説明

軸受構造及び該軸受構造を備えた過給機

【課題】円筒形状を有したセミフロート軸受の回転を規制することができ、且つダンピング効果が高くセミフロート軸受の振動を十分に抑制可能である軸受構造及び該軸受構造を備えた過給機を提供する。
【解決手段】タービン軸8が挿通された円筒状のセミフロート軸受と、該セミフロート軸受が挿入される挿入口7a、7bを備えたハウジング7とを備え、前記挿入口7a、7bの内周面と前記セミフロート軸受の軸受部10a、10bの外周面の間に隙間11が形成され、該隙間11に供給された流体を介して前記セミフロート軸受が支持されるようにした軸受構造において、前記軸受部10a、10bの一部を切り欠いた切欠部12と、前記挿入口7a、7bの内周面に形成した凹部13とを設けるとともに、前記切欠部12と凹部13とを対面させて配置し、該切欠部12と凹部13との間に円柱状弾性体21を介装した構成を備える。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、回転軸の回転を支持するための円筒状を有したセミフロート軸受を備えた軸受構造に係り、特に、該セミフロート軸受が回転軸とともに回転することを規制するようにした軸受構造、及び該軸受構造を備えた過給機に関するものである。
【背景技術】
【0002】
従来、回転軸の回転を支持する軸受構造は、例えば船舶や自動車、発電機のエンジンなどの内燃機関が備える過給機などに用いられている。
過給機としては、例えば排気ターボ過給機が知られている。排気ターボ過給機は、内燃機関の排ガスによって回転駆動される排気タービンと、この排気タービンによって駆動される吸気タービンと、排気タービンと吸気タービンとを接続するタービン軸と、タービン軸を支持する軸受構造とを有している。軸受構造としては、タービン軸を支持する軸受(例えばすべり軸受)と、この軸受を支持するハウジングとを有する軸受構造が用いられる。
排気ターボ過給機は、排気ガスによって排気タービンが回転駆動されることで、排気タービンにタービン軸を介して接続された吸気タービンが回転駆動されて、吸気タービンによる外気の圧送が行われるようになっている。
【0003】
過給機のタービン軸のように、回転軸の回転速度が非常に速い場合には、回転軸の回転の安定性を確保するために、セミフロート軸受が用いられる。図6に、従来のセミフロート軸受を備えた軸受構造を示す。この軸受構造は、タービン軸8が挿通されたセミフロート軸受10と、該セミフロート軸受10が挿入される挿入口を備えた軸受ハウジング7と、を備える。そして、軸受ハウジング7の挿入口にセミフロート軸受10が挿入され、該セミフロート軸受10の離間した2箇所の軸受部10a、10bが挿入口7a、7bで支持される。挿入口7a、7bの内周面と軸受部10a、10bの外周面bの間には、流体が供給される隙間11が設けられている。この隙間11に供給された流体により形成される流体層によって、セミフロート軸受10が回転可能に支持される。
【0004】
このようなセミフロート式の軸受構造では、軸受が径方向に変位して軸受の外周面がハウジングに近接すると、この部分で隙間内の流体が圧縮されて流体の圧力が上昇し、この流体の圧力によって軸受が押し戻される。即ち、セミフロート式の軸受構造では、隙間内の流体圧力によって軸受が常に適正位置に向けて付勢されるので、軸受の径方向の振動が抑制される。
【0005】
ここで、回転軸と軸受の間には粘性摩擦が生じるので、回転軸を回転させると軸受には回転力が加わることとなる。このため、軸受には、回転軸と連れ回りしないように、その軸線方向の一端に、ハウジングに係合して軸受の軸線回りの回転を規制する係止ピンが設けられる。
しかし、過給機のタービン軸のように回転軸の回転速度が非常に速い場合には、軸受に加わる回転力や振動が大きいので、係止ピンには大きな負荷が加わる。このため、係止ピンが摩耗や金属疲労等によって折損してしまう恐れがあった。
【0006】
特許文献1(特開2002−70570号公報)には、セミフロート軸受をハウジング側にスラストピン(係止ピン)で固定する構成が開示されており、さらに耐摩耗性を向上させるために、スラストピン受け部に硬質のリングを嵌め込んだ構成を提案している。
しかしながら、軸受を係止ピンでハウジングに固定してしまうと、セミフロート軸受の径方向への移動量が小さくなり、流体層によるダンピング効果が低下し、振動を十分に抑制することが困難となる。
そこで、特許文献2(特開2007−113708号公報)には、ハウジングの挿入口の内周面及び軸受の外周面を、夫々軸線方向からみて楕円形状に形成した構成が開示されている。
【0007】
【特許文献1】特開2002−70570号公報
【特許文献2】特開平9−242553号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0008】
特許文献2に記載されるように、軸受を楕円形状に形成することにより、セミフロート軸受の回転を規制することが可能となり、且つ流体層によるダンピング効果を高くし、振動を十分に抑制することが可能となる。
しかしながら、軸受を楕円形状に製作することは手間がかかり、また製作誤差が大きくなるという問題があり、従来のように円筒形状を有したままで上記した効果を十分に発揮できるような軸受構造が望まれている。
従って、本発明は上記従来技術の問題点に鑑み、円筒形状を有したセミフロート軸受の回転を規制することができ、且つダンピング効果が高くセミフロート軸受の振動を十分に抑制可能である軸受構造及び該軸受構造を備えた過給機を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0009】
そこで、本発明はかかる課題を解決するために、第1発明として、回転軸が挿通された円筒状の軸受と、該軸受が挿入される挿入口を備えたハウジングとを備え、前記挿入口の内周面と前記軸受の外周面の間に隙間が形成され、該隙間に供給された流体を介して前記軸受が支持されるようにした軸受構造において、
前記軸受の一部を切り欠いた切欠部と、前記切欠部に対向して前記挿入口の内周面に形成された凹部とを備えるとともに、前記切欠部と前記凹部の間に円柱状弾性体又は球状弾性体を介装したことを特徴とする。
【0010】
本発明によれば、軸受に設けた切欠部と挿入口に設けた凹部との間に円柱状弾性体又は球状弾性体を介装した構成としているため、回転軸の回転に伴い軸受に対して回転力が加わった場合に、軸受の切欠部と、挿入口の凹部とが円柱状弾性体又は球状弾性体に接触することにより軸受の回転を規制することができる。また、これらが接触した際にも円柱状弾性体又は球状弾性体が変形することにより軸受の動きが完全に固定されることがないため、弾性体の部分も流体層と同様の作用を有することとなり、ダンピング効果が高く、振動を十分に抑制可能な軸受構造を提供することが可能となる。
【0011】
また、第2発明として、回転軸が挿通された円筒状の軸受と、該軸受が挿入される挿入口を備えたハウジングとを備え、前記挿入口の内周面と前記軸受の外周面の間に隙間が形成され、該隙間に供給された流体を介して前記軸受が支持されるようにした軸受構造において、
前記軸受の一部を切り欠いた切欠部を設けるとともに、前記切欠部の切欠面に沿って板状弾性体が配置され、該板状弾性体の一部が前記ハウジングに固定されていることを特徴とする。
【0012】
本発明によれば、軸受に切欠部を設け、該切欠部の切欠面に沿って板状弾性体を配置したため、回転軸の回転に伴い軸受に対して回転力が加わった場合に、軸受の切欠部とハウジングに固定した板状弾性体とが接触することにより、軸受の回転を規制することができる。また、これらが接触した際にも板状弾性体が変形することにより軸受の動きが完全に固定されることがないため、板状弾性体の部分も流体層と同様の作用を有することとなり、ダンピング効果が高く、振動を十分に抑制可能なセミフロート軸受を提供することが可能となる。
さらにまた、前記板状弾性体が、前記軸受の外周面に沿って均等に複数設けられていることが好ましい。これにより、軸受を挿入口の略中心位置に保持することができる。
【0013】
また、第3発明として、回転軸が挿通された円筒状の軸受と、該軸受が挿入される挿入口を備えたハウジングとを備え、前記挿入口の内周面と前記軸受の外周面の間に隙間が形成され、該隙間に供給された流体を介して前記軸受が支持されるようにした軸受構造において、
前記軸受の外周の中心軸が前記回転軸の軸心に対して偏心して構成されるとともに、該偏心した軸受の位置に対応させて、前記挿入口の内周面と前記軸受の外周面の隙間が均一の幅となるように前記挿入口が形成されていることを特徴とする。
【0014】
本発明によれば、軸受を回転軸に対して偏心させて設けるとともに、これに対応したハウジングの挿入口を偏心させて形成することにより、回転軸の回転に伴い軸受に対して回転力が加わった場合にも、偏心した軸受部が挿入口の内周面に接触することにより回転を規制することができる。さらに、軸受を軸受ハウジングに直接固定することは避け、軸受部の偏心により軸受の回転を規制するようにしており、軸受の外周面全周にわたって流体層が形成されるため、ダンピング効果が高く、振動を十分に抑制可能な軸受構造を提供することが可能となる
【0015】
さらにまた、排気タービンが備えるタービンハウジングとコンプレッサが備えるコンプレッサハウジングとが軸受ハウジングを介して一体に連結され、
前記軸受ハウジングには、タービン軸が上記した第1乃至第3発明の何れかに記載の軸受構造によって回転可能に支持されていることを特徴とする過給機を提案する。
このように構成される過給機では、タービン軸を支持する軸受構造が、上記した第1乃至第3発明に記載した回り止め構造を有しているので、軸受構造の耐久性が高く、また軸受の振動抑制効果が高い。
【発明の効果】
【0016】
以上記載のごとく本発明によれば、セミフロート軸受の回転を規制することができ、且つダンピング効果が高くセミフロート軸受の振動を十分に抑制可能である。
【発明を実施するための最良の形態】
【0017】
以下、図面を参照して本発明の好適な実施例を例示的に詳しく説明する。但しこの実施例に記載されている構成部品の寸法、材質、形状、その相対的配置等は特に特定的な記載がない限りは、この発明の範囲をそれに限定する趣旨ではなく、単なる説明例に過ぎない。
図5は、本発明が適用される排気ターボ過給機の主要部の軸線方向の断面図である。
かかる排気ターボ過給機は、内燃機関の排気ガス排出経路上に設けられて排気ガスによって駆動される排気タービン1と、該排気タービン1によって駆動されて外気を内燃機関の燃焼室に圧送するコンプレッサ2とを有している。
【0018】
また、排気タービン1が備えるタービンハウジング3とコンプレッサ2が備えるコンプレッサハウジング5とが軸受ハウジング7を介して一体に連結された構造を有しており、軸受ハウジング7には、タービン軸8がセミフロート軸受10によって回転可能に支持されている。具体的には、セミフロート軸受10は、タービン軸8の軸方向に離間して配設された一対の軸受部10a、10bの少なくとも2箇所にて、軸受ハウジング7にタービン軸8を支持する構成となっている。一方の軸受部10aはコンプレッサ2側に配設され、他方の軸受部10bは排気タービン1側に配設されている。
【0019】
排気タービン1側のタービン軸8の端部にはタービンホイール4が固定され、コンプレッサ2側のタービン軸8の端部にはコンプレッサホイール6が固定されており、タービンホイール4とコンプレッサホイール6とが軸受ハウジング7内でタービン軸8により連結されている。
また、軸受ハウジング7には、潤滑油の供給通路9が形成されており、不図示のポンプにより潤滑油が供給される。供給通路9を介して供給された潤滑油は、軸受ハウジング7とセミフロート軸受10の間の隙間11に充填される。この潤滑油により隙間11に流体層が形成され、タービン軸8が回転可能に支持されている。
【0020】
以下に示す第1実施形態乃至第3実施形態は、上記したセミフロート軸受10を備えた軸受構造に関するものであり、タービン軸8の回転によるセミフロート軸受10の連れ回りを防ぐ回り止め構造を備えている。
【0021】
(第1実施形態)
図1は本発明の第1実施形態に係る軸受構造の軸直交方向の断面図である。
図1において、軸受ハウジング7には、セミフロート軸受10の軸受部10a、10bが挿入される挿入口7a、7bが設けられている。挿入口7a、7bの内周面と軸受部10a、10bの外周面の間には、潤滑油が充填される隙間11が設けられている。
セミフロート軸受10は、隙間11に充填された潤滑油により形成される流体層を介してタービン軸8を回転可能に支持する軸受部10aと、該軸受部10aと軸方向に離間して位置し、同様に流体層を介してタービン軸8を回転可能に支持する軸受部10bと、軸受部10aと軸受部10bを連結する連結部10c(図3参照)と、から構成される。軸受部10a、10b、及び連結部10cは夫々円筒状に形成され、その外周径は軸受部10a、10bより連結部10cが小さい。
【0022】
かかる第1実施形態のセミフロート軸受10は、軸受部10a(又は10b、以下省略する)の一部に切欠部12を設けるとともに、軸受ハウジング7の挿入口7a(又は7b、以下省略する)の一部に凹部13を設け、軸受部10aの切欠部12と挿入口7aの凹部13とが対向するようにセミフロート軸受10を配置し、該切欠部12と凹部13で形成される空間に円柱状弾性体21を介装した構成となっている。円柱状弾性体21は中空円柱状であっても中実円柱状であってもよい。また該円柱状弾性体21は、その断面が正円状であっても楕円状であってもよい。また該円柱状弾性体21の代わりに球状弾性体21を一又は複数介装するようにしてもよい。
さらにまた、該円柱状弾性体21は、円筒状金属体のようにその形状から弾性を有するものであってもよいし、樹脂材料のように材質自体が弾性を有するものであってもよい。また、切欠部12は、図1に示されるように軸受部10aの断面の円に対して、タービン軸8にかからない弦の部分を切り欠いて形成してもよいし、挿入口7aの凹部13のように、円柱状弾性体21の形状に沿った凹部としてもよい。尚、上記構成は、軸受部10a、10bの少なくとも何れか一方に設けるものとする。
【0023】
本実施形態によれば、セミフロート軸受10の軸受部10a又は10bの少なくとも何れか一方に、円柱状弾性体21又は球状弾性体を介装した構成としているため、タービン軸8の回転に伴いセミフロート軸受10に対して回転力が加わった場合に、軸受部10a又は10bの切欠部12と、挿入口7a又は7bの凹部13とが円柱状弾性体21又は球状弾性体に接触することによりセミフロート軸受10の回転を規制することができる。また、これらが接触した際にも円柱状弾性体21又は球状弾性体が変形することによりセミフロート軸受10の動きが完全に固定されることがないため、円柱状弾性体21又は球状弾性体の部分も流体層と同様の作用を有することとなり、ダンピング効果が高く、振動を十分に抑制可能なセミフロート軸受を提供することが可能となる。
【0024】
(第2実施形態)
図2は本発明の第2実施形態に係る軸受構造の軸直交方向の断面図である。尚、以下の第2実施形態及び第3実施形態において、第1実施形態と同様の構成についてはその詳細な説明を省略する。
かかる第2実施形態のセミフロート軸受10は、軸受部10a(又は10b、以下省略する)の少なくとも一部に切欠部14を設け、該切欠部14の切欠面に沿って板状弾性体22を配置している。該板状弾性体22は、その両側の辺をセミフロート軸受10に設けた溝部15に嵌め込み、固定している。このとき、板状弾性体22と切欠部14の切欠面の間には微小な隙間を設けることが好ましい。尚、板状弾性体22は、セミフロート軸受10の外周に沿って均等に複数設けるようにしてもよい。この場合、図2に示されるように、板状弾性体22を正三角形状に配置することが好ましい。これにより、セミフロート軸受10の軸受部10a又は10bを挿入口7a又は7bの略中心位置に保持することができる。
【0025】
本実施形態によれば、セミフロート軸受10の軸受部10a又は10bの少なくとも何れか一方に形成した切欠部14と、該切欠部14の切欠面に沿って配置された板状弾性体22と、からなる回り止め構造を持たせることにより、タービン軸8の回転に伴いセミフロート軸受10に対して回転力が加わった場合に、軸受部10a又は10bの切欠部14と、軸受ハウジング7に固定した板状弾性体22とが接触することによりセミフロート軸受10の回転を規制することができる。また、これらが接触した際にも板状弾性体22が変形することによりセミフロート軸受10の動きが完全に固定されることがないため、板状弾性体22の部分も流体層と同様の作用を有することとなり、ダンピング効果が高く、振動を十分に抑制可能なセミフロート軸受を提供することが可能となる。
【0026】
(第3実施形態)
図3及び図4に、第3実施形態に係る軸受構造の構成を示す。図3は本発明の第3実施形態に係る軸受構造の軸線方向の断面図、図4は図3に示した軸受構造の軸直交方向の断面図で、(a)はX−X線断面図、(b)はY−Y線断面図である。
図3において、軸受ハウジング7には、セミフロート軸受10の軸受部10a、10bが挿入される挿入口7a、7bが設けられている。挿入口7a、7bの内周面と軸受部10a、10bの外周面bの間には、潤滑油が充填される隙間11が設けられている。
【0027】
セミフロート軸受10は、隙間11に充填された潤滑油により形成される流体層を介してタービン軸8を回転可能に支持する軸受部10aと、該軸受部10aと軸方向に離間して位置し、同様に流体層を介してタービン軸8を回転可能に支持する軸受部10bと、軸受部10aと軸受部10bを連結する連結部10cと、から構成される。軸受部10a、10b、及び連結部10cは夫々円筒状に形成され、その外径は軸受部10a、10bより連結部10cが小さい。
【0028】
図3及び図4に示すように、軸受部10a及び軸受部10bは、その外周の中心軸がタービン軸8の軸心に対して偏心してて設けられるとともに、偏心した軸受部10aと軸受部10bの外周の中心軸が夫々異なる位置となっている。即ち、図4において軸受部10aの中心軸Aと、軸受部10bの中心軸Bがずれた位置となるように形成されている。このとき、タービン軸8の軸心Cと、軸受部10aの中心軸Aと、軸受部10bの中心軸Bとが一直線上に位置するように構成してもよいし、これらが角度をもって位置するように構成してもよい。
また、軸受部10a又は軸受部10bの何れか一方のみを偏心させるようにしてもよい。この場合、他方の軸受部10b又は軸受部10aは、タービン軸8と同軸にする。
【0029】
さらに軸受部10a、10bの偏心に合わせて軸受ハウジング7の挿入口7a、7bもタービン軸8の軸心に対して偏心させて形成する。そして、軸受部10aと挿入口7a、及び軸受部10bと挿入口7bが、夫々均等な幅の隙間11を有するように構成し、流体層が均一に形成されるようにする。
【0030】
本実施形態によれば、セミフロート軸受10の軸受部10a、10bの少なくとも何れか一方を、タービン軸8に対して偏心させて設けるとともに、これに対応した軸受ハウジング7の挿入口7a、7bを偏心させて形成することにより、タービン軸8の回転に伴いセミフロート軸受10に対して回転力が加わった場合にも、偏心した軸受部10a、10bが挿入口7a、7bの内周面に接触することにより回転を規制することができる。また、本実施形態では、セミフロート軸受10の夫々の部位(軸受部10a、10b、連結部10c)を円柱状とし、少なくとも何れか一方の軸受部10a、10bを偏心させるのみであるため、容易に製作可能であり、製作誤差も小さくなる。
【0031】
さらに、軸受部10aと軸受部10bの両方とも偏心させ、且つ偏心の中心位置が異なるように構成することが好ましく、これによりセミフロート軸受10に回転力が加わった時に、偏心した軸受部10a、10bの外周面が挿入口7a、7bの内周面に接触する接触面積が大きくなり、軸受部10a、10bの外周面と挿入口7a、7bの内周面との接触面圧が低くなる。これによりセミフロート軸受10及び軸受ハウジング7に摩耗が生じ難くなり、耐久性を向上させることができる。
さらにまた、この排気ターボ過給機は、セミフロート軸受10を軸受ハウジング7に直接固定することは避け、軸受部10a、10bの偏心によりセミフロート軸受10の回転を規制するようにしており、セミフロート軸受10の外周面全周にわたって潤滑油による流体層が形成されるため、ダンピング効果が高く、振動を十分に抑制可能なセミフロート軸受を提供することが可能となる。
【産業上の利用可能性】
【0032】
本発明は、セミフロート軸受の回転を規制することができ、且つダンピング効果が高くセミフロート軸受の振動を十分に抑制可能であるため、排気ターボ過給機に好適に用いることができる。
【図面の簡単な説明】
【0033】
【図1】本発明の第1実施形態に係る軸受構造の軸直交方向の断面図である。
【図2】本発明の第2実施形態に係る軸受構造の軸直交方向の断面図である。
【図3】本発明の第3実施形態に係る軸受構造の軸線方向の断面図である。
【図4】図3に示した軸受構造の軸直交方向の断面図で、(a)はX−X線断面図、(b)はY−Y線断面図である。
【図5】本発明が適用される排気ターボ過給機の主要部の軸線方向の断面図である。
【図6】従来の軸受構造の軸線方向の断面図である。
【符号の説明】
【0034】
1 排気タービン
2 コンプレッサ
3 タービンハウジング
5 コンプレッサハウジング
7 軸受ハウジング
7a、7b 挿入口
8 タービン軸
9 潤滑油供給通路
10 セミフロート軸受
10a、10b 軸受部
11 隙間
12、14 切欠部
13 凹部
15 溝部
21 円柱状弾性体
22 板状弾性体

【特許請求の範囲】
【請求項1】
回転軸が挿通された円筒状の軸受と、該軸受が挿入される挿入口を備えたハウジングとを備え、前記挿入口の内周面と前記軸受の外周面の間に隙間が形成され、該隙間に供給された流体を介して前記軸受が支持されるようにした軸受構造において、
前記軸受の一部を切り欠いた切欠部と、前記切欠部に対向して前記挿入口の内周面に形成された凹部とを備えるとともに、前記切欠部と前記凹部の間に円柱状弾性体又は球状弾性体を介装したことを特徴とする軸受構造。
【請求項2】
回転軸が挿通された円筒状の軸受と、該軸受が挿入される挿入口を備えたハウジングとを備え、前記挿入口の内周面と前記軸受の外周面の間に隙間が形成され、該隙間に供給された流体を介して前記軸受が支持されるようにした軸受構造において、
前記軸受の一部を切り欠いた切欠部を設けるとともに、前記切欠部の切欠面に沿って板状弾性体が配置され、該板状弾性体の一部が前記ハウジングに固定されていることを特徴とする軸受構造。
【請求項3】
前記板状弾性体が、前記軸受の外周面に沿って均等に複数設けられていることを特徴とする請求項2記載の軸受構造。
【請求項4】
回転軸が挿通された円筒状の軸受と、該軸受が挿入される挿入口を備えたハウジングとを備え、前記挿入口の内周面と前記軸受の外周面の間に隙間が形成され、該隙間に供給された流体を介して前記軸受が支持されるようにした軸受構造において、
前記軸受の外周の中心軸が前記回転軸の軸心に対して偏心して構成されるとともに、該偏心した軸受の位置に対応させて、前記挿入口の内周面と前記軸受の外周面の隙間が均一の幅となるように前記挿入口が形成されていることを特徴とする軸受構造。
【請求項5】
排気タービンが備えるタービンハウジングとコンプレッサが備えるコンプレッサハウジングとが軸受ハウジングを介して一体に連結され、
前記軸受ハウジングには、タービン軸が請求項1乃至4の何れかに記載の軸受構造によって回転可能に支持されていることを特徴とする過給機。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【公開番号】特開2010−133530(P2010−133530A)
【公開日】平成22年6月17日(2010.6.17)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2008−311845(P2008−311845)
【出願日】平成20年12月8日(2008.12.8)
【出願人】(000006208)三菱重工業株式会社 (10,378)
【Fターム(参考)】