説明

送信装置

【課題】複数のAM信号と複数のデジタル変調信号を周波数多重し、その周波数多重信号を伝送する伝送装置において、デジタル変調信号による高品質なデジタル信号の伝送を実現する。
【解決手段】複数のAM信号とデジタル変調信号とを周波数多重した周波数多重信号を送信する送信装置であって、複数の前記AM信号と前記デジタル変調信号とを周波数多重して前記周波数多重信号を生成する周波数多重手段と、前記周波数多重信号を送信する送信手段とを備え、AM信号に基づいて発生する歪による影響を低減し、デジタル信号に対する誤り訂正を有効に機能させることができる。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明はCATV等に用いられる光伝送装置に関するものである。
【背景技術】
【0002】
非特許文献1では、既存のAM映像信号とM―QAM信号を周波数多重し伝送する伝送装置の仕様について述べられている。また、特許文献1にあるように、既存のAM映像信号とM―QAM信号を周波数多重し、その周波数多重信号でレーザ出力光を強度変調し伝送する光伝送装置が提案されている。前記の伝送装置では、伝送装置に使用される増幅器等の非線形性により、また、前記の光伝送装置では、レーザの非線形性等により原理的に周波数多重信号が歪み、複合相互変調歪が発生する。
【0003】
さらに、これらの、伝送路において発生する歪等の干渉もしくは妨害下においてM―QAM信号の伝送品質を確保するため、符号形式(204、188)のリードソロモン符号に深さ12のインターリーブを行い誤り訂正をすることが、非特許文献1で勧告されている。
【非特許文献1】DAVIC Specification1.0(Dec 1995) Part08
【特許文献1】特開平4−312088号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
上記のような同軸線等を用いた伝送装置、および光伝送装置において、M―QAM信号を伝送した場合、M―QAM信号の帯域内に発生する複合相互変調歪に対し、図4の複合相互変調歪がある場合に誤り訂正を行ったときの誤り率特性に示すように、前記の誤り訂正が有効に機能しない場合がある。
【0005】
これは、図5の符号相互変調歪のスペクトラムに示すように複合相互変調歪が非常に狭帯域な雑音と同等のスペクトラムを有しており、その振幅の変動が図6の複合相互変調歪の振幅の時間変動に示すように、複合相互変調歪との最大周波数以下の周波数で変動する。例えば、本例の場合では約4kHz程度の最大周期で変動することになる。このような、複合相互変調歪の特徴はその発生原因にある。すなわち、複合相互変調歪は伝送するAM信号のキャリアの2個以上の組み合わせにより発生するが、それぞれのキャリアの位相条件はお互い相関が無く、また、キャリア信号の周波数もある一定の安定度以下で変動している。このため、複合相互変調歪は、各AM信号のキャリア周波数の安定度の最大偏差とほぼ同等の帯域幅のスペクトラムを有する。一方、複合相互変調歪の振幅分布は正規分布する。このため、確率は低いが非常に大きな振幅が出現し、その場合にM―QAM信号の誤りを引き起こす。ところで、複合相互変調歪の振幅の変動が、伝送するM―QAM信号のシンボルレートに比べ、非常に遅いものであれば、誤りの発生はバースト的に発生することになる。同軸線による伝送装置および光伝送装置では、複合相互変調歪の発生をゼロにすることは困難であり、複合相互変調歪が存在する条件でのデジタル変調信号の伝送を考慮しなければならない。
【課題を解決するための手段】
【0006】
本願発明は、複数のAM信号とデジタル変調信号とを周波数多重した周波数多重信号を送信する送信装置であって、複数の前記AM信号と前記デジタル変調信号とを周波数多重して前記周波数多重信号を生成する周波数多重手段と、前記周波数多重信号を送信する送信手段とを備え、前記周波数多重信号に周波数多重された前記デジタル変調信号は、前記AM信号に基づいて発生する歪の周波数以外で送信されることを特徴とする。
【0007】
さらに、本願発明において、前記デジタル変調信号の変調方式はOFDM方式であり、前記AM信号に基づいて発生する歪の周波数以外の前記デジタル変調信号の各副搬送波を用いて送信を行うことを特徴とする。
【0008】
さらに、本願発明において、前記歪は複合相互変調歪であることを特徴とする。
【0009】
さらに、本願発明において、前記送信装置はさらに、前記周波数多重信号によりレーザ出力光を強度変調する手段を有し、前記送信手段は、前記周波数多重信号によりレーザ出力光を強度変調された信号を送信することを特徴とする。
【発明の効果】
【0010】
以上説明したように、本発明によれば、複数のAM信号とデジタル変調信号を周波数多重し、その周波数多重信号を送信する送信装置において、AM信号により発生する複合相互発生する帯域を伝送に使用しない。また、デジタル変調信号の変調方式にOFDMを採用し、かつ、AM信号により発生する周波数と一致するOFDM信号の各副搬送波での信号の伝送を行わない。AM信号により発生する複合相互変調歪は、特定の周波数に発生するため、その周波数でデータを送らなければ、複合相互変調歪によるデジタル信号の誤りは発生しない。
【発明を実施するための最良の形態】
【0011】
(実施の形態1)
以下、本発明における実施の形態について、図面を参照しながら説明する。
【0012】
図1は実施の形態1を説明する図である。AM信号源1011からの複数のAM信号とQAM信号源1012からの複数のQAM信号を周波数多重し、その周波数多重信号を伝送する伝送装置において、歪発生部1020により、あらかじめ、デジタル変調信号の伝送帯域内に歪を発生させる。この歪の振幅、位相をレーザで発生する歪と同等レベルの振幅および位相が180度異なるように位相を調整する。このように調整した信号を多重信号に多重して、前記周波数多重信号を伝送すれば伝送路で発生する複合相互変調歪と予め加えた歪が相殺し、デジタル変調信号内の歪量が抑制される。ここで、抑制後の歪レベルは、QAM信号帯域内の雑音電力に対し、―6dB以下となっている。
【0013】
(実施の形態2)
図2は実施の形態2を説明する図である。ここでは、AM信号源2011からの複数のAM信号とQAM信号源2012からの複複数のQAM信号を周波数多重し、その周波数多重信号を伝送する伝送装置において、AM信号のレベルを調整し、歪レベルをQAM信号帯域内の雑音電力に対し、―6dB以下としている。
【0014】
実施の形態1及び2のいずれの場合においても、伝送されるデジタル信号は誤り訂正及びインターリーブを採用したコーディングが行われる。これは、DAVICSpecification 1.0(Dec 1995)Part8p82にある、符号形式(204、188)のリードソロモン符号と深さ12のインターリーブを行うコーディングである。なお、リードソロモン誤り訂正およびインターリーブに関する具体的内容はDAVICSpecification 1.0(Dec 1995)Part8p73―76に記述されている。
【0015】
実施の形態1および2において、歪量を補償もしくは、レベルの調整により低減することにより誤り訂正が有効に機能する。雑音に対する歪量のレベルと誤り訂正の効果について図7に示す。なお、ここで使用した誤り訂正方式は前記に示した通りである。図7より明らかなように、この値は複合相互変調歪量はデジタル変調信号の帯域内の雑音に対し―6dB以下とすればよい。逆に、請求項1または2の発明を採用しない場合には、誤り訂正により誤りを有効に訂正できない場合がある。
【0016】
(実施の形態3)
図1または図2に記載の伝送装置において、前記インターリーブの深さが、各AM信号のキャリア周波数の安定度の最大偏差の逆数で得られる時間よりも長くする。
【0017】
例えば、AMキャリア信号の周波数安定度の最大偏差が4kHzであったとする。このような場合の、複合相互変調歪のスペクトラムは図5に示すようになる。一方、この複合相互変調歪の時間領域での変化は図6に示すようになる。このような、時間領域の変動を有する信号により誤りが生じる場合には、その誤りの発生は、4kHz毎に、バースト状に現れる。したがって、このように発生するバースト状の誤りをランダムに分散させるには、4kHz以上の深さを有するインターリーブを採用すればよい。
【0018】
上記のようなインタリーブの深さを採用することにより、バースト上に現れる誤りを拡散し、ランダムに誤りが発生する場合と同等な状態にすることができ、誤り訂正が有効に機能する。さらに、実施の形態1および2に示したような歪量の制約も緩和できる。
【0019】
(実施の形態4)
図3は実施の形態4を説明する図である。複数のAM信号と複数のデジタル変調信号を周波数多重し、その周波数多重信号でレーザ出力光を強度変調して伝送する光伝送装置において、デジタル変調信号の変調方式にOFDMを採用する。
【0020】
図3における詳細な具体的な実施形態として、OFDM信号の各副搬送波の帯域が、各AM信号のキャリア周波数の安定度の最大偏差よりも小さくなるように設定する。図5に示したようにAM信号のキャリア周波数の最大偏差が4kHz程度の場合、OFDM変調信号の副搬送波を1500波以上とすればよい。
【0021】
前記で述べたように、複合相互変調歪の振幅は、各AMキャリアの周波数安定度の最大偏差の逆数で変動する。これらの変動による誤りがランダムになるには、信号伝送帯域がこの最大周波数偏差以下であればよい。これにより、発生する誤りがランダム化され、誤り訂正が有効に作用する。また、実施の形態1および2に示した歪量の制約についても緩和できる。
【0022】
一方、図3における異なる実施の例として、図3に示す実施形態において、AM信号により発生する周波数と一致するOFDM信号の各副搬送波での信号の伝送を行わない。
【0023】
OFDMの場合、各副搬送波号によりデジタル信号が伝送される。ところで、AM信号により複合相互変調歪は、1.25MHzの特定の周波数間隔で発生する。さらに、複合相互変調歪のスペクトラムは前記に述べたように非常に狭帯域に集中している。そのため、複合相互変調歪が発生する帯域でデジタル信号を伝送しなければ、複合相互変調歪に起因する誤りの発生回避またはバースト性を回避することができ、誤り訂正が有効に機能する。この場合も同様に歪量の制約を緩和できる。
【0024】
(実施の形態5)
実施の形態5として、伝送装置の伝送路を周波数多重信号でレーザ出力光を強度変調し、信号を伝送する光伝送装置または、光伝送装置および同軸線の伝送装置を組み合わせた伝送装置を採用する。この場合もレーザ、および光信号を電気信号に変換した後、その電気信号を増幅する電気アンプ等の非線形により歪が発生するため、いずれかの実施形態を採用することにより誤り訂正によりデジタル変調信号の伝送品質を改善することができる。
【0025】
複数のAM信号と複数のデジタル変調信号を周波数多重し、その周波数多重信号を伝送する伝送装置において、デジタル変調信号の伝送帯域内に発生する歪を抑圧し、雑音電力に対し―6dB以下にすることにより、誤り訂正が有効に機能し、デジタル変調信号の高品質な伝送を実現できる。
【0026】
以上説明したように、各実施形態によると、誤り訂正の前処理におけるインターリーブの深さを各AM信号のキャリア周波数の安定度の最大偏差の逆数で得られる時間よりも長く設定することにより、インターリーブの深さが誤りの発生するバーストよりも長くなり、誤りが分散されるため、誤り訂正が有効に機能する。また、この場合は、上記に示すような歪量の制約を緩和できる。
【0027】
デジタル変調信号の変調方式にOFDMを採用し、かつ、OFDM信号の各副搬送波の帯域が、各AM信号のキャリア周波数の安定度の最大偏差よりも小さくなるように設定する、この場合、デジタル変調信号のデータレートは、複合相互変調歪の振幅変動よりも長くなり、これにより誤りの発生が複数のシンボルに及ばなくなり、誤り訂正が有効に機能することになる。
【0028】
同様に、デジタル変調信号の変調方式にOFDMを採用し、かつ、AM信号により発生する周波数と一致するOFDM信号の各副搬送波での信号の伝送を行わない。この場合、AM信号による複合相互変調歪が発生する帯域を伝送に使用しない。AM信号により発生する複合相互変調歪は、特定の周波数に発生するため、その周波数でデータを送らなければ、複合相互変調歪によるデジタル信号の誤りは発生しない。
【0029】
なお、これらの場合についても、上記に示す歪量の制約を緩和できる。複数のAM信号と複数のデジタル変調信号を周波数多重し、その周波数多重信号を伝送する伝送装置であって、前記周波数多重信号により、レーザ出力光を強度変調し、信号を伝送する場合において、上記に示す方法を用いることにより、デジタル変調信号の高品質な伝送が実現できる。
【産業上の利用可能性】
【0030】
本発明にかかる送信装置は、CATV等に用いることができる。
【図面の簡単な説明】
【0031】
【図1】本発明の第1の実施の形態における構成を示した図
【図2】本発明の第2の実施の形態における構成を示した図
【図3】本発明の第4の実施の形態における構成を示した図
【図4】複合相互変調歪がある場合に誤り訂正を行ったときの誤り率特性を示す図
【図5】複合相互変調歪のスペクトラムを示す図
【図6】複合相互変調歪の振幅の時間変動を示す図
【図7】デジタル変調信号帯域内の雑音電力に対する歪電力を変更した場合の誤り率特性を示す図
【符号の説明】
【0032】
1011,2011,3011 AM信号源
1012,2012,3012 64QAM信号源
1020 歪発生回路
1031 第一の周波数多重装置
1032 第二の周波数多重装置
1040,2030,3030 送信機
1050,2040,3040 伝送路
1060,2050,3050 受信機
1070,2060,3060 チューナ
1080,2070,3070 64QAM復調器
1090,2080,3080 誤り訂正・デインターリーブ回路
2020,3020 周波数多重装置

【特許請求の範囲】
【請求項1】
複数のAM信号とデジタル変調信号とを周波数多重した周波数多重信号を送信する送信装置であって、
複数の前記AM信号と前記デジタル変調信号とを周波数多重して前記周波数多重信号を生成する周波数多重手段と、
前記周波数多重信号を送信する送信手段とを備え、
前記周波数多重信号に周波数多重された前記デジタル変調信号は、前記AM信号に基づいて発生する歪の周波数以外で送信される送信装置。
【請求項2】
前記デジタル変調信号の変調方式はOFDM方式であり、
前記AM信号に基づいて発生する歪の周波数以外の前記デジタル変調信号の各副搬送波を用いて送信を行う請求項1記載の送信装置。
【請求項3】
前記歪は複合相互変調歪であることを特徴とする請求項1または2に記載の送信装置。
【請求項4】
前記送信装置はさらに、
前記周波数多重信号によりレーザ出力光を強度変調する手段を有し、
前記送信手段は、前記周波数多重信号によりレーザ出力光を強度変調された信号を送信する請求項1〜3いずれかに記載の送信装置。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【公開番号】特開2006−33871(P2006−33871A)
【公開日】平成18年2月2日(2006.2.2)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2005−222381(P2005−222381)
【出願日】平成17年8月1日(2005.8.1)
【分割の表示】特願平8−204559の分割
【原出願日】平成8年8月2日(1996.8.2)
【出願人】(000005821)松下電器産業株式会社 (73,050)
【Fターム(参考)】