説明

送信回路

【課題】出力回路のトランジスタのばらつきに関わらず、出力信号のクロス電圧を安定化させ得るUSB送信回路を簡単な回路で提供する。
【解決手段】データDP,DMの入力に基づいてメインバッファ回路から出力信号FSDP,FSDMを出力する第一及び第二の出力回路11a,11bと、第一及び第二の出力回路から出力信号FSDP,FSDMを相補信号として出力することと、メインバッファ回路を構成する出力トランジスタの駆動電流のばらつきを補正する補正信号を生成する補正回路12a,12bと、メインバッファ回路に並列に接続され、補正信号に基づいてメインバッファ回路の出力トランジスタの電流駆動能力のばらつきを相殺するサブバッファ回路とを備えた。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
この発明は、送信回路に関する。例えば、シリアルインターフェース規格の一種類であるUSB(universal serial bus)規格で動作する送信回路に関する。
【背景技術】
【0002】
USB規格では、3種類の転送速度が規定されている。1.5MbpsのLS(low speed)規格、12MbpsのFS(full speed)規格、480MbpsのHS(high speed)規格である。そして、送受信回路間で差動信号を送受信してデータ転送を行う。
【0003】
また、FS規格では3〜3.6Vの電源電圧に対し、差動信号のクロス電圧Vcrossが1.3〜2.0Vの範囲に規定されている。従って、このクロス電圧Vcrossの規定を満足させる性能を備えた送信回路を具備する必要がある。
【0004】
図11は、FS規格の送信回路の従来例を示す。送信回路は、出力回路1aと出力回路1bとを備え、出力回路1aにはデータDPが入力され、出力回路1bにはデータDMが入力される。データDP,DMは図13に示すような差動信号である。また、出力回路1a,1bにはイネーブル信号ENと信号ASEZバーが入力される。
【0005】
図12は、出力回路1aの具体的構成を示す。データDPはNOR回路2とNAND回路3aに入力され、NOR回路2にはイネーブル信号ENバーが入力され、NAND回路3aにはイネーブル信号ENが入力される。イネーブル信号ENバー,ENは相補信号である。
【0006】
NOR回路2の出力信号はNAND回路3bに入力され、NAND回路3aの出力信号はNAND回路3cに入力される。また、NAND回路3b,3cに信号ASEZバーが入力される。
【0007】
NAND回路3bの出力信号はバッファ回路4a及びインバータ回路5a,5bを介してPチャネルMOSトランジスタで構成される出力トランジスタTP1のゲートに入力される。
【0008】
また、NAND回路3cの出力信号はバッファ回路4b及びインバータ回路5c,5dを介してNチャネルMOSトランジスタで構成される出力トランジスタTN1のゲートに入力される。
【0009】
出力トランジスタTP1の駆動回路として動作するインバータ回路5bには低電位側電源Vssとの間に電流制限回路6aが介在されている。電流制限回路6aはインバータ回路5bから電源Vssへの電流を制限する。従って、図13に示すように、インバータ回路5bから出力される駆動信号DPpの立下りが緩やかになる。
【0010】
出力トランジスタTN1の駆動回路として動作するインバータ回路5dには高電位側電源VDDとの間に電流制限回路6bが介在されている。電流制限回路6bは電源VDDからインバータ回路5dへの電流を制限する。従って、図13に示すように、インバータ回路5dから出力される駆動信号DPnの立上りが緩やかになる。
【0011】
出力トランジスタTP1のソースは電源VDDに接続され、ドレインは出力トランジスタTN1のドレインに接続される。出力トランジスタTN1のソースは電源Vssに接続される。
【0012】
そして、出力トランジスタTP1,TN1のドレインから抵抗Rを介して出力信号FSDPが出力される。
このように構成された出力回路1aでは、イネーブル信号ENがHレベル、同ENバーがLレベル、信号ASEZバーがHレベルとなると、データDPに基づいてHレベルあるいはLレベルの出力信号FSDPが出力される。
【0013】
データDPがHレベルであれば、インバータ回路5bから出力される駆動信号DPpがHレベルとなって出力トランジスタTP1がオフされるとともに、インバータ回路5dから出力される駆動信号DPnがHレベルとなって出力トランジスタTN1がオンされる。この結果、出力信号FSDPはLレベルとなる。
【0014】
また、データDPがLレベルであれば、インバータ回路5bから出力される駆動信号DPpがLレベルとなって出力トランジスタTP1がオンされるとともに、インバータ回路5dから出力される駆動信号DPnがLレベルとなって出力トランジスタTN1がオフされる。この結果、出力信号FSDPはHレベルとなる。
【0015】
そして、インバータ回路5b,5dの電流制限回路6a,6bにより、図13に示すように、出力信号FSDPの立上がり速度及び立下り速度はFS規格を満足する速度に設定される。
【0016】
出力回路1bは、出力回路1aと同一構成であり、データDPの相補信号であるデータDMが入力され、出力トランジスタを駆動するインバータ回路から図13に示す駆動信号DMp,DMnが出力されて、出力信号FSDPの相補信号となる出力信号FSDMを出力する。
【0017】
上記のように構成された送信回路では、出力回路1a,1bの出力トランジスタの駆動能力が等しい場合には、図13に示すように、出力信号FSDP,FSDMの立ち上がり速度及び立下り速度が等しくなる。そして、出力信号FSDP,FSDMが交差するクロス電圧VcrossがほぼVDD/2となってFS規格を満足する。
【0018】
しかし、プロセスのばらつきにより、出力回路1a,1bの出力トランジスタを構成するPチャネルMOSトランジスタとNチャネルMOSトランジスタの駆動能力にばらつきが生じると、クロス電圧Vcrossが規格を満足しないレベルとなることがある。
【0019】
図14は、出力回路1a,1bの出力トランジスタを構成するNチャネルMOSトランジスタの駆動能力がPチャネルMOSトランジスタの駆動能力より小さくなった場合の動作を示す。
【0020】
同図に示すように、出力信号FSDP,FSDMの立上がり速度と立下がり速度がアンバランスとなり、クロス電圧Vcrossが上昇して規格を満足しなくなる。
図15は、出力回路1a,1bの出力トランジスタを構成するPチャネルMOSトランジスタの駆動能力がNチャネルMOSトランジスタの駆動能力より小さくなった場合の動作を示す。
【0021】
同図に示すように、出力信号FSDP,FSDMの立上がり速度と立下がり速度がアンバランスとなり、クロス電圧Vcrossが低下して規格を満足しなくなる。
出力電圧と基準電圧とを比較して、出力トランジスタがオンするタイミングとオフするタイミングとを制御して、規格を満足するクロスポイント電圧を得るようにしたUSBドライバーが存在する(特許文献1)。
【0022】
しかし、出力端子にUSBケーブルが接続された状態では、出力端子に入力される反射波の影響により出力電圧が変動する。従って、出力電圧の変動に応じて基準電圧を調整しない限り、出力信号波形の品質が大きく劣化するという問題点がある。また、USBケーブル毎に変動する反射波に応じて基準電圧を調整することは事実上不可能である。
【0023】
また、出力ドライバーのゲート電圧をゲート電圧調整回路で調整して、出力信号の立上がり速度及び立下り速度を調整可能とした差動出力バッファ回路が開示されている(特許文献2)。
【0024】
しかし、この構成ではゲート電圧調整回路を制御するための制御回路が必要となり、出力ドライバーのゲート電圧を細かく調整するためには、ゲート電圧調整回路及びその制御回路の回路規模が増大するという問題点がある。また、出力トランジスタの駆動能力のばらつきに対応するように、ゲート電圧調整回路を制御するためには、シミュレーション及びそのシミュレーション結果に基づく動作試験を行う必要があり、コストが上昇する。
【0025】
また、プリバッファ回路の動作を補正して出力トランジスタのゲート電圧を補償することにより、クロスオーバー電圧を安定化させるUSBトランシーバーが開示されている(特許文献3)。
【0026】
しかし、出力電圧をフィードバックするコンデンサを使用しているので、動作速度が遅く、FS規格で動作する送信回路に応用することは困難である。
【特許文献1】特開2002−111477号公報
【特許文献2】特開2005−191677号公報
【特許文献3】特開2003−309460号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0027】
上記のように、従来のUSB送信回路では、プロセスのばらつきにより出力回路を構成するPチャネルMOSトランジスタとNチャネルMOSトランジスタの駆動能力がアンバランスとなると、FS規格のクロス電圧Vcrossを満足できなくなる。
【0028】
この発明の目的は、出力回路のトランジスタのばらつきに関わらず、出力信号のクロス電圧を安定化させ得る送信回路を簡単な回路で実現することにある。
【課題を解決するための手段】
【0029】
上記目的は、データの入力に基づいてメインバッファ回路から出力信号を出力する第一及び第二の出力回路と、前記第一及び第二の出力回路から前記出力信号を相補信号として出力することと、前記メインバッファ回路を構成する出力トランジスタの駆動電流のばらつきを補正する補正信号を生成する補正回路と、前記メインバッファ回路に並列に接続され、前記補正信号に基づいて前記メインバッファ回路の出力トランジスタの電流駆動能力のばらつきを相殺するサブバッファ回路とを備えた送信回路により達成される。
【発明の効果】
【0030】
開示された送信回路では、出力回路のトランジスタのばらつきに関わらず、出力信号のクロス電圧を安定化させ得る送信回路を簡単な回路で実現することができる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0031】
以下、この発明を具体化した一実施形態を図面に従って説明する。図1に示すUSB送信回路は、第一の出力回路11aと第二の出力回路11bと、第一の補正回路12aと第二の補正回路12bとを備える。
【0032】
前記第一の出力回路11aにはデータDPが入力され、第二の出力回路11bにはデータDMが入力される。データDP,DMは図6に示すような差動信号である。また、第一及び第二の出力回路11a,11bにはイネーブル信号ENと信号ASEZバーが入力される。そして、第一の出力回路11aから出力信号FSDPが出力され、第二の出力回路11bから出力信号FSDMが出力される。
【0033】
前記第一の補正回路12aには、第一の出力回路11aから出力される制御信号DPpi,DPniが入力され、その制御信号DPpi,DPniに基づいて補正信号DPpo,DPnoを生成して第二の出力回路11bに出力する。
【0034】
前記第二の補正回路12bには、第二の出力回路11bから出力される制御信号DMpi,DMniが入力され、その制御信号DMpi,DMniに基づいて補正信号DMpo,DMnoを生成して第一の出力回路11aに出力する。
【0035】
また、前記データDP,DMはAND回路15に入力され、データDP,DMがともにHレベルとなるとき、AND回路15から検出信号EOPが出力される。EOP(End Of Packet)とはUSB規格に示されるパケットの終わりを示す信号である。
【0036】
図2は、前記第一の出力回路11aの具体的構成を示す。この第一の出力回路11aは、上記従来例の出力回路1aにサブバッファ回路13aを追加したものであり、同一構成部分は同一符号を付して説明する。
【0037】
前記データDPはNOR回路2とNAND回路3aに入力され、NOR回路2には前記イネーブル信号ENバーが入力され、NAND回路3aにはイネーブル信号ENが入力される。イネーブル信号ENバー,ENは相補信号である。
【0038】
NOR回路2の出力信号はNAND回路3bに入力され、NAND回路3aの出力信号はNAND回路3cに入力される。また、NAND回路3b,3cに信号ASEZバーが入力される。
【0039】
NAND回路3bの出力信号はバッファ回路4a及びインバータ回路5a,5bを介してPチャネルMOSトランジスタで構成される出力トランジスタTP1のゲートに入力される。
【0040】
また、NAND回路3cの出力信号はバッファ回路4b及びインバータ回路5c,5dを介してNチャネルMOSトランジスタで構成される出力トランジスタTN1のゲートに入力される。
【0041】
出力トランジスタTP1の駆動回路として動作するインバータ回路5bには低電位側電源Vssとの間に電流制限回路6aが介在されている。電流制限回路6aはインバータ回路5bから電源Vssへの電流を制限する。従って、図7に示すように、インバータ回路5bから出力される駆動信号DPp(DPpi)の立下りが緩やかになる。
【0042】
出力トランジスタTN1の駆動回路として動作するインバータ回路5dには高電位側電源VDDとの間に電流制限回路6bが介在されている。電流制限回路6bは電源VDDからインバータ回路5dへの電流を制限する。従って、図7に示すように、インバータ回路5dから出力される駆動信号DPn(DPni)の立上りが緩やかになる。
【0043】
出力トランジスタTP1のソースは電源VDDに接続され、ドレインは出力トランジスタTN1のドレインに接続される。出力トランジスタTN1のソースは電源Vssに接続される。そして、メインバッファ回路14aを構成する出力トランジスタTP1,TN1のドレインから抵抗Rを介して出力信号FSDPが出力される。
【0044】
前記インバータ回路5bから出力される駆動信号DPpは前記第一の補正回路12aに前記制御信号DPpiとして出力され、前記インバータ回路5dから出力される駆動信号DPnは前記第一の補正回路12aに前記制御信号DPniとして出力される。
【0045】
前記サブバッファ回路13aは、前記メインバッファ回路14aに対し並列に接続される。そして、メインバッファ回路14aの出力ノードと電源VDDとの間にPチャネルMOSトランジスタで構成される出力トランジスタTP2が接続され、メインバッファ回路14aの出力ノードと電源Vssとの間にNチャネルMOSトランジスタで構成される出力トランジスタTN2が接続される。
【0046】
前記出力トランジスタTP2のゲートには、前記第二の補正回路12bから出力される補正信号DMpoが入力され、前記出力トランジスタTN2のゲートには、前記第二の補正回路12bから出力される補正信号DMnoが入力される。
【0047】
図3は、前記第二の出力回路11bの具体的構成を示す。この第二の出力回路11bの回路構成は、第一の出力回路11aの回路構成と同様であり、データDPに代えてデータDMが入力される。
【0048】
そして、メインバッファ回路14bの出力トランジスタTP3のゲートに出力される駆動信号DMpは、前記第二の補正回路12bに制御信号DMpiとして出力され、メインバッファ回路14bの出力トランジスタTN3のゲートに出力される駆動信号DMnは、前記第二の補正回路12bに制御信号DMniとして出力される。
【0049】
前記サブバッファ回路13bは、前記メインバッファ回路14bに対し並列に接続される。そして、メインバッファ回路14aの出力ノードと電源VDDとの間にPチャネルMOSトランジスタで構成される出力トランジスタTP4が接続され、メインバッファ回路14aの出力ノードと電源Vssとの間にNチャネルMOSトランジスタで構成される出力トランジスタTN4が接続される。
【0050】
前記出力トランジスタTP4のゲートには、前記第一の補正回路12aから出力される補正信号DPpoが入力され、前記出力トランジスタTN4のゲートには、前記第一の補正回路12aから出力される補正信号DPnoが入力される。
【0051】
図4は、前記第一の補正回路12aの具体的構成を示す。PチャネルMOSトランジスタTP5のソースは電源VDDに接続され、同トランジスタTP5のゲートには前記第一の出力回路11aから出力される制御信号DPpiが入力される。
【0052】
前記トランジスタTP5のドレインは、NチャネルMOSトランジスタTN5のドレイン及びゲートに接続され、同トランジスタTN5のソースは電源Vssに接続されている。そして、トランジスタTN5のドレインから前記補正信号DPnoが出力される。
【0053】
前記検出信号EOPはインバータ回路16aに入力され、そのインバータ回路16aの出力信号はトランジスタTP5に並列に接続されたPチャネルMOSトランジスタTP6(補助回路)のゲートに入力される。従って、検出信号EOPがHレベルとなると、トランジスタTP6がオンされる。
【0054】
また、前記インバータ回路16aは電流制限回路17aを介して電源Vssに接続され、電流制限回路17aにより電源Vssに流れる電流が制限されて、出力信号の立下り速度が低速となるように制御されている。
【0055】
前記制御信号DPniはNチャネルMOSトランジスタTN7のゲートに入力され、同トランジスタTN7のソースは電源Vssに接続され、ドレインはNチャネルMOSトランジスタTN6を介してPチャネルMOSトランジスタTP7のドレイン及びゲートに接続されている。そして、前記トランジスタTP7のソースは電源VDDに接続され、ドレインから前記補正信号DPpoが出力される。
【0056】
インバータ回路16bには前記検出信号EOPが入力され、そのインバータ回路16bの出力信号が前記トランジスタTN6(補助回路)のゲートに入力される。
また、前記インバータ回路16bは電流制限回路17bを介して電源VDDに接続され、電流制限回路17bにより電源VDDから供給される電流が制限されて、出力信号の立上り速度が低速となるように制御されている。
【0057】
第一の補正回路12aの動作について説明する。トランジスタTP5(PMOS)は線形領域で動作し、トランジスタTN5(NMOS)は飽和領域で動作する。トランジスタTP5,TN5の電流式は以下のように表される。
【0058】
【数1】

トランジスタTN5(NMOS)に着目すると、Vgs=DPnoとおけるので以下の式が得られます。
【0059】
【数2】

回路の形式からしてIdspmos=Idsnmosという式が成立します。
【0060】
ここで各アンバランス条件を考えます。
1.Pmos:fast、Nmos:slow(pmosの駆動能力がnmosの駆動能力より高い場合)の条件。
【0061】
Pmos fast:移動度が大きくなり、Vthが下がる。Idspmos式よりPmosの電流が増加します。
Nmos:slow 移動が小さくなり、Vthが上がります。Idspmos=Idsnmosを成り立たせる為にはVgsが高くなります。つまりDPnoの電位が上がる。
【0062】
2.Pmos:slow、Nmos:fast(pmosの駆動能力がnmosの駆動能力より高い場合)の条件。
Pmos slow:移動度が小さくなり、Vthが上がります。Idspmos式よりPmosの電流が減少します。
【0063】
Nmos:fast 移動度が大きくなり、Vthが下がります。Idspmos=Idsnmosを成り立たせる為には、Vgsが低くなります。 つまりDPnoの電位が下がります。
トランジスタTN7,TN6,TP7から構成される回路も上記同様な考え方から出力回路に対して補正信号を生成する。
【0064】
なお、本実施形態では、同じチップに搭載されるPチャネルMOSトランジスタ同士、NチャネルMOSトランジスタ同士はプロセス変動がなく、駆動能力に差がないものとして扱える。
【0065】
検出信号EOPがHレベルとなるとき、制御信号DPpiがHレベルとなってトランジスタTP5がオフされるが、このときトランジスタTP6がオンされ、上述した動作原理により補正信号DPnoが出力される。
【0066】
図5は、前記第二の補正回路12bの具体的構成を示す。第二の補正回路12bの回路構成は前記第一の補正回路12aの回路構成と同一であり、同一符号を付して説明する。そして、制御信号DPpiに代えて制御信号DMpiが入力され、補正信号DPnoに代えて補正信号DMnoが出力される。また、制御信号DPniに代えて制御信号DMniが入力され、補正信号DPpoに代えて補正信号DMpoが出力される。
【0067】
第二の補正回路12bから出力される補正信号DMno,DMpoは、その電位が第一の補正回路12aから出力される補正信号DPno,DPpoと同様に変化する信号である。
【0068】
次に、上記のように構成された送信回路の動作を図6〜図9に従って説明する。図6に示すように、イネーブル信号ENがHレベルとなり、イネーブル信号ENバーがLレベルとなり、信号ASEZバーがHレベルとなった状態でデータDP,DMが入力されると、第一の出力回路11aから出力信号FSDPが出力され、第二の出力回路11bから出力信号FSDMが出力される。
【0069】
図7は、送信回路を構成するPチャネルMOSトランジスタとNチャネルMOSトランジスタの電流駆動能力に差がない理想的状態で動作する場合を示す。
第一の出力回路11aから出力される制御信号DPpi,DPniに基づいて、第一の補正回路12aで補正信号DPno,DPpoが生成され、その補正信号DPno,DPpoが第二の出力回路11bのサブバッファ回路13bに供給される。そして、サブバッファ回路13bのトランジスタTP4,TN4は同一の負荷駆動能力で動作する。
【0070】
また、第二の出力回路11bから出力される制御信号DMpi,DMniに基づいて、第二の補正回路12bで補正信号DMno,DMpoが生成され、その補正信号DMno,DMpoが第一の出力回路11aのサブバッファ回路13aに供給される。そして、サブバッファ回路13aのトランジスタTP2,TN2は同一の負荷駆動能力で動作する。
【0071】
この結果、サブバッファ回路13a,13bの動作はメインバッファ14a,14bの出力信号FSDP,FSDMの立上り速度及び立下り速度に影響を及ぼさない。
トランジスタの製造ばらつきにより、PチャネルMOSトランジスタの電流駆動能力がNチャネルMOSトランジスタの電流駆動能力に対し相対的に低下していると、第一及び第二の出力回路11a,11bのメインバッファ回路14a,14bでは、出力信号FSDP,FSDMの立上り速度が低下する。
【0072】
このとき、第一及び第二の補正回路12a,12bでは、図8に示すように、図7に示す状態に比して、補正信号DPno,DMnoの電位が低下し、補正信号DPpo,DMpoの電位も低下する。そして、第一及び第二の出力回路11a,11bのサブバッファ回路13a,13bでは、トランジスタTP2,TP4のゲート電位が低下してドレイン電流が増大するとともに、トランジスタTN2,TN4のドレイン電流が減少する。
【0073】
すると、メインバッファ回路14a,14bの出力トランジスタTP1,TP3のドレイン電流の減少分がサブバッファ回路13a,13bのトランジスタTP2,TP4のドレイン電流の増大分により相殺され、出力信号FSDP,FSDMの立上り速度の低下が抑制される。
【0074】
この結果、出力信号FSDP,FSDMのクロス電圧VcrossがFS規格のクロス電圧を満足する範囲に収束する。
一方、トランジスタの製造ばらつきにより、PチャネルMOSトランジスタの電流駆動能力がNチャネルMOSトランジスタの電流駆動能力に対して相対的に増大していると、第一及び第二の出力回路11a,11bのメインバッファ回路14a,14bでは、出力信号FSDP,FSDMの立下がり速度が低下する。
【0075】
このとき、第一及び第二の補正回路12a,12bでは、図9に示すように、図7に示す状態に比して補正信号DPno,DMnoの電位が上昇し、補正信号DPpo,DMpoの電位も上昇する。そして、第一及び第二の出力回路11a,11bのサブバッファ回路13a,13bでは、トランジスタTP2,TP4のゲート電位が上昇してドレイン電流が減少するとともに、トランジスタTN2,TN4のゲート電位が上昇してドレイン電流が増大する。
【0076】
すると、メインバッファ回路14a,14bの出力トランジスタTN1,TN3のドレイン電流の減少分がサブバッファ回路13a,13bのトランジスタTN2,TN4のドレイン電流の増大分により相殺され、出力信号FSDP,FSDMの立下り速度の低下が抑制される。
【0077】
この結果、出力信号FSDP,FSDMのクロス電圧VcrossがFS規格のクロス電圧を満足する範囲に収束する。
FS規格の転送動作では、図10に示すように、データ転送動作の終了に先立って、出力信号FSDP,FSDMがともにLレベルとなるEOP(end of packet)区間を出力し、その後に所定のデータを出力する必要がある。
【0078】
EOP区間では、データDP,DMがともにHレベルとなって、第一及び第二の出力回路11a,11bの出力トランジスタTP1,TP3がオフされ、出力トランジスタTN1,TN3がオンされる。
【0079】
このとき、第一及び第二の補正回路12a,12bでは、トランジスタTP5がオフされるが、検出信号EOPがHレベルとなってTP6がオンされ、補正信号DPno,DMnoがサブバッファ回路13a,13bのトランジスタTN2,TN4をオンさせ得る電位に維持される。また、トランジスタTN6がオフされると、補正信号DPpo,DMpoはサブバッファ回路13a,13bのトランジスタTP2,TP4をオフさせ得る電位まで上昇する。
【0080】
従って、EOP区間ではサブバッファ回路13a,13bも出力信号FSDP,FSDMがともにLレベルとするように動作する。
上記のようなUSB送信回路では、次に示す作用効果を得ることができる。
(1)トランジスタの製造ばらつきにより、メインバッファ回路14a,14bのプルアップ側出力トランジスタ及びプルダウン側トランジスタの電流駆動能力に差が生じても、その差を相殺するサブバッファ回路を設けたので、出力信号FSDP,FSDMのクロス電圧を規格値に収めることができる。
(2)プルアップ側出力トランジスタ及びプルダウン側トランジスタの電流駆動能力のばらつきを第一及び第二の補正回路12a,12bで自動的に検出することができる。
(3)第一及び第二の補正回路12a,12bから出力される補正信号に基づいて、サブバッファ回路13a,13bを動作させて、メインバッファ回路14a,14bのプルアップ側出力トランジスタ及びプルダウン側トランジスタの電流駆動能力の差を相殺することができる。
(4)第一及び第二の出力回路11a,11bのサブバッファ回路13a,13bは、メインバッファ回路14a,14bの出力ノードと高電位側電源VDDとの間に接続したPチャネルMOSトランジスタと、出力ノードと低電位側電源との間に接続したNチャネルMOSトランジスタにより簡単な構成で実現することができる。
(5)第一及び第二の補正回路12a,12bは、メインバッファ回路の駆動信号と共通の制御信号に基づいてサブバッファ回路13a,13bを制御する補正信号を自動的に生成することができる。
(6)第一及び第二の補正回路12a,12bは、制御信号の電圧を電流に変換するトランジスタと、その電流を電圧に変換して補正信号を生成するトランジスタとで簡単に構成することができる。
(7)第一及び第二の補正回路12a,12bに検出信号EOPを入力することにより、EOP区間で出力信号FSDP,FSDMをともにLレベルとするようにサブバッファ回路13a,13bを動作させることができる。
【0081】
上記実施の形態は、以下に示す態様で実施することもできる。
・検出信号EOPに基づいてオンされるPチャネルMOSトランジスタと、オフされるNチャネルMOSトランジスタは、同様に動作するスイッチ回路としてもよい。
【図面の簡単な説明】
【0082】
【図1】一実施形態のUSB送信回路を示す回路図である。
【図2】第一の出力回路を示す回路図である。
【図3】第二の出力回路を示す回路図である。
【図4】第一の補正回路を示す回路図である。
【図5】第二の補正回路を示す回路図である。
【図6】送信回路の入力波形を示すタイミング波形図である。
【図7】出力回路及び補正回路の動作を示すタイミング波形図である。
【図8】出力回路及び補正回路の動作を示すタイミング波形図である。
【図9】出力回路及び補正回路の動作を示すタイミング波形図である。
【図10】EOP区間の動作を示すタイミング波形図である。
【図11】従来のUSB送信回路を示す回路図である。
【図12】従来の出力回路を示す回路図である。
【図13】従来の出力回路の動作を示すタイミング波形図である。
【図14】従来の出力回路の動作を示すタイミング波形図である。
【図15】従来の出力回路の動作を示すタイミング波形図である。
【符号の説明】
【0083】
11a 第一の出力回路
11b 第二の出力回路
12a 第一の補正回路
12b 第二の補正回路
13a,13b サブバッファ回路
14a,14b メインバッファ回路
DP,DM データ
TP1,TN1,TP3,TN3 出力トランジスタ
DPpo,DPno,DMpo,DMno 補正信号
FSDP,FSDM 出力信号

【特許請求の範囲】
【請求項1】
データの入力に基づいてメインバッファ回路から差動信号となる一方及び他方の出力信号をそれぞれ出力する第一及び第二の出力回路と、
前記メインバッファ回路の二つの出力トランジスタの駆動能力のばらつきを補正する補正信号を生成する補正回路と、
前記メインバッファ回路に並列に接続され、前記補正信号に基づいて前記メインバッファ回路の出力トランジスタの駆動能力のばらつきによる電流のばらつきを小さくするサブバッファ回路と
を備えたことを特徴とする送信回路。
【請求項2】
前記メインバッファ回路は、
高電位側電源と低電位側電源との間に前記二つの出力トランジスタとしてPチャネルMOSトランジスタとNチャネルMOSトランジスタとを接続してその接続点を出力ノードとするとともに、各トランジスタのいずれか一方をオンさせて前記出力信号を出力し、
前記サブバッファ回路は、
前記高電位側電源と低電位側電源との間にPチャネルMOSトランジスタとNチャネルMOSトランジスタとを接続してその接続点を前記出力ノードに接続し、該PチャネルMOSトランジスタとNチャネルMOSトランジスタのゲートに前記補正信号を入力したことを特徴とする請求項1記載の送信回路。
【請求項3】
前記第一の出力回路と第二の出力回路にそれぞれメインバッファ回路とサブバッファ回路を備え、各サブバッファ回路に前記補正信号を出力する第一及び第二の補正回路を備えたことを特徴とする請求項2記載の送信回路。
【請求項4】
前記第一及び第二の補正回路は、高電位側電源と低電位側電源との間にPチャネルMOSトランジスタとダイオード接続したNチャネルMOSトランジスタとを直列に接続し、前記PチャネルMOSトランジスタのゲートに前記メインバッファ回路のPチャネルMOSトランジスタを駆動する駆動信号を制御信号として入力し、前記NチャネルMOSトランジスタのドレインから前記サブバッファ回路のNチャネルMOSトランジスタを駆動する補正信号を出力することを特徴とする請求項3記載の送信回路。
【請求項5】
前記第一及び第二の補正回路は、高電位側電源と低電位側電源との間にダイオード接続したPチャネルMOSトランジスタとNチャネルMOSトランジスタとを直列に接続し、前記NチャネルMOSトランジスタのゲートに前記メインバッファ回路のNチャネルMOSトランジスタを駆動する駆動信号を制御信号として入力し、前記PチャネルMOSトランジスタのドレインから前記サブバッファ回路のPチャネルMOSトランジスタを駆動する補正信号を出力することを特徴とする請求項3記載の送信回路。
【請求項6】
前記第一及び第二の補正回路は、前記メインバッファ回路のPチャネルMOSトランジスタの駆動能力が前記メインバッファ回路のNチャネルMOSトランジスタの駆動能力よりも大きい場合、前記サブバッファ回路のPチャネルMOSトランジスタのゲートに入力される補正信号より大きい補正信号を前記サブバッファ回路のNチャネルMOSトランジスタのゲートに入力することを特徴とする請求項3記載の送信回路。
【請求項7】
前記第一及び第二の補正回路は、前記メインバッファ回路のPチャネルMOSトランジスタの駆動能力が前記メインバッファ回路のNチャネルMOSトランジスタの駆動能力よりも小さい場合、前記サブバッファ回路のPチャネルMOSトランジスタのゲートに入力される補正信号より小さい補正信号を前記サブバッファ回路のNチャネルMOSトランジスタのゲートに入力することを特徴とする請求項3記載の送信回路。
【請求項8】
前記第一及び第二の補正回路には、EOP検出信号の入力に基づいて前記サブバッファ回路の出力信号をLレベルとする補正信号を生成する補助回路を備えたことを特徴とする請求項3乃至7のいずれか1項に記載の送信回路。
【請求項9】
前記補助回路は、前記制御信号が入力されるPチャネルMOSトランジスタと並列に接続されて、前記EOP検出信号に基づいてオン動作するPチャネルMOSトランジスタとしたことを特徴とする請求項8記載の送信回路。
【請求項10】
前記補助回路は、前記制御信号が入力されるNチャネルMOSトランジスタと直列に接続されて、前記EOP検出信号に基づいてオフ動作するNチャネルMOSトランジスタとしたことを特徴とする請求項8記載の送信回路。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【図8】
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【図9】
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【図10】
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【図11】
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【図12】
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【図13】
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【図14】
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【図15】
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【公開番号】特開2010−103852(P2010−103852A)
【公開日】平成22年5月6日(2010.5.6)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2008−274748(P2008−274748)
【出願日】平成20年10月24日(2008.10.24)
【出願人】(308014341)富士通マイクロエレクトロニクス株式会社 (2,507)
【Fターム(参考)】