって、自車両Cが、走行車線中央Lsに対し左右の横方向変位閾値の外であれば、横変位Xとヨー角θの両方のフィードバック制御を行う。この結果、走行車線端部Le側では、自車両Cを適切に走行車線L内に留め、かつ走行車線端部Leからのはじき返され感を低減した車線維持支援を行うことができる。
【0090】
すなわち、逸脱領域における横方向変位閾値側の重複制御領域において、横位置制御の制御量とヨー角制御の制御量の両方を使用する。両方の制御量を使用する相乗効果として、次の効果を奏する。
すなわち、逸脱領域に進入する際に、逸脱側への角度偏差となって車両が進行する場合には、横位置制御の制御量とヨー角制御の制御量の向きが同じ方向(逸脱回避方向)への制御量となる。この結果、車両の転舵半径を大きくすることができる。
【0091】
一方、逸脱領域で横方向変位閾値に向かう際に、逸脱回避側への角度偏差となって車両が進行する場合には、横位置制御の制御量とヨー角制御の制御量の向きが反対方向への制御量となっている。この結果、車両の軌跡が横方向変位閾値に漸近するようになる、つまり、車両の転舵半径を大きくすることができる。
このように、横位置制御にヨー角制御を加えることにより、逸脱回避のための車両の転舵半径を大きくすることが出来る。このことは、ヨー方向の加減速度を小さくできて、より確実に、はじき返され感を小さくできる。
【0092】
(13)進行方向制御手段は、上記第1の制御量に第1重み付け係数を掛けた値と、第2の制御量に第2重み付け係数を掛けた値との和から最終的な制御量を算出する。上記第1重み付け係数及び第2重み付け係数は、上記横変位偏差によって変更し、横変位偏差が大きいほど、第2重み付け係数に対し第1重み付け係数を大きく設定する。
すなわち、走行車線端部制御による目標転舵角φL_Rt、φL_Ltと、走行車線中央部制御による目標転舵角φY_Rt、φY_Ltとから、最終目標転舵角φft、φrtを算出している。このとき、上記第1重み付け係数及び第2重み付け係数は、横変位偏差によって変更し、横変位偏差が大きいほど、第1重み付け係数に対し第2重み付け係数を大きく設定する。すなわち、走行車線端部Le側に寄るにつれて走行車線端部制御の重みを大きくする。一方、走行車線中央Ls側に寄るにつれて走行車線中央部制御の重みを大きくする。このように、自車両Cの走行車線Lに対する横位置に応じてこれらの重みを設定する。
【0093】
この結果、走行車線中央Ls側では、ヨー角フィードバックが支配的となって拘束感のない自由なライン取りを実現する。一方、走行車線端部Le側では、横変位Xによるフィードバック制御が支配的となって、適切に走行車線L内に留め、かつ走行車線端部Leからのはじき返され感を低減することができる。
特に、本実施形態では、走行車線端部制御による目標転舵角φL_Rt、φL_Ltにおいて収束項(第2項)としてのヨー角フィードバック分があるが、上記重み付けによって、ヨー角フィードバックが制御過多となることを低減することが可能となる。
【0094】
(14)第1の制御量を横変位速度によって補正する。すなわち、走行車線端部制御による目標転舵角φL_Rt、φL_Lt、つまり横変位Xによるフィードバック制御の制御量の第2項として横変位速度の制御量を付加している。
この結果、横変位基準位置に対する横変位Xに対する収束性が良くなる。これによって、走行車線端部Leからのはじき返され感をさらに低減することが出来る。
また、逸脱側から逸脱回避方向への方向転回の際の車両の転舵半径を大きくする効果もある。
【0095】
(15)左右の走行車線端部Leのうち、自車両Cの進行方向側に位置する走行車線端部Leに対する自車両Cの距離によって、走行車線中央部制御による第2の制御量(第3の制御量、第4の制御量)の制御ゲインを補正する。そして、走行車線中央部制御による目標転舵角φY_Rt、φY_Rtを求めている。
すなわち、走行車線Lに対する車両の横位置に応じて、ヨー角フィードバック制御の制御ゲインを変更している。このとき、上記走行車線端部Leに対する自車両Cの距離が短いほど上記制御ゲインが大きくなるように補正する。
例えば、右側へヨー角θがついている場合には、左側の走行車線端部Leから右側の走行車線端部Leに近づくにつれて大きくする。また、左側へヨー角θがついている場合には、右側の走行車線端部Leから左側の走行車線端部Leに近づくにつれて大きく設定する。
【0096】
その結果、仮に横変位Xによるフィードバック制御を行わなくても、車両の進行方向(ヨー角θ)を制御することにより、運転者の意図する走行ラインとのずれからくる違和感(拘束感)のない車線維持支援を行うことができる。
また、逸脱側へヨー角θがついている場合には制御ゲイン(制御量)を大きくし、逸脱防止効果を確保する。一方、逸脱回避側へヨー角θがついている場合には制御ゲイン(制御量)を小さくし、制御過多という違和感も低減することができる。
このとき、逸脱回避側へヨー角θがついている場合の制御ゲイン(制御量)を小さくすることにより、逸脱側へヨー角θがついている場合の制御ゲイン(制御量)を大きく設定しても振動(ハンチング)が起こりにくく、より逸脱防止効果の大きいものとすることができる。
【0097】
(16)走行車線端部制御による目標転舵角φL_Rt、φL_Lt、つまり横変位Xによるフィードバック制御の制御量の第3項として走行車線Lの曲率に応じた制御量を付加している。
この結果、走行車線Lがカーブ路であっても、横変位基準位置に対する横変位Xに対する収束性が良くなる。
【0098】
(17)カーブ路補正手段を備える。
走行車線Lの曲率ρが所定以上、つまりカーブ路である場合には、走行車線Lの幅方向中央に対してカーブ内側とカーブ外側とで異なる制御ゲインで補正している。すなわち、走行車線Lの幅方向中央に対し走行車線Lのカーブ内側に自車両Cが位置する場合には、上記曲率が小さい場合よりも曲率が大きい場合に制御ゲインを小さく補正する。一方、走行車線Lの幅方向中央に対し走行車線Lのカーブ外側に自車両Cが位置する場合には、上記曲率が小さい場合よりも曲率が大きい場合に制御ゲインを大きく補正する。
この結果、カーブ内側での制御過多を防止出来る。すなわち、制御量が大きい場合に発生する、カーブ外側へはじき返すかのような違和感を低減出来る。
また、カーブ外側での制御不足を防止することが出来る。すなわち、カーブ外側へのヨー角θ発生時の制御介入が強くなり、逸脱防止効果が大きくなる。
【0099】
(18)横変位偏差を小さくする第1の制御量を算出する第1制御量算出手段と、自車両が車線中央部側から横方向変位閾値を通過する際における走行車線に対する自車両の進行方向の角度偏差を小さくする第3の制御量を算出する第3制御量算出手段とを備える。
この第3制御量算出手段によって、自車両が横方向変位閾値外の逸脱領域に進入する際の進入角度を小さくすることが出来る。
この第3の制御量に基づくヨー角フィードバック制御を行う結果、自車両が、走行車線中央側から横方向変位閾値を越えて逸脱領域に進入する際における、その進入角度を小さく抑えることが可能となる。これによって、第2の制御量による上記ヨー角フィードバック制御が、逸脱防止のための予備制御としての効果を奏する。
【0100】
すなわち、上記進入角が小さい場合には、続く自車両が逸脱領域に進入した後おける、横方向変位閾値の外側への逸脱量が小さくなる。そして、自車両が逸脱領域に進入すると、横変位偏差を小さくするフィードバック制御で使用する第1の制御量が小さくなる。
この結果、走行車線端部側からのはじき返され感が低減し、逸脱側へ制御が介入しているかのような違和感を低減出来る。すなわち、乗員が感じる拘束感を低減することが可能となる。
【0101】
(19)横方向変位閾値よりも車線中央部側の逸脱側遷移領域に自車両が位置する場合に、第3制御量算出手段は、自車両の進行方向の上記角度偏差を小さくする制御量を算出する。
自車両の進行方向の上記角度偏差を小さくする制御量によってヨーフィードバックを行う事で、走行車線中央側から横方向変位閾値に近づくにように進行するにつれて、自車両の進行方向の角度偏差(逸脱方向)が小さくなる。この結果、中央側から横方向変位閾値を越えて逸脱領域に進入する際における、その進入角度を小さくことが可能となる。
【0102】
(20)このとき、横方向変位閾値よりも車線端部側の範囲における少なくとも一部の領域(重複制御領域)において、第1の制御量及び第2の制御量の両方の制御量に基づいて制御する。
これによって、自車両Cが、走行車線中央Lsに対し左右の横方向変位閾値の外であれば、横変位Xとヨー角θの両方のフィードバック制御を行う。この結果、走行車線端部Le側では、自車両Cを適切に走行車線L内に留め、かつ走行車線端部Leからのはじき返され感を低減した車線維持支援を行うことができる。
すなわち、逸脱領域における横方向変位閾値側の重複制御領域において、横位置制御の制御量とヨー角制御の制御量の両方を使用する。両方の制御量を使用する相乗効果として、次の効果を奏する。
【0103】
すなわち、逸脱領域に進入する際に、逸脱側への角度偏差となって車両が進行する場合には、横位置制御の制御量とヨー角制御の制御量の向きが同じ方向(逸脱回避方向)への制御量となる。この結果、車両の転舵半径を大きくすることができる。
一方、逸脱領域で横方向変位閾値に向かう際に、逸脱回避側への角度偏差となって車両が進行する場合には、横位置制御の制御量とヨー角制御の制御量の向きが反対方向への制御量となっている。この結果、車両の軌跡が横方向変位閾値に漸近するようになる、つまり、車両の転舵半径を大きくすることができる。
このように、横位置制御にヨー角制御を加えることにより、逸脱回避のための車両の転舵半径を大きくすることが出来る。このことは、ヨー方向の加減速度を小さくできて、より確実に、はじき返され感を小さくできる。
【0104】
(21)上記角度偏差に対する制御ゲインを、車線中央部側が車線端部側よりも大きい。
これによって、逸脱領域におけるヨー角制御の制御量が過多になることを防止しつつ、走行車線中央Ls側では、走行車線Lに沿った方向に車両の進行方向を制御する。
(22)上記横方向変位閾値からの自車両の横変位偏差を小さくする第1の制御量を算出する第1制御量算出手段、及び、自車両が車輪中央部側から上記横方向変位閾値に近づく過程の走行軌跡を、走行車線に対する自車両の進行方向の角度が小さくなる向きに補正するための第4の制御量を算出する第4制御量算出手段を備える。
【0105】
第4制御量算出手段によって、自車両が車輪中央部側から上記横方向変位閾値に近づく過程の走行軌跡を、走行車線に対する自車両の進行方向の角度が小さくなる向きに補正する。この結果、自車両が横方向変位閾値よりも外側の逸脱領域に進入する進入角度を小さくすることが出来る。
上記進入角が小さい場合には、続く自車両が逸脱領域に進入した後おける、横方向変位閾値から外側への逸脱量が小さくなる。そして、自車両が逸脱領域に進入すると、横変位偏差を小さくするフィードバック制御で使用する第1の制御量が小さくなる。
この結果、走行車線端部側からのはじき返され感が低減し、逸脱側へ制御が介入しているかのような違和感を低減出来る。すなわち、乗員が感じる拘束感を低減することが可能となる。
【0106】
(23)第1の制御量による自車両の走行軌跡を、自車両が横方向変位閾値に接近する際に、走行車線に対する自車両の進行方向の角度を小さくする向きに補正する第5の制御量を算出する。
これによって、逸脱領域において、逸脱回避方向に向けて自車両が横方向変位閾値に接近する際に、逸脱回避のための自車両の転舵半径を大きくすることが出来る。このことは、ヨー方向の加減速度を小さくすることに繋がり、より確実に、はじき返され感を小さく出来る。
【0107】
(24)第4制御量算出手段は、自車両が逸脱側遷移領域に位置する場合に、上記走行車線に対する自車両の進行方向の角度偏差を小さくする制御量を算出する。
これによって、自車両が車輪中央部側から上記横方向変位閾値に近づく過程の走行軌跡を、走行車線に対する自車両の進行方向の角度が小さくなる向きにする制御量を算出可能となる。
【0108】
(変形例)
(1)上記実施形態では、横方向変位閾値と横変位基準位置とが、一致している場合を例示した。図22に示すように、横変位基準位置LXL、LXRを、横方向変位閾値LAL、LARよりも内側に設定しても良い。
この場合には、自車両Cが、走行車線中央Lsに対し横方向変位閾値よりも外側に位置すると、横方向変位閾値LAL、LARよりも内側に位置する横変位基準位置LXL、LXRに向けて横変位Xが小さくなるようにフィードバック制御が行われる。
横方向フィードバック制御の制御ゲインを調整することが可能となる。
【0109】
(2)また、横変位基準位置LXL、LXRを、横方向変位閾値LAL、LARよりも内側に設定する場合には、自車両Cが、横変位基準位置LXL、LXRと横方向変位閾値LAL、LARとの間に位置する場合においても、横変位Xが小さくなるようにフィードバック制御を行っても良い。ただし、自車両Cが横方向変位閾値LAL、LARよりも外側にいる場合と比較して制御ゲインを小さく抑える。
(3)上記実施形態では、走行車線端部Leを横方向端部位置とした。これに替えて、横方向端部位置を走行車線端部Leよりも所定量だけ内側に設定しても良い。例えば、上記横変位基準位置LXL、LXRと等しくしても良い。
【0110】
(4)上記実施形態では、上記重み付け係数α_R、α_L、β_R、β_Lは、図16に示す関係となっていて、自車両Cの横位置に応じて、α_R、α_Lに対するβ_R、β_Lの相対的な大きさが変化するようにした。
上記重み付け係数α_R、α_L、β_R、β_Lの関係は、これに限定しない。
例えば、
α_R : β_R = 1:1
α_L : β_L = 1:1
と一定に設定しても良い。このように設定しても効果を得ることができたことを確認している。
【0111】
(5)横方向変位閾値から車線中央部側にオフセットした位置と当該横方向変位閾値との間を逸脱側遷移領域として設定する。そして、逸脱遷移領域よりも車線中央部側の領域では、第2の制御量をゼロとする。
例えば、図23に示すように、重み付け係数β_R、β_Lについて、逸脱遷移領域よりも車線中央部側の領域でゼロに設定する。
この結果、逸脱遷移領域よりも車線中央部側の領域では、より拘束感を減らすことが可能となる。
【0112】
(6)横方向変位閾値から車線中央部側にオフセットした位置と当該横方向変位閾値との間を逸脱側遷移領域として設定する。そして、逸脱遷移領域よりも車線中央部側の領域では、第3の制御量をゼロとする。
例えば、図23に示すように、重み付け係数β_R、β_Lについて、逸脱遷移領域よりも車線中央部側の領域でゼロに設定する。
この結果、逸脱遷移領域よりも車線中央部側の領域では、より拘束感を減らすことが可能となる。
【0113】
(7)逸脱遷移領域において、角度偏差に対する制御ゲインを、車線中央部側が車線端部側よりも大きくする。また、横方向変位偏差に対する制御ゲインを、車線中央部側が車線端部側に対して小さくする。
例えば、図23に示すように、重み付け係数β_R、β_Lについて、逸脱遷移領域では、横方向変位閾値XRt、XLtに近づくほど、大きく設定する。
これによって、自車両Cが横方向変位閾値XRt、XLtに近づくほど、逸脱方向への角度偏差を小さくする効果が発生する。この結果、中央側から横方向変位閾値を越えて逸脱領域に進入する際における、その進入角度を小さくすることができる。
【0114】
(8)上記実施形態では、制御量に基づき、車輪の転舵角もしくは転舵トルクを補正することで自車両の進行方向を制御する場合を例示した。転舵角もしくは転舵トルクを補正する代わりに、制御量に基づき、制駆動量もしくは制駆動力を補正するようにしても良い。この場合には、横変位偏差を小さくする、若しくは角度偏差を小さくするためのヨーモーメントの量で上記各制御量を算出する。そして、その制御量に対応するヨーモーメントを発生するように各制駆動力を補正する。
(9)横方向変位閾値は、左右幅方向一方だけでもよい。または、左右の横方向変位閾値の一方だけを走行車線端部位置に設定しても良い。
(10)上記実施形態では、前輪が操向輪である場合を例示した。後輪がステアリングホイールに応じて転舵する操向輪であっても良い。
【0115】
(第2実施形態)
次に、第2実施形態について図面を参照しつつ説明する。なお、上記第1実施形態と同様な装置などについては同一の符号を付して説明する。
(構成)
本実施形態の基本構成は、上記第1実施形態と同様である。ただし、車線維持支援コントローラ15におけるステップS200の処理が異なる。
その他の構成は、上記第1実施形態と同様である。
【0116】
第2実施形態におけるステップS200の処理について説明する。
このステップS200は、最終目標転舵角φft、φrtを算出する処理部である。第1実施形態では、ステップS180において算出した走行車線端部制御による左右目標転舵角φL_Lt、φL_Rtと、ステップS190において算出した走行車線中央部制御による左右目標転舵角に対して、それぞれ重み付けをした状態で和をとって最終目標転舵角φft、φrtを算出している。
これに対し、本実施形態では、ステップS180において算出した走行車線端部制御による左右目標転舵角と、ステップS190において算出した走行車線中央部制御による左右目標転舵角を選択的に用いてφtL、φtRを算出し、その和を取ることで最終目標転舵角φft、φrtを算出する。
【0117】
次に、その処理例について説明する。
まず、左右それぞれに対する制御量を選択的に算出する。
すなわち、右側の制御量であるφL_RtとφY_Rtとを比較して、大きい値の方をφtRとする。すなわち、φL_RtとφY_Rtとのセレクトハイをとって、φtRとする。
また、φL_Rtの方が大きい場合には、Kfl、KrlをKf_1、Kr_1とする。一方、φY_Rtの方が大きい場合には、Kfy、KryをKf_1、Kr_1とする。
【0118】
同様に、左側の制御量であるφL_LtとφY_Ltとを比較して、大きい値の方をφtLとする。すなわち、φL_LtとφY_Ltとのセレクトハイをとって、φtLとする。
また、φL_Ltの方が大きい場合には、Kfl、KrlをKf_2、Kr_2とする。一方、φY_Ltの方が大きい場合には、Kfy、KryをKf_2、Kr_2とする。
そして、下記式によって、最終目標転舵角φft、φrtを算出する。
φft =Kf_1 ×φtR +Kf_2 ×φtL
φrt =Kr_1 ×φtR +Kr_2 ×φtL
【0119】
(作用及び動作)
最終目標転舵角φft、φrtを算出する際に、単純に横位置フィードバック制御量とヨー角フィードバック制御量とを加算すると、大きくヨー角θがついている場合などにおいて、走行車線Lの端部側で制御量が過大となる可能性があるという問題がある。この問題を解決するためには制御ゲインを一律的に落とすという手法も考えることができる。しかし、ヨー角フィードバックの制御ゲインを下げると走行車線中央Lsでの制御性能が低くなり、また横位置フィードバックの制御ゲインを下げると、走行車線端部Leでの制御性能が低くなってしまう。
【0120】
このため、第1実施形態では、横位置フィードバック制御量とヨー角フィードバック制御量に対して重み付けを実施し、重み付けを横位置によって変化させた。
本実施形態では、これに代えてセレクトハイによって対応するものである。
すなわち、右側の制御量(目標転舵角φL_Rt、目標転舵角φY_Rt)のセレクトハイを行う。同様に、左側の制御量(目標転舵角φL_Lt、目標転舵角φY_Lt)のセレクトハイを行う。その後に、左右の制御量の和をとって最終目標転舵角φft、φrtを算出する。
【0121】
これによって、自車両Cが左右の横方向変位閾値LXL、LXR内に位置する場合には、通常、ヨー角θの向きによって、最終目標転舵角φft、φrtは、走行車線中央部制御による目標転舵角φY_Rt若しくは目標転舵角φY_Ltの一方の値となる。この結果、自車両Cが走行車線中央Ls側に位置する場合には、ヨー角フィードバック制御が行われる。
【0122】
以下の説明では、自車両Cが右側の横方向変位閾値LXL、LXRの外に位置する場合を例に説明する。
まず、自車両Cの進行方向の向きが逸脱側(右側)に向いている場合とする。
このとき、右側の制御量では、次のようになる。
すなわち、横位置フィードバック制御量である、走行車線端部側制御による目標転舵角φL_Rtと、ヨー角フィードバック制御量である走行車線中央側制御による目標転舵角φY_Rtとを比較する。そして、ヨー角θと横変位X量に基づき、走行車線端部側制御による目標転舵角φL_Rtの方が大きければ、φtRは目標転舵角φL_Rtとなる。一方、走行車線中央部制御による目標転舵角φY_Rtの方が大きければ、φtRは目標転舵角φY_Rtとなる。
【0123】
一方、左側の制御量では、次のようになる。
ΔθLがゼロとなるため、走行車線中央部制御による目標転舵角φY_Rt=0となる。また、ΔXLもゼロとなるため、(8)式に基づき第1項がゼロとなる。このため、φtLは、走行車線中央側制御による目標転舵角φY_Ltとなるが、小さな値となる。
このため、最終目標転舵角φft、φrtは、右側の制御量の大きい方の値φtRが支配的な制御量となる。
これによって、走行車線端部Le側における制御量が過多となることが防止できる。
【0124】
次に、自車両Cの進行方向の向きが逸脱回避側(左側)に向いている場合とする。
このとき、右側の制御量では、次のようになる。
すなわち、ヨー角フィードバック制御量である走行車線中央Ls側制御による目標転舵角φY_Rtはゼロとなる。このため、横位置フィードバック制御量である、走行車線端部Le側制御による目標転舵角φL_Rtが、φtRとなる。
【0125】
一方、左側の制御量では、次のようになる。
ΔXLもゼロとなるため、(8)式に基づき第1項がゼロとなる。このため、φtLは、走行車線中央Ls側制御による目標転舵角φY_Ltとなるが、小さな値となる。
このため左側へのヨー角θであるΔθLが所定量以上であれば、走行車線中央部制御による目標転舵角φY_RtがφtLとなる。また、左側へのヨー角θであるΔθLが小さければ、φtLは小さな値となる。
このため、最終目標転舵角φft、φrtは、右側の走行車線端部Leからのはじき返され感を低減することが出来る。
【0126】
(本実施形態の効果)
(1)上記第1の制御量と第2の制御量(第3の制御量、第4の制御量)のうち値が大きい方を、最終的な制御量とする。
すなわち、左右別々に、横位置フィードバック制御量とヨー角フィードバック制御量のセレクトハイを行った後に、左右の制御量を加算して最終目標転舵角φft、φrtを算出している。
この結果、最終目標転舵角φft、φrtの制御量を大きくしすぎることなく、走行車線中央Ls側での制御性能を確保しつつ、走行車線端部Le側での制御性能を確保できる。
(2)その他の効果は上記第1実施形態と同様である。
【0127】
(変形例)
(1)左右個別にセレクトハイを行う上記選択加算処理に対し、次のような閾値処理を追加しても良い。
すなわち、右側の制御量のセレクトハイを取る際に、
φL_Rt>φY_Rt であるならば、上述のように、
φtR =φL_Rtとする。
【0128】
このとき、φY_Rt>φth_Yであるならば、つまり走行車線中央部制御による目標転舵角φY_Rtが所定閾値以上の場合には、下記式のように、補正する。
φtR =φtR + K1 ×(φY_Rt −φth_Y)
逆に、φL_Rt≦φY_Rt であるならば、上述のように、
φtR =φY_Rtとする。
【0129】
このとき、φL_Rt>φth_Lであるならば、つまり走行車線端部制御による目標転舵角φL_Rtが所定閾値以上の場合には、下記式のように、補正する。
φtR =φtR +K2 ×(φL_Rt −φth_L)とする。
同様に、左側の制御量のセレクトハイを取る際に、
φL_Lt>φY_Ltであるならば、上述のように、
φtL =φL_Ltとする。
【0130】
このとき、φY_Lt<−φth_Yであるならば、つまり走行車線中央部制御による目標転舵角φY_Ltが所定閾値以上の場合には、下記式のように、補正する。
φtL =φtL +K3 ×(φY_Lt +φth_Y)とする。
逆に、φL_Lt≦φY_Ltであるならば、上述のように、
φtL =β_L ×φY_Ltとする。
【0131】
このとき、φL_Lt<−φth_Lであるならば、つまり走行車線端部制御による目標転舵角φL_Ltが所定閾値以上の場合には、下記式のように、補正する。
φtL =φtL +K4×(φL_Lt +φth_L)とする。
そして、下記式によって最終目標転舵角φft、φrtを算出する。
φft =Kf_1 ×φtR +Kf_2 ×φtL
φrt =Kr_1 ×φtR +Kr_2 ×φtL
このように、左右のセレクトロー側が所定量よりも大きい場合には、その分の補正を行う。
このようにすると、最終目標転舵角φft、φrtの制御量を大きくしすぎることなく、走行車線端部Le側で横変位Xもヨー角θも大きくついた場合などにおいても、制御性能を確保できる。
【0132】
(2)また、数種の演算に夫々重み係数を乗じた上で、夫々最も制御量が大きいものを選択し、左方向の制御量、右方向の制御量とし、それらを加算して車線維持制御量としても良い。このようにすると、走行状態、道路情報などにより夫々の制御量の選ばれ易さを調整することで、より走行シーンに適した制御が行えるようになる。
【0133】
その処理の例を次に示す。
比較選択する際にヨー角θ、横位置、曲率、ナビゲーション情報等の走行自車両Cの情報、道路情報から決まるゲインγ_yaw、γ_latを用い、選択量に重み付けする。
ここで、γ_yawは、カーブ外側へ逸脱するヨー角θが発生していた場合など、ヨー角θがついていることに対し逸脱リスクが大きいシーンにおいて大きくなるゲインとする。γ_latは、カーブ外側をヨー角θで走行している場合など、現在の横位置を走行していることに対し逸脱リスクが大きいシーンにおいて大きくなるゲインである。
【0134】
そして、
γ_lat × φL_Rt>γ_yaw × φY_Rtであるならば、
φtR =φL_Rtとする
一方、γ_lat × φL_Rt≦γ_yaw × φY_Rtであるならば、
φtR =φY_Rtとする。
同様に、γ_lat × φL_Lt>γ_yaw × φY_Ltであるならば、
φtL =φL_Ltとする
一方、γ_lat × φL_Lt≦γ_yaw × φY_Ltであるならば、
φtL =φY_Ltとする。
そして、下記式によって最終目標転舵角φft、φrtを算出する。
φft =Kf_1 ×φtR +Kf_2 ×φtL
φrt =Kr_1 ×φtR +Kr_2 ×φtL
【0135】
(3)また、走行車線Lの曲率からカーブを判断し、カーブ外側から内側に対する制御量は夫々の演算量の加算とし、カーブ内側から外側に対する制御量は最も制御量が大きいものを選択し、それらを加算して車線維持制御量とするようにしても良い。
このようにすると、カーブ外側への逸脱に対する制御量は夫々の制御量を加算し、カーブ内側への逸脱に対する制御量はセレクトハイを行う。この結果、リスクの大きい(大きい制御量が必要な)カーブ外側への逸脱に対する制御量のみ大きくすることができる。その他のシーンでは最終目標転舵角φft、φrtの制御量を大きくしすぎることなく、走行車線中央Lsでの制御性能を確保しつつ、走行車線L端での制御性能を確保できる。
【0136】
その処理の例を次に示す。
道路曲率ρを用い、以下のようにカーブ外側への逸脱に対しては制御量を加算し、カーブ内側への逸脱に対しては選択的に処理する。
ρ < 0(右カーブ)の場合には次のように算出する。
すなわち、右の制御量については、φL_Rt>φY_Rtであるならば、
φtR =φL_Rtとする。
一方、φL_Rt≦φY_Rtであるならば、φtR =φY_Rtとする。
【0137】
また、左の制御量については、下記式のように加算値を取る。
φtL =φL_Lt + φY_Lt
逆に、ρ > 0(左カーブ)の場合には次のように算出する。
すなわち、右に制御量については、下記式のように加算値を取る。
φtR =φL_Rt + φY_Rt
左の制御量については、φL_Lt> φY_Ltであるならば、
φtL =α_L ×φL_Ltとする。
一方、φL_Lt≦φY_Ltであるならば、
φtL =β_L ×φY_Ltとする。
【0138】
さらに、ρ = 0の場合には、下記のように左右個別にセレクトハイを行う。
右側の制御量に対しては、
φL_Rt> φY_Rtであるならば、φtR =φL_Rtとする。
φL_Rt≦ φY_Rtであるならば、φtR =φY_Rtとする。
左側の制御量に対しては、
φL_Lt> φY_Ltであるならば、φtL =φL_Ltとする。
φL_Lt≦ φY_Ltであるならば、φtL =φY_Ltとする。
そして、下記式によって最終目標転舵角φft、φrtを算出する。
φft =Kf_1 ×φtR +Kf_2 ×φtL
φrt =Kr_1 ×φtR +Kr_2 ×φtL
【符号の説明】
【0139】
5 転舵アクチュエータ
11 操舵用コントローラ
12 ステアリングホイール
13 前輪
14 自車両状態パラメータ
15 車線維持支援コントローラ
16 外界認識手段
17 方向指示スイッチ
25 後輪用の転舵アクチュエータ
C 自車両
Kc_L1 補正ゲイン
Kc_L2 補正ゲイン
Kdl 補正ゲイン
Kdy 補正ゲイン
Kel 補正ゲイン
Key 補正ゲイン
Kfl ゲイン
Kfy 前輪転舵ゲイン
Kfy 前輪転舵ゲイン
Kry 後輪転舵ゲイン
Ksl 補正ゲイン
Ksy 補正ゲイン
Kvl 補正ゲイン
Kvy 補正ゲイン
Kvy 補正ゲイン
Ky_L フィードバックゲイン
Ky_R フィードバックゲイン
KρL_L 走行車線端部制御フィードバック補正ゲイン
KρL_R 走行車線端部制御フィードバック補正ゲイン
KρY_L 走行車線中央部制御フィードバック補正ゲイン
KρY_R 走行車線中央部制御フィードバック補正ゲイン
L 走行車線
Le 左側走行車線端部
Ls 走行車線中央
LXL 横変位基準位置
Vw 各車輪速
Wlane 走行車線幅
X 横変位
XLt 横変位基準閾値
XRt 横変位基準閾値
α_R 係数
β_R 係数
γ_yaw ゲイン
δ 操舵角
ΔXL 横変位偏差
ΔXR 横変位偏差
ΔθL ヨー角偏差
ΔθR ヨー角偏差
θ ヨー角
ρ 曲率
φft 前輪の最終目標転舵角
φrt 後輪の最終目標転舵角
【特許請求の範囲】
【請求項1】
走行車線に対する自車両の横方向変位に関する情報を取得する横方向変位取得手段と、
自車両が走行する走行車線に横方向変位閾値を設ける横方向変位閾値設定手段と、
上記横方向変位閾値からの自車両の横変位偏差を小さくする第1の制御量を算出する 第1制御量算出手段と、上記走行車線に対する自車両の進行方向の角度偏差を小さくする第2の制御量を算出する第2制御量算出手段と、
自車両が上記走行車線の幅方向中央側から上記横方向変位閾値を通過する際に、上記横方向変位閾値より上記走行車線中央側では第2の制御量、上記横方向変位閾値よりも上記走行車線の幅方向外側では少なくとも第1の制御量に基づき、前後輪の転舵角若しくは転舵トルクを制御する進行方向制御手段と、
を備え、
上記進行方向制御手段は、上記第1の制御量若しくは第2の制御量の少なくとも一方の制御量に応じて、相対的に前輪の転舵方向に対する後輪の転舵方向の位相を制御する転舵方向調整手段を有することを特徴とする車線維持支援装置。
【請求項2】
上記転舵方向調整手段は、上記第1の制御量に応じて、前輪の転舵方向と同相方向に後輪を転舵させることを特徴とする請求項1に記載した車線維持支援装置。
【請求項3】
上記第1の制御量に対し、上記後輪の転舵量の増加に応じて、前輪の転舵量を増加することを特徴とする請求項2に記載した車線維持支援装置。
【請求項4】
上記転舵方向調整手段は、上記第2の制御量に応じて、前輪の転舵方向とは逆相方向に後輪を転舵させることを特徴とする請求項1〜請求項3のいずれか1項に記載した車線維持支援装置。
【請求項5】
上記第2の制御量に対し、上記後輪の転舵の増加に応じて、前輪の転舵量を減少させることを特徴とする請求項4に記載した車線維持支援装置。
【請求項6】
上記転舵方向調整手段は、車両周囲の走行環境に応じ上記後輪の転舵を補正することを特徴とする請求項1〜請求項5のいずれか1項に記載した車線維持支援装置。
【請求項7】
上記転舵方向調整手段は、車速に応じて上記後輪の転舵を補正することを特徴とする請求項1〜請求項6のいずれか1項に記載した車線維持支援装置。
【請求項8】
上記転舵方向調整手段は、上記後輪の転舵を運転者操舵意図推定値に応じて補正し、操舵意図があると推定すると上記後輪の転舵を抑えることを特徴とする請求項1〜請求項7のいずれか1項に車線維持支援装置。
【請求項9】
上記進行方向制御手段は、横方向変位閾値よりも車線端部側の範囲における少なくとも一部の領域において、第1の制御量及び第2の制御量の両方の制御量に基づいて制御することを特徴とする請求項1〜請求項8のいずれか1項に記載した車線維持支援装置。
【請求項10】
走行車線の幅方向中央からそれぞれ幅方向左右に個別にオフセットした2箇所の位置であってそれぞれ上記左右の横方向変位閾値以内に横変位基準位置を設定し、
上記第1制御量算出手段は、左右の横変位基準位置のうち、自車両が近い側の横変位基準位置からの横変位偏差を使用して第1の制御量を算出すると共に、自車両が上記左右の横方向変位閾値の間に位置すると判定した場合には、上記横変位偏差をゼロとみなす、もしくは当該横変位偏差に対する制御ゲインを小さくすることを特徴とする請求項1〜請求項9のいずれか1項に記載した車線維持支援装置。
【請求項11】
上記進行方向制御手段は、上記第1の制御量に第1重み付け係数を掛けた値と、第2の制御量に第2重み付け係数を掛けた値との和から最終的な制御量を算出し、
上記第1重み付け係数及び第2重み付け係数は、上記横変位偏差によって変更し、横変位偏差が大きいほど、第2重み付け係数に対し第1重み付け係数を大きく設定することを特徴とする請求項1〜請求項10のいずれか1項に記載した車線維持支援装置。
【請求項12】
上記進行方向制御手段は、上記第1の制御量と第2の制御量のうち値が大きい方を、最終的な制御量とすることを特徴とする請求項1〜請求項11のいずれか1項に記載した車線維持支援装置。
【請求項13】
上記第1の制御量を、自車両の横変位速度によって補正することを特徴とする請求項1〜請求項12のいずれか1項に記載した車線維持支援装置。
【請求項14】
左右の走行車線端部のうち、自車両の進行方向側に位置する走行車線端部に対する自車両の距離によって上記第2の制御量の制御ゲインを補正し、上記走行車線端部に対する自車両の距離が短いほど上記制御ゲインが大きくなるように補正することを特徴とする請求項1〜請求項13のいずれか1項に記載した車線維持支援装置。
【請求項15】
走行車線の曲率が所定以上の場合に、走行車線の中央に対する自車両の位置及び走行車線の曲率に基づき上記制御量算出手段が算出する制御量に対する制御ゲインを補正するカーブ路補正手段を備え、
その制御ゲインの補正は、走行車線の幅方向中央に対し走行車線のカーブ内側に自車両が位置する場合には、上記曲率が小さい場合よりも曲率が大きい場合に制御ゲインを小さく補正し、走行車線の幅方向中央に対し走行車線のカーブ外側に自車両が位置する場合には、上記曲率が小さい場合よりも曲率が大きい場合に制御ゲインを大きく補正する
ことを特徴とする請求項1〜請求項14のいずれか1項に記載した車線維持支援装置。
【請求項16】
横方向変位閾値から車線中央部側にオフセットした位置と当該横方向変位閾値との間を逸脱側遷移領域とし、
逸脱遷移領域よりも車線中央部側の領域では、第2の制御量をゼロとすることを特徴とする請求項1〜請求項15のいずれか1項に記載した車線維持支援装置。
【請求項17】
自車両が走行する走行車線に横方向変位閾値を設けると共に、走行車線に対する自車両の横方向変位に関する情報を取得し、
自車両が上記走行車線の幅方向中央側から上記横方向変位閾値を通過する際に、上記横方向変位閾値より上記走行車線中央側では、走行車線に対する自車両の進行方向の角度偏差が小さくなるように自車両の進行方向を制御し、上記横方向変位閾値よりも上記走行車線の幅方向外側では、少なくとも横方向変位閾値からの自車両の横変位偏差が小さくなるように自車両の進行方向を制御し、
角度偏差を小さくする制御では、前輪の転舵方向に対して後輪の転舵方向を逆相方向にすることを特徴とする車線維持支援方法。
【請求項18】
自車両が走行する走行車線に横方向変位閾値を設けると共に、走行車線に対する自車両の横方向変位に関する情報を取得し、
自車両が上記走行車線の幅方向中央側から上記横方向変位閾値を通過する際に、上記横方向変位閾値より上記走行車線中央側では、走行車線に対する自車両の進行方向の角度偏差が小さくなるように自車両の進行方向を制御し、上記横方向変位閾値よりも上記走行車線の幅方向外側では、少なくとも横方向変位閾値からの自車両の横変位偏差が小さくなるように自車両の進行方向を制御し、
横変位偏差を小さくする制御では、前輪の転舵方向に対して後輪の転舵方向を同相方向にすることを特徴とする車線維持支援方法。
【請求項1】
走行車線に対する自車両の横方向変位に関する情報を取得する横方向変位取得手段と、
自車両が走行する走行車線に横方向変位閾値を設ける横方向変位閾値設定手段と、
上記横方向変位閾値からの自車両の横変位偏差を小さくする第1の制御量を算出する 第1制御量算出手段と、上記走行車線に対する自車両の進行方向の角度偏差を小さくする第2の制御量を算出する第2制御量算出手段と、
自車両が上記走行車線の幅方向中央側から上記横方向変位閾値を通過する際に、上記横方向変位閾値より上記走行車線中央側では第2の制御量、上記横方向変位閾値よりも上記走行車線の幅方向外側では少なくとも第1の制御量に基づき、前後輪の転舵角若しくは転舵トルクを制御する進行方向制御手段と、
を備え、
上記進行方向制御手段は、上記第1の制御量若しくは第2の制御量の少なくとも一方の制御量に応じて、相対的に前輪の転舵方向に対する後輪の転舵方向の位相を制御する転舵方向調整手段を有することを特徴とする車線維持支援装置。
【請求項2】
上記転舵方向調整手段は、上記第1の制御量に応じて、前輪の転舵方向と同相方向に後輪を転舵させることを特徴とする請求項1に記載した車線維持支援装置。
【請求項3】
上記第1の制御量に対し、上記後輪の転舵量の増加に応じて、前輪の転舵量を増加することを特徴とする請求項2に記載した車線維持支援装置。
【請求項4】
上記転舵方向調整手段は、上記第2の制御量に応じて、前輪の転舵方向とは逆相方向に後輪を転舵させることを特徴とする請求項1〜請求項3のいずれか1項に記載した車線維持支援装置。
【請求項5】
上記第2の制御量に対し、上記後輪の転舵の増加に応じて、前輪の転舵量を減少させることを特徴とする請求項4に記載した車線維持支援装置。
【請求項6】
上記転舵方向調整手段は、車両周囲の走行環境に応じ上記後輪の転舵を補正することを特徴とする請求項1〜請求項5のいずれか1項に記載した車線維持支援装置。
【請求項7】
上記転舵方向調整手段は、車速に応じて上記後輪の転舵を補正することを特徴とする請求項1〜請求項6のいずれか1項に記載した車線維持支援装置。
【請求項8】
上記転舵方向調整手段は、上記後輪の転舵を運転者操舵意図推定値に応じて補正し、操舵意図があると推定すると上記後輪の転舵を抑えることを特徴とする請求項1〜請求項7のいずれか1項に車線維持支援装置。
【請求項9】
上記進行方向制御手段は、横方向変位閾値よりも車線端部側の範囲における少なくとも一部の領域において、第1の制御量及び第2の制御量の両方の制御量に基づいて制御することを特徴とする請求項1〜請求項8のいずれか1項に記載した車線維持支援装置。
【請求項10】
走行車線の幅方向中央からそれぞれ幅方向左右に個別にオフセットした2箇所の位置であってそれぞれ上記左右の横方向変位閾値以内に横変位基準位置を設定し、
上記第1制御量算出手段は、左右の横変位基準位置のうち、自車両が近い側の横変位基準位置からの横変位偏差を使用して第1の制御量を算出すると共に、自車両が上記左右の横方向変位閾値の間に位置すると判定した場合には、上記横変位偏差をゼロとみなす、もしくは当該横変位偏差に対する制御ゲインを小さくすることを特徴とする請求項1〜請求項9のいずれか1項に記載した車線維持支援装置。
【請求項11】
上記進行方向制御手段は、上記第1の制御量に第1重み付け係数を掛けた値と、第2の制御量に第2重み付け係数を掛けた値との和から最終的な制御量を算出し、
上記第1重み付け係数及び第2重み付け係数は、上記横変位偏差によって変更し、横変位偏差が大きいほど、第2重み付け係数に対し第1重み付け係数を大きく設定することを特徴とする請求項1〜請求項10のいずれか1項に記載した車線維持支援装置。
【請求項12】
上記進行方向制御手段は、上記第1の制御量と第2の制御量のうち値が大きい方を、最終的な制御量とすることを特徴とする請求項1〜請求項11のいずれか1項に記載した車線維持支援装置。
【請求項13】
上記第1の制御量を、自車両の横変位速度によって補正することを特徴とする請求項1〜請求項12のいずれか1項に記載した車線維持支援装置。
【請求項14】
左右の走行車線端部のうち、自車両の進行方向側に位置する走行車線端部に対する自車両の距離によって上記第2の制御量の制御ゲインを補正し、上記走行車線端部に対する自車両の距離が短いほど上記制御ゲインが大きくなるように補正することを特徴とする請求項1〜請求項13のいずれか1項に記載した車線維持支援装置。
【請求項15】
走行車線の曲率が所定以上の場合に、走行車線の中央に対する自車両の位置及び走行車線の曲率に基づき上記制御量算出手段が算出する制御量に対する制御ゲインを補正するカーブ路補正手段を備え、
その制御ゲインの補正は、走行車線の幅方向中央に対し走行車線のカーブ内側に自車両が位置する場合には、上記曲率が小さい場合よりも曲率が大きい場合に制御ゲインを小さく補正し、走行車線の幅方向中央に対し走行車線のカーブ外側に自車両が位置する場合には、上記曲率が小さい場合よりも曲率が大きい場合に制御ゲインを大きく補正する
ことを特徴とする請求項1〜請求項14のいずれか1項に記載した車線維持支援装置。
【請求項16】
横方向変位閾値から車線中央部側にオフセットした位置と当該横方向変位閾値との間を逸脱側遷移領域とし、
逸脱遷移領域よりも車線中央部側の領域では、第2の制御量をゼロとすることを特徴とする請求項1〜請求項15のいずれか1項に記載した車線維持支援装置。
【請求項17】
自車両が走行する走行車線に横方向変位閾値を設けると共に、走行車線に対する自車両の横方向変位に関する情報を取得し、
自車両が上記走行車線の幅方向中央側から上記横方向変位閾値を通過する際に、上記横方向変位閾値より上記走行車線中央側では、走行車線に対する自車両の進行方向の角度偏差が小さくなるように自車両の進行方向を制御し、上記横方向変位閾値よりも上記走行車線の幅方向外側では、少なくとも横方向変位閾値からの自車両の横変位偏差が小さくなるように自車両の進行方向を制御し、
角度偏差を小さくする制御では、前輪の転舵方向に対して後輪の転舵方向を逆相方向にすることを特徴とする車線維持支援方法。
【請求項18】
自車両が走行する走行車線に横方向変位閾値を設けると共に、走行車線に対する自車両の横方向変位に関する情報を取得し、
自車両が上記走行車線の幅方向中央側から上記横方向変位閾値を通過する際に、上記横方向変位閾値より上記走行車線中央側では、走行車線に対する自車両の進行方向の角度偏差が小さくなるように自車両の進行方向を制御し、上記横方向変位閾値よりも上記走行車線の幅方向外側では、少なくとも横方向変位閾値からの自車両の横変位偏差が小さくなるように自車両の進行方向を制御し、
横変位偏差を小さくする制御では、前輪の転舵方向に対して後輪の転舵方向を同相方向にすることを特徴とする車線維持支援方法。
【図1】
【図2】
【図3】
【図4】
【図5】
【図6】
【図7】
【図8】
【図9】
【図10】
【図11】
【図12】
【図13】
【図14】
【図15】
【図16】
【図17】
【図18】
【図19】
【図20】
【図21】
【図22】
【図23】
【図2】
【図3】
【図4】
【図5】
【図6】
【図7】
【図8】
【図9】
【図10】
【図11】
【図12】
【図13】
【図14】
【図15】
【図16】
【図17】
【図18】
【図19】
【図20】
【図21】
【図22】
【図23】
【公開番号】特開2010−188884(P2010−188884A)
【公開日】平成22年9月2日(2010.9.2)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2009−35694(P2009−35694)
【出願日】平成21年2月18日(2009.2.18)
【出願人】(000003997)日産自動車株式会社 (16,386)
【Fターム(参考)】
【公開日】平成22年9月2日(2010.9.2)
【国際特許分類】
【出願日】平成21年2月18日(2009.2.18)
【出願人】(000003997)日産自動車株式会社 (16,386)
【Fターム(参考)】
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