説明

車載用電力変換装置

【課題】放熱性能を損なうことなく装置の小型化を実現させ得る車載用電力変換装置を提供する。
【効果】図示の如く、ヒートシンク110の上表面111に充電器210が搭載され、ヒートシンクの下表面112(裏面)にDC−DCコンバータ310が搭載されるので、充電中(非走行中)は充電器側の面111から主な熱量が供給され、走行中はDC−DCコンバータ側の面112から主な熱量が供給される。従って、充電中か走行中かによって、ヒートシンク110へ供給する熱源の位置が変わり、両方の面から同時に高い熱量が供給されなくなるので、ヒートシンクの片側の面では発熱量が低下し、これに応じて放熱面積が十分に確保され、ヒートシンク110の大型化を回避することが可能となる。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、車載用電力変換装置に関し、特に、車載用電力変換装置の放熱性能を損なうことなく当該装置の小型化を図る際に用いて好適のものである。
【背景技術】
【0002】
近年、自動車の車載機器(パワーウインドウ、パワーステアリング、フューエルポンプ、照明機器、オーディオ等)は、各々にECU(Electric Control Unit)が設けられ、当該ECUの指令信号に応じて電気制御が行われている。かかる車載機器(モータ、照明灯、スピーカ等)は、自動車に搭載されたサブバッテリから電力が供給され、これにより、各々が適宜に制御される。
【0003】
また、電動モータ及び内燃機関の系統を適宜に選択させ駆動輪に動力を与えるHEV(Hybrid Electric Vehicle)が実用化されている。更には、車載用バッテリに関する技術開発の進歩に伴い、バッテリ電力による長距離走行が可能となり、これを受けて、プラグイン式の充電機構を具備するHEV(Hybrid Electric Vehicle)についても商品化が行なわれている。加えて、車輌の構成から内燃機関を排除させ、電動モータのみによって車輌を走行させるEV(Electric Vehicle)が登場するに至っている。以下、プラグイン式HEV及びEVをプラグイン式電気自動車と呼び、一方、自動車と呼ぶ場合には、内燃機関自動車(エンジンのみによって駆動力を発生させる車輌)及びHEV(充電方式を問わない)及びEVの全ての駆動方式の車輌を指すこととする。
【0004】
プラグイン式電気自動車は、車輪駆動用の電動モータに電力を供給させるメインバッテリと、車載機器を駆動させるために設けられたサブバッテリとを搭載させている。このうち、メインバッテリは、高電圧用の充電用電力を生成させる車載用充電器に接続されており、商用電力と上位ECUの指令とが車載用充電器に与えられると、商用電力から変換された充電用電力によって当該メインバッテリが充電される。一方、サブバッテリは、低電圧用の充電電力を生成させるDC−DCコンバータに接続されており、サブバッテリに設けられたECUの指令がDC−DCコンバータに与えられると、DC−Cコンバータから出力された充電電力によってサブバッテリが充電される。
【0005】
車載用充電器及びDC−DCコンバータの双方の回路は、トランジスタ等の構成部品が発熱するため、発生した熱量をヒートシンクを介して放熱させている。
【0006】
例えば、特許第3468424号公報(特許文献1)では、ヒートシンクの両面に発熱性の回路素子を搭載させる装置が紹介されている。かかる装置は、走行用モータに数百ボルトの強電力を供給するメインバッテリと、当該メインバッテリからの強電力を交流電力へと変換させ走行用モータを駆動させるインバータ回路と、メインバッテリを充電させる充電器と、車載用機器に12V程度の弱電力を供給するサブバッテリと、メインバッテリからの電力を変換させサブバッテリを充電させるDC−DCコンバータとを備えている。そして、かかる公報では、ヒートシンクの両面にインバータ回路のパワートランジスタを適宜配列させる旨、及び、ヒートシンクの一方の面へ当該パワートランジスタと供にDC−DCコンバータを搭載させる旨が示されている。また、同公報の記載では、ヒートシンクに充電器を搭載させる旨が示唆されている。
【0007】
また、特許第3166423号公報(特許文献2)では、ヒートシンクの断面構造が紹介されている。ヒートシンクは、底板にインナーフィンが形成され、上側ヒートシンク構造体と下側ヒートシンク構造体とを向かい合わせた2ピース構造より成る。当該ヒートシンクは、双方の構造体が組合されると、インナーフィンとヒートシンクの底板とによって冷媒の流通経路が形成される。また、同公報では、従来技術として、双方のインナーフィンの配列ピッチが一致しているものであって、インナーフィンの先端同士を当接させたヒートシンクが紹介されている。更に、発明の実施例として、双方のインナーフィンの配列ピッチを半ピッチスライドさせ、インナーフィンの先端に底板を当接させたヒートシンクが紹介されている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0008】
【特許文献1】特許第3468424号公報
【特許文献2】特許第3166423号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0009】
しかしながら、特許文献1に係る技術では、プラグイン式電気自動車を走行させる場合、インバータ回路及びDC−DCコンバータの双方の出力電力を100%近くで制御させる場合もあり得るので、ヒートシンクは、双方の最大発熱量を同時に放熱できる程度の放熱性能が必要となり、ヒートシンクの両面(表面及び裏面)で同時に熱量が生じる同技術にあっては、放熱面積を確保するためにヒートシンクの大型化を招くとの問題が生じる。
【0010】
また、インバータ回路を搭載させない装置を構成させる場合、ヒートシンクの一方の面に充電器及びDC−DCコンバータの双方を搭載させることが考えられる。かかる場合、ヒートシンクの他方の面(裏面)ではスペースが確保され放熱面積が確保されるものの、一方の面に回路装置を集中させるため、これによっても、ヒートシンクの大型化を招いてしまう。
【0011】
更に、ヒートシンクの一方の面に充電器及びDC−DCコンバータの双方を搭載させ、他方の面(裏面)の空きスペースにインバータ回路のパワートランジスタを配置させると、ヒートシンクの空きスペースが有効に活用されるものの、DC−DCコンバータとインバータ回路とは走行中に同時に駆動することがあるため、この結果、ヒートシンクの両面から同時に熱量が供給され、上述同様、放熱面積を確保するために、ヒートシンクの大型化されてしまうとの問題が生じる。
【0012】
また、特許文献2に記載された従来技術では、図9に示す如く、機械加工による加工精度が粗悪である場合、又は、熱膨張の偏りが生じる場合、当接するインナーフィンの全長(Hf1+Hf2)がヒートシンクの側壁の全長(Hw1+Hw2)より長くなると、側壁の当接面Sfの間に隙間Sが形成され、この場合、通気経路を通過する冷媒の流量が低下するので、ヒートシンクの放熱効果が低下してしまうとの問題が生じる。また、特許文献2に記載された実施例にあっても、ヒートシンクの側壁及びインナーフィンの寸法に不具合が生じると、先と同様に、ヒートシンクの放熱効果が低下してしまう。
【0013】
一方、特許文献2の技術について、インナーフィンの寸法を短くしてフィン先端の周辺にクリアランスを設けると、側壁の当接面Sfにおける気密性は確保されるので、冷媒の漏出に伴う放熱効果の低下を回避させることは可能である。しかし、2ピース構造とされたヒートシンクは、インナーフィンを介した接触面が無くなるため、当該構造体同士の伝熱効果が低下してしまう。ここで、双方の電力変換装置の発熱量が異なる場合、ヒートシンク内の温度勾配が平衡状態となる部分まで熱量が伝達されるため、ヒートシンク構造体の形状によっては、双方のヒートシンク構造体の当接面を超えて、熱量の伝達が行なわれる。この場合、インナーフィンの先端周囲にクリアランスが設けられると、双方のヒートシンク構造体の接触面積が減少し、効果的な放熱作用を阻害させてしまうとの問題が生じる。また、かかるヒートシンクは、インナーフィンを除く他の接触面での好ましい形態が検討されるべきところ、同公報(特許文献2)では何ら言及されていない。
【0014】
本発明は上記課題に鑑み、放熱性能を損なうことなく装置の小型化を実現させ得る車載用電力変換装置の提供を目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0015】
上記課題を解決するため、本発明では次のような車載用電力変換装置の構成とする。即ち、ヒートシンクと、前記ヒートシンクの一方の面に搭載されるものであって商用電力を変換させてメインバッテリを充電させる充電器と、前記一方の面に対称的に設けられた他方の面に搭載されるものであって前記メインバッテリの出力電力を変換させてサブバッテリを充電させるDC−DCコンバータとから成ることとする。
【0016】
また、本発明では次のような車載用電力変換装置の構成としても良い。即ち、ヒートシンクと、前記ヒートシンクの一方の面に搭載されるものであってメインバッテリを充電させる充電器と、前記一方の面に対称的に設けられた他方の面に搭載されるものであって前記メインバッテリの出力電力を変換させて車載機器へ電力を供給させるDC−DCコンバータとから成ることとする。
【0017】
好ましくは、前記ヒートシンクは、側壁及びインナーフィンが形成されており、前記側壁及び前記インナーフィンによって冷媒の流通経路が形成されていることとする。
【0018】
好ましくは、前記ヒートシンクは、前記一方の面を包含する第1構造部と前記他方の面を包含する第2構造部とから成ることとする。
【0019】
好ましくは、前記インナーフィンは、当該インナーフィンの周囲にクリアランスが形成され、前記側壁は、前記第1構造部の一部と前記第2構造部の一部とが直接接触して形成されることとする。
【0020】
好ましくは、前記インナーフィンのうち一方の構造部のインナーフィンは、向かい合う他方の構造部のインナーフィン同士の間隙より薄い板厚とされ、前記一方の構造部のインナーフィンの断面は、前記インナーフィン同士の間隙の範囲内に配置されることとする。
【0021】
好ましくは、前記ヒートシンクは、更に、前記側壁で包囲される内部領域に中柱部が形成されており、前記側壁及び前記インナーフィン及び前記中柱部によって冷媒の流通経路が形成されていることとする。
【0022】
好ましくは、前記ヒートシンクは、前記一方の面を包含する第1構造部と前記他方の面を包含する第2構造部とから成り、双方の構造部の一部が直接接触して成る中柱部を有し、前記中柱部は、前記側壁の双方の間に配置されていることとする。
【発明の効果】
【0023】
本発明に係る車載用電力変換装置によると、ヒートシンクの一方の面に充電器が搭載され、ヒートシンクの他方の面(裏面)にDC−DCコンバータが搭載されるので、充電中(非走行中)は充電器側の面から主な熱量が供給され、走行中はDC−DCコンバータ側から主な熱量が供給される。従って、充電中か走行中かによって、ヒートシンクへ供給する熱源の位置が変わり、両方の面から同時に高い熱量が供給されなくなるので、ヒートシンクの片側の面では発熱量が低下し、これに応じて放熱面積が十分に確保され、ヒートシンクの大型化を回避することが可能となる。
【0024】
また、インバータ回路を搭載させることなく充電器及びDC−DCコンバータのみの構成とさせる場合、当該充電器とDC−DCコンバータとがヒートシンクの各々の面に振り分けられるので、ヒートシンクの小型化が図られ、これにより、車載用電力変換装置の小型化が実現される。
【0025】
更に、ヒートシンクの放熱面積を確保させる種々の構造を採用させることにより、上述した効果の恩恵を受けた上で、更なるヒートシンクの小型化、車載用電力変換装置の小型化が実現される。
【図面の簡単な説明】
【0026】
【図1】実施の形態に係る車載用電力変換装置の回路構成を示す図。
【図2】実施の形態に係る他の車載用電力変換装置の回路構成を示す図。
【図3】実施の形態に係る車載用電力変換装置の構成を示す図。
【図4】実施の形態に係る車載用電力変換装置の内部構造を示す図。
【図5】実施の形態に係る車載用電力変換装置の放熱経路を示す図。
【図6】実施例1に係る車載用電力変換装置の構成を示す図。
【図7】実施例2に係る車載用電力変換装置でのヒートシンクの流通経路断面を示す図。
【図8】インナーフィンの公差が著しい場合におけるヒートシンクの流通経路断面を示す図。
【図9】実施例3に係る車載用電力変換装置でのヒートシンクの流通経路断面を示す図。
【図10】実施例3に係る車載用電力変換装置のヒートシンクでの放熱経路を示す図。
【図11】実施例3に係る車載用電力変換装置のヒートシンクでの放熱経路を示す図。
【図12】実施例4に係る車載用電力変換装置でのヒートシンクの流通経路断面を示す図。
【図13】他の例に係る車載用電力変換装置でのヒートシンクの流通経路断面を示す図。
【図14】実施例5に係る車載用電力変換装置の構成を示す図。
【図15】実施例5に係る車載用電力変換装置でのヒートシンクの流通経路断面を示す図。
【図16】他の例に係る車載用電力変換装置でのヒートシンクの流通経路断面を示す図。
【発明を実施するための形態】
【0027】

以下、本発明に係る実施の形態につき図面を参照して説明する。図1は、プラグイン式電気自動車(プラグイン式HEV,EV)における電力供給システムの回路構成が示されている。尚、同図には、外部構成とされる商用電源及び外部プラグが便宜的に示されている。当該商用電源Altは、商用電力を配電させるものであって、家庭用電源にあっては電力会社から100〜200V(50kHz/60kHz)が配電される。また、外部プラグPgaは、商用電源Altに接続され、上述した商用電力を印加させる。
【0028】
図示の如く、電力供給システムCは、車輌側プラグPgbと充電器210とメインバッテリVbmとDC−DCコンバータ310とサブバッテリVbsと車載機器L1,L2・・・,と各ECU(Electric Control Unit)とから構成され、電源ラインLa及びLb、信号ラインLp及びLqによって適宜に配線されている。
【0029】
車輌側プラグPgbは、プラグイン式電気自動車のボディー部に設けられ、メインバッテリVbmの充電を行なう際に外部プラグPgaに接続される。
【0030】
充電器210は、第1の制御回路213と第1のパワー素子回路部204とを備え、車輌側プラグPgbから商用電力の印加を受けている。当該充電器210は、指令信号SG1を受信すると、当該信号に応じて内部の回路が作用し、商用電力を数百ボルトの充電電力に変換させる。かかる充電電力は、後段の電源ラインLa,Lbに印加され、メインバッテリVbmを充電させる。
【0031】
メインバッテリVbmは、充電器210によって充電され、例えばDC200Vの電力を供給させる。
【0032】
DC−DCコンバータ310は、第2の制御回路313と第2のパワー素子回路部304とを備え、メインバッテリVbmから高圧電力の印加を受けている。当該DC−DCコンバータ310は、指令信号SG2を受信すると、当該信号に応じて内部の回路が作用し、メインバッテリVbmからの高圧電力を12V〜14V程度の弱電電力に変換させる。かかる弱電電力は、後段の電源ラインLa,Lbに印加され、サブバッテリVbsを充電させる。
【0033】
サブバッテリVbsは、DC−DCコンバータ310からの弱電電力によって充電され、例えばDC12Vの電力を供給させる。
【0034】
車載機器L1,L2・・・,は、各々がサブバッテリVbsに並列接続され、サブバッテリVbsから受けた12V〜14V程度の弱電電力によって駆動される。かかる車載機器は、パワーウインドウ、パワーステアリング、フューエルポンプ、照明機器等、電気的に制御される装置を指す。
【0035】
上位ECU30は、マイコン及びメモリー回路等から構成される情報処理装置であって、車輌内の各種情報を一元管理し、当該情報に基づいて、車載機器(充電器210、ワイパー、フューエルモータ、照明灯、オーディオ等)を直接的又は間接的に制御させる役割を担う。充電器210の制御にあっては、上位ECU30は、メインバッテリVbmの電圧値情報等の必要な情報が送り込まれ、これらの情報に基づいて、充電器210へ送信する指令信号SG1を演算処理させ、場合によっては、車載機器L1,L2・・・,の制御信号をも生成させる。
【0036】
サブバッテリ用ECU40は、サブバッテリVbsの供給電圧を管理し、当該供給電圧が低下すると、指令信号SG2を生成出力させ、DC−DCコンバータ310の充電動作を要求する。そして、サブバッテリVbsの供給電圧が正常値に復帰すると、指令信号SG2の出力を中止させ、DC−DCコンバータ310の動作を停止させる。
【0037】
かかる構成とされた電力供給システムCは、以下の如く動作する。即ち、充電作業中では、外部プラグPgaが車輌側プラグPgbに接続されると、上位ECU30から指令信号SG1が出力され、充電器110では、内部の回路を駆動させ、入力された商用電力を数百ボルトの直流電力へと変換させる。これに対して、DC−DCコンバータ310は、プラグイン式電気自動車が停止しているため、車載機器への動作指令が殆ど与えられなくなる。
【0038】
一方、ドライバーがプラグイン式電気自動車を走行させると、サブバッテリVbsの消費に応じて、サブバッテリ用ECU40から指令信号SG2が出力され、DC−DCコンバータ310が駆動される。これに対して、充電器210は、走行中であるため外部プラグPgaが車輌側プラグPgbから外されており、充電動作を促す指令信号SG1を上位ECU30から受けることは無い。
【0039】
尚、本実施の形態に係る電力供給システムは、図2に示される構成としても良い。即ち、上述した電力供給システムからサブバッテリVbsを省略させ、車載機器へ電力を直接的に供給させるようにしても良い。
【0040】
この場合、DC−DCコンバータ310は、車載機器から指令信号SG2を受け、当該信号に基づいて弱電電力を適宜に出力させる。
【0041】
図3及び図4では、上述した車載用電力変換装置の構成が示されている。図示の如く、車載用電力変換装置1は、ヒートシンク110と充電器210とDC−DCコンバータ310とから構成される。
【0042】
ヒートシンク110は、アルミ板又は銅板等の熱伝導性の高い材質から成り、適宜な放熱面積となるよう、板体の幅または長さが設定されている。また、放熱効果を高めるため、フィン等を設けても良い。以下、ヒートシンクの一方の面111を上表面と呼び換え、上表面111に対称的に設けられた他方の面112を下表面112と呼び換えることとする。
【0043】
充電器210は、図3に示す如く、ケース211と第1の制御回路213とパワー素子回路部204とから構成される。充電器210は、ヒートシンク110の上表面111に搭載されており、パワートランジスタ204d,ダイオード,コンデンサ,コイルトランス(図示なし)等の発熱性素子を内部に収容させ、フィルター回路、整流ブリッジ、PFC回路、昇降圧式電力変換回路等が適宜に構成される。
【0044】
ケース211は、上述した回路を実現させるため、少なくとも、第1の制御回路213及びパワー素子回路部204が収容される。ケース211のうち上表面111には、熱伝導率の高い放熱板205が露出されており、当該放熱板205は、ヒートシンクの上表面111と直接的に接触する。また、当該ケース211の構造体は、絶縁性の樹脂材料から成り、コネクタ端子を具備するコネクタ部212が形成されている。当該コネクタ端子202aは、図3に示す如く、信号端子202a1と入力端子202a2と出力端子202a3とから構成されており、信号端子202a1には指令信号SG1が印加され、入力端子202a2にはバッテリ又は電源から電力が印加され、出力端子202a3からは充電器によって変換された電力が出力される。
【0045】
第1の制御回路213は、制御IC203a,この他必要な電気的素子が実装されている。また、基板上にはプリント配線が施され、信号端子202a1が当該プリント配線に半田接続される。かかる構成により、第1の制御回路213では、信号端子202a1に指令信号SG1が入力されると、プリント配線を介して制御IC203aへと送信される。このとき、制御IC203aでは、指令信号SG1を適宜な形態に変換処理させた後、かかる処理で得られた信号を出力させ、パワートランジスタ204dを駆動制御させる。
【0046】
パワー素子回路部204は、図示の如く、絶縁性基板204aが放熱性樹脂を介して放熱板205に接着されている。絶縁性基板204aにはプリント配線204bが形成されており、当該プリント配線204bは、半田層204cを介してパワートランジスタ204dを載置させている。尚、ケース211の内部には、上述の如く、パワー素子回路部204以外に種々の機能的回路が収容されており、これらの回路が作用することにより、入力された電力を所望の電力へと変換させる。即ち、第1の制御回路213が指令信号SG1に応じて動作することにより、パワー素子回路部204をはじめとする各機能的回路が動作し、これにより、入力電力が適宜に変換され、所望の電力を出力させる。
【0047】
かかる構成を具備する充電器210は、指令信号SG1が信号端子202a1に印加されると、第1の制御回路213は、当該信号に応じてパワートランジスタ204dを駆動させる。このとき、入力電力は、パワー素子回路部204及び他の機能的回路によって出力電力へと変換され、出力端子202a3では、かかる出力電力を出力させる。
【0048】
ここで、パワートランジスタ204d及び他の発熱性素子が駆動されると、当該素子では熱量が発生する。かかる熱量は、放熱板205を介してヒートシンク110へと導かれ、ヒートシンク110の適宜な場所で熱交換が行なわれる。即ち、発熱性素子は、自身から発生した熱量が、外部へと伝達されるので、当該素子の損傷から免れることとなる。
【0049】
DC−DCコンバータ300は、ケース311と第2の制御回路313とパワー素子回路部304とから構成され、サブバッテリ又は車載機器に電力を供給させるため、14V〜12V程度の弱電電力を生成出力させる。そして、これらの構成については、充電器210と同様、一般的な構成であるため、その説明を省略することとする。
【0050】
図5は、ヒートシンクへ伝達される熱量Ht1,Ht2の伝達経路が示されている。但し、双方の電力変換部における構成のうちパワートランジスタ以外の構成については、便宜的に図示省略されている。また、ヒートシンク110の内部では、トランジスタからヒートシンクの端部に向かって温度勾配が生じているものとする。
【0051】
図5(a)は、図示されない車載コネクタに商用電源が接続され、充電器210が駆動されている場面が示されている。かかる場合、パワートランジスタ204dが駆動されるので、トランジスタ204dでは熱量が発生し、当該熱量は、拡散しつつヒートシンク110へ導かれ、ヒートシンク内部の温度勾配に応じて低温側へと伝達され、冷媒等によって熱交換される。一方、充電中とされることからプラグイン式電気自動車は走行していないで、プラグイン式電気自動車に搭載される車載装置(パワーウインドウ、パワーステアリング、フューエルポンプ、照明機器等)は殆ど操作されない。このため、トランジスタ304dからは、熱量が殆ど生じなくなるため、ヒートシンクへの熱量の供給が殆ど無くなる。
【0052】
これに対し、メインバッテリの充電が完了し、プラグイン式電気自動車の走行を開始させると、図5(b)に示す如く、充電器210は停止し、パワートランジスタ204dからの熱量は低下する。そして、ドライバーの操作又はプラグイン式電気自動車の制御ユニットの指令に応じて車載機器が駆動さるので、この動作に応じて、サブバッテリに蓄積された電力が低下する。これを受けて、サブバッテリ用ECU40では、指令信号SG2を出力させ、サブバッテリVbsを充電させるようにDC−DCコンバータ310を駆動させる。かかる場合、パワートランジスタ304dが駆動されるので、トランジスタ304dでは熱量が発生し、当該熱量は、ヒートシンク110を介して低温箇所で熱交換される。尚、本実施の形態では、サブバッテリ用ECUによってDC−DCコンバータ310の動作指令を行なっているが、これに限らず、サブバッテリVbsの出力電圧(又はこれの分圧値)が制御回路313の入力ポートに印加されるように配線し、制御回路313では、サブバッテリからの入力信号に応じてDC−DCコンバータを駆動させるようにしても良い。
【0053】
上述の如く、本実施の形態に係る車載用電力変換装置1によると、ヒートシンク110の上表面111に充電器210が搭載され、ヒートシンクの下表面112(裏面)にDC−DCコンバータ310が搭載されるので、充電中(非走行中)は充電器側の面111から主な熱量が供給され、走行中はDC−DCコンバータ側の面112から主な熱量が供給される。従って、充電中か走行中かによって、ヒートシンク110へ供給する熱源の位置が変わり、両方の面から同時に高い熱量が供給されなくなるので、ヒートシンクの片側の面では発熱量が低下し、これに応じて放熱面積が十分に確保され、ヒートシンク110の大型化を回避することが可能となる。
【0054】
また、インバータ回路を搭載させることなく充電器210及びDC−DCコンバータ310のみの構成とさせる場合、当該充電器210とDC−DCコンバータ310とがヒートシンクの各々の面に振り分けられるので、ヒートシンクの小型化が図られ、これにより、車載用電力変換装置1の小型化が実現される。
【0055】
更に、本実施の形態では、同ヒートシンクにインバータ回路を搭載させる場合、当該インバータ回路を構成するパワートランジスタをDC−DCコンバータ側の面に搭載させるのが好ましい。即ち、インバータ回路及びDC−DCコンバータ310は走行中に駆動される回路であるから、かかる構成により、ヒートシンク110では、走行中か充電中かによって、熱源を搭載させた面が何れか一方の面に集中し、他方の面では放熱面積が十分に確保されることとなる。
【0056】
尚、本実施の形態では、充電器210を搭載させた面にインバータ回路のパワートランジスタを搭載させても、走行中の熱源と充電中の熱源とが適宜に振り分けられているのであれば、上述した効果が一定の範囲で奏される。
【0057】
また、本実施の形態では、充電器を車両に搭載させたプラグイン式電気自動車について説明されている。但し、特許請求の範囲に記される車載用電力変換装置は、かかる技術に限定されるものでは無い。例えば、電気自動車又はハイブリッド自動車から充電器を省略させ、外部設備として設けられた高速充電器によって車両が充電される電源システムにも、特許請求の範囲に記される車載用電力変換装置が適用され得る。この場合、車載用コネクタとメインバッテリとの間には、パワートランジスタから構成されるリレー装置が設けられる場合も有り、また、高速充電器から供給された直流電力をDC−DC変換させ好ましい値の充電電圧に調整させる直流−直流変換回路が設けられる場合も有り得る。これらの場合、ヒートシンクの一方の面に当該リレー装置又は直流−直流変換回路を搭載させ、ヒートシンクの他方の面にDC−DCコンバータ310と搭載させることにより、本変形例に係る車載用電力変換装置では、上述同様の作用効果が奏されることとなる。
【0058】
以下、実施例によって、ヒートシンクの放熱面積を確保させる種々の構造について説明する。これらの実施例は、実施の形態に係る構成を具備したものであるため、上述した効果の恩恵を受けた上で、更なるヒートシンクの小型化、車載用電力変換装置の小型化が図られる。
【実施例1】
【0059】
図6は、上述したヒートシンクを改変させた新たな電力変換装置が示されている。かかる電力変換装置3は、ヒートシンクがインナーフィンを具備するものに置換えられている。尚、この他の構成については、実施の形態に係る構成と同様であるため、同一符号を付し、その説明を省略することとする。
【0060】
ヒートシンク120は、図示の如く、側壁123及びインナーフィン124が形成されている。側壁123は、冷媒の流入側INから流出側OUTに至るまで、外部に冷媒が流出しないように、側方の気密性が保たれている。また、インナーフィン124は、所定厚保の板状体が冷媒の通過方向に沿って形成され、適宜なピッチで複数配列されている。即ち、側壁123及びインナーフィン124によって冷媒の流通経路が形成されることとなる。かかる如くインナーフィンが複数形成されるので、放熱面積がヒートシンクの内部で十分確保され、熱交換が効果的に行われる。
【0061】
尚、本実施例に係るヒートシンクにあっても、アルミ等の熱伝導性の良好な材料から形成され、その製造方法にあっては、鋳造または機械加工によって製造される。但し、鋳造による場合には多孔質巣から冷媒が漏出する惧れがあるので、冷媒が液体流体である場合には、圧延材料等から製作されるのが好ましい。
【0062】
上述の如く、本実施例に係る電力変換装置3によると、ヒートシンク120の内部にインナーフィン124が複数形成されるので、放熱面積が十分確保され、冷媒との熱交換が効果的に行なわれる。
【0063】
また、ヒートシンク120の気密性が保たれるので、冷媒として用いられる流体は、流速が早くなってもヒートシンクの外部に漏出することなく、強制的に冷媒の流通経路を通過することとなり、冷媒の流通経路での熱交換が効果的に行なわれ、これにより、当該ヒートシンク120の小型化が可能となる。
【実施例2】
【0064】
しかし、実施例1の技術では、1ピース構造とされるためヒートシンクの内部の加工が非常に困難となる。そこで、本実施例では、かかる問題を解消させるヒートシンクの製法及び構造について紹介する。尚、図7は、冷媒の流通断面を観察した状態が示されている。
【0065】
本実施例に係るヒートシンク130は、図7(a)に示す如く、一方の面131を包含する第1構造部130aと、他方の面132を包含する第2構造部130bとから構成される。即ち、充電器210を搭載させる構造とDC−DCコンバータ310を搭載させる構造との2ピース構造とされる。
【0066】
第1構造部130aは、底板部136aの両端に側壁形成体133aが略直角に形成されている。当該側壁形成体133aは、所定の板厚を有し、側壁133の一部分を成す。また、第1構造部130aは、双方の側壁形成体133aの間にフィン形成体134aが略平行に複数形成されている。更に、本実施例では、側壁形成体133aの端部の高さ寸法とフィン形成体134aの端部の高さ寸法が略一致するように加工される。
【0067】
第2構造部130bは、底板部136b及び側壁形成体133b及びフィン形成体134bとから成り、その形状は第1構造部130aの構成と略同様とされる。
【0068】
かかる第1構造部130a及び第2構造部130bは、通気経路の内部を分断させているので、フィン形成体が構造部の表面に現われ、工作機械による製造が可能となる。また、工作機械によって板材からの加工が可能となり、上述した鋳造品に起因する問題も解消される。
【0069】
図7(b)は、第1構造部130aと第2構造部130bとが組み付けられた状態が示されている。かかるヒートシンク130は、図示の如く、双方の側壁形成体及びフィン形成体が当接し、直接的に接触した状態とされ、双方の形成体によってインナーフィン134及び側壁133が各々形成される。また、第1構造部130aに形成された一方の面131には、充電器210が搭載され、第2構造部130bに形成された他方の面132には、DC−DCコンバータ130が搭載される。
【0070】
本実施の形態では、双方の構造部はシール溶接され、これにより、冷媒の外部への流出が防止されている。但し、双方の構造部のシールが確保されるのであれば、かかる構成に限定されることなく、当接部にOリングを設けて、シール性を付与させても良い。
【0071】
上述の如く、本実施例に係る電力変換装置4によると、ヒートシンク130における冷媒の流通経路が上下の搭載面の間で分断されるので、インナーフィン等を構成する内部構造の機械加工が可能となる。
【実施例3】
【0072】
しかし、実施例2の電力変換装置4では、フィン形成体134a,134b及び側壁形成体133a,133bの当接部が切削機等の機械加工によって成形されるので、加工面には所定の寸法誤差が生じてしまう。双方のインナーフィンのピッチが一致して配列される場合、側壁形成体133a及び133bの高さ寸法の総和がフィン形成体134a及び134bの高さ寸法の総和より長いと、一方の側壁形成体133aと他方の側壁形成体133aとには、図8に示す如く、その当接面Sfに隙間Sが形成され、その程度によっては、溶接又はこの他のシール接触を施すことが困難とされる。
【0073】
そこで、本実施例に係るヒートシンクは、双方のインナーフィンのピッチが一致して配列される場合、双方の構造部に形成されたインナーフィン144a及び144bの高さ寸法を側壁形成体143a及び143bの高さ寸法より短くさせ、図9(a)に示す如く、インナーフィンの周囲、特に、インナーフィン143a及び143bの先端に鉛直方向のクリアランスを形成させるようにすると良い。尚、本実施例では、側壁構造体によって互いの構造部が直接的に接触している。
【0074】
これにより、図9(b)に示す如く、第1構造部140aと第2構造部140bとが接合された際、冷媒の流通経路では、双方のインナーフィンの先端に適宜なクリアランスが形成され、側壁形成体143aと側壁形成体143bとが確実に当接するようになる。即ち、本実施例に係る電力変換装置によると、インナーフィン先端に鉛直方向のクリアランスが設けられるので、インナーフィンの寸法公差が粗悪であっても、側壁形成体同士が確実に当接し、かかる当接面におけるシール性が確保される。
【0075】
図10では、充電器210の動作が顕著な場合が示されている。かかる場合、充電器210に収容されたパワートランジスタ204d等が駆動され、これらをはじめとする発熱性素子から熱量が第1構造部140aに向かって伝達される。ここで、冷媒の流通経路では熱交換が随時行なわれるため、パワートランジスタ204dの近傍を基準にすると、インナーフィン144a及び144bの双方に向かって温度勾配が生じている。従って、かかる熱量は、その一部は第1構造部側のインナーフィン144aの各々へ導かれ、冷媒と熱交換される。また、第1構造部へ導かれた残りの熱量は、側壁形成体143a及び143bが直接的に当接しているので、双方の構造部の当接面Sfを介して第2構造部へと伝達される。その後、第2構造部へ伝達された熱量は、第2構造部に設けられたインナーフィン144bに導かれ、ここでも冷媒と熱交換される。
【0076】
一方、プラグイン式電気自動車が走行し熱源の位置が反転すると、かかる場面ではヒートシンクの構造体内の温度勾配が逆転し、図11に示す如く、パワートランジスタ304dで発生した熱量は、その一部は第2構造部側のインナーフィン144bの各々へ導かれ、冷媒と熱交換される。また、残りの熱量は、当接面Sfを介して第1構造部へと伝達される。
【0077】
即ち、本実施例に係るヒートシンク140では、側壁143における当接面Sfによって構造部間の熱量の伝達がスムーズに行なわれ、第1構造部140a及び第2構造部140bの双方を用いて放熱機能が効果的に発揮される。尚、図示の如く、冷媒との熱交換は、インナーフィンの表面のみで行なわれるのではなく、底板146又は側壁構造体等によっても適宜に行なわれる。
【0078】
上述の如く、本実施例に係る電力変換装置5によると、側壁における当接面Sfによって、一方の構造部の熱量が他方の構造部へとスムーズに伝達されるので、当該装置が相反的制御される場合、ヒートシンクの内部で温度勾配が相反的に変化し、これに応じて熱量が低温側へと導かれ、双方の構造体において放熱作用が効果的に行なわれることとなる。また、これにより、ヒートシンク140の小型化が実現される。
【実施例4】
【0079】
しかし、実施例3のヒートシンクでは、双方のインナーフィンの先端が対向するように配置されるので、クリアランスを確実に形成させるためには、一定の加工精度が要求される。そこで、かかる加工精度の要求を幾分でも緩和させるため、図12(a)に示すヒートシンク150とするのが好ましい。以下、インナーフィンの断面に垂直な方向を「インナーフィンの配列方向F」又は「配列方向F」として、図12及び図13について説明する。
【0080】
図12(a)に示す如く、第1構造部150aのインナーフィン154aの板厚t1は、第2構造部150bのインナーフィン154bのうち、隣接するインナーフィン同士の隙間B2よりも薄い形状とされ、また、第2構造部150bのインナーフィン154bの板厚t2は、第1構造部150aのインナーフィン154aのうち、隣接するインナーフィン同士の隙間B1よりも薄い形状とされている。更に、インナーフィン154aの断面は、双方の構造部が組み合わさる場合、第2構造部150bにおけるインナーフィン同士の隙間B2の範囲内に配置され、また、インナーフィン154bの断面は、双方の構造部が組み合わさる場合、第1構造部150aにおけるインナーフィン同士の隙間B1の範囲内に配置される。より好ましくは、第1構造部のインナーフィンの断面は、第2構造部のインナーフィンの配列方向に対して半ピッチスライドされて配置される。
【0081】
これにより、図12(b)に示す如く、第1構造部150aと第2構造部150bとが組合された場合、双方のインナーフィンの先端は、互いに対面することなく、各々のインナーフィンの先端に十分なクリアランスが形成されることとなる。この場合、インナーフィン154aの高さは、側壁構造体153aの高さ寸法を上回っても良い。また、第2構造部150bのインナーフィンにあっても同様である。
【0082】
上述の如く、本実施例に係る電力変換装置6によると、双方のインナーフィンの先端がフィンの配列方向Fに対して適宜にスライドしてレイアウトされるので、双方の先端が互いに対面することなく、インナーフィンの先端の周囲に十分なクリアランスが設けられる。また、これによって、ヒートシンク150が適宜に当接するので、双方の構造部が確実に当接し、当該当接箇所のシール機能、及び、偏在する熱量の伝達効果を発揮させることとなる。
【0083】
尚、図13(a)に示す如く、インナーフィンの全長は、側壁構造体160a又は160bより短くしても良い。かかる場合、インナーフィンにおける先端のクリアランスは、より十分に確保されることとなる。
【0084】
また、図13(b)に示す如く、インナーフィンの全長を、側壁構造体160a又は160bより長くしても良い。同図におけるインナーフィンは、先端が底板166a又は166bに接触しない範囲で成形すれば良い。かかる場合、ヒートシンクの外形寸法に影響を与えることなく放熱面積を増加できる。
【実施例5】
【0085】
図14は、実施例2のヒートシンクを更に改変させた電力変換装置が示されている。かかる電力変換装置9は、ヒートシンクが中柱部185を具備するものに置換えられている。尚、この他の構成については、実施例1に示される構成と同様であるため、同一符号を付し、その説明を省略することとする。
【0086】
ヒートシンク180は、図示の如く、側壁183及び底板で包囲される内部領域に、中柱部185が形成されている。即ち、当該中柱部185は、側壁183と略同様の形態を成し、双方の側壁183の間に形成されている。従って、本実施例に係るヒートシンク180によると、側壁183及びインナーフィン184及び中柱部185及び底板によって冷媒の流通経路が形成され、当該流通経路は、本実施例の場合、2つの経路が形成されることとなる。
【0087】
上述の如く、本実施例に係る電力変換装置9によると、中柱部185によって熱量の伝達経路が新たに追加され、これにより、偏在する熱量の分布状態が直ちに均一化され、放熱効果の向上が図られる。従って、電力変換装置9では、熱源が相反的に切換わっても、これに応じて発生する熱量が停滞することなく、効果的な熱交換が行なわれることとなる。
【0088】
また、本実施例の中柱部は、パワートランジスタ等の放熱性素子の直下に設けられるのが好ましい。これにより、放熱性素子で発生した熱量は、対向する構造部への伝熱経路が短縮化されるので、これに伴い、ヒートシンク内での熱交換がより効果的に行なわれる。
【0089】
尚、本実施例に係る電力変換装置9を改変し、図15に示すような電力変換装置10としても良い。具体的に説明すると、本実施例で用いられるヒートシンク190は、一方の面191を包含する第1構造部190aと、他方の面192を包含する第2構造部190bとから構成される。また、双方の構造部190a及び190bには、一部が直接接触して成る中柱部195を有している。かかる中柱部195は、双方の構造部の中柱構造体195a及び195bから成り、これらの構造体が互いに当接する。これにより、側壁193の2つの伝熱経路に限らず、新たな伝熱経路が形成されることとなる。
【0090】
また、本実施例の中柱部195は、両側の側壁193の間に配置されている。そして、かかる中柱部195は、放熱性素子の直下に配置されることにより、熱量の伝達作用がより円滑に行なわれる。
【0091】
更に、図示の如く、ヒートシンクの上下層を分断させる2ピース構造とされるので、インナーフィン等の内部構造の加工が容易となる。
【0092】
尚、図15の場合、インナーフィン194a及び194bの先端が対向しているが、当該インナーフィンのレイアウトが、かかる態様に限定されるものではない。例えば、図16に示す如く、ヒートシンク190の構造を2ピース構造とした上で、インナーフィンの配列を互いに半ピッチシフトさせても良い。かかる場合、伝熱経路が好適に確保される上、インナーフィンの先端におけるクリアランスが十分に取られる。そして、かかる構造により、ヒートシンクの構造体が正しく接合されるので、上述したあらゆる効果を伴って、放熱効果の向上が図られる。
【0093】
尚、上述した実施の形態では、図面を参照すると、両方のヒートシンクの高さ寸法が同じであるように示されている。しかし、かかる寸法は、搭載させる充電器又はDC−DCコンバータ等の電力変換部の電力量又は発熱量に応じて適宜に調整させても良い。
【符号の説明】
【0094】
1 車載用電力変換装置
110 ヒートシンク
210 充電器
310 DC−DCコンバータ

【特許請求の範囲】
【請求項1】
ヒートシンクと、前記ヒートシンクの一方の面に搭載されるものであってメインバッテリを充電させる充電器と、前記一方の面に対称的に設けられた他方の面に搭載されるものであって前記メインバッテリの出力電力を変換させてサブバッテリを充電させるDC−DCコンバータとから成ることを特徴とする車載用電力変換装置。
【請求項2】
ヒートシンクと、前記ヒートシンクの一方の面に搭載されるものであってメインバッテリを充電させる充電器と、前記一方の面に対称的に設けられた他方の面に搭載されるものであって前記メインバッテリの出力電力を変換させて車載機器へ電力を供給させるDC−DCコンバータとから成ることを特徴とする車載用電力変換装置。
【請求項3】
前記ヒートシンクは、側壁及びインナーフィンが形成されており、前記側壁及び前記インナーフィンによって冷媒の流通経路が形成されていることを特徴とする請求項1又は請求項2に記載の車載用電力変換装置。
【請求項4】
前記ヒートシンクは、前記一方の面を包含する第1構造部と前記他方の面を包含する第2構造部とから成ることを特徴とする請求項3に記載の車載用電力変換装置。
【請求項5】
前記インナーフィンは、当該インナーフィンの周囲にクリアランスが形成され、
前記側壁は、前記第1構造部の一部と前記第2構造部の一部とが直接接触して形成されることを特徴とする請求項3又は請求項4に記載の車載用電力変換装置。
【請求項6】
前記インナーフィンのうち一方の構造部のインナーフィンは、向かい合う他方の構造部のインナーフィン同士の間隙より薄い板厚とされ、
前記一方の構造部のインナーフィンの断面は、前記インナーフィン同士の間隙の範囲内に配置されることを特徴とする請求項3乃至請求項5に記載の車載用電力変換装置。
【請求項7】
前記ヒートシンクは、更に、前記側壁で包囲される内部領域に中柱部が形成されており、前記側壁及び前記インナーフィン及び前記中柱部によって冷媒の流通経路が形成されていることを特徴とする請求項3乃至請求項6に記載の車載用電力変換装置。
【請求項8】
前記ヒートシンクは、前記一方の面を包含する第1構造部と前記他方の面を包含する第2構造部とから成り、双方の構造部の一部が直接接触して成る中柱部を有し、
前記中柱部は、前記側壁の双方の間に配置されていることを特徴とする請求項7に記載の車載用電力変換装置。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【図8】
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【図9】
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【図10】
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【図11】
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【図12】
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【図13】
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【図14】
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【図15】
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【図16】
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【公開番号】特開2011−120389(P2011−120389A)
【公開日】平成23年6月16日(2011.6.16)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2009−275982(P2009−275982)
【出願日】平成21年12月4日(2009.12.4)
【出願人】(000109093)ダイヤモンド電機株式会社 (387)
【Fターム(参考)】