説明

車載通信装置及び車両間通信システム

【課題】自車両との間に障害物が存在しており自車両の死角に位置する周辺車両であれ、直接通信することのできる車載通信装置及びこの車載通信装置を有する複数の車両を含む車両間通信システムを提供する。
【解決手段】車載通信装置10(詳しくは制御ユニット20を構成する判断部21)は、第1受信器50を通じて取得される周辺車両の位置情報、及び、GPS受信器60を通じて取得される自車両の位置情報、並びに、記憶保持部22に記憶保持される地図情報に基づいて、周辺車両と自車両との間に障害物が存在して周辺車両が自車両の死角に位置するか否かを判断する。ここで、周辺車両が自車両の死角に位置すると判断されるとき、車載通信装置10(制御ユニット20を構成する送信部23)は、WAVE通信機器40を用いて周辺車両と直接通信する。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、自車両の周辺に位置する周辺車両との直接通信に使用される車載通信装置及びこの車載通信装置を有する車両を複数含む車両間通信システムに関する。
【背景技術】
【0002】
従来、車載通信装置及び車両間通信システムとして、例えば特許文献1に記載の技術が知られている。この文献に記載の技術では、宣伝車両はDSRC(Dedicated Short RangeCommunication)通信方式にて通信可能な車載器(第2通信機器)を搭載しており、一般車両もDSRC通信方式にて通信可能な車載器を搭載している。宣伝車両は、会社や商店の宣伝情報のデータを車載器に入力可能であり、入力された宣伝情報のデータをメモリに記憶する。宣伝車両は、走行しながら車載器により宣伝車両の通信領域内に位置する一般車両の車載器に対して宣伝情報を送信する。宣伝車両の車載器及び一般車両の車載器の指向性は各車両の前方に設定されており、宣伝車両と一般車両がすれ違う際に互いに通信を確立し、宣伝車両の車載器から一般車両の車載器へ宣伝情報が送信される。
【特許文献1】特開2004−221636号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0003】
ところで、DSRC通信方式では、例えば「5.9[GHz]」帯(第2周波数帯)の波長の短い電波を用いており、電波の指向性が強い。そのため、周辺車両と自車両との間に障害物が存在しておらず周辺車両が自車両の死角に位置していないとき、自車両はDSRC通信方式にて周辺車両と直接通信を行うことができるものの、周辺車両と自車両との間に障害物が存在しており周辺車両が自車両の死角に位置しているとき、自車両はDSRC通信方式にて周辺車両と直接通信を行うことは難しい。すなわち、周辺車両と自車両との間で直接通信可能な周辺車両は、周辺車両及び自車両間に障害物が存在しておらず自車両の死角に位置しない周辺車両に限られてしまう。
【0004】
本発明は、上記実情に鑑みてなされたものであって、その目的は、自車両との間に障害物が存在しており自車両の死角に位置する周辺車両であれ、直接通信することのできる車載通信装置及びこの車載通信装置を有する複数の車両を含む車両間通信システムを提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0005】
こうした目的を達成するため、請求項1に記載の発明では、自車両の周辺に位置する周辺車両の位置情報を受信する第1受信器と、自車両の位置情報を受信する第2受信器と、周辺車両及び自車両間の直接通信を妨げる障害物の位置情報を含む地図情報を記憶保持する記憶保持部とを備える車両に搭載されるとともに、第1周波数帯の電波を用いる第1通信機器と、第1周波数帯よりも高い第2周波数帯の電波を用いる第2通信機器とを備え、前記周辺車両の位置情報及び前記自車両の位置情報並びに前記地図情報に基づいて、周辺車両と自車両との間に障害物が存在して周辺車両が自車両の死角に位置するか否かを判断し、周辺車両が自車両の死角に位置すると判断するとき、第1通信機器を用いて周辺車両と通信する一方、周辺車両が自車両の死角に位置しないと判断するとき、第2通信機器を用いて周辺車両と通信することを特徴とする。
【0006】
車載通信装置としての上記構成では、まず、周辺車両の位置情報及び自車両の位置情報並びに地図情報に基づいて、周辺車両及び自車両間の直接通信を妨げる障害物が周辺車両と自車両との間に存在して自車両の死角に位置するか否かを判断する。この判断において、周辺車両が自車両の死角に位置すると判断すると、車載通信装置は、第1周波数帯の電波を用いる第1通信機器を用いて周辺車両と通信する。ここで、第1周波数帯は第2周波数帯よりも低く、第1周波数帯の電波の波長は第2周波数帯の電波の波長よりも長いため、指向性は弱くなるものの、上記障害物を回り込むことが可能となる。そのため、第1通信機器から発せられた電波は、自車両の死角に位置する周辺車両に対しても障害物を回り込んで到達する。したがって、車載通信装置は、自車両の死角に位置する周辺車両と直接通信することができるようになる。一方、周辺車両が自車両の死角に位置しないと判断すると、車載通信装置は、第2通信機器を用いて周辺車両と通信する。ここで、第2周波数帯は第1周波数帯よりも高く、第2周波数帯の電波の波長は第1周波数帯の電波の波長よりも短いため、指向性が強くなり、単位時間当たりに多量の情報量を送受信することができる。したがって、車載通信装置は、自車両の死角に位置しない周辺車両との間で、好適な通信速度にて直接通信することができるようになる。以上説明したように、請求項1に記載の構成によれば、自車両との間に障害物が存在しており自車両の死角に位置する周辺車両であっても、直接通信することができるようになる。
【0007】
上記目的を達成するため、請求項2に記載の発明では、自車両の周辺に位置する周辺車両の位置情報を受信する第1受信器と、自車両の位置情報を受信する第2受信器と、自車両の周辺の画像を撮像する撮像機器とを備える車両に搭載されるとともに、第1周波数帯の電波を用いる第1通信機器と、第1周波数帯よりも高い第2周波数帯の電波を用いる第2通信機器とを備え、前記周辺車両の位置情報及び前記自車両の位置情報並びに前記撮像機器にて撮像された画像情報に基づいて、周辺車両及び自車両間の直接通信を妨げる障害物が周辺車両と自車両との間に存在して周辺車両が自車両の死角に位置するか否かを判断し、周辺車両が自車両の死角に位置すると判断するとき、第1通信機器を用いて周辺車両と通信する一方、周辺車両と自車両との間に障害物が存在せず周辺車両が自車両の死角に位置しないと判断するとき、第2通信機器を用いて周辺車両と通信することを特徴とする。
【0008】
車載通信装置としての上記構成では、まず、周辺車両の位置情報及び自車両の位置情報並びに撮像機器にて撮像された画像情報に基づいて、周辺車両及び自車両間の直接通信を妨げる障害物が周辺車両と自車両との間に存在して周辺車両が自車両の死角に位置するか否かを判断する。この判断において、周辺車両が自車両の死角に位置すると判断すると、車載通信装置は、第1周波数帯の電波を用いる第1通信機器を用いて周辺車両と通信する。ここで、第1周波数帯は第2周波数帯よりも低く、第1周波数帯の電波の波長は第2周波数帯の電波の波長よりも長いため、指向性は弱くなるものの、上記障害物を回り込むことが可能となる。そのため、第1通信機器から発せられた電波は、自車両の死角に位置する周辺車両に対しても障害物を回り込んで到達する。したがって、車載通信装置は、自車両の死角に位置する周辺車両と直接通信することができるようになる。一方、周辺車両が自車両の死角に位置しないと判断すると、車載通信装置は、第2通信機器を用いて周辺車両と通信する。ここで、第2周波数帯は第1周波数帯よりも高く、第2周波数帯の電波の波長は第1周波数帯の電波の波長よりも短いため、指向性が強くなり、単位時間当たりに多量の情報量を送受信することができる。したがって、車載通信装置は、自車両の死角に位置しない周辺車両との間で、好適な通信速度にて直接通信することができるようになる。
【0009】
以上説明したように、請求項2に記載の構成によれば、自車両との間に障害物が存在しており自車両の死角に位置する周辺車両であっても、直接通信することができるようになる。さらに、上記請求項2に記載の構成によれば、例えば路側に植えられた樹木や看板等、記憶保持部に記憶保持されている地図情報にはその位置情報が含まれない障害物が周辺車両と自車両との間に存在しても、上記画像情報に基づくため、周辺車両が自車両の死角に位置するか否かをより的確に判断することができるようになる。
【0010】
また、周辺車両及び自車両の少なくとも一方が移動することに起因して周辺車両及び自車両間の距離や障害物の有無などが時々刻々と変化する。そのため、上記請求項1または2に記載の構成において、例えば請求項3に記載の発明のように、周辺車両が自車両の死角に位置するか否かの判断を所定時間毎に繰り返し実行することが好ましい。これにより、周辺車両及び自車両間の時々刻々と変化する通信状態に対応して通信機器を即座に切り替えることができるようになる。したがって、周辺車両との直接通信をより安定させることができるようになる。
【0011】
上記目的を達成するため、請求項4に記載の発明では、上記請求項1〜3のいずれか一項に記載の車載通信装置を搭載する車両を複数含み、第1受信器は、道路に沿って設置される路側器が発する電波を受信するものであり、前記路側器は、該路側器の周辺に位置する複数の車両への問い合わせであるポーリングを実行し、このポーリングに対する応答に基づいて、前記路側器を中心とした各車両の位置情報を取得することとした。これにより、上記請求項1〜3の構成に準じた作用効果を得ることができる。なお、周辺車両の位置情報の送信元については任意である。そのため、第1受信器は、例えば衛星が発する電波を受信して周辺車両の位置情報を受信してもよい。要は、上記障害物の存在に左右されず、周辺車両の位置情報を取得することができれば、その手段は任意である。
【発明を実施するための最良の形態】
【0012】
(第1の実施の形態)
以下、本発明に係る車載通信装置及び車両間通信システムの第1の実施の形態について、図1〜図3を参照して説明する。図1は、車載通信装置及び車両間通信システムを示す概略図であり、はじめに、この図1を参照しつつ車両間通信システムについて説明する。
【0013】
図1に示されるように、本実施の形態の車両間通信システムは、後述する車載通信装置を各々搭載する例えば6台の車両C1〜C6及び道路に沿って設置される例えば4基の路側器R1〜R4を含んで構成されている。なお、車両の数や路側器の数は6台や4基に限られることなく任意である。
【0014】
路側器R1〜R4は、問い合わせ信号を各々の周辺に放送的に送信する(いわゆるポーリング)。この問い合わせ信号を受信した車両C1〜C6は、当該車両C1〜C6の位置情報及び車両C1〜C6を識別するための固有の車両ID1〜ID6を、路側器R1〜R4に対しそれぞれ送信する(いわゆるポーリング応答)。そして、路側器R1〜R4は、このポーリング応答に基づいて、当該路側器R1〜R4を中心とした各車両C1〜C6の位置情報及び車両ID1〜ID6を取得し、取得した各車両C1〜C6の位置情報及び車両ID1〜ID6並びに識別番号を放送的に送信する。ここで放送的な送信は、指向性が弱く障害物を回り込むことのできる周波数の電波を使用する。
【0015】
図2は、本実施の形態の車載通信装置の構成を示すブロック図である。次に、この図2を参照しつつ、本実施の形態の車載通信装置について説明する。
【0016】
この図2に示されるように、車両間通信システム1を構成する車両(図2では図示略)は、自車両の周辺に位置する周辺車両の位置情報及びその車両IDを上記路側器R1〜R4から受信する第1受信器50と、自車両の位置情報を衛星(図示略)から取得する第2受信器(以下、GPS受信器とも記載)60と、例えばウインカーの点消灯を制御するボディ制御装置等、自車両を制御する各種制御装置70と、例えば自車両の速度を検出する車速センサ等、自車両の状態量を検出する各種センサ80と、車載通信装置10とを備える。なお、図示の便宜上、図2では、各種制御装置70を単一のブロックにて図示しており、各種センサ80を単一のブロックにて図示しているが、これら各種制御装置70及び各種センサ80は、複数個の制御装置及びセンサを意味する。
【0017】
GPS受信器60及び各種制御装置70並びに各種センサ80の構成や機能等については公知であるため、ここでの詳しい説明を割愛するが、本実施の形態では、GPS受信器60及び各種制御装置70並びに各種センサ80は、自車両の位置情報及びウインカーの点滅状態に関する情報並びに車両速度に関する情報を車載通信装置10にそれぞれ送信する。そして、後述する車載通信装置は、自車両の位置情報、ウインカーの点滅状態に関する情報、及び、車両速度に関する情報を自車両情報として周辺車両に送信する。
【0018】
また、図2に示されるように、車載通信装置10は、制御ユニット20、DSRC通信機器(第2通信機器)30、及び、WAVE通信機器(第1通信機器)40を備える。
【0019】
このうち、DSRC通信機器30は、例えば「5.9[GHz]」帯(第2周波数帯)の電波を用いる通信機器であり、WAVE通信機器40は、例えば「5.8[GHz]」帯(第1周波数帯)の電波を用いる通信機器である。このように、使用する電波の周波数帯が互いに異なるため、DSRC通信機器30にて使用される電波の指向性は、WAVE通信機器40にて使用される電波の指向性よりも強く、障害物(例えば建物)を回り込むことはできない。換言すれば、WAVE通信機器40にて使用される電波の指向性は、DSRC通信機器30にて使用される電波の指向性よりも弱く、障害物を回り込むことができる。なお、本実施の形態では、障害物とは、自車両に搭載されるDSRC通信機器30で用いられる電波が回り込むことができず、周辺車両と野直接通信を妨げるものを意味している。
【0020】
また、本実施の形態では、周辺車両とは、この周辺車両と自車両との間に障害物が存在しないときに、自車両に搭載されるDSRC通信機器30の電波が到達可能な範囲に位置する車両を意味している。そのため、周辺車両及び自車両間に障害物が存在する場合、DSRC通信機器30を用いたところで周辺車両との直接通信をすることは難しいものの、WAVE通信機器40を用いることで周辺車両との直接通信をすることは可能である。
【0021】
また、当然のことながら、周辺車両及び自車両間に障害物が存在しない場合、DSRC通信機器30及びWAVE通信機器40のどちらを用いても周辺車両と直接通信をすることはできる。しかしながら、これら通信機器30及び40は、使用する電波の周波数帯の違いに起因して、単位時間当たりに送受信することのできる情報量が異なるため、DSRC通信機器30の方がWAVE通信機器40よりも単位時間当たりに送受信することのできる情報量は多い。
【0022】
制御ユニット20は、判断部21、記憶保持部22及び送信部23を有する。このうち、記憶保持部22は、例えばハードディスクドライブ等で構成されており、障害物の位置情報及び路側器R1〜R4の位置情報を含む地図情報を記憶保持する。判断部21は、上記第1受信器50によって受信される周辺車両の位置情報及び車両IDと、路側器R1〜R4の識別番号と、上記GPS受信器60によって受信される自車両の位置情報と、記憶保持部22に記憶保持される地図情報とに基づいて、上記DSRC通信機器30及びWAVE通信機器40のどちらの通信機器を用いて直接通信を行うかについて、周辺車両ごとに判断する。詳しくは、上記周辺車両の位置情報及び車両ID並びに上記路側器の識別番号及び位置情報から、路側器と周辺車両との位置関係が周辺車両ごとに既知となり、上記自車両の位置情報並びに上記路側器の位置情報及び識別番号から、路側器と自車両との位置関係が既知となる。そのため、周辺車両と自車両との位置関係が周辺車両ごとに既知となる。ここで、記憶保持部22に記憶保持されている地図情報には、DSRC通信機器30による直接通信を妨げる障害物の位置情報も含まれているため、判断部21は、周辺車両と自車両との間に障害物が存在するか否か、すなわち、周辺車両が自車両の死角に位置するか否かを、周辺車両ごとに判断することができる。なお、本実施の形態では、自車両の死角とは、自車両に搭載されたDSRC通信機器30で用いられる電波が到達可能な範囲でありながら、障害物が存在するために、直接通信することができない位置を意味する。
【0023】
そして、判断部21は、周辺車両と自車両との間に障害物が存在しその周辺車両が自車両の死角に位置すると判断するとき、この障害物を回り込むことのできるWAVE通信機器40を用いることを選択する。一方、判断部21は、周辺車両と自車両との間に障害物が存在せずその周辺車両が自車両の死角に位置しないと判断するとき、単位時間当たりの送信可能な伝達量の多いDSRC通信機器30を用いることを選択する。送信部23は、判断部21によって周辺車両ごとに判断・選択された通信機器を制御することで、上記自車両情報を送信する。
【0024】
図3は、本実施の形態の車載通信装置10によって所定時間毎に繰り返し実行される通信機器切替処理の処理手順を示すフローチャートである。なお、所定時間は任意であるが、本実施の形態では、DSRC通信機器30及びWAVE通信機器40間で通信機器を切り換えたときに、周辺車両との直接通信が切替後の通信方式にて確立するまでに必要とされる時間よりも短い時間に設定されている。要は、所定時間は十分に短い時間に設定されている。
【0025】
この通信機器切替処理が開始されると、車載通信装置10(詳しくは制御ユニット20を構成する判断部21)は、ステップS11の処理として、周辺車両の位置情報及び車両ID並びに路側器の識別番号を第1受信器50を通じて周辺車両ごとに取得する。次に判断部21は、続くステップS12の処理として、GPS受信器60を通じて自車両の位置情報を取得する。そして、判断部21は、続くステップS13の処理として、記憶保持部22の地図情報に基づいて障害物及び路側器の位置情報をそれぞれ取得する。
【0026】
このように、ステップS11〜ステップS13の処理を通じて各種情報を取得すると、判断部21は、続くステップS14の処理として、直接通信に使用する通信機器を周辺車両ごとに判断する。また、判断部21は、続くステップS15の処理として、自車両情報(自車両の位置情報、ウインカーの点滅状態に関する情報及び車両速度に関する情報)を例えばCAN等の車内ネットワークを通じて取得する。そして、送信部23は、続くステップS16の処理として、DSRC通信機器30あるいはWAVE通信機器40を用いて、先のステップS15の処理にて取得した自車両情報を送信する。
【0027】
そして、判断部21は、DSRC通信機器30あるいはWAVE通信機器40を通じて周辺車両に関する情報である周辺車両情報を受信したと判断するとき、自車両の搭乗者に視認可能な形式にてその受信した周辺車両情報を図示しない適宜の表示部に表示する(コーション画面を表示する)とともに、適宜の音声出力部にて音声案内を行う。これにより、自車両の搭乗者(特に運転者)に対し、周辺車両への注意を喚起することができるようになる。なお、こうした表示部あるいは音声出力部としては、車載されることのあるカーナビゲーション装置の表示部あるいは音声出力部を採用してもよい。
【0028】
以上説明した第1の実施の形態では、車載通信装置10(詳しくは制御ユニット20を構成する判断部21)は、周辺車両の位置情報及び自車両の位置情報並びに地図情報に基づいて、周辺車両と自車両との間に障害物が存在して周辺車両が自車両の死角に位置するか否かを周辺車両ごとに判断する。ここで、周辺車両が自車両の死角に位置すると判断されるとき、車載通信装置10(詳しくは制御ユニット20を構成する送信部23)は、WAVE通信機器40を用いて周辺車両と通信する。これにより、WAVE通信機器40から発せられた電波は、自車両の死角に位置する周辺車両に対しても障害物を回り込んで到達するため、周辺車両と直接通信することができるようになる。
【0029】
上記第1の実施の形態では、周辺車両が自車両の死角に位置しないと判断されるとき、車載通信装置10(詳しくは制御ユニット20を構成する送信部23)は、DSRC通信機器30を用いて周辺車両と通信する。これにより、好適な通信速度にて直接通信することができるようになる。
(第2の実施の形態)
以下、本発明に係る車載通信装置及び車両間通信システムの第2の実施の形態について、先の図1及び図4並びに図5を参照して説明する。ただし、先の第1の実施の形態と重複する説明を割愛する。
【0030】
これら図面に示されるように、本実施の形態は、先の第1の実施の形態に準じた構成となっている。ただし、図4に示されるように、本実施の形態の車載通信装置10aが搭載される車両は、当該車両の周辺の画像を撮像する撮像機器50aを備えている。そして、判断部21aは、周辺車両の位置情報及び自車両の位置情報並びに地図情報に基づいて、周辺車両と自車両との間に障害物が存在しておらず周辺車両が自車両の死角に位置しないと判断するとき、さらに、撮像機器50aにて撮像された画像情報に基づいて、地図情報に含まれない障害物が周辺車両と自車両との間に存在しないか否かを周辺車両ごとに確認する。これにより、地図データに含まれない障害物が自車両との間に存在するため自車両の死角に位置する周辺車両であっても、直接通信することができるようにしている。
【0031】
図5に、本実施の形態の車載通信装置10aによって所定時間毎に繰り返し実行される通信機器切替処理の処理手順を示す。
【0032】
この通信機器切替処理が開始されると、車載通信装置10a(詳しくは制御ユニット20を構成する判断部21a)は、上記ステップS11〜ステップS13の処理を実行すると、続くステップS21の処理として、上記撮像機器50aにて自車両の周辺の画像を撮像する。そして、判断部21は、続くステップS22の処理として、直接通信に使用する通信機器を周辺車両ごとに判断する。詳しくは、周辺車両の位置情報及び自車両の位置情報並びに地図情報に基づいて、周辺車両と自車両との間に障害物が存在しており周辺車両が自車両の死角に位置すると判断するとき、WAVE通信機器40を使用することとする。また、周辺車両の位置情報及び自車両の位置情報並びに地図情報に基づいて、周辺車両と自車両との間に障害物が存在しておらず周辺車両が自車両の死角に位置しないと判断するとき、さらに、撮像機器50aにて撮像された画像情報によって周辺車両を認識できるか否かを判断する。ここで、画像情報によって周辺車両を認識できないとき、地図情報に含まれない障害物が周辺車両と自車両との間に存在するため、WAVE通信機器40を使用することとする。一方、画像情報によって周辺車両を認識できるとき、地図情報に含まれない障害物は周辺車両と自車両との間に存在しないため、DSRC通信機器30を使用することとする。このように、判断部21aは、直接通信に使用する通信機器を周辺車両ごとに判断する。
【0033】
以下、先の図1を参照しつつ、本実施の形態の動作例について説明する。この動作例においては、車両C1〜C4及びC6を周辺車両とし、車両C5を自車両とする。
【0034】
車両C5は、まず、車両C1〜C4及びC6の位置情報及び車両IDと路側器R1の識別番号を路側器R1から取得するとともに、図示しない衛星から当該車両C5の位置情報を取得する。
【0035】
そして、車両C5は、これら車両C1〜C4及びC6の位置情報と当該車両C5の位置情報並びに地図情報に基づいて、車両C1〜C4及びC6が当該車両C5の死角に位置するか否かを判断する。このとき、図1に示されるように、地図情報に含まれる障害物によって当該車両C5の死角に位置する車両はない。そのため、車両C5は、さらに、撮像機器50aによって当該車両C5の周辺を撮像した画像情報に基づいて、車両C1〜C4及びC6が当該車両C5の死角に位置するか否かを判断する。
【0036】
ここで、車両C1及び車両C5間には車両C2が存在しており、画像情報に基づいて車両C1を認識することはできない。したがって、車両C5は、車両C1が当該車両C5の死角に位置すると判断する。また、車両C2及び車両C5間には障害物が存在しないため、画像情報に基づいて車両C2を認識することができる。したがって、車両C5は、車両C2が当該車両C5の死角に位置しないと判断する。また、車両C3及び車両C5間には車両C4が存在するため、画像情報に基づいて車両C3を認識することはできない。したがって、車両C3は、車両C1が当該車両C5の死角に位置すると判断する。また、車両C4及び車両C5間には障害物が存在しないため、画像情報に基づいて車両C4を認識することができる。したがって、車両C5は、車両C4が当該車両C5の死角に位置しないと判断する。さらに、車両C6及び車両C5間には障害物が存在しないため、画像情報に基づいて車両C6を認識することができる。したがって、車両C5は、車両C6が当該車両C5の死角に位置しないと判断する。
【0037】
そして、車両C5は、当該車両C5の死角に位置すると判断した車両C1及び車両C3とそれぞれWAVE通信機器40を使用して直接通信を行う。具体的には、車両C5は、これら車両C1及び車両C3に対し、「車両速度:10[km/h]、ウインカー:右、自車位置:北緯**度、東経**度」といった自車両情報を送信する。一方、車両C5は、当該車両C5の死角に位置しないと判断した車両C2及び車両C4並びに車両C6とそれぞれDSRC通信機器30を使用して直接通信を行う。具体的には、車両C5は、これら車両C2及び車両C4並びに車両C6に対し、「車両速度:10[km/h]、ウインカー:右」といった自車両情報を送信する。
【0038】
車両C5に搭載されたWAVE通信機器40から発せられた電波は、車両C1を回り込んで車両C2に、車両C4を回り込んで車両C3に、それぞれ到達する。一方、車両C5に搭載されたDSRC通信機器30から発せられた電波は、車両C2及び車両C4並びに車両C6それぞれに対し直線的に到達する。
【0039】
以上説明した第2の実施の形態では、車載通信装置10aが搭載される車両は、当該車両の周辺の画像を撮像する撮像機器50aを備える。そして、車載通信装置10a(詳しくは制御ユニット20を構成する判断部21a)は、周辺車両の位置情報及び自車両の位置情報並びに地図情報に基づいて、周辺車両と自車両との間に障害物が存在しておらず周辺車両が自車両の死角に位置しないと判断するとき、さらに、撮像機器50aにて撮像された画像情報に基づいて、地図情報に含まれない障害物が周辺車両と自車両との間に存在しないか否かを周辺車両ごとに確認する。これにより、地図データに含まれない障害物が自車両との間に存在するため自車両の死角に位置する周辺車両であっても、周辺車両と直接通信することができるようになる。
【0040】
なお、本発明に係る車載通信装置及び車両間通信システムは、上記各実施の形態にて例示した構成に限定されるものではなく、本発明の趣旨を逸脱しない範囲において、種々に変形して実施することが可能である。すなわち、上記実施の形態を適宜変更した例えば次の形態として実施することもできる。
【0041】
上記各実施の形態では、路側器R1〜R4は、いわゆるポーリング応答に基づいて、当該路側器R1〜R4を中心とした各車両C1〜C6の位置情報及び車両ID1〜ID6を取得し、取得した各車両C1〜C6の位置情報及び車両ID1〜ID6を放送的に送信していたが、各車両C1〜C6の位置情報の取得方法はこれに限らない。他に例えば、第1受信器50は、例えば衛星が発する電波を受信して車両C1〜C6の位置情報を受信してもよい。要は、障害物の存在に左右されず、車両C1〜C6の位置情報を取得することができれば、その手段は任意である。
【0042】
上記各実施の形態(変形例を含む)では、第1通信機器としてWAVE通信機器を、第2通信機器としてDSRC通信機器を採用していたがこれに限らない。要は、通信方式は任意であって、第1通信機器として、指向性が弱く障害物を回り込むこむことのできる電波を用いる通信機器を採用し、第2通信機器として、指向性が強くデータ伝送速度が高い電波を用いる通信機器を採用すればよい。
【0043】
上記各実施の形態(変形例を含む)では、先の図3及び図5に示すように、周辺車両が自車両の死角に位置するか否かの判断を所定時間毎に繰り返し実行していたが、これに限らない。他に例えば、周辺車両が自車両の死角に位置するか否かの判断を自車両の右左折時にのみ実行し、周辺車両との直接通信に使用する通信機器を切り替えて自車両情報を送信することとしてもよい。
【0044】
上記第2の実施の形態(変形例を含む)では、車載通信装置10aが搭載される車両は、当該車両の周辺の画像を撮像する撮像機器50aを備えていた。そして、判断部21aは、周辺車両の位置情報及び自車両の位置情報並びに地図情報に基づいて、周辺車両と自車両との間に障害物が存在しておらず周辺車両が自車両の死角に位置しないと判断するとき、さらに、撮像機器50aにて撮像された画像情報に基づいて、地図情報に含まれない障害物が周辺車両と自車両との間に存在しないか否かを周辺車両ごとに確認していた。すなわち、地図情報に基づく判断と画像情報に基づく判断を併用していたが、これに限らない。地図情報に基づく判断を割愛し、画像情報に基づく判断のみを実行することとしても、所期の目的を達成することはできる。この場合、記憶保持部22に記憶保持される地図情報には、直接通信を妨げる障害物の位置情報を含ませる必要はない。
【図面の簡単な説明】
【0045】
【図1】本発明に係る車載通信装置及び車両間通信システムの概略図。
【図2】第1の実施の形態の車両間通信システムを構成する車載通信装置の構成例を示すブロック図。
【図3】第1の実施の形態の車載通信装置によって実行される通信機器切替処理について、その処理手順の一例を示すフローチャート。
【図4】本発明に係る車載通信装置及び車両間通信システムの第2の実施の形態について、その構成の一例を示すブロック図。
【図5】第2の実施の形態の通信制御処理についてその処理手順を示すフローチャート。
【符号の説明】
【0046】
1、1a…車両間通信システム、10、10a…車載通信装置、20…制御ユニット、21、21a…判断制御部、22…記憶保持部、23…送信部、30…DSRC通信機器(第2通信機器)、40…WAVE通信機器(第1通信機器)、50…第1受信器、50a…撮像機器、60…GPS受信器(第2受信器)、70…各種制御装置、80…各種センサ。

【特許請求の範囲】
【請求項1】
自車両の周辺に位置する周辺車両の位置情報を受信する第1受信器と、自車両の位置情報を受信する第2受信器と、周辺車両及び自車両間の直接通信を妨げる障害物の位置情報を含む地図情報を記憶保持する記憶保持部とを備える車両に搭載されるとともに、第1周波数帯の電波を用いる第1通信機器と、第1周波数帯よりも高い第2周波数帯の電波を用いる第2通信機器とを備え、
前記周辺車両の位置情報及び前記自車両の位置情報並びに前記地図情報に基づいて、周辺車両と自車両との間に障害物が存在して周辺車両が自車両の死角に位置するか否かを判断し、周辺車両が自車両の死角に位置すると判断するとき、第1通信機器を用いて周辺車両と通信する一方、周辺車両が自車両の死角に位置しないと判断するとき、第2通信機器を用いて周辺車両と通信することを特徴とする車載通信装置。
【請求項2】
自車両の周辺に位置する周辺車両の位置情報を受信する第1受信器と、自車両の位置情報を受信する第2受信器と、自車両の周辺の画像を撮像する撮像機器とを備える車両に搭載されるとともに、第1周波数帯の電波を用いる第1通信機器と、第1周波数帯よりも高い第2周波数帯の電波を用いる第2通信機器とを備え、
前記周辺車両の位置情報及び前記自車両の位置情報並びに前記撮像機器にて撮像された画像情報に基づいて、周辺車両及び自車両間の直接通信を妨げる障害物が周辺車両と自車両との間に存在して周辺車両が自車両の死角に位置するか否かを判断し、周辺車両が自車両の死角に位置すると判断するとき、第1通信機器を用いて周辺車両と通信する一方、周辺車両と自車両との間に障害物が存在せず周辺車両が自車両の死角に位置しないと判断するとき、第2通信機器を用いて周辺車両と通信することを特徴とする車載通信装置。
【請求項3】
周辺車両が自車両の死角に位置するか否かの判断を所定時間毎に繰り返し実行することを特徴とする請求項1または2に記載の車載通信装置。
【請求項4】
請求項1〜3のいずれか一項に記載の車載通信装置を搭載する車両を複数含み、
第1受信器は、道路に沿って設置される路側器が発する電波を受信するものであり、
前記路側器は、該路側器の周辺に位置する複数の車両への問い合わせであるポーリングを実行し、このポーリングに対する応答に基づいて、前記路側器を中心とした各車両の位置情報を取得することを特徴とする車両間通信システム。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【公開番号】特開2009−231996(P2009−231996A)
【公開日】平成21年10月8日(2009.10.8)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2008−72668(P2008−72668)
【出願日】平成20年3月20日(2008.3.20)
【出願人】(000004260)株式会社デンソー (27,639)
【Fターム(参考)】