説明

送液方法

【課題】 少ない試料で、センサ面における高い反応効率を得る。
【解決手段】 試料を含む溶液21が注入される流路16と対向する位置にはセンサ面13aが配置されている。ピペット対19は、一方のピペット19aに溶液21を吸い込み、1番目のセンサセル17に溶液21を注入する。注入後、吸引と吐出を繰り返して、流路16内の溶液21を流動させる。この後、一方のピペット19bで溶液21を吸い出して流路16から溶液21を排出する。ピペット対19は、この溶液21を保持したまま、2番目のセンサセル17に移動して、その流路16へ溶液21を注入する。こうして溶液21が複数のセンサセル17間で使い回される。これにより、少ない試料で、センサ面13aに対して試料の固定が可能になり、高い反応効率(使用する溶液に対する固定量の割合)が得られる。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、試料の反応を検出するセンサのセンサ面へ、試料を送液する送液方法に関するものである。
【背景技術】
【0002】
例えば、タンパク質やDNAなどの生化学物質の相互作用を調べたり、薬品のスクリーニングを行う場合において、試料の反応を測定する測定装置として、全反射減衰を利用した測定装置が知られている。
【0003】
全反射減衰を利用した測定装置は、透明な誘電体上に形成された薄膜の一方の面であるセンサ面上において試料の反応を生じさせ、前記センサ面の裏面の光入射面に全反射条件を満たすように光を入射させ、その反射光の減衰状況を検出することにより前記反応を測定する。こうした全反射減衰を利用した測定装置の1つに、表面プラズモン共鳴(Surface Plasmon Resonance)現象を利用した測定装置(以下、SPR測定装置という)がある。表面プラズモンとは、金属中の自由電子が集団的に振動することによって生じ、その金属の表面に沿って進む自由電子の粗密波である。
【0004】
SPR測定装置は、透明な誘電体上に形成された薄膜として金属膜を使用し、この金属膜の一方の面をセンサ面として、このセンサ面にSPRを発生させ、そこで生じる物質の反応状況をSPRを検出することにより測定する。
【0005】
金属膜のセンサ面の裏面から、全反射条件を満足するように(臨界角以上の入射角で)光を照射すると、その光入射面において全反射が起こるが、入射光のうちわずかな光は反射せずに金属膜内を通過して、センサ面に染み出す。この染み出した光波がエバネッセント波と呼ばれる。このエバネッセント波と表面プラズモンの振動数が一致して共鳴すると(SPRが発生すると)、反射光の強度が大きく減衰する。SPR測定装置は、前記光入射面で反射する反射光の減衰を捉えることにより、その裏側のセンサ面で発生するSPRを検出する。
【0006】
SPRを発生させるための光の入射角(共鳴角)は、エバネッセント波および表面プラズモンが伝播する媒質の屈折率に依存する。言い換えると、媒質の屈折率が変化すれば、SPRを発生させる共鳴角が変化する。センサ面と接する物質は、エバネッセント波および表面プラズモンを伝播させる媒質となるので、例えば、センサ面において、2種類の分子間の結合や解離などの化学反応が生じると、それが媒質の屈折率の変化として顕れて、共鳴角が変化する。SPR測定装置は、この共鳴角の変化を捉えることにより分子間の相互作用を測定する。
【0007】
生化学分野の実験や研究においては、タンパク質、DNA、薬品などが、リガンドやアナライトとして使用される。例えば、薬品のスクリーニングを行う場合には、リガンドとして、タンパク質などの生体物質を使用し、このセンサ面にアナライトとなる複数種類の薬品を接触させて、それらの相互作用を調べる。
【0008】
下記特許文献1に記載のSPR測定装置は、金属膜に光を入射させるための光学系として、Kretschmann配置を採用している。Kretschmann配置では、金属膜の光入射面と、この光入射面に向けて全反射条件を満足するように照射された光を集光するプリズムとが接合される。リガンドとアナライトの反応を調べる場合には、まず、センサ面にリガンドが固定される。この固定処理では、センサ面と対向して配置された流路に対してリガンドを溶媒に溶かしたリガンド溶液を送液して、溶液中のリガンドをセンサ面に予め形成したリンカー膜に結合させる。
【0009】
センサ面へのリガンド溶液の送液は、流路へリガンド溶液を連続的に流し続けたり、流路へリガンド溶液を注入した後、所定時間静置するなどの方法で行われる。
【特許文献1】特開平6−167443号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0010】
しかしながら、上記送液方法では、リンカー膜へのリガンドの結合量(固定量)を増やしたい場合には、試料となるリガンドの量を多くせざるを得なかった。すなわち、流路へリガンド溶液を連続的に流し続ける方法では、流路以外にも循環路となる配管部分を満たすだけのリガンド溶液が必要となるため、多量のリガンド溶液が必要になる。また、注入後所定時間静置する方法では、リガンド溶液の体積自体は少なくて済むものの、リガンドの拡散を自然まかせにするため、リンカー膜との結合反応効率が悪い。そのため、リガンドの濃度が高い溶液を使わざるをない。試料は非常に高価であるため、できるだけ少ない試料で必要な固定量を得たいという要望が強かった。
【0011】
本発明は、少ない試料で、センサ面における高い反応効率が得られる送液方法を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0012】
本発明の送液方法は、試料の反応を検出するセンサ面と、このセンサ面に対向して配置され試料を含む試料溶液が注入される流路とによってそれぞれが構成された複数のセンサセルに対して、前記試料溶液を注入してそれぞれのセンサ面へ前記試料溶液を送液する送液方法において、1つのセンサセルへ前記試料溶液を注入して前記センサ面へ送液した後、当該センサセルから前記試料溶液を排出し、この排出した試料溶液を別のセンサセルへ注入し排出するという処理を繰り返して、前記試料溶液を複数のセンサセル間で使い回すことを特徴とする。
【0013】
複数のセンサセルのすべてに対して、前記試料溶液の注入及び排出が終了した場合には、再び最初に試料溶液を注入したセンサセルから前記試料溶液の注入及び排出を繰り返してもよい。
【0014】
前記試料溶液の注入及び排出は、前記流路の両端の開口に、先端がそれぞれ配置される1対のピペットによって行われることが好ましい。
【0015】
1つのセンサセルへの送液に際して、前記センサセルへ前記試料溶液を注入後、そこから試料溶液を排出するまでの間、一方のピペットによる前記試料溶液の吐出と、他方のピペットによる前記試料溶液の吸引とを交互に繰り返して、センサセル内の試料溶液を流動させることが好ましい。
【0016】
前記センサは、例えば、一方の面が前記センサ面となる金属膜を持ち、前記センサ面における反応状況を表面プラズモン共鳴現象を利用して測定する際に用いられるSPRセンサである。
【0017】
前記試料溶液の使い回しは、例えば、前記センサ面に試料を固定する際に行われる。
【発明の効果】
【0018】
本発明の送液方法は、1つのセンサセルへ前記試料溶液を注入して前記センサ面へ送液した後、当該センサセルから前記試料溶液を排出し、この排出した試料溶液を別のセンサセルへ注入し排出するという処理を繰り返して、前記試料溶液を複数のセンサセル間で使い回すようにしたから、少ない試料で、センサ面における高い反応効率が得られる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0019】
図1に示すように、SPRを利用した測定方法は、大きく分けて、固定工程と、測定処工程(データ読み取り工程)と、データ解析工程との3つの工程からなる。SPR測定装置は、固定工程を行う固定機10と、測定工程を行う測定機11と、測定機11によって得られたデータを解析する解析機からなる。
【0020】
測定は、SPRセンサであるセンサユニット12を用いて行われる。センサユニット12は、一方の面がSPRが発生するセンサ面13aとなる金属膜13と、このセンサ面13aの裏面の光入射面13bと接合されるプリズム14と、前記センサ面13aと対向して配置され、リガンドやアナライトが送液される流路16が形成された流路部材41とを備えている。
【0021】
金属膜13としては、例えば、金が使用され、その膜厚は、例えば、500オングストロームである。この膜厚は、金属膜の素材、照射される光の発光波長などに応じて適宜選択される。プリズム14は、その上面に前記金属膜13が形成される透明な誘電体であり、光入射面13bに向けて、全反射条件を満たすように照射された光を集光する。流路16は、略U字形に屈曲された送液管であり、その両端には液体の注入と排出を行う開口16a,16bが形成されている。流路16の管径は、例えば、約1mm程度であり、各開口16a、16bの間隔は、例えば、約10mm程度である。
【0022】
また、流路16の底部は、開放されており、この開放部位はセンサ面13aによって覆われて密閉される。これら流路16とセンサ面13aによってセンサセル17が構成される。後述するように、センサユニット12は、こうしたセンサセル17を複数個備えている(図2参照)。
【0023】
固定工程は、センサ面13aにリガンドを固定する工程である。固定工程は、センサユニット12を固定機10にセットして行われる。固定機10には、1対のピペット19a,19bからなるピペット対19が設けられている。ピペット対19は、各ピペット19a,19bが、流路16の両端に形成された開口16a,16bのそれぞれに対応する位置に配置される。各ピペット19a,19bは、それぞれが流路16への液体の注入と、流路16からの吸い出しを行う送排出管であり、後述する連動機構によって、一方が注入動作を行っているときには、他方が吸い出し動作を行うというように、互いに連動する。このピペット対19を用いて、各開口16a,19bの一方から、リガンドを溶媒に溶かしたリガンド溶液21が注入され、他方から排出される。
【0024】
センサ面13aのほぼ中央部には、リガンドと結合するリンカー膜22が形成されている。このリンカー膜22は、センサユニット12の製造段階において予め形成される。リンカー膜22は、リガンドを固定するための固定基となるので、固定するリガンドの種類に応じて適宜選択される。
【0025】
リガンド溶液21を注入するリガンド固定化処理を行う前に、前処理として、まず、リンカー膜22に対して、固定用バッファ液を送液してリンカー膜22を湿らせた後、リンカー膜22へリガンドが結合しやすくするためにリンカー膜22の活性化処理が施される。例えば、アミンカップリング法では、リンカー膜22としてカルボキシメチルデキストランが使用され、リガンド内のアミノ基をこのデキストランに直接共有結合させる。この場合の活性化液としては、N’−(3−ジメチルアミノプロピル)カルボジイミドヒドロクロリド(EDC)とN−ヒドロキシコハク酸イミド(NHS)との混合液が使用される。この活性化処理の後、固定用バッファによって流路16が洗浄される。
【0026】
固定用バッファや、リガンド溶液21の溶媒(希釈液)としては、例えば、各種のバッファ液(緩衝液)の他、生理的食塩水に代表される生理的塩類溶液や、純水が使用される。これらの各液の種類、pH値、混合物の種類及びその濃度等は、リガンドの種類に応じて適宜決められる。例えば、リガンドとして生体物質を使用する場合には、pHを中性付近に調整した生理的食塩水が使用される場合が多い。しかし、上記アミンカップリング法では、リンカー膜22は、カルボキシメチルデキストランにより負(マイナス)に帯電するので、このリンカー膜22と結合しやすいようにタンパク質を陽(プラス)に帯電させるため、生理的とはいえない高濃度のリン酸塩を含む緩衝作用の強いリン酸緩衝溶液(PBS:phosphatic−buffered,saline)などが使用される場合もある。
【0027】
こうした活性化処理及び洗浄が行われた後、センサセル17へリガンド溶液21が注入されてリガンド固定化処理が行われる。リガンド溶液21が流路16へ注入されると、溶液中で拡散しているリガンド21aが徐々にリンカー膜22へ近づいて、結合する。こうしてセンサ面13bにリガンド21aが固定される。固定化には、通常、約1時間数程度かかり、この間、センサユニット12は、温度を含む環境条件が所定の条件に設定された状態で、保管される。
【0028】
センサ面13aへのリガンド21aの固定化が完了すると、前記流路16からリガンド溶液21が排出される。リガンド溶液21は、ピペット19bによって吸い出されて排出される。固定化が完了したセンサ面13aは、流路16へ洗浄液が注入されて洗浄処理が行われる。この洗浄後、必要に応じて、ブロッキング液を流路16へ注入して、リンカー膜22のうち、リガンドが結合しなかった反応基を失活させるブロッキング処理が行われる。ブロッキング液としては、例えば、エタノールアミン−ヒドロクロライドが使用される。このブロッキング処理の後、再び流路16が洗浄される。この後、後述するように、流路16には、乾燥防止液が注入される。これにより、センサユニット12は、センサ面13aの乾燥が防止された状態で、測定までの間保管される。
【0029】
測定工程は、センサユニット12を測定機11にセットして行われる。測定機11にも、固定機10のピペット対19と同様のピペット対26が設けられている。このピペット26によって、各開口16a,16bの一方から、流路16へ各種の液が注入され、他方から排出される。測定工程では、まず、流路16へ測定用バッファが注入される。この後、アナライトを溶媒に溶かしたアナライト溶液27を注入し、その後、再び測定用バッファが注入される。なお、最初に測定用バッファを注入する前に、いったん流路16の洗浄を行ってもよい。データの読み取りは、基準となる信号レベルを検出するために、最初に測定用バッファを注入した直後から開始され、アナライト溶液27の注入後、再び測定用バッファが注入されるまでの間行われる。これにより、基準レベルの検出、アナライトとリガンドの反応状況(結合状況)、測定バッファ注入による結合したアナライトとリガンドの脱離までの信号を測定することができる。
【0030】
測定用バッファや、アナライト溶液27の溶媒(希釈液)としては、例えば、各種のバッファ液(緩衝液)の他、生理的食塩水に代表される生理的塩類溶液や、純水が使用される。これらの各液の種類、pH値、混合物の種類及びその濃度等は、リガンドの種類に応じて適宜決められる。例えば、アナライトを溶けやすくするために、生理的食塩水にDMSO(ジメチル−スルホ−オキシド)を含ませてもよい。このDMSOは、信号レベルに大きく影響するので、これをアナライトの溶媒に含ませた場合には、測定用バッファに対しても、同様の濃度で含ませることが好ましい。
【0031】
なお、アナライト溶液27は、長期間(例えば、1年)保管されることも多く、そうした場合には、経時変化によって、初期のDMSO濃度と測定時のDMSO濃度との間に濃度差が生じてしまう場合がある。厳密な測定を行う必要がある場合には、こうした濃度差をアナライト溶液27を注入したときの参照信号の信号レベルから推定し、測定データに対して補正(DMSO濃度補正)が行われる。
【0032】
ここで、参照信号(ref信号)とは、センサ面上に設けられリガンドが固定されない参照領域に対応するSPR信号であり、リガンドが固定されアナライトとの反応を生じる測定領域の測定信号(act信号)と比較参照される信号である。測定に際しては、前記測定信号と参照信号の2つの信号が検出され、データ解析に際しては、例えば、それら2つのSPR信号の差分を取り、これを測定データとして解析がなされる。こうすることで、例えば、複数のセンサセル間の個体差や、液体の温度変化など、外乱に起因するノイズをキャンセルすることが可能となり、S/N比の良好な信号が得られるようにしている。
【0033】
DMSO濃度補正のための補正データは、アナライト溶液27を注入する前に、DMSO濃度が異なる複数種類の測定用バッファをセンサセル17に注入して、このときのDMSO濃度変化に応じた、ref信号のレベルとact信号のレベルのそれぞれの変化量を調べることにより求められる。
【0034】
測定が終了すると、ピペット26bによってアナライト溶液27が排出口16bから排出される。
【0035】
測定部31は、照明部32と検出部33からなる。上述したとおり、リガンドとアナライトの反応状況は、共鳴角(光入射面に対して照射された光の入射角)の変化として顕れるので、照明部32は、全反射条件を満足する様々な入射角の光を光入射面13bに対して照射する。照明部32は、例えば、光源34と、集光レンズ、拡散板、偏光板を含む光学系36とからなり、配置位置および設置角度は、照明光の入射角が、上記全反射条件を満足するように調整される。
【0036】
光源34としては、例えば、LED(Light Emitting Diode),LD(Laser Diode),SLD(Super Luminescent Diode)などの発光素子が使用される。こうした発光素子を1個使用し、この単一光源から1つのセンサセルに向けて光が照射される。なお、複数のセンサセルを同時に測定するような場合には、単一光源からの光を分光して複数のセンサセルに照射してもよいし、各センサセルに対して発光素子が1つずつ割り当てられるように複数の発光素子を並べて使用してもよい。拡散板は、光源34からの光を拡散して、発光面内の光量ムラを抑える。偏光板は、照射光のうち、SPRを生じさせるp偏光のみを通過させる。なお、LDを使用する場合など、光源が発する光線自体の偏光の向きが揃っている場合には、偏光板は不要である。また、偏光が揃っている光源を使用した場合でも、拡散板を通過することにより、偏光の向きが不揃いになってしまう場合には、偏光板を使用して偏光の向きが揃えられる。こうして拡散および偏光された光は、集光レンズによって集光されてプリズム14に照射される。これにより、光強度にバラツキがなく様々な入射角を持つ光線を光入射面13bに入射させることができる。
【0037】
検出器33は、光入射面13bで反射する光を受光して、その光強度に応じたレベルの電気信号を出力する。光入射面13bには、様々な角度で光線が入射するので、光入射面13bでは、それらの光線が、それぞれの入射角に応じて様々な反射角で反射する。検出器33は、これらの様々な反射角の光線を受光する。センサ面13a上の媒質(表面プラズモンの)に変化が生じると屈折率が変化して、光強度が減衰する反射角(SPRが発生する共鳴角)も変化する。センサ面13a上にアナライトを送液すると、アナライトとリガンドの反応状況に応じて共鳴角が変化するため、光強度が減衰する反射角も変化する。
【0038】
検出器33は、例えば、CCDエリアセンサやフォトダイオードアレイが使用され、光入射面13bにおいて様々な反射角で反射する反射光を受光し、それらを光電変換してSPR信号として出力する。リガンドとアナライトの反応状況は、この受光面内における反射光の減衰位置の推移として顕れる。例えば、アナライトがリガンドと接触する前後では、センサ面13a上の屈折率が異なり、SPRが発生する共鳴角(反射光の減衰位置)が異なる。そして、アナライトがリガンドと接触して反応を開始すると、それに応じて反射光の共鳴角が変化を開始して、前記受光面内における反射光の減衰位置が移動し始める。こうして得た反応状況を表すSPR信号が、データ解析機に出力される。データ解析工程では、測定機11で得たSPR信号を解析して、リガンドとアナライトの相互作用を分析する。
【0039】
なお、図上、光入射面13bへの入射光線及びそこで反射する反射光線の向きが、流路16内の液体の流れ方向と平行になるように、照明部32及び検出器33を配置した形態で示しているが、入射光線及び反射光線の向きが、前記流れ方向と直交する方向に照射されるように、照明部32及び検出器33を配置してもよい。
【0040】
図2は、センサユニット12の分解斜視図である。センサユニット12は、流路16が形成される流路部材41と、上面に金属膜13が形成されたプリズム14と、流路部材41を、その底面をプリズム14の上面と接合させた状態で、保持する保持部材42と、保持部材42の上方に配置される蓋部材43とからなる。
【0041】
流路部材41には、例えば、3つの流路16が形成されている。流路部材41は、長尺状をしており、3つの流路16は、その長手方向に沿って配列されている。この流路16は、その底面に接合される金属膜13とともにセンサセル17(図1参照)を構成する。そのため、流路部材41は、金属膜13との密着性を高めるために、弾性部材、例えば、ゴムや、PDMS(ポリジメチルシロキサン)で形成されている。これにより、流路部材41の底面をプリズム14の上面に圧接すると、流路部材41が弾性変形して金属膜13との接合面の隙間が埋められて、各流路13の開放された底部がプリズム14の上面によって水密に覆われる。なお、本例では、流路16の数が3つの例で説明したが、もちろん、流路16の数は、3つに限らず、1つ又は2つであってもよいし、4つ以上でもよい。
【0042】
プリズム14には、その上面に、蒸着によって金属膜13が形成される。この金属膜13は、流路部材41に形成された複数の流路16と対向するように短冊状に形成される。この金属膜13の上面(センサ面13a)には、各流路16に対応する部位に、リンカー膜22が形成される。このリンカー膜22として使用する物質は、固定するリガンドの種類によって適宜決められる。
【0043】
金属膜13に金を使用し、リンカー膜22として、デキストランを使用する場合の製膜は、例えば、次のような手順で行われる。まず、金属膜13のセンサ面をオゾンクリーニングした後、センサ面13aに対して、エタノールと水の混合液を溶媒とするヒドロキシ−ウンデカンチオール溶液を添加し、25℃の温度で18時間表面処理を行って、センサ面13aをヒドロキシ−ウンデカンチチオールで被膜する。次に、このセンサ面13aに10重量%のエピクロロヒドリン溶液に接触させ、その状態で25℃の温度で4時間、振盪インキュべート(保温)して反応を進行させる。この後、センサ面13aをエタノールと水で洗浄する。この洗浄後、25重量%のデキストラン水溶液(40.5ml)に水酸化ナトリウム(4.5ml)を添加し、その溶液を、センサ面13aに接触させ、その状態で25℃の温度で20時間、振盪インキュベートする。この後、表面を50℃の水で洗浄する。最後に、ブロモ酢酸3.5gを27gの水酸化ナトリウムで溶液に溶解した混合物をセンサ面13aに接触させて、28℃の温度で16時間、振盪インキュベートする。これにより、デキストランのリンカー膜22が生成される。
【0044】
また、プリズム14の長手方向の両側面には、保持部材42の係合部42aと係合する係合爪14aが設けられている。これらの係合により、流路部材41が保持部材42とプリズム14とによって挟み込まれ、その底面とプリズム14の上面とが圧接した状態で保持される。こうして、流路部材41、金属膜13及びプリズム14が一体化される。
【0045】
また、プリズム14の短辺方向の両端部には、突部14bが設けられている。後述するように、センサユニット12は、ホルダ52(図3参照)に収納された状態で、固定が行われる。突部14bは、ホルダ52と係合することにより、センサユニット12をホルダー内の所定の収納位置に位置決めするためのものである。
【0046】
保持部材42の上部には、各流路16の各開口16a,16bに対応する位置に、ピペット(19a,19b,26a,26b)の先端が進入する受け入れ口42bが形成されている。受け入れ口42bは、ピペットから吐出された液体が各開口16a,16bへ導かれるように、漏斗形状をしている。保持部材42が流路部材41を挟み込んでプリズム14と係合すると、受け入れ口42bの下面は、開口16a,排出口16bと接合して、受け入れ口42bと流路16とが連結される。
【0047】
また、これら各受け入れ口42bの両脇には、円筒形のボス42cが設けられている。これらのボス42cは、蓋部材43に形成された穴43aと嵌合して、蓋部材43を位置決めするためのものである。蓋部材43は、受け入れ口42b及びボス43aに対応する位置に穴が空けられた両面テープ44によって、保持部材42の上面に貼り付けられる。
【0048】
蓋部材43は、流路16に通じる受け入れ口42bを覆うことで、流路16内の液体の蒸発を防止する。蓋部材43は、弾性部材、例えば、ゴムやプラスチックで形成されており、各受け入れ口42bに対応する位置に、十字形のスリット43bが形成されている。蓋部材43は、流路16内の液体の蒸発を防止するためのものであるから、受け入れ口42bを覆う必要があるが、完全に覆ってしまっては、ピペットを受け入れ口42bに挿入することができない。そこで、スリット43bを形成することで、ピペットの挿入を可能とするとともに、ピペットを挿入していない状態では、受け入れ口42bが塞がれるようにしている。スリット43bは、ピペットが押し込まれると、スリット43bの周辺が弾性変形(図1参照)して、スリット43bの口が大きく開いて、ピペットを受け入れる。そして、ピペットを抜くと、弾性力によってスリット43bが初期状態に復帰して、受け入れ口42bを塞ぐ。
【0049】
図3に示すように、固定機10は、筐体のベースとなる筐体ベース50上に、複数のセンサユニット12を載置する載置スペース51が確保されている。センサユニット12は、この載置スペース51で載置された状態で固定工程のすべての処理が施される。したがって、この載置スペース51は、センサユニット12に対して固定工程を実行する固定ステージとなる。
【0050】
センサユニット12は、ホルダ52に収納された状態で固定機10にセットされる。ホルダ52は、センサユニット12を複数個(例えば、8個)収納できるようになっている。ホルダ52には、センサユニット12の突部14bと嵌合して、センサユニット12を位置決めする嵌合部が設けられている。また、ホルダ52の底部は、センサユニット12の両端部を支持する支持部を除いて、開口になっている。後述するように、測定工程において、センサユニット12をホルダ52から取り出す場合には、この開口から押し上げ部材が挿入されてセンサユニット12が押し上げられる。
【0051】
載置スペース51には、ホルダ52を、例えば、10個並べて配置することができるようになっており、その数に応じた台座53が設けられている。各台座53上には、ホルダ52を位置決めする位置決め用のボスが設けられている。
【0052】
固定機10には、ヘッド本体にピペット対19を3組連装したピペットヘッド54が設けられている。このピペットヘッド54が、載置スペース51に配列されたセンサユニット12にアクセスして、液体の注入や排出を行う。ピペットヘッド54には、ピペット対19が3組設けられているので、1つのセンサユニット12に含まれる3つのセンサセル17に対して同時に液体を注入(及び排出)することができる。固定機10には、図示しないコントローラが設けられており、各ピペット対19の吸い込みや吐き出しの動作は、そのタイミング、吸い込み量及び吐き出し量等が、コントローラによって各ピペットヘッド18毎に制御される。
【0053】
筐体ベース50には、このピペットヘッド54をX、Y、Zの3方向に移動させるヘッド移動機構56が設けられている。ヘッド移動機構56は、例えば、搬送ベルト、プーリ、キャリッジ、モータなどから構成される周知の移動機構であり、ピペットヘッド54を上下させる昇降機構と、この昇降機構ごとピペットヘッド54をY方向へ移動自在に保持するガイドレール58を含むY方向移動機構と、前記ガイドレール58を両端で保持し、ガイドレール58毎、ピペットヘッド54をX方向へ移動させるX方向移動機構とからなる。ヘッド移動機構56は、コントローラによって制御されており、コントローラは、このヘッド移動機構56を駆動して、ピペットヘッド54の上下左右の位置を制御する。
【0054】
筐体ベース50上には、流路16へ注入する種々の液体(リガンド溶液、洗浄液、固定用バッファ,乾燥防止液,活性化液,ブロッキング液など)を保管する複数の液保管部61が設けられている。液保管部の数は、使用する液体の種類に応じて決定される。各液保管部61には、挿入口が6個並べて設けられている。この挿入口の数及び配列ピッチは、ピペットヘッド54のピペットの数と配列ピッチに応じて決められる。ピペットヘッド54は、センサセル17へ液体を注入する場合には、各液体保管部61へアクセスして、所望の液体を吸い込み、その後、載置スペース51へ移動して、センサユニット12へ注入する。
【0055】
また、筐体ベース50上には、ピペットチップ62を保管するピペットチップ保管部63が設けられている。ピペットチップ62は、ピペット19a,19bの先端部に交換可能に取り付けられる。ピペットチップ62は、液体と直接接触するので、このピペットチップ62を介して異種の液体の混液が生じないように、使用する液体毎に交換される。各ピペット19a,19bには、ピペットチップ62のピックアップとリリースを行う機構が設けられており、このピペットチップ62の交換は、ピペットヘッド54がピペットチップ保管部63にアクセスして自動的に行われる。
【0056】
また、符合64は、複数のウエル状の升がマトリックスに配列されたウエルプレートであり、ピペットで吸い上げた液体を一時的に保管したり、複数種類の液体を混合して混合液を調整する際に用いられる。
【0057】
固定を開始する際には、固定機10の筐体はカバー(図示せず)によって覆われて、載置スペース51を含む固定機10の内部は、外部から遮蔽される。固定機10内の温度は、温度調節器(図示せず)によって調節が可能になっている。リガンドの固定化の進行度合いは、センサユニット12の環境条件(温度)によって左右される。そのため、温度調節器によって固定機10の内部温度が所定の温度に保たれる。設定される温度や静置時間などは、リガンドの種類などに応じて適宜決められる。
【0058】
リガンドの固定化は、載置スペース51内のセンサユニット12に対して順次行われる。図4(A)に示すように、まず、液保管部61から所定量のリガンド溶液21を吸引したピペット対19は、1番目(セルNO.1)のセンサセル17にアクセスして、各ピペット19a、19bのそれぞれの先端が、各開口16a,16aの位置にそれぞれ配置される。そして、ピペット19aがリガンド溶液21を流路16へ注入して、センサ面13aにリガンド溶液21が送液される。
【0059】
なお、上述したとおり、ピペットヘッド54には、1つのセンサユニット12が持つセンサセル17の数に対応して、3組のピペット対19が設けられているので、リガンド溶液21の注入は、1ユニット内の3つのセンサセル17に対して同時に行われるが、ここでは、便宜上省略して、1組のピペット対19の動作について説明する。
【0060】
センサセル17へリガンド溶液が注入された後、図4(B)に示すように、各ピペット19a,19bが吐出と吸引動作を交互に繰り返して、流路16内のリガンド溶液21を流動させて攪拌される。こうした攪拌を行うことで、溶液中のリガンドの多くを、センサ面13aと接触させることができるので、リンカー膜22との結合効率(固定反応効率)が増加する。
【0061】
この吐出と吸引動作が所定回数又は所定時間繰り返された後、図4(C)に示すように、ピペット19bによって、流路16内のリガンド溶液21が吸い出されて、流路16から排出される。
【0062】
そして、図4(D)に示すように、ピペット19bが吸い出したリガンド溶液21を保持したまま、ピペット対19が2番目(セルNO.2)のセンサセル17へ移動して、ピペット19bから、リガンド溶液21がセンサセル17へ注入される。そして、注入後、図4(E)に示すように、各ピペット19a,19bで吐出と吸引が繰り返されて、流路16内のリガンド溶液21が攪拌される。この吐出及び吸引が所定時間又は回数繰り返された後、図4(F)リガンド溶液21がピペット19aによって吸い出されて流路16から排出される。この後、ピペット対19は、ピペット19aで2番目のセンサセル17から吸い出したリガンド溶液を保持したまま、3番目のセンサセル17へ移動して、上記と同様の手順で、リガンド溶液21の送液を行う。こうした処理が、載置スペース51上のすべてのセンサユニット12の各センサセル17に対して順次行われる。すべてのセンサセル17へ1回ずつ送液が終了した場合には、再び、1番目のセンサセル17から送液を繰り返してもよい。
【0063】
このように、リガンド溶液21を複数のセンサセル17間で使い回すため、リガンド溶液21の使用量が少なくて済む。そして、リガンド溶液21をセンサセル17に注入した後、排出されるまでの間、各ピペットで吸引と吐出を繰り返すため、流路16内の攪拌が生じて、注入後放置した場合と比較して、リガンドの固定量を増加させることができる。固定量が増加すると、測定時にレベルの高い信号が得られるので、測定精度が向上する。
【0064】
なお、ここでは、ピペット対19で注入と排出を行う場合、各ピペット19a,19bの一方から注入し、他方から排出する例で説明したが、各ピペット19a,19bの一方のみで、注入と排出を行ってもよい。
【0065】
また、センサセル17からのリガンド溶液21の排出に際しては、流路16内のリガンド溶液21のうち、吸い出し可能なリガンド溶液21をすべて排出してもよいし、吸い出し可能なリガンド溶液21のうち、一部を流路16内に残して、残りを排出するようにしてもよい。
【0066】
リガンド溶液21を1つのセンサセル17に送液すると、そのセンサ面13aに固定される分、排出されるリガンド溶液21の量は、当然ながら減る。送液を複数のセンサセル17に対して行っていくと、その減少量は無視できない量になる。流路16に一部のリガンド溶液21を残す場合には、その量はさらに増える。そうした場合には、適宜、ピペット対19内のリガンド溶液21が液保管部61から補充される。
【0067】
以下、本発明の作用効果について、図5に示すフローチャート及び図6に示す実験結果を参照しながら説明する。図5に示すように、まず、ピペット対19によって、1番目のセンサセル17に対してリガンド溶液21が注入される。この注入後、ピペット対19の吐出と吸入により、流路16内のリガンド溶液の攪拌が行われる。この後、ピペット対19によって、流路16からリガンド溶液21が吸い出されて排出される。ピペット対19は、この吸い出したリガンド溶液21を、2番目のセンサセル17へ注入する。こうしてリガンド溶液21を使い回しながら、すべてのセンサセル17への送液が行われる。
【0068】
図6に示す表は、本発明の方法(リガンド溶液を使い回す方法)と、従来例(比較例1〜比較例3)との比較表である。まず、各例の共通な実験条件として、反応時間、すなわち、注入後排出されるまでのセンサ面13aにリガンド溶液21が接触している時間は、15分間とした。リンカー膜22としては、デキストランを使用し、リガンドには、mouseIgGを使用した。固定を行うセンサセル17の数は、24個とした。さらに、リガンド注入の前に、センサ面13aに対して活性化処理を施した。活性化液としては、上記EDC及びNHSの混合液を使用し、これを流路16に注入して、15分間放置した。活性化処理の後、混合液を排出し、流路16を水で3回洗浄後、リガンドの注入を行った。リガンドの注入後、センサ面13aに対して、上記ブロッキング処理を施し、この後、水で洗浄し、固定量の測定を行った。固定量の測定は、測定機11を用いて、固定前後の信号変化を検出することにより行った。なお、流路16の体積は20μlである。リガンド溶液濃度は、比較例2のみ、250μg/mlであり、その他は、50μg/mlとした。
【0069】
本発明の方法による実験では、ピペット対19で100μlのリガンド溶液21を吸引し、1番目のセンサセル17の流路16へ注入した。そして、50μl/秒の速度で2秒間吐出、同じ速度で2秒間吸引することにより、リガンド溶液21を流動させた。この吐出及び吸引を3回繰り返した。この後、ピペット対19でリガンド溶液21を吸い出して、このリガンド溶液21を同様の手順で2番目のセンサセル17へ注入した。この送液を24番目のセンサセル17まで繰り返し、24番目のセンサセル17に対する送液が終了した後、そこから吸い出したリガンド溶液21を使用して、1番目のセンサセル17注入し、再び、24番目のセンサセル17まで送液を繰り返した。こうした送液を、各センサセル17について、10回行った。こうして、1つのセンサセル17について、リガンド溶液21とセンサ面13aの接触時間の合計が15分間となるようにした。リガンド溶液の使用量は、2.5mlで、24個の流路16の体積の合計の約5倍量であった。
【0070】
比較例1は、24個のセンサセル17に対して、リガンド溶液21を注入し、15分間静置した例である。比較例2は、比較例1と同様に、リガンド溶液21の注入後、15分間静置する例であるが、リガンド溶液21として、リガンド溶液濃度が比較例2の5倍の濃度(250μg/ml)のものを使用した。これら比較例1及び2のリガンド溶液の使用量は、2.5mlで、24個の流路16の体積の合計の約5倍量であった。
【0071】
比較例3は、24個のセンサセル17の流路16を配管で連結することにより、リガンド溶液21を循環させる循環路を形成し、15分間の連続送液を行った例である。送液速度は、10μl/秒である。各流路16をつなぐ配管部分の体積はそれぞれ20μlである。このため、リガンド溶液の使用量は、約9.6mlであった。
【0072】
表からわかるように、本発明と比較例1とを比較すると、同じリガンド使用量でも、結合効率(24個のセンサセルの平均固定量をリガンド使用量で割った値)が、本発明の方が高い。このことから、本発明の方が、同じ試料であれば、より多くの固定量が得られるので、少ない試料で必要な固定量が得られることがわかる。また、比較例2と本発明とでは、ほぼ同量の固定量が得られるものの、比較例2のリガンド使用量は、本発明と比較して、約5倍に達するので、結合効率で比較すると、大きく下回る。
【0073】
比較例3では、本発明と比較して、配管部分の体積が増える分、必要なリガンド溶液使用量が増えるので、リガンド使用量も増加する。このため、本発明と比較して結合効率も低くなる。
【0074】
上記実施形態では、本発明の送液方法を、センサ面へリガンドを固定する場合を例に説明しているが、固定時だけでなく、測定時に、センサ面へ試料としてアナライトを送液する場合に適用してもよいし、さらに、測定や固定の他にも、センサ面の表面処理を行う場合に適用することもできる。
【0075】
また、リガンド溶液を流路へ注入した後、排出するまでの間、流路内のリガンド溶液を、ピペット対を用いて攪拌させているが、攪拌手段としてはピペット対でなくてもよく、例えば、ポンプを使って液を攪拌させてもよいし、超音波発生装置を使って液を攪拌させてもよい。さらに、スターラー(かきまぜ棒)を流路内に差し込み、そのスターラーを回転させることにより、攪拌させてもよい。もちろん、注入及び排出を行うピペット対を攪拌手段として利用すれば、装置構成の点で最も有利である。
【0076】
また、センサとして、センサ面を構成する金属膜、流路、プリズムを一体化したセンサユニットを例に説明したが、ガラス基板上に金属膜を形成し、流路やプリズムを持たないチップ型のセンサを使用してもよい。
【0077】
また、本実施形態では、センサ面上にSPRを発生させて、そのときの反射光の減衰を検出するSPRセンサを例に説明したが、SPRセンサに限らず、全反射減衰を利用した測定に用いられる他のセンサに送液を行う場合にも適用することができる。全反射減衰を利用するセンサとしては、SPRセンサの他に、例えば、漏洩モードセンサが知られている。漏洩モードセンサは、誘電体と、この上に順に層設されたクラッド層と光導波層とによって構成された薄膜とからなり、この薄膜の一方の面がセンサ面となり、他方の面が光入射面となる。光入射面に全反射条件を満たすように光を入射させると、その一部が前記クラッド層を通過して前記光導波層に取り込まれる。そして、この光導波層において弾性表面波(surface acoustic wave,SAW)が生じると、前記光入射面における反射光が大きく減衰する。弾性表面波が生じる入射角は、SPRの共鳴角と同様に、センサ面上の媒質の屈折率に応じて変化する。この反射光の減衰を検出することにより、前記センサ面上の反応が測定される。
【0078】
また、全反射減衰を利用した測定を行うためのセンサへの送液に限らず、本発明は、センサ面における化学反応状況を調べる種々のセンサに適用することができる。
【図面の簡単な説明】
【0079】
【図1】SPR測定方法の説明図である。
【図2】センサユニットの構成図である。
【図3】固定機の構成図である。
【図4】リガンド溶液の送液方法を示す説明図である。
【図5】送液手順を示すフローチャートである。
【図6】本発明と従来例の実験結果を示す説明図である。
【符号の説明】
【0080】
10 固定機
11 測定機
12 センサユニット
13 金属膜
13a センサ面
16 流路
17 センサセル
19 ピペット対
19a,19b ピペット


【特許請求の範囲】
【請求項1】
試料の化学反応を検出するセンサ面と、このセンサ面に対向して配置され試料を含む試料溶液が注入される流路とによってそれぞれが構成された複数のセンサセルに対して、前記試料溶液を注入してそれぞれのセンサ面へ前記試料溶液を送液する送液方法において、
1つのセンサセルへ前記試料溶液を注入して前記センサ面へ送液した後、当該センサセルから前記試料溶液を排出し、この排出した試料溶液を別のセンサセルへ注入し排出するという処理を繰り返して、前記試料溶液を複数のセンサセル間で使い回すことを特徴とする送液方法。
【請求項2】
複数のセンサセルのすべてに対して、前記試料溶液の注入及び排出が終了した場合には、再び最初に試料溶液を注入したセンサセルから前記試料溶液の注入及び排出を繰り返すことを特徴とする請求項1記載の送液方法。
【請求項3】
前記試料溶液の注入及び排出は、前記流路の両端の開口に、先端がそれぞれ配置される1対のピペットによって行われることを特徴とする請求項1又は2いずれか記載の送液方法。
【請求項4】
1つのセンサセルへの送液に際して、前記センサセルへ前記試料溶液を注入後、そこから試料溶液を排出するまでの間、一方のピペットによる前記試料溶液の吐出と、他方のピペットによる前記試料溶液の吸引とを交互に繰り返して、センサセル内の試料溶液を流動させることを特徴とする請求項3記載の送液方法。
【請求項5】
前記センサは、一方の面が前記センサ面となる金属膜を持ち、前記センサ面における反応状況を表面プラズモン共鳴現象を利用して測定する際に用いられるSPRセンサであることを特徴とする請求項1〜4いずれか記載の送液方法。
【請求項6】
前記試料溶液の使い回しは、前記センサ面に試料を固定する際に行われることを特徴とする請求項1〜5いずれか記載の送液方法。


【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【公開番号】特開2006−105608(P2006−105608A)
【公開日】平成18年4月20日(2006.4.20)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2004−288535(P2004−288535)
【出願日】平成16年9月30日(2004.9.30)
【出願人】(000005201)富士写真フイルム株式会社 (7,609)
【Fターム(参考)】