説明

軟性フィルム複合基板

【課題】 使用寿命が長くなり、製造コストを低減し、製造プロセスが簡単になる軟性フィルム複合基板を提供する。
【解決手段】 一つの樹脂基材1を有し、真空物理メッキ方式により樹脂基材1上に銅合金層2を付着する。銅合金層2は、0.1%〜99.95%の銅と、ニッケルやクロムやマンガンやモリブデンや鉄やリンの少なくとも一つ以上の元素から構成された合金である。真空物理メッキ方式により銅合金層2上に銅箔層3を付着する。銅箔層3は、10%〜99.95%の銅と、ニッケルやクロムやマンガンやモリブデンや鉄やリンの少なくとも一つ以上の元素から構成された合金である。樹脂基材1は、ポリイミドやポリエチレンテレフタラートやポリカーボネートやポリメタクリル酸メチルの何れか一つの材料を採用する。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、軟性電子回路基板に係り、特に、単一の銅合金層を銅箔の連接層とする軟性フィルム複合基板に関するものである。
【背景技術】
【0002】
軟性電子回路基板の構成は、主に、軟性素材の基板上に導電性の銅箔を結合して構成され、従来の方法は、粘着剤により銅箔を粘着するが、剥離し易く、ハロゲン耐燃焼剤を含有するなどの問題がある。もう一つの従来の方法は、銅箔基板上に液体状態の樹脂を塗布して、樹脂が乾燥した後、銅箔基板と樹脂が一体になる。しかしながら、上記の二つの方法は8μm以下の銅箔には適用できず、且つ銅箔と樹脂の接着力が不足しており、すなわち、銅箔に通電するときに、若干の温度上昇が発生し(一般には150℃以下)、且つ銅箔と樹脂の材料が異なり、両者は上記温度での熱膨張が異なるので、軟性電子回路基板のメッキ層にリフティング(blisterまたはlifting)や剥離(peeling)が発生する。
【0003】
近年、軟性電子回路基板の製造技術は、スパッタリング技術を採用し、例えば、軟性電子回路基板の製造方法およびその製品が提案されている(特許文献1参照)。
上記軟性電子回路基板の構成は、図3と図4に示すように、一つの高分子フィルム層81と、前記高分子フィルム層81の一面に接合されたクロム(ニッケル又はCr/Ni)付着層82と、前記クロム付着層82の前記高分子フィルム層81から遠ざかった表面に接合されたニッケル・クロム合金付着層83と、前記ニッケル・クロム合金付着層83の前記クロム付着層82から遠ざかった表面に接合された銅付着層84と、前記銅付着層84の表面にメッキされた銅箔85とを含む。
【0004】
【特許文献1】台湾特許第519860号
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
しかしながら、上記軟性電子回路基板の構成において、クロム付着層82と、ニッケル・クロム合金付着層83と、銅付着層84とは全て銅箔の連接層(tie-coating)であり、製造人件費および製造複雑度が増加すると共に、連接層の使用により抵抗値が増加し、例えば、クロムの抵抗値は銅の10倍以上であり、ニッケルの抵抗値は銅の4倍以上である。
【0006】
本発明の主な目的は、温度上昇状態でも軟性電子回路基板のメッキ層はリフティング(blisterまたはlifting)や剥離(peeling)が発生せず、使用寿命が長くなり、製造コストを低減し、製造プロセスが簡単になる軟性フィルム複合基板を提供する。
【課題を解決するための手段】
【0007】
上記目的を達成するためになされた本発明は、一つの樹脂基材を有し、真空物理メッキ方式により前記樹脂基材上に厚さが10〜10000×10-10m程度の銅合金層を付着し、前記銅合金層は、0.1%〜99.95%の銅と、ニッケルやクロムやマンガンやモリブデンや鉄やリンなどのうちの少なくとも一つ以上の元素から構成された合金であり、且つ真空物理メッキ方式により前記銅合金層上に銅箔層を付着することを特徴とする軟性フィルム複合基板であることを要旨としている。
【0008】
本発明では、前記銅箔層は、10%〜99.95%の銅と、ニッケルやクロムやマンガンやモリブデンや鉄やリンなどのうちの少なくとも一つ以上の元素から構成された合金であることを特徴とする請求項1に記載の軟性フィルム複合基板であることを要旨としている。
【0009】
本発明では、前記樹脂基材は、ポリイミド(PI)やポリエチレンテレフタラート(PET)やポリカーボネート(PC)やポリメタクリル酸メチル(PMMA)などのうちの何れか一つの材料を採用することを特徴とする請求項1に記載の軟性フィルム複合基板であることを要旨としている。
【0010】
本発明に係る軟性フィルム複合基板によれば、温度上昇状態でも軟性電子回路基板のメッキ層はリフティング(blisterまたはlifting)や剥離(peeling)が発生せず、使用寿命が長くなり、製造コストが低減し、製造プロセスが簡単になる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0011】
以下、添付図面を参照して本発明の好適な実施の形態を詳細に説明する。
まず、図1を参照する。もちろん、上記図面に示す実施例の構造は、本発明を説明するためのものであり、特許請求範囲を限定するためのものではない。
【0012】
本発明の一実施例による軟性フィルム複合基板の構造は、主に、一つの樹脂基材1上に一つの銅合金層2と、一つの銅箔層3とを順に設けて構成されている。
前記樹脂基材1は、ポリイミド(PI)やポリエチレンテレフタラート(PET)やポリカーボネート(PC)やポリメタクリル酸メチル(PMMA)などのうちの何れか一つの材料を採用し、例えば、ポリイミド(PI)は電気特性が優れ、耐化学薬品性および耐熱性も極めて良いので、熱歪みが低い。
【0013】
真空物理メッキ方式により前記樹脂基材上に付着した銅合金層の厚さは10〜10000×10-10m程度である。前記銅合金層は、0.1%〜99.95%の銅と、ニッケルやクロムやマンガンやモリブデンや鉄やリンなどのうちの少なくとも一つ以上の元素から構成された合金であり、添加される金属は導電特性が極めて良く、銅合金層2の抵抗を増加しない元素を採用した方がいい。
【0014】
また、真空物理メッキ方式により前記銅合金層2上に付着した銅箔層3は、10%〜99.95%の銅と、ニッケルやクロムやマンガンやモリブデンや鉄やリンなどのうちの少なくとも一つ以上の元素から構成される合金である。
【0015】
なお、上記真空物理メッキ方式は、熱蒸着(Thermal Evaporation)と、電子ビーム蒸着(Electron Beam Evaporation)と、直流磁気制御スパッタリング(DC Magnetron Sputter)と、ラジオ周波数磁気制御スパッタリング(RF Magnetron Sputter)と、イオンビームスパッタリング(Ion Beam Sputter)と、分子ビームエビタキシー(Molecular Beam Epitaxy、MBE)と、プラズマ強化CVD(Plasma Enhanced CVD)などの方法を含み、本実施例に係る銅合金層2は純銅分子を有し、純銅分子の優れた導電特性により、前記銅箔層3の結合強度が向上され、且つニッケルやクロムやマンガンやモリブデンや鉄やリンなどの低抵抗元素により、銅合金層2の導電性が大幅に低下しない。
【0016】
本実施例に係る軟性フィルム複合基板の構造は、主に、銅合金層2を銅箔層3の連接層(tie-coating)とし、前記銅合金層2における合金材料のニッケルやクロムやマンガンやモリブデンや鉄やリンなどは樹脂材料に対する結合強度がより優れているので、樹脂基材1に対する結合効果を向上することができ、且つ銅箔層3は銅合金層2上に緊密に付着して、樹脂基材1と結合することができ、実際の引張り実験によれば、本実施例に係る軟性フィルム複合基板の剥離強度は0.65kg/cm2に達し、したがって、本実施例の構造によれば、樹脂基材1と銅合金層2と銅箔層3とは優れた結合効果を有し、また、本実施例の構造の実際使用中には、温度が150℃に上昇したときに、樹脂基材1はより良い熱歪み特性を有し、且つ樹脂基材1と銅合金層2と銅箔層3とは優れた結合効果を有するので、軟性電子回路基板のメッキ層はリフティング(blisterまたはlifting)や剥離(peeling)が発生せず、使用寿命が長くなる。
【0017】
本発明に係る軟性フィルム複合基板の構造は、従来のものと比較すると、従来のものはクロム付着層とニッケル・クロム合金付着層と銅付着層などが全て銅箔の連接層(tie-coating)であり、なお、本発明の構造は、一つの銅合金層だけを連接層(tie-coating)とすることにより、樹脂基材1と銅合金層2と銅箔層3とは優れた結合効果を有するので、製造コストが低減し、製造プロセスが簡単になる。
【図面の簡単な説明】
【0018】
【図1】本発明の一実施例による軟性フィルム複合基板の構造を示す分解斜視図である。
【図2】本発明の一実施例による軟性フィルム複合基板の構造を示す断面図である。
【図3】従来の軟性電子回路基板の構造を示す分解斜視図である。
【図4】従来の軟性電子回路基板の構造を示す断面図である。
【符号の説明】
【0019】
1 樹脂基材、2 銅合金層、3 銅箔層

【特許請求の範囲】
【請求項1】
一つの樹脂基材を有し、真空物理メッキ方式により前記樹脂基材上に厚さが10〜10000×10-10m程度の銅合金層を付着し、前記銅合金層は、0.1%〜99.95%の銅と、ニッケル、クロム、マンガン、モリブデン、鉄またはリンのうちの少なくとも一つ以上の元素とから構成された合金であり、真空物理メッキ方式により前記銅合金層上に銅箔層が付着されていることを特徴とする軟性フィルム複合基板。
【請求項2】
前記銅箔層は、10%〜99.95%の銅と、ニッケル、クロム、マンガン、モリブデン、鉄またはリンのうちの少なくとも一つ以上の元素とから構成された合金であることを特徴とする請求項1に記載の軟性フィルム複合基板。
【請求項3】
前記樹脂基材は、ポリイミド(PI)、ポリエチレンテレフタラート(PET)、ポリカーボネート(PC)またはポリメタクリル酸メチル(PMMA)のうちの何れか一つの材料を採用することを特徴とする請求項1に記載の軟性フィルム複合基板。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【公開番号】特開2006−192775(P2006−192775A)
【公開日】平成18年7月27日(2006.7.27)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2005−7720(P2005−7720)
【出願日】平成17年1月14日(2005.1.14)
【出願人】(501029319)勝華科技股▲分▼有限公司 (12)
【Fターム(参考)】