透明導電膜形成用液体材料、透明導電膜の形成方法、及び電気光学装置の製造方法
【課題】低温プロセスでも安定した電気特性を有する透明導電膜を形成することができる酸化物微粒子及び透明導電膜形成用液体材料を提供する。また本発明は、安定な電気特性を有する透明導電膜を形成する方法、並びに信頼性に優れた電気光学装置を製造する方法を提供する。
【解決手段】本発明の液体材料14Aは、酸化物に変換されたときに透光性を発現する導電性微粒子11と、Ag微粒子12とを分散媒13に含んでなる。本発明の透明導電膜の形成方法は、酸化物に変換されたときに透光性を発現する導電性微粒子11と、Ag微粒子12とを分散媒13に含んでなる液体材料14Aを基板上に配置する工程と、基板P上の液体材S料14Aを減圧又は還元雰囲気中で加熱処理して液体材料14Aの固化物を形成する工程と、固化物を酸素含有雰囲気中で加熱処理して固化物を酸化させる工程とを有する。
【解決手段】本発明の液体材料14Aは、酸化物に変換されたときに透光性を発現する導電性微粒子11と、Ag微粒子12とを分散媒13に含んでなる。本発明の透明導電膜の形成方法は、酸化物に変換されたときに透光性を発現する導電性微粒子11と、Ag微粒子12とを分散媒13に含んでなる液体材料14Aを基板上に配置する工程と、基板P上の液体材S料14Aを減圧又は還元雰囲気中で加熱処理して液体材料14Aの固化物を形成する工程と、固化物を酸素含有雰囲気中で加熱処理して固化物を酸化させる工程とを有する。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、透明導電膜形成用液体材料、透明導電膜の形成方法、及び電気光学装置の製造方法に関するものである。
【背景技術】
【0002】
液晶装置等の表示デバイスの電極として、ITO(インジウム錫酸化物)等の透明導電材料を用いた透明導電膜が用いられている。このような透明導電膜は、スパッタ法を用いて形成するのが一般的であるが、プロセス温度を低減できる液相法を用いて透明導電膜を形成することも検討されている(例えば特許文献1〜3参照)。
【特許文献1】特開2005−166350号公報
【特許文献2】特開2005−183054号公報
【特許文献3】特開2006−028431号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0003】
上記各特許文献に記載の液体材料を所望の平面パターンにて基板上に塗布した後、熱処理を施すことで基板上に所望形状の透明導電膜を形成することができる。しかしながら、これらの液体材料を用いた導電膜形成において安定した特性を得るには、500℃以上の熱処理を行うことが必要であり、熱処理温度が350℃以下であると透明導電膜の抵抗が経時的に変化し、デバイスの信頼性確保が難しくなるという問題がある。例えば、特許文献1に記載のITO微粒子を用いる方法では、得られた透明導電膜におけるITO微粒子間の接点が不安定であるために抵抗上昇が生じやすい。また特許文献2に記載の金属粒子を酸化させて透明導電膜を形成する方法では、接点は安定しているものの、得られる酸化物導電体の結晶性が悪く、活性種の活性度が低いために十分なキャリア濃度が得られない。さらに特許文献3記載の熱分解材料を用いる方法では、熱分解材料の分解が完全に進まないことによる炭素残渣の発生や導電膜の結晶性低下がシート抵抗上昇の原因となりうる。
【0004】
本発明は、上記従来技術の問題点に鑑み成されたものであって、低温プロセスでも安定した電気特性を有する透明導電膜を形成することができる導電性微粒子及び液体材料を提供することを目的としている。また本発明は、安定な電気特性を有する透明導電膜を形成する方法、並びに信頼性に優れた電気光学装置を製造する方法を提供することを目的としている。
【課題を解決するための手段】
【0005】
本発明の透明導電膜形成用液体材料は、酸化物に変換されたときに透光性を発現する導電性微粒子と、Agからなる金属微粒子と、を分散媒に含んでなることを特徴とする。
【0006】
これによれば、分散媒中に、酸化物に変換されたときに透光性を発現する導電性微粒子とAgからなる金属微粒子とを有しているので、加熱により分散媒を除去することで凝集した粒子同士において、導電性微粒子間の隙間を埋めるようにして金属微粒子が存在する。その結果、加熱により融着していない導電性微粒子同士の導通を金属微粒子を介して得ることができる。また、Agからなる金属微粒子を分散媒中に含むことによって、導電性微粒子の移動度劣化を抑えることができる。したがって、本発明の透明導電膜形成用液体材料によれば、低抵抗を維持することができて信頼性に優れた透明導電膜を形成することができる。
【0007】
導電性微粒子が、In、Zn、Al、F及びSnから選ばれる1種以上の元素を含むことも好ましい。
【0008】
すなわち、酸化物に変換ときに透光性を発現する材料からなることが好ましい。
【0009】
透光性を有する酸化物からなる導電性微粒子と、Agからなる金属微粒子と、を分散媒に含んでなることが好ましい。
【0010】
これによれば、分散媒中に、透光性を有する酸化物からなる導電性微粒子とAgからなる金属微粒子とを有しているので、加熱により分散媒を除去することで凝集した粒子同士において、導電性微粒子間の隙間を埋めるようにして金属微粒子が存在する。その結果、加熱により融着していない導電性微粒子同士の導通を金属微粒子を介して得ることができる。また、Agからなる金属微粒子を分散媒中に含むことによって、導電性微粒子の移動度劣化を抑えることができる。したがって、本発明の透明導電膜形成用液体材料によれば、低抵抗を維持することができて信頼性に優れた透明導電膜を形成することができる。
【0011】
本発明の透明導電膜形成用液体材料では、導電性微粒子が、In、Zn、Al、F及びSnから選ばれる1種以上の元素を含む酸化物からなることが好ましい。
【0012】
すなわち、導電性微粒子が透明導電材料を構成する酸化物からなることが好ましい。
【0013】
本発明の透明導電膜形成用液体材料では、金属微粒子の含有量が、導電性微粒子に対して0.01〜10wt%となるように混合されていることが好ましい。
【0014】
これによれば、透過率に影響を与えることなく低抵抗で導通性に優れた透明導電膜を形成することができる。なお、数値限定の根拠については後に示す実施形態にて述べるものとする。
【0015】
本発明の透明導電膜形成用液体材料では、金属微粒子の含有量が、導電性微粒子に対して0.5〜2wt%となるように混合されていることが好ましい。
【0016】
これによれば、透過率に影響を与えることなく、低抵抗でより導通性に優れた透明導電膜を形成することができる。この数値限定の根拠についても後に示す実施形態にて述べるものとする。
【0017】
本発明の透明導電膜の形成方法は、酸化物に変換されたときに透光性を発現する導電性微粒子と、Agからなる金属微粒子とを分散媒に含んでなる透明導電膜形成用液体材料を基板上に配置する工程と、基板上の透明導電膜形成用液体材料を減圧又は還元雰囲気中で加熱処理して透明導電膜形成用液体材料の固化物を形成する工程と、固化物を酸素含有雰囲気中で加熱処理して該固化物を酸化させる工程と、を有することを特徴とする。
【0018】
この方法によれば、加熱処理をすることによって導電性微粒子が酸化されて金属酸化物となり、固化物を透明導電膜に変換することができる。このとき、導電性微粒子同士の隙間を埋めるようにして金属微粒子が存在することから、金属微粒子を介して隣り合う導電性微粒子間の安定した導通を得ることができる。また、透明導電膜の結晶性が良好となるので、膜強度及び密着性の向上に伴って信頼性に優れたものとなる。
【0019】
透光性を有する酸化膜からなる導電性微粒子と、Agからなる金属微粒子とを分散媒に含んでなる透明導電膜形成用液体材料を基板上に配置する工程と、基板上の透明導電膜形成用液体材料を減圧又は還元雰囲気中で加熱処理する工程と、を有することを特徴とする。
【0020】
この方法によれば、酸化物からなる導通性微粒子を含む透明導電膜形成用液体材料を用いるため、分散媒を蒸発させるだけで固化物を透明導電膜に変換することができる。このとき、導電性微粒子同士の隙間を埋めるようにして金属微粒子が存在することから、金属微粒子を介して隣り合う導電性微粒子間の安定した導通を得ることができる。また、透明導電膜の結晶性が良好となるので、膜強度及び密着性の向上に伴って信頼性に優れたものとなる。
【0021】
本発明の透明導電膜の形成方法では、複数の加熱処理における加熱温度がいずれも300℃以下であることが好ましい。
【0022】
この方法によれば、耐熱性に劣る樹脂製の基板上にも良好な導電性と信頼性とを具備した止め移動伝膜を形成することができる。本発明の形成方法は、フレキシブルデバイスの製造に好適に用いることができる。
【0023】
本発明の電気光学装置の製造方法は、基板上に透明導電膜を備えた電気光学装置の製造方法であって、酸化物に変換されたときに透光性を発現する導電性微粒子と、Agからなる金属微粒子とを分散媒に含んでなる透明導電膜形成用液体材料を基板上に配置する工程と、基板上の透明導電膜形成用液体材料を減圧又は還元雰囲気中で加熱処理して透明導電膜形成用液体材料の固化物を形成する工程と、固化物を酸素含有雰囲気中で加熱処理して該固化物を酸化させて透明導電膜を形成する工程と、を有することを特徴とする。
【0024】
本発明によれば、優れた導電性と信頼性とを具備した透明導電膜を有する電気光学装置を容易に製造することができ、表示特性及び信頼性に優れた電気光学装置を提供することができる。
【0025】
本発明の電気光学装置の製造方法は、基板上に透明導電膜を備えた電気光学装置の製造方法であって、透光性を有する酸化膜からなる導電性微粒子と、Agからなる金属微粒子とを分散媒に含んでなる透明導電膜形成用液体材料を基板上に配置する工程と、基板上の透明導電膜形成用液体材料を減圧又は還元雰囲気中で加熱処理して透明導電膜を形成する工程と、を有することを特徴とする。
【0026】
本発明によれば、酸化処理を施す必要がないため、作業工程数を削減でき、短時間で効率良く製造することができる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0027】
<透明導電膜形成用液体材料>
以下、本発明の一実施形態について図面を参照して説明する。図1は、本実施形態に係る導電性微粒子及びAg微粒子を含んだ透明導電膜形成用液体材料(以下、単に液体材料と称する。)を基板上に塗布した状態を示す概略断面図である。
【0028】
まず、本実施形態に係る液体材料14Aについて説明する。液体材料14Aは、透明導電膜の形成に用いられるものである。図1に示すように、本実施形態に係る液体材料14Aは、酸化処理を施すことで透光性を有する酸化膜からなる導電性微粒子11とAg微粒子12(金属微粒子)とを分散媒13中に分散してなるものである。
(導電性微粒子)
導電性微粒子11は、導電性を有するものであれば使用可能であるが、中でも特に酸化処理を施すことで高い透光性を有するものを使用する。本実施形態では、例えば、In、Zn、Al、F及びSn等から選ばれる1種以上の元素を含む合金が挙げられる。具体的には、In−Sn、Sn−Sb、F−Sn、Zn−Al、In−Zn、Ga−Zn等の合金を例示することができる。導電性微粒子11は、液相法、気相法を問わず、公知の微粒子製造方法を用いて製造することができる。具体的には、ガス中蒸発法、液相還元法、スプレー法等を挙げることができ、導電性微粒子11の材質に合わせて適切なものを選択すればよい。
【0029】
導電性微粒子11の粒径は、1nm〜100nm程度であることが好ましく、1nm〜40nmの範囲であることがより好ましい。粒径0.1μm以下のものを用いることで、かかる導電性微粒子11を含む液体材料14Aを液滴吐出ヘッドから吐出する際に目詰まりが生じるのを防止できる。また1nm〜40nmの範囲とすれば、導電性微粒子11を用いて形成した透明導電膜14Cについて良好な導電性と透明性を得ることができる。ここで、導電性微粒子11の平均粒径が大きすぎると、得られる透明導電膜14Cにおいて、導電性微粒子11同士の空隙(隙間)が大きくなり、その結果、十分な導通性を得られない虞がある。
(Ag微粒子)
Ag微粒子12は、Agを主材料としていることから高い導電性を有するものである。その形状は、球状、棒状あるいは紐状のいずれかを呈している。球状のAg微粒子12は、その粒径が1nm〜40nm程度であることが好ましい。棒状あるいは紐状をなすAg微粒子12は、その短手方向長さが1nm〜40nmの範囲内であることが好ましい。また、Ag微粒子12は、導電性微粒子11よりも小さい粒径(形状)であることがより好ましい。導電性微粒子11よりも小さい粒径をなすAg微粒子12であれば、該Ag微粒子12が導電性微粒子11間の隙間を埋め込むようにして存在することができる。また、棒状をなすAg微粒子12や紐状をなすAg微粒子は、ある程度の長さを有しているほうがよく、これにより、複数の導電性微粒子11に接触することができる。このようなことから、Ag微粒子12を介して導電性微粒子11同士の導通性を確実且つ効果的に向上させることができる。この点に関しては、例えば、球状のAg微粒子12を数個から数十個、鎖状に凝集させて連鎖状にしたものを用いることによっても可能となる。
【0030】
ここで、Ag微粒子12の粒径が小さすぎると、粒子同士で凝集し易くなり分散性が低下する虞がある。一方、Ag微粒子12の粒径が大きすぎると、液滴吐出ヘッドから吐出する際に目詰まりを生じる虞がある。そのため、これらのことを十分考慮した上で粒径を設定する。
【0031】
なお、Agからなる微粒子は、入手が容易であることから低コスト化を図ることもできる。
【0032】
なお、導電性微粒子11及びAg微粒子12の表面には、分散媒13に分散させて液体材料14Aを調製した際の各微粒子の凝集を防止する目的で有機物のコーティングを施しておいてもよい。
(分散媒)
分散媒13としては、導電性微粒子11を良好に分散させ、凝集を起こさないものであれば特に限定されない。例えば、水の他に、メタノール、エタノール、プロパノール、ブタノールなどのアルコール類、n−ヘプタン、n−オクタン、デカン、ドデカン、テトラデカン、トルエン、キシレン、シメン、デュレン、インデン、ジペンテン、テトラヒドロナフタレン、デカヒドロナフタレン、シクロヘキシルベンゼンなどの炭化水素系化合物、またエチレングリコールジメチルエーテル、エチレングリコールジエチルエーテル、エチレングリコールメチルエチルエーテル、ジエチレングリコールジメチルエーテル、ジエチレングリコールジエチルエーテル、ジエチレングリコールメチルエチルエーテル、1,2−ジメトキシエタン、ビス(2−メトキシエチル)エーテル、p−ジオキサンなどのエーテル系化合物、さらにプロピレンカーボネート、γ−ブチロラクトン、N−メチル−2−ピロリドン、ジメチルホルムアミド、ジメチルスルホキシド、シクロヘキサノンなどの極性化合物を例示できる。これらのうち、導電性微粒子11及びAg微粒子12の分散性と分散媒13の安定性、また液滴吐出法(インクジェット法)への適用の容易さの点で、水、アルコール類、炭化水素系化合物、エーテル系化合物が好ましく、より好ましい分散媒13としては、水、炭化水素系化合物を挙げることができる。
【0033】
本実施形態の液体材料14Aは、透明導電膜形成用の液体材料であって、上記した導電性微粒子11及びAg微粒子12を分散媒13に分散させている。
【0034】
図2は、液体材料中のAg添加率に対するシート抵抗及び透過率の関係を示す図であって、図2の左縦軸はシート抵抗[Ω/□]、右縦軸は透過率[%]、横軸はAg添加率[wt%]である。
【0035】
図2に示すように、液体材料14Aから得られる透明導電膜14Cのシート抵抗Rは、Ag微粒子12の添加量に比例して低くなるが、それに伴い透過率Tも低下する関係となっており、Ag微粒子12の添加量が多くなるほど不透明の度合が増加することが分かる。そのため、導電性と透明性との兼ね合いからAg微粒子12の含有量を適宜設定することが望ましい。
【0036】
本実施形態において、分散媒13中に含まれるAg微粒子12の含有量は、導電性微粒子11に対して、0.01〜10wt%の比率で添加されていることが好ましい。本発明者は、導電性微粒子11に対して0.01wt%の比率で添加したときからシート抵抗Rの低下に効果が出はじめることを知った。しかしながら、導電性微粒子11に対するAgの添加率の比率が10wt%を超えると透過率に影響が出てしまうことが分かっている。そのため、本発明者は、得られる透明導電膜14Cが有用とされる最低限の透過率を80%として導電性微粒子11に対するAgの添加率の比率を10wt%までとした。
【0037】
図2によれば、特に、Ag含有率が0.5〜2wt%の範囲内からなる液体材料14Aを用いることがより好ましく、この場合、十分な透過率Tで低抵抗を有する透明導電膜14Cを得ることができる。
【0038】
分散媒13中に含まれる導電性微粒子11は、所望とする透明導電膜14Cの機能を果たす含有量となっている。また、導電性微粒子11及びAg微粒子12の添加量(混合量)が少なすぎると、形成される透明導電膜14Cが薄い膜厚となって断線しやすくなったり、導電膜としての十分な導電性を得ることができない虞がある。一方、導電性微粒子11及びAg微粒子12の添加量(混合量)が多すぎると、分散媒13中における粒子の分散性が低下して基板P上への塗布が困難になり、透明導電膜14Cの膜厚が厚くなる虞がある。そのため、焼成後の透明導電膜14Cの膜厚を所定の範囲内に抑えることができるように、分散媒13に配合するときの導電性微粒子11及びAg微粒子12の粒径及び配合比率を調整するようにしても良い。
【0039】
液体材料14Aの表面張力は、上記条件の導電性微粒子11及びAg微粒子12の含有量との兼ね合いから、0.02N/m〜0.07N/mの範囲内であることが好ましい。インクジェット法にて液体材料14Aを吐出する際、表面張力が0.02N/m未満であると、インク組成物のノズル面に対する濡れ性が増大するため飛行曲りが生じやすくなり、0.07N/mを超えるとノズル先端でのメニスカスの形状が安定しないため吐出量や、吐出タイミングの制御が困難になる。表面張力を調整するため、分散媒13には、基板Pとの接触角を大きく低下させない範囲で、フッ素系、シリコーン系、ノニオン系などの表面張力調節剤を微量添加するとよい。ノニオン系表面張力調節剤は、液体の基板Pへの濡れ性を向上させ、膜のレベリング性を改良し、膜の微細な凹凸の発生などの防止に役立つものである。表面張力調節剤は、必要に応じて、アルコール、エーテル、エステル、ケトン等の有機化合物を含んでもよい。
【0040】
液体材料14Aの粘度は、1mPa・s〜50mPa・sであることが好ましい。インクジェット法を用いて液体材料14Aを液滴として吐出する際、粘度が1mPa・sより小さい場合にはノズル周辺部がインクの流出により汚染されやすく、また粘度が50mPa・sより大きい場合は、ノズル孔での目詰まり頻度が高くなり円滑な液滴の吐出が困難となるだけでなく、液滴の吐出量が減少する。
【0041】
(透明導電膜の形成方法)
次に、導電性微粒子11及びAg微粒子12を分散媒13に含む液体材料14Aを用いた透明導電膜14Cの形成方法について説明する。
【0042】
図3(a)は、本実施形態の透明導電膜の形成方法を示す概略工程図であり、図3(b)は(a)に示す各工程に対応する透明導電膜の断面工程図である。
【0043】
本実施形態では、透明導電膜の形成方法の一例として、図3(b)に示すように、基板P上に透明導電膜14Cを形成する方法について説明する。
【0044】
本実施形態の透明導電膜の形成方法は、図3(a)及び図3(b)に示すように、基板P上に、導電性微粒子11及びAg微粒子12を含む液体材料14Aを塗布する第1の工程S1と、基板P上に塗布された液体材料14Aに加熱処理を施すことで液体材料14Aを乾燥、固化させ、基板P上に液体材料14Aの固化物14Bを形成する第2の工程S2と、基板P上の固化物14Bに酸化処理を施すことで固化物14Bを透明導電膜14Cに変換する第3の工程S3とを有している。
【0045】
図3(b)に示す基板Pとしては、ガラス、石英、セラミックス等の硬質基板のほか、プラスチック等の可撓性基板も用いることができる。液体材料14Aは、上述した導電性微粒子11及びAg微粒子12を有機溶媒等の分散媒13に分散させた分散媒からなるものである。
[液体材料塗布工程]
第1の工程S1では、基板P上に液体材料14Aを塗布する。液体材料14Aの塗布方法としては、特に限定されず、種々の方法を採用することが可能であり、例えば、液滴吐出法、CAPコート法、ダイコート法、あるいは、カーテンコート法等を液体材料14Aの塗布形態に応じて用いることができる。
【0046】
基板P上の特定位置に特定平面形状の透明導電膜14Cを形成する場合には、液滴吐出法を用いることが好ましい。ここで、図4(a)は、本実施形態で用いる液滴吐出装置IJの概略構成を示す斜視図である。
【0047】
液滴吐出装置IJは、液滴吐出ヘッド301と、X軸方向駆動軸304と、Y軸方向ガイド軸305と、制御装置CONTと、ステージ307と、クリーニング機構308と、基台309と、ヒータ315とを備えている。液滴吐出装置IJは、液滴吐出ヘッド301と基板Pを支持するステージ307とを相対的に走査しつつ基板Pに対して液滴を吐出するものである。液滴吐出ヘッド301は、基板Pの進行方向に対し直角に配置されているが、液滴吐出ヘッド301の角度を調整し、基板Pの進行方向に対して交差させるようにしてもよい。このようにすれば、液滴吐出ヘッド301の角度を調整することで、ノズル間のピッチを調節することができる。また、基板Pとノズル面との距離を任意に調節できるようにしてもよい。
【0048】
図4(b)は、ピエゾ方式による液状体材料の吐出原理を説明するための液滴吐出ヘッドの概略構成図である。液滴吐出ヘッド301において、液状体材料(インク)を収容する液体室321に隣接してピエゾ素子322が設置されている。液体室321には、液状体材料を収容する材料タンクを含む液状体材料供給系323を介して液状体材料が供給される。ピエゾ素子322は駆動回路324に接続されており、この駆動回路324を介してピエゾ素子322に電圧を印加し、ピエゾ素子322を変形させて液体室321を弾性変形させる。そして、この弾性変形時の内容積の変化によってノズル325から液状体材料が吐出されるようになっている。この場合、印加電圧の値を変化させることにより、ピエゾ素子322の歪み量を制御することができる。また、印加電圧の周波数を変化させることにより、ピエゾ素子322の歪み速度を制御することができる。ピエゾ方式による液滴吐出は材料に熱を加えないため、材料の組成に影響を与えにくいという利点を有している。
【0049】
また液滴吐出法を用いる場合に、基板P上には、液体材料14Aの仕切部材としてのバンク(堰)を形成してもよい。バンクの形成はリソグラフィ法や印刷法等、任意の方法で行うことができる。バンクにより区画された領域に液体材料14Aを配置することで、基板P上に所望の平面形状の透明導電膜14Cを正確な位置及び形状にて形成することができる。
[加熱処理工程]
図3(b)に示すように、上述の液滴吐出装置IJを用いて、液体材料14Aを基板P上に吐出配置したならば、基板P上の液体材料14Aから分散媒13を除去するために、加熱処理工程である第2の工程S2を行う。第2の工程S2は、真空減圧雰囲気、不活性雰囲気、あるいは還元雰囲気のもとで行われる。すなわち第2の工程S2は酸素を排除した環境下で行われる。このような環境としては、10−5Pa〜103Pa程度の真空減圧雰囲気、N2ガス、Arガス(又は他の希ガス)等の不活性雰囲気、あるいは、H2ガス、H2ガスと不活性ガスとの混合ガス、COガス、COガスとCO2ガスとの混合ガス等の還元雰囲気を例示することができる。
【0050】
第2の工程S2の処理温度は、分散媒13の沸点(蒸気圧)、雰囲気ガスの種類や圧力、微粒子の分散性や酸化性等の熱的挙動、コーティング材の有無や量、基材の耐熱温度などを考慮して決定すればよい。例えば、有機物からなるコーティング材を除去するためには、少なくとも約300℃程度で焼成させる必要がある。また、プラスチックなどの耐熱性に劣る基板を使用する場合には、室温以上100℃以下で行うことが好ましい。加熱時間は、加熱温度に合わせて適宜設定される。
【0051】
なお、加熱温度及び加熱時間を適宜設定して、分散媒13の加熱速度を調整することにより、導電性微粒子11及びAg微粒子12をより整然と配列させることができる。また、この点に関して、導電性微粒子11及びAg微粒子12の緻密化をより促進させるために振動を与えつつ行うようにしても良い。これにより、内部に気泡が含まれることを防止することができる。
【0052】
この第2の工程S2は、液体材料14Aに含まれる分散媒13の除去と、導電性微粒子11間の融着の促進とを目的として行なわれるものである。この第2の工程S2での加熱処理により、図3(a),(b)に示すように、分散媒13が除去され、導電性微粒子11及びAg微粒子12が凝集して粒子同士が互いに接触してなる固化物14Bが基板P上に形成される。このとき、Ag微粒子12は、導電性微粒子11間の隙間を埋めるようにして入り込みながら凝集することになる。このように、2種類の異なる形状をなす粒子(導電性微粒子11及びAg微粒子12)を組み合わせて用いることにより、粒子間の隙間をなくして緻密化を効果的に高めることができる。また、導電性微粒子11の表面に凝集防止用の有機物コーティングが施されている場合には、このコーティングについても第2の工程S2において分解除去される。
【0053】
本実施形態において、導電性微粒子11は、In、Zn、Al、F及びSnから選ばれる1種類以上の元素を含む金属膜からなるものであり、比較的低温で溶融する金属を含んでいる。そのため、300℃以下の加熱温度でも導電性微粒子11の一部が溶融し、隣接する導電性微粒子11同士が融着する。
【0054】
さらに、融着しない導電性微粒子11間の隙間を埋めるようにして存在するAg微粒子12は、Agの溶融温度が300℃以上であることから初期形状のまま在残する。このとき、例えば、凝着している導電性微粒子11及びAg微粒子12同士は、加熱によって一部が溶融した導電性微粒子11がAg微粒子12に周着する。
【0055】
このように第2の工程S2において、液体材料14Aに対して真空減圧雰囲気、不活性雰囲気、あるいは還元雰囲気のもとで加熱処理を行うことで、導電性微粒子11及びAg微粒子12を凝集させて隣り合う導電性微粒子11同士の融着を進行させることができる。また、Ag微粒子12を介して導電性微粒子11同士を連結させることができるので、非常に安定した接点を粒子間に形成することができる。これにより、膜密度を上げて結晶性が良好となり、その結果、優れた低抵抗の透明導電膜14Cを形成することができる。
【0056】
第2の工程S2は、例えば、ホットプレート、恒温チャンバー等を用いた全体的な加熱処理や、フラッシュランプを用いた光照射による局所的な加熱処理によって行うことができる。フラッシュランプを用いる場合、その光照射条件は光照射エネルギーが1〜50J/cm2程度、光照射時間が1μ秒〜数m秒程度で十分であり、極めて迅速に第2の工程S2を実行することができる。
[酸化処理工程]
基板P上に固化物14Bが形成されたならば、次に、固化物14Bを酸化処理することで透明導電膜14Cに変換する第3の工程S3を実施する。第3の工程S3は、例えば、酸素含有雰囲気下で固化物14Bを選択的に、又は基板Pを含めた全体を加熱処理(例えば焼成等)を施すことで行う。酸素含有雰囲気としては、大気環境であってもよく、酸素ガスと不活性ガス(N2ガス、希ガス等)との混合ガス雰囲気であってもよい。
【0057】
このように酸素含有雰囲気下で固化物14Bを加熱することで、図3(a),(b)に示すように、導電性微粒子11が酸化されて金属酸化物となり、固化物14Bを透明導電膜14Cに変換することができる。つまり、固着していない導電性微粒子11間の隙間を埋めるようにしてAg微粒子12が介在することにより、導電性微粒子11同士の電気的な接続が確保されて透明導電膜14Cに変換される。導電性微粒子11間の接続不安定が解消されるとともに、良好な結晶性を有した金属酸化物となる。そのため、透明導電膜14Cは全体として優れた低抵抗を有する導電膜となる。また、Ag微粒子12を介して導電性微粒子11同士が接続されているため、かかる固化物14Bを酸化処理してなる透明導電膜14Cにおいては粒子間の接点が安定で、信頼性に優れた透明導電膜14Cとなる。
【0058】
また、加熱温度は、低すぎるとAg微粒子12を介した導電性微粒子11同士の固着が十分に行なわれない虞がある。一方、加熱温度を必要以上に高くしてもそれ以上の効果を見込むことはできない。また、加熱時間は、加熱温度に応じて適宜設定され、固化物14Bの酸化を十分に進行させる時間とする。
【0059】
このように本実施形態の透明導電膜14Cの形成方法によれば、以下のように、従来技術では得られない格別な効果を得ることができる。まず、従来のITO微粒子を含む液体材料を基板P上に塗布し、これを乾燥、焼成して形成した透明導電膜では、透明導電膜を構成するITO微粒子間の接点が不安定で、経時的に抵抗値が変化するという問題があった。また、従来の金属微粒子を酸化させて形成した透明導電膜では、接点は安定であるものの形成した透明導電膜の結晶性が悪く、抵抗が高くなる傾向にあった。これに対して本実施形態では、融着していない導電性微粒子11間の隙間を埋めるようにしてAg微粒子12が存在することになる。これにより、導電性微粒子11間の接続が安定して低抵抗に優れた透明導電膜14Cを形成することができる。
【0060】
また、溶融することで導電性微粒子11同士における粒子間の接触面積、あるいは、Ag微粒子12及び導電性微粒子11同士における粒子間の接触面積が増大し、より安定した接続が得られる。その結果、かかる固化物14Bを酸化処理してなる透明導電膜14Cにおいては、導電性、膜強度、基板Pに対する密着性の安定に優れ、信頼性の高い透明導電膜14Cを得ることができる。
【0061】
〔透明導電膜形成用液体材料の他の実施形態〕
まず、本実施形態に係る液体材料14Aについて説明する。図5に示すように、本実施形態に係る液体材料14Aは、透光性を有する導電性微粒子11’とAg微粒子12(金属微粒子)とを分散媒13に分散してなるものである。本実施形態において、上記第1実施形態の各部に対応する部分には同一の符号を付け、その説明を省略する。
(導電性微粒子)
本実施形態の導電性微粒子11’は、無機酸化物からなり、導電性を有するものであれば使用可能であるが、中でも特に高い透光性を有するものを使用する。例えば、In、Zn、Al、F及びSn等から選ばれる1種以上の元素を含む酸化物が挙げられる。具体的には、ITO(In−Sn−O)、ATO(Sn−Sb−O)、FTO(F−Sn−O)、AZO(Zn−Al−O)、IZO(In−Zn−O)、GZO(Ga−Zn−O)等の複合酸化物、あるいは、In2O3、ZnO、SnO2等の無機酸化物を例示することができる。導電性微粒子11’は、液相法、気相法を問わず、公知の微粒子製造方法を用いて製造することができる。具体的には、ガス中蒸発法、液相還元法、スプレー法等を挙げることができ、導電性微粒子11’の材質に合わせて適切なものを選択すればよい。
【0062】
また、上記気相法や液相法を用いて形成した微粒子に対して500℃〜800℃程度の熱処理を施すことで、微粒子を構成する酸化物の結晶性を高めた導電性微粒子11を製造することが好ましい。このように、導電性微粒子11を構成する酸化物の結晶性を高めておくことで、この導電性微粒子11を用いて透明導電膜14Cを形成した場合に、良好な結晶性を有する透明導電膜14Cとすることができる。したがって、低抵抗で信頼性に優れた透明導電膜14Cを得ることができる。
【0063】
(透明導電膜の形成方法)
次に、酸化物からなる導電性微粒子11’及びAg微粒子12を分散媒13に含む液体材料14Aを用いた透明導電膜14Cの形成方法について説明する。
【0064】
図5(a)は、本実施形態の透明導電膜の形成方法を示す概略工程図であり、図5(b)は(a)に示す各工程に対応する透明導電膜の断面工程図である。
【0065】
本実施形態では、透明導電膜の形成方法の一例として、図5(b)に示すように、基板P上に透明導電膜14Cを形成する方法について説明する。
【0066】
本実施形態の透明導電膜14Cの形成方法は、図5(a),(b)に示すように、基板P上に、導電性微粒子11’及びAg微粒子12を含む液体材料14Aを塗布する第1の工程S1と、基板P上に塗布された液体材料14Aに加熱処理を施すことで液体材料14Aを乾燥、固化させ、基板P上に液体材料14Aからなる透明導電膜14Cを形成する第2の工程S2とを有している。
[液体材料塗布工程]
第1の工程S1では、基板P上に液体材料14Aを塗布する。液体材料14Aの塗布方法としては、特に限定されず、種々の方法を採用することが可能であり、例えば、液滴吐出法、CAPコート法、ダイコート法、あるいは、カーテンコート法等を液体材料14Aの塗布形態に応じて用いることができる。
【0067】
基板P上の特定位置に特定平面形状の透明導電膜14Cを形成する場合には、図4に示す液滴吐出装置IJが用いられる。
[加熱処理工程]
図5(b)に示すように、上述の液滴吐出装置IJを用いて、液体材料14Aを基板P上に吐出配置したならば、基板P上の液体材料14Aから分散媒13を除去するために、加熱処理工程である第2の工程S2を行う。第2の工程S2は、真空減圧雰囲気、不活性雰囲気、あるいは還元雰囲気のもとで行われる。すなわち第2の工程S2は酸素を排除した環境下で行われる。このような環境としては、10−5Pa〜103Pa程度の真空減圧雰囲気、N2ガス、Arガス(又は他の希ガス)等の不活性雰囲気、あるいは、H2ガス、H2ガスと不活性ガスとの混合ガス、COガス、COガスとCO2ガスとの混合ガス等の還元雰囲気を例示することができる。
【0068】
第2の工程S2の処理温度は、分散媒13の沸点(蒸気圧)、雰囲気ガスの種類や圧力、微粒子の分散性や酸化性等の熱的挙動、コーティング材の有無や量、基材の耐熱温度などを考慮して決定すればよい。例えば、有機物からなるコーティング材を除去するためには、少なくとも約300℃程度で焼成させる必要がある。また、プラスチックなどの耐熱性に劣る基板を使用する場合には、室温以上100℃以下で行うことが好ましい。加熱時間は、加熱温度に合わせて適宜設定される。
【0069】
なお、加熱温度及び加熱時間を適宜設定して、分散媒13の加熱速度を調整することにより、導電性微粒子11’及びAg微粒子12をより整然と配列させることができる。また、この点に関して、導電性微粒子11’及びAg微粒子12の緻密化をより促進させるために振動を与えつつ行うようにしても良い。これにより、内部に気泡が含まれることを防止することができる。
【0070】
この第2の工程S2は、液体材料14Aに含まれる分散媒13の除去と、導電性微粒子11’間の融着の促進とを目的として行なわれるものである。この第2の工程S2での加熱処理により、図5(a),(b)に示すように、分散媒13が除去され、導電性微粒子11’及びAg微粒子12が凝集して粒子同士が互いに接触してなる固化物14Bが基板P上に形成される。このとき、Ag微粒子12は、導電性微粒子11’間の隙間を埋めるようにして入り込みながら凝集することになる。このように、2種類の異なる形状をなす粒子(導電性微粒子11’及びAg微粒子12)を組み合わせて用いることにより、粒子間の隙間をなくして緻密化を効果的に高めることができる。また、導電性微粒子11’の表面に凝集防止用の有機物コーティングが施されている場合には、このコーティングについても第2の工程S2において分解除去される。
【0071】
本実施形態において、導電性微粒子11’は、In、Zn、Al、F及びSnから選ばれる1種類以上の元素を含む金属膜からなるものであり、比較的低温で溶融する金属を含んでいる。そのため、300℃以下の加熱温度でも導電性微粒子11’の一部が溶融し、隣接する導電性微粒子11’同士が融着する。
【0072】
さらに、融着しない導電性微粒子11’間の隙間を埋めるようにして存在するAg微粒子12は、Agの溶融温度が300℃以上であることから初期形状のまま在残する。このとき、例えば、凝着している導電性微粒子11’及びAg微粒子12同士は、加熱によって一部が溶融した導電性微粒子11’がAg微粒子12に周着する。
【0073】
このように第2の工程S2において、液体材料14Aに対して真空減圧雰囲気、不活性雰囲気、あるいは還元雰囲気のもとで加熱処理を行うことで、導電性微粒子11’及びAg微粒子12を凝集させて隣り合う導電性微粒子11’同士の融着を進行させることができる。また、Ag微粒子12を介して導電性微粒子11’同士を連結させることができるので、非常に安定した接点を粒子間に形成することができる。これにより、膜密度を上げて結晶性が良好となり、その結果、優れた低抵抗の透明導電膜14Cを形成することができる。
【0074】
本実施形態では、酸化物からなる導電性微粒子11’を用いているので、分散媒13を蒸発させるだけで透明導電膜14Cが形成される。第1実施形態のように酸化処理を施す工程が必要ないため、作業工程数の削減に伴う生産効率の向上及びコストダウンを図ることができる。
<電気光学装置とその製造方法>
先の実施形態に係る透明導電膜14Cは、各種電気光学装置の電極や静電保護膜として好適に用いることができる。以下、図面を参照しつつ本発明に係る電気光学装置の一例である液晶表示装置の構成、及びその製造方法の一例について説明する。
【0075】
本実施形態の液晶表示装置は、基板面に対して垂直に配向させた誘電率異方性が負の液晶に対して電界を印加し、配向を制御することにより画像表示を行うVAN(Vertical Aligned Nematic)モードのアクティブマトリクス型液晶表示装置であって、パネル背面側に配設したバックライトから供給される光を用いて表示を行う透過型液晶表示装置である。
【0076】
そして、本実施形態の液晶表示装置は、基板上に設けられたカラーフィルタによるカラー表示が可能であり、R(赤)、G(緑)、B(青)の各色光を出力する3個のサブ画素で1個の画素を構成するものとなっている。
【0077】
したがって本明細書では、表示を構成する最小単位となる表示領域を「サブ画素」と称する。また、一組(R,G,B)のサブ画素から構成される表示領域を「画素」と称する。
【0078】
なお、各実施形態で参照する図面においては、各層や各部材を図面上で認識可能な程度の大きさとするため、各層や各部材毎に縮尺を異ならせて表示している。
【0079】
図5は、本実施形態の液晶表示装置を構成するマトリクス状に形成された複数のサブ画素の回路構成図である。図7は、液晶表示装置100の全体構成図である。図8は、3つのサブ画素から構成される画素におけるTFTアレイ基板の平面構成を示す図である。図9は図8のB−B'線に沿う液晶表示装置100の部分断面構成図である。
【0080】
図6に示すように、液晶表示装置100の画像表示領域は、マトリクス状に配列形成された複数のサブ画素Spを有している。各サブ画素Spは、互いに交差する方向に延びる複数の走査線18aと、複数のデータ線16とにより区画された矩形状の領域に形成されている。サブ画素Spには、画素電極19と画素電極19をスイッチング制御するためのTFT(薄膜トランジスタ)60とが形成されている。データ線16はTFT60のソースに電気的に接続されており、図示略の駆動回路から供給される画像信号S1、S2、…、Snがデータ線16を介して各サブ画素に書き込まれるようになっている。画像信号S1〜Snはこの順に線順次に供給しても構わないし、相隣接する複数のデータ線16同士に対して、グループ毎に供給するようにしてもよい。
【0081】
TFT60のゲートには走査線18aが電気的に接続されており、図示略の駆動回路から所定のタイミングで走査線18aにパルス的に供給される走査信号G1、G2、…、Gmが、この順に線順次でTFT60のゲートに印加されるようになっている。画素電極19はTFT60のドレインと電気的に接続されている。スイッチング素子であるTFT60が走査信号G1、G2、…、Gmの入力により一定期間だけオン状態とされることで、データ線16から供給される画像信号S1、S2、…、Snが所定のタイミングで画素電極19に書き込まれるようになっている。
【0082】
画素電極19を介して液晶に書き込まれた所定レベルの画像信号S1、S2、…、Snは、画素電極19と液晶を介して対向する共通電極との間で一定期間保持される。ここで、保持された画像信号がリークするのを防ぐために、画素電極19と共通電極との間に形成される液晶容量と並列に蓄積容量17が接続されている。蓄積容量17はTFT60のドレインと容量線18bとの間に設けられている。
【0083】
図7に示すように、本実施形態の液晶表示装置100は、TFTアレイ基板(第1基板)10と対向基板(第2基板)20とがシール材52によって貼り合わされ、このシール材52によって区画された領域内に液晶層50が封入された構成である。シール材52の内周に沿って設けられた周辺見切り53に囲まれた矩形状の領域が画像表示領域となっている。シール材52の外側の周辺回路領域には、データ線駆動回路101及び外部回路実装端子102がTFTアレイ基板10の一辺に沿って形成されており、この一辺に隣接する2辺に沿って走査線駆動回路104がそれぞれ形成されている。走査線駆動回路104同士は、配線105を介して互いに電気的に接続されており、データ線駆動回路101、及び走査線駆動回路104,104は、それぞれ対応する外部回路実装端子102と電気的に接続されている。また、対向基板20の角部にはTFTアレイ基板10と対向基板20との間で電気的導通をとるための基板間導通材106が配設されている。
【0084】
次に、図8及び図9を参照して液晶表示装置100の詳細な構成について説明する。
【0085】
液晶表示装置100は、図9に示すように、液晶層50を挟持して対向するTFTアレイ基板(第1基板)10と対向基板(第2基板)20とを備えている。TFTアレイ基板10の背面側(図示下面側)には、導光板91と反射板92とを具備したバックライト(照明装置)90が配設されている。
【0086】
図8の平面構成図に示すように、液晶表示装置100のサブ画素には、画素電極19と、画素スイッチング素子であるTFT60とが設けられている。画素電極19の長手方向(Y軸方向)に沿って延びる複数の走査線18aと、画素電極19の短手方向(X軸方向)に沿って延びるデータ線16とが形成されており、これらデータ線16、走査線18aは、その交差点の近傍において上記TFT60と電気的に接続されている。
【0087】
また、1つのサブ画素に対応して3原色のうち1色のカラーフィルタ(色材層)22(22R、22G、22B)が形成されており、3色のカラーフィルタ22を含む隣接して配列された3つのサブ画素が1つの画素を形成している。カラーフィルタ22は、例えば、色毎に図示上下方向に延びるストライプ状に形成され、その延在方向で各々複数のサブ画素に跨って形成されるとともに、図示左右方向にて周期的に配列されたものとなっている。
【0088】
画素電極19は、ITO(インジウム錫酸化物)等の透明導電材料を用い、本発明に係る透明導電膜の形成方法によって形成された透明導電膜である。本実施形態の液晶表示装置100は垂直配向モードの液晶表示装置であるから、配向膜のラビング処理により液晶にプレチルトを付与する方式のほか、サブ画素領域を複数の島状領域に分割し、各島状領域の中央に相当する対向基板上の位置に突起を設ける、いわゆるCPA(Continuous Pinwheel Alignment)構造や、突起やスリット構造により形成した核を基準に液晶を4方向に配向させるMVA(Multi-domain Vertical Alignment)構造等、公知の配向制御構造を採用することができる。
【0089】
図8に示す画素電極19のうち図示左下側に形成された切欠部と、走査線18a及びデータ線16との間に、TFT60が介挿されている。TFT60は、半導体層33と、半導体層33の下層側(基板本体10A側)に設けられたゲート電極32と、半導体層33の上層側に設けられたソース電極34と、ドレイン電極35とを備えている。本実施形態ではドレイン電極35をソース電極34と同等の幅の帯状の導電膜により形成しているが、かかるドレイン電極35をさらに延設し、延設されたドレイン電極と平面的に重なる位置に容量線(又は容量線と接続された容量電極)を配置することで、当該サブ画素の蓄積容量を形成することもできる。
【0090】
ゲート電極32は、走査線18aの一部をデータ線16の延在方向に分岐して形成されており、その先端側で半導体層33と図示略の絶縁膜を介して対向している。ソース電極34は、データ線16の一部を走査線18aの延在方向に分岐して形成されており、半導体層33と平面的に重なる位置で電気的に接続されている。ドレイン電極35と半導体層33も両者が平面的に重なる位置で電気的に接続されている。そして、ドレイン電極35の半導体層33と反対側の端部に設けられた画素コンタクトホールを介して、ドレイン電極35と画素電極19とが電気的に接続されている。
【0091】
このような構成のもと、TFT60は、走査線18aを介して入力されるゲート信号により所定期間だけオン状態とされることで、データ線16を介して供給される画像信号を、所定のタイミングで液晶に対して書き込めるようになっている。
【0092】
一方、図9に示す断面構造をみると、液晶表示装置100は、TFTアレイ基板10と、これに対向配置された対向基板20とを備えており、これらの基板10,20間に挟持された液晶層50は、初期配向状態が垂直配向を呈する誘電異方性が負の液晶(屈折率異方性Δnは例えば0.1)からなるものとされている。
【0093】
TFTアレイ基板10は、石英、ガラス等の透光性材料からなる基板本体10Aを基体としてなり、基板本体10Aの内面側(液晶層側)にゲート電極32(走査線18a)が形成されている。ゲート電極32を覆って絶縁薄膜(ゲート絶縁膜)36が形成されており、この絶縁薄膜36上のゲート電極32と対向する位置に、島状のアモルファスシリコン膜等からなる半導体層33が形成されている。また、半導体層33に一部乗り上げるようにして、ソース電極34とドレイン電極35とが絶縁薄膜36上に形成されている。ソース電極34と半導体層33との間、及びドレイン電極35と半導体層33との間には、半導体層33と電極とをオーミック接合するn+シリコン層33nが介挿されている。
【0094】
ソース電極34、ドレイン電極35を覆って第1層間絶縁膜37が形成され、第1層間絶縁膜37を覆って第2層間絶縁膜38が形成されている。第1層間絶縁膜37はTFT60を構成する各導電膜を保護するシリコン窒化膜等からなる絶縁膜であり、第2層間絶縁膜38はTFT60等が形成された基板本体10Aの表面を平坦化する機能を兼ね備えた透光性を有する樹脂材料等からなる絶縁膜である。第2層間絶縁膜38上に、ITO等の透明導電膜からなる画素電極19が形成されている。画素電極19の一部は、第1層間絶縁膜37と第2層間絶縁膜38とを貫通してドレイン電極35に達するコンタクトホール45内に形成されており、かかる構造により画素電極19とドレイン電極35とが電気的に接続されている。画素電極19を覆ってポリイミド等の垂直配向膜39が形成されており、液晶分子を基板面に対し垂直に配向させるようになっている。基板本体10Aの外面側には、位相差板46と偏光板44とが積層配置されている。
【0095】
対向基板20は、石英、ガラス等の透光性材料からなる基板本体20Aを基体としてなる。基板本体20Aの内面側には、カラーフィルタ22が設けられている。先に記載のように、カラーフィルタ22はサブ画素の長手方向に延びるストライプ状であり、各カラーフィルタ22の延在方向で隣接するサブ画素の境界領域には、金属膜や黒色樹脂等からなる遮光膜(ブラックマトリクス)23が配置されている。
【0096】
カラーフィルタ22上には、対向電極21が形成されている。対向電極21は平面ベタ状のITO等からなる透明導電膜であり、かかる対向電極21も本発明に係る透明導電膜の形成方法によって形成された透明導電膜である。対向電極21を覆ってポリイミド等の垂直配向膜28が形成されており、液晶分子を基板面に対し垂直に配向させるようになっている。
【0097】
基板本体20Aの外面側には、位相差板26と偏光板24とが積層配置されている。上記偏光板44,24は、特定方向に振動する直線偏光のみを透過させる機能を有する。また位相差板46,26には、可視光の波長に対して略1/4波長の位相差を持つλ/4板が採用されている。偏光板44,24の透過軸と位相差板46,26の遅相軸とは約45°の角度を成して配置され、偏光板44と位相差板46、及び偏光板24と位相差板26とは、協働してそれぞれ円偏光板として機能する。この円偏光板により、直線偏光を円偏光に変換して液晶層50に入射させる一方、液晶層50から射出される円偏光を直線偏光に変換して出力するようになっている。また、偏光板44の透過軸と偏光板24の透過軸とは直交して配置され、位相差板46の遅相軸は位相差板26の遅相軸と直交して配置されている。
【0098】
なお、偏光板と位相差板の構成としては、「偏光板+λ/4板の構成の円偏光板」が一般的だが、「偏光板+λ/2板+λ/4板の構成の円偏光板(広帯域円偏光板)」を用いることで、黒表示をより無彩色にすることもできる。
【0099】
上述したように、画素電極19及び対向電極21は、本発明に係る透明導電膜の形成方法によって形成されたものである。以下、液晶表示装置100の製造方法について簡単に説明する。
【0100】
TFTアレイ基板10を製造するには、まず、基板本体10A上に、公知の製造方法を用いてTFT60及びこれを覆う第1層間絶縁膜37及び第2層間絶縁膜38を形成し、第1層間絶縁膜37及び第2層間絶縁膜38を貫通する画素コンタクトホール45を開口する。その後、液滴吐出法を用いて、本発明に係る導電性微粒子11及びAg微粒子12を含む液体材料14Aを第2層間絶縁膜38上に選択的に配置する。このとき、第2層間絶縁膜38上の画素電極19を形成すべき領域を取り囲むようにしてバンクを形成しておけば、さらに正確に液体材料14Aの吐出配置を行うことができる。
【0101】
次いで、基板本体10Aを減圧下や還元雰囲気下に保持し、液体材料14Aを加熱することでこれを乾燥固化させて固化物14Bとし、これを酸素雰囲気下で加熱することで、固化物14Bを透明導電膜14Cに変換することで画素電極19を形成することができる。その後、画素電極19上にスピンコート法等によりポリイミド膜からなる配向膜39を形成すれば、TFTアレイ基板10を製造することができる。
【0102】
このように、画素電極19について本発明に係る透明導電膜の形成方法を適用することで、従来はスパッタ法等により形成し、フォトリソグラフィ技術を用いてパターニングしていた画素電極の形成工程を液相法で行うことができる。これにより、画素電極19の製造に高温を要せず、また原料の無駄を低減できるため、加熱による基板本体10Aや第2層間絶縁膜38の劣化を防止でき、低コストで高歩留まりにTFTアレイ基板10を製造することができる。また、液相法を用いて画素電極19を形成することから、スパッタ法等の気相法を用いて画素電極19を形成する場合のように画素コンタクトホール45内での膜の付き回りに起因するコンタクト不良の発生が生じることが無く、電気的信頼性にも優れたTFTアレイ基板10となる。
【0103】
次に、対向基板20を製造するには、基板本体20A上に遮光膜23及びカラーフィルタ22を、印刷法、液滴吐出法等、公知の製造方法を用いて形成する。次いで、カラーフィルタ22上に、スピンコート法や液滴吐出法を用いて、本発明に係る導電性微粒子11及びAg微粒子12を含む液体材料14Aを配置する。次に、基板本体20Aを減圧下や還元雰囲気下に保持し、液体材料14Aを加熱することでこれを乾燥固化させて固化物14Bとし、これを酸素雰囲気下で加熱することで、固化物14Bを透明導電膜14Cに変換することで対向電極21を形成することができる。その後、対向電極21上にスピンコート法等によりポリイミド膜からなる配向膜28を形成すれば、対向基板20を製造することができる。
【0104】
対向電極21は、先に記載のように平面ベタ状の透明導電膜であるから、カラーフィルタ22上に液体材料14Aを塗布するに際して、液滴吐出法を用いる必要はなく、スピンコート法等を用いて全体的に塗布すればよい。
【0105】
このようにカラーフィルタ22上に対向電極21を形成するに際して、本発明の透明導電膜の形成方法を適用することで、300℃以下の加熱で十分に低抵抗で、かつ信頼性に優れた対向電極21を形成することができる。したがって、加熱によりカラーフィルタ22の劣化を防止でき、低コストで高歩留まりに対向基板20を製造することができる。
【0106】
以上の工程によりTFTアレイ基板10及び対向基板20を製造したならば、シール材52を介して両者を接着し、シール材52に設けられた封止口から液晶を内部に注入した後、シール材52の封止口を封止材で封止することで、上記実施形態の液晶表示装置100を製造することができる。
【0107】
このように本実施形態の液晶表示装置100では、各サブ画素に設けられた画素電極19,及びカラーフィルタ22上に設けられた対向電極21について、本発明に係る方法により形成された透明導電膜が用いられているので、透明導電材料の結晶性に優れるとともに、粒子間の接点が安定であり、優れた信頼性と導電性とを有する透明電極を具備したものとなっている。したがって本発明によれば、消費電力が小さく、また信頼性にも優れた液晶表示装置を提供することができる。また、画素電極19の形成工程に液滴吐出法を用いるので、画素コンタクトホール45を介した画素電極19とTFT60との電気的接続が確実なものとなり、電気的信頼性をも向上させた液晶表示装置を実現できる。
<他の実施形態>
上記実施形態では、本発明に係る透明導電膜の形成方法を適用して液晶表示装置100の画素電極19及び対向電極21を形成する場合について説明したが、本発明に係る透明導電膜の形成方法は、液晶表示装置の基板外面側に設けられる静電保護膜の形成にも問題なく用いることができる。以下、図10及び図11を参照しつつ説明する。
【0108】
図10は、本実施形態の液晶表示装置200の1サブ画素の平面構成図であり、図11は、図10のD−D’線に沿う断面構成図である。本実施形態の液晶表示装置200は、いわゆる横電界方式により液晶を駆動し、画像表示を行う液晶表示装置であり、横電界方式のうちでも特にFFS(Fringe Field Switching)方式を用いたものである。本実施形態の液晶表示装置200は、先の実施形態に係る液晶表示装置100とその基本構成において共通するので、図10及び図11のうち、液晶表示装置100と共通の構成要素には同一の符号を付して詳細な説明を省略する。
【0109】
なお、本発明に係る液晶表示装置200の液晶層50は、先の実施形態と異なり、TFTアレイ基板10と対向基板20との間で液晶分子が基板面に平行に配向するものであり、正の誘電率異方性を有する液晶が用いられている。
【0110】
図10に示すように、液晶表示装置200のサブ画素には、平面視略梯子状の画素電極119と、画素電極119と平面視でほぼ重なる位置に形成された共通電極129と、画素電極119と電気的に接続されたTFT60と、TFT60と電気的に接続されるとともに画素電極119の縦横の辺端に沿って延在する走査線18a及びデータ線16と、走査線18aに沿って延在するとともに共通電極129と電気的に接続された容量線18bと、が設けられている。
【0111】
図11に示す断面構造をみると、TFTアレイ基板10の基板本体10Aの内面側に、TFT60が形成されており、TFT60のゲート電極32(走査線18a)と同層に容量線18b及び共通電極129が形成されている。共通電極129はITO等の透明導電材料を用いて形成された透明導電膜であり、かかる共通電極129の形成に際しても本発明の透明導電膜の形成方法を適用することができる。共通電極129を覆って絶縁薄膜36が形成されており、TFT60及び絶縁薄膜36を覆って、第1層間絶縁膜37と第2層間絶縁膜38とが順次積層されている。そして、第2層間絶縁膜38上に、上述した略梯子形状の画素電極119が形成されており、画素電極119を覆って配向膜39が形成されている。画素電極119の形成に本発明の透明導電膜の形成方法を適用してもよいのは勿論である。
【0112】
対向基板20を構成する基板本体20Aの内面側には、遮光膜23とカラーフィルタ22とが形成されており、カラーフィルタ22上には配向膜28が形成されている。基板本体20Aの外面側には、平面ベタ状の透明導電膜からなる静電保護膜121が形成されており、静電保護膜121上に位相差板26と偏光板24とが配設されている。
【0113】
上記構成を備えた液晶表示装置200は、TFT60を介して画素電極119に電圧を印加することで、画素電極119と共通電極129との電位差によって略基板面方向の電界を形成する。そしてこの略基板面方向の電界によって液晶を駆動し、液晶の配向状態の差異に基づき透過光を変調して画像表示を行うようになっている。
【0114】
このように横電界方式の液晶表示装置200では、液晶を駆動する電界を形成するための電極である画素電極119と共通電極129とがいずれもTFTアレイ基板10上に形成されており、対向基板20の液晶層50側には電極が形成されていない。そのため、対向基板20側から静電気が入射して基板本体20Aが帯電すると、当該電荷により形成された電界が液晶層50に作用し、液晶の配向乱れを生じて表示不良を起こすおそれがある。そこで横電界方式の液晶表示装置では、対向基板20の外面側に静電保護膜として透明導電膜を形成し、入射する静電気を吸収するようになっている。
【0115】
本発明に係る透明導電膜の形成方法は、上述した静電保護膜121の形成工程に適用することができ、本発明に係る透明導電膜の形成方法を用いることで、比較的低温で導電性に優れた静電保護膜121を形成することができる。従って本実施形態によれば、加熱によりカラーフィルタ22等に劣化を生じさせることなく静電保護膜121を具備した液晶表示装置200を製造することができる。
<電子機器>
次に、本発明の電子機器の具体例について説明する。
【0116】
図12(a)は、携帯電話の一例を示した斜視図である。符号1000は携帯電話本体を示し、1001は上記実施形態の液晶表示装置100を備えた表示部を示している。図12(b)は、腕時計型電子機器の一例を示した斜視図である。符号1100は時計本体を示し、1101は上記実施形態の液晶表示装置100を備えた表示部を示している。図12(c)は、ワープロ、パソコンなどの携帯型情報処理装置の一例を示した斜視図である。符号1200は情報処理装置、1202はキーボードなどの入力部、1204は情報処理本体、1206は上記実施形態の液晶表示装置100を備えた表示部を示している。
【0117】
図12(a)〜(c)に示す電子機器は、上記実施形態の液晶表示装置100を備えたものであるので、信頼性の高い導電膜が電極部材等に用いられたことで、信頼性に優れる電子機器となっている。また、テレビやモニター等の大型液晶パネルにおいても上記実施形態の製造方法を適用することができる。
【0118】
なお、本実施形態の電子機器は液晶表示装置100を備えるものとしたが、有機エレクトロルミネッセンス表示装置、プラズマ型表示装置等、他の電気光学装置を備えた電子機器とすることもできる。
【図面の簡単な説明】
【0119】
【図1】一実施形態に係る導電性微粒子及びAg微粒子を含む液体材料の構成図。
【図2】一実施形態に係る液体材料におけるAg微粒子の添加率に対する抵抗値及び透過率の関係を示すグラフ。
【図3】一実施形態に係る液体材料を用いた透明導電膜の形成方法を示す工程図。
【図4】液滴吐出装置及び吐出ヘッドを示す図。
【図5】他の実施形態に係る液体材料を用いた透明導電膜の形成方法を示す工程図。
【図6】一実施形態に係る液晶表示装置の回路構成図。
【図7】一実施形態に係る液晶表示装置の全体構成図。
【図8】一実施形態に係る液晶表示装置の画素構成図。
【図9】他の実施形態に係る液晶表示装置の画素構成図。
【図10】他の実施形態に係る液晶表示装置の断面構成図。
【図11】一実施形態に係る液晶表示装置の回路構成図。
【図12】電子機器を例示する斜視図。
【符号の説明】
【0120】
11,11’…導電性微粒子、12…Ag微粒子、13…分散媒、14A…液体材料(透明導電膜形成用液体材料)、14B…固化物、14C…透明導電膜、19,119…画素電極、21…対向電極、121…静電保護膜、100,200…液晶表示装置(電気光学装置)
【技術分野】
【0001】
本発明は、透明導電膜形成用液体材料、透明導電膜の形成方法、及び電気光学装置の製造方法に関するものである。
【背景技術】
【0002】
液晶装置等の表示デバイスの電極として、ITO(インジウム錫酸化物)等の透明導電材料を用いた透明導電膜が用いられている。このような透明導電膜は、スパッタ法を用いて形成するのが一般的であるが、プロセス温度を低減できる液相法を用いて透明導電膜を形成することも検討されている(例えば特許文献1〜3参照)。
【特許文献1】特開2005−166350号公報
【特許文献2】特開2005−183054号公報
【特許文献3】特開2006−028431号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0003】
上記各特許文献に記載の液体材料を所望の平面パターンにて基板上に塗布した後、熱処理を施すことで基板上に所望形状の透明導電膜を形成することができる。しかしながら、これらの液体材料を用いた導電膜形成において安定した特性を得るには、500℃以上の熱処理を行うことが必要であり、熱処理温度が350℃以下であると透明導電膜の抵抗が経時的に変化し、デバイスの信頼性確保が難しくなるという問題がある。例えば、特許文献1に記載のITO微粒子を用いる方法では、得られた透明導電膜におけるITO微粒子間の接点が不安定であるために抵抗上昇が生じやすい。また特許文献2に記載の金属粒子を酸化させて透明導電膜を形成する方法では、接点は安定しているものの、得られる酸化物導電体の結晶性が悪く、活性種の活性度が低いために十分なキャリア濃度が得られない。さらに特許文献3記載の熱分解材料を用いる方法では、熱分解材料の分解が完全に進まないことによる炭素残渣の発生や導電膜の結晶性低下がシート抵抗上昇の原因となりうる。
【0004】
本発明は、上記従来技術の問題点に鑑み成されたものであって、低温プロセスでも安定した電気特性を有する透明導電膜を形成することができる導電性微粒子及び液体材料を提供することを目的としている。また本発明は、安定な電気特性を有する透明導電膜を形成する方法、並びに信頼性に優れた電気光学装置を製造する方法を提供することを目的としている。
【課題を解決するための手段】
【0005】
本発明の透明導電膜形成用液体材料は、酸化物に変換されたときに透光性を発現する導電性微粒子と、Agからなる金属微粒子と、を分散媒に含んでなることを特徴とする。
【0006】
これによれば、分散媒中に、酸化物に変換されたときに透光性を発現する導電性微粒子とAgからなる金属微粒子とを有しているので、加熱により分散媒を除去することで凝集した粒子同士において、導電性微粒子間の隙間を埋めるようにして金属微粒子が存在する。その結果、加熱により融着していない導電性微粒子同士の導通を金属微粒子を介して得ることができる。また、Agからなる金属微粒子を分散媒中に含むことによって、導電性微粒子の移動度劣化を抑えることができる。したがって、本発明の透明導電膜形成用液体材料によれば、低抵抗を維持することができて信頼性に優れた透明導電膜を形成することができる。
【0007】
導電性微粒子が、In、Zn、Al、F及びSnから選ばれる1種以上の元素を含むことも好ましい。
【0008】
すなわち、酸化物に変換ときに透光性を発現する材料からなることが好ましい。
【0009】
透光性を有する酸化物からなる導電性微粒子と、Agからなる金属微粒子と、を分散媒に含んでなることが好ましい。
【0010】
これによれば、分散媒中に、透光性を有する酸化物からなる導電性微粒子とAgからなる金属微粒子とを有しているので、加熱により分散媒を除去することで凝集した粒子同士において、導電性微粒子間の隙間を埋めるようにして金属微粒子が存在する。その結果、加熱により融着していない導電性微粒子同士の導通を金属微粒子を介して得ることができる。また、Agからなる金属微粒子を分散媒中に含むことによって、導電性微粒子の移動度劣化を抑えることができる。したがって、本発明の透明導電膜形成用液体材料によれば、低抵抗を維持することができて信頼性に優れた透明導電膜を形成することができる。
【0011】
本発明の透明導電膜形成用液体材料では、導電性微粒子が、In、Zn、Al、F及びSnから選ばれる1種以上の元素を含む酸化物からなることが好ましい。
【0012】
すなわち、導電性微粒子が透明導電材料を構成する酸化物からなることが好ましい。
【0013】
本発明の透明導電膜形成用液体材料では、金属微粒子の含有量が、導電性微粒子に対して0.01〜10wt%となるように混合されていることが好ましい。
【0014】
これによれば、透過率に影響を与えることなく低抵抗で導通性に優れた透明導電膜を形成することができる。なお、数値限定の根拠については後に示す実施形態にて述べるものとする。
【0015】
本発明の透明導電膜形成用液体材料では、金属微粒子の含有量が、導電性微粒子に対して0.5〜2wt%となるように混合されていることが好ましい。
【0016】
これによれば、透過率に影響を与えることなく、低抵抗でより導通性に優れた透明導電膜を形成することができる。この数値限定の根拠についても後に示す実施形態にて述べるものとする。
【0017】
本発明の透明導電膜の形成方法は、酸化物に変換されたときに透光性を発現する導電性微粒子と、Agからなる金属微粒子とを分散媒に含んでなる透明導電膜形成用液体材料を基板上に配置する工程と、基板上の透明導電膜形成用液体材料を減圧又は還元雰囲気中で加熱処理して透明導電膜形成用液体材料の固化物を形成する工程と、固化物を酸素含有雰囲気中で加熱処理して該固化物を酸化させる工程と、を有することを特徴とする。
【0018】
この方法によれば、加熱処理をすることによって導電性微粒子が酸化されて金属酸化物となり、固化物を透明導電膜に変換することができる。このとき、導電性微粒子同士の隙間を埋めるようにして金属微粒子が存在することから、金属微粒子を介して隣り合う導電性微粒子間の安定した導通を得ることができる。また、透明導電膜の結晶性が良好となるので、膜強度及び密着性の向上に伴って信頼性に優れたものとなる。
【0019】
透光性を有する酸化膜からなる導電性微粒子と、Agからなる金属微粒子とを分散媒に含んでなる透明導電膜形成用液体材料を基板上に配置する工程と、基板上の透明導電膜形成用液体材料を減圧又は還元雰囲気中で加熱処理する工程と、を有することを特徴とする。
【0020】
この方法によれば、酸化物からなる導通性微粒子を含む透明導電膜形成用液体材料を用いるため、分散媒を蒸発させるだけで固化物を透明導電膜に変換することができる。このとき、導電性微粒子同士の隙間を埋めるようにして金属微粒子が存在することから、金属微粒子を介して隣り合う導電性微粒子間の安定した導通を得ることができる。また、透明導電膜の結晶性が良好となるので、膜強度及び密着性の向上に伴って信頼性に優れたものとなる。
【0021】
本発明の透明導電膜の形成方法では、複数の加熱処理における加熱温度がいずれも300℃以下であることが好ましい。
【0022】
この方法によれば、耐熱性に劣る樹脂製の基板上にも良好な導電性と信頼性とを具備した止め移動伝膜を形成することができる。本発明の形成方法は、フレキシブルデバイスの製造に好適に用いることができる。
【0023】
本発明の電気光学装置の製造方法は、基板上に透明導電膜を備えた電気光学装置の製造方法であって、酸化物に変換されたときに透光性を発現する導電性微粒子と、Agからなる金属微粒子とを分散媒に含んでなる透明導電膜形成用液体材料を基板上に配置する工程と、基板上の透明導電膜形成用液体材料を減圧又は還元雰囲気中で加熱処理して透明導電膜形成用液体材料の固化物を形成する工程と、固化物を酸素含有雰囲気中で加熱処理して該固化物を酸化させて透明導電膜を形成する工程と、を有することを特徴とする。
【0024】
本発明によれば、優れた導電性と信頼性とを具備した透明導電膜を有する電気光学装置を容易に製造することができ、表示特性及び信頼性に優れた電気光学装置を提供することができる。
【0025】
本発明の電気光学装置の製造方法は、基板上に透明導電膜を備えた電気光学装置の製造方法であって、透光性を有する酸化膜からなる導電性微粒子と、Agからなる金属微粒子とを分散媒に含んでなる透明導電膜形成用液体材料を基板上に配置する工程と、基板上の透明導電膜形成用液体材料を減圧又は還元雰囲気中で加熱処理して透明導電膜を形成する工程と、を有することを特徴とする。
【0026】
本発明によれば、酸化処理を施す必要がないため、作業工程数を削減でき、短時間で効率良く製造することができる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0027】
<透明導電膜形成用液体材料>
以下、本発明の一実施形態について図面を参照して説明する。図1は、本実施形態に係る導電性微粒子及びAg微粒子を含んだ透明導電膜形成用液体材料(以下、単に液体材料と称する。)を基板上に塗布した状態を示す概略断面図である。
【0028】
まず、本実施形態に係る液体材料14Aについて説明する。液体材料14Aは、透明導電膜の形成に用いられるものである。図1に示すように、本実施形態に係る液体材料14Aは、酸化処理を施すことで透光性を有する酸化膜からなる導電性微粒子11とAg微粒子12(金属微粒子)とを分散媒13中に分散してなるものである。
(導電性微粒子)
導電性微粒子11は、導電性を有するものであれば使用可能であるが、中でも特に酸化処理を施すことで高い透光性を有するものを使用する。本実施形態では、例えば、In、Zn、Al、F及びSn等から選ばれる1種以上の元素を含む合金が挙げられる。具体的には、In−Sn、Sn−Sb、F−Sn、Zn−Al、In−Zn、Ga−Zn等の合金を例示することができる。導電性微粒子11は、液相法、気相法を問わず、公知の微粒子製造方法を用いて製造することができる。具体的には、ガス中蒸発法、液相還元法、スプレー法等を挙げることができ、導電性微粒子11の材質に合わせて適切なものを選択すればよい。
【0029】
導電性微粒子11の粒径は、1nm〜100nm程度であることが好ましく、1nm〜40nmの範囲であることがより好ましい。粒径0.1μm以下のものを用いることで、かかる導電性微粒子11を含む液体材料14Aを液滴吐出ヘッドから吐出する際に目詰まりが生じるのを防止できる。また1nm〜40nmの範囲とすれば、導電性微粒子11を用いて形成した透明導電膜14Cについて良好な導電性と透明性を得ることができる。ここで、導電性微粒子11の平均粒径が大きすぎると、得られる透明導電膜14Cにおいて、導電性微粒子11同士の空隙(隙間)が大きくなり、その結果、十分な導通性を得られない虞がある。
(Ag微粒子)
Ag微粒子12は、Agを主材料としていることから高い導電性を有するものである。その形状は、球状、棒状あるいは紐状のいずれかを呈している。球状のAg微粒子12は、その粒径が1nm〜40nm程度であることが好ましい。棒状あるいは紐状をなすAg微粒子12は、その短手方向長さが1nm〜40nmの範囲内であることが好ましい。また、Ag微粒子12は、導電性微粒子11よりも小さい粒径(形状)であることがより好ましい。導電性微粒子11よりも小さい粒径をなすAg微粒子12であれば、該Ag微粒子12が導電性微粒子11間の隙間を埋め込むようにして存在することができる。また、棒状をなすAg微粒子12や紐状をなすAg微粒子は、ある程度の長さを有しているほうがよく、これにより、複数の導電性微粒子11に接触することができる。このようなことから、Ag微粒子12を介して導電性微粒子11同士の導通性を確実且つ効果的に向上させることができる。この点に関しては、例えば、球状のAg微粒子12を数個から数十個、鎖状に凝集させて連鎖状にしたものを用いることによっても可能となる。
【0030】
ここで、Ag微粒子12の粒径が小さすぎると、粒子同士で凝集し易くなり分散性が低下する虞がある。一方、Ag微粒子12の粒径が大きすぎると、液滴吐出ヘッドから吐出する際に目詰まりを生じる虞がある。そのため、これらのことを十分考慮した上で粒径を設定する。
【0031】
なお、Agからなる微粒子は、入手が容易であることから低コスト化を図ることもできる。
【0032】
なお、導電性微粒子11及びAg微粒子12の表面には、分散媒13に分散させて液体材料14Aを調製した際の各微粒子の凝集を防止する目的で有機物のコーティングを施しておいてもよい。
(分散媒)
分散媒13としては、導電性微粒子11を良好に分散させ、凝集を起こさないものであれば特に限定されない。例えば、水の他に、メタノール、エタノール、プロパノール、ブタノールなどのアルコール類、n−ヘプタン、n−オクタン、デカン、ドデカン、テトラデカン、トルエン、キシレン、シメン、デュレン、インデン、ジペンテン、テトラヒドロナフタレン、デカヒドロナフタレン、シクロヘキシルベンゼンなどの炭化水素系化合物、またエチレングリコールジメチルエーテル、エチレングリコールジエチルエーテル、エチレングリコールメチルエチルエーテル、ジエチレングリコールジメチルエーテル、ジエチレングリコールジエチルエーテル、ジエチレングリコールメチルエチルエーテル、1,2−ジメトキシエタン、ビス(2−メトキシエチル)エーテル、p−ジオキサンなどのエーテル系化合物、さらにプロピレンカーボネート、γ−ブチロラクトン、N−メチル−2−ピロリドン、ジメチルホルムアミド、ジメチルスルホキシド、シクロヘキサノンなどの極性化合物を例示できる。これらのうち、導電性微粒子11及びAg微粒子12の分散性と分散媒13の安定性、また液滴吐出法(インクジェット法)への適用の容易さの点で、水、アルコール類、炭化水素系化合物、エーテル系化合物が好ましく、より好ましい分散媒13としては、水、炭化水素系化合物を挙げることができる。
【0033】
本実施形態の液体材料14Aは、透明導電膜形成用の液体材料であって、上記した導電性微粒子11及びAg微粒子12を分散媒13に分散させている。
【0034】
図2は、液体材料中のAg添加率に対するシート抵抗及び透過率の関係を示す図であって、図2の左縦軸はシート抵抗[Ω/□]、右縦軸は透過率[%]、横軸はAg添加率[wt%]である。
【0035】
図2に示すように、液体材料14Aから得られる透明導電膜14Cのシート抵抗Rは、Ag微粒子12の添加量に比例して低くなるが、それに伴い透過率Tも低下する関係となっており、Ag微粒子12の添加量が多くなるほど不透明の度合が増加することが分かる。そのため、導電性と透明性との兼ね合いからAg微粒子12の含有量を適宜設定することが望ましい。
【0036】
本実施形態において、分散媒13中に含まれるAg微粒子12の含有量は、導電性微粒子11に対して、0.01〜10wt%の比率で添加されていることが好ましい。本発明者は、導電性微粒子11に対して0.01wt%の比率で添加したときからシート抵抗Rの低下に効果が出はじめることを知った。しかしながら、導電性微粒子11に対するAgの添加率の比率が10wt%を超えると透過率に影響が出てしまうことが分かっている。そのため、本発明者は、得られる透明導電膜14Cが有用とされる最低限の透過率を80%として導電性微粒子11に対するAgの添加率の比率を10wt%までとした。
【0037】
図2によれば、特に、Ag含有率が0.5〜2wt%の範囲内からなる液体材料14Aを用いることがより好ましく、この場合、十分な透過率Tで低抵抗を有する透明導電膜14Cを得ることができる。
【0038】
分散媒13中に含まれる導電性微粒子11は、所望とする透明導電膜14Cの機能を果たす含有量となっている。また、導電性微粒子11及びAg微粒子12の添加量(混合量)が少なすぎると、形成される透明導電膜14Cが薄い膜厚となって断線しやすくなったり、導電膜としての十分な導電性を得ることができない虞がある。一方、導電性微粒子11及びAg微粒子12の添加量(混合量)が多すぎると、分散媒13中における粒子の分散性が低下して基板P上への塗布が困難になり、透明導電膜14Cの膜厚が厚くなる虞がある。そのため、焼成後の透明導電膜14Cの膜厚を所定の範囲内に抑えることができるように、分散媒13に配合するときの導電性微粒子11及びAg微粒子12の粒径及び配合比率を調整するようにしても良い。
【0039】
液体材料14Aの表面張力は、上記条件の導電性微粒子11及びAg微粒子12の含有量との兼ね合いから、0.02N/m〜0.07N/mの範囲内であることが好ましい。インクジェット法にて液体材料14Aを吐出する際、表面張力が0.02N/m未満であると、インク組成物のノズル面に対する濡れ性が増大するため飛行曲りが生じやすくなり、0.07N/mを超えるとノズル先端でのメニスカスの形状が安定しないため吐出量や、吐出タイミングの制御が困難になる。表面張力を調整するため、分散媒13には、基板Pとの接触角を大きく低下させない範囲で、フッ素系、シリコーン系、ノニオン系などの表面張力調節剤を微量添加するとよい。ノニオン系表面張力調節剤は、液体の基板Pへの濡れ性を向上させ、膜のレベリング性を改良し、膜の微細な凹凸の発生などの防止に役立つものである。表面張力調節剤は、必要に応じて、アルコール、エーテル、エステル、ケトン等の有機化合物を含んでもよい。
【0040】
液体材料14Aの粘度は、1mPa・s〜50mPa・sであることが好ましい。インクジェット法を用いて液体材料14Aを液滴として吐出する際、粘度が1mPa・sより小さい場合にはノズル周辺部がインクの流出により汚染されやすく、また粘度が50mPa・sより大きい場合は、ノズル孔での目詰まり頻度が高くなり円滑な液滴の吐出が困難となるだけでなく、液滴の吐出量が減少する。
【0041】
(透明導電膜の形成方法)
次に、導電性微粒子11及びAg微粒子12を分散媒13に含む液体材料14Aを用いた透明導電膜14Cの形成方法について説明する。
【0042】
図3(a)は、本実施形態の透明導電膜の形成方法を示す概略工程図であり、図3(b)は(a)に示す各工程に対応する透明導電膜の断面工程図である。
【0043】
本実施形態では、透明導電膜の形成方法の一例として、図3(b)に示すように、基板P上に透明導電膜14Cを形成する方法について説明する。
【0044】
本実施形態の透明導電膜の形成方法は、図3(a)及び図3(b)に示すように、基板P上に、導電性微粒子11及びAg微粒子12を含む液体材料14Aを塗布する第1の工程S1と、基板P上に塗布された液体材料14Aに加熱処理を施すことで液体材料14Aを乾燥、固化させ、基板P上に液体材料14Aの固化物14Bを形成する第2の工程S2と、基板P上の固化物14Bに酸化処理を施すことで固化物14Bを透明導電膜14Cに変換する第3の工程S3とを有している。
【0045】
図3(b)に示す基板Pとしては、ガラス、石英、セラミックス等の硬質基板のほか、プラスチック等の可撓性基板も用いることができる。液体材料14Aは、上述した導電性微粒子11及びAg微粒子12を有機溶媒等の分散媒13に分散させた分散媒からなるものである。
[液体材料塗布工程]
第1の工程S1では、基板P上に液体材料14Aを塗布する。液体材料14Aの塗布方法としては、特に限定されず、種々の方法を採用することが可能であり、例えば、液滴吐出法、CAPコート法、ダイコート法、あるいは、カーテンコート法等を液体材料14Aの塗布形態に応じて用いることができる。
【0046】
基板P上の特定位置に特定平面形状の透明導電膜14Cを形成する場合には、液滴吐出法を用いることが好ましい。ここで、図4(a)は、本実施形態で用いる液滴吐出装置IJの概略構成を示す斜視図である。
【0047】
液滴吐出装置IJは、液滴吐出ヘッド301と、X軸方向駆動軸304と、Y軸方向ガイド軸305と、制御装置CONTと、ステージ307と、クリーニング機構308と、基台309と、ヒータ315とを備えている。液滴吐出装置IJは、液滴吐出ヘッド301と基板Pを支持するステージ307とを相対的に走査しつつ基板Pに対して液滴を吐出するものである。液滴吐出ヘッド301は、基板Pの進行方向に対し直角に配置されているが、液滴吐出ヘッド301の角度を調整し、基板Pの進行方向に対して交差させるようにしてもよい。このようにすれば、液滴吐出ヘッド301の角度を調整することで、ノズル間のピッチを調節することができる。また、基板Pとノズル面との距離を任意に調節できるようにしてもよい。
【0048】
図4(b)は、ピエゾ方式による液状体材料の吐出原理を説明するための液滴吐出ヘッドの概略構成図である。液滴吐出ヘッド301において、液状体材料(インク)を収容する液体室321に隣接してピエゾ素子322が設置されている。液体室321には、液状体材料を収容する材料タンクを含む液状体材料供給系323を介して液状体材料が供給される。ピエゾ素子322は駆動回路324に接続されており、この駆動回路324を介してピエゾ素子322に電圧を印加し、ピエゾ素子322を変形させて液体室321を弾性変形させる。そして、この弾性変形時の内容積の変化によってノズル325から液状体材料が吐出されるようになっている。この場合、印加電圧の値を変化させることにより、ピエゾ素子322の歪み量を制御することができる。また、印加電圧の周波数を変化させることにより、ピエゾ素子322の歪み速度を制御することができる。ピエゾ方式による液滴吐出は材料に熱を加えないため、材料の組成に影響を与えにくいという利点を有している。
【0049】
また液滴吐出法を用いる場合に、基板P上には、液体材料14Aの仕切部材としてのバンク(堰)を形成してもよい。バンクの形成はリソグラフィ法や印刷法等、任意の方法で行うことができる。バンクにより区画された領域に液体材料14Aを配置することで、基板P上に所望の平面形状の透明導電膜14Cを正確な位置及び形状にて形成することができる。
[加熱処理工程]
図3(b)に示すように、上述の液滴吐出装置IJを用いて、液体材料14Aを基板P上に吐出配置したならば、基板P上の液体材料14Aから分散媒13を除去するために、加熱処理工程である第2の工程S2を行う。第2の工程S2は、真空減圧雰囲気、不活性雰囲気、あるいは還元雰囲気のもとで行われる。すなわち第2の工程S2は酸素を排除した環境下で行われる。このような環境としては、10−5Pa〜103Pa程度の真空減圧雰囲気、N2ガス、Arガス(又は他の希ガス)等の不活性雰囲気、あるいは、H2ガス、H2ガスと不活性ガスとの混合ガス、COガス、COガスとCO2ガスとの混合ガス等の還元雰囲気を例示することができる。
【0050】
第2の工程S2の処理温度は、分散媒13の沸点(蒸気圧)、雰囲気ガスの種類や圧力、微粒子の分散性や酸化性等の熱的挙動、コーティング材の有無や量、基材の耐熱温度などを考慮して決定すればよい。例えば、有機物からなるコーティング材を除去するためには、少なくとも約300℃程度で焼成させる必要がある。また、プラスチックなどの耐熱性に劣る基板を使用する場合には、室温以上100℃以下で行うことが好ましい。加熱時間は、加熱温度に合わせて適宜設定される。
【0051】
なお、加熱温度及び加熱時間を適宜設定して、分散媒13の加熱速度を調整することにより、導電性微粒子11及びAg微粒子12をより整然と配列させることができる。また、この点に関して、導電性微粒子11及びAg微粒子12の緻密化をより促進させるために振動を与えつつ行うようにしても良い。これにより、内部に気泡が含まれることを防止することができる。
【0052】
この第2の工程S2は、液体材料14Aに含まれる分散媒13の除去と、導電性微粒子11間の融着の促進とを目的として行なわれるものである。この第2の工程S2での加熱処理により、図3(a),(b)に示すように、分散媒13が除去され、導電性微粒子11及びAg微粒子12が凝集して粒子同士が互いに接触してなる固化物14Bが基板P上に形成される。このとき、Ag微粒子12は、導電性微粒子11間の隙間を埋めるようにして入り込みながら凝集することになる。このように、2種類の異なる形状をなす粒子(導電性微粒子11及びAg微粒子12)を組み合わせて用いることにより、粒子間の隙間をなくして緻密化を効果的に高めることができる。また、導電性微粒子11の表面に凝集防止用の有機物コーティングが施されている場合には、このコーティングについても第2の工程S2において分解除去される。
【0053】
本実施形態において、導電性微粒子11は、In、Zn、Al、F及びSnから選ばれる1種類以上の元素を含む金属膜からなるものであり、比較的低温で溶融する金属を含んでいる。そのため、300℃以下の加熱温度でも導電性微粒子11の一部が溶融し、隣接する導電性微粒子11同士が融着する。
【0054】
さらに、融着しない導電性微粒子11間の隙間を埋めるようにして存在するAg微粒子12は、Agの溶融温度が300℃以上であることから初期形状のまま在残する。このとき、例えば、凝着している導電性微粒子11及びAg微粒子12同士は、加熱によって一部が溶融した導電性微粒子11がAg微粒子12に周着する。
【0055】
このように第2の工程S2において、液体材料14Aに対して真空減圧雰囲気、不活性雰囲気、あるいは還元雰囲気のもとで加熱処理を行うことで、導電性微粒子11及びAg微粒子12を凝集させて隣り合う導電性微粒子11同士の融着を進行させることができる。また、Ag微粒子12を介して導電性微粒子11同士を連結させることができるので、非常に安定した接点を粒子間に形成することができる。これにより、膜密度を上げて結晶性が良好となり、その結果、優れた低抵抗の透明導電膜14Cを形成することができる。
【0056】
第2の工程S2は、例えば、ホットプレート、恒温チャンバー等を用いた全体的な加熱処理や、フラッシュランプを用いた光照射による局所的な加熱処理によって行うことができる。フラッシュランプを用いる場合、その光照射条件は光照射エネルギーが1〜50J/cm2程度、光照射時間が1μ秒〜数m秒程度で十分であり、極めて迅速に第2の工程S2を実行することができる。
[酸化処理工程]
基板P上に固化物14Bが形成されたならば、次に、固化物14Bを酸化処理することで透明導電膜14Cに変換する第3の工程S3を実施する。第3の工程S3は、例えば、酸素含有雰囲気下で固化物14Bを選択的に、又は基板Pを含めた全体を加熱処理(例えば焼成等)を施すことで行う。酸素含有雰囲気としては、大気環境であってもよく、酸素ガスと不活性ガス(N2ガス、希ガス等)との混合ガス雰囲気であってもよい。
【0057】
このように酸素含有雰囲気下で固化物14Bを加熱することで、図3(a),(b)に示すように、導電性微粒子11が酸化されて金属酸化物となり、固化物14Bを透明導電膜14Cに変換することができる。つまり、固着していない導電性微粒子11間の隙間を埋めるようにしてAg微粒子12が介在することにより、導電性微粒子11同士の電気的な接続が確保されて透明導電膜14Cに変換される。導電性微粒子11間の接続不安定が解消されるとともに、良好な結晶性を有した金属酸化物となる。そのため、透明導電膜14Cは全体として優れた低抵抗を有する導電膜となる。また、Ag微粒子12を介して導電性微粒子11同士が接続されているため、かかる固化物14Bを酸化処理してなる透明導電膜14Cにおいては粒子間の接点が安定で、信頼性に優れた透明導電膜14Cとなる。
【0058】
また、加熱温度は、低すぎるとAg微粒子12を介した導電性微粒子11同士の固着が十分に行なわれない虞がある。一方、加熱温度を必要以上に高くしてもそれ以上の効果を見込むことはできない。また、加熱時間は、加熱温度に応じて適宜設定され、固化物14Bの酸化を十分に進行させる時間とする。
【0059】
このように本実施形態の透明導電膜14Cの形成方法によれば、以下のように、従来技術では得られない格別な効果を得ることができる。まず、従来のITO微粒子を含む液体材料を基板P上に塗布し、これを乾燥、焼成して形成した透明導電膜では、透明導電膜を構成するITO微粒子間の接点が不安定で、経時的に抵抗値が変化するという問題があった。また、従来の金属微粒子を酸化させて形成した透明導電膜では、接点は安定であるものの形成した透明導電膜の結晶性が悪く、抵抗が高くなる傾向にあった。これに対して本実施形態では、融着していない導電性微粒子11間の隙間を埋めるようにしてAg微粒子12が存在することになる。これにより、導電性微粒子11間の接続が安定して低抵抗に優れた透明導電膜14Cを形成することができる。
【0060】
また、溶融することで導電性微粒子11同士における粒子間の接触面積、あるいは、Ag微粒子12及び導電性微粒子11同士における粒子間の接触面積が増大し、より安定した接続が得られる。その結果、かかる固化物14Bを酸化処理してなる透明導電膜14Cにおいては、導電性、膜強度、基板Pに対する密着性の安定に優れ、信頼性の高い透明導電膜14Cを得ることができる。
【0061】
〔透明導電膜形成用液体材料の他の実施形態〕
まず、本実施形態に係る液体材料14Aについて説明する。図5に示すように、本実施形態に係る液体材料14Aは、透光性を有する導電性微粒子11’とAg微粒子12(金属微粒子)とを分散媒13に分散してなるものである。本実施形態において、上記第1実施形態の各部に対応する部分には同一の符号を付け、その説明を省略する。
(導電性微粒子)
本実施形態の導電性微粒子11’は、無機酸化物からなり、導電性を有するものであれば使用可能であるが、中でも特に高い透光性を有するものを使用する。例えば、In、Zn、Al、F及びSn等から選ばれる1種以上の元素を含む酸化物が挙げられる。具体的には、ITO(In−Sn−O)、ATO(Sn−Sb−O)、FTO(F−Sn−O)、AZO(Zn−Al−O)、IZO(In−Zn−O)、GZO(Ga−Zn−O)等の複合酸化物、あるいは、In2O3、ZnO、SnO2等の無機酸化物を例示することができる。導電性微粒子11’は、液相法、気相法を問わず、公知の微粒子製造方法を用いて製造することができる。具体的には、ガス中蒸発法、液相還元法、スプレー法等を挙げることができ、導電性微粒子11’の材質に合わせて適切なものを選択すればよい。
【0062】
また、上記気相法や液相法を用いて形成した微粒子に対して500℃〜800℃程度の熱処理を施すことで、微粒子を構成する酸化物の結晶性を高めた導電性微粒子11を製造することが好ましい。このように、導電性微粒子11を構成する酸化物の結晶性を高めておくことで、この導電性微粒子11を用いて透明導電膜14Cを形成した場合に、良好な結晶性を有する透明導電膜14Cとすることができる。したがって、低抵抗で信頼性に優れた透明導電膜14Cを得ることができる。
【0063】
(透明導電膜の形成方法)
次に、酸化物からなる導電性微粒子11’及びAg微粒子12を分散媒13に含む液体材料14Aを用いた透明導電膜14Cの形成方法について説明する。
【0064】
図5(a)は、本実施形態の透明導電膜の形成方法を示す概略工程図であり、図5(b)は(a)に示す各工程に対応する透明導電膜の断面工程図である。
【0065】
本実施形態では、透明導電膜の形成方法の一例として、図5(b)に示すように、基板P上に透明導電膜14Cを形成する方法について説明する。
【0066】
本実施形態の透明導電膜14Cの形成方法は、図5(a),(b)に示すように、基板P上に、導電性微粒子11’及びAg微粒子12を含む液体材料14Aを塗布する第1の工程S1と、基板P上に塗布された液体材料14Aに加熱処理を施すことで液体材料14Aを乾燥、固化させ、基板P上に液体材料14Aからなる透明導電膜14Cを形成する第2の工程S2とを有している。
[液体材料塗布工程]
第1の工程S1では、基板P上に液体材料14Aを塗布する。液体材料14Aの塗布方法としては、特に限定されず、種々の方法を採用することが可能であり、例えば、液滴吐出法、CAPコート法、ダイコート法、あるいは、カーテンコート法等を液体材料14Aの塗布形態に応じて用いることができる。
【0067】
基板P上の特定位置に特定平面形状の透明導電膜14Cを形成する場合には、図4に示す液滴吐出装置IJが用いられる。
[加熱処理工程]
図5(b)に示すように、上述の液滴吐出装置IJを用いて、液体材料14Aを基板P上に吐出配置したならば、基板P上の液体材料14Aから分散媒13を除去するために、加熱処理工程である第2の工程S2を行う。第2の工程S2は、真空減圧雰囲気、不活性雰囲気、あるいは還元雰囲気のもとで行われる。すなわち第2の工程S2は酸素を排除した環境下で行われる。このような環境としては、10−5Pa〜103Pa程度の真空減圧雰囲気、N2ガス、Arガス(又は他の希ガス)等の不活性雰囲気、あるいは、H2ガス、H2ガスと不活性ガスとの混合ガス、COガス、COガスとCO2ガスとの混合ガス等の還元雰囲気を例示することができる。
【0068】
第2の工程S2の処理温度は、分散媒13の沸点(蒸気圧)、雰囲気ガスの種類や圧力、微粒子の分散性や酸化性等の熱的挙動、コーティング材の有無や量、基材の耐熱温度などを考慮して決定すればよい。例えば、有機物からなるコーティング材を除去するためには、少なくとも約300℃程度で焼成させる必要がある。また、プラスチックなどの耐熱性に劣る基板を使用する場合には、室温以上100℃以下で行うことが好ましい。加熱時間は、加熱温度に合わせて適宜設定される。
【0069】
なお、加熱温度及び加熱時間を適宜設定して、分散媒13の加熱速度を調整することにより、導電性微粒子11’及びAg微粒子12をより整然と配列させることができる。また、この点に関して、導電性微粒子11’及びAg微粒子12の緻密化をより促進させるために振動を与えつつ行うようにしても良い。これにより、内部に気泡が含まれることを防止することができる。
【0070】
この第2の工程S2は、液体材料14Aに含まれる分散媒13の除去と、導電性微粒子11’間の融着の促進とを目的として行なわれるものである。この第2の工程S2での加熱処理により、図5(a),(b)に示すように、分散媒13が除去され、導電性微粒子11’及びAg微粒子12が凝集して粒子同士が互いに接触してなる固化物14Bが基板P上に形成される。このとき、Ag微粒子12は、導電性微粒子11’間の隙間を埋めるようにして入り込みながら凝集することになる。このように、2種類の異なる形状をなす粒子(導電性微粒子11’及びAg微粒子12)を組み合わせて用いることにより、粒子間の隙間をなくして緻密化を効果的に高めることができる。また、導電性微粒子11’の表面に凝集防止用の有機物コーティングが施されている場合には、このコーティングについても第2の工程S2において分解除去される。
【0071】
本実施形態において、導電性微粒子11’は、In、Zn、Al、F及びSnから選ばれる1種類以上の元素を含む金属膜からなるものであり、比較的低温で溶融する金属を含んでいる。そのため、300℃以下の加熱温度でも導電性微粒子11’の一部が溶融し、隣接する導電性微粒子11’同士が融着する。
【0072】
さらに、融着しない導電性微粒子11’間の隙間を埋めるようにして存在するAg微粒子12は、Agの溶融温度が300℃以上であることから初期形状のまま在残する。このとき、例えば、凝着している導電性微粒子11’及びAg微粒子12同士は、加熱によって一部が溶融した導電性微粒子11’がAg微粒子12に周着する。
【0073】
このように第2の工程S2において、液体材料14Aに対して真空減圧雰囲気、不活性雰囲気、あるいは還元雰囲気のもとで加熱処理を行うことで、導電性微粒子11’及びAg微粒子12を凝集させて隣り合う導電性微粒子11’同士の融着を進行させることができる。また、Ag微粒子12を介して導電性微粒子11’同士を連結させることができるので、非常に安定した接点を粒子間に形成することができる。これにより、膜密度を上げて結晶性が良好となり、その結果、優れた低抵抗の透明導電膜14Cを形成することができる。
【0074】
本実施形態では、酸化物からなる導電性微粒子11’を用いているので、分散媒13を蒸発させるだけで透明導電膜14Cが形成される。第1実施形態のように酸化処理を施す工程が必要ないため、作業工程数の削減に伴う生産効率の向上及びコストダウンを図ることができる。
<電気光学装置とその製造方法>
先の実施形態に係る透明導電膜14Cは、各種電気光学装置の電極や静電保護膜として好適に用いることができる。以下、図面を参照しつつ本発明に係る電気光学装置の一例である液晶表示装置の構成、及びその製造方法の一例について説明する。
【0075】
本実施形態の液晶表示装置は、基板面に対して垂直に配向させた誘電率異方性が負の液晶に対して電界を印加し、配向を制御することにより画像表示を行うVAN(Vertical Aligned Nematic)モードのアクティブマトリクス型液晶表示装置であって、パネル背面側に配設したバックライトから供給される光を用いて表示を行う透過型液晶表示装置である。
【0076】
そして、本実施形態の液晶表示装置は、基板上に設けられたカラーフィルタによるカラー表示が可能であり、R(赤)、G(緑)、B(青)の各色光を出力する3個のサブ画素で1個の画素を構成するものとなっている。
【0077】
したがって本明細書では、表示を構成する最小単位となる表示領域を「サブ画素」と称する。また、一組(R,G,B)のサブ画素から構成される表示領域を「画素」と称する。
【0078】
なお、各実施形態で参照する図面においては、各層や各部材を図面上で認識可能な程度の大きさとするため、各層や各部材毎に縮尺を異ならせて表示している。
【0079】
図5は、本実施形態の液晶表示装置を構成するマトリクス状に形成された複数のサブ画素の回路構成図である。図7は、液晶表示装置100の全体構成図である。図8は、3つのサブ画素から構成される画素におけるTFTアレイ基板の平面構成を示す図である。図9は図8のB−B'線に沿う液晶表示装置100の部分断面構成図である。
【0080】
図6に示すように、液晶表示装置100の画像表示領域は、マトリクス状に配列形成された複数のサブ画素Spを有している。各サブ画素Spは、互いに交差する方向に延びる複数の走査線18aと、複数のデータ線16とにより区画された矩形状の領域に形成されている。サブ画素Spには、画素電極19と画素電極19をスイッチング制御するためのTFT(薄膜トランジスタ)60とが形成されている。データ線16はTFT60のソースに電気的に接続されており、図示略の駆動回路から供給される画像信号S1、S2、…、Snがデータ線16を介して各サブ画素に書き込まれるようになっている。画像信号S1〜Snはこの順に線順次に供給しても構わないし、相隣接する複数のデータ線16同士に対して、グループ毎に供給するようにしてもよい。
【0081】
TFT60のゲートには走査線18aが電気的に接続されており、図示略の駆動回路から所定のタイミングで走査線18aにパルス的に供給される走査信号G1、G2、…、Gmが、この順に線順次でTFT60のゲートに印加されるようになっている。画素電極19はTFT60のドレインと電気的に接続されている。スイッチング素子であるTFT60が走査信号G1、G2、…、Gmの入力により一定期間だけオン状態とされることで、データ線16から供給される画像信号S1、S2、…、Snが所定のタイミングで画素電極19に書き込まれるようになっている。
【0082】
画素電極19を介して液晶に書き込まれた所定レベルの画像信号S1、S2、…、Snは、画素電極19と液晶を介して対向する共通電極との間で一定期間保持される。ここで、保持された画像信号がリークするのを防ぐために、画素電極19と共通電極との間に形成される液晶容量と並列に蓄積容量17が接続されている。蓄積容量17はTFT60のドレインと容量線18bとの間に設けられている。
【0083】
図7に示すように、本実施形態の液晶表示装置100は、TFTアレイ基板(第1基板)10と対向基板(第2基板)20とがシール材52によって貼り合わされ、このシール材52によって区画された領域内に液晶層50が封入された構成である。シール材52の内周に沿って設けられた周辺見切り53に囲まれた矩形状の領域が画像表示領域となっている。シール材52の外側の周辺回路領域には、データ線駆動回路101及び外部回路実装端子102がTFTアレイ基板10の一辺に沿って形成されており、この一辺に隣接する2辺に沿って走査線駆動回路104がそれぞれ形成されている。走査線駆動回路104同士は、配線105を介して互いに電気的に接続されており、データ線駆動回路101、及び走査線駆動回路104,104は、それぞれ対応する外部回路実装端子102と電気的に接続されている。また、対向基板20の角部にはTFTアレイ基板10と対向基板20との間で電気的導通をとるための基板間導通材106が配設されている。
【0084】
次に、図8及び図9を参照して液晶表示装置100の詳細な構成について説明する。
【0085】
液晶表示装置100は、図9に示すように、液晶層50を挟持して対向するTFTアレイ基板(第1基板)10と対向基板(第2基板)20とを備えている。TFTアレイ基板10の背面側(図示下面側)には、導光板91と反射板92とを具備したバックライト(照明装置)90が配設されている。
【0086】
図8の平面構成図に示すように、液晶表示装置100のサブ画素には、画素電極19と、画素スイッチング素子であるTFT60とが設けられている。画素電極19の長手方向(Y軸方向)に沿って延びる複数の走査線18aと、画素電極19の短手方向(X軸方向)に沿って延びるデータ線16とが形成されており、これらデータ線16、走査線18aは、その交差点の近傍において上記TFT60と電気的に接続されている。
【0087】
また、1つのサブ画素に対応して3原色のうち1色のカラーフィルタ(色材層)22(22R、22G、22B)が形成されており、3色のカラーフィルタ22を含む隣接して配列された3つのサブ画素が1つの画素を形成している。カラーフィルタ22は、例えば、色毎に図示上下方向に延びるストライプ状に形成され、その延在方向で各々複数のサブ画素に跨って形成されるとともに、図示左右方向にて周期的に配列されたものとなっている。
【0088】
画素電極19は、ITO(インジウム錫酸化物)等の透明導電材料を用い、本発明に係る透明導電膜の形成方法によって形成された透明導電膜である。本実施形態の液晶表示装置100は垂直配向モードの液晶表示装置であるから、配向膜のラビング処理により液晶にプレチルトを付与する方式のほか、サブ画素領域を複数の島状領域に分割し、各島状領域の中央に相当する対向基板上の位置に突起を設ける、いわゆるCPA(Continuous Pinwheel Alignment)構造や、突起やスリット構造により形成した核を基準に液晶を4方向に配向させるMVA(Multi-domain Vertical Alignment)構造等、公知の配向制御構造を採用することができる。
【0089】
図8に示す画素電極19のうち図示左下側に形成された切欠部と、走査線18a及びデータ線16との間に、TFT60が介挿されている。TFT60は、半導体層33と、半導体層33の下層側(基板本体10A側)に設けられたゲート電極32と、半導体層33の上層側に設けられたソース電極34と、ドレイン電極35とを備えている。本実施形態ではドレイン電極35をソース電極34と同等の幅の帯状の導電膜により形成しているが、かかるドレイン電極35をさらに延設し、延設されたドレイン電極と平面的に重なる位置に容量線(又は容量線と接続された容量電極)を配置することで、当該サブ画素の蓄積容量を形成することもできる。
【0090】
ゲート電極32は、走査線18aの一部をデータ線16の延在方向に分岐して形成されており、その先端側で半導体層33と図示略の絶縁膜を介して対向している。ソース電極34は、データ線16の一部を走査線18aの延在方向に分岐して形成されており、半導体層33と平面的に重なる位置で電気的に接続されている。ドレイン電極35と半導体層33も両者が平面的に重なる位置で電気的に接続されている。そして、ドレイン電極35の半導体層33と反対側の端部に設けられた画素コンタクトホールを介して、ドレイン電極35と画素電極19とが電気的に接続されている。
【0091】
このような構成のもと、TFT60は、走査線18aを介して入力されるゲート信号により所定期間だけオン状態とされることで、データ線16を介して供給される画像信号を、所定のタイミングで液晶に対して書き込めるようになっている。
【0092】
一方、図9に示す断面構造をみると、液晶表示装置100は、TFTアレイ基板10と、これに対向配置された対向基板20とを備えており、これらの基板10,20間に挟持された液晶層50は、初期配向状態が垂直配向を呈する誘電異方性が負の液晶(屈折率異方性Δnは例えば0.1)からなるものとされている。
【0093】
TFTアレイ基板10は、石英、ガラス等の透光性材料からなる基板本体10Aを基体としてなり、基板本体10Aの内面側(液晶層側)にゲート電極32(走査線18a)が形成されている。ゲート電極32を覆って絶縁薄膜(ゲート絶縁膜)36が形成されており、この絶縁薄膜36上のゲート電極32と対向する位置に、島状のアモルファスシリコン膜等からなる半導体層33が形成されている。また、半導体層33に一部乗り上げるようにして、ソース電極34とドレイン電極35とが絶縁薄膜36上に形成されている。ソース電極34と半導体層33との間、及びドレイン電極35と半導体層33との間には、半導体層33と電極とをオーミック接合するn+シリコン層33nが介挿されている。
【0094】
ソース電極34、ドレイン電極35を覆って第1層間絶縁膜37が形成され、第1層間絶縁膜37を覆って第2層間絶縁膜38が形成されている。第1層間絶縁膜37はTFT60を構成する各導電膜を保護するシリコン窒化膜等からなる絶縁膜であり、第2層間絶縁膜38はTFT60等が形成された基板本体10Aの表面を平坦化する機能を兼ね備えた透光性を有する樹脂材料等からなる絶縁膜である。第2層間絶縁膜38上に、ITO等の透明導電膜からなる画素電極19が形成されている。画素電極19の一部は、第1層間絶縁膜37と第2層間絶縁膜38とを貫通してドレイン電極35に達するコンタクトホール45内に形成されており、かかる構造により画素電極19とドレイン電極35とが電気的に接続されている。画素電極19を覆ってポリイミド等の垂直配向膜39が形成されており、液晶分子を基板面に対し垂直に配向させるようになっている。基板本体10Aの外面側には、位相差板46と偏光板44とが積層配置されている。
【0095】
対向基板20は、石英、ガラス等の透光性材料からなる基板本体20Aを基体としてなる。基板本体20Aの内面側には、カラーフィルタ22が設けられている。先に記載のように、カラーフィルタ22はサブ画素の長手方向に延びるストライプ状であり、各カラーフィルタ22の延在方向で隣接するサブ画素の境界領域には、金属膜や黒色樹脂等からなる遮光膜(ブラックマトリクス)23が配置されている。
【0096】
カラーフィルタ22上には、対向電極21が形成されている。対向電極21は平面ベタ状のITO等からなる透明導電膜であり、かかる対向電極21も本発明に係る透明導電膜の形成方法によって形成された透明導電膜である。対向電極21を覆ってポリイミド等の垂直配向膜28が形成されており、液晶分子を基板面に対し垂直に配向させるようになっている。
【0097】
基板本体20Aの外面側には、位相差板26と偏光板24とが積層配置されている。上記偏光板44,24は、特定方向に振動する直線偏光のみを透過させる機能を有する。また位相差板46,26には、可視光の波長に対して略1/4波長の位相差を持つλ/4板が採用されている。偏光板44,24の透過軸と位相差板46,26の遅相軸とは約45°の角度を成して配置され、偏光板44と位相差板46、及び偏光板24と位相差板26とは、協働してそれぞれ円偏光板として機能する。この円偏光板により、直線偏光を円偏光に変換して液晶層50に入射させる一方、液晶層50から射出される円偏光を直線偏光に変換して出力するようになっている。また、偏光板44の透過軸と偏光板24の透過軸とは直交して配置され、位相差板46の遅相軸は位相差板26の遅相軸と直交して配置されている。
【0098】
なお、偏光板と位相差板の構成としては、「偏光板+λ/4板の構成の円偏光板」が一般的だが、「偏光板+λ/2板+λ/4板の構成の円偏光板(広帯域円偏光板)」を用いることで、黒表示をより無彩色にすることもできる。
【0099】
上述したように、画素電極19及び対向電極21は、本発明に係る透明導電膜の形成方法によって形成されたものである。以下、液晶表示装置100の製造方法について簡単に説明する。
【0100】
TFTアレイ基板10を製造するには、まず、基板本体10A上に、公知の製造方法を用いてTFT60及びこれを覆う第1層間絶縁膜37及び第2層間絶縁膜38を形成し、第1層間絶縁膜37及び第2層間絶縁膜38を貫通する画素コンタクトホール45を開口する。その後、液滴吐出法を用いて、本発明に係る導電性微粒子11及びAg微粒子12を含む液体材料14Aを第2層間絶縁膜38上に選択的に配置する。このとき、第2層間絶縁膜38上の画素電極19を形成すべき領域を取り囲むようにしてバンクを形成しておけば、さらに正確に液体材料14Aの吐出配置を行うことができる。
【0101】
次いで、基板本体10Aを減圧下や還元雰囲気下に保持し、液体材料14Aを加熱することでこれを乾燥固化させて固化物14Bとし、これを酸素雰囲気下で加熱することで、固化物14Bを透明導電膜14Cに変換することで画素電極19を形成することができる。その後、画素電極19上にスピンコート法等によりポリイミド膜からなる配向膜39を形成すれば、TFTアレイ基板10を製造することができる。
【0102】
このように、画素電極19について本発明に係る透明導電膜の形成方法を適用することで、従来はスパッタ法等により形成し、フォトリソグラフィ技術を用いてパターニングしていた画素電極の形成工程を液相法で行うことができる。これにより、画素電極19の製造に高温を要せず、また原料の無駄を低減できるため、加熱による基板本体10Aや第2層間絶縁膜38の劣化を防止でき、低コストで高歩留まりにTFTアレイ基板10を製造することができる。また、液相法を用いて画素電極19を形成することから、スパッタ法等の気相法を用いて画素電極19を形成する場合のように画素コンタクトホール45内での膜の付き回りに起因するコンタクト不良の発生が生じることが無く、電気的信頼性にも優れたTFTアレイ基板10となる。
【0103】
次に、対向基板20を製造するには、基板本体20A上に遮光膜23及びカラーフィルタ22を、印刷法、液滴吐出法等、公知の製造方法を用いて形成する。次いで、カラーフィルタ22上に、スピンコート法や液滴吐出法を用いて、本発明に係る導電性微粒子11及びAg微粒子12を含む液体材料14Aを配置する。次に、基板本体20Aを減圧下や還元雰囲気下に保持し、液体材料14Aを加熱することでこれを乾燥固化させて固化物14Bとし、これを酸素雰囲気下で加熱することで、固化物14Bを透明導電膜14Cに変換することで対向電極21を形成することができる。その後、対向電極21上にスピンコート法等によりポリイミド膜からなる配向膜28を形成すれば、対向基板20を製造することができる。
【0104】
対向電極21は、先に記載のように平面ベタ状の透明導電膜であるから、カラーフィルタ22上に液体材料14Aを塗布するに際して、液滴吐出法を用いる必要はなく、スピンコート法等を用いて全体的に塗布すればよい。
【0105】
このようにカラーフィルタ22上に対向電極21を形成するに際して、本発明の透明導電膜の形成方法を適用することで、300℃以下の加熱で十分に低抵抗で、かつ信頼性に優れた対向電極21を形成することができる。したがって、加熱によりカラーフィルタ22の劣化を防止でき、低コストで高歩留まりに対向基板20を製造することができる。
【0106】
以上の工程によりTFTアレイ基板10及び対向基板20を製造したならば、シール材52を介して両者を接着し、シール材52に設けられた封止口から液晶を内部に注入した後、シール材52の封止口を封止材で封止することで、上記実施形態の液晶表示装置100を製造することができる。
【0107】
このように本実施形態の液晶表示装置100では、各サブ画素に設けられた画素電極19,及びカラーフィルタ22上に設けられた対向電極21について、本発明に係る方法により形成された透明導電膜が用いられているので、透明導電材料の結晶性に優れるとともに、粒子間の接点が安定であり、優れた信頼性と導電性とを有する透明電極を具備したものとなっている。したがって本発明によれば、消費電力が小さく、また信頼性にも優れた液晶表示装置を提供することができる。また、画素電極19の形成工程に液滴吐出法を用いるので、画素コンタクトホール45を介した画素電極19とTFT60との電気的接続が確実なものとなり、電気的信頼性をも向上させた液晶表示装置を実現できる。
<他の実施形態>
上記実施形態では、本発明に係る透明導電膜の形成方法を適用して液晶表示装置100の画素電極19及び対向電極21を形成する場合について説明したが、本発明に係る透明導電膜の形成方法は、液晶表示装置の基板外面側に設けられる静電保護膜の形成にも問題なく用いることができる。以下、図10及び図11を参照しつつ説明する。
【0108】
図10は、本実施形態の液晶表示装置200の1サブ画素の平面構成図であり、図11は、図10のD−D’線に沿う断面構成図である。本実施形態の液晶表示装置200は、いわゆる横電界方式により液晶を駆動し、画像表示を行う液晶表示装置であり、横電界方式のうちでも特にFFS(Fringe Field Switching)方式を用いたものである。本実施形態の液晶表示装置200は、先の実施形態に係る液晶表示装置100とその基本構成において共通するので、図10及び図11のうち、液晶表示装置100と共通の構成要素には同一の符号を付して詳細な説明を省略する。
【0109】
なお、本発明に係る液晶表示装置200の液晶層50は、先の実施形態と異なり、TFTアレイ基板10と対向基板20との間で液晶分子が基板面に平行に配向するものであり、正の誘電率異方性を有する液晶が用いられている。
【0110】
図10に示すように、液晶表示装置200のサブ画素には、平面視略梯子状の画素電極119と、画素電極119と平面視でほぼ重なる位置に形成された共通電極129と、画素電極119と電気的に接続されたTFT60と、TFT60と電気的に接続されるとともに画素電極119の縦横の辺端に沿って延在する走査線18a及びデータ線16と、走査線18aに沿って延在するとともに共通電極129と電気的に接続された容量線18bと、が設けられている。
【0111】
図11に示す断面構造をみると、TFTアレイ基板10の基板本体10Aの内面側に、TFT60が形成されており、TFT60のゲート電極32(走査線18a)と同層に容量線18b及び共通電極129が形成されている。共通電極129はITO等の透明導電材料を用いて形成された透明導電膜であり、かかる共通電極129の形成に際しても本発明の透明導電膜の形成方法を適用することができる。共通電極129を覆って絶縁薄膜36が形成されており、TFT60及び絶縁薄膜36を覆って、第1層間絶縁膜37と第2層間絶縁膜38とが順次積層されている。そして、第2層間絶縁膜38上に、上述した略梯子形状の画素電極119が形成されており、画素電極119を覆って配向膜39が形成されている。画素電極119の形成に本発明の透明導電膜の形成方法を適用してもよいのは勿論である。
【0112】
対向基板20を構成する基板本体20Aの内面側には、遮光膜23とカラーフィルタ22とが形成されており、カラーフィルタ22上には配向膜28が形成されている。基板本体20Aの外面側には、平面ベタ状の透明導電膜からなる静電保護膜121が形成されており、静電保護膜121上に位相差板26と偏光板24とが配設されている。
【0113】
上記構成を備えた液晶表示装置200は、TFT60を介して画素電極119に電圧を印加することで、画素電極119と共通電極129との電位差によって略基板面方向の電界を形成する。そしてこの略基板面方向の電界によって液晶を駆動し、液晶の配向状態の差異に基づき透過光を変調して画像表示を行うようになっている。
【0114】
このように横電界方式の液晶表示装置200では、液晶を駆動する電界を形成するための電極である画素電極119と共通電極129とがいずれもTFTアレイ基板10上に形成されており、対向基板20の液晶層50側には電極が形成されていない。そのため、対向基板20側から静電気が入射して基板本体20Aが帯電すると、当該電荷により形成された電界が液晶層50に作用し、液晶の配向乱れを生じて表示不良を起こすおそれがある。そこで横電界方式の液晶表示装置では、対向基板20の外面側に静電保護膜として透明導電膜を形成し、入射する静電気を吸収するようになっている。
【0115】
本発明に係る透明導電膜の形成方法は、上述した静電保護膜121の形成工程に適用することができ、本発明に係る透明導電膜の形成方法を用いることで、比較的低温で導電性に優れた静電保護膜121を形成することができる。従って本実施形態によれば、加熱によりカラーフィルタ22等に劣化を生じさせることなく静電保護膜121を具備した液晶表示装置200を製造することができる。
<電子機器>
次に、本発明の電子機器の具体例について説明する。
【0116】
図12(a)は、携帯電話の一例を示した斜視図である。符号1000は携帯電話本体を示し、1001は上記実施形態の液晶表示装置100を備えた表示部を示している。図12(b)は、腕時計型電子機器の一例を示した斜視図である。符号1100は時計本体を示し、1101は上記実施形態の液晶表示装置100を備えた表示部を示している。図12(c)は、ワープロ、パソコンなどの携帯型情報処理装置の一例を示した斜視図である。符号1200は情報処理装置、1202はキーボードなどの入力部、1204は情報処理本体、1206は上記実施形態の液晶表示装置100を備えた表示部を示している。
【0117】
図12(a)〜(c)に示す電子機器は、上記実施形態の液晶表示装置100を備えたものであるので、信頼性の高い導電膜が電極部材等に用いられたことで、信頼性に優れる電子機器となっている。また、テレビやモニター等の大型液晶パネルにおいても上記実施形態の製造方法を適用することができる。
【0118】
なお、本実施形態の電子機器は液晶表示装置100を備えるものとしたが、有機エレクトロルミネッセンス表示装置、プラズマ型表示装置等、他の電気光学装置を備えた電子機器とすることもできる。
【図面の簡単な説明】
【0119】
【図1】一実施形態に係る導電性微粒子及びAg微粒子を含む液体材料の構成図。
【図2】一実施形態に係る液体材料におけるAg微粒子の添加率に対する抵抗値及び透過率の関係を示すグラフ。
【図3】一実施形態に係る液体材料を用いた透明導電膜の形成方法を示す工程図。
【図4】液滴吐出装置及び吐出ヘッドを示す図。
【図5】他の実施形態に係る液体材料を用いた透明導電膜の形成方法を示す工程図。
【図6】一実施形態に係る液晶表示装置の回路構成図。
【図7】一実施形態に係る液晶表示装置の全体構成図。
【図8】一実施形態に係る液晶表示装置の画素構成図。
【図9】他の実施形態に係る液晶表示装置の画素構成図。
【図10】他の実施形態に係る液晶表示装置の断面構成図。
【図11】一実施形態に係る液晶表示装置の回路構成図。
【図12】電子機器を例示する斜視図。
【符号の説明】
【0120】
11,11’…導電性微粒子、12…Ag微粒子、13…分散媒、14A…液体材料(透明導電膜形成用液体材料)、14B…固化物、14C…透明導電膜、19,119…画素電極、21…対向電極、121…静電保護膜、100,200…液晶表示装置(電気光学装置)
【特許請求の範囲】
【請求項1】
酸化物に変換されたときに透光性を発現する導電性微粒子と、Agからなる金属微粒子と、を分散媒に含んでなることを特徴とする透明導電膜形成用液体材料。
【請求項2】
前記導電性微粒子が、In、Zn、Al、F及びSnから選ばれる1種以上の元素を含むことを特徴とする請求項1記載の透明導電膜形成用液体材料。
【請求項3】
透光性を有する酸化膜からなる導電性微粒子と、Agからなる金属微粒子と、を分散媒に含んでなることを特徴とする透明導電膜形成用液体材料。
【請求項4】
前記導電性微粒子が、In、Zn、Al、F及びSnから選ばれる1種以上の元素を含む酸化物からなることを特徴とする請求項3記載の透明導電膜形成用液体材料。
【請求項5】
前記金属微粒子の含有量が、前記導電性微粒子に対して0.01〜10wt%となるように混合されていることを特徴とする請求項1乃至4のいずれか一項に記載の透明導電膜形成用液体材料。
【請求項6】
前記金属微粒子の含有量が、前記導電性微粒子に対して0.5〜2wt%となるように混合されていることを特徴とする請求項5に記載の透明導電膜形成用液体材料。
【請求項7】
酸化物に変換されたときに透光性を発現する導電性微粒子と、Agからなる金属微粒子とを分散媒に含んでなる透明導電膜形成用液体材料を基板上に配置する工程と、
前記基板上の透明導電膜形成用液体材料を減圧又は還元雰囲気中で加熱処理して前記透明導電膜形成用液体材料の固化物を形成する工程と、
前記固化物を酸素含有雰囲気中で加熱処理して該固化物を酸化させる工程と、
を有することを特徴とする透明導電膜の形成方法。
【請求項8】
透光性を有する酸化膜からなる導電性微粒子と、Agからなる金属微粒子とを分散媒に含んでなる透明導電膜形成用液体材料を基板上に配置する工程と、
前記基板上の透明導電膜形成用液体材料を減圧又は還元雰囲気中で加熱処理する工程と、
を有することを特徴とする透明導電膜の形成方法。
【請求項9】
複数の前記加熱処理における加熱温度がいずれも300℃以下であることを特徴とする請求項7又は8記載の透明導電膜の形成方法。
【請求項10】
基板上に透明導電膜を備えた電気光学装置の製造方法であって、
酸化物に変換されたときに透光性を発現する導電性微粒子と、Agからなる金属微粒子とを分散媒に含んでなる透明導電膜形成用液体材料を基板上に配置する工程と、
前記基板上の透明導電膜形成用液体材料を減圧又は還元雰囲気中で加熱処理して前記透明導電膜形成用液体材料の固化物を形成する工程と、
前記固化物を酸素含有雰囲気中で加熱処理して該固化物を酸化させて前記透明導電膜を形成する工程と、
を有することを特徴とする電気光学装置の製造方法。
【請求項11】
基板上に透明導電膜を備えた電気光学装置の製造方法であって、
透光性を有する酸化膜からなる導電性微粒子と、Agからなる金属微粒子とを分散媒に含んでなる透明導電膜形成用液体材料を基板上に配置する工程と、
前記基板上の透明導電膜形成用液体材料を減圧又は還元雰囲気中で加熱処理して前記透明導電膜を形成する工程と、
を有することを特徴とする電気光学装置の製造方法。
【請求項1】
酸化物に変換されたときに透光性を発現する導電性微粒子と、Agからなる金属微粒子と、を分散媒に含んでなることを特徴とする透明導電膜形成用液体材料。
【請求項2】
前記導電性微粒子が、In、Zn、Al、F及びSnから選ばれる1種以上の元素を含むことを特徴とする請求項1記載の透明導電膜形成用液体材料。
【請求項3】
透光性を有する酸化膜からなる導電性微粒子と、Agからなる金属微粒子と、を分散媒に含んでなることを特徴とする透明導電膜形成用液体材料。
【請求項4】
前記導電性微粒子が、In、Zn、Al、F及びSnから選ばれる1種以上の元素を含む酸化物からなることを特徴とする請求項3記載の透明導電膜形成用液体材料。
【請求項5】
前記金属微粒子の含有量が、前記導電性微粒子に対して0.01〜10wt%となるように混合されていることを特徴とする請求項1乃至4のいずれか一項に記載の透明導電膜形成用液体材料。
【請求項6】
前記金属微粒子の含有量が、前記導電性微粒子に対して0.5〜2wt%となるように混合されていることを特徴とする請求項5に記載の透明導電膜形成用液体材料。
【請求項7】
酸化物に変換されたときに透光性を発現する導電性微粒子と、Agからなる金属微粒子とを分散媒に含んでなる透明導電膜形成用液体材料を基板上に配置する工程と、
前記基板上の透明導電膜形成用液体材料を減圧又は還元雰囲気中で加熱処理して前記透明導電膜形成用液体材料の固化物を形成する工程と、
前記固化物を酸素含有雰囲気中で加熱処理して該固化物を酸化させる工程と、
を有することを特徴とする透明導電膜の形成方法。
【請求項8】
透光性を有する酸化膜からなる導電性微粒子と、Agからなる金属微粒子とを分散媒に含んでなる透明導電膜形成用液体材料を基板上に配置する工程と、
前記基板上の透明導電膜形成用液体材料を減圧又は還元雰囲気中で加熱処理する工程と、
を有することを特徴とする透明導電膜の形成方法。
【請求項9】
複数の前記加熱処理における加熱温度がいずれも300℃以下であることを特徴とする請求項7又は8記載の透明導電膜の形成方法。
【請求項10】
基板上に透明導電膜を備えた電気光学装置の製造方法であって、
酸化物に変換されたときに透光性を発現する導電性微粒子と、Agからなる金属微粒子とを分散媒に含んでなる透明導電膜形成用液体材料を基板上に配置する工程と、
前記基板上の透明導電膜形成用液体材料を減圧又は還元雰囲気中で加熱処理して前記透明導電膜形成用液体材料の固化物を形成する工程と、
前記固化物を酸素含有雰囲気中で加熱処理して該固化物を酸化させて前記透明導電膜を形成する工程と、
を有することを特徴とする電気光学装置の製造方法。
【請求項11】
基板上に透明導電膜を備えた電気光学装置の製造方法であって、
透光性を有する酸化膜からなる導電性微粒子と、Agからなる金属微粒子とを分散媒に含んでなる透明導電膜形成用液体材料を基板上に配置する工程と、
前記基板上の透明導電膜形成用液体材料を減圧又は還元雰囲気中で加熱処理して前記透明導電膜を形成する工程と、
を有することを特徴とする電気光学装置の製造方法。
【図1】
【図2】
【図3】
【図4】
【図5】
【図6】
【図7】
【図8】
【図9】
【図10】
【図11】
【図12】
【図2】
【図3】
【図4】
【図5】
【図6】
【図7】
【図8】
【図9】
【図10】
【図11】
【図12】
【公開番号】特開2008−52912(P2008−52912A)
【公開日】平成20年3月6日(2008.3.6)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2006−225007(P2006−225007)
【出願日】平成18年8月22日(2006.8.22)
【出願人】(000002369)セイコーエプソン株式会社 (51,324)
【Fターム(参考)】
【公開日】平成20年3月6日(2008.3.6)
【国際特許分類】
【出願日】平成18年8月22日(2006.8.22)
【出願人】(000002369)セイコーエプソン株式会社 (51,324)
【Fターム(参考)】
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