説明

輸送機械用骨格構造部材及び同骨格構造部材の製造方法

中空の骨格部材(11)内に複数の粉粒体(18)を充填した骨格構造部材(12,38,50)が提供される。骸骨格部材内に離隔した隔壁形成材(21,23,26,35,42)が配設され、該隔壁形成材と骨格部材とで閉空間(16,37)が形成される。該閉空間内に上記複数の粉粒体が充填される。隔壁形成材を加熱して膨脹させることで隔壁部材(15,36)が形成され、閉空間の内圧が増大する。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
本発明は、鉄道車両、産業車両、船舶、航空機、自動車、自動二輪車等の輸送機械用骨格構造部材及び同骨格構造部材の製造方法に関する。
【背景技術】
骨格構造部材として、骨格部材に粉粒体を充填した技術が、例えば、特開2002−193649公報、米国特許第4610836号明細書、及び米国特許第4695343号明細書において知られている。
図10は、特開2002−193649公報に開示された骨格構造部材を構成する固形化粉粒体を示している。
この固形化粉粒体200は、複数の粉粒体201と、これらの粉粒体201を固形にするために複数の粉粒体201のそれぞれの間に満たした樹脂、又は接着剤からなるバインダ202とで構成され、複数の粉粒体を結合して固めたものである。粉粒体201を密にした状態で型に投入した後、バインダ202を流し込んで固形化粉粒体200を形成する。この固形化粉粒体200は、車体等の骨格部材内に挿入することで骨格構造部材が形成され、車体の強度、剛性の向上を図っている。
図11は、米国特許第4610836号明細書、及び米国特許第4695343号明細書に記載された骨格構造部材を構成する固形化粉粒体を示している。
上記固形化粉粒体210は、接着剤211をコーティングした粉粒体としてのガラス製の複数の小球体212からなる。これらの小球体212をガラス繊維製のクロスで包み、骨格部材内に満たすことで骨格構造部材が形成される。
しかし、図10に示した固形化粉粒体200では、粉粒体201のみの場合に比べてバインダ202の分だけ重量が増す。図11に示した固形化粉粒体210も同様に、小球体212のみの場合よりも接着剤211の分だけの重量が増す。このため、これらの固形化粉粒体200,210を用いた骨格構造部材の重量が大きくなる。
また、粉粒体201又は小球体212を密にすれば、固形化粉粒体200,210の剛性が高められるが、閉空間に粉粒体201又は小球体212を満たすには、外部から加圧する等の手段を講じなければならず、容易ではない。
次に、上記の固形化粉粒体200,210を用いた骨格構造部材を曲げ試験で強制的に曲げ変形させて、骨格構造部材の吸収エネルギー量を求める。
図12は、骨格構造部材の曲げ試験の方法を示している。曲げ試験は、骨格構造部材220を2つの支点221,221で支え、これらの支点221,221間の中央位置に対応する骨格構造部材220の上面に曲げ試験機の押圧片222を介して下向きの荷重Fを加えて行う。記号δは押圧片222のストローク量、即ち下方への変位量である。参照番号223は、骨格構造部材220内に挿入した固形化粉粒体である。
図13は、骨格構造部材の曲げ試験の結果として得られる荷重と変位量との関係を示したグラフであ。縦軸は荷重F、横軸は変位量δを表す。
このグラフでは、変位量δが小さいうちは、荷重Fは直線的に急激に立ち上がり、最大荷重f1が発生する。この後、変形量δが大きくなるにつれて、荷重Fは次第に減少し、やがてほぼ一定になる。
立ち上がりの直線部の上端の荷重をL、直線の角度をαとすると、角度αが大きいほど、また、荷重Lが大きい(即ち、直線部が長い)ほど骨格構造部材の剛性は大きい。更に、荷重f1が大きいほど、骨格構造部材の強度は大きい。
このグラフ上の線と横軸とで囲まれた部分の面積は、仕事量、即ち骨格構造部材の変形による吸収エネルギー量であり、例えば、車両の骨格構造における衝突時の吸収エネルギー量を求める場合に使用する。
図14A〜図14Dは、骨格構造部材の曲げ試験の結果として得られる荷重Fと変位量δとの関係、及び吸収エネルギー量を示したグラフである。
図14Aに示したグラフ中の試料1は、図13に示した骨格構造部材と同一の部材で、例えば中空の四角形断面とし、内部に固形化粉粒体を挿入していない骨格構造部材である。
試料2は、試料1の最大の荷重f1となる変位量より大きい変位量では、試料1よりも荷重Fが大きくなる。
試料3は、試料1の荷重f1となる変位量より大きい変位量では、試料2よりも荷重Fが大きくなる。
これらの試料1〜試料3の吸収エネルギー量は、図14Bに示される。
図14Bは、縦軸が吸収エネルギー量Eを表す。試料1〜試料3の各吸収エネルギー量をe1〜e3とすると、e1<e2<e3となる。
図14Cにおいて、試料4は、試料1よりも立ち上がりの角度α(図13参照)を大きくし、且つ試料1の荷重f1よりも大きな荷重f2を最大値とするものであり、荷重f2のときの変位量よりも大きな変位量δでは、次第に試料1に重なる。
試料5は、試料4よりも立ち上がりの角度α(図13参照)を大きくし、且つ試料4の荷重f2よりも大きな荷重f3を最大値とするものであり、荷重f3のときの変位量よりも大きな変位量δでは、次第に試料1に重なる。
これらの試料1、試料4及び試料5の吸収エネルギー量は、図14Dに示される。
図14Dは、縦軸が吸収エネルギー量Eを表す。試料4、試料5の各吸収エネルギー量をe4、e5とすると、e1<e4<e5となる。
図14A〜図14Dにより、荷重Fの最大値が大きくなっただけでは吸収エネルギー量の増加は小さいが、荷重Fの最大値を大きくするとともに、最大荷重発生後の荷重を高く維持すれば、吸収エネルギー量の増加を大きくすることができることが判る。
図15は、従来の骨格構造部材の曲げ試験におれる変形状態を示している。
例えば、固形化粉粒体200(図10も参照)を挿入した骨格構造部材205を曲げ試験で変形させた場合、固形化粉粒体200を挿入した部分はほとんど変形せず、固形化粉粒体200の端部側が大きく変形した。参照番号206は大きく変形して屈曲した骨格部材207の屈曲部である。
これは、充填率の高い粉粒体とバインダとによる強い結合のために、固形化粉粒体200を挿入した部分の強度が非常に高まり、固形化粉粒体200以外の部分に歪みが集中したと考えられる。
図16は、比較例1〜3として示した各骨格構造部材の曲げ試験を行ったグラフであり、縦軸は荷重F、横軸は変位量δを表す。各データの最大の変位量δは、変位量δを次第に増していき、急激に荷重Fが低下する直前の値を示している。
破線で示した比較例1は、中空の四角形断面を有する骨格構造部材で固形化粉粒体を挿入していないものであり、最大の変位量d5は大きいが、最大の荷重f5は小さい。
一点鎖線で示した比較例2は、図10及び図15に示した骨格構造部材、即ち中実の粉粒体をバインダで結合した固形化粉粒体を備えたものであり、粉粒体の結合が強固であるために最大の荷重f6は大きくなるが、曲げ試験の早期に固形化粉粒体以外の部分が局部的に大きく変形することにより最大の変位量d6は小さくなる。
二点鎖線で示した比較例3は、図11に示した骨格構造部材、即ち中実の粉粒体に接着剤をコーティングして結合した固形化粉粒体を備えたものであり、粉粒体の結合が強固なために最大の荷重f7は比較例2よりも大きくなるが、比較例2と同様に局部的な変形が大きいため、最大の変位量d7は小さい。
図17は、図16に示した各骨格構造部材(比較例1〜比較例3)の吸収エネルギー量を示す。縦軸は吸収エネルギー量Eを示す。
比較例1の吸収エネルギー量を1.0としたとき、比較例2の吸収エネルギー量は比較例1よりも小さく、比較例3は比較例1とほぼ同等の値となった。
このように、比較例2及び比較例3では、粉粒体が強固に結合するために骨格構造部材の粉粒体充填部分の強度が過度に高まり、曲げ試験の早期に局部崩壊が発生して荷重が急激に低下した結果、吸収エネルギー量は比較例1に対して向上しなかった。
そこで、粉粒体の固形化に伴う重量増を抑え、また骨格部材内に粉粒体を容易に充填でき、しかも骨格構造部材の吸収エネルギー量を増大させる輸送機械用骨格構造部材及び該骨格構造部材の製造方法が望まれる。
【発明の開示】
本発明においては、輸送機械に用いられる骨格構造部材であって、骨格部材と、該骨格部材内及び骨格部材とその周囲のパネル部材とで囲まれた空間に充填された複数の粉粒体と、前記複数の粉粒体を充填する閉空間を形成するため、前記骨格部材内及び又は前記空間に設けられた少なくとも1つの隔壁形成材を膨張させることで形成された隔壁部材と、を備えた輸送機械用骨格構造部材が提供される。
このように、隔壁形成材を膨張させることで隔壁を形成するため、容易に閉空間を形成することができるとともに、外部から加圧しなくても、簡単に閉空間内に粉粒体を満たした状態にすることができる。従って、閉空間に内圧を発生させることができ、この内圧によって、例えば、骨格構造部材の縦壁部の変形を抑えることができ、骨格構造部材の剛性及び強度を増すことができる。この結果、大きな変位量まで大きな荷重を支えることができ、従来の骨格構造部材に比較して、骨格構造部材の吸収エネルギー量を増大させることができる。
前記隔壁形成材は、好適には、前記複数の粉粒体が膨張するよりも速く膨張する。隔壁形成材が膨張して隔壁部材が形成された後に、粉粒体の膨張が完了すれば、粉粒体によって閉空間に内圧をより確実に発生させることができる。
上記隔壁形成材を、例えば発泡樹脂材料のように膨張しやすい材料にすれば、隔壁部材の重量が小さくなり、骨格構造部材の軽量化を図れるので好ましい。
さらに、本発明においては、骨格部材内及び骨格部材とその周囲のパネル部材とで囲まれる空間に複数の粉粒体を充填した輸送機械に用いられる骨格構造部材の製造方法であって、前記骨格部材内及び/又は前記空間に隔壁部材を形成するための複数の隔壁形成材を容器又は袋の内部に離間して配置する工程と、前記複数の隔壁形成材間に前記粉粒体を投入する工程と、前記容器ごと又は前記袋ごと前記骨格部材内及び/又は前記空間に配置する工程と、容器ごと又は袋ごと加熱する工程と、を含む輸送機械用骨格構造部材の製造方法が提供される。
容器又は袋に隔壁形成材及び粉粒体を入れることで、骨格部材内及び/前記空間に隔壁形成材及び粉粒体を配置する作業が容易になり、骨格構造部材の生産性を高めることができる。
【図面の簡単な説明】
図1は、本発明に係る輸送機械用骨格構造部材の斜視図である。
図2は、図1の2−2線に沿った第1実施例に係る骨格構造部材の断面図である。
図3は、図1の3−3線に沿った第1実施例に係る骨格構造部材の断面図である。
図4A〜図4Dは、第1実施例に係る骨格構造部材の製造方法を示した図である。
図5A〜図5Cは、第2実施例に係る骨格構造部材の製造方法を示した図である。
図6A〜図6Cは、本発明に係る骨格構造部材の曲げ試験時の変形状態を示した図である。
図7は、本発明に係る骨格構造部材の曲げ試験を示すグラフである。
図8A〜図8Cは、第3実施例に係る骨格構造部材の製造方法を示した図である。
図9A及び図9Bは、第4実施例に係る骨格構造部材の製造方法を示した図である。
図10は、従来の骨格構造部材を構成する第1の固形化粉粒体の断面図である。
図11は、従来の骨格構造部材を構成する第2の固形化粉粒体の断面図である。
図12は、骨格構造部材の曲げ試験の方法を示した図である。
図13は、骨格構造部材の曲げ試験における荷重と変位量との関係を示したグラフである。
図14A〜図14Dは、骨格構造部材の曲げ試験における荷重と変位量との関係、及び吸収エネルギー量を示したグラフである。
図15は、従来の骨格構造部材の曲げ試験における変形状態を示した図である。
図16は、比較例1〜3の各骨格構造部材の曲げ試験における荷重と変位量との関係を示したグラフである。
図17は、図6に示した各骨格構造部材の曲げ試験における吸収エネルギー量を示したグラフである。
【発明を実施するための最良の形態】
図1は、中空とした骨格部材11内に固形化粉粒体を充填した輸送機械用骨格構造部材12(以下、単に「骨格構造部材12」と記す。)を示している。参照番号13,13は骨格部材11の両端を塞ぐ端部閉塞部材である。
図2に示した骨格構造部材12は、骨格部材11と、該骨格部材11内に離間するよう設けられた2つの隔壁部材15,15と、これらの隔壁部材15,15の間の閉空間16に充填された熱可塑性樹脂からなる複数の粉粒体18とから構成される。ここでは、前記粉粒体18を骨格構造部材12の長手方向の中央に配置した。前記粉粒体18は、実際には外径が10μm〜5.0mmである。
隔壁部材15は、発泡樹脂からなり、後述する発泡樹脂材料を発泡させたものである。発泡樹脂材料は、常温で又は熱を加えた状態で発泡する性質を有する材料である。
図3は、中空の四角形断面とした骨格部材11内に複数の粉粒体18を充填した状態を示す。
上記したように、発泡樹脂で隔壁部材15,15(図2参照)を形成すると、発泡樹脂材が膨張して隔壁部材15,15となるときに、発泡樹脂材が粉粒体18を押圧しながら膨張するため、隔壁部材15が出来た後では、閉空間16は内圧が発生した状態となる。このように粉粒体18は骨格部材11を押圧するため、骨格部材11の縦壁部11a,11aは外部からの力によって変形しにくくなる。例えば、骨格構造部材12に上下方向の荷重が作用した場合、骨格部材11内に何も充填せず骨格部材11のみでその荷重を支えるのに比べて、本実施例では、より大きな荷重を支えることができる。
なお、本実施例では、図3に示したように、骨格部材として、断面閉空間を有する四角形状の部材を示しているが、本発明においてはこれに限らず、例えば断面U字状の開放部分を有する骨格部材と、開放部分を閉鎖する骨格部材周辺のパネル部材とで閉空間を形成するようにしてもよい。すなわち、本発明においては、骨格部材内及び又は骨格部材とその周囲のパネル部材とで囲まれる空間に複数の粉粒体を充填する。
図4A〜図4Dは、本発明の第1実施例に係る骨格構造部材の製造方法を示している。
図4Aにおいて、発泡樹脂材からなる一方の隔壁形成材21を骨格部材11内に配置する。このときの骨格部材11の内面と隔壁形成材21との嵌合状態は、すきまばめでもよいし、しまりばめでもよい。
図4Bにおいて、粉粒体18を詰めた袋22を骨格部材11内に投入する。
図4Cにおいて、発泡樹脂材からなる他方の隔壁形成材23を骨格部材11内に配置し、粉粒体18を隔壁形成材21,23で挟み込む。
そして、粉粒体18及び隔壁形成材21,23を骨格部材11ごと加熱する。
この結果、図4Dに示すように、隔壁形成材21,23(図4C参照)は発泡して膨張し、隔壁部材15,15になる。骨格部材11の壁面とともに閉空間16が形成される。粉粒体18は、閉空間16内に充満した状態になる。このとき、袋22は、加熱によって融解又は消失する。
この後、骨格部材11を冷却する。これで、骨格構造部材12が完成する。
このように、粉粒体18を予め袋22に入れ、袋22を骨格部材11内に投入することで、粉粒体18をそのまま骨格部材11内に投入するよりも投入作業を簡単に行え、作業性及び粉粒体18の取り扱い性が向上する。
また、図4C及び図4Dにおいて、粉粒体18に替えて、例えば、芯物質(液体又は固体)を微粒化し、この芯物質を被膜で被覆した(即ち、殻で包み込んだ)粉粒体、いわゆる「マイクロカプセル」を骨格部材11内に投入するようにしてもよい。このマイクロカプセルは、加熱することで、芯物質が気化し被膜(即ち、殻)が軟化して膨張することで中空の粉粒体となる。
上記の被膜(殻)の組成物としては、熱可塑性樹脂、即ち、(1)アクリル酸、メタクリル酸、イタコン酸、シトラコン酸、マレイン酸、フマル酸、ビニル安息香酸及びこれらの酸のエステル類、(2)アクリルニトリルやメタクリルニトリル等のニトリル類、(3)塩化ビニル、酢酸ビニル等のビニル化合物、(4)塩化ビニリデン等のビニリデン化合物、(5)スチレン等のビニル芳香族類、(6)その他としてエチレングリコールジ(メタ)アクリレート、ジエチレングリコールジ(メタ)アクリレート、トリエチレングリコールジ(メタ)アクリレート、ネオペンチルグリコール(メタ)アクリレート、1,6ヘキサンジオールジアクリレート、1,9ノナンジオールジ(メタ)アクリレート、平均分子量200〜600のポリエチレングリコールのジアクリレート、平均分子量200〜600のポリエチレングリコールのジメタクリレート、トリメチルプロパンジ(メタ)アクリレート、トリメチルプロパントリ(メタ)アクリレート、ペンタエリストールテトラアクリレート、ジペンタエリストールアクリレート、ジペンタエリストールヘキサアクリレート等、及び上記の単量体の重合物やそれらの組み合わせによる共重合物が好適である。
芯物質としては、エタン、プロパン、ブタン、イソブタン、ペンタン、イソペンタン、ヘキサン、イソヘキサン、オクタン、イソオクタン等の低沸点炭化水素、クロロフルオロカーボンが好適である。
更に、上記のマイクロカプセルと前記隔壁形成材21,23とを骨格部材11内に配置した場合には、マイクロカプセルが膨張するよりも速く隔壁形成材21,23を膨張させるようにする。これにより、隔壁形成材21,23が膨張して隔壁部材15,15が出来た後に、マイクロカプセルの膨張が完了すれば、閉空間16に内圧をより確実に発生させることができる。
図5A〜図5Cは、本発明の第2実施例に係る骨格構造部材の製造方法を示している。
図5Aにおいて、隔壁形成材26,26と、底板27と、蓋28とからなる容器31に複数の粉粒体18を入れ、該容器31ごと骨格部材11内に挿入する。
図5Bにおいて、骨格部材11及び容器31を加熱する。
図5Cにおいて、図5Bに示した隔壁形成材26,26は発泡して膨張し、隔壁部材15,15になることで、骨格部材11の壁面とともに閉空間16が形成される。粉粒体18は閉空間16内に充満した状態になる。このとき、容器31の底板27及び蓋28は、加熱によって融解又は消失する。
この後、骨格部材11を冷却する。これで、骨格構造部材12が完成する。
図6A〜図6Cは、本発明に係る骨格構造部材の曲げ試験時の変形状態を示している。図12に示したのと同じ方法で骨格構造部材12の曲げ試験を実施し、そのときの骨格構造部材12の変形、詳しくは、固形化粉粒体16の変化について説明する。
図6Aにおいて、骨格構造部材12に荷重Fを加える。参照番号32は荷重Fを加えた骨格部材11上の加重点である。
図6Bにおいて、骨格構造部材12が撓み、加重点32近傍の粉粒体18では、該粉粒体18は矢印で示すように隔壁部材15,15方向に移動し、骨格部材11の内部圧力が激増するのを抑える。
図6Cにおいて、骨格構造部材12の撓みが更に大きくなると、粉粒体18は更に矢印で示すように隔壁15,15側へ移動し、歪みを拡散させる。
従って、骨格構造部材12は局部的に変形せず、ほぼ均一に変形するため、大きな荷重を維持しつつ流動によって大きな変位量まで安定して変形することができる。
図7は、本発明に係る骨格構造部材の曲げ試験を示すグラフであり、縦軸は荷重F、横軸は変位量δを表す。
実施例(中実粉+発泡隔壁)の骨格構造部材12のデータ(実線で示す。)は、立ち上がり角度、その立ち上がりの直線部の長さ、及び変位量d9での荷重f9が、前述の比較例2及び比較例3とほぼ同等であり、剛性及び強度の点で大きな差は見られない。更に、大きな変位量δまで大きな荷重F、即ち荷重f9に近い荷重を維持している。これらのことから、本発明の骨格構造部材12では、比較例1〜比較例3に比べて吸収エネルギー量をより増大させることができる。
図8A〜図8Cは、本発明の第3実施例に係る骨格構造部材の製造方法を示している。
図8Aにおいて、複数の粉粒体18と、これらの粉粒体18を間に挟み込んだ断面視U字状の隔壁形成材35,35とを骨格部材11内に配置する。そして、粉粒体18及び隔壁形成材35,35を骨格部材11ごと加熱する。
図8Bは、図8Aに示された隔壁形成材35,35が加熱によって発泡して膨張し、隔壁部材36,36になることで、骨格部材11の壁面とともに閉空間37が形成されたことを示す。参照番号38は完成した骨格構造部材である。粉粒体18は閉空間37内に充満した状態になる。
図8Cは、図8Aに示した実施の形態の変形例である。容器41内に断面U字状の2つの隔壁形成材42,42を離して配置するとともに、これらの隔壁形成材42,42の間に複数の粉粒体18を投入し、前記容器41を骨格部材11内に挿入する。骨格部材11を介して容器41内の隔壁形成材42,42を加熱する。この結果、前述した図8Bに示したようになる。このとき、容器41は、加熱によって融解する。このように、隔壁形成材42,42及び粉粒体18を容器41に入れておけば、この容器41を骨格部材11内に容易に挿入することができる。
図9A及び図9Bは、本発明の第4実施例に係る骨格構造部材の製造方法を示している。
図9Aにおいて、側壁部44,44、底板45及び蓋46からなる隔壁形成材としての容器47を発泡樹脂材料で形成し、該容器47内に複数の粉粒体18を充填し、該容器47を骨格部材11内に配置する。そして、骨格部材11を介して容器47を加熱する。
図9Bは、図9Aで示した容器47が加熱によって発泡して膨張し、密閉容器状の隔壁部材48になることで、該隔壁部材48内に閉空間49を形成したことを示す。参照番号50は完成した骨格構造部材である。
図4で説明したように、本発明の骨格構造部材は、複数の粉粒体18を充填する閉空間16を形成するために、骨格部材11内及び/又は骨格部材とその周囲のパネル部材とで囲まれる空間に隔壁形成材21,23を膨張させることで形成された隔壁部材15,15を設けたことを特徴とする。
従って、隔壁形成材21,23を膨張させることで隔壁部材15,15を形成するため、容易に閉空間16を形成することができるとともに、外部から加圧しなくても、簡単に閉空間16内に複数の粉粒体18を満たした状態にすることができる。よって、閉空間16に内圧を発生させることができ、この内圧によって、例えば、骨格構造部材12の縦壁部11a(図3参照)の変形を抑えることができ、骨格構造部材12の剛性及び強度を増すことができる。この結果、大きな変位量まで大きな荷重を支えることができ、従来の骨格構造部材に比較して、本実施例の骨格構造部材12の吸収エネルギー量は増大する。
また、隔壁形成材21,23を、例えば発泡樹脂材料等の膨張しやすい材料にすれば、隔壁部材15の重量を小さくすることができ、骨格構造部材12の軽量化を図ることができる。
更に、本発明は、隔壁形成材21,23を、粉粒体(例えば、マイクロカプセル)が膨張するよりも速く膨張させるようにしたことを特徴とする。
隔壁形成材21,23が膨張して隔壁15,15が出来た後に、粉粒体の膨張が完了すれば、粉粒体によって閉空間16に内圧をより確実に発生させることができる。
更にまた、本発明は、図8B及び図8Cに示したように、骨格部材11内及び/又は骨格部材とその周囲のパネル部材とで囲まれる空間に隔壁部材36,36を形成するための複数の隔壁形成材42,42を容器41(又は袋)の内部に離して配置する工程と、前記隔壁形成材42,42間に複数の粉粒体18を投入する工程と、容器41ごと(又は袋ごと)骨格部材11内及び/又は前記空間に配置する工程と、容器41ごと(又は袋ごと)加熱する工程と、から構成したことを特徴とする。
容器41(又は袋)に隔壁形成材42,42及び粉粒体18を入れることで、骨格部材11内に隔壁形成材42,42及び粉粒体18を配置する作業が容易になり、骨格構造部材38の生産性を高めることができる。
本発明の実施例においては、隔壁形成材を発泡樹脂材料としたが、これに限らず、隔壁形成材を前述したマイクロカプセルとしてもよい。該マイクロカプセルを加熱することで、膨張するとともに表面が融解してマイクロカプセル同士が結合し隔壁を形成する。
さらに、図2に示した実施例では、隔壁部材15を2個設けたが、これに限らず、隔壁15を1個としてもよい。この場合、骨格部材11内で、粉粒体18を一方の端部閉塞部材13と1個の隔壁形成材とで挟み込んで加熱すれば、1個の隔壁15を形成するとともに、閉空間を形成することができ、閉空間内に内圧を発生させることができる。
更に、図4の(b)に示した袋としては、例えば、ゴム製、ポリエチレン等の樹脂製、紙製のものが好適である。また、袋の代わりに容器を用いてもよい。
【産業上の利用可能性】
以上説明したように、上記骨格構造体は、剛性及び強度の高く、吸収エネルギー量が増大するため、各種輸送機械に用いるのに適している。
【図1】

【図2】

【図3】




【図7】



【図10】

【図11】

【図12】

【図13】


【図15】

【図16】

【図17】


【特許請求の範囲】
【請求項1】
輸送機械に用いられる骨格構造部材であって、
中空の骨格部材と;
該骨格部材内及び/又骨格部材とその周囲のパネル部材とで囲まれる空間に充填された複数の粉粒体と;
前記複数の粉粒体を充填する閉空間を形成するため、前記骨格部材内及び/又は前記空間に設けられた少なくとも1つの隔壁形成材を膨張させることで形成された隔壁部材と;
を備えた輸送機械用骨格構造部材。
【請求項2】
クレーム1に記載の骨格構造部材であって、
前記隔壁形成材は、前記複数の粉粒体が膨張するよりも速く膨張することを特徴とする。
【請求項3】
クレーム1に記載の骨格構造部材であって、
前記隔壁形成材は、発泡樹脂材料からなることを特徴とする。
【請求項4】
骨格部材内及び/又は骨格部材とその周囲のパネル部材とで囲まれる空間に複数の粉粒体を充填した輸送機械に用いられる骨格構造部材の製造方法であって、
前記骨格部材内及び/又は前記空間に隔壁部材を形成するための複数の隔壁形成材を容器又は袋の内部に離間して配置する工程と、
前記複数の隔壁形成材間に前記粉粒体を投入する工程と、
前記容器ごと又は前記袋ごと前記骨格部材内及び/又は前記空間に配置する工程と、
容器ごと又は袋ごと加熱する工程と、
を含む輸送機械用骨格構造部材の製造方法。

【国際公開番号】WO2005/003589
【国際公開日】平成17年1月13日(2005.1.13)
【発行日】平成18年8月17日(2006.8.17)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2005−511344(P2005−511344)
【国際出願番号】PCT/JP2004/009234
【国際出願日】平成16年6月23日(2004.6.23)
【出願人】(000005326)本田技研工業株式会社 (23,863)
【Fターム(参考)】