説明

送風機

【課題】 本発明は流体動圧軸受にするための加工が容易で、軸受で発生する損失も小さくでき、省エネ効果が得られる、安価な送風機を得るにある。
【解決手段】 ケース体に固定されたシャフト、このシャフトに流体動圧軸受を介して回転可能に取付けられたスリーブを備えるモータと、このモータのスリーブに2段以上に固定された2個以上の羽根車とを備える送風機において、前記スリーブを前記2個以上の羽根車をそれぞれ固定することができるように2個以上に分離した2個以上の分離スリーブと、この2個以上の分離スリーブをそれぞれ一体になって回転するように結合する結合手段とで送風機を構成している。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は羽根車を2段以上に配置したり、シャフトを長く設定しなければならない送風機に関する。
【背景技術】
【0002】
従来、この種の送風機はシャフトとほぼ同じ長さのスリーブを用いている。
【0003】
このため、スリーブが長く、加工に手数がかかるとともに、流体動圧軸受にしようとすると、スリーブの内径の加工が非常に困難で、性能面でも軸受で発生する損失が大きくなるという欠点があった。
【特許文献1】特になし
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
本発明は以上のような従来の欠点に鑑み、流体動圧軸受にするための加工が容易で、軸受で発生する損失も小さくでき、省エネ効果が得られる、安価な送風機を提供することを目的としている。
【0005】
本発明の前記ならびにそのほかの目的と新規な特徴は次の説明を添付図面と照らし合わせて読むと、より完全に明らかになるであろう。
ただし、図面はもっぱら解説のためのものであって、本発明の技術的範囲を限定するものではない。
【課題を解決するための手段】
【0006】
上記目的を達成するために、本発明はケース体に固定されたシャフト、このシャフトに流体動圧軸受を介して回転可能に取付けられたスリーブを備えるモータと、このモータのスリーブに2段以上に固定された2個以上の羽根車とを備える送風機において、前記スリーブを前記2個以上の羽根車をそれぞれ固定することができるように2個以上に分離した2個以上の分離スリーブと、この2個以上の分離スリーブをそれぞれ一体になって回転するように結合する結合手段とで送風機を構成している。
【0007】
本発明はケース体の上下部に弾性体を介して支持された上下部スリーブと、この上下部スリーブに流体動圧軸受を介して回転可能に取付けられたシャフトと、前記上下部スリーブ間の前記シャフトに取付けられた羽根車と、前記シャフトを回転駆動させるように前記ケース体に取付けられたモータ本体とで送風機を構成している。
【発明の効果】
【0008】
以上の説明から明らかなように、本発明にあっては次に列挙する効果が得られる。
【0009】
(1)ケース体に固定されたシャフト、このシャフトに流体動圧軸受を介して回転可能に取付けられたスリーブを備えるモータと、このモータのスリーブに2段以上に固定された2個以上の羽根車とを備える送風機において、前記スリーブを前記2個以上の羽根車をそれぞれ固定することができるように2個以上に分離した2個以上の分離スリーブと、この2個以上の分離スリーブをそれぞれ一体になって回転するように結合する結合手段とで構成したので、分離スリーブの長さ寸法を短くできる。
したがって、内壁面の加工が容易にできるとともに、動圧発生溝も容易に形成することができる。
【0010】
(2)前記(1)によって、2個以上の分離スリーブと結合手段とでスリーブを構成しているので、従来のスリーブと同様な機能を有する。
【0011】
(3)前記(1)によって、分離スリーブを用いているので、軸受長さが短くできる。
したがって、軸受けで発生する損失が小さくでき、省エネ効果が得られる。
【0012】
(4)請求項2も前記(1)〜(3)と同様な効果が得られる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0013】
以下、図面に示す本発明を実施するための最良の形態により、本発明を詳細に説明する。
【0014】
図1ないし図8に示す本発明を実施するための最良の第1の形態において、1は本発明の送風機で、この送風機1はケース体2と、このケース体2に固定されたシャフト3、このシャフト3に流体動圧軸受を介して回転可能に取付けられたスリーブ4を備えるモータ5と、このモータ5のスリーブ4に2段以上、本発明を実施する形態では2段に固定された2個の上下部羽根車6、7とで構成されている。
【0015】
前記ケース体2はベース板8と、このベース板8に複数本のビス9で密封状態で固定された、前記モータ5の外周部を覆うモータカバー筒10、前記下部羽根車7の下部を覆う下部羽根車収納室11の下部羽根車収納壁12および排出口13の一部が形成された周壁14が形成された下部ケース15と、この下部ケース15の上部に複数本のビス16で固定される中央部に空気導入口17、下部バルブ部18の下部バルブ凹部19が形成された前記下部羽根車収納室11の上部羽根車収納壁20、前記排出口13の一部が形成された周壁21および前記上部羽根車6の下部を覆う上部羽根車収納室22の下部羽根車収納壁23が形成された中央ケース24と、この中央ケース24の上部に前記複数本のビス16で固定される中央部に空気導入口25、上部バルブ部26の上部バルブ凹部27が形成された前記上部羽根車6の上部を覆い、前記上部羽根車収納室22の上部羽根車収納壁28を有する上部ケース31とで構成されている。
なお、前記中央ケース24には前記上部羽根車収納室22の外周部に前記下部羽根車収納室11とを連通する複数個の透孔29が形成された仕切壁30が設けられている。
【0016】
前記モータ5は図4に示すように、前記ケース体2のベース板8の上面に複数本のビス32で固定されたモータ駆動回路(図示せず)が設けられた基板33と、この基板33を取付ける複数本のビス32で前記ベース板8に固定されるベースプレート34と、このベースプレート34に下端部が固定され、上部が前記基板33上へ突出するシャフト3と、このシャフト3の外周部に流体動圧軸受を介して配置された2個の分離スリーブ35、35、この2個の分離スリーブ35、35を一体となって回転するように結合するコイルスプリングを用いた結合手段36とからなるスリーブ4と、このスリーブ4の下部分離スリーブ35の外周部に位置するように前記基板33に取付けられたコイル37と、前記下部分離スリーブ35の上部に固定されたハブ38と、このハブ38に取付けられた前記下部分離スリーブ35と前記コイル37との間に位置するバックヨーク39と、前記ハブ38の外周部に取付けられた内壁面にロータマグネット40が取付けられたヨーク41とで構成されている。
【0017】
前記下部羽根車7は前記ハブ38に嵌合固定されるボス部42と、このボス部42と一体形成された順次外側下方へ傾斜する羽根支持板43と、この羽根支持板43の上面に一体形成された、高さ寸法が順次外側が小さくなるように弧状に形成された多数個の羽根板44と、この多数個の羽根板44の上部を覆うように一体形成された中央端部に上バルブ片45を有する上部カバー板46と、前記羽根支持板43に下方へ突出するように一体形成された前記モータカバー筒10内へ挿入されるモータ挿入筒47とで構成されている。
【0018】
前記上部羽根車6は前記下部羽根車7と同じものが使用できるように、前記上部分離スリーブ35に嵌合固定された上部ハブ48に嵌合固定されている。
前記上部ハブ48に形成された凹部49の周壁にはアウタマグネット50が固定され、このアウタマグネット50内に位置するように前記シャフト3の上端部にはインナマグネット51が固定されている。
【0019】
上記構成の送風機1はモータ5を駆動させると下部分離スリーブ35および結合手段36を介して結合された上部分離スリーブ35とからなるスリーブ4が高速回転するため、下部羽根車7および上部羽根車6も高速回転し、ケース体2の上部ケース31の空気導入口25より空気を上部羽根車6の多数個の羽根板44間に吸引し、圧力を高めて中央ケース24の空気導入口17より下部羽根車7の多数個の羽根板44内に吸引し、さらに圧力を高めて下部ケース15と中央ケース24の周壁に形成された排出口13より、大風量で高圧の送風で排出する。
このように構成された送風機1のスリーブ4は、下部分離スリーブ35に結合部材36を介して上部分離スリーブ35が結合されているため、軸方向の寸法が短い下部分離スリーブ35と上部分離スリーブ35にでき、これらの上下分離スリーブ35、35の流体動圧軸受溝を含む内径の加工が容易にできるとともに、軸受で発生する損失も小さくできる。
[発明を実施するための異なる形態]
【0020】
次に、図9ないし図26に示す本発明を実施するための異なる形態につき説明する。なお、これらの本発明を実施するための異なる形態の説明に当って、前記本発明を実施するための最良の第1の形態と同一構成部分には同一符号を付して重複する説明を省略する。
【0021】
図9ないし図11に示す本発明を実施するための第2の形態において、前記本発明を実施するための最良の第1の形態と主に異なる点はスリーブ4Aで、このスリーブ4Aは下部分離スリーブ35と上部分離スリーブ部35とを結合する弾性を有するゴム合成樹脂材等の弾性結合手段36Aとして使用した点で、このように構成されたスリーブ4Aを用いて構成した送風機1Aにしても、前記本発明を実施するための最良の第1の形態と同様な作用効果が得られる。
【0022】
図12ないし図14に示す本発明を実施するための第3の形態において、前記本発明を実施するための最良の第1の形態と主に異なる点はスリーブ4Bで、このスリーブ4Bは下部分離スリーブ35の上端部と上部分離スリーブ35の下端部とに係合して一体に回転させることができる係合凹部52と係合片53とを用いた結合手段36Bを用いた点で、このように構成したスリーブ4Bを用いて構成した送風機1Bにしても、前記本発明を実施するための最良の第1の形態と同様な作用効果が得られる。
【0023】
図15ないし図17に示す本発明を実施するための第4の形態において、前記本発明を実施するための最良の第1の形態と主に異なる点は、ベース板8の下部に中央部に軸受凹部54が形成された下部カバー55、上部中央部に軸受凹部56が形成されるとともに、空気導入口25近傍の壁面に多数個の透孔57が形成された上部ケース31Aを用いたケース体2Aと、前記下部カバー55の軸受凹部54に複数個の板スプリング58、58を用いた弾性体59を介して取付けられた内壁面に流体動圧軸受溝が形成された下部分離スリーブ35Aと、前記上部ケース31Aの軸受凹部56に板スプリング58、58を用いた弾性体59を介して取付けられた内壁面に流体動圧軸受が形成された上部分離スリーブ35Aと、この上部分離スリーブ35Aと前記下部分離スリーブ35Aに回転可能に取付けられ、中央部に羽根車7のボス部42が嵌合固定されるハブ38が嵌合固定されたシャフト3Aとを用いた点で、このように構成した送風機1Cにしても、前記本発明を実施するための最良の第1の形態と同様な作用効果が得られる。
なお、前記シャフト3Aの上下端部にはインナマグネット51、51が固定されるとともに、該インナマグネット51、51と対応する前記下部カバー55の軸受凹部54と前記上部ケース31Aの軸受凹部56内にはアウタマグネット50、50が固定されている。
【0024】
図18ないし図20に示す本発明を実施する第5の形態において、前記本発明を実施するための第4の形態と主に異なる点は、下部分離スリーブ35Aと上部分離スリーブ35Aとをそれぞれ2個のOリング60、60、60、60を用いた弾性体59A、59Aを介して軸受凹部54、56内に取付けた点で、このように構成した送風機1Dにしても、前記本発明を実施するための第4の形態と同様な作用効果が得られる。
【0025】
図21ないし図23に示す本発明を実施するための第6の形態において、前記本発明を実施するための第4の形態と主に異なる点は、下部分離スリーブ35Aと上部分離スリーブ35Aとをそれぞれ円筒状のゴムリング61、61を用いた弾性体59B、59Bを介して軸受凹部54、56内に取付けた点で、このように構成した送風機1Eにしても、前記本発明を実施するための第4の形態と同様な作用効果が得られる。
【0026】
図24ないし図26に示す本発明を実施するための第7の形態において、前記本発明を実施するための第4の形態と主に異なる点は、下部分離スリーブ35Aと上部分離スリーブ35Aとをぞれぞれコイルスプリング62、62を用いた弾性体59C、59Cを介して軸受凹部54、56内に取付けた点で、このように構成した送風機1Fにしても、前記本発明を実施するための第4の形態と同様な作用効果が得られる。
【産業上の利用可能性】
【0027】
本発明は送風機を製造する産業で利用される。
【図面の簡単な説明】
【0028】
【図1】本発明を実施するための最良の第1の形態の正面図。
【図2】本発明を実施するための最良の第1の形態の平面図。
【図3】図2の3−3線に沿う断面図。
【図4】本発明を実施するための最良の第1の形態のモータの断面図。
【図5】本発明を実施するための最良の第1の形態の羽根車の平面図。
【図6】本発明を実施するための最良の第1の形態の羽根車の正面図。
【図7】図5の7−7線に沿う断面図。
【図8】本発明を実施するための最良の第1の形態のスリーブの一部破断説明図。
【図9】本発明を実施するための第2の形態の平面図。
【図10】図9の10−10線に沿う断面図。
【図11】本発明を実施するための第2の形態のスリーブの一部破断説明図。
【図12】本発明を実施するための第3の形態の平面図。
【図13】図12の13−13線に沿う断面図。
【図14】本発明を実施するための第3の形態のスリーブの一部破断説明図。
【図15】本発明を実施するための第4の形態の平面図。
【図16】図15の16−16線に沿う断面図。
【図17】図16の17−17線に沿う断面図。
【図18】本発明を実施するための第5の形態の平面図。
【図19】図18の19−19線に沿う断面図。
【図20】図19の20−20線に沿う断面図。
【図21】本発明を実施するための第6の形態の平面図。
【図22】図21の22−22線に沿う断面図。
【図23】図22の23−23線に沿う断面図。
【図24】本発明を実施するための第7の形態の平面図。
【図25】図24の25−25線に沿う断面図。
【図26】図25の26−26線に沿う断面図。
【符号の説明】
【0029】
1、1A、1B、1C、1D、1E、1F:送風機、
2、2A:ケース体、 3、3A:シャフト、
4、4A、4B:スリーブ、 5:モータ、
6:上部羽根車、 7:下部羽根車、
8:ベース板、 9:ビス、
10:モータカバー筒、 11:下部羽根車収納室、
12:下部羽根車収納壁、 13:排出口、
14:周壁、 15:下部ケース、
16:ビス、 17:空気導入口、
18:下部バルブ部、 19:下部バルブ凹部、
20:上部羽根車収納壁、 21:周壁、
22:上部羽根車収納室、 23:下部羽根車収納壁、
24:中央ケース、 25:空気導入口、
26:上部バルブ部、 27:上部バルブ凹部、
28:上部羽根車収納壁、 29:透孔、
30:仕切壁、 31、31A:上部ケース、
32:ビス、 33:基板、
34:ベースプレート、 35:分離スリーブ、
36、36A、36B:結合手段、
37:コイル、 38:ハブ、
39:バックヨーク、 40:ロータマグネット、
41:ヨーク、 42:ボス部、
43:羽根支持板、 44:羽根板、
45:上バルブ片、 46:上部カバー板、
47:モータ挿入筒、 48:上部ハブ、
49:凹部、 50:アウタマグネット、
51:インナマグネット、 52:係合凹部、
53:係合片、 54:軸受凹部、
55:下部カバー、 56:軸受凹部、
57:透孔、 58:板スプリング、
59、59A、59B、59C:弾性体、
60:Oリング、 61:ゴムリング、
62:コイルスプリング。



【特許請求の範囲】
【請求項1】
ケース体に固定されたシャフト、このシャフトに流体動圧軸受を介して回転可能に取付けられたスリーブを備えるモータと、このモータのスリーブに2段以上に固定された2個以上の羽根車とを備える送風機において、前記スリーブを前記2個以上の羽根車をそれぞれ固定することができるように2個以上に分離した2個以上の分離スリーブと、この2個以上の分離スリーブをそれぞれ一体になって回転するように結合する結合手段とで構成したことを特徴とする送風機。
【請求項2】
ケース体の上下部に弾性体を介して支持された上下部スリーブと、この上下部スリーブに流体動圧軸受を介して回転可能に取付けられたシャフトと、前記上下部スリーブ間の前記シャフトに取付けられた羽根車と、前記シャフトを回転駆動させるように前記ケース体に取付けられたモータ本体とからなることを特徴とする送風機。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【図8】
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【図9】
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【図10】
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【図11】
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【図12】
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【図13】
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【図14】
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【図15】
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【図16】
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【図17】
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【図18】
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【図19】
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【図20】
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【図21】
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【図22】
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【図23】
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【図24】
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【図25】
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【図26】
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【公開番号】特開2007−154777(P2007−154777A)
【公開日】平成19年6月21日(2007.6.21)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2005−351517(P2005−351517)
【出願日】平成17年12月6日(2005.12.6)
【出願人】(000105659)日本電産コパル電子株式会社 (85)
【Fターム(参考)】