説明

輪帯位相補正レンズおよび光ヘッド装置

【課題】 樹脂製であっても、環境温度が変化しても収差が大きく変化しない輪帯位相補正レンズ、この輪帯位相補正レンズを用いた光学系、およびこの光学系を用いたヘッド装置を提供すること。
【解決手段】 対物レンズ3として用いた輪帯位相補正レンズにおいて、第1レンズ面31に光軸方向の段差A11、A12、A13を介して隣接する複数の輪帯状屈折曲面B11、B12、B13、B14を備えた屈折面を形成する。その際、屈折面は、3つ以上の輪帯状屈折曲面に分割するとともに、屈折面の有効半径の1/2以上の外側領域には、外側の輪帯状屈折曲面でのレンズ厚を内側の輪帯状屈折曲面でのレンズ厚よりも厚くする段差を形成する。それにより、屈折面が最内周の非球面式のみで表された分割の無い場合と比較して温度変化による3次球面収差の変化量を1/2以下とする。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、レーザ光の位相を補正する輪帯状屈折曲面を備えた輪帯位相補正レンズ、この輪帯位相補正レンズを用いた光学系、およびこの光学系を用いたヘッド装置に関するものである。
【背景技術】
【0002】
CDやDVD等の光記録媒体に対して情報の記録や再生を行なう光ヘッド装置では、半導体レーザから出射されたレーザ光を対物レンズによってCDやDVDの記録面に収束させる。このような対物レンズとしては、従来、樹脂成形した単純非球面形状の屈折レンズや、屈折面に回折パターンを形成したレンズが用いられている。
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0003】
しかしながら、樹脂製の屈折レンズでは、通常、常温付近で収差が最小となるように設計、加工してあるため、環境温度が変化して屈折率変化や膨張収縮が発生すると、球面収差が変化する。従って、低温環境下や高温環境下では、大きな球面収差が発生する結果、ジッターが悪化する。ここで、樹脂製のレンズは、ガラス製のレンズより屈折率変化や膨張収縮が大きいが、安価であることを優先して採用されている。従って、樹脂製のレンズを用いる場合、NAの小さなレンズを使うことにより収差の変化を小さくして高速化を犠牲にするか、使用温度範囲を狭く設定するなどの妥協を行わざるを得ない。
【0004】
また、屈折面に回折パターンを付加したレンズに関しては、波長変化による回折力の変化を利用して球面収差の変化を相殺する方法も提案されているが、この種のレンズでは微細な回折パターンを形成する必要があるため、特殊な装置で金型を製作する必要がある。
【0005】
以上の問題点に鑑みて、本発明の課題は、樹脂製であっても、環境温度が変化しても収差が大きく変化しない輪帯位相補正レンズ、この輪帯位相補正レンズを用いた光学系、およびこの光学系を用いたヘッド装置を提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0006】
上記課題を解決するために、本発明では、第1レンズ面および第2レンズ面のうちの少なくとも一方に光軸方向の段差を介して隣接する複数の輪帯状屈折曲面を備えた屈折面を有し、半導体レーザから出射されたレーザ光の位相を当該輪帯状屈折曲面毎に補正する樹脂製の輪帯位相補正レンズにおいて、前記屈折面は、3つ以上の輪帯状屈折曲面に分割されているとともに、当該屈折面の有効半径の1/2以上の外側領域には、外側の輪帯状屈折曲面でのレンズ厚を内側の輪帯状屈折曲面でのレンズ厚よりも厚くする段差が形成され、前記屈折面が最内周の非球面式のみで表された分割の無い場合と比較して温度変化による3次球面収差の変化量が1/2以下になっていることを特徴とする。
【0007】
本発明に係るレンズにおいて、温度が上昇すると、レンズの屈折率変化や膨張収縮によって球面収差が変化する。これに対して、温度が上昇すると、レーザ光の波長は長くなって球面収差が+の方にシフトする。ここで、温度変化に起因する球面収差の発生は、レンズの有効径の1/2以上の領域で顕著である。そこで、本発明では、屈折面を3つ以上の輪帯状屈折曲面に分割し、かつ、当該屈折面の有効半径の1/2以上の外側領域には、外側の輪帯状屈折曲面でのレンズ厚を内側の輪帯状屈折曲面でのレンズ厚よりも厚くする段差を形成することにより、温度が上昇した際には、レンズの屈折率変化や膨張収縮によって変化する球面収差と、レーザ光の波長は長くなることに起因する球面収差とを相殺させる。すなわち、段差部分では、段差の高さ×(屈折率−1)の光路長差が存在しており、常温では、この光路長差が波長の略整数倍になっているため、波面収差が発生していないが、温度が変化すると、レーザ光の波長が変化し、波長の略整数倍からずれるので、このずれにより発生する波面収差が、温度変化により発生する球面収差をキャンセルする。それ故、屈折面のみで、例えば、−30℃〜+80℃の広い範囲にわたって3次球面収差を抑えることができるので、常温と同程度の特性を得ることができる。
【0008】
本発明において、開口数をNAとしたとき、NAは下式
NA > 0.45
を満たし、かつ、温度をtとしたとき、温度が下式
−30℃ < t < 80℃
で表される範囲内で3次球面収差の絶対値が0.015λrms以下であることが好ましい。
【0009】
本発明において、最内周を除く前記輪帯状屈折曲面の幅寸法の平均値をWとしたとき、下式で示す条件
W/前記屈折面の有効半径 > 0.05
を満たすことが好ましい。輪帯状屈折曲面の数を増やせばその分、波面収差を抑えることができるが、その場合、段差の数が増えてしまい、回折方式と同様、段差部分での損失が増大し、光線の利用効率が低下する。しかるに輪帯状屈折曲面の幅をある程度以上広くすると、輪帯状屈折曲面の数、すなわち、段差の数が少ないので、段差部分での損失を低く抑えることができるので、光線の利用効率が高い。また、レンズを成形するための金型を製作する際、段差部分への加工が少なくて済む。それ故、段差部分を加工する際に発生するダレの影響が小さい。また、段差部分を加工するのに鋭利なバイトを用いてなくても、通常の非球面加工機で金型を製作できるという利点がある。
【0010】
本発明を適用したレンズと半導体レーザとを備えた光学系では、前記半導体レーザは、温度が上昇すると、出射するレーザ光の波長が長波長側にシフトする特性を備え、温度1℃当たりの前記レーザ光の波長の変化量をK(nm/℃)とし、外側の輪帯状屈折曲面でのレンズ厚を内側の輪帯状屈折曲面でのレンズ厚よりも厚くするような隣接段差の合計の絶対値をTとしたとき、
(T×(n−1)×K/波長) > 1.5
であることが好ましい。
【0011】
本発明に係る光学系は、光ヘッド装置などに用いられる。
【発明の効果】
【0012】
本発明に係るレンズにおいては、屈折面を3つ以上の輪帯状屈折曲面に分割し、かつ、当該屈折面の有効半径の1/2以上の外側領域には、外側の輪帯状屈折曲面でのレンズ厚を内側の輪帯状屈折曲面でのレンズ厚よりも厚くする段差を形成することにより、温度が上昇した際には、レンズの屈折率変化や膨張収縮によって変化する球面収差と、レーザ光の波長は長くなることに起因する球面収差とを相殺することができるので、常温と同程度の収差特性を得ることができる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0013】
図面を参照して、本発明を適用したレンズ(輪帯位相補正レンズ)、およびこのレンズを対物レンズとして用いた光ヘッド装置を説明する。
【0014】
[光ヘッド装置の構成]
図1(a)、(b)、(c)、(d)はそれぞれ、本発明を適用したレンズを備えた有限共役系の光ヘッド装置の構成を示す説明図、本発明を適用したレンズを備えた無限共役系の光ヘッド装置の構成を示す説明図、本発明を適用したレンズの正面図、その断面図、本発明を適用したレンズの隣接段差の説明図、および頂点段差の説明図である。
【0015】
図1(a)、(b)に示すように、本形態の光ヘッド装置1は、DVD、CD、CD−Rなどの光記録媒体4に対して情報の再生、記録を行うものであり、所定波長のレーザ光を出射する半導体レーザ2と、この半導体レーザ2から出射されたレーザ光を光記録媒体4の記録面に収束させる樹脂製の対物レンズ3とを備えている。また、図示を省略するが、光ヘッド装置1は、光記録媒体4で反射されたレーザ光束の戻り光を検出するための受光素子や、光記録媒体4で反射されたレーザ光束の戻り光を受光素子に導く光路分離素子なども備えている。
【0016】
このような光学系は、図1(a)に示すように、光路の途中位置にコリメートレンズを備えていない有限共役系、あるいは図1(b)に示すように、光路の途中位置にコリメートレンズ5を配置した無限共役系とに大別される。
【0017】
ここで、後述する各面は、有限共役系の場合、
第1面c1・・半導体レーザ
第2面c2・・対物レンズ3の第1レンズ面31
第3面c3・・対物レンズ3の第2レンズ面32
第4面c4・・光記録媒体4の表面
第5面c5・・光記録媒体4の記録面
であり、無限共役系の場合、
第1面c1・・対物レンズ3の第1レンズ面31
第2面c2・・対物レンズ3の第2レンズ面32
第3面c3・・光記録媒体4の表面
第4面c4・・光記録媒体4の記録面
となる。
【0018】
本形態では、対物レンズ3として、図1(c)、(d)に示す樹脂製の輪帯位相補正レンズが用いられている。この輪帯位相補正レンズは、第1レンズ面31および第2レンズ面32のうちの少なくとも一方に光軸方向の段差を介して隣接する複数の輪帯状屈折曲面を備えた屈折面を有している。なお、図1(c)、(d)に示す輪帯位相補正レンズでは、入射側の第1レンズ面31が、光軸方向の段差A11、A12、A13を介して隣接する複数の輪帯状屈折曲面B11、B12、B13、B14を備えた屈折面になっており、半導体レーザ2から出射されたレーザ光の位相を輪帯状屈折曲面B11、B12、B13、B14毎に補正するが、このような輪帯状屈折曲面や段差は、第2レンズ面32に形成してもよい。なお、本願明細書において、図1(e)、(f)に示すように、隣接する輪帯状屈折曲面B11、B12、B13、B14の間に形成される段差A11、12A、A13を「隣接段差」と定義し、隣接する輪帯状屈折曲面B11、B12、B13、B14を光軸に向けて延長したときに、光軸上頂点と最内周屈折曲面の頂点との距離を「頂点段差」と定義する。
【0019】
このような構成の輪帯位相補正レンズにおいて、本形態では、各実施例を後述するように、第1レンズ面31(屈折面)は、3つ以上の輪帯状屈折曲面B11、B12、B13、B14に分割されているとともに、第1レンズ面31の有効半径の1/2以上の外側領域には、外側の輪帯状屈折曲面でのレンズ厚を内側の輪帯状屈折曲面でのレンズ厚よりも厚くする段差A11、A12、A13が形成され、第1レンズ面31が最内周の非球面式のみで表された分割の無い場合と比較して温度変化による3次球面収差の変化量が1/2以下になっている。
【0020】
また、半導体レーザ2は、温度が上昇すると、出射するレーザ光の波長が長波長側にシフトする特性を備え、温度1℃当たりのレーザ光の波長の変化量をK(nm/℃)とし、段差のうち、外側の輪帯状屈折曲面でのレンズ厚を内側の輪帯状屈折曲面でのレンズ厚よりも厚くするような隣接段差の合計の絶対値をTとしたとき、T、nは下式
(T×(n−1)×K/波長) > 1.5
を満たしている。
【0021】
従って、温度が変化すると、レーザ光の波長が変化し、波長の略整数倍からずれるので、このずれにより発生する波面収差が、温度変化により発生する球面収差をキャンセルする。それ故、本発明によれば、屈折面のみで、例えば、−30℃〜+80℃の広い範囲にわたって3次球面収差を抑えることができるので、常温と同程度の特性を得ることができる。
【0022】
また、本発明では、開口数をNAとしたとき、NAは下式
NA > 0.45
を満たし、かつ、温度をtとしたとき、温度が下式
−30℃ < t < 80℃
で表される範囲内で3次球面収差の絶対値が0.015λrms以下である。
【0023】
さらに、最内周の輪帯状屈折曲面B11を除く輪帯状屈折曲面B12、B13、B14の幅寸法の平均値をWとしたとき、下式で示す条件
W/前記屈折面の有効半径 > 0.05
を満たしている。このように構成すると、輪帯状屈折曲面の数、すなわち、段差の数が少ないので、段差部分での損失を低く抑えることができるので、光線の利用効率が高い。また、レンズを成形するための金型を製作する際、段差部分への加工が少なくて済む。それ故、段差部分を加工する際に発生するダレの影響が小さい。また、段差部分を加工するのに鋭利なバイトを用いてなくても、通常の非球面加工機で金型を製作できるという利点がある。
【0024】
また、以下に説明する比較例および実施例のレンズ設計データにおいて、レンズ面31の非球面形状Z(r)は、回転対称で、半径座標rに対して下式
Z(r)=cr2/[1+{1−(1+k)c221/2
+A2・r2+A4・r4+A6・r6+・・
で表される。cは曲率半径Rの逆数、kは円錐定数、A2、A4、A6・・は、それぞれ2次、4次、6次・・の非球面係数である。なお、非球面係数の表示において、A−4、A−6、A−8・・・は、それぞれA4、A6、A8・・・を示し、Eに続く数字mは、1×10mを意味する。なお、以下のデータにおいて、各輪帯データは最内周から外周へ向かう順番に記述してある。また、頂点段差は、外周側の輪帯状屈折曲面を内周側の輪帯状屈折曲面に対してレンズ厚を厚くしている場合には「−」を付してある。これに対して、隣接段差は、外周側の輪帯状屈折曲面が厚くなる場合には正の値をとる。
【0025】
[比較例]
本発明を適用したレンズを説明する前に、その比較例に係るレンズの構成を説明しておく。ここに示す比較例は、屈折面が最内周の非球面式のみで表された分割の無い場合に相当しており、この比較例に係るレンズを有限共役系の対物レンズとして用いた場合の−30℃、25℃、80℃での特性を図2(a)、(b)、(c)に示す。
f=2.62
λ=780nm
NA=0.46
K=0.27nm/℃
線膨脹率6×10-5cm/cm℃
【0026】
(光学系)
曲率半径 間隔 屈折率
25℃ −30℃ 80℃
780nm 765nm 795nm
第1面 0.00000 15.65 1.00000 1.00000 1.00000
第2面 1.85827 1.50 1.51913 1.52491 1.51276
第3面 −3.68962 1.65 1.00000 1.00000 1.00000
第4面 0.00000 1.20 1.57238 1.57983 1.56358
第5面 0.00000 1.00000 1.00000 1.00000
【0027】
(レンズ設計データ)
第1レンズ面 非球面形状
R=1.85827
k=−0.344578E+00
A−4=−0.965394E−02
A−6=−0.973300E−03
A−8=0.359506E−04
A−10=−0.184903E−03
第2レンズ面 非球面形状
R=−3.68962
k=−0.91720E+01
A−4=0.447168E−03
A−6=0.256283E−02
A−8=−0.181727E−02
A−10=0.281000E−03
【0028】
(結果)
本例の対物レンズにおける温度と3次球面収差は以下の通りであった。
温度 波面収差 3次球面収差(λrms)
−30℃ 0.032 0.032
25℃ 0.000 0.000
80℃ 0.037 ―0.037
【0029】
[実施例1]
以下に示す条件で構成した本発明の実施例1に係るレンズを有限共役系の対物レンズとして用いた場合の−30℃、25℃、80℃での特性を図3(a)、(b)、(c)に示す。
f=2.62
λ=780nm
NA=0.46
K=0.27nm/℃
線膨脹率 6×10-5cm/cm℃
(T×(n−1)×K/波長)の条件式=2.2
【0030】
(光学系)
曲率半径 間隔 屈折率
25℃ −30℃ 80℃
780nm 765nm 795nm
第1面 0.00000 15.65 1.00000 1.00000 1.00000
第2面 1.85827 1.50 1.51913 1.52491 1.51276
第3面 −3.68962 1.65 1.00000 1.00000 1.00000
第4面 0.00000 1.20 1.57238 1.57983 1.56358
第5面 0.00000 1.00000 1.00000 1.00000
【0031】
(レンズ設計データ)
第1レンズ面 非球面形状
輪帯半径=1.00000
頂点段差=0.00000
R=1.85827
k1=−0.344578E+00
A1−4=−0.965394E−02
A1−6=−0.973300E−03
A1−8=0.359506E−04
A1−10=−0.184903E−03
隣接段差=0.00307
輪帯半径=1.20000
頂点段差=−0.00145
R=1.88507
k2=−0.387393E+00
A2−4=−0.897516E−02
A2−6=0.751439E−02
A2−8=−0.738029E−02
A2−10=0.186018E−02
隣接段差=0.00314
輪帯半径=1.32000
頂点段差=−0.01521
R=1.83336
k3=−0.321876E+00
A3−4=−0.788244E−02
A3−6=0.830224E−02
A3−8=−0.117442E−01
A3−10=0.307881E−02
隣接段差=0.00637
輪帯半径=1.85610
頂点段差=−0.01824
R=1.82468
k4=−0.323170E+00
A4−4=−0.163399E−01
A4−6=0.724155E−02
A4−8=−0.494129E−02
A4−10=0.726214E−03
第2レンズ面 非球面形状
R=−3.68962
k=−0.91720E+01
A−4=0.447168E−03
A−6=0.256283E−02
A−8=−0.181727E−02
A−10=0.281000E−03
【0032】
(結果)
本例の対物レンズにおける温度と3次球面収差は以下の通りであった。
温度 波面収差 3次球面収差(λrms)
−30℃ 0.021 0.001
25℃ 0.006 ―0.001
80℃ 0.021 ―0.010
【0033】
このように、本例の輪帯位相補正レンズは、屈折面が最内周の非球面式のみで表された分割の無い場合(比較例)と比較して温度変化による3次球面収差の変化量が1/2以下である。また、温度が−30℃〜80℃の範囲内で3次球面収差の絶対値が0.015λrms以下である。
【0034】
[実施例2]
以下に示す条件で構成したレンズを無限共役系の対物レンズとして用いた場合の−30℃、25℃、80℃での特性を図4(a)、(b)、(c)に示す。
f=3.4
λ=780
NA=0.53
K=0.25nm/℃
線膨脹率 6×10-5cm/cm℃
(T×(n−1)×K/波長)の条件式=1.9
【0035】
(光学系)
曲率半径 間隔 屈折率
25℃ −30℃ 80℃
780nm 765nm 795nm
第1面 2.12374 1.60 1.52499 1.53019 1.51912
第2面 −7.91494 1.75 1.00000 1.00000 1.00000
第3面 0.00000 1.20 1.57238 1.57980 1.56361
第4面 0.00000 1.00000 1.00000 1.00000
【0036】
(レンズ設計データ)
第1レンズ面 非球面形状
輪帯半径=1.30000
頂点段差=0.00000
R=2.12374
k1=−0.101153E+01
A1−4=0.718465E−02
A1−6=0.196934E−03
A1−8=0.177540E−04
A1−10=−0.608838E−05
隣接段差=0.00318
輪帯半径=1.50000
頂点段差=−0.00359
R=2.11897
k2=−0.101153E+01
A2−4=0.699128E−02
A2−6=0.205894E−03
A2−8=0.177540E−04
A2−10=−0.608838E−05
隣接段差=0.00326
輪帯半径=1.65000
頂点段差=−0.01019
R=2.08325
k3=−0.101153E+01
A3−4=0.536438E−02
A3−6=0.423921E−03
A3−8=0.177540E−04
A3−10=−0.608838E−05
隣接段差=0.00502
輪帯半径=1.85000
頂点段差=−0.01080
R=2.12374
k4=−0.101153E+01
A4−4=0.700315E−02
A4−6=0.215630E−03
A4−8=0.177540E−04
A4−10=−0.608838E−05
第2レンズ面 非球面形状
R=−7.91494
k=−0.38794E+02
A−2=0.284111E−02
A−4=0.240191E−02
A−6=−0.599799E−03
A−8=0.501954E−04
A−10=−0.126791E−06
【0037】
(結果)
本例の対物レンズにおける温度と3次球面収差は以下の通りであった。
温度 波面収差 3次球面収差(λrms)
−30℃ 0.015 0.003
25℃ 0.002 0.000
80℃ 0.016 ―0.008
【0038】
このように、本形態の輪帯位相補正レンズは、屈折面が最内周の非球面式のみで表された分割の無い場合(比較例)と比較して温度変化による3次球面収差の変化量が1/2以下である。また、温度が−30℃〜80℃の範囲内で3次球面収差の絶対値が0.015λrms以下である。
【0039】
[実施例3]
以下に示す条件で構成したレンズを無限共役系の対物レンズとして用いた場合の−30℃、25℃、80℃での特性を図5(a)、(b)、(c)に示す。
f=3.0
λ=655nm
NA=0.6
K=0.2nm/℃
線膨脹率=7×10-5cm/cm℃
(T×(n−1)×K/波長)の条件式=3.3
【0040】
(光学系)
曲率半径 間隔 屈折率
25℃ −30℃ 80℃
655nm 644nm 666nm
第1面 1.87382 1.75 1.54064 1.54447 1.53463
第2面 −8.14441 1.64 1.00000 1.00000 1.00000
第3面 0.00000 0.60 1.57824 1.58601 1.56912
第4面 0.00000 1.00000 1.00000 1.00000
【0041】
(レンズ設計データ)
第1レンズ面 非球面形状
輪帯半径=1.40000
頂点段差=0.00000
R=1.87382
k1=−0.103847E+01
A1−4=0.102800E−01
A1−6=0.621703E−03
A1−8=0.457556E−04
A1−10=0.909323E−05
A1−12=−0.533372E−06
隣接段差=0.00405
輪帯半径=1.62000
頂点段差=−0.00373
R=1.87382
k2=−0.103917E+01
A2−4=0.100273E−01
A2−6=0.796436E−03
A2−8=0.118799E−05
A2−10=0.518841E−05
A2−12=0.167356E−05
隣接段差=0.00859
輪帯半径=1.75000
頂点段差=−0.01722
R=1.87024
k3=−0.103221E+01
A3−4=0.151900E−01
A3−6=−0.362686E−02
A3−8=0.175083E−02
A3−10=−0.380942E−03
A3−12=0.387693E−04
隣接段差=0.00743
輪帯半径=2.00000
頂点段差=−0.02580
R=1.87016
k4=−0.103135E+01
A4−4=0.144483E−01
A4−6=−0.373525E−02
A4−8=0.246716E−02
A4−10=−0.672818E−03
A4−12=0.710146E−04
第2レンズ面 非球面形状
R=−8.14441
k=−0.49536E+02
A−4=0.612361E−02
A−6=−0.861128E−03
A−8= 0.575377E−04
A−10=−0.967370E−06
【0042】
(結果)
本例の対物レンズにおける温度と3次球面収差は以下の通りであった。
温度 波面収差 3次球面収差(λrms)
−30℃ 0.028 0.000
25℃ 0.010 0.003
80℃ 0.022 ―0.006
【0043】
このように、本形態の輪帯位相補正レンズは、屈折面が最内周の非球面式のみで表された分割の無い場合(比較例)と比較して温度変化による3次球面収差の変化量が1/2以下である。また、温度が−30℃〜80℃の範囲内で3次球面収差の絶対値が0.015λrms以下である。
【0044】
[実施例4]
以下に示す条件で構成したレンズを有限共役系の対物レンズとして用いた場合の−30℃、25℃、80℃での特性を図6(a)、(b)、(c)に示す。
f=2.62
λ=780nm
NA=0.46
K=0.15nm/℃
線膨脹率=6×10-5cm/cm℃
(T×(n−1)×K/波長)の条件式=1.9
【0045】
(光学系)
曲率半径 間隔 屈折率
25℃ −30℃ 80℃
780nm 772nm 788nm
第1面 0.00000 15.65 1.00000 1.00000 1.00000
第2面 1.85827 1.50 1.51913 1.52476 1.51290
第3面 −3.68962 1.65 1.00000 1.00000 1.00000
第4面 0.00000 1.20 1.57238 1.57961 1.56376
第5面 0.00000 1.00000 1.00000 1.00000
【0046】
(レンズ設計データ)
第1レンズ面 非球面形状
輪帯半径=1.00000
頂点段差=0.00000
R=1.85827
k1=−0.344578E+00
A1−4=−0.965394E−02
A1−6=−0.973300E−03
A1−8=0.359506E−04
A1−10=−0.184903E−03
隣接段差=0.00462
輪帯半径=1.20000
頂点段差=−0.00316
R=1.88514
k2=−0.387389E+00
A2−4=−0.872489E−02
A2−6=0.796437E−02
A2−8=−0.821551E−02
A2−10=0.216747E−02
隣接段差=0.00472
輪帯半径=1.32000
頂点段差=−0.02212
R=1.83275
k3=−0.321735E+00
A3−4=−0.363852E−02
A3−6=0.100096E−01
A3−8=−0.160570E−01
A3−10=0.441230E−02
隣接段差=0.00957
輪帯半径=1.85610
頂点段差=−0.02715
R=1.81824
k4=−0.323170E+00
A4−4=−0.164982E−01
A4−6=0.933401E−02
A4−8=−0.670466E−02
A4−10=0.109637E−02
第2レンズ面 非球面形状
R=−3.68962
k=−0.91720E+01
A−4=0.447168E−03
A−6=0.256283E−02
A−8=−0.181727E−02
A−10=0.281000E−03
【0047】
(結果)
本例の対物レンズにおける温度と3次球面収差は以下の通りであった。
温度 波面収差 3次球面収差(λrms)
−30℃ 0.022 0.000
25℃ 0.009 ―0.001
80℃ 0.021 ―0.009
【0048】
このように、本形態の輪帯位相補正レンズは、屈折面が最内周の非球面式のみで表された分割の無い場合(比較例)と比較して温度変化による3次球面収差の変化量が1/2以下である。また、温度が−30℃〜80℃の範囲内で3次球面収差の絶対値が0.015λrms以下である。
【0049】
[他の実施例]
上記実施例では、波長が約655nmのレーザ光、および波長が約785nmのレーザ光を例に説明したが、波長が約405nmのレーザ光を用い、表面保護層が0.1mmとさらに薄いBlue−ray Discを用いる場合に本発明を適用してもよい。
【0050】
また、上記実施例では、本発明を適用した輪帯位相補正レンズを対物レンズとして用いた例を説明したが、光軸上に配置されるその他のレンズに本発明を適用してもよい。
【図面の簡単な説明】
【0051】
【図1】(a)、(b)、(c)、(d)はそれぞれ、本発明を適用したレンズを備えた有限共役系の光ヘッド装置の構成を示す説明図、本発明を適用したレンズを備えた無限共役系の光ヘッド装置の構成を示す説明図、本発明を適用したレンズの正面図、その断面図、本発明を適用したレンズの隣接段差の説明図、および頂点段差の説明図である。
【図2】本発明の比較例に係るレンズの−30℃、25℃、80℃における球面収差を示すグラフである。
【図3】本発明の実施例1に係るレンズの−30℃、25℃、80℃における球面収差を示すグラフである。
【図4】本発明の実施例2に係るレンズの−30℃、25℃、80℃における球面収差を示すグラフである。
【図5】本発明の実施例3に係るレンズの−30℃、25℃、80℃における球面収差を示すグラフである。
【図6】本発明の実施例4に係るレンズの−30℃、25℃、80℃における球面収差を示すグラフである。
【符号の説明】
【0052】
1 光ヘッド装置
2 半導体レーザ
3 対物レンズ
4 光記録媒体
31 対物レンズの第1レンズ面
32 対物レンズの第2レンズ面
A11、A12、A13 段差
B11、B12、B13、B14 輪帯状屈折曲面

【特許請求の範囲】
【請求項1】
第1レンズ面および第2レンズ面のうちの少なくとも一方に光軸方向の段差を介して隣接する複数の輪帯状屈折曲面を備えた屈折面を有し、半導体レーザから出射されたレーザ光の位相を当該輪帯状屈折曲面毎に補正する樹脂製の輪帯位相補正レンズにおいて、
前記屈折面は、3つ以上の輪帯状屈折曲面に分割されているとともに、
当該屈折面の有効半径の1/2以上の外側領域には、外側の輪帯状屈折曲面でのレンズ厚を内側の輪帯状屈折曲面でのレンズ厚よりも厚くする段差が形成され、
前記屈折面が最内周の非球面式のみで表された分割の無い場合と比較して温度変化による3次球面収差の変化量が1/2以下になっていることを特徴とする輪帯位相補正レンズ。
【請求項2】
請求項1において、開口数をNAとしたとき、NAは下式
NA > 0.45
を満たし、かつ、温度をtとしたとき、温度が下式
−30℃ < t < 80℃
で表される範囲内で3次球面収差の絶対値が0.015λrms以下であることを特徴とするレンズ。
【請求項3】
請求項1または2において、最内周を除く前記輪帯状屈折曲面の幅寸法の平均値をWとしたとき、下式で示す条件
W/前記屈折面の有効半径 > 0.05
を満たすことを特徴とするレンズ。
【請求項4】
請求項1ないし3のいずれかに規定するレンズと、半導体レーザとを備えた光学系であって、
前記半導体レーザは、温度が上昇すると、出射するレーザ光の波長が長波長側にシフトする特性を備え、
温度1℃当たりの前記レーザ光の波長の変化量をK(nm/℃)とし、外側の輪帯状屈折曲面でのレンズ厚を内側の輪帯状屈折曲面でのレンズ厚よりも厚くするような隣接段差の合計の絶対値をTとしたとき、T、n、Kは下式
(T×(n−1)×K/波長) > 1.5
を満たすことを特徴とする光学系。
【請求項5】
請求項4に規定する光学系を有することを特徴とする光ヘッド装置。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【公開番号】特開2006−107680(P2006−107680A)
【公開日】平成18年4月20日(2006.4.20)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2004−296543(P2004−296543)
【出願日】平成16年10月8日(2004.10.8)
【出願人】(591021671)日本電産ニッシン株式会社 (13)
【Fターム(参考)】