説明

逆止チェック機能付止水栓

【課題】 止水栓自体を給水管路から取り外すことなく、しかも、工具を使用せずに逆流防止機能を簡単且つ容易に点検することができる。
【解決手段】 流入口1aに連通する止水栓室1b、流出口1cに連通する逆止弁室1d、止水栓室1b及び逆止弁室1dを連通状態にする通水口1eをそれぞれ形成した本体胴1と、止水栓室1bに回転操作自在に収容され、流入口1a及び通水口1eを連通状態又は非連通状態にする通水孔2aを形成したボール2と、逆止弁室1dに設けられ、通水口1eから逆止弁室1dへの水道水の流れを許容すると共に、逆止弁室1dから通水口1eへの水道水の流れを阻止する逆止弁4と、本体胴1に設けられ、ボール2の回転操作により一次側を止水し、この状態で逆止弁4が正常に機能にしていないときに逆止弁室1dから通水口1eに逆流した水を外部へ排出し得る逆止弁チェック装置6とを備えている。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、水道本管からの水道水を戸建住宅や集合住宅等の各家庭に導くための直結給水方式(水道管の水圧を利用する給水方式)の給水管路に設置される逆流防止機能を備えた止水栓の改良に係り、特に、止水栓自体を給水管路から取り外すことなく、しかも、工具を使用せずに逆流防止機能を簡単且つ容易に点検することができる逆止チェック機能付止水栓に関するものである。
【背景技術】
【0002】
一般に、戸別住宅等に水道水を導く給水管路は、図6に示す如く、水道本管40からサドル付分水栓41を介して分岐させた給水管42、給水管42の途中に設置した一次止水栓43、逆止弁付止水栓44及び水道メータ45等から構成されており、水道本管40内の水道水を給水管42、一次止水栓43、逆止弁付止水栓44及び水道メータ45等を通して建物内の給水栓46(蛇口)に導くようになっている。
【0003】
通常、前記給水管路に於いては、水道本管40や給水管42、一次止水栓43、逆止弁付止水栓44等には水圧がかかっているため、水道水が給水栓46側から逆流することはない。
【0004】
しかし、直結給水方式の給水管路に於いては、水道本管40と給水栓46とが直接繋がっており、水道本管40の損傷事故、布設替え工事、更新工事等により断水した場合、水道本管40から分岐して設けた給水管42内の水道水が高所側から低所側へ流れ落ちようとするため、給水管42内は大気圧よりも圧力が低い状態(負圧状態)となる。
【0005】
給水管42内が負圧になると、水道水が逆流して給水栓46(蛇口)から汚染水を吸い上げる恐れがある。例えば、図6に示すように、給水栓46(蛇口)に取り付けたホース47を浴槽48に浸けたままの状態で注水をしていると、負圧による逆流で不衛生な水道水が水道本管40内に取り込まれてしまうことがある。
【0006】
そこで、この問題を解決するため、給水管42に別個に逆止弁を設置したり、或は、逆止弁付止水栓44を設置したりして、負圧による水道水の逆流を防止することが行われている。
特に、後者の逆止弁付止水栓44は、開閉弁と逆止弁とが一体になっているので、給水管への取り付けを簡単に行えるうえ、接続個所も開閉弁と逆止弁とを給水管42に別々に取り付けた場合に比べて少なくなり、漏水発生の可能性が低下すると云う利点がある。そのため、逆止弁付止水栓44は、近年、給水管路に於いて広く利用されている。
【0007】
従来、この種の逆止弁付止水栓44としては、例えば、特開2001−020329号公報(特許文献1)に開示された逆止弁付止水栓44が知られている。
【0008】
即ち、前記逆止弁付止水栓44は、図7に示す如く、流入口49a、止水栓室49b、通水口49c、逆止弁室49d及び流出口49eを形成した本体胴49と、止水栓室49bに回転操作自在に収容され、流入口49a及び通水口49cを連通状態又は非連通状態にする通水孔50aを形成したボール50と、逆止弁室49dに設けられ、通水口49cから逆止弁室49dへの水道水の流れを許容し、逆止弁室49dから通水口49cへの水道水の流れを阻止する逆止弁51等から構成されており、止水機能及び逆流防止機能の他、流量調整機能及び空気抜き機能を有するものである。
【0009】
また、止水栓44に設けた逆止弁51は、図7に示す如く、逆止弁室49d側の通水口49cの内周縁部に形成した弁座面49fと、逆止弁室49dに移動自在に収容された逆止弁体52と、逆止弁体52に取り付けられ、弁座面49fに当離座する弁体パッキン53と、逆止弁体52の背面側に配設され、逆止弁体52に背面押圧力を加えて弁体パッキン53を弁座面49fに当座させるスプリング54等から成り、水道水が流入口49aから流出口49eへ流れるときには、通水口49cに達した水道水の水圧により逆止弁体52がスプリング54の弾性力に抗して押し上げられて通水口49cを開放し、流入口49a側から流出口49e側への水道水の流れを許容し、また、水道水が逆流しようとするときには、逆止弁体52がスプリング54の弾性力により押し下げられて通水口49cを閉鎖し、流出口49eから流入口49aへの水道水の逆流を防止するようになっている。
【0010】
しかしながら、上述した逆止弁付止水栓44を用いても、逆止弁体52のゴミ等の異物の噛み込み、弁体パッキン53の摩耗・経年変化等により逆止弁51が正常に機能しなくなることがあり、給水管42に設置してしまうと、逆流防止機能が正常に機能しているかを確認することができない。
仮に、止水栓44の逆流防止機能に異常があったとしても、定期点検等で逆止弁体52を交換するまでは異常を発見することができず、水質汚染事故(給水管42内の負圧による逆流で不衛生な水道水が水道本管40内に取り込まれる事故)を発生させる恐れがある。
【0011】
このように、従来の逆止弁付止水栓44は、給水管42に設置した状態で逆流防止機能が正常に機能しているかどうかを確認することができず、また、逆止弁付止水栓44の逆流防止機能に異常があった場合、異常を発見できずに水道水が逆流し、水質汚染事故を発生させる危険があり、更に、逆流防止機能の維持管理のために定期的に逆止弁体52や弁体パッキン53の交換が必要とされ、逆流防止機能の確認ができないために正常な逆止弁体52でも交換しなければならないと云う問題があった。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0012】
【特許文献1】特開2001−020329号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0013】
本発明は、このような問題点に鑑みて為されたものであり、その目的は、止水栓自体を給水管路から取り外すことなく、しかも、工具を使用せずに逆流防止機能を簡単且つ容易に点検することができる逆止チェック機能付止水栓を提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0014】
上記目的を達成するために、本発明の請求項1の発明は、流入口に連通する止水栓室、流出口に連通する逆止弁室、止水栓室及び逆止弁室を連通状態にする通水口をそれぞれ形成した本体胴と、止水栓室に回転操作自在に収容され、流入口及び通水口を連通状態又は非連通状態にする通水孔を形成したボールと、逆止弁室に設けられ、通水口から逆止弁室への水道水の流れを許容すると共に、逆止弁室から通水口への水道水の流れを阻止する逆止弁と、本体胴に設けられ、逆止弁の逆流防止機能をチェックする逆止弁チェック装置とを備えており、前記逆止弁チェック装置は、ボールを回転操作して一次側を止水し、この状態で逆止弁が正常に機能にしていないときに、逆止弁室から通水口に逆流した水道水が外部へ排出される構成としたことに特徴がある。
【0015】
本発明の請求項2の発明は、逆止弁チェック装置が、本体胴に分岐状に連設され、点検室及び点検室に連通する水排出口を形成した点検用胴と、本体胴に形成され、通水口を点検室に連通させる分岐孔と、点検室に移動自在に収容され、分岐孔を開閉する点検用栓棒と、点検用栓棒を分岐孔から離間する方向へ附勢するスプリングと、点検用胴に設けられ、点検用栓棒を分岐孔を閉鎖する閉鎖位置と分岐孔を開放する開放位置とに亘って開閉操作し得ると共に、閉鎖位置にある点検用栓棒の保持状態を解除し得る開閉操作機構とから成り、ボールを回転操作して一次側を止水し、この状態で閉操作機構を操作して閉鎖位置にある点検用栓棒を開放位置にすると、逆止弁が正常に機能にしていないときには、逆止弁室内の水道水が逆流して通水口、分岐孔、点検室及び水排出口を通って外部へ排出されるように構成されていることに特徴がある。
【0016】
本発明の請求項3の発明は、点検用胴に水排出口を上向きに形成すると共に、水排出口に立上り管を接続したことに特徴がある。
【発明の効果】
【0017】
本発明の逆止チェック機能付止水栓は、本体胴の止水栓室に収容したボールを回転操作して一次側を止水し、この状態で本体胴の逆止弁室に設けた逆止弁が正常に機能していないときに、逆止弁室から逆流した水道水を外部へ排出して逆止弁の逆流防止機能をチェックし得る逆止弁チェック装置を備えているため、逆止チェック機能付止水栓を給水管路に設置した状態でも、逆止弁チェック装置を操作することにより逆止弁の逆流防止機能の点検を行える。
また、本発明の逆止チェック機能付止水栓は、逆止弁チェック装置により工具を使用せずに逆止弁の逆流防止機能の点検を行えるため、短時間で逆止弁の逆流防止機能の点検を行える。
更に、本発明の逆止チェック機能付止水栓は、逆止弁の逆流防止機能をチェックし得る逆止弁チェック装置を備えているため、逆止弁の逆流防止機能のチェックが誰にでも簡単にできる簡易な作業となり、こまめに定期点検を行える。
従って、本発明の逆止チェック機能付止水栓を用いれば、水質汚染事故を未然に防止するための有効な維持管理を行えるようになる。
【0018】
本発明の逆止チェック機能付止水栓は、逆止弁チェック装置の開閉操作機構を操作すると、閉鎖位置にある点検用栓棒がスプリングの弾性力により開放位置へ迅速に移動し、分岐孔を直ぐに開放するようになっているため、逆止弁がゴミ等の異物を噛み込んでいたりすると、逆止弁室から逆流した水道水が直ぐに分岐孔、検査室を通って水排出口から外部へ排出されることなり、逆止弁の逆流防止機能の異常を迅速に見つけることができる。
【0019】
本発明の逆止チェック機能付止水栓は、点検用胴に水排出口を上向きに形成すると共に、水排出口に立上り管を接続しているため、逆止弁の逆流防止機能が損なわれている場合にのみ立上り管から逆流した水道水が排出されることになり、逆止弁の逆流防止機能のチェックを確実に行える。しかも、水道水の排出を確実且つ良好に視認することができ、逆止弁の逆流防止機能の異常を迅速に見つけることができる。
【図面の簡単な説明】
【0020】
【図1】本発明の実施の形態に係る逆止チェック機能付止水栓の正面図である。
【図2】逆止チェック機能付止水栓の側面図である。
【図3】逆止チェック機能付止水栓の拡大縦断正面図である。
【図4】逆止チェック機能付止水栓の拡大縦断側面図である。
【図5】逆止チェック機能付止水栓の逆流防止機能のチェックを行っている状態の拡大縦断側面図である。
【図6】直結給水方式の給水管路の概略図である。
【図7】従来の逆止弁付止水栓の拡大縦断側面図である。
【発明を実施するための形態】
【0021】
以下、本発明の実施の形態を図面に基づいて詳細に説明する。
図1〜図5は本発明の実施の形態に係る逆止チェック機能付止水栓を示し、当該逆止チェック機能付止水栓は、水道本管からの水道水を戸建住宅や集合住宅等の各家庭に導くための直結給水方式の給水管路(給水管の途中や水道メータの一次側等)に設置されており、水道メータの取り替えや一次止水栓等の給水器具の修理等、水道水を止めなければならないときに使用するものであり、止水機能の他に、逆流防止機能、逆止チェック機能、流量調整機能及び空気抜き機能を有する。
【0022】
即ち、前記逆止チェック機能付止水栓は、図3および図4に示す如く、流入口1a、止水栓室1b、流出口1c、逆止弁室1d及び通水口1eを形成した本体胴1と、止水栓室1bに回転操作自在に収容され、通水孔2aを形成したボール2と、本体胴1に設けられ、ボール2に連結されてボール2を回転操作するボール開閉操作機構3と、逆止弁室1dに設けられ、水道水の逆流を阻止する逆止弁4と、本体胴1に設けられ、逆止弁4の開度(開口量)を調整する開度調整機構5と、本体胴1に設けられ、逆止弁4の逆流防止機能をチェックする逆止弁チェック装置6とから構成されている。
【0023】
具体的には、前記本体胴1は、図3に示す如く、給水管路の上流側に位置する流入口1aと、流入口1aに連通して下方が開放された止水栓室1bと、給水管路の下流側に位置する流出口1cと、流出口1cに連通して上方が開放された逆止弁室1dと、止水栓室1bと逆止弁室1dとの隔壁1fに形成され、止水栓室1b及び逆止弁室1dを連通状態にする通水口1eとを有しており、止水栓室1bの下方開口部分には、止水栓室1bの下方開口を閉塞する蓋状のボール押え7が、また、逆止弁室1dの上方開口部分には、逆止弁室1dの上方開口を閉塞する蓋状のパッキン箱8がそれぞれOリング9を介して着脱自在に螺着されている。
【0024】
尚、本体胴1の流出口1cには、伸縮継手10が取り付けられている。この伸縮継手10は、伸縮管11、伸縮管用パッキン12、ガイドリーフ13、固定用の袋ナット14及び管連結用の袋ナット15から成る。
【0025】
前記ボール2は、図3に示す如く、流入口1a及び通水口1eを連通状態又は非連通状態にする通水孔2aを有しており、本体胴1の止水栓室1b内に一対の環状のボールシート16を介して回転自在に収容されている。
このボール2は、ボール開閉操作機構3により90°回転操作されて開閉状態が切り替るようになっており、ボール2が開放位置(図3に示す位置)にあるときには、ボール2の通水孔2aが流入口1a及び通水口1e室に連通し、流入口1aから入った水道水が通水孔2a及び通水口1eを通って逆止弁室1dに流入し、また、ボール2が閉鎖位置(図示省略)にあるときには、通水口1eの上流側開口を閉鎖し、通水を遮断するようになっている。
【0026】
前記ボール開閉操作機構3は、図4に示す如く、本体胴1にOリング9を介して回転自在に挿通支持され、先端部がボール2に連結された横向き姿勢の副栓棒17と、本体胴1に螺着され、副栓棒17を抜け止めする副栓棒押え18と、副栓棒17の基端部に着脱自在に嵌合され、副栓棒17及びボール2を回転操作するレバーハンドル19と、副栓棒押え18に着脱自在に螺着され、レバーハンドル19を抜け止めするハンドルキャップ20とから成り、レバーハンドル19を90°回動操作することによって、ボール2を開放位置又は閉鎖位置へ切替操作できるようになっている。
また、レバーハンドル19は、副栓棒17に設けたピン17aと、本体胴1に形成されてピン17aが嵌合される切欠(図示省略)とにより回動角度が90°になるように規制されている。
尚、レバーハンドル19は、取り外しておくことにより盗水を防止できる。このとき、副栓棒押え18にダストキャップ(図示省略)を被せ、ダストが副栓棒17側へ入らないようにしておく。
【0027】
前記逆止弁4は、図3及び図4に示す如く、通水口1eの内周縁部で逆止弁室1d側の隔壁1f上面に形成した弁座面1gと、逆止弁室1dに上下方向へ移動自在に収容され、パッキン箱8の内周面に摺動案内される合成樹脂製の有底筒状の逆止弁体21と、逆止弁体21の下面に取り付けられ、弁座面1gに当離座する合成ゴム製の弁体パッキン22と、逆止弁体21の背面側(上面側)に配設され、逆止弁体21に背面押圧力を加えて弁体パッキン22を弁座面1gに当座させるスプリング23とから成り、水道水が流入口1aから流出口1cへ流れるときには、通水口1eに達した水道水の水圧により逆止弁体21がスプリング23の弾性力に抗して押し上げられて通水孔2aを開放し、流入口1aから流出口1cへの水道水の流れを許容し、また、水道水が逆流しようとするときには、逆止弁体21がスプリング23の弾性力により押し下げられて通水口1eを閉鎖し、流出口1cから流入口1aへの水道水の逆流を防止するようになっている。
【0028】
前記開度調整機構5は、図3及び図4に示す如く、パッキン箱8に貫通状態で回転自在且つ軸線方向へ移動不能に支持され、下端部外周面に雄ネジ部を形成した栓棒24と、栓棒24の上端部に取り付けた丸ハンドル25と、栓棒24の雄ネジ部に螺合され、パッキン箱8内に回転不能且つ上下動自在に収容されて逆止弁4のスプリング23を支持すると共に、水圧により押し上げられた逆止弁体21が当接する弁体押え26とから成り、丸ハンドル25により栓棒24を正逆回転させると、回転が阻止されている弁体押え26が上下方向へ移動するようになっている。
従って、この開度調整機構5は、弁体押え26の上下位置を調整することによって、開放位置にある逆止弁体21の位置が変わり、逆止弁4の開度(開口量)を調整できて流量調整を行えることになる。
【0029】
尚、弁体押え26のフランジ部の外周面には、パッキン箱8の内周面に形成した縦溝8aに嵌合されて弁体押え26の回転を阻止する突起26aが形成されている。
また、弁体押え26のフランジ部の下面には、逆止弁体21衝突時の衝撃を吸収する合成樹脂製の緩衝材27が取り付けられている。
更に、栓棒24は、その中心部に貫通状の空気抜き孔24aが形成されており、逆止弁室1d内の空気を外部へ排出できるようになっいる。この空気抜き孔24aは、丸ハンドル25のハンドル止めビス28により閉鎖されている。
従って、ハンドル止めビス28を取り外すことによって、逆止弁室1d内の空気を外部へ排出することができる。この空気抜き孔24aは、配管工事の施工後等に給水管内等に残っている空気を外部へ排出するのに利用されたり、或はここに圧力計を取り付けて管路内の水圧を計るのにも利用される。
【0030】
前記逆止弁チェック装置6は、図4及び図5に示す如く、本体胴1に分岐状に連設され、点検室1h及び水排出口1iを形成した筒状の点検用胴1′と、本体胴1に形成され、通水口1eを点検室1hに連通させる分岐孔1jと、点検室1hに移動自在に収容され、分岐孔1jを開閉する点検用栓棒29と、点検用栓棒29を分岐孔1jから離間する方向へ附勢するスプリング30と、点検用胴1′に設けられ、点検用栓棒29を分岐孔1jを閉鎖する閉鎖位置(図4に示す位置)と分岐孔1jを開放する開放位置(図5に示す位置)とに亘って開閉操作し得ると共に、閉鎖位置にある点検用栓棒29の保持状態を解除し得る点検用栓棒29の開閉操作機構31と、水排出口1iに接続された立上り管32とから成り、ボール2を回転操作して一次側の水道水を止め、この状態で開閉操作機構31を操作して閉鎖位置にある点検用栓棒29を開放位置にすると、逆止弁4が正常に機能にしていないときには、逆止弁室1d内の水道水が逆流して通水口1e、分岐孔1j、点検室1h及び水排出口1iを通って外部へ排出されるように構成されている。
【0031】
具体的には、点検用胴1′は、本体胴1の隔壁1f近傍に横向き姿勢で一体的に形成されており、一端部が開放され、奥側の内径がやや小径に形成された横向き姿勢の点検室1hと、点検室1hの大径部分に連通して上方へ開放された上向き姿勢の水排出口1iとを備えている。
また、点検室1hの小径部分は、分岐孔1jを介して通水口1eに連通状態となっている。
【0032】
点検用栓棒29は、その中間部分の外周面に抜け止め用の鍔部29aが形成されており、先端部の外周面には、点検用栓棒29と点検室1hの小径部分の内周面との間をシールするOリング9が嵌合されている。
【0033】
スプリング30は、点検室1hの大径部分の端面と点検用栓棒29の鍔部29aとの間に介設されており、その弾性力は、閉鎖位置にある点検用栓棒29の保持状態が解除されたときに点検用栓棒29を分岐孔1jから離間する方向へ附勢して分岐孔1jを開放する程度に設定されている。
【0034】
点検用栓棒29の開閉操作機構31は、点検用胴1′の端部内周面に着脱自在に螺着され、点検用栓棒29を軸線方向へ移動自在に挿通支持すると共に、点検用栓棒29の鍔部29aが当接することにより点検用栓棒29を開放位置に保持する点検用栓棒押え31aと、点検用胴1′の端部外周面に着脱自在に螺着され、点検用栓棒29をスプリング30の弾性力に抗して点検室1h内に押し込み、点検用栓棒29を閉鎖位置に保持する点検用栓棒キャップ31bとから成り、点検用栓棒キャップ31bを点検用胴1′から取り外すと、閉鎖位置にある点検用栓棒29の保持状態が解除され、点検用栓棒29がスプリング30の弾性力により分岐孔1jを開放する方向へ移動し、点検用栓棒29が開放位置に保持されるようになっている。
【0035】
立上り管32は、点検用胴1′の水排出口1iに縦向き姿勢で着脱自在に螺着されており、本体胴1に一体的に形成した支持片1″に挿通されてパイプ止めビス33により固定されている。
【0036】
次に、上述した逆止チェック機能付止水栓の作用について説明する。
【0037】
ボール2が開放位置にあるときには、流入口1aから入った水道水がボール2の通水孔2aを通って通水口1eに達し、逆止弁体21をスプリング23の弾性力に抗して押し上げる。その結果、一次側の水道水は、通水口1eから逆止弁室1d内に流れ込み、流出口1cから二次側へ排出される。
【0038】
また、水道水の流入が停止したり、水道水が逆流しようとした場合には、逆止弁体21がスプリング23の弾性力により押されて弁座面1gに当座し、通水口1eを閉鎖して水道水の逆流を防止する。
【0039】
更に、丸バンドル25を回して弁体押え26を上下動させ、弁体押え26の上下位置を調整して逆止弁4の開度(開口量)を調整することによって、通水量を自由に調整することができる。
【0040】
しかも、レバーハンドル19を操作することによって、ボール2を開放位置又は閉鎖位置に切替操作できるので、逆止弁体21や弁体パッキン22の取替時等には、通水を止めることによって、取替を簡単に行える。また、ハンドル止めビス28を取り外せば、逆止弁室1dと外部とが空気抜き孔24aを介して連通状態になるので逆止弁室1d内や管路内の空気抜きを簡単に行える。
【0041】
そして、逆止弁チェック装置6を用いて逆止弁4の逆流防止機能をチェックする場合には、先ず、レバーハンドル19を90°回動操作してボール2を閉鎖位置にし、一次側を止水する。
【0042】
次に、図5に示す如く、点検用栓棒キャップ31bを手で回して点検用胴1′から取り外す。そうすると、点検用栓棒29は、スプリング30の弾性力により分岐孔1jから離間する方向へ移動して分岐孔1jを開放すると共に、その外周面に形成した鍔部29aが点検用栓棒押え31aに当接して開放位置に保持される。
【0043】
このとき、弁体パッキン22が弁座面1gとの間でゴミ等の異物を噛み込んでいたりすると、弁体パッキン22と弁座面1gとの隙間から二次側の水道水が通水口1e内へ浸入して来るが、ボール2が閉鎖位置に保持されて通水口1eと流入口1aとを遮断しているので、逆流した水道水は分岐孔1jから点検室1h及び立上り管32内へ流れる。
【0044】
立上り管32から水道水が溢れて出て来たら、逆止弁4の逆流防止機能に異常があり、水道水が逆流しているのを確認することができる。
尚、逆流を確認したら、逆止弁体21や弁体パッキン22を取り替えたり、逆止弁室1d内等を清掃したりして逆止弁4の逆流防止機能の維持に努める。
【0045】
このように、前記逆止チェック機能付止水栓は、本体胴1の止水栓室1bに収容したボール2を回転操作して一次側の水道水を止め、この状態で本体胴1の逆止弁室1dに設けた逆止弁4が正常に機能していないときに、逆止弁室1dから逆流した水道水を外部へ排出して逆止弁4の逆流防止機能をチェックし得る逆止弁チェック装置6を備えているため、逆止チェック機能付止水栓を給水管路に設置した状態でも、逆止弁チェック装置6を操作することにより逆止弁4の逆流防止機能の点検を行える。
また、この逆止チェック機能付止水栓は、逆止弁チェック装置6により工具を使用せずに逆止弁4の逆流防止機能の点検を行えるため、短時間で逆止弁4の逆流防止機能の点検を行える。
更に、この逆止チェック機能付止水栓は、逆止弁4の逆流防止機能をチェックし得る逆止弁チェック装置6を備えているため、逆止弁4の逆流防止機能のチェックが誰にでも簡単にできる簡易な作業となり、こまめに定期点検を行える。
従って、この逆止チェック機能付止水栓を用いれば、水質汚染事故を未然に防止するための有効な維持管理を行える。
【符号の説明】
【0046】
1は本体胴、1′は点検用胴、1aは流入口、1bは止水栓室、1cは流出口、1dは逆止弁室、1eは通水口、1hは点検室、1iは水排出口、1jは分岐孔、2はボール、2aは通水孔、4は逆止弁、6は逆止弁チェック装置、29は点検用栓棒、30はスプリング、31は開閉操作機構、32は立上り管。

【特許請求の範囲】
【請求項1】
流入口(1a)に連通する止水栓室(1b)、流出口(1c)に連通する逆止弁室(1d)、止水栓室(1b)及び逆止弁室(1d)を連通状態にする通水口(1e)をそれぞれ形成した本体胴(1)と、止水栓室(1b)に回転操作自在に収容され、流入口(1a)及び通水口(1e)を連通状態又は非連通状態にする通水孔(2a)を形成したボール(2)と、逆止弁室(1d)に設けられ、通水口(1e)から逆止弁室(1d)への水道水の流れを許容すると共に、逆止弁室(1d)から通水口(1e)への水道水の流れを阻止する逆止弁(4)と、本体胴(1)に設けられ、逆止弁(4)の逆流防止機能をチェックする逆止弁チェック装置(6)とを備えており、前記逆止弁チェック装置(6)は、ボール(2)を回転操作して一次側を止水し、この状態で逆止弁(4)が正常に機能にしていないときに、逆止弁室(1d)から通水口(1e)に逆流した水道水が外部へ排出される構成としたことを特徴とする逆止チェック機能付止水栓。
【請求項2】
逆止弁チェック装置(6)は、本体胴(1)に分岐状に連設され、点検室(1h)及び点検室(1h)に連通する水排出口(1i)を形成した点検用胴(1′)と、本体胴(1)に形成され、通水口(1e)を点検室(1h)に連通させる分岐孔(1j)と、点検室(1h)に移動自在に収容され、分岐孔(1j)を開閉する点検用栓棒(29)と、点検用栓棒(29)を分岐孔(1j)から離間する方向へ附勢するスプリング(30)と、点検用胴(1′)に設けられ、点検用栓棒(29)を分岐孔(1j)を閉鎖する閉鎖位置と分岐孔(1j)を開放する開放位置とに亘って開閉操作し得ると共に、閉鎖位置にある点検用栓棒29の保持状態を解除し得る開閉操作機構(31)とから成り、ボール(2)を回転操作して一次側を止水し、この状態で閉操作機構(31)を操作して閉鎖位置にある点検用栓棒(29)を開放位置にすると、逆止弁(4)が正常に機能にしていないときには、逆止弁室(1d)内の水道水が逆流して通水口(1e)、分岐孔(1j)、点検室(1h)及び水排出口(1i)を通って外部へ排出されるように構成されていることを特徴とする請求項1に記載の逆止チェック機能付止水栓。
【請求項3】
点検用胴(1′)に水排出口(1i)を上向きに形成すると共に、水排出口(1i)に立上り管(32)を接続したことを特徴とする請求項2に記載の逆止チェック機能付止水栓。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【公開番号】特開2013−40504(P2013−40504A)
【公開日】平成25年2月28日(2013.2.28)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2011−178218(P2011−178218)
【出願日】平成23年8月17日(2011.8.17)
【出願人】(595086328)株式会社光明製作所 (6)
【Fターム(参考)】