説明

透明導電膜エッチング組成物

【課題】薄膜トランジスタ液晶表示装置などの製造時に透明導電膜の選択的なエッチングのために使用されるエッチング組成物であってTFTを構成するゲート配線材料であるMo/Al−Nd二重膜とソース/ドレイン配線材料であるMo単一膜に影響を与えず、形成される透明導電膜のプロファイルが優れ、エッチング速度が速くてLCD製造原価節減および工程収率を向上させる効果がある透明導電膜エッチング組成物を提供する。
【解決手段】本発明による透明導電膜エッチング組成物は、a)水溶液中でCl-に解離され得る塩素化合物0.1〜5重量%;b)水溶液中でNO3-に解離され得る化合物0.1〜5重量%;およびc)残量の水を含むことを特徴とする。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、透明導電膜エッチング組成物に関する。
【背景技術】
【0002】
エッチング工程は最終的に基板上に微細回路を形成する過程であって、現像工程によって形成されたフォトレジストパターンと同一の金属パターンを形成する。
エッチング工程は、その方式によって、主として、湿式エッチングと乾式エッチングとに区分される。湿式エッチングは、金属などと反応して腐蝕させる酸系の化学薬品を用いてフォトレジストパターンがない部分を溶かし出す方法であり、乾式エッチングは、イオンを加速させて露出部位の金属を除去することによってパターンを形成する方法である。
【0003】
乾式エッチングは、湿式エッチングに比べて異方性プロファイルを有し、エッチング制御力が優れるという長所がある。しかし、装備が高価であり、大面積化が難しく、エッチング速度が遅いため、生産性が低下するという問題点がある。
反面、湿式エッチングは、乾式エッチングに比べて大量および大型処理が可能であり、エッチング速度が速いので、生産性が高く、装備が安いという長所がある。しかし、エッチャントおよび脱イオン水の使用量が多いため、廃液量が多くなるという問題点がある。
【0004】
一般に、乾式エッチングを行う場合、表面の一部が硬化したフォトレジストを除去するためにプラズマアッシング工程が追加される。したがって、これにより装備コストが上昇し、工程時間が損失するなどの生産性低下および製品競争力弱化を招くため、実際現場では、湿式エッチングを主に使用しているのが実情である。
湿式エッチングに使用されるエッチャントはより精密な微細回路が要求されることによってエッチングしようとする金属の種類に特定されるように適用されている。
【0005】
一例として、下記特許文献1は、アルミニウムおよび非晶質ITOをエッチングするためにシュウ酸を含むエッチング組成物について開示している。
しかし、このような従来のエッチング組成物は、薄膜トランジスタ液晶表示装置の製造工程で残渣が発生し、長い工程時間を要し、析出問題により工程を複雑化させるため、生産性の低下および費用の増加を招くという問題点がある。
【特許文献1】大韓民国特許出願第2001−0030192号
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
前記のような従来の技術の問題点を解決しようと、本発明は、透明導電膜のエッチング時に、TFTを構成するゲート配線材料であるMo/Al−Nd二重膜とソース/ドレイン配線材料であるMo単一膜に影響を与えず、優れたプロファイルを形成することができ、エッチング速度が速く、残渣問題および析出問題が発生しない透明導電膜エッチング組成物および前記エッチング組成物を用いた液晶表示装置の製造方法を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0007】
前記目的を達成するために、本発明は、
透明導電膜エッチング組成物において、
a)水溶液中でCl-に解離され得る塩素化合物0.1〜5重量%;
b)水溶液中でNO3-に解離され得る化合物0.1〜5重量%;および
c)残量の水
を含むことを特徴とする透明導電膜エッチング組成物を提供する。
【0008】
また、本発明は、前記エッチング組成物でエッチングする工程を含む薄膜トランジスタ液晶表示装置の製造方法を提供する。
【発明の効果】
【0009】
本発明による透明導電膜エッチング組成物は、透明導電膜のエッチング時に、TFTを構成するゲート配線材料であるMo/Al−Nd二重膜とソース/ドレイン配線材料であるMo単一膜に影響を与えず、優れたプロファイルを形成することができる。また、エッチング速度が速く、残渣および析出物が発生することを防止又は回避することができる。その結果、LCDの製造コストを低減することができるとともに、歩留まりを向上させることが可能となる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0010】
以下、本発明を詳細に説明する。
本発明の透明導電膜のエッチング組成物は、インジウムチンオキシド(ITO)に対して好適に用いられるものであって、a)水溶液中でCl-に解離され得る塩素化合物0.1〜5重量%;b)水溶液中でNO3-に解離され得る化合物0.1〜5重量%;およびc)残量の水を含むことを特徴とする。
【0011】
本発明に使用される化合物および水は半導体工程用として使用可能な純度のものを使用するのがよく、市販されるものを使用したり、工業用等級のものを、当該分野で公知の方法によって精製して使用することもできる。
【0012】
本発明に使用される前記a)の水溶液中でCl-に解離され得る塩素化合物は、例えば、ITOのエッチング速度を調節し、ITO(インジウムチンオキシド:Indium Tin Oxide)を分解する作用をする。
【0013】
前記a)の塩素化合物にはその種類が特に限定されないが、KCl、HCl、LiCl、NH4Cl、NaCl、CuCl2、FeCl3、FeCl2、CaCl2、CoCl2、NiCl2、ZnCl2、AlCl3、BaCl2、BeCl2、BiCl3、CdCl2、CeCl2、CsCl2、H2PtCl6およびCrCl3からなる群より選択される1種以上の化合物を使用するのがよく、HClまたはNH4Clを使用するのが好ましい。
【0014】
前記塩素化合物は、本発明のエッチング組成物に0.1〜5重量%で含まれるのが好ましく、さらに好ましくは2〜4重量%である。その含量が前記範囲内である場合にはゲートとソース/ドレインに影響を与えず、ITOが適切に分解され、エッチング速度が速くなって生産性が向上する効果がある。
また、本発明に使用される前記b)水溶液中でNO3-に解離され得る化合物はITO残渣およびエッチング速度を調節する緩衝剤の作用をする。
【0015】
前記b)化合物はその種類が特に限定されないが、HNO3、NH4NO3、KNO3、NaNO3、Fe(NO33、Ca(NO32、Cr(NO32、LiNO3およびZn(NO32からなる群より選択される1種以上の化合物を使用するのがよく、HNO3またはNH4NO3を使用するのが好ましい。
【0016】
前記b)化合物は本発明のエッチング組成物に0.1〜5重量%で含まれるのが好ましく、さらに好ましくは0.5〜3重量%である。その含量が前記範囲内である場合にはITO残渣およびエッチング速度を効果的に調節することができ、特に5重量%を超える場合にはエッチング速度が遅くなる現象が発生する傾向がある。
また、本発明のエッチング組成物はc)残量の水を含み、好ましくは前記水は脱イオン水又は超純水を使用するのがよい。
【0017】
本発明は前記のような成分からなるエッチング組成物でエッチングする工程を含む薄膜トランジスタ液晶表示装置の製造方法を提供する。
本発明の薄膜トランジスタ液晶表示装置の製造方法で、前記エッチング組成物を用いたエッチング工程前後には薄膜トランジスタ液晶表示装置の製造方法に適用される通常の工程を適用することができる。
【0018】
本発明の薄膜トランジスタ液晶表示装置の製造方法は、前記のような成分を含む本発明のエッチング組成物を用いて薄膜トランジスタ液晶表示装置のTFTを構成する透明導電膜(例えば、ITO膜)をエッチングする場合、ゲート配線材料(例えば、Mo/Al−Nd二重膜)とソース/ドレイン配線材料(例えば、Mo単一膜)に影響を与えず、優れた透明導電膜のプロファイルを形成することができ、LCD製造原価節減および工程収率を向上させる効果がある。
【0019】
以下、本発明による実施例を詳しく説明する。このような実施例は発明をさらに詳しく説明するために提供されるものであり、これらによって本発明が限定されない。
実施例1
3.0重量%の塩酸(HCl)と1.0重量%の硝酸アンモニウム(NH4NO3)とを残量の水に添加して透明導電膜エッチング組成物を製造した。
【0020】
前記エッチング組成物を用いてITO膜(ITO膜の厚さ500Å)基板をスプレーによってエッチングをした後に約1分間超純水によって水洗を行った後、窒素を用いて乾燥させた。ここでのエッチングは、40℃でEPD(End Point Detection:予め設定された所望のエッチング終点)、30%、60%オーバーエッチ(O/E)まで、それぞれ行った。
【0021】
このようにエッチングを完了した後、基板表面を走査電子顕微鏡(Hitachi S−4200)によって観察した。その結果、図1に示されているように、EPD、30%、60%オーバーエッチ(O/E)で全て残渣が確認されず、ゲート(Mo/Al−Nd)とソース/ドレイン(Mo)膜が損傷されなかった。
【0022】
比較例1
3.0重量%塩酸(HCl)を残量の水に添加してエッチング組成物を製造した。前記エッチング組成物を用いてITO膜(ITO膜の厚さ500Å)基板を40℃でEPD、30%、60%オーバーエッチ(O/E)でスプレーしてエッチングをした後に約1分間超純水によって水洗を行った後、窒素を用いて乾燥させた。
【0023】
このようにエッチングを完了した後、基板表面を走査電子顕微鏡(Hitachi S−4200)によって観察した。その結果、図2のように、EPDでは残渣が発生し、30%、60%オーバーエッチ(O/E)では残渣が確認されなかった。また、ゲート(Mo/Al−Nd)とソース/ドレイン(Mo)膜が損傷されなかった。
【0024】
比較例2
4.5重量%シュウ酸を残量の水に添加してエッチング組成物を製造した。前記エッチング組成物を用いてITO膜(ITO膜の厚さ500Å)基板を40℃でEPD、30%、60%オーバーエッチ(O/E)でスプレーしてエッチングをした後に約1分間超純水によって水洗を行った後、窒素を用いて乾燥させた。
【0025】
このようにエッチングを完了した後、基板表面を走査電子顕微鏡(Hitachi S−4200)によって観察した。その結果、図3に示されているように、EPDでは残渣が発生し、30%、60%オーバーエッチ(O/E)では残渣が確認されなかった。また、ゲート(Mo/Al−Nd)とソース/ドレイン(Mo)膜が損傷されなかった。しかし、シュウ酸を用いてエッチングをする場合には工程時間が長く、析出問題が発生した。
【0026】
前記実施例1および比較例の構成とエッチング結果を下記表1に整理した。
【0027】
【表1】

【図面の簡単な説明】
【0028】
【図1】本発明の実施例によるエッチング組成物でITO単一膜をエッチングして形成されたプロファイルを示す写真である。
【図2】水溶液中でNO3-に解離され得る化合物を含まないエッチング組成物でITO単一膜をエッチングして形成されたプロファイルを示す写真である。
【図3】従来のエッチング組成物であるシュウ酸を含むエッチング組成物でITO単一膜をエッチングして形成されたプロファイルを示す写真である。

【特許請求の範囲】
【請求項1】
透明導電膜エッチング組成物であって、
a)水溶液中でCl-に解離され得る塩素化合物0.1〜5重量%;
b)水溶液中でNO3-に解離され得る化合物0.1〜5重量%;および
c)残量の水
を含むことを特徴とする透明導電膜エッチング組成物。
【請求項2】
前記a)水溶液中でCl-に解離され得る塩素化合物は、KCl、HCl、LiCl、NH4Cl、NaCl、CuCl2、FeCl3、FeCl2、CaCl2、CoCl2、NiCl2、ZnCl2、AlCl3、BaCl2、BeCl2、BiCl3、CdCl2、CeCl2、CsCl2、H2PtCl6およびCrCl3からなる群より選択される1種以上の化合物である請求項1に記載の透明導電膜エッチング組成物。
【請求項3】
前記c)NO3-に解離され得る化合物は、HNO3、NH4NO3、KNO3、NaNO3、Fe(NO33、Ca(NO32、Cr(NO32、LiNO3およびZn(NO32からなる群より選択される1種以上の化合物である請求項1に記載の透明導電膜エッチング組成物。
【請求項4】
請求項1〜3のうちのいずれか1項に記載された透明導電膜エッチング組成物でエッチングする工程を含む薄膜トランジスタ液晶表示装置の製造方法。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【公開番号】特開2007−142409(P2007−142409A)
【公開日】平成19年6月7日(2007.6.7)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2006−307034(P2006−307034)
【出願日】平成18年11月13日(2006.11.13)
【出願人】(502081871)ドンジン セミケム カンパニー リミテッド (62)
【Fターム(参考)】