説明

透明複合シート

【課題】光学異方性が小さい透明複合シートを提供する。
【解決手段】透明複合シートは、硬化性組成物を硬化させた硬化物と、該硬化物中に埋め込まれたガラス繊維とを有する。上記硬化性組成物は、正の屈折率異方性を有する高分子を形成する第1の単量体と、負の屈折率異方性を有する高分子を形成する第2の単量体とを含み、波長589nmにおける前記硬化物の屈折率と波長589nmにおける前記ガラス繊維の屈折率との差が0.01以下、ガラス繊維に沿って前記高分子が一軸配向した透明複合シートの、波長550nmにおける面内位相差が5nm以下である。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、硬化性組成物を硬化させた硬化物と、該硬化物中に埋め込まれたガラス繊維とを有する透明複合シートに関する。
【背景技術】
【0002】
液晶表示素子又は有機EL表示素子等の表示素子用基板、並びに太陽電池用基板等に、ガラス基板が広く用いられている。ガラス基板は、割れやすく、曲げ性が低く、更に軽量化できないという問題がある。このため、近年、ガラス基板のかわりに、プラスチック基板を用いることが検討されている。
【0003】
上記プラスチック基板の一例として、下記の特許文献1には、ガラスクロスに樹脂組成物を含浸させ、乾燥することによりプリプレグを得た後、該プリプレグをプレスしながら熱硬化させることにより得られたプラスチック基板が開示されている。
【0004】
一方で、表示素子に使用されるプラスチック基板には、光学異方性が小さいことが要求される。光学異方性が大きいと、表示素子の表示性能を低下させる可能性がある。
【0005】
偏光板と液晶駆動との光シャッター機能を用いた液晶用表示素子などの表示素子では、プラスチック基板である透明基板を通過する透過光の偏光状態の変化によって、表示素子の表示性能が影響を受ける。透明基板の光学異方性が大きい場合には、偏光板を通過した入射直線偏光が透明基板内の光学異方性により楕円偏光になり、液晶を駆動した時の出射側偏光板を通過する透過光の透過と不透過とのスイッチング性能が低下することがある。高コントラストの表示素子を得るためには、光学異方性の小さい透明基板を適用する必要がある。
【0006】
しかしながら、従来、表示素子に用いられている透明基板では、ガラス繊維と樹脂との接触界面にて発生する応力により、光学異方性が発生するという課題がある。硬化時の樹脂の体積収縮及び熱線膨張率の異なる材料を複合化することの影響によって、透明基板の作製時のプロセス温度及び熱膨張率差に起因する熱応力が、透明基板中で分布をもって発生する。接触界面に発生した応力により、ガラス繊維に沿った光学異方性及びガラス繊維に直交した光学異方性が発現する可能性がある。例えば、繊維を縦と横とに織ったガラス繊維と樹脂とを用いた透明基板では、ガラス繊維軸に沿った方向と該ガラス繊維軸に沿った方向と直交する方向とに局所的な光学異方性が発現する。このため、偏光子と検光子とを偏向軸が90°に交差させた(クロスニコル状態にした)偏光顕微鏡下で、格子状に透過光のパターンが見える。また、透明基板の光学異方性が、ガラス繊維の繊維軸に沿った方向と直交する方向に発現することから、格子状の透過光パターンは偏光子からガラス繊維の繊維軸が45°傾いた状態で最も明るくなる。つまり、透明基板を用いた表示素子では、偏光板と透明基板中のガラス繊維の繊維軸との配置によっては、透過光の偏光状態の乱れにより表示素子のコントラストが低下する可能性がある。
【0007】
これまでに、光学異方性の改善に関する検討が報告されている。例えば、下記の特許文献2では、特定の無機充填剤を用いることで、ガラス繊維と樹脂とを用いた複合シートにおける複屈折の低減を検討している。また、下記の特許文献3では、体積硬化収縮率が5%以下である樹脂の使用により、複合シートにおける光学異方性の発現の抑制を検討している。下記の特許文献4では、樹脂構造の選択により、複合シートにおける光学異方性の発現の抑制を検討している。また、下記の特許文献5では、軸がずれるように積層されたガラス繊維の使用により、複合シートの複屈折の低減を検討している。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0008】
【特許文献1】特開2004−151291号公報
【特許文献2】特許4539113号公報
【特許文献3】特開2005−240028号公報
【特許文献4】特開2007−106853号公報
【特許文献5】特開2005−297312号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0009】
しかしながら、特許文献1〜5に記載のような従来の複合シートでは、光学異方性が十分に小さい複合シートを得ることは困難なことがある。また、従来の複合シートでは、透明性を高くし、かつ光学異方性を小さくし、更に耐熱性も高くすることは困難である。
【0010】
本発明の目的は、光学異方性が小さい透明複合シートを提供することである。
【0011】
本発明の限定的な目的は、透明性が高くかつ光学異方性が小さく、更に耐熱性に優れた透明複合シートを提供することである。
【課題を解決するための手段】
【0012】
本発明の広い局面によれば、硬化性組成物を硬化させた硬化物と、該硬化物中に埋め込まれたガラス繊維とを有し、上記硬化性組成物が、正の屈折率異方性を有する高分子を形成する第1の単量体と、負の屈折率異方性を有する高分子を形成する第2の単量体とを含む、透明複合シートが提供される。
【0013】
本発明に係る透明複合シートのある特定の局面では、波長589nmにおける上記硬化物の屈折率と波長589nmにおける上記ガラス繊維の屈折率との差が0.01以下である。
【0014】
本発明に係る透明複合シートの他の特定の局面では、上記ガラス繊維に沿って上記高分子が一軸配向した透明複合シートの、波長550nmにおける面内位相差が5nm以下である。
【0015】
本発明に係る透明複合シートの波長550nmにおける光線透過率は85%以上であることが好ましい。本発明に係る透明複合シートの50〜200℃における平均線膨張係数は20ppm/℃以下であることが好ましい。本発明に係る透明複合シートの厚みは25μm以上、200μm以下であることが好ましい。
【発明の効果】
【0016】
本発明に係る透明複合シートは、硬化性組成物を硬化させた硬化物と、該硬化物中に埋め込まれたガラス繊維とを有し、更に上記硬化性組成物が、正の屈折率異方性を有する高分子を形成する第1の単量体と、負の屈折率異方性を有する高分子を形成する第2の単量体とを含むので、屈折率異方性の異なる分子を、屈折率異方性を打ち消すような比率で混合することで、光学異方性の発現を抑制することができる。本発明に係る透明複合シートの光学異方性を小さくすることができる。
【発明を実施するための形態】
【0017】
以下、本発明を詳細に説明する。
【0018】
本発明に係る透明複合シートは、硬化性組成物を硬化させた硬化物と、該硬化物中に埋め込まれたガラス繊維とを有する。上記硬化性組成物は、正の屈折率異方性を有する高分子を形成する第1の単量体と、負の屈折率異方性を有する高分子を形成する第2の単量体とを含む。上記第1,第2の単量体は、硬化性化合物である。上記第1の単量体を、硬化性化合物として単独で硬化させた高分子は、正の屈折率異方性を有する。上記第2の単量体を、硬化性化合物として単独で硬化させた高分子は、負の屈折率異方性を有する。2種類の上記第1,第2の単量体の混合比を、硬化物中で屈折率異方性を打ち消すような比率に調整することで、光学異方性の発現を抑制可能である。光学異方性が非常に小さい透明複合シートは、液晶表示素子に好適に用いられる。また、本発明に係る透明複合シートは、上記構成を備えているので、透明性が高くかつ光学異方性が小さく、更に耐熱性にも優れている。
【0019】
上記硬化性組成物が硬化した硬化物の屈折率と上記ガラス繊維の屈折率との差は0.01以下であることが好ましい。上記屈折率は、波長589nmにおける値である。このような屈折率差を満足することによって、透明複合シートの透明性がより一層良好になる。例えば、透明複合シートのヘイズ値を10%以下にすることができ、5%以下にすることもできる。
【0020】
上記透明複合シートは、加熱及び活性光線の照射の内の少なくとも1種により、硬化性組成物を硬化させることにより得ることができる。上記透明複合シートは、例えば、硬化性組成物をガラス繊維に含浸させた後、硬化性組成物を硬化させることにより得ることができる。
【0021】
以下、先ず、本発明に係る透明複合シートに含まれている各成分の詳細を説明する。
【0022】
[硬化性化合物]
上記透明複合シートに含まれている上記第1,第2の単量体は硬化性化合物である。該硬化性化合物としては、透明樹脂が好適に用いられる。上記第1の単量体は、正の屈折率異方性を有する高分子を形成する単量体であれば特に限定されない。上記第2の単量体は、負の屈折率異方性を有する高分子を形成する単量体であれば特に限定されない。
【0023】
上記透明樹脂としては、ポリエステル樹脂、ポリエチレン樹脂、ポリ(メタ)アクリル樹脂、ポリスチレン樹脂、ポリカーボネート樹脂、ポリアミド樹脂、ポリアセタール樹脂、ポリフェニレンサルファイド樹脂、(メタ)アクリル樹脂、エポキシ樹脂、フェノール樹脂、ビニルエステル樹脂、ポリイミド樹脂、メラミン樹脂、ユリア樹脂及びシルセスキオキサン樹脂等が挙げられる。
【0024】
上記透明樹脂は、硬化前に室温(25℃)で液状の硬化性樹脂であることが好ましい。上記透明樹脂は、(メタ)アクリレート化合物、エポキシ化合物、シルセスキオキサン化合物、及びビニル基を有する化合物からなる群から選択された少なくとも1種であることが好ましい。
【0025】
本発明に係る透明複合シートをプラスチック基板として用いるためには、上記透明複合シートには高い耐熱性が要求される。透明複合シートの耐熱性を高めるためには、上記第1の単量体は、重合性官能基を2個以上有することが好ましく、更に不飽和結合を2個以上有することが好ましい。また、透明複合シートの耐熱性を高めるためには、上記第2の単量体は、重合性官能基を2個以上有することが好ましく、更に不飽和結合を2個以上有することが好ましい。
【0026】
重合性官能基を2個以上有する化合物は、特に限定されないが、多官能の(メタ)アクリレート化合物が好適である。なお、本明細書において、(メタ)アクリレート化合物とは、アクリレート化合物及びメタクリレート化合物を意味する。透明複合シートの耐熱性をより一層高める観点からは、アクリレート化合物とメタクリレート化合物との中で、メタクリレート化合物が好ましい。すなわち、耐熱性をより一層高める観点からは、上記重合性官能基は、メタクリロイル基であることが好ましい。上記多官能の(メタ)アクリレート化合物としては特に限定されず、例えば、ジエチレングリコールジ(メタ)アクリレート、トリエチレングリコールジ(メタ)アクリレート、テトラエチレングリコールジ(メタ)アクリレート、ネオペンチルグリコール、3−メチル−1,5−ペンタンジオールジ(メタ)アクリレート、1,6−ヘキサンジオールジ(メタ)アクリレート、2−ブチル−2−エチル−1,3−プロパンジオールジ(メタ)アクリレート、ジメチロール−トリシクロデカンジ(メタ)アクリレート、ヒドロキシピバリン酸ネオペンチルグリコールジ(メタ)アクリレート及びトリテトラメチレングリコールジ(メタ)アクリレート等の2官能モノマー、ペンタエリスリトールトリ(メタ)アクリレート、トリメチロールプロパントリ(メタ)アクリレート、トリメチロールエタントリ(メタ)アクリレート及びジペンタエリスリトールトリ(メタ)アクリレート等の3官能モノマー、並びにペンタエリスリトールテトラ(メタ)アクリレート、ジペンタエリスリトールテトラ(メタ)アクリレート、ジペンタエリスリトールペンタ(メタ)アクリレート及びジペンタエリスリトールヘキサ(メタ)アクリレート等の4官能以上のモノマー等が挙げられる。また、多官能のエポキシ(メタ)アクリレート化合物も好適に用いられ、更に多官能のウレタン(メタ)アクリレート化合物も好適に用いられる。更に、多官能(メタ)アクリレートの変性物も使用可能である。上記多官能の(メタ)アクリレート化合物は1種のみが用いられてもよく、2種以上が併用されてもよい。
【0027】
上記多官能の(メタ)アクリル化合物は、多官能の脂環式(メタ)アクリレート又は多官能のトリアジン環構造を有する(メタ)アクリレートであることがより好ましい。上記多官能の脂環式(メタ)アクリレートは、ノルボルナンジメチロールジアクリレート又はジシクロペンタジエニルジアクリレートであることが好ましい。上記多官能のトリアジン環構造を有する(メタ)アクリレートは、イソシアヌル酸トリス(2−アクリロイルオキシエチル)又はε−カプロラクトン変性イソシアヌル酸トリス(2−アクリロイルオキシエチル)であることが好ましい。
【0028】
上記重合性官能基を2個以上有する化合物を重合させた高分子は、正の屈折率異方性を有することが多い。上記重合性官能基を2個以上有する化合物を重合させた高分子は、上記第1の単量体として好適に用いられる。このような正の屈折率異方性を有する高分子を形成する第1の単量体に、負の屈折率異方性を有する高分子を形成する第2の単量体を配合することで、屈折率異方性の発現を効果的に抑制できる。上記第1の単量体と上記第2の単量体とを用いた場合には、上記第1の単量体のみを用いた場合又は上記第2の単量体のみを用いた場合と比べて、屈折率異方性を小さくすることができる。
【0029】
また、上記正の屈折率異方性を有する高分子を形成する第1の単量体は、トリアジン骨格を有する(メタ)アクリレート化合物、フルオレン骨格を有する(メタ)アクリレート化合物、又はジオキサン骨格を有する(メタ)アクリレート化合物であることが好ましい。上記第1の単量体は、は、ジシクロペンタニル骨格を有する(メタ)アクリレート化合物又はフルオレン骨格を有する(メタ)アクリレート化合物であってもよく、ジシクロペンタニル骨格を有する(メタ)アクリレート化合物又はジオキサン骨格を有する(メタ)アクリレート化合物であってもよく、フルオレン骨格を有する(メタ)アクリレート化合物又はジオキサン骨格を有する(メタ)アクリレート化合物であってもよい。上記第1の単量体は、トリアジン骨格を有する(メタ)アクリレート化合物であってもよく、フルオレン骨格を有する(メタ)アクリレート化合物であってもよく、ジオキサン骨格を有する(メタ)アクリレート化合物であってもよい。
【0030】
上記トリアジン骨格を有する(メタ)アクリレート化合物として、下記式(1)で表されるトリアジン骨格を有する(メタ)アクリレート化合物(以下、(メタ)アクリレート化合物(1)と略記することがある)が好適に用いられる。上記(メタ)アクリレート化合物(1)の硬化物の屈折率は、1.530以上、1.545以下である。
【0031】
【化1】

【0032】
上記式(1)中、R1〜R6はそれぞれ、水素原子又はメチル基を表し、n1とn2とn3との合計は平均で、0.5〜3を表す。n1とn2とn3との合計は平均で、好ましくは0.5〜2である。
【0033】
なお、n1とn2とn3との合計の平均の値は、硬化性組成物中に含まれる式(1)で表されるトリアジン骨格を有する(メタ)アクリレート化合物全体における値である。すなわち、例えば、上記式(1)で表される化合物として、n1=1、n2=0及びn3=0(n1+n2+n3=1)である化合物と、n1=1、n2=1及びn3=0(n1+n2+n3=2)である化合物とが同じ数で含まれる場合には、n1とn2とn3との合計は平均で1.5である。
【0034】
表示素子及び太陽電池では、無機材料を用いて、半導体層又は導電層として無機材料層が形成されていることが多い。この無機材料層を形成する過程では、基板が180〜300℃程度に加熱される。上記(メタ)アクリレート化合物(1)の硬化物のガラス転移温度は200〜250℃程度である。従って、(メタ)アクリレート化合物(1)の使用により、硬化性組成物の硬化物の耐熱性を高めることができ、該硬化物のガラス転移温度を180℃以上にすることが可能である。また、上記(メタ)アクリレート化合物(1)の使用により、表示素子及び太陽電池における無機材料層を形成する高温過程に耐え得る硬化物を与える硬化性組成物を得ることができる。
【0035】
さらに、上記正の屈折率異方性を有する高分子を形成する第1の単量体として、フルオレン骨格を有する(メタ)アクリレート化合物も好適に用いられる。該フルオレン骨格を有する(メタ)アクリレート化合物の使用により、硬化物の透明性がより一層高くなる。
【0036】
上記フルオレン骨格を有する(メタ)アクリレート化合物は、下記式(2)で表されるフルオンレン骨格を有する(メタ)アクリレート化合物(以下、(メタ)アクリレート化合物(2)と略記することがある)であることが好ましい。(メタ)アクリレート化合物(2)の使用により、硬化性組成物の硬化物の屈折率を好適な範囲に容易に制御でき、硬化物の透明性をより一層高めることができる。
【0037】
【化2】

【0038】
上記式(2)中、R11〜R16はそれぞれ、水素原子又はメチル基を表し、m1及びm2はそれぞれ、1又は2を表す。
【0039】
上記フルオレン骨格を有する(メタ)アクリレート化合物の硬化物のガラス転移温度は比較的高い。上記(メタ)アクリレート化合物(2)の硬化物のガラス転移温度は、250〜300℃である。従って、フルオレン骨格を有する(メタ)アクリレート化合物の使用により、硬化性組成物の硬化物のガラス転移温度をより一層高くし、該硬化物の耐熱性をより一層高くすることができる。特に上記(メタ)アクリレート化合物(2)の使用により、硬化性組成物の硬化物のガラス転移温度をより一層高くし、該硬化物の耐熱性をより一層高くすることができる。
【0040】
さらに、上記正の屈折率異方性を有する高分子を形成する第1の単量体として、ジオキサン骨格を有する(メタ)アクリレート化合物も好適に用いられる。上記ジオキサン骨格を有する(メタ)アクリレート化合物は、下記式(3)で表されるジオキサン骨格を有する化合物(以下、(メタ)アクリレート化合物(3)と略記することがある)であることが好ましい。上記(メタ)アクリレート化合物(3)の使用により、硬化性組成物の硬化物の屈折率を好適な範囲に容易に制御でき、硬化物の透明性をより一層高めることができる。
【0041】
【化3】

【0042】
上記式(3)中、R11及びR12はそれぞれ、水素原子又はメチル基を表す。
【0043】
従って、上記正の屈折率異方性を有する高分子を形成する第1の単量体は、2官能以上の不飽和結合を有する化合物であることが好ましく、(メタ)アクリロイル基を2個以上有する化合物であることがより好ましい。さらに、上記(メタ)アクリロイル基を2個以上有する化合物は、トリアジン骨格を有する(メタ)アクリレート化合物、フルオレン骨格を有する(メタ)アクリレート化合物又はジオキサン骨格を有する(メタ)アクリレート化合物であることも好ましい。また、上記第1の単量体は、トリアジン骨格を有する(メタ)アクリレート化合物、フルオレン骨格を有する(メタ)アクリレート化合物又はジオキサン骨格を有する(メタ)アクリレート化合物であることも好ましい。
【0044】
上記負の屈折率異方性を有する高分子を形成する第2の単量体としては、スチレン、アルキル置換スチレン類、ビニル芳香族類及び該ビニル芳香族類の置換体、(メタ)アクリレート化合物、並びにマレイミド化合物等が挙げられる。上記第2の単量体は、ビニル基又は(メタ)アクリロイル基を有する単量体であることが好ましい。
【0045】
上記アルキル置換スチレン類としては、具体的には、p−メチルスチレン、m−メチルスチレン、o−メチルスチレン、2,4−ジメチルスチレン、2,5−ジメチルスチレン、3,4−ジメチルスチレン、3,5−ジメチルスチレン、p−エチルスチレン、m−エチルスチレン及びo−エチルスチレン等が挙げられる。上記ビニル芳香族類及び該ビニル芳香族類の置換体としては、1,1−ジフェニルエチレン、N−ビニルカルバゾール、2−ビニルカルバゾール、4−ビニルフェノール、4−ビニルビフェニル、メチルカルボキシフェニルメタクリルアミド、(1−アセチルインダゾール−3−イルカルボニルオキシ)エチレン、フタルイミドエチレン、4−(1−ヒドロキシ−1−メチルプロピル)スチレン、2−ヒドロキシメチルスチレン、2−ジメチルアミノカルボニルスチレン、2−フェニルアミノカルボニルスチレン、3−(4−ビフェニルイル)スチレン、4−(4−ビフェニルイル)スチレン、2,6−ジクロロスチレン、ペルフルオロスチレン、2,4−ジイソプロピルスチレン、2,5−ジイソプロピルスチレン、2,4,6−トリメチルスチレン、α−メチルスチレン、1−ビニルナフタレン及び2−ビニルナフタレン等が挙げられる。上記(メタ)アクリレート化合物としては、メチル(メタ)アクリレート、エチル(メタ)アクリレート、n−ブチル(メタ)アクリレート、sec−ブチル(メタ)アクリレート、tert−ブチル(メタ)アクリレート、シクロヘキシル(メタ)アクリレート、ジシクロペンテニルオキシエチル(メタ)アクリレート、ジシクロペンテニルオキシ(メタ)アクリレート、フェニル(メタ)アクリレート、ベンジル(メタ)アクリレート、ナフチル(メタ)アクリレート、N,N−ジメチルアクリルアミド及びN−(メタ)アクリロイルモルホリン等が挙げられる。上記マレイミド化合物としては、N−フェニルマレイミド、及びN−シクロヘキシルマレイミド等が挙げられる。
【0046】
本発明に係る透明複合シートは、硬化性組成物にガラス繊維を埋め込んで、該硬化性組成物を硬化させることによって得られる。本発明に係る透明複合シートでは、硬化性組成物の硬化物とガラス繊維との屈折率を近づけることにより、より一層高い透明性が発現する。
【0047】
一般に、表示素子基板等に適用可能な十分な透明性を得るためには、マトリックスとなる硬化性組成物の硬化物と、該硬化物中に埋め込まれるガラス繊維との屈折率差を0.01以下とすることが望ましい。現実には、マトリックスとなる硬化性組成物の硬化物の屈折率とガラス繊維の屈折率とを可視光域全体に渡って完全に一致させることは困難である。本発明では、ガラス繊維に対して、マトリックスとなる硬化性組成物の硬化物の屈折率を適切に設計することにより、光の散乱を極小化することができる。
【0048】
本発明においては、ガラス繊維として、Tガラス又はEガラスを用いることができる。波長589nmにおけるTガラスの屈折率は、1.524程度である。Tガラスを用いる場合には、波長589nmにおける硬化性組成物の硬化物の屈折率を1.515以上、1.535以下とすることで、硬化性組成物の硬化物とガラス繊維とを有する透明複合シートの光散乱、すなわちヘイズ値を極小化することができる。波長589nmにおけるEガラスの屈折率は、1.558程度である。Eガラスを用いる場合には、波長589nmにおける硬化性組成物の硬化物の屈折率を1.548以上、1.568以下とすることで、硬化性組成物の硬化物とガラス繊維とを有する透明複合シートの光散乱、すなわちヘイズ値を極小化することができる。
【0049】
本発明に係る透明複合シートでは、正の屈折率異方性を有する高分子を形成する第1の単量体及び負の屈折率異方性を有する高分子を形成する第2の単量体を適宜選択して用いたり、該第1,第2の単量体とともに屈折率調整剤を用いて、該屈折率調整剤の種類及び使用量を適宜調整したりすることにより、波長589nmにおける硬化性組成物の硬化物の屈折率を調整することができる。硬化物の屈折率とガラス繊維との屈折率差が0.05以下であると、透明複合シートの透明性を高めることができ、該透明複合シートのヘイズ値をより一層小さくすることができる。
【0050】
本発明に係る硬化性組成物を硬化させる方法としては、加熱により硬化させる方法、及び活性光線により硬化させる方法等が挙げられる。加熱による硬化と活性光線による硬化とを併用してもよい。反応時間を短縮し、かつ硬化反応を完結させる観点からは、活性光線により硬化性組成物を硬化させた後に、更に加熱により硬化性組成物を硬化させることが好ましい。
【0051】
上記活性光線は、紫外線であることが好ましい。該紫外線を照射するための光源としては、例えば、メタルハライドランプ及び高圧水銀灯ランプ等が挙げられる。加熱により硬化性組成物を硬化させる際には、オーブン及びヒーター等が用いられる。酸化による着色及び上記硬化性化合物の劣化を抑制するために、加熱により硬化性組成物を硬化させる際には、窒素雰囲気下又は真空状態で、150〜300℃で1〜24時間加熱することが好ましい。
【0052】
加熱により硬化性組成物を硬化させるために、上記硬化性組成物は、熱重合開始剤を含むことが好ましい。上記熱重合開始剤は、ラジカル重合開始剤であることが好ましい。該ラジカル重合開始剤としては、過酸化物系ラジカル重合開始剤、アゾ系ラジカル重合開始剤及びレドックス系ラジカル重合開始剤等が挙げられる。これら以外の熱重合開始剤を用いてもよい。上記熱重合開始剤は、1種のみが用いられてもよく、2種以上が併用されてもよい。
【0053】
上記アゾ系ラジカル重合開始剤としては、アゾビスイソブチロニトリル、アゾビスシクロヘキサンカルボニトリル及びアゾビスジメチルバレロニトリル等が挙げられる。
【0054】
上記過酸化物系ラジカル重合開始剤としては、ジアシル系ラジカル重合開始剤、パーオキシエステル系ラジカル重合開始剤、ジアルキル系ラジカル重合開始剤、パーカーボネート系ラジカル重合開始剤及びケトンパーオキサイド系ラジカル重合開始剤等が挙げられる。
【0055】
上記ジアシル系ラジカル重合開始剤としては、ラウロイルパーオキサイド及びベンゾイルパーオキサイド等が挙げられる。上記パーオキシエステル系ラジカル重合開始剤としては、t−ブチルパーオキシベンゾエート、t−ブチルパーオキシアセテート、t−ブチルパーオキシピバレート及びt−ブチルパーオキシ−2−エチルヘキサノエート等が挙げられる。上記ジアルキル系ラジカル重合開始剤としては、ジクミルパーオキサイド及びジ−t−ブチルパーオキサイド等が挙げられる。上記パーカーボネート系ラジカル重合開始剤としては、ジイソプロピルパーオキシジカーボネート等が挙げられる。上記ケトンパーオキサイド系ラジカル重合開始剤としては、メチルエチルケトンパーオキサイド等が挙げられる。
【0056】
上記レドックス系ラジカル重合開始剤は、例えば、過酸化物と還元剤又は金属含有化合物とを含む。上記レドックス系ラジカル重合開始剤の具体例としては、ベンゾイルパーオキサイドと有機アミン類との混合物、上記パーオキシエステル系ラジカル重合開始剤とメルカプタン類などの還元剤との混合物、並びにメチルエチルケトンパーオキサイドと有機コバルト塩との混合物等が挙げられる。
【0057】
硬化物の靭性をより一層高める観点からは、過酸化物系ラジカル重合開始剤が好ましい。熱重合開始剤の使用量は特に制限されない。硬化性組成物中の硬化性化合物100重量部に対して、熱重合開始剤の含有量は好ましくは0.05重量部以上、好ましくは5重量部以下である。
【0058】
活性光線の照射により硬化性組成物を硬化させるために、上記硬化性組成物は、光重合開始剤を含むことが好ましい。該光重合開始剤としては、光ラジカル重合開始剤及び光カチオン重合開始剤等が挙げられる。該光重合開始剤は、光ラジカル重合開始剤であることが好ましい。光重合開始剤は、1種のみが用いられてもよく、2種以上が併用されてもよい。
【0059】
上記光ラジカル重合開始剤としては特に限定されず、例えば、ベンゾフェノン、N,N’−テトラエチル−4,4’−ジアミノベンゾフェノン、4−メトキシ−4’−ジメチルアミノベンゾフェノン、2,2−ジエトキシアセトフェノン、ベンゾイン、ベンゾインメチルエーテル、ベンゾインプロピルエーテル、ベンゾインイソブチルエーテル、ベンジルジメチルケタール、α−ヒドロキシイソブチルフェノン、チオキサントン、2−クロロチオキサントン、1−ヒドロキシシクロヘキシルフェニルケトン、2−メチル−1−[4−(メチルチオ)フェニル]−2−モルホリノプロパン−1−オン、2−ベンジル−2−ジメチルアミノ−1−(4−モルフォリノフェニル)−ブタノン−1,2,6−ジメチルベンゾイルジフェニルホスフィンオキシド、2,4,6−トリメチルベンゾイルジフェニルホスフィンオキシド、t−ブチルアントラキノン、1−クロロアントラキノン、2,3−ジクロロアントラキノン、3−クロロ−2−メチルアントラキノン、2−エチルアントラキノン、1,4−ナフトキノン、9,10−フェナントラキノン、1,2−ベンゾアントラキノン、1,4−ジメチルアントラキノン、2−フェニルアントラキノン、2−(o−クロロフェニル)−4,5−ジフェニルイミダゾール2量体、2−メルカプトベンゾチアゾール、2−メルカプトベンゾオキサゾール、及び4−(p−メトキシフェニル)−2,6−ジ−(トリクロロメチル)−s−トリアジン等が挙げられる。上記光ラジカル重合開始剤は、1種のみが用いられてもよく、2種以上が併用されてもよい。
【0060】
上記光カチオン重合開始剤としては特に限定されず、例えば、スルホニウム塩、ヨードニウム塩、メタロセン化合物及びベンゾイントシレート等が挙げられる。上記光カチオン重合開始剤は、1種のみが用いられてもよく、2種以上が併用されてもよい。
【0061】
上記光カチオン重合開始剤の市販品としては、サイラキュアUVI−6970、サイラキュアUVI−6974及びサイラキュアUVI−6990(いずれもユニオンカーバイド社製)、イルガキュア264(チバ・ジャパン社製)、並びにCIT−1682(日本曹達社製)等が挙げられる。
【0062】
硬化性組成物中の硬化性化合物100重量部に対して、上記光重合開始剤の含有量は好ましくは0.01重量部以上、好ましくは10重量部以下である。上記光重合開始剤の含有量が上記下限以上であると、硬化性組成物を十分に硬化させることができる。上記重合開始剤の含有量が上記上限以下であると、重合が急激に進行し難くなり、複屈折の増大、着色及び硬化時の割れ等の問題が発生し難くなる。
【0063】
上記光重合開始剤が光ラジカル重合開始剤である場合には、硬化性組成物中の硬化性化合物100重量部に対して、上記光ラジカル重合開始剤の含有量は、好ましくは0.01重量部以上、より好ましくは0.1重量部以上、好ましくは2重量部以下、より好ましくは1重量部以下である。
【0064】
上記光重合開始剤が光カチオン重合開始剤である場合には、硬化性組成物中の硬化性化合物100重量部に対して、上記光カチオン重合開始剤の含有量は、好ましくは1重量部以上、好ましくは10重量部以下、より好ましくは5重量部以下である。
【0065】
上記硬化性組成物は、粘度を調整する目的などにより、必要に応じて、溶剤を含んでいてもよい。該溶剤としては、硬化性組成物中の成分と反応しない溶剤であることが好ましい。硬化性組成物の硬化反応を行う前にオーブン又はホットプレートでの加熱、並びに減圧チャンバー内での減圧により乾燥除去する必要があることから、揮発性の溶剤が好ましい。
【0066】
上記硬化性組成物は、必要性に応じて、耐候剤、酸化防止剤、熱安定剤、帯電防止剤、増白剤、着色剤、導電剤、離型剤、表面処理剤及び粘度調節剤等を含んでいてもよい。
【0067】
[ガラス繊維及び透明複合シート]
本発明に係る透明複合シートは、上記硬化性組成物を硬化させた硬化物と、該硬化物中に埋め込まれたガラス繊維とを有する。
【0068】
本発明に係る硬化性組成物をシート状にした後、加熱又は活性光線の照射によって、硬化性組成物を架橋及び硬化させることで、透明複合シートを得ることができる。
【0069】
上記ガラス繊維としては、ガラス繊維のチョップドストランド、ガラス繊維の織布及びガラス繊維の不織布等が挙げられる。上記ガラス繊維は、ガラス繊維の織布であることが好ましい。
【0070】
上記ガラス繊維の織布としては、例えば、断面が円形又は楕円形等であり、かつ断面最長径が3〜10μm程度の長繊維(フィラメント)を、100〜800本程度撚り合わせたヤーンを、経糸及び緯糸として用いて、これらの糸を交錯させるように織ることにより得られる。織り方としては、平織、綾織及び朱子織等が挙げられる。
【0071】
上記ガラス繊維の厚さは最も厚い部分で、通常10〜500μmである。上記ガラス繊維の厚さは最も厚い部分で、15〜350μmであることが好ましい。
【0072】
上記ガラス繊維は、Eガラス又はTガラスであることが好ましい。繊維径、繊維束径、ガラスクロスとしての目付、織り密度及び厚さ等に関して、上記Eガラス及びTガラスは、種々の規格品が揃っている。性能、コスト及び入手の容易性の観点から、Eガラスが好適に用いられる。また、得られる透明複合シートの熱寸法安定性を良好にする観点からは、Tガラスが好適に用いられる。Tガラスは熱膨張係数が小さい。
【0073】
上記ガラス繊維の引っ張り弾性率は、好ましくは5GPa以上、より好ましくは10GPa以上、好ましくは500GPa以下、より好ましくは200GPa以下である。上記引っ張り弾性率が上記下限以上であると、透明複合シートの強度が高くなる。
【0074】
本発明に係る透明複合シートの厚みは特に限定されない。本発明に係る透明複合シートの厚みは、好ましくは20μm以上、より好ましくは25μm以上、好ましくは1000μm以下、より好ましくは500μm以下、特に好ましくは200μm以下である。透明複合シートの厚みが上記下限以上であると、表示装置用基板として十分な強度及び剛性を維持できる。透明複合シートの厚みが上記上限以下であると、硬化性組成物を硬化させる際の体積収縮が小さくなり、応力の残留による位相差が生じ難くなり、表示のコントラスト低下を引き起こし難くなる。さらに、透明複合シートの厚みが上記上限以下であると、透明複合シートが反り難くなり、さらに透明複合シートの厚みが均一になる。
【0075】
表示素子及び太陽電池の用途に好適に用いることができるので、本発明に係る透明複合シートの厚みは、より好ましくは25μm以上、より好ましくは200μm以下である。透明複合シートの厚みが上記下限以上及び上記上限以下であっても、耐熱性を十分に高めることができる。上記「厚み」は、平均厚みを示す。
【0076】
ガラスクロス及びガラス不織布などのガラス繊維に関しては、1枚のみを用いてもよく、複数枚を重ねて用いてもよい。
【0077】
上記透明複合シートの厚みが1000μmを超える場合には、本発明に係る透明複合シートを得る際に、複数のシートに分けて該シートを積層した後に、硬化してもよい。さらに、シート化と硬化とを繰り返して、シートの積層体を得てもよい。
【0078】
本発明に係る透明複合シートの550nmにおける光線透過率は、好ましくは80%以上、より好ましくは85%以上、更に好ましくは90%以上である。光透過率が上記下限以上であると、例えば、液晶表示装置用基板又は有機EL表示装置基板等として透明複合シートを用いて画像表示装置を得た場合に、鮮明な表示品位の高い画像が得られる。上記光線透過率は、市販の分光光度計を用いて、波長550nmの全光線透過率を測定することによって求めることができる。
【0079】
本発明に係る透明複合シートのヘイズ値は、好ましくは10%以下、より好ましくは5%以下、特に好ましくは4%以下である。上記ヘイズ値は、JIS K7136に基づいて測定される。測定装置として、市販のヘイズメーカーが用いられる。測定装置としては、例えば、東京電色社製「全自動ヘイズメーターTC−HIIIDPK」等が挙げられる。
【0080】
上記透明複合シートの寸法安定性を高める観点からは、本発明に係る透明複合シートの50〜200℃における平均線膨張係数は、20ppm/℃以下であることが好ましい。
【0081】
本発明に係る透明複合シートに、表面平滑化層、ハードコート層又はガスバリア層を積層してもよい。
【0082】
ガラス繊維に沿って上記硬化物が一軸配向した透明複合シートの、波長550nmにおける面内位相差は5nm以下であることが好ましい。ガラス繊維の縦糸を引き抜き、横糸のみが存在する該ガラス繊維に硬化性組成物を含浸させ、硬化させた透明複合シートの波長550nmにおける面内位相差は5nm以下であることが好ましい。このような透明複合シートの使用によって、表示素子の表示性能の低下を抑制できる。
【0083】
上記表面平滑化層又はハードコート層を形成する際には、例えば、上記透明複合シート上に、既知の表面平滑化剤又はハードコート剤を塗布し、必要に応じて溶剤を除去するために乾燥する。次に、加熱又は活性光線の照射により、表面平滑化剤又はハードコート剤を硬化させる。
【0084】
上記透明複合シート上に表面平滑化剤又はハードコート剤を塗布する方法としては、特に制限されず、例えば、ロールコート法、スピンコート法、ワイヤバーコート法、ディップコート法、エクストルージョン法、カーテンコート法及びスプレーコート法等の従来公知の方法を採用できる。
【0085】
上記ガスバリア層としては特に限定はされず、例えば、アルミニウムなどの金属、SiO及びSiNなどの珪素化合物、酸化マグネシウム、酸化アルミニウム、並びに酸化亜鉛等の透明材料が使用可能である。なかでも、ガスバリア性、基材層への密着性及び透明性に優れているので、SiO及びSiNなどの珪素化合物を用いることが好ましい。
【0086】
上記ガスバリア層を形成する方法としては、特に制限されず、蒸着法及びスパッタリング法等の乾式法、並びにゾル−ゲル法等の湿式法等が挙げられる。なかでも、緻密でガスバリア性に優れ、かつ基材への密着性が良好なガスバリア層を形成する観点からは、スパッタリング法が特に好ましい。
【0087】
本発明に係る透明複合シートは、液晶表示素子用プラスチック基板、有機EL表示素子用プラスチック基板、太陽電池基板及びタッチパネル等に好適に用いられる。
【0088】
以下、実施例及び比較例を挙げて、本発明を具体的に説明する。本発明は、以下の実施例のみに限定されない。
【0089】
(実施例1)
イソシアヌル酸トリス(2−アクリロイルオキシエチル)(新中村化学社製「A−9300」)60重量部に、負の屈折率異方性を示す材料である4−アクリロイルモルホリン(東京化成工業社製)40重量部と、光重合開始剤である2−メチル−1−[4−(メチルチオ)フェニル]−2−モリフォリノプロパン−1−オン(チバ・ジャパン社製「イルガキュア907」)0.2重量部とを加え、100℃に加温しながら撹拌して、混合及び溶解し、硬化性組成物を調製した。
【0090】
ガラス繊維として、Tガラス繊維であるIPC#2013相当のガラスクロス(日東紡社製)を用意した。このガラスクロスを、70℃に加熱した硬化性組成物に浸漬し、超音波を照射しながら、ガラスクロスに硬化性組成物を含浸させた。その後、硬化性組成物を含浸したガラスクロスを引き上げて、離型処理されたガラス板上に乗せた。ガラス板上の硬化性組成物を含浸したガラスクロスを、厚さ100μmのPETフィルム(東洋紡績社製「コスモシャインA4100」)でカバーして、50℃に温度調節されたラミネーターを通過させて、厚みを均一にした。
【0091】
次に、PETフィルム側より、高圧水銀灯にて2000mJ/cm(365nm)の紫外線を照射して、硬化性組成物を硬化させた。
【0092】
さらに、PETフィルム及びガラス板から硬化したシートを剥離し、200℃のオーブン中で1時間加熱処理を行い、透明複合シートを得た。得られた透明複合シートの厚みは85μmであった。
【0093】
(実施例2)
イソシアヌル酸トリス(2−アクリロイルオキシエチル)(新中村化学社製「A−9300」)30重量部に、ε−カプロラクトン変性イソシアヌル酸トリス(2−アクリロイルオキシエチル)(新中村化学社製「A−9300−1CL」)30重量部と、負の屈折率異方性を示す材料である4−アクリロイルモルホリン(東京化成工業社製)40重量部と、2−メチル−1−[4−(メチルチオ)フェニル]−2−モリフォリノプロパン−1−オン(チバ・ジャパン社製「イルガキュア907」)0.2重量部とを加え、100℃に加温しながら撹拌して、混合及び溶解し、硬化性組成物を調製した。
【0094】
得られた硬化性組成物を用いて、実施例1と同様の操作及び条件で、透明複合シートを得た。得られた透明複合シートの厚みは80μmであった。
【0095】
(実施例3)
イソシアヌル酸トリス(2−アクリロイルオキシエチル)(新中村化学社製「A−9300」)25重量部に、ジオキサングリコールジアクリレート(上記式(3)で表される(メタ)アクリレート化合物に相当する、新中村化学社製「A−DOG」)18重量部と、負の屈折率異方性を示す材料である4−アクリロイルモルホリン(東京化成工業社製)57重量部と、光重合開始剤である2−メチル−1−[4−(メチルチオ)フェニル]−2−モリフォリノプロパン−1−オン(チバ・ジャパン社製「イルガキュア907」)0.2重量部とを加え、70℃に加温しながら撹拌して、混合及び溶解し、硬化性組成物を調製した。
【0096】
得られた硬化性組成物を用いて、実施例1と同様の操作及び条件で、透明複合シートを得た。得られた透明複合シートの厚みは80μmであった。
【0097】
(実施例4)
イソシアヌル酸トリス(2−メタクリロイルオキシエチル)(合成試作品)27重量部に、ジオキサングリコールジメタクリレート(上記式(3)で表される(メタ)アクリレート化合物に相当する、合成試作品)26重量部と、負の屈折率異方性を示す材料である4−アクリロイルモルホリン(東京化成工業社製)47重量部と、光重合開始剤である2−メチル−1−[4−(メチルチオ)フェニル]−2−モリフォリノプロパン−1−オン(チバ・ジャパン社製「イルガキュア907」)0.2重量部とを加え、70℃に加温しながら撹拌して、混合及び溶解し、硬化性組成物を調製した。
【0098】
得られた硬化性組成物を用いて、実施例1と同様の操作及び条件で、透明複合シートを得た。得られた透明複合シートの厚みは85μmであった。
【0099】
(実施例5)
イソシアヌル酸トリス(2−アクリロイルオキシエチル)(新中村化学社製「A−9300」)60重量部に、負の屈折率異方性を示す材料であるスチレン(東京化成工業社製)40重量部と、光重合開始剤である2−メチル−1−[4−(メチルチオ)フェニル]−2−モリフォリノプロパン−1−オン(チバ・ジャパン社製「イルガキュア907」)0.2重量部とを加え、100℃に加温しながら撹拌して、混合及び溶解し、硬化性組成物を調製した。
【0100】
得られた硬化性組成物を用いて、ガラス繊維として、Eガラス繊維であるIPC#2013相当のガラスクロス(日東紡社製)を用いたこと以外は、実施例1と同様の操作及び条件で、透明複合シートを得た。得られた透明複合シートの厚みは80μmであった。
【0101】
(実施例6)
イソシアヌル酸トリス(2−アクリロイルオキシエチル)(新中村化学社製「A−9300」)33重量部に、9,9’−ビス[4−(2−アクリロイルオキシエトキシ)フェニル]フルオレン(新中村化学社製「A−BPEF」)27重量部と、負の屈折率異方性を示す材料である4−アクリロイルモルホリン(東京化成工業社製)40重量部と、光重合開始剤である2−メチル−1−[4−(メチルチオ)フェニル]−2−モリフォリノプロパン−1−オン(チバ・ジャパン社製「イルガキュア907」)0.2重量部とを加え、100℃に加温しながら撹拌して、混合及び溶解し、硬化性組成物を調製した。
【0102】
得られた硬化性組成物を用いて、実施例5と同様の操作及び条件で、透明複合シートを得た。得られた透明複合シートの厚みは85μmであった。
【0103】
(比較例1)
イソシアヌル酸トリス(2−アクリロイルオキシエチル)(新中村化学社製「A−9300」)50重量部に、ε−カプロラクトン変性イソシアヌル酸トリス(2−アクリロイルオキシエチル)(新中村化学社製「A−9300−1CL」)50重量部と、2−メチル−1−[4−(メチルチオ)フェニル]−2−モリフォリノプロパン−1−オン(チバ・ジャパン社製「イルガキュア907」)0.2重量部とを加え、100℃に加温しながら撹拌して、混合及び溶解し、硬化性組成物を調製した。
【0104】
得られた硬化性組成物を用いて、実施例1と同様の操作及び条件で、透明複合シートを得た。得られた透明複合シートの厚みは80μmであった。
【0105】
(比較例2)
イソシアヌル酸トリス(2−アクリロイルオキシエチル)(新中村化学社製「A−9300」)10重量部に、ε−カプロラクトン変性イソシアヌル酸トリス(2−アクリロイルオキシエチル)(新中村化学社製「A−9300−1CL」)85重量部と、9,9’−ビス[4−(2−アクリロイルオキシエトキシ)フェニル]フルオレン(新中村化学社製「A−BPEF」)5重量部と、2−メチル−1−[4−(メチルチオ)フェニル]−2−モリフォリノプロパン−1−オン(チバ・ジャパン社製「イルガキュア907」)0.2重量部とを加え、100℃に加温しながら撹拌して、混合及び溶解し、硬化性組成物を調製した。
【0106】
得られた硬化性組成物を用いて、実施例1と同様の操作及び条件で、透明複合シートを得た。得られた透明複合シートの厚みは80μmであった。
【0107】
(比較例3)
イソシアヌル酸トリス(2−アクリロイルオキシエチル)(新中村化学社製「A−9300」)73重量部に、9,9’−ビス[4−(2−アクリロイルオキシエトキシ)フェニル]フルオレン(新中村化学社製「A−BPEF」)27重量部と、2−メチル−1−[4−(メチルチオ)フェニル]−2−モリフォリノプロパン−1−オン(チバ・ジャパン社製「イルガキュア907」)0.2重量部とを加え、100℃に加温しながら撹拌して、混合及び溶解し、硬化性組成物を調製した。
【0108】
得られた硬化性組成物を用いて、実施例3と同様の操作及び条件で、透明複合シートを得た。得られた透明複合シートの厚みは85μmであった。
【0109】
(評価)
a)屈折率
離型処理された2枚のガラス板を用意した。この2枚のガラス板を100μmの間隔を隔てて、ガラス板の間に得られた硬化性組成物を挟み込んで、高圧水銀灯にて2000mJ/cm(365nm)のUV光を照射して、硬化性組成物を架橋及び硬化させた。その後、ガラス板から硬化物を剥離し、200℃のオーブン中で1時間加熱処理を行い、試験片(硬化物)を作製した。アッベ屈折計(アタゴ社製「NAR−1T」)を用いて、試験片の屈折率nD(ナトリウムD線(589nm)、25℃)を測定した。ガラス繊維の屈折率については、メーカー(日東紡)公称値を採用した。
【0110】
b)配向状態における位相差
ガラス繊維の縦糸を引き抜き、横糸のみが存在する部分を作製した。横糸のみが存在する該ガラス繊維に硬化性組成物を含浸させ、実施例及び比較例の各条件で硬化させた透明複合シートを得た。高分子(第1,第2の単量体の重合体)は糸の繊維に沿って配向するため、横糸のみが存在する部分では、一軸配向に近い状態にすることができる。この状態での面内位相差R0を、位相差フィルム・光学材料検査装置(大塚電子社製「RETS−1200RF」)を用いて測定し、評価した。測定の際は、サンプルを230℃で30分加熱し、加熱後の位相差を評価した。
【0111】
c)ガラスクロス含浸時における位相差
ガラスクロスに硬化性組成物を含浸させ、実施例及び比較例の各条件で硬化させた透明複合シートを得た。この状態での面内位相差R0及び厚さ方向の位相差Rthを、位相差測定装置(王子計測機器社製「KOBRA−WR」)を用いて測定し、評価した。測定の際は、サンプルを230℃で30分加熱し、加熱前後の位相差を評価した。
【0112】
d)線膨張係数
熱応力歪測定装置(セイコー電子社製「TMA/EXSTAR6000型」)を用いて、30℃から300℃まで10℃/分の速度で得られた透明複合シートを昇温した後、20℃/分の速度で30℃まで冷却した。その後、再度、30℃から300℃まで10℃/分の速度で透明複合シートを昇温したときの50℃〜200℃での平均線膨張係数を求めた。
【0113】
e)ガラス転移温度
動的粘弾性測定装置(アイティー計測制御社製「DVA−200」)を用いて、30℃から300℃まで10℃/分の速度で得られた透明複合シートを昇温した後、20℃/分の速度で30℃まで冷却した。その後、再度、300℃まで10℃/分の速度で得られた透明複合シートを昇温して、引張モードによる測定を行った。tanδのピーク温度をガラス転移温度とした。このガラス転移温度は、硬化性組成物を硬化させた硬化物のガラス転移温度に相当する。
【0114】
f)光線透過率
分光光度計(島津製作所社製「UV−310PC」)を用いて、得られた透明複合シートの550nmにおける光線透過率を測定した。光線透過率が85%以上であると、透明性に優れている。
【0115】
g)ヘイズ値
ヘイズメーター(東京電色社製「全自動ヘイズメーターTC−HIIIDPK」)を用いて、得られた透明複合シートのヘイズ値を測定した。ヘイズ値が5%以下であると、透明性に優れている。
【0116】
評価結果を下記の表1に示す。
【0117】
【表1】


【特許請求の範囲】
【請求項1】
硬化性組成物を硬化させた硬化物と、該硬化物中に埋め込まれたガラス繊維とを有し、
前記硬化性組成物が、正の屈折率異方性を有する高分子を形成する第1の単量体と、負の屈折率異方性を有する高分子を形成する第2の単量体とを含む、透明複合シート。
【請求項2】
波長589nmにおける前記硬化物の屈折率と波長589nmにおける前記ガラス繊維の屈折率との差が0.01以下である、請求項1に記載の透明複合シート。
【請求項3】
前記ガラス繊維に沿って前記高分子が一軸配向した透明複合シートの、波長550nmにおける面内位相差が5nm以下である、請求項1又は2に記載の透明複合シート。
【請求項4】
波長550nmにおける光線透過率が85%以上である、請求項1〜3のいずれか1項に記載の透明複合シート。
【請求項5】
50〜200℃における平均線膨張係数が20ppm/℃以下である、請求項1〜4のいずれか1項に記載の透明複合シート。
【請求項6】
厚みが25μm以上、200μm以下である、請求項1〜5のいずれか1項に記載の透明複合シート。

【公開番号】特開2013−28776(P2013−28776A)
【公開日】平成25年2月7日(2013.2.7)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2011−206304(P2011−206304)
【出願日】平成23年9月21日(2011.9.21)
【出願人】(000002174)積水化学工業株式会社 (5,781)
【Fターム(参考)】