説明

車載装置、車載マルチメディアシステム及びプログラム

【課題】ハードディスクドライブ搭載型の車載装置において、高高地でハードディスクドライブを停止させている最中であっても、意匠画像や音声を出力可能にするための技術を提供する。
【解決手段】現在位置が高高地エリアに該当すると判定した場合(S130:YES)、現在表示中の画像がハードディスクドライブの停止中に表示を継続できるものであるか否かを判定する(S140)。このとき、例えばハードディスクドライブに格納されている地図データに基づく地図画像を表示している場合、高高地でハードディスクドライブ23が停止している状態では、地図表示を継続できなくなる。よって、この場合(S140:YES)、外部メモリに記憶されている意匠画像データに基づく画像、あるいは外部映像機器による映像の中から表示すべき画像を選択し(S150)、この選択した画像へと表示を切り替える(S180,S190)。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、ハードディスクドライブを有する車載用ナビゲーション装置等の車載装置に関し、特に、標高の高い地域でのハードディスクドライブへのアクセス制御に関する。
【背景技術】
【0002】
従来、地図データに基づいて現在位置周辺の地図をディスプレイに表示したり、目的地までの最適な経路を計算して走行案内を行う車載用ナビゲーション装置等の車載装置において、地図データ等を記憶するための記憶媒体としてハードディスクドライブを用いたものが広く普及している。また、ハードディスクドライブの大量な記憶容量を利用して、地図データだけでなく、車載用ナビゲーション装置が作動するためのアプリケーションソフトウェアや、車載用ナビゲーション装置に一体化されたオーディオ機能で利用するための音楽データや映像データ等をハードディスクドライブに記憶させるものがある。
【0003】
さらに、これらの機能に加えテレビやDVD、車両の後進時に後方の様子を映し出すバックモニタ等の外部映像・音声機器による映像・音声を出力可能であったり、エアコン等の各種車載機器の操作パネルを画面に表示してこれらを操作可能な、いわゆる車載マルチメディアシステム等も普及しており、ハードディスクドライブ搭載型の車載装置は近年益々多機能している。
【0004】
ハードディスクドライブは、磁性体を塗布した記憶媒体であるディスクに磁気ヘッドを用いて情報を記録又は読み出す記憶装置である。ハードディスクドライブの作動時においては、高速で回転するディスクと共に回転する空気の圧力によってディスク上方に位置する磁気ヘッドがディスクから極わずかだけ浮き上がる構造となっている。よって、周辺の気圧が著しく低下している環境下でハードディスクドライブが作動すると、磁気ヘッドを浮上させる空気圧の低下によりディスクと磁気ヘッドとの間隔を適正な状態に維持できなくなる。その結果、ディスクと磁気ヘッドが衝突することでディスクを損傷してしまうおそれがある。そして、気圧は高度が上昇するにつれて低下するため、ハードディスクドライブには高度による使用限界がある。一般的には、ハードディスクドライブの高度に対する動作保証は、高度3000m(約0.7気圧)〜5000m(約0.5気圧)程度までとなっている。
【0005】
したがって、ハードディスクドライブを搭載した車載装置においては、ハードディスクドライブの作動が保証されている高度を超えるような高高地(例えば、3000m級、あるいは4000〜5000m級の道路)での使用が想定される場合、ハードディスクドライブの破損を防止するための対策が必要となる。
【0006】
そこで、車両が所定の高度(例えば3000m)以上に到達したときに、ハードディスクドライブに記憶されている地図データの一部を外部メモリに記憶した後、ハードディスクドライブを停止し、3000m以上の高高地を走行中には外部メモリに記憶されている地図データに基づいて地図表示を行う技術が案出されている(例えば、特許文献1参照)。このような技術により、高高地においてハードディスクドライブを停止させることでハードディスクドライブの破損を防止しながらも、地図表示を継続可能にすることを実現している。
【特許文献1】特開2004−317385号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0007】
近年の多機能化したハードディスクドライブ搭載型の車載装置(以下、単に車載装置と表記する)においては、ユーザが種々の機能を駆使するためのGUI(Graphic User Interface)を表示するためのアイコンやスイッチ、各種シンボルマーク、メッセージ等の意匠画像や、ユーザに音声で説明を行うためのガイド音声が多数用いられている。よってこれらの意匠画像を出力するための意匠画像データやガイド音声を出力するための音声データ等の出力用データは、そのデータ量の大きさによりハードディスクドライブに格納されている場合がある。よって、高高地での作動が想定されている機能に用いられる出力データについては、ハードディスクドライブを停止した際に、必要な出力用データを利用できない状態に陥ることを防ぐための対策が必要である。
【0008】
しかしながら、特許文献1に記載の技術は、高高地においてナビゲーション機能に係る地図データを退避して地図表示を継続するものであり、意匠画像データや音声データの退避については考慮されていない。よって、ハードディスクドライブが停止している最中に地図表示以外の機能を利用しようとした場合、これらの機能を操作するための操作画面を表示するための意匠画像データや、ガイド音声を出力するための音声データ等の出力用データがハードディスクドライブから読み出すことができず、地図表示以外の機能を利用できなくなる。
【0009】
本発明は、上記の問題を解決するためになされており、ハードディスクドライブ搭載型の車載装置において、高高地でハードディスクドライブを停止させている最中であっても、意匠画像や音声を出力可能にするための技術を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0010】
上記目的を達成するためになされた請求項1に記載の車載装置は、次のような特徴を有する。
外部記憶装置としてハードディスクドライブを備え、このハードディスクドライブから読み出したデータに基づいて画像表示又は音声出力に関する所定の処理を行い、さらに、所定の高度以上である高高地においてはハードディスクドライブの作動を禁止する機能を有する車載装置であって、記憶手段と、高度検知手段と、制御手段とを備える。
【0011】
ハードディスクドライブは、意匠画像の表示に用いる意匠画像データ、又は音声出力に用いる音声データである出力用データを記憶している。記憶手段は、ハードディスクドライブに記憶されている出力用データのうち、高高地でのハードディスクドライブ停止中に使用が想定されている一部の出力用データ、又は、これに相当する出力用データであって、ハードディスクドライブに記憶されているものよりデータ量を低減した出力用データを記憶している。高度検知手段は、現在位置の高度が所定の高高度以上であるか否かを検知する。
【0012】
そして、制御手段は、高度検知手段により現在位置の高度が所定の高高度以上であると判定された場合、従前に出力していた画像又は音声から、記憶手段から読み出した出力用データに基づく意匠画像又は音声へと出力を切り替える。
【0013】
なお、ここでいう所定の高高度とは、例えばハードディスクドライブの作動が保証されている高度の上限値、あるいは、ハードディスクドライブの作動が保証される気圧の下限値に到達する高度とすることが考えられる。
【0014】
また、記憶手段には、ハードディスクドライブの作動が保証されている高度を超えるような高高地であっても十分に使用可能なものを用いるものとする。例えば、電源の供給がなくても記憶内容を保持可能な不揮発性を有する半導体メモリや、光・光磁気ディスク等を用いることが考えられる。
【0015】
このように構成された車載装置によれば、高高地でハードディスクドライブを停止させている最中であっても、高高地での使用が想定された機能に用いられる一部の意匠画像データや音声データに相当する出力用データを予め記録した記憶手段にアクセスすることで、意匠画像やガイド音声を出力することができ、高高地での車載装置の信頼性・利便性が向上する。
【0016】
つぎに、請求項2に記載の車載装置は、現在位置の高度が所定の高高地以上であると判定された場合、切り替え先の画像又は音声をユーザからの指示により決定し、この決定した画像又は音声の表示に用いる出力用データを記憶手段から読み出し、この読み出した出力用データに基づく意匠画像又は音声の出力を行うことを特徴とする。
【0017】
このようにすることで、高高地でハードディスクドライブが停止している状況においても、ユーザが所望する機能を実行するのに必要な意匠画像や音声を出力することができ、車載装置の利便性が一層向上する。
【0018】
また、請求項3に示すように、車載装置が外部映像・音声ソースからのデータに基づく画像又は音声を出力可能に構成されていれば、記憶手段に記憶されている出力用データに基づく意匠画像又は音声、あるいは外部映像・音声ソースからのデータに基づく画像又は音声の何れかへ、自動又はユーザからの指示により選択的に切り替えるように構成するとよい。
【0019】
なお、出力すべき画像又は音声を選択するには、例えば、上述のバックモニタシステムのように優先度や時限性の高い機能については所定の優先度に応じて自動的に切り替えるように構成し、オーディオやテレビ、DVDの操作及び視聴といった娯楽性の高い機能についてはユーザからの選択指示によって切り替えるように構成することが考えられる。
【0020】
このように構成することで、ハードディスクドライブの作動が制限される高高度において、ハードディスクドライブに記憶されているデータに依らない画像・音声出力の切り替えを多様に行うことができる。
【0021】
なお、本発明の車載装置の一例としては、請求項4に記載のように、ハードディスクドライブに地図データやプログラム、意匠画像データ、音声データ等を記憶し、このハードディスクドライブから読み出した地図データに基づいて目的地までの経路案内を行うナビゲーション機能を備える共に、外部映像・音声ソースからのデータに基づく画像又は音声を出力可能に構成されたいわゆる車載マルチメディアシステムが挙げられる。
【0022】
このような車載マルチメディアシステムに本発明を適用することで、ハードディスクドライブの作動が制限される高高度における信頼性や利便性を大いに向上させることができる。
【0023】
以上で説明したような車載装置における制御手段をコンピュータシステムで実現するには、請求項5に記載のようにコンピュータシステム上で稼動するプログラムとして備えればよい。このようなプログラムは、例えば磁気/光/光磁気ディスク、ハードディスク、ROM、RAM等のコンピュータにて読取可能な記憶媒体に記録し、必要に応じてコンピュータにロードすることにより、制御手段としての機能を実現できる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0024】
以下、本発明の一実施形態を図面に基づいて説明する。
[1.車載マルチメディアシステム1の構成の説明]
図1は実施形態の車載マルチメディアシステム1の概略構成を示すブロック図である。
【0025】
図1に示すように、車載マルチメディアシステム1は、車両の現在位置を検出する位置検出器21と、操作スイッチ群22と、地図データや意匠部品データ、プログラム等を記憶する大容量記憶装置であるハードディスクドライブ23と、各種情報を記憶する外部メモリ24と、各種音声を出力するための音声出力装置25と、表示装置27に表示するための画像を描画する描画処理部26と、各種画像を表示するための表示装置27と、テレビ(TV)受信機28a、DVDプレーヤ28b、バックモニタシステム28c等の各種映像・音声ソースからなる外部映像機器28と、上述の各部を統括制御するナビゲーション制御部29とを備えている。
【0026】
位置検出器21は、GPS(Global Positioning System)用の人工衛星からの送信電波をGPSアンテナを介して受信し、車両の位置等を検出するGPS受信機と、車両に加えられる回転運動の大きさを検出するジャイロスコープと、車両の走行した距離を検出するための距離センサ等を備えている。そして、これら各センサ等は、各々が性質の異なる誤差を有しているため、互いに補完しながら使用するように構成されている。
【0027】
操作スイッチ群22は、表示装置27と一体に構成され表示面上に設置されるタッチパネル及び表示装置27の周囲に設けられたメカニカルなキースイッチ等が用いられる。
ハードディスクドライブ23は、情報を記憶するハードディスクと、ハードディスクに対して情報を読み書きするための磁気ヘッド、駆動部、制御部等からなるコントローラとが一体となった記憶装置である。ハードディスクドライブ23は、ナビゲーション制御部29からの制御に基づいてハードディスクからデータを読み出し、これをナビゲーション制御部29へ入力する。ハードディスクドライブ23が記憶しているデータは、マップマッチング、経路探索、経路誘導等に用いる道路データ、地図表示に必要な各種データからなる描画データ等からなる地図データや、経路案内用データ、GUIを構成するアイコンやスイッチ、各種シンボルマーク、メッセージ等からなる意匠画像データ、車載マルチメディアシステム1作動のためのプログラム等を含む各種データである。なお、このハードディスクドライブ23は、高度5000m以下、又は0.5気圧以上での使用環境において正常な作動が保証されているものと想定する。
【0028】
外部メモリ24は、ハードディスクドライブ23に記憶されている意匠画像データの一部や、高高地判定エリアデータ(詳細は後述する)等の各種データを記憶するためのものである。この外部メモリ24には、電気的又は磁気的に記憶内容を書き換え可能で、かつ、電源を切っても記憶内容を保持できる記憶装置(例えば、不揮発性半導体メモリ等)を用いる。
【0029】
音声出力装置25は、ナビゲーション制御部29が実行する処理の結果としてのガイド音声や、外部映像機器28等から出力された音声信号に基づく音声を出力する。
描画処理部26は、外部映像機器28及びナビゲーション制御部29からの出力情報に基づいて画像を描画し、この描画した画像を映像信号として表示装置へ出力する。
【0030】
表示装置27は、液晶ディスプレイ等の表示面を有するカラー表示装置であり、描画処理部26からの映像信号の入力に応じて各種画像を表示面に表示可能である。例えば、車両が走行中においては、ナビゲーション画面として位置検出器21にて検出した車両の現在位置とハードディスクドライブ23等から入力された地図データとから特定した現在地を示すマーク、目的地までの誘導経路、名称、目印、各種ランドマークのシンボル等の付加データとが重ねて表示される。また、表示装置27は、外部映像機器28から出力された映像や、車載マルチメディアシステム1の各機能を操作するためのタッチパネル式の操作パネルを構成するスイッチやアイコン、シンボルマーク等の各種画像を表示できる。
【0031】
テレビ受信機28aは、アンテナ(図示なし)を介して受信したテレビ放送電波を検波し、得られた映像信号を描画処理部26へ出力する。
DVDプレーヤ28bは、映像・音声を記録したDVD(例えば、DVD‐Video)を再生するためのものであり、DVDプレーヤ28bにより読み出された映像データは、描画処理部26へ出力される。
【0032】
バックモニタシステム28cは、車両が後進する際に、車両後方を映し出す車載カメラ(図示なし)による撮像画像を車両の後進時に表示することで運転支援を行うためのものである。車載カメラによる撮像画像には、この撮像画像に基づく画像処理等で得られたガイド表示が重畳されることで運転支援画像が生成される。バックモニタシステム28cにより生成された運転支援画像の映像信号は、描画処理部26へ出力される。
【0033】
ナビゲーション制御部29は、CPU,ROM,RAM,I/O及びこれらの構成を接続するバスライン等からなる周知のマイクロコンピュータを中心に構成されており、上述した各部構成を制御する。このナビゲーション制御部29は、ROMやハードディスクドライブ23、外部メモリ24等から読み込んだプログラムや各種データに従ってナビゲーションや映像・音声出力、エアコン等の車載機器制御等に関する種々の処理を実行する。
【0034】
例えば、ナビゲーション関係の処理としては、地図表示処理や経路案内処理等が挙げられる。地図表示処理は、位置検出器21からの各検出信号に基づいて車両の現在位置を算出し、ハードディスクドライブ23から読み込んだ現在位置付近の地図等を表示装置27に表示する処理である。また、経路案内処理は、ハードディスクドライブ23に格納された地点データと、操作スイッチ群22等の操作に従って設定された目的地とに基づいて、現在位置から目的地までの最適な経路である目的地経路を算出し、現在位置と目的地経路との関係を考慮して目的までの走行案内を行う処理である。このように自動的に最適な経路を設定する手法として、ダイクストラ法によるコスト計算等の手法が知られている。
【0035】
また、車載マルチメディアシステム1は、ハードディスクドライブ23の正常な作動が保証されている高度の上限(5000m)を超える高高地での使用が想定されている。そのため、ナビゲーション制御部29は、車両の走行中に高度5000m以上の高高地に到達した場合、ハードディスクドライブ23の作動を禁止し、高高地でハードディスクドライブ23を作動させることによる破損を防止する。
【0036】
一方、映像・音声出力に関係する処理としては、テレビ受信機28a、DVDプレーヤ28b、バックモニタシステム28c等の各種映像・音声ソースのうち、優先度が高く設定されているもの、あるいはユーザによって選択されたものからの映像・音声信号に基づく映像・音声を表示装置27及び音声出力装置25から出力する処理がある。例えば、テレビ放送が選択されている場合、テレビ受信機28aを介して受信したテレビ画像及び音声が出力される。また、車両が後進する際には、自動的にバックモニタシステム28cによる映像出力に切り替え、バックモニタシステム28cによる運転支援画像を表示する。
【0037】
一方、エアコン等の車載機器制御に関係する処理としては、車載機器を操作するための操作スイッチやアイコン、シンボルマーク等を表示装置27に表示し、ユーザから受け付けた操作指示に応じて車載機器を制御する処理がある。例えば、エアコンの制御であれば、運転/停止、風量/温度調節等の各種操作を行うための操作スイッチ等を表示し、ユーザから受け付けた操作指示に応じてエアコンを制御する。
【0038】
さらに、ナビゲーション制御部29は、本発明の特徴的な処理として、車両の走行中において次のような「高高地表示制御処理」を実行する。ナビゲーション制御部29は、現在位置が高高地エリアに該当すると判定した場合、現在表示中の画像がハードディスクドライブ23停止中に表示を継続できるものであるか否かを判定する。このとき、例えばハードディスクドライブ23に格納されている地図データに基づく地図画像を表示している場合、高高地でハードディスクドライブ23が停止している状態では、地図表示を継続できなくなる。よって、この場合、外部メモリ24に記憶されている意匠画像データに基づく画像、あるいは外部映像機器28による映像の中から表示すべき画像を選択し、この選択した画像へと表示を切り替える。この「高高地表示制御処理」の詳細な内容については後述する。
【0039】
なお、外部メモリ24には、ハードディスクドライブ23に記憶されている意匠画像データのうち、高高地での使用が想定されている機能(例えば、エアコン等の車載機器の操作)に用いられる一部の意匠画像データが予め記憶されている。また、外部メモリ24に記憶させる意匠画像データは、外部メモリ24の容量によっては、ハードディスクドライブ23に記憶されているオリジナルの意匠画像データからデータ量を低減したものを記憶させておき、オリジナルの意匠画像データの変わりに用いてもよい。
【0040】
以上、車載マルチメディアシステム1の概略構成について説明したが、本実施形態における車載マルチメディアシステム1の構成と特許請求の範囲に記載した構成との対応は次のとおりである。本実施形態における車載マルチメディアシステム1の外部メモリ24が、特許請求の範囲における記憶手段に相当する。また、位置検出手段21及びナビゲーション制御部29が、高度検知手段に相当する。また、ナビゲーション制御部29が、制御手段に相当する。
【0041】
[2.ナビゲーション制御部29が実行する「高高地表示制御処理」の説明]
以下、ナビゲーション制御部29が実行する「高高地表示制御処理」の詳細な内容について、図2のフローチャート及び図3,4の説明図に基づいて説明する。
【0042】
図2は、「高高地表示制御処理」の手順を示すフローチャートである。この処置は、車両の走行中において上述の地図表示処理や経路案内処理等の各種処理と並行して実行される。
【0043】
ナビゲーション制御部29は、まず、位置検出器21からの入力信号に基づいて車両の現在位置を検出する(S110)。そして、この検出した現在位置を、外部メモリ24に記憶されている高高地判定エリアデータに照合する(S120)。
【0044】
ここで、高高地判定エリアデータについて、図3に基づき説明する。図3は、高高地判定エリアデータの概要を模式的に示す説明図である。高高地判定エリアデータは、地図座標平面を所定の緯度・経度ごとに区切ったメッシュ状の分割エリアに対して、それぞれ高高地エリアであるか否かを識別するための符号を割り当てたデータである。
【0045】
例えば、図3(a)に示すように、緯度・経度の座標(X1,Y1),(X2,Y1),(X1,Y2),(X2,Y2)を頂点とする地図座標領域の中央付近において、高度5000m以上の高高度地域が斑状に分布すると仮定する。この地図座標領域に対応する高高地判定エリアデータを作成する場合、この地図座標領域をさらに細かく分割した分割エリアを定義する。そして、図3(b)に示すように、高度5000m以上の高高度地域が一部でも含まれる分割エリアに対しては、当該分割エリアが高高地エリアである旨を示す「1」の符号を割り当てる。一方、高度5000m以上の高高度地域が含まれない分割エリアに対しては、当該分割エリアが高高地エリア以外である旨を示す「0」の符号を割り当てる。このようにして定義される高高地判定エリアデータは、ハードディスクドライブ23に格納されている地図データで示される地図座標領域の一部又は全部について、この地図座標領域を分割した個々の分割エリアごとに高高地エリアであるか否かを定義するテーブルデータとして外部メモリ24に予め格納されている。
【0046】
図2の説明に戻る。上述のS120においては、高高地判定エリアデータのテーブルから、S110で検出した現在位置の座標に該当する分割エリアの部分を参照し、この分割エリアに割り当てられた符号(「1」,「0」)を読み取る。そして、高高地判定エリアデータを参照した結果に基づき、現在位置が高高地エリアに該当するか否かを判定する(S130)。ここで、現在位置が高高地エリアに該当しないと判定した場合(S130:NO)、すなわち、現在位置に該当する分割エリアの高高地判定エリアデータが「0」を示す場合、S110の処理へ戻る。
【0047】
一方、現在位置が高高地エリアに該当すると判定した場合(S130:YES)、すなわち、現在位置に該当する分割エリアの高高地判定エリアデータが「1」を示す場合、現在画面に表示中の画像が、ハードディスクドライブ23の停止中に表示を継続できないものであるか否かを判定する(S140)。ここでは、例えば、ハードディスクドライブ23から読み出した地図データに基づいて現在位置周辺の地図を表示している場合のように、ハードディスクドライブ23から読み出したデータに基づく画像の表示を行っている場合、ハードディスクドライブ23の停止中においては、次に表示する画像データを読み出すことができなくなる。よって、この場合は、ハードディスクドライブ23の停止中に表示を継続できないものであると判定する。これに対して、例えば、テレビ受信機28aやDVDプレーヤ28b、バックモニタシステム28c等からの映像を表示している場合、ハードディスクドライブ23の停止中にも画像の表示を継続できるものとして判断する。
【0048】
S140で、現在画面に表示中の画像がハードディスクドライブ23の停止中に表示を継続できるものであると判定した場合(S140:NO)、S110の処理へ戻る。一方、現在表示中の画像がハードディスクドライブ23の停止中に表示を継続できないものであると判定した場合(S140:YES)、表示の切り替え先となる画像を選択する(S150)。なお、表示の切り替え先となる画像は、外部メモリ24に記憶されている意匠画像データによって構成される画像、あるいは外部映像機器28から出力される画像の中から選択される。
【0049】
具体的には、ユーザにとって情報の必要性が高く、表示の優先度が高く設定されている映像ソースからの映像信号の入力があれば、自動的にそれを切り替え先の画像として選択する。例えば、バックモニタシステム28cのように安全運転に関わる機器からの映像や、エアコンのように車内の快適性の維持のために重要でかつ使用頻度の高い機能を操作するための操作スイッチ類の画像等が、自動的に選択される画像として好適であると考えられる。
【0050】
あるいは、表示の切り替え先の画像をユーザからの選択によって決定してもよい。その場合、図4に示すようなメッセージを表示装置27に表示したり、同様のメッセージを音声出力装置25により音声で出力することで、切り替え先の表示画面を指定する操作の入力をユーザに促し、操作スイッチ群22を介してユーザからの選択指示を受け付ける。例えば、テレビ受信機28aやDVDプレーヤ28b等の視聴覚機器からの映像のように、娯楽性の高い機器からの映像等が、ユーザからの選択によって表示の切り替え先に決定される画像として好適であると考えられる。
【0051】
S150で表示の切り替え先の画像を選択した後、この選択した画像が、外部映像機器28による映像(外部映像)であるか、意匠画像データを用いて構成される画像(意匠画像)であるかを判定する(S160)。
【0052】
ここで、表示の切り替え先として選択した画像が、意匠画像データを用いて構成される意匠画像(例えば、エアコン等の操作画面)であると判定した場合(S160:意匠画像)、この画像の表示に必要な意匠画像データを外部メモリ24から読み出し(S170)、読み出した意匠画像データに基づく意匠画像を、描画処理部26を通じて表示装置27に表示する(S190)。
【0053】
一方、表示の切り替え先として選択した画像が、外部映像機器28による映像であると判定した場合(S160:外部映像)、描画処理部26を通じて当該外部映像機器28から出力される映像へ表示を切り替える(S180)。
【0054】
[3.効果]
実施形態の車載マルチメディアシステム1によれば、以下のような効果を奏する。
高高地でハードディスクドライブ23を停止させている最中であっても、高高地での使用が想定された機能に用いられる一部の意匠画像データを予め記録した外部メモリ24にアクセスすることで、意匠画像表示することができ、高高地での車載マルチメディアシステム1の信頼性・利便性が向上する。
【0055】
また、外部映像機器28から出力される映像に切り替えることも可能であり、ハードディスクドライブ23の作動が制限される高高度において、ハードディスクドライブ23に依らない画像表示への切り替えを多様に行うことができる。
【0056】
[4.別実施形態]
以上、本発明の実施形態について説明したが、本発明は上記の実施形態に何ら限定されるものではなく、様々な態様にて実施することが可能である。
【0057】
例えば、本発明は、上記実施形態の車載マルチメディアシステム1に限らず、ハードディスクドライブを外部記憶装置として用いるカーオーディオ等の車載装置にも適用可能である。
【0058】
また、上記実施形態では、ハードディスクドライブ23に記憶されている意匠画像データの一部を外部メモリ24に記憶していたが、意匠画像データに限らず、高高地での作動が想定されている機能で用いられるガイド音声等の音声データを、外部メモリ24に記憶しておくような構成であってもよい。このようにすることで、高高地においてハードディスクドライブ23を停止した場合、意匠画像データと同様に、この外部メモリ24から読み出した音声データに基づいて、高高地においてもガイド音声を出力できる。
【0059】
また、現在地の高度を取得する手順として、位置検出器21のGPS受信機が4基以上のGPS衛星から電波信号を捉えられるような状況であれば、この受信した電波信号に基づく三次元測位により高度を特定して、現在位置が高高地であるか否かを判定するような構成であってもよい。また、気圧センサ等により計測した気圧によって高度を特定するような構成であってもよい。
【図面の簡単な説明】
【0060】
【図1】実施形態の車載マルチメディアシステム1の概略構成を示すブロック図である。
【図2】「高高地表示制御処理」の手順を示すフローチャートである。
【図3】高高地判定エリアデータの概要を模式的に示す説明図である。
【図4】ユーザに対して表示画面の切り替え操作を促すためのメッセージに一例を示す説明図である。
【符号の説明】
【0061】
1…車載マルチメディアシステム、21…位置検出器、22…操作スイッチ群、23…ハードディスクドライブ、24…外部メモリ、25…音声出力装置、26…描画処理部、27…表示装置、28…外部映像機器、28a…テレビ受信機、28b…DVDプレーヤ、28c…バックモニタシステム、29…ナビゲーション制御部。

【特許請求の範囲】
【請求項1】
外部記憶装置としてハードディスクドライブを備え、このハードディスクドライブから読み出したデータに基づいて画像表示又は音声出力に関する所定の処理を行い、さらに、所定の高度以上である高高地においては前記ハードディスクドライブの作動を禁止する機能を有する車載装置であって、
前記ハードディスクドライブは、意匠画像の表示に用いる意匠画像データ、又は音声出力に用いる音声データである出力用データを記憶しており、
前記ハードディスクドライブに記憶されている出力用データのうち、前記高高地での前記ハードディスクドライブ停止中に使用が想定されている一部の出力用データ、又は、これに相当する出力用データであって、前記ハードディスクドライブに記憶されているものよりデータ量を低減した出力用データを記憶する記憶手段と、
現在位置の高度が前記所定の高高度以上であるか否かを検知する高度検知手段と、
前記高度検知手段により現在位置の高度が所定の高高度以上であると判定された場合、従前に出力していた画像又は音声から、前記記憶手段から読み出した出力用データに基づく意匠画像又は音声へと出力を切り替える制御手段とを備えること
を特徴とする車載装置。
【請求項2】
請求項1に記載の車載装置において、
前記制御手段は、現在位置の高度が所定の高高地以上であると判定された場合、切り替え先の画像又は音声をユーザからの指示により決定し、この決定した画像又は音声の表示に用いる前記出力用データを前記記憶手段から読み出し、この読み出した出力用データに基づく意匠画像又は音声の出力を行うこと
を特徴とする車載装置。
【請求項3】
請求項1又は請求項2に記載の車載装置において、
前記ハードディスクドライブに記憶されているデータに依らない外部映像・音声ソースからのデータに基づく画像又は音声を出力可能に構成されており、
前記制御手段は、現在位置の高度が所定の高高地以上であると判定された場合、前記記憶手段に記憶されている出力用データに基づく意匠画像又は音声、あるいは前記外部映像・音声ソースからのデータに基づく画像又は音声の何れかへ、自動又はユーザからの指示により選択的に切り替えること
を特徴とする車載装置。
【請求項4】
請求項3に記載の車載装置であって、
前記ハードディスクドライブは、地図データ、プログラム及び前記出力用データを記憶しており、このハードディスクドライブから読み出した地図データに基づいて目的地までの経路案内を行うナビゲーション機能を備える共に、前記外部映像・音声ソースからのデータに基づく画像又は音声を出力可能に構成された車載マルチメディアシステム。
【請求項5】
請求項1ないし請求項3の何れか1項に記載の車載装置に用いられるコンピュータを制御するためプログラムであって、当該コンピュータを前記制御手段として機能させるためのプログラム。

【図1】
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【図2】
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【図4】
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【図3】
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【公開番号】特開2009−80041(P2009−80041A)
【公開日】平成21年4月16日(2009.4.16)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2007−250008(P2007−250008)
【出願日】平成19年9月26日(2007.9.26)
【出願人】(000004260)株式会社デンソー (27,639)
【Fターム(参考)】