説明

農業用高所作業機

【課題】コントロール軸の中立位置の調整を簡便に行えるとともに、それへの保持力を高めることができる農業用高所作業機を提供する。
【解決手段】車体2の前方方向又は後方方向に傾倒させることにより、接続される前進ワイヤー31又は後進ワイヤー32を引っ張る操作レバー11と、切欠部43bを具備し、前進ワイヤー31又は後進ワイヤー32が操作レバー11側に引っ張られることによりコントロール軸42とともに回転する変速レバー43と、変速レバー43の回転位置に応じて、クローラ3を停止又は回転させる減速機41と、操作レバー11が中立位置にある状態において、切欠部43bと当接するベアリング46aを具備するディテントレバー46と、ディテントレバー46の配設位置を変更することにより、操作レバー11が中立位置にある状態における変速レバー43の回転位置を調整する調整ナット50を備える。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、農業用高所作業機に関し、油圧式一体型減速機を用いた農業用高所作業機に関する。
【背景技術】
【0002】
農業用高所作業機とは、果樹園における果樹採取の際などに使用されるものであり、車体にブームが取付けられ、ブームの先端に配設される作業台を昇降することが可能である。この農業用高所作業機においては、車体左右にクローラが配設され、クローラを回転させることにより自走することが可能であるタイプのものがある。このタイプの農業用高所作業機においては、クローラとエンジンとの間に配設される減速機として油圧式一体型減速機を用いることが多くなってきている。これは、油圧式一体型減速機を用いることにより、スムーズに変速が行われること、操作が簡単であること等のメリットが生じるためである。
【0003】
油圧式一体型減速機は、具備するコントロール軸の回転位置に応じて、クローラを回転又は停止させることができる。また、農業用高所作業機においては、使用者が操作する操作レバーとコントロール軸とが連動するように構成されている。従って、農業用高所作業機の使用者は、操作レバーを操作することにより、任意にクローラを回転又は停止させることができる。
【0004】
ここで、操作レバーに対してクローラを停止させる操作がなされている場合には、コントロール軸はクローラを停止させる位置(中立位置)に位置しなければならない。しかしながら、このような場合であっても、経年変化などの擾乱によりコントロール軸が中立位置に位置しない場合がある。また、コントロール軸が中立位置に位置している場合であっても、コントロール軸の中立位置への保持力が弱い場合は、些細な擾乱によりコントロール軸が中立位置から移動してしまうことがある。
【0005】
上記事象が発生した場合、意図せずクローラが回転して農業用高所作業機が自走してしまい危険である。このようなことを鑑みてか、特許文献1には、コントロール軸に接続されたロッドの長さを調整することにより、クローラを停止させる操作がなされる場合にコントロール軸を中立位置に位置させる(以下、「コントロール軸の中立位置を調整する」という。)機構が開示されている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0006】
【特許文献1】特開2005−225349号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0007】
しかしながら、特許文献1に開示される構成では、コントロール軸の中立位置を調整するために、ロッドを一旦外して、その長さを調整しなければならないという問題点がある。ロッドを一端外してその長さを調整した場合には、分解、及び組立作業に時間がかかってしまう。さらに、コントロール軸の中立位置への保持力には言及されてない。
【0008】
本発明は、以上のような問題点に鑑みてなされたものであり、コントロール軸の中立位置の調整を簡便に行えるとともに、コントロール軸の中立位置への保持力を高めることができる油圧式一体型減速機を用いた農業用高所作業機を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0009】
上記目的を達成するために、請求項1の農業用高所作業機は、車体左右に配設されたクローラを駆動させて自走する農業用高所作業機であって、中立位置より前記車体の前方方向又は後方方向に傾倒させることで、接続される前進ワイヤー又は後進ワイヤーを引っ張る操作レバーと、一方の端部に凹状の切欠部を具備し、前記前進ワイヤー又は後進ワイヤーが前記操作レバーに引っ張られることにより所定の軸を中心に回転する変速レバーと、前記変速レバーの回転位置に応じて、前記クローラを停止又は回転させる油圧一体型の変速機と、前記操作レバーが中立位置にある場合において、引張バネによる付勢力により前記切欠部と当接するベアリング部を具備するディテントレバーと、前記ディテントレバーの配設位置を移動させることにより、前記操作レバーが中立位置にある場合における前記変速レバーの回転位置を調整する調整機構とを備えることを特徴とするものである。
【0010】
また、請求項2に開示される農業用高所作業機は、前記調整機構が、前記ディテントレバーを保持するニュートラルレバーと、前記ニュートラルレバーに一方の端部が固定される調整ロッドと、前記調整ロッドの他方の端部を固定板に固定するとともに、回転させることにより前記調整ロッドの前記固定板からの突出長を増減させ、前記ディテントレバーの配設位置を前記ニュートラルレバーの配設位置とともに移動させる調整ナットとを備えることを特徴とするものである。
【発明の効果】
【0011】
請求項1に記載の農業用高所作業機は、操作レバーが中立位置にある状態(クローラを停止させる操作がなされている状態)において、ディテントレバーの配設位置を調整機構により変更するだけで、変速レバー(コントロール軸)の中立位置の調整を行うことができるという効果を有する。また、変速レバーの中立位置の調整が完了している状態にて、変速レバーを中立位置から移動させるためには、引張バネの付勢力に抗する移動させる必要がある。このことにより、変速レバーの中立位置の保持力を高めることができるという効果を有する。
【0012】
請求項2に記載の農業用高所作業機は、調整ナットの回転のみで、ディテントレバーの配設位置の変更ができる。非常に簡便に、変速レバーの中立位置の調整を行うことができるという効果を有する。
【図面の簡単な説明】
【0013】
【図1】本発明の実施形態の農業用高所作業機の斜視図。
【図2】操作レバーを中立位置とした場合の操作ボックスの内部構造を示す説明図。
【図3】図2の状態における、車体内部に配設される減速機付近を示す説明図。
【図4】操作レバーを車体前方に傾倒した操作ボックスの内部構造を示す説明図。
【図5】図4の状態における、車体内部に配設される減速機付近を示す説明図。
【図6】操作レバーを車体後方に傾倒した操作ボックスの内部構造を示す説明図。
【図7】図6の状態における、車体内部に配設される減速機付近を示す説明図。
【図8】図2の状態において、クローラが農業用高所作業機を前進させる方向に回転している場合の車体内部に配設される減速機付近を示す説明図。
【図9】図2の状態において、クローラが農業用高所作業機を後進させる方向に回転している場合の車体内部に配設される減速機付近を示す説明図。
【発明を実施するための形態】
【0014】
以下、本発明の実施の形態を、図面を参照しつつ説明する。農業用高所作業機1は、図1に示すように車体2、クローラ3、4、ブーム5、6、作業台7、結合支持部8等により構成される自走式のものである。
【0015】
農業用高所作業機1は、果樹園等において、果実を採取する際などに用いられるものである。車体2には、エンジン(不図示)、後に図3にて説明する減速機41等が備えられている。車体2の前進方向左右には、クローラ3、4が配設される。クローラ3、4は、一般的にゴムクローラであり、エンジンからの動力が伝達されることにより回転する。クローラ3、4の回転方向に応じて、農業用高所作業機1(車体2)は前進又は後進する。また、クローラ3、4の回転速度に応じて、農業用高所作業機1の自走速度が定まる。
【0016】
クローラ3、4は、夫々独立して回転させることができる。例えば、クローラ3とクローラ4との間で回転させる速度に差異を生じさせたり、クローラ3、4のうち何れか一方のみを回転させたりすることにより、農業用高所作業機1(車体2)は、自在に右折、左折等を行うことができる。
【0017】
ブーム5、6は、作業台7を昇降させるために設けられ、ブーム5の一端が車体2に回転自在に接続される。またブーム6の一端が作業台7に結合支持部8を介して接続される。ブーム6はブーム5内に出没可能に構成されている。このように構成する理由は、ブーム6をブーム5より突出させることにより、より高所での作業に使用できる等、農業用高所作業機1の利便性が向上されるためである。
【0018】
作業台7は、使用者が搭乗するためのものであり、操作ボックス9等が備えられる。結合支持部8は、ブーム6と作業台7を接続するために供される。また、作業台7をブーム5、6の昇降の角度に関わらず、地面に対して水平に保つ機能を有する。
【0019】
前記作業台7に取付けられている操作ボックス9には、使用者が農業用高所作業機1を操作するための操作レバー11、12等が設けられる。操作レバー11は、車体2の前進方向左側に配設されるクローラ3を操作するためのレバーである。操作レバー12は、車体2の前進方向右側に配設されるクローラ4を操作するためのレバーである。低速・高速レバー13は、農業用高所作業機1の走行速度を共に所定速度以下の範囲で低速、高速を選択するために使用されるものである。
【0020】
次に、操作レバー11に関連する事項について説明する。なお、操作レバー12に関連する事項は、操作レバー11に関連する事項と同様であるため説明を省略する。図2に示すように、操作ボックス9の内部には、コントロールリンク21、ニュートラルリンク22、ストッパー23、引張バネ25等が備えられる。
【0021】
コントロールリンク21は、支点21aにおいて操作レバー11と固定されている。また、操作レバー11及びコントロールリンク21は、支点21aの周方向に移動可能に操作ボックス9に取り付けられている。従って、コントロールリンク21は操作レバー11を農業用高所作業機1の前進方向又は後進方向何れかに傾倒させた場合、それと連動して支点21aの周方向に回転移動する。
【0022】
コントロールリンク21の農業用高所作業機1の後進方向側に位置する接続点21bには、前進ワイヤー31の一端が接続される。また、コントロールリンク21の農業用高所作業機1の前進方向側に位置する接続点21cには、後進ワイヤー32の一端が接続される。更に、コントロールリンク21の接続ピン21d、21eは、ハート型のニュートラルリンク22の2つの突出部に形成した円弧状の長孔22a、22b内にその範囲内で移動可能に取付けられる。さらに、ニュートラルリンク22の根元部分は、ストッパー23の中央部分に接続点23aを中心に回転自在に取付けられる。
【0023】
ストッパー23の一端は、取付点23bを中心に回転自在に操作ボックス9に取付けられ、他端はフリーになっている。更に、ストッパー23の中央部分に設けた接続点23cには、一端が接続点23dにて操作ボックス9に取付けられる引張バネ25の他端が取付けられる。この引張バネ25により、ストッパー23は、地面方向に付勢されている。
【0024】
ここで、上記説明したように操作レバー11とストッパー23とは、コントロールリンク21及びニュートラルリンク22介して接続されており、互いに連動して動作する。従って、操作レバー11は、ストッパー23が引張バネ25により付勢されていることにより、その付勢力に抗する力が加えられない限り、中立位置に位置する。なお、操作レバー11を中立位置に位置させることは、操作レバー11に対しクローラ3を停止させる操作を行っていることに対応する。
【0025】
前進ワイヤー31は、固定部33にて一端が操作ボックス9に固定されるライナー31a内を移動可能に収納されている。また、この前進ワイヤー31は、上記のように一端が接続点21bにてコントロールリンク21に接続されているが、その他端は、図3を用いて後ほど説明する変速リンク45に接続される。
【0026】
後進ワイヤー32は、固定部34にて一端が操作ボックス9に固定されるライナー32a内を移動可能に収納されている。また、この後進ワイヤー32は、上記のように一端が接続点21cにてコントロールリンク21に接続されているが、その他端は、図3を用いて後ほど説明する変速リンク45に接続される。
【0027】
なお、操作レバー11が中立位置に位置している状態では、前進ワイヤー31、後進ワイヤー32ともに、操作ボックス9側には引っ張られていない。
【0028】
次に、車体2内に配設される減速機41付近の構成を、図3を用いて説明する。該減速機41は、図外のエンジンとクローラ3との間に配設される。またエンジンともう一つのクローラ4との間にも同様の減速機(不図示)が配設されるが、その構成は、減速機41及び該減速機41周辺に配設される構成と同様であるので説明を省略する。
【0029】
減速機41は油圧式一体型減速機である。コントロール軸42は、減速機41に配設される回転可能な軸である。コントロール軸42は設定される回転位置に基づき減速機41を自在にコントロールする。例えば、図示するようにコントロール軸42を中立位置とした場合には、減速機41はエンジンからの動力をクローラ3に対し伝達しない。従って、クローラ3は停止する。
【0030】
変速レバー43は、その中心部分が前記コントロール軸42にコントロール軸42と共に回転可能に固定される。また、変速レバー43の一端に設けられる支点43aには、リンクボール44aを介してシャフト44の一端が回転自在に取付けられている。また、変速レバー43の他端には、凹状の切欠部43bが設けられている。
【0031】
シャフト44の他端は、リンクボール44bを介して、変速リンク45に固定されている回転腕45aに取付けられている。変速リンク45には、前進ワイヤー31、及び後進ワイヤー32の夫々の他端が接続されている。変速リンク45は、前進ワイヤー31又は後進ワイヤー32が操作ボックス9側に引っ張られることにより回転する。
【0032】
ディテントレバー46は、その一端にベアリング46aを備え、他端が支点47bによって回転可能にニュートラルレバー47に固定されている。また、ディテントレバー46は、その中央部にある接続点46bに一端が固定され、他端がニュートラルレバー47の接続点47dに接続される引張バネ46cにより、常に変速レバー43の他端側へ付勢されている。操作レバー11が中立位置に位置している場合において、ベアリング46aは、この付勢力により切欠部43bに当接している。
【0033】
ニュートラルレバー47は、上記のように支点47bにおいてディテントレバー46の他端と回転自在に連結し、また、変速レバー43にベアリング47aを介して当接し、コントロール軸42及び変速レバー43と独立して、コントロール軸42の周方向に回転可能に固定されている。さらにニュートラルレバー47には、前記支点47bに他端を回転自在に連結しているディテントレバーと直角に位置している調整ロッド48の一端が支点47cにおいて固定される。
【0034】
調整ロッド48には、一端及び他端よりナット48b、48cが夫々挿入され、調整ロッド48の中央部において、互いに当接することにより固定されている。また調整ロッド48の他端は、圧縮バネ48a、固定板49に挿入された後、調整ナット50で固定されている。即ち、調整ロッド48は、ナット48cに他端が当接することで位置が規定される圧縮バネ48aの一端と調整ナット50とに狭持される固定板49に固定されている。
【0035】
以上のように、構成されている農業用高所作業機1の操作レバー11が図2に示す中立位置にある状態から、手等で押されることにより、農業用高所作業機1の前進方向に傾倒された場合の各部の動作について、図4及び図5に基づき説明する。なお、操作レバー12が中立位置にある状態から、農業用高所作業機1の前進方向に傾倒されたときの各部の動作は、操作レバー11と同様であるので説明を省略する。また、上記説明の通り変速レバー43はコントロール軸42に固定されており、これらは一体として動作する。このため、以降では特に必要がない限り、コントロール軸42と変速レバー43とを総称して変速レバー43と示す。
【0036】
図4に示すように、操作レバー11が手等で押されることにより、農業用高所作業機1の前進方向(矢印イ方向)に引張バネ25の付勢力に抗して傾倒された場合、コントロールリンク21も支点21aを中心に同方向へ回転するので、接続点21bと固定部33との距離が増加する。すなわち、前進ワイヤー31が、操作ボックス9側(矢印ロ方向)に引っ張られることとなる。このことにより、図5に示すように、前進ワイヤー31の他端が接続される変速リンク45は、前進ワイヤー31の操作ボックス9側(矢印ハ方向)への引っ張り量に応じて回転する。変速リンク45が回転することにより、変速リンク45に固定される回転腕45aも回転し、回転腕45aにリンクボール44bを介して他端が固定されるシャフト44は、下方向(矢印二方向)に引っ張られる。
【0037】
シャフト44が下方向に引っ張られることにより、シャフト44の一端とリンクボール44a介し取付けられる変速レバー43は、左回り(矢印ホ方向)に回転する。変速レバー43が中立位置より、左回りに回転することにより、減速機41は農業用高所作業機1を前進させる方向に回転するようにエンジンからの動力をクローラ3に対し伝達する。また、ベアリング46aは、この状態においても変速レバー43の他端に当接しているが、切欠部43bからは脱している。
【0038】
次に、操作レバー11が図2に示す中立位置にある状態から、手等で押されることにより、農業用高所作業機1の後進方向(矢印ト方向)に傾倒された場合の各部の動作について、図6及び図7に基づき説明する。なお、操作レバー12が中立位置にある状態から、農業用高所作業機1の後進方向に傾倒されたときの各部の動作は、操作レバー11と同様であるので説明を省略する。
【0039】
図6に示すように、操作レバー11が手等で押されることにより、農業用高所作業機1の後進方向(矢印ト方向)に引張バネ25の付勢力に抗して傾倒された場合、コントロールリンク21も支点21aを中心に同方向へ回転するので、接続点21cと固定部34との距離が増加する。すなわち、後進ワイヤー32が、操作ボックス9側(矢印チ方向)に引っ張られることとなる。このことにより、図7に示すように、後進ワイヤー32の他端が接続される変速リンク45は、後進ワイヤー32の操作ボックス9側(矢印リ方向)への引っ張り量に応じて回転する。変速リンク45が回転することにより、変速リンク45に固定される回転腕45aも回転し、回転腕45aにリンクボール44bを介して他端が固定されるシャフト44は、上方向(矢印ヌ方向)に押し出される。
【0040】
シャフト44が上方向に押し出されることにより、シャフト44の一端とリンクボール44aを介し取付けられる変速レバー43は、右回りに(矢印ル方向)回転する。変速レバー43が中立位置より、右回りに回転することにより、減速機41は農業用高所作業機1を後進させる方向に回転するようにエンジンからの動力をクローラ3に対し伝達する。また、ベアリング46aは、この状態においても変速レバー43の他端に当接しているが、切欠部43bからは脱している。
【0041】
ここで、前進ワイヤー31及び後進ワイヤー32の操作ボックス9側への引っ張り量は、操作レバー11を農業用高所作業機1の前進方向又は後進方向に傾倒させる角度に応じて変化し、それに応じて変速レバー43の中立位置からの回転角度も変化する。また、減速機41は、変速レバー43の中立位置からの回転角度と共に、クローラ3の回転速度を変化させる。すなわち、変速レバー43の中立位置からの回転角度を増加させると、クローラ3の回転速度を上昇させ、また変速レバー43の中立位置からの回転角度を減少させるとクローラ3の回転速度を減少させる。従って、クローラ3の回転速度は、操作レバー11を傾倒させる角度によりコントロールされる。
【0042】
次に、変速レバー43の中立位置の調整について説明する。操作レバー11を中立位置とすることは、クローラ3を停止させる操作を行ったことに対応する。従って、操作レバー11を中立位置とした場合には、変速レバー43も中立位置に位置するべきである。しかしながら、何らかの擾乱により、操作レバー11を中立位置とした場合であっても、変速レバー43が中立位置に位置していない場合には、中立位置の調整が必要である。なお、エンジンとクローラ4との間に配設される減速機に配設される変速レバー(不図示)が中立位置に位置していない場合の中立位置の調整は、変速レバー43の中立位置の調整と同様であるため説明を省略する。
【0043】
まず、操作レバー11を中立位置としているにもかかわらず、クローラ3が農業用高所作業機1を前進させる方向に回転している場合の変速レバー43の中立位置の調整について、図8に基づき説明する。なお、これは、操作レバー11を中立位置としているにもかかわらず、変速レバー43が中立位置に対し左回りに回転した位置となっている状態である。
【0044】
この場合における変速レバー43の中立位置の調整は、調整ナット50を緩める方向に回転させることにより行う。これは、固定板49は車体2に固定されている。また、圧縮バネ48aの他端は、調整ロッド48に取り付けられたナット48cに当接している。従って、ナット48cは、調整ナット50を緩めた際に、圧縮バネ48aの他端により押される。これにより、支点47cと固定板49との距離は増加し、ニュートラルレバー47はコントロール軸42を中心として、右回りに回転(移動)する。これにより、支点47bにてニュートラルレバー47に保持されるディテントレバー46は移動し、ベアリング46aは下方向に移動する。
【0045】
ここで、操作レバー11が中立位置にある場合において、変速レバー43の切欠部43bは、ベアリング46aと当接する。従って、ベアリング46aが下方向へ移動することで、変速レバー43は、中立位置に対し左回りに回転してズレた位置から中立位置に移動する。
【0046】
次に、操作レバー11を中立位置としているにもかかわらず、クローラ3が農業用高所作業機1を後進させる方向に回転している場合の変速レバー43の中立位置の調整について、図9に基づき説明する。なお、これは、操作レバー11を中立位置としているにもかかわらず、変速レバー43が中立位置に対し右回りに回転した位置となっている状態である。
【0047】
この場合における変速レバー43の中立位置の調整は、調整ナット50を締めこむ方向に回転させることにより行う。これは、上記のように固定板49は車体2に固定されている。また、圧縮バネ48aの他端は、調整ロッド48に取り付けられたナット48cに当接している。従って、ナット48cは、調整ナット50を締めこんだ際に、圧縮バネ48aの他端を押し込む。これにより、支点47cと固定板49との距離は減少し、ニュートラルレバー47はコントロール軸42を中心として、左回りに回転(移動)する。これにより、支点47bにてニュートラルレバー47に保持されるディテントレバー46は移動し、ベアリング46aは上方向に移動する。
【0048】
ここで、上記のように、操作レバー11が中立位置にある場合において、変速レバー43の切欠部43bは、ベアリング46aと当接する。従って、ベアリング46aが上方向へ移動することで、変速レバー43は、中立位置に対し右回りに回転してズレた位置から中立位置に移動する。
【0049】
以上説明したように、農業用高所作業機1においては、変速レバー43の中立位置の調整が、調整ナット50を回転させるだけで実施できる。さらに、調整ナット50は、容易に手の届く位置に配設されている。従って、変速レバー43の中立位置の調整を簡便に、また短時間で行うことができる。
【0050】
また、変速レバー43を中立位置としたときの保持力を向上させている。この理由は、まず変速レバー43の中立位置の調整が完了している状態において変速レバー43が中立位置にある場合、切欠部43bには、引張バネ46cにより付勢されるディテントレバー46のベアリング46aが当接されている(図3、8、9参照)。従って、変速レバー43を中立位置から回転(移動)するためには、引張バネ46cの付勢に抗して、ベアリング46aの切欠部43bへの当接を解除しなければならないためである。また、変速レバー43を中立位置付近とした場合に、ベアリング46aがそれ自身の効果により切欠部43bにスムーズに誘導されるためである。また、エンジンとクローラ4との間に配設される減速機及びその周辺に配設される構成も、上記同様の構成であり、変速レバーを中立位置としたときの保持力を向上させている。
【0051】
なお、本実施の形態で示した農業用高所作業機1の構成は、本発明に係る農業用高所作業機の一態様にすぎず、本発明の要旨を逸脱しない範囲内で種々の変形実施が可能である。
【産業上の利用可能性】
【0052】
本発明に係る農業用高所作業機は、果樹園における果樹採取用高所作業機等に適用することができる。
【符号の説明】
【0053】
1 農業用高所作業機
2 車体
3、4 クローラ
7 作業台
9 操作ボックス
11 操作レバー
12 操作レバー
31 前進ワイヤー
32 後進ワイヤー
41 減速機
42 コントロール軸
43 変速レバー
43b 切欠部
46 ディテントレバー
46a ベアリング
46c 引張バネ
47 ニュートラルレバー
48 調整ロッド
49 固定板
50 調整ナット

【特許請求の範囲】
【請求項1】
車体左右に配設されたクローラを駆動させて自走する農業用高所作業機であって、
中立位置より前記車体の前方方向又は後方方向に傾倒させることで、接続される前進ワイヤー又は後進ワイヤーを引っ張る操作レバーと、
一方の端部に凹状の切欠部を具備し、前記前進ワイヤー又は後進ワイヤーが前記操作レバーに引っ張られることにより所定の軸を中心に回転する変速レバーと、
前記変速レバーの回転位置に応じて、前記クローラを停止又は回転させる油圧一体型の変速機と、
前記操作レバーが中立位置にある場合において、引張バネによる付勢力により前記切欠部と当接するベアリング部を具備するディテントレバーと、
前記ディテントレバーの配設位置を移動させることにより、前記操作レバーが中立位置にある場合における前記変速レバーの回転位置を調整する調整機構と、を備えることを特徴とする農業用高所作業機。
【請求項2】
前記調整機構は、
前記ディテントレバーを保持するニュートラルレバーと、
前記ニュートラルレバーに一方の端部が固定される調整ロッドと、
前記調整ロッドの他方の端部を固定板に固定するとともに、回転させることにより前記調整ロッドの前記固定板からの突出長を増減させ、前記ディテントレバーの配設位置を前記ニュートラルレバーの配設位置とともに移動させる調整ナットと、を備えることを特徴とする請求項1に記載の農業用高所作業機。


【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【図8】
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【図9】
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【公開番号】特開2011−7292(P2011−7292A)
【公開日】平成23年1月13日(2011.1.13)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2009−152630(P2009−152630)
【出願日】平成21年6月26日(2009.6.26)
【出願人】(000247904)有限会社河島農具製作所 (8)
【Fターム(参考)】