説明

車載装置用動力システム

【課題】車載装置を動作させたまま駆動源変更を円滑に可能な車載装置用動力システムを提供する。
【解決手段】エンジン11の動力を駆動軸12から得る第1補助出力軸23と、駆動軸12及び第1補助出力軸23の接続又は解除を行うクラッチ22と、第1補助出力軸23により駆動されるポンプ24と、それにより作動する圧力機器25とを具備する車載装置2に適用される車載装置用動力システム3であって、クラッチ制御部35と、第1補助出力軸23に連結されたモータ41と、エンジン回転速度検出部51と、その検出値を基に制御するエンジン制御部34と、モータ回転速度検出部52と、モータトルク検出部53と、それらからの検出値を基に制御するモータ制御部37と、クラッチ制御部35、エンジン制御部34及びモータ制御部36の各々に指令を出す基本指令部31とを備えるように構成した。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、塵芥収集車や高所作業車等の作業用車両に搭載される車載装置を作動させるための車載装置用動力システムに関するものである。
【背景技術】
【0002】
従来より、作業用車両として塵芥収集車、高所作業車、タンクローリ車などの様々なタイプのものが知られている。こうした作業用車両は、車両に対して目的に応じた形式の車載装置が搭載されることによって構成されるものであるが、これらの車載装置は大出力を要するものが大半であるために、油圧ポンプを駆動源とする油圧機器をアクチュエータとして用いることによって構成されているものが多い。当該油圧ポンプを駆動する動力を得るために、従来は車両を駆動するためのエンジンによる駆動力を補助出力軸を介して分配していたが、燃料消費の抑制、二酸化炭素の排出量削減および騒音対策等の環境問題を考慮して電動モータを利用することが提案されている。
【0003】
上記電動モータを利用して車載装置を駆動する構成としては、例えば、下記特許文献1に記載されるものが知られている。このものは、車載装置を駆動するためにエンジンと電動モータの何れか、若しくは、両者を併用して一個の油圧ポンプを動作させることができるように構成されている。このように構成しておくことで、通常は電動モータによって油圧ポンプを駆動させ、バッテリの残量が不足した際にはエンジンの駆動力を利用することで長時間連続運転させることも可能になる。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【特許文献1】特開2005−329871号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
上述の特許文献1を始め、従来開示されているエンジンと電動モータとを駆動源として利用する車載装置用の動力システムにおいては、駆動源をエンジンと電動モータとの間で円滑に切替えるといった観点での技術については開示されていない。そのため、これまでに開示されている車載装置用の動力システムを用いる場合には、駆動源の切替に際しては一旦油圧ポンプの動作を停止させた上で、油圧ポンプとの接続を変更してから再度油圧ポンプを始動させることを前提にしているものといえる。
【0006】
しかしながら、上記作業用車両の中でも消防活動に用いる車両等、車載装置の運転停止による作業の中断をできる限り避ける必要のあるものがあり、油圧ポンプの動作を継続したままで駆動源を変更することが要求されている。こうした要求に応えるため、上記特許文献1に記載された構成を用いて油圧ポンプの動作を継続したままで駆動源を変更させようとした場合には、上述のように駆動源の切替に関する配慮が何らなされていないため、駆動源の切替に際して衝撃が生じることによって、車載装置の動作速度が大きく変動したり、機器に損傷が生じたりすることが考えられる。
【0007】
本発明は、このような課題を有効に解決することを目的としており、具体的には、車載装置の駆動源の切替を、動作を継続させた状態で行えるようにすると同時に、その切替を
円滑に行うことができる車載装置用動力システムを提供することを目的としている。
【課題を解決するための手段】
【0008】
本発明は、かかる目的を達成するために、次のような手段を講じたものである。
【0009】
すなわち、本発明の車載装置用動力システムは、エンジンの動力を伝達する出力軸から動力を分配する第1補助出力軸と、前記出力軸および前記第1補助出力軸の接続または接続解除を行うクラッチと、前記第1補助出力軸により駆動されるポンプと、当該ポンプによって送り出される圧力媒体によって作動する圧力機器とを具備する車載装置に適用されるものであって、前記クラッチの動作を制御するクラッチ制御部と、前記第1補助出力軸に連結され同期回転するモータと、前記エンジンの回転速度を検出するエンジン回転速度検出部と、当該エンジン回転速度検出部からの検出値を監視しつつ前記エンジンを回転させるエンジン制御部と、前記モータの回転速度を検出するモータ回転速度検出部と、前記モータのトルクを検出するモータトルク検出部と、それらモータ回転速度検出部およびモータトルク検出部の少なくともいずれか一方からの検出値を監視しつつ前記モータを回転させるモータ制御部と、前記ポンプの駆動源を切替えるために前記エンジンと前記モータの回転を連動させつつ前記クラッチの接続または接続解除を行うように前記クラッチ制御部、前記エンジン制御部および前記モータ制御部のそれぞれに指令を出す基本指令部とを備えたことを特徴とする。
【0010】
このように構成すると、モータ制御部と、エンジン制御部によって各々モータとエンジンの基本的な動作を制御させつつ、基本指令部によってこれらを統合して監視しつつ連動させて制御するとともに、クラッチの制御を行わせることで、車載装置を動作させたまま駆動源の切替を行うことができるとともに、その切替を円滑に行うことが可能になる。
【0011】
さらに、車載装置を動作させたまま、駆動源をモータからエンジンに切替える際の衝撃を抑え、車載装置の動作速度の変動を抑制するためには、前記ポンプの駆動源を前記モータから前記エンジンに切替える際に、前記基本指令部より前記モータ制御部に対して前記モータを速度制御方式によって同一の回転速度で回転させるよう命令するステップと、前記基本指令部より前記エンジン制御部に対して前記エンジンを速度制御方式によって前記モータの回転速度に相当する目標回転速度となるまで昇速させるように命令するステップと、前記基本指令部が前記エンジンの回転速度の前記目標回転速度への到達を検知するステップと、前記基本指令部が前記モータ制御部に対して前記モータの制御をトルク制御方式に変更して前記モータを同一の回転トルクで回転させるように命令するステップと前記基本指令部が前記クラッチ制御部に対して前記クラッチを接続させるように命令するステップと、前記基本指令部が前記モータ制御部に対して前記モータの回転トルクを漸減させていくように命令するステップとを順次実行するように構成されていることが好適である。
【0012】
また、車載装置を動作させたまま、駆動源をエンジンからモータに切替える際の衝撃を抑え、車載装置の動作速度の変動を抑制するためには、前記ポンプの駆動源を前記エンジンから前記モータに切替える際に、前記基本指令部により前記エンジン制御部に対して前記エンジンを速度制御方式によって同一の回転速度で回転させるように命令するステップと、前記基本指令部により前記モータ制御部に対して前記モータをトルク制御方式によって回転させて目標回転トルクとなるまで回転トルクを増大させるように命令するステップと、前記基本指令部が前記モータの回転トルクの前記目標回転トルクへの到達を検知するステップと、前記基本指令部が前記モータ制御部に対して前記モータの制御を速度制御方式に変更して前記モータを同一の回転速度で回転させるように命令するステップと、前記基本指令部が前記クラッチ制御部に対して前記クラッチの接続を解除させるように命令するステップとを順次実行するように構成されていることが好適である。
【0013】
また、上記モータが電動モータであることを前提とした場合に、状況に応じて車載装置用バッテリの電気回路の接続先を適宜切替え、電源供給させる場合と、充電させる場合とを適切に変更できるようにするためには、前記モータ制御部からの指令に基づき前記モータを回転させるインバータと、当該インバータを介して前記モータを駆動するための電気を供給する車載装置用バッテリとを具備するとともに、前記モータが前記第1補助出力軸を介して前記エンジンの駆動力によって駆動されることで電気を発生し、その電気を変換して前記車載装置用バッテリに蓄えるための第1充電コントローラと、車両用バッテリを充電するために前記エンジンによって第2補助出力軸を介して駆動される発電機により発生する電気を変換して前記車載装置用バッテリに蓄えるための第2充電コントローラと、商用電源より入力された電気を変換して前記車載装置用バッテリに蓄えるための第3充電コントローラとを備え、前記車載装置用バッテリの電気回路を、前記インバータと、前記第1充電コントローラと、前記第2充電コントローラと、前記第3充電コントローラのうちいずれかと接続した状態に、あるいは、いずれとも未接続の状態に切替えるためのバッテリ回路切替部を備えるように構成することが好適である。
【0014】
また、状況に応じてモータの電気回路の接続先を適切に切替えることができるようにするためには、前記モータの電気回路を、前記インバータおよび前記第1の充電コントローラのいずれかと接続した状態に、あるいはいずれとも未接続の状態に切替えるためのモータ回路切替部を備えるように構成することが好適である。
【0015】
さらに、バッテリの電池残量をオペレータに通知して適切な動作選択を促すようにするためには、前記車載装置用バッテリの電池残量を検知するバッテリ残量検出部を備えるとともに、当該バッテリ残量検出部によって前記車載装置用バッテリの満充電状態を検出した場合、あるいは、電池残量が所定値以下であることを検知した場合に報知する報知手段を備えるように構成することが好適である。
【発明の効果】
【0016】
以上説明した本発明によれば、車載装置の動作を継続させたまま駆動源の切替を行うことができるとともに、その切替を円滑に行うことができる車載装置用動力システムを提供することが可能となる。
【図面の簡単な説明】
【0017】
【図1】本発明の一実施形態に係る車載装置用動力システムの構成を示す模式図。
【図2】同車載装置用動力システムにおけるモータからエンジンへの駆動源切替時の処理手順を示すフローチャート。
【図3】同車載装置用動力システムにおけるエンジンからモータへの駆動源切替時の処理手順を示すフローチャート。
【図4】同車載装置用動力システムにおける車載装置用バッテリ電気回路の接続先決定の処理手順を示すフローチャート。
【発明を実施するための形態】
【0018】
以下、本発明の実施形態を、図面を参照して説明する。
【0019】
この実施形態の車載装置用動力システムは、図1に模式的に示したような構成を採り、車両1に搭載された車載装置2に対してエンジン11とモータ41という2つの手段によって動力を与えられるように構成されている。
【0020】
同図における車両1は、本発明に関連する部分のみを抽出する形で簡略化して記載しており、一般の車両と同様に、エンジン11と当該エンジン11によって駆動され外部に動力を取り出すための出力軸としての駆動軸12と、当該駆動軸12によって駆動される駆動輪13とを有している。さらにはエンジン11からの動力を分配する第2補助出力軸14を有するとともに、当該第2補助出力軸14によってベルト15を介して駆動される発電機16と、当該発電機16によって生じた電気を蓄える車両用バッテリ17とを備えている。この車両用バッテリ17は、図示しないスタータや方向指示器やワイパー等の車両を走行させるために必要な機器を動作させるために設けられているものであり、一般的な車両が有するものとほぼ同一である。
【0021】
こうした車両1に対して車載装置2が搭載されており、当該車載装置2はエンジン11の駆動力によって駆動される第1補助出力軸23と、当該第1補助出力軸23によって駆動されるポンプ24と、当該ポンプ24によって圧力媒体を送り込まれて動作する圧力機器25とを備えるように構成されている。本実施形態においては、ポンプ24は油圧ポンプを用いており圧力媒体として油を用いている。また、上記第1補助出力軸23への動力の伝達のため、エンジン11の駆動軸12に対して伝動機構21が設けられているとともに、当該伝動機構21と上記第1補助出力軸23の間にはクラッチ22が設けられており、クラッチ22によって上記伝動機構21を介して駆動軸12と第1補助出力軸23との接続および接続の解除を適宜選択して行うことができるようになっている。
【0022】
さらに、第1補助出力軸23にはベルト42と図示しない減速機を介してモータ41が接続されており、第1補助出力軸23をモータ41によって駆動することができるとともに、反対に第1補助出力軸23によってモータ41を回転させて発電を行わせることができるように構成している。
【0023】
本実施形態における車載装置用動力システム3は、上記モータ41とこれを動作させるための機器を含み、上記第1補助出力軸23を駆動させて圧力機器25に所望の動作をさせるための圧力媒体を送り込むことができる制御手段を備えるものとして構成されている。
【0024】
具体的には、上記モータ41としては電動IPMモータを使用するとともに、その動力源として車載装置用バッテリ44を備え、当該車載装置用バッテリ44より供給される電力を変換して上記モータ41を回転させるインバータ43を備えている。また、エンジン11の回転を制御するエンジン制御部34と、クラッチ22の動作を制御するクラッチ制御部35と、モータ41の回転を制御するモータ制御部36とを備えるとともに、これらを統合して制御するように各々に対して指令を出す基本指令部31を有している。また、基本指令部31に対しては、操作受付部32を通じてオペレータによる指示が入力されるように構成されており、当該指示に対応した制御指令が基本指令部31より各制御部34、35、36に与えられる。さらに、基本指令部31からは通知ランプの点灯や通知音の発生などを行う報知手段33を通じて、上記車載装置用バッテリ44の充電状態などの様々な状態をオペレータに対して通知できるようになっており、オペレータに対して操作を促したり操作に必要な判断材料を与えたりすることができるようになっている。
【0025】
ポンプ24の駆動源としてエンジン11を使用する際には、操作受付部32を介してオペレータより与えられる指令に基づいて、当該指令に対応する命令が基本指令部31よりエンジン制御部34に与えられる。エンジン制御部34では、エンジン回転速度(Ve)検出部51によって検出されるエンジン11の回転速度を監視しつつ、基本指令部31から与えられた指令値通りにエンジン11を動作させるように制御を行う。また、当該制御状態についての情報が、エンジン制御部34より基本指令部31に対して出力されるようになっている。
【0026】
また、ポンプ24の駆動源としてモータ41を使用する際には、操作受付部32を介してオペレータより与えられる指令に基づいて、当該指令に対応する命令が基本指令部31よりモータ制御部36に与えられる。モータ制御部36はモータ41の制御を行うため、速度制御方式とトルク制御方式の2つの制御方式を有しており、通常は速度制御方式を基本としているものの、後述するようにポンプ24の駆動源をエンジン11とモータ41との間で切替える際など、状況に応じてトルク制御方式を用いるように構成している。モータ41にはモータ回転速度(Vm)検出部52と、モータトルク(Tm)検出部53とが設けられており、これらから得られる検出値の少なくともいずれか一方を監視しつつモータ制御部36では、基本指令部31から与えられた指令値通りにモータ41を動作させるように制御を行う。さらには、当該制御状態についての情報が、モータ制御部36より基本指令部31に対して出力されるようになっている。本実施形態においては、モータ回転速度検出部52としてロータリーエンコーダを用いるとともに、モータトルク検出部53としてはインバータにおける駆動用電流の計測器を用いているが、モータ41の回転速度、トルクを測定できる限りこれらとは別の手段を用いることも可能である。
【0027】
上記のように、基本指令部31からの指示を基にしてエンジン11およびモータ41の駆動を制御するのと同様にして、クラッチ制御部35は基本指令部31からの指示を基にしてクラッチ22の動作を制御して、上記駆動軸12および第1補助出力軸22の接続または接続解除を行う。クラッチ22が接続されることによって、エンジン11、駆動軸12、第1補助出力軸22、ポンプ24およびモータ41は全て接続された状態となる。そのため、この状態においてはエンジン11を駆動源としてポンプ24を作動させるとともに、モータ41を回転させて発電させることができるようになる。他方、クラッチ22が接続解除されることによって、エンジン11と駆動軸12とが第1補助出力軸22との間で切り離され、第1補助出力軸23とポンプ24に対してモータ41のみが接続された状態となる。そのため、この状態ではポンプ24の駆動はモータ41のみが行うことができる。
【0028】
上述のモータ41の電気回路には2つのスイッチング回路SW1、SW2が設けられており、一方のスイッチング回路SW1をオンにするとモータ41の電気回路は上記インバータ43に接続されることで、モータ41をインバータ43によって駆動させることができるようになる。他方のスイッチング回路SW2をオンにするとモータ41の電気回路は第1充電コントローラ61に接続され、モータ41によって発電を行わせた場合に発生した電気を、第1充電コントローラ61を介して車載装置用バッテリ44に蓄えることができるようになっている。これらのスイッチング回路SW1、SW2はいずれか一方がオンにされるか、双方ともオフにされてモータ41の電気回路を何れに対しても未接続状態とするかの3つの接続パターンのうち何れかになるようにして回路の切替が行われる。こうした回路の切替は、上記基本指令部31からの指令に基づいてモータ回路切替部37によりスイッチング回路SW1、SW2を制御することによって行われるように構成されている。
【0029】
また、上記車載装置用バッテリ44の電気回路には4つのスイッチング回路SW3〜SW6が設けられており、これらのスイッチング回路SW3〜SW6のいずれかをオンにすることで、車載装置用バッテリ44により電気の供給を行わせる場合と、車載装置用バッテリ44に対して種々の手段で充電を行わせる場合とを切替えることができるようになっている。
【0030】
具体的には、スイッチング回路SW3をオンにすることで、当該車載装置用バッテリ44からインバータ43への電源供給が行えるようになる。上述したようにモータ41をインバータ43によって駆動させる場合には、モータ41を駆動させるエネルギの供給源はこの車載装置用バッテリ44になる。
【0031】
スイッチング回路SW4をオンにすると、車載装置用バッテリ44の電気回路は上述した第1充電コントローラ61に接続される。モータ41によって発電を行わせた場合には、前記スイッチング回路SW2をオンにすると共にスイッチング回路SW4をオンにすることで、第1充電コントローラ61を介して車載装置用バッテリ44に充電が行われる。なお、第1充電コントローラ61は、内部に交流から直流への変換機能と電圧変換機能とを備えており、適宜充電に適した状態に電圧及び電流値を制御しつつ車載装置用バッテリ44への充電を行わせることができるようになっている。
【0032】
スイッチング回路SW5をオンにすると、車載装置用バッテリ44の電気回路は第2充電コントローラ62に接続される。第2充電コントローラ62は、通常は車両用バッテリ17の充電を行う発電機16から電気を供給されて、車載装置用バッテリ44に対して充電を行うものであり、ポンプ24を起動しない状態で、かつ、エンジン11を起動させている状態の際に用いられる。すなわち、エンジン11のアイドリング状態や車両1の走行中の状態に該当する。本実施形態では車両用バッテリ17と車載装置用バッテリ44とで電圧が異なるものを使用としているため、第2充電コントローラ62には昇圧コンバータとしての機能も内蔵させ、適宜充電に適した状態に電圧及び電流値を制御しつつ車載装置用バッテリ44への充電を行わせることができるようになっている。
【0033】
スイッチング回路SW6をオンにすると、車載装置用バッテリ44の電気回路は第3充電コントローラ63に接続される。第3充電コントローラ63は、商用電源91より供給された電気によって車載装置用バッテリ44の充電を行うものであり、モータ41もエンジン11も起動していない状態で、かつ商用電源91との接続を行った場合に用いられる。なお、第3充電コントローラ63は、内部に交流から直流への変換機能と電圧変換機能とを有しており、適宜充電に適した状態に電圧及び電流値を制御しつつ車載装置用バッテリ44への充電を行わせることができるようになっている。
【0034】
上記のようにして、スイッチング回路SW3〜SW6の何れかをオンにすることで、車載装置用バッテリ44によりモータ41を駆動するための電気を供給させる場合と、車載装置用バッテリ44に対して充電を行わせる3つの充電手段とを切替えることができるとともに、何れにも接続しない未接続状態にすることができ、これら合計5つの接続パターンの何れかが選択されるようにして回路の切替が行われる。こうした回路の切替は、上記基本指令部31からの指令に基づいてバッテリ回路切替部38によりスイッチング回路SW3〜SW6を制御することによって行われるように構成されている。
【0035】
さらに、車載装置用バッテリ44にはバッテリ残量検出部54が接続されており、当該バッテリ残量検出部54では常時車載装置用バッテリ44の電池残量を検出しながら、当該検出値を基本指令部31に対して出力するようになっている。基本指令部31においては、入力された電池残量検出値を監視しつつ、これより満充電状態になっていることを検知した場合には報知手段33によって通知ランプの点灯、通知音の発生などで満充電状態を報知して、オペレータに次の操作判断を促すようになっている。また、当該報知を行った後に、オペレータからの操作受付部32を通じた充電停止の指示や、車載装置用バッテリ44を使用するモータ41の駆動などの指示がなく一定時間が経過した場合にも、自動的に充電停止を行うべく基本指令部31よりバッテリ回路切替部38に対して車載装置用バッテリ44の電気回路を未接続状態にするための命令を与えるように構成している。
【0036】
同様に、基本指令部31においては、入力された電池残量検出値により電池残量が一定値以下まで低下していることを検知した場合には、報知手段33によってバッテリ切れ警告ランプの点灯、警告音の発生などによりバッテリ切れを警告して、オペレータに次の操作判断を促すようになっている。この時、車載装置用バッテリ44によってモータ41を駆動させて車載装置2に作業を行わせている場合で、かつ、当該作業を継続させる必要がある場合には、オペレータは上記報知手段33によりバッテリ切れを把握することで、通常は操作受付部32を通じて命令を与えて車載装置2の駆動源をモータ41からエンジン11に切替えることになる。当該命令をオペレータが行わなかった場合には、一定時間経過後にモータ24の回転速度を徐々に減小させてからモータ24を停止させるようにしている。
【0037】
上記のように構成した車載装置用動力システム3を用いて、車載装置2に対して以下のようにして駆動力を与えることができる。
【0038】
まず、オペレータに対して報知手段33によって種々の機器情報が通知されるため、オペレータは当該通知を判断材料として車載装置2に行わせる動作を選択し、操作受付部32を通じて基本指令部31に対して命令を与える。
【0039】
オペレータは、車載装置2を動作させる場合には、まず操作受付部32によって操作電源をオンにした後、車載装置2の駆動源としてエンジン11とモータ41の何れかを選択して起動させる。こうした操作に対応して、適宜基本指令部31からクラッチ制御部35、モータ回路切替部37、バッテリ回路切替部38に命令を与えて適切な回路を形成した上で、エンジン制御部34またはモータ制御部36に命令を与えてエンジン11またはモータ41を駆動させることによってポンプ24を駆動させる。さらに、必要な圧力機器25の動作量を得るため、操作受付部32からの指示に従ってポンプ24を動作させるべく、エンジン制御部34またはモータ制御部36はエンジン回転速度またはモータ回転速度を監視しつつエンジン11またはモータ41の回転速度を制御していく。
【0040】
通常であれば、オペレータは環境負荷が少なくなるように、駆動源としてモータ41を選択して電気エネルギによって車載装置2を駆動する。そのためにも車載装置用バッテリ44は、作業前には常に満充電とされていることが好ましく、本実施形態のように数多くの充電手段を有するように構成することで充電の機会が増して利便性が向上し、頻繁に使用を行ったとしても電池切れの心配が少なくなる。
【0041】
しかしながら、電池残量は有限であるために車載装置2を長時間に渡って連続して駆動すると電池切れとなる恐れがある。電池残量が減少して一定値以下となり、車載装置用バッテリ44によって駆動できる時間が少なくなった場合には、上述したように報知手段33により、オペレータに対して警告が発せられる。オペレータがこれを認識しなかった場合等、そのまま報知していた場合には一定時間経過後にモータ41の回転数が徐々に減少していき、やがて停止するようにしてある。オペレータが上記警告を認識して、車載装置2を停止させる場合には操作受付部32によって停止信号を入力し、作業を継続させる必要がある場合には操作受付部32によって駆動源をモータ41よりエンジン11に切替えるための信号を入力する。当該切替信号が入力されることによって、基本指令部31は図2に示したフローチャートに従って各ステップを順次実行するように各部を統合して制御し、モータ41(図1参照)からエンジン11(図1参照)への駆動源の変更を円滑に行わせる。以下、その手順を、図1を参照しつつ図2を基にして説明する。
【0042】
具体的には、基本指令部31は、まず、切替信号を受け付けた後にエンジン11を起動するようにエンジン制御部34に指令を与え(ST001)、さらに、その時点におけるモータ41の回転速度に相当する速度を目標回転速度としてエンジン41を昇速させるように指令を出す(ST002)。そして、エンジン制御部34を介してエンジン11の回転速度が目標の回転速度に到達したことを検知(ST003)した後に、当該回転速度を維持するようにエンジン制御部34に命令する(ST004)。さらに、モータ41の制御方式を、その時の出力トルクを維持させたままでトルク制御に切替えるようにモータ制御部36に命令(ST005)した上で、クラッチ制御部35に対してクラッチを接続するように命令し(ST006)、その後モータ41の出力を漸減させていく(ST007)。クラッチ22の接続により、トルク制御であるモータ41は負荷が減るために増速を行おうとするが、速度制御であるエンジン11は一定回転速度を維持させようとするために減速方向に作用することで均衡が保たれ、すぐに一定回転速度とすることができる。当該クラッチ接続に際して、モータ41の電流値が過大に変化する場合に備えて、リミッタ回路を設けて制御範囲に制限を設けることも好適である。モータ41の出力トルクを漸減してゼロ以下となった後、換言すれば、モータ41が車載装置用バッテリ44の電気エネルギを用いずエンジン11の駆動力によって回転させられる状態となった後、基本指令部31はモータ41の電気回路の接続先を第1充電コントローラに切替える(SW2オン)ようにモータ回路切替部37に命令し(ST008)、車載装置用バッテリ44の電気回路の接続先を第1充電コントローラに切替える(SW4オン)ようにバッテリ回路切替部38に命令し(ST009)、モータ41によって発生する電気を車載装置用バッテリ44に充電できるようにする。このようにして、異なる駆動源を異なる制御方式を用いて駆動させつつ、1つの基本指令部31によって連動させるように統合して制御することで、車載装置2を停止させることなくポンプ24の速度変動を抑制しながら駆動源の切替を円滑に行わせることが可能となるとともに、速やかに車載装置用バッテリ44の充電を行わせて電池残量の回復までの時間短縮を図れるように構成している。
【0043】
上記とは逆に、ポンプ24をエンジン11によって駆動している最中に、駆動源をモータ41に切替えることも可能である。この際には、基本指令部31は図3に示したフローチャートに従って各ステップを順次実行するように各部を統合して制御し、エンジン11(図1参照)からモータ41(図1参照)への駆動源の変更を円滑に行わせる。以下、その手順を、図1を参照しつつ図3を基にして説明する。
【0044】
切替指令が入力された場合には、基本指令部31はバッテリ残量検出部54からの検出信号より、バッテリ残量が一定値以上であってモータ41を駆動するに足る十分な残量がある否かを判断し(ST101)、残量が不足している場合には駆動源切替指令を拒否して、その旨を報知手段33より報知する(ST110)。残量が十分と判断できれば、以下のようなステップで駆動源の切替えを行わせる。
【0045】
まず、エンジン11の回転速度を速度制御によって維持するようにエンジン制御部34に対して命令する(ST102)。さらに、車載装置用バッテリ44の電気回路の接続先をインバータ43に切替える(SW3オン)ようにバッテリ回路切替部38に命令し(ST103)、モータ41の電気回路の接続先をインバータ43に切替える(SW1オン)ようにモータ回路切替部37に命令する(ST104)。そして、エンジン11によって回転させられている状態であるモータ41をトルク制御として目標値となるまで回転トルクを漸増させていくようにモータ制御部36に対して命令する(ST105)。当該回転トルクの目標値は、ポンプ24の駆動定格トルクを基に事前に決定しておく。上記のように制御することでモータ41の出力は増大していくが、エンジン11は一定回転速度となるように制御されているためにポンプ24の回転速度はほとんど変化することがない。そして、モータ41の回転トルクが目標値に達したことをモータ制御部36を介して検知(ST106)した後に、クラッチ制御部35に対してクラッチ接続解除の命令を発し(ST107)、モータ41の制御方式を速度制御方式として通常運転させるようにモータ制御部36に命令して(ST108)、エンジン11を停止するようエンジン制御部34に命令する(ST109)。
【0046】
このようにして、駆動源をエンジン11からモータ41に変更する場合であっても、車載装置2を停止させることなくポンプ24の速度変動を抑制しながら円滑に行わせることが可能となっている。
【0047】
また、本車載装置用動力システム3は、上述したように、電池残量の少なくなった車載装置用バッテリ44を速やかに充電できるように3つの充電手段を有し、適宜車載装置用バッテリ44の電気回路の接続先を変更できるようにしている。基本指令部2は図3に示したフローチャートに従って各ステップに示した判断を順次実行するようにして、適切な電気回路を選択し、当該選択に対応するようにバッテリ回路切替部38(図1参照)に命令を与えるようにしてある。以下、その判断手順を、図1を参照しつつ図3を基にして説明する。
【0048】
まず、モータ41によりポンプ24を駆動させる状態であるか否かを判断し(ST201)、当該状態に該当する場合には車載装置用バッテリ44をインバータ43に接続(SW3オン)するようバッテリ回路切替部38に命令する(ST207)。それ以外の場合には次の判断に移行し、車載装置用バッテリ44が満充電状態であって充電が不要か否かを判断する(ST202)。充電が不要と判断できれば、車載装置用バッテリ44の電気回路に対する全ての接続を遮断して(SW3〜6オフ)、未接続状態とすべくバッテリ回路切替部38に命令する(ST205)。充電が必要な状態であれば、次のステップ(ST203)に移行する。ここでは、エンジン11によってポンプ24を駆動しており、共にモータ41が駆動されている状態であるかを判断する。当該状態であれば、車載装置用バッテリ44を第1充電コントローラ61に接続(SW4オン)して、モータ41により発生する電気を車載装置用バッテリ44に充電する(ST208)。それ以外の状態であれば、エンジン11が動作中であるか否かを検出して(ST204)、動作中であれば車載装置用バッテリ44を第2充電コントローラ62に接続(SW5オン)して、発電機16により発生する電気を車載装置用バッテリ44に充電する(ST209)。それ以外の状態であれば、商用電源91に接続されているかを否かを判断して(ST205)、接続されている状態であれば車載装置用バッテリ44を第3充電コントローラ63に接続(SW6オン)して、商用電源から得られる電気を車載装置用バッテリ44に充電する(ST210)。それ以外の場合には、車載装置用バッテリ44の電気回路に対する全ての接続を遮断して(SW3〜6オフ)、未接続状態とすべくバッテリ回路切替部38に命令する(ST205)。
【0049】
このようにして、基本指令部31が各部の状況を監視しつつ、適切に車載装置用バッテリ44に対して電力供給や充電の管理を行うことができるため、簡便かつ効率的に運用を行うことが可能となっている。
【0050】
以上のように、本実施形態における車載装置用動力システム3は、エンジン11の動力を伝達する駆動軸12から動力を分配する第1補助出力軸23と、前記駆動軸12および前記第1補助出力軸23の接続または接続解除を行うクラッチ22と、前記第1補助出力軸23により駆動されるポンプ24と、当該ポンプ24によって送り出される圧力媒体によって作動する圧力機器25とを具備する車載装置2に適用されるものであって、前記クラッチ22の動作を制御するクラッチ制御部35と、前記第1補助出力軸23に連結され同期回転するモータ41と、前記エンジン11の回転速度を検出するエンジン回転速度検出部51と、当該エンジン回転速度検出部51からの検出値を監視しつつ前記エンジン11を回転させるエンジン制御部34と、前記モータ41の回転速度を検出するモータ回転速度検出部52と、前記モータ41のトルクを検出するモータトルク検出部53と、それらモータ回転速度検出部52およびモータトルク検出部53の少なくともいずれか一方からの検出値を監視しつつ前記モータ41を回転させるモータ制御部37と、前記ポンプ24の駆動源を切替えるために前記エンジン11と前記モータ41の回転を連動させつつ前記クラッチ22の接続または接続解除を行うように前記クラッチ制御部35、前記エンジン制御部34および前記モータ制御部36のそれぞれに指令を出す基本指令部31とを備えるように構成したものである。
【0051】
このように構成しているため、モータ41とエンジン11の動作を監視しつつそれらの動作を制御するとともに、クラッチ22の制御を行わせることによって、車載装置2を動作させたままで駆動源の切替ができるとともに、その切替を円滑に行うことが可能になる。
【0052】
また、前記ポンプ24の駆動源を前記モータ41から前記エンジン11に切替える際に、前記基本指令部31より前記モータ制御部36に対して前記モータ41を速度制御方式によって同一の回転速度で回転させるよう命令するステップと、前記基本指令部31より前記エンジン制御部34に対して前記エンジン11を速度制御方式によって前記モータ41の回転速度に相当する目標回転速度となるまで昇速させるように命令するステップと、前記基本指令部31が前記エンジン11の回転速度の前記目標回転速度への到達を検知するステップと、前記基本指令部31が前記モータ制御部36に対して前記モータ41の制御をトルク制御方式に変更して前記モータ41を同一の回転トルクで回転させるように命令するステップと、前記基本指令部31が前記クラッチ制御部35に対して前記クラッチ22を接続させるように命令するステップと、前記基本指令部31が前記モータ制御部36に対して前記モータ41の回転トルクを漸減させていくように命令するステップとを順次実行するように構成しているため、車載装置2を動作させたまま、駆動源をモータ41からエンジン11に切替える際に、ポンプ24の速度変動を抑制することができ、車載装置2の動作速度の変動を小さくすることが可能となる。
【0053】
さらに、前記ポンプ24の駆動源を前記エンジン11から前記モータ41に切替える際に、前記基本指令部31により前記エンジン制御部34に対して前記エンジン11を速度制御方式によって同一の回転速度で回転させるように命令するステップと、前記基本指令部31により前記モータ制御部36に対して前記モータ41をトルク制御方式によって回転させて目標回転トルクとなるまで回転トルクを増大させるように命令するステップと、前記基本指令部31が前記モータ41の回転トルクの前記目標回転トルクへの到達を検知するステップと、前記基本指令部31が前記モータ制御部36に対して前記モータ41の制御を速度制御方式に変更して前記モータ41を同一の回転速度で回転させるように命令するステップと、前記基本指令部31が前記クラッチ制御部35に対して前記クラッチ22の接続を解除させるように命令するステップとを順次実行するように構成しているため、車載装置2を動作させたまま、駆動源をエンジン11からモータ41に切替える際に、ポンプ24の速度変動を抑制することができ、車載装置2の動作速度の変動を小さくすることが可能となる。
【0054】
また、前記モータ制御部36からの指令に基づき前記モータ41を回転させるインバータ43と、当該インバータ43を介して前記モータ41を駆動するための電気を供給する車載装置用バッテリ44とを具備するとともに、前記モータ41が前記第1補助出力軸23を介して前記エンジン11の駆動力によって駆動されることで電気を発生し、その電気を変換して前記車載装置用バッテリ44に蓄えるための第1充電コントローラ61と、車両用バッテリ17を充電するために前記エンジン11によって第2補助出力軸14を介して駆動される発電機16により発生する電気を変換して前記車載装置用バッテリ44に蓄えるための第2充電コントローラ62と、商用電源91より入力された電気を変換して前記車載装置用バッテリ44に蓄えるための第3充電コントローラ63とを備え、前記車載装置用バッテリ44の電気回路を、前記インバータ43と、前記第1充電コントローラ61と、前記第2充電コントローラ62と、前記第3充電コントローラ63のうちいずれかと接続した状態に、あるいは、いずれとも未接続の状態に切替えるためのバッテリ回路切替部38を備えるように構成しているため、バッテリ回路切替部38によって、車載装置用バッテリ44の電気回路の接続先を適宜切替えることができ、モータ41を駆動させる場合や、種々の充電手段を適切に選択して充電を行わせることができる。
【0055】
また、前記モータ41の電気回路を、前記インバータ43および前記第1の充電コントローラ61のいずれかと接続した状態に、あるいはいずれとも未接続の状態に切替えるためのモータ回路切替部37を備えるように構成しているため、モータ回路切替部37によって、状態に応じてモータ41の電気回路の接続先を適宜切替えることができる。
【0056】
さらに、前記車載装置用バッテリ44の電池残量を検知するバッテリ残量検出部54を備えるとともに、当該バッテリ残量検出部54によって前記車載装置用バッテリ44の満充電状態を検出した場合、あるいは、電池残量が所定値以下であることを検出した場合に報知する報知手段33を備えるように構成しているため、車載装置用バッテリ44の電池残量を検知してその状態に応じて報知することができるため、オペレータに対して適切な動作選択を促すことができる。
【0057】
なお、各部の具体的な構成は、上述した実施形態のみに限定されるものではない。
例えば、上述の実施形態では、ポンプ24として油圧ポンプを用いて、ポンプ24から圧力機器25に対して送られる圧力媒体として油を用いていたが、車載装置2の形態および使用環境に応じて、別の種類のポンプや圧力媒体を用いることも可能であり、そのような場合でも上記と同様に本発明の効果を得ることが可能である。
【0058】
また、上述の実施形態では、車載装置2の駆動源の切替は、操作受付部32から与えられるオペレータによる指示を契機にして各ステップが順次実行されることで行われるように構成していたが、車載装置用バッテリ44の電池残量が一定の閾値以上となったこと、あるいは別の閾値以下となったことを検知することで、オペレータの操作を介することなく自動的に駆動源の切替が行われるように構成してもよく、そのように構成しても本発明の効果は上記と同様に得ることが可能である。
【0059】
さらには、上述の実施形態では、エンジン11から動力を取り出す出力軸として駆動輪を回転させる駆動軸12を用いていたが、ポンプ24を駆動させる第1補助出力軸23に対してエンジン11の動力を分配可能である回転軸である限り、当該出力軸は駆動軸12に限られない。例えば、フライホイールとミッションとを連結する中間軸や、プロペラシャフト等のエンジン11と連結されて回転する軸であれば、こうした軸と伝動機構21とを連結した上で、出力軸以外の部分は上述の実施形態と同じ構成とすることで上記と同様の効果を得ることが可能である。また、発電機16を駆動するために設けてある第2補助出力軸14を、出力軸と兼用させた構成とすることも可能である。
【0060】
その他の構成も、本発明の趣旨を逸脱しない範囲で種々変形が可能である。
【符号の説明】
【0061】
1…車両
2…車載装置
3…車載装置用動力システム
11…エンジン
12…駆動軸(出力軸)
14…第2補助出力軸
16…発電機
22…クラッチ
23…第1補助出力軸
24…ポンプ
31…基本指令部
32…操作受付部
33…報知手段
34…エンジン制御部
35…クラッチ制御部
36…モータ制御部
37…モータ切替部
38…バッテリ切替部
41…モータ
43…インバータ
44…車載装置用バッテリ
51…エンジン回転速度検出部
52…モータ回転速度検出部
53…モータトルク検出部
54…バッテリ残量検出部
SW1〜SW6…スイッチング回路

【特許請求の範囲】
【請求項1】
エンジンの動力を伝達する出力軸から動力を分配する第1補助出力軸と、前記出力軸および前記第1補助出力軸の接続または接続解除を行うクラッチと、前記第1補助出力軸により駆動されるポンプと、当該ポンプによって送り出される圧力媒体によって作動する圧力機器とを具備する車載装置に適用される車載装置用動力システムであって、前記クラッチの動作を制御するクラッチ制御部と、前記第1補助出力軸に連結され同期回転するモータと、前記エンジンの回転速度を検出するエンジン回転速度検出部と、当該エンジン回転速度検出部からの検出値を監視しつつ前記エンジンを回転させるエンジン制御部と、前記モータの回転速度を検出するモータ回転速度検出部と、前記モータのトルクを検出するモータトルク検出部と、それらモータ回転速度検出部およびモータトルク検出部の少なくともいずれか一方からの検出値を監視しつつ前記モータを回転させるモータ制御部と、前記ポンプの駆動源を切替えるために前記エンジンと前記モータの回転を連動させつつ前記クラッチの接続または接続解除を行うように前記クラッチ制御部、前記エンジン制御部および前記モータ制御部のそれぞれに指令を出す基本指令部とを備えたことを特徴とする車載装置用動力システム。
【請求項2】
前記ポンプの駆動源を前記モータから前記エンジンに切替える際に、前記基本指令部より前記モータ制御部に対して前記モータを速度制御方式によって同一の回転速度で回転させるよう命令するステップと、前記基本指令部より前記エンジン制御部に対して前記エンジンを速度制御方式によって前記モータの回転速度に相当する目標回転速度となるまで昇速させるように命令するステップと、前記基本指令部が前記エンジンの回転速度の前記目標回転速度への到達を検知するステップと、前記基本指令部が前記モータ制御部に対して前記モータの制御をトルク制御方式に変更して前記モータを同一の回転トルクで回転させるように命令するステップと前記基本指令部が前記クラッチ制御部に対して前記クラッチを接続させるように命令するステップと、前記基本指令部が前記モータ制御部に対して前記モータの回転トルクを漸減させていくように命令するステップとを順次実行するように構成されていることを特徴とする請求項1に記載の車載装置用動力システム。
【請求項3】
前記ポンプの駆動源を前記エンジンから前記モータに切替える際に、前記基本指令部により前記エンジン制御部に対して前記エンジンを速度制御方式によって同一の回転速度で回転させるように命令するステップと、前記基本指令部により前記モータ制御部に対して前記モータをトルク制御方式によって回転させて目標回転トルクとなるまで回転トルクを増大させるように命令するステップと、前記基本指令部が前記モータの回転トルクの前記目標回転トルクへの到達を検知するステップと、前記基本指令部が前記モータ制御部に対して前記モータの制御を速度制御方式に変更して前記モータを同一の回転速度で回転させるように命令するステップと、前記基本指令部が前記クラッチ制御部に対して前記クラッチの接続を解除させるように命令するステップとを順次実行するように構成されていることを特徴とする請求項1または2に記載の車載装置用動力システム。
【請求項4】
前記モータ制御部からの指令に基づき前記モータを回転させるインバータと、当該インバータを介して前記モータを駆動するための電気を供給する車載装置用バッテリとを具備するとともに、前記モータが前記第1補助出力軸を介して前記エンジンの駆動力によって駆動されることで電気を発生し、その電気を変換して前記車載装置用バッテリに蓄えるための第1充電コントローラと、車両用バッテリを充電するために前記エンジンによって第2補助出力軸を介して駆動される発電機により発生する電気を変換して前記車載装置用バッテリに蓄えるための第2充電コントローラと、商用電源より入力された電気を変換して前記車載装置用バッテリに蓄えるための第3充電コントローラとを備え、前記車載装置用バッテリの電気回路を、前記インバータと、前記第1充電コントローラと、前記第2充電コントローラと、前記第3充電コントローラのうちいずれかと接続した状態に、あるいは、いずれとも未接続の状態に切替えるためのバッテリ回路切替部を備えたことを特徴とする請求項1〜3のいずれかに記載の車載装置用動力システム。
【請求項5】
前記モータの電気回路を、前記インバータおよび前記第1の充電コントローラのいずれかと接続した状態に、あるいはいずれとも未接続の状態に切替えるためのモータ回路切替部を備えたことを特徴とする請求項4に記載の車載装置用動力システム。
【請求項6】
前記車載装置用バッテリの電池残量を検知するバッテリ残量検出部を備えるとともに、当該バッテリ残量検出部によって前記車載装置用バッテリの満充電状態を検出した場合、あるいは、電池残量が所定値以下であることを検知した場合に報知する報知手段を備えたことを特徴とする請求項4または5に記載の車載装置用動力システム。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【公開番号】特開2012−228893(P2012−228893A)
【公開日】平成24年11月22日(2012.11.22)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2011−96703(P2011−96703)
【出願日】平成23年4月25日(2011.4.25)
【出願人】(000002059)シンフォニアテクノロジー株式会社 (1,111)
【出願人】(597005370)いすゞ車体株式会社 (8)
【Fターム(参考)】